灰と幻想のデジャブガル   作:なにがし

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明けましておめでとうございます。もう新年から結構経ってしまいしましたね。

大変申し訳ありません。そして、大変長らくお待たせ致しました。

これからもよろしくお願いします。


自信と慢心

 見習い義勇兵になってから三週間以上の月日が経ち、ダムローに通うのもまた、あと一日で二週間が経とうとしていた。

 

 このぐらい長い期間、ダムローでゴブリン狩りをしているとゴブリンとの命のやり取りも慣れてきて、皆安定して戦うことが出来る様になっていた。

 

 安定して戦えるようになった理由には──マナトがダムローの地形や道筋、建物の位置、その他にも色々なことを紙に記すようになったことで、このダムローという場所が未知で無くなってきたというのが要因になっているのだが。簡単に言えば、慣れである。

 

 勿論他にも、皆それぞれがギルドで新しいスキルを身につけてきたから、とか。そんな理由もある。

 

 そしてこれら全てが作用して、皆の自信に繋がり、ゴブリンを順調に倒せているという結果に繋がらせていた。

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 十三日目のダムローでのゴブリン狩りの最中、今一度、目の前のゴブリンから一瞬目を離しながら辺りを見渡す。

 

 ハルヒロとランタとユメの組は一人のゴブリンに新しいスキルを使ってゴブリンを以前より早く、そして戸惑わずに倒すことが出来ている。

 

 シホルもまた魔法ギルドで新しく学んだ影魔法(ダージュマジック)の一つ。影鳴り(シャドービート)をゴブリンの頭に叩き込んで、一匹のゴブリンが超振動による攻撃のダメージでゴブリンの身体をぶるぶると揺らし、その隙を狙って一匹を倒し終わったランタが震えているゴブリンに攻撃を行う。

 

 モグゾーとマナトの方はというと、今丁度モグゾーが戦士職の基本スキルの憤怒の一撃(レイジブロー)を叩き込もうとしていた。

 

 このモグゾーの使う憤怒の一撃(レイジブロー)を俺たちはどうも斬りと呼んでいる。理由は──。

 

「どぅもーっ!」

 

 こんな風にモグゾーがこの戦士の基本スキルを叩き込む時に″どぅもー″と掛け声をするからである。

 

 まぁ今皆がどう戦っているのかは気にせず、目の前の一匹のゴブリンを倒すということに意識を切り替えることにしよう。

 

 ゴブリンは此方を警戒して此方の出方を伺っている。だから此方もまた皆と同じくギルドで学んだ新しい魔法をゴブリンへと叩き付けることにする。

 

 俺が新しく魔法ギルドで学んだ魔法は炎熱魔法(アルブマジック)という四系統ある内の一つで、その炎熱魔法(アルブマジック)の中の熱風を出して相手を攻撃する熱風(ホットウィンド)と炎の壁を作り出すという使い勝手の良い火炎壁(ファイアウォール)を習得した。

 

 因みにシホルの身につけた影魔法(ダージュマジック)も四系統の一つで炎熱魔法(アルブマジック)影魔法(ダージュマジック)の他に氷系統を使う氷結(カノン)と電気系統を使う電磁(ファルツ)がある。

 

 そして俺はその炎熱魔法の一つの火炎壁をゴブリンのいる位置に丁度良く生成して、ゴブリンが炎で焼かれ、痛みで戸惑っているのを尻目にゴブリンの気道を狙って思いっきりナイフを刺した。

 

「ふぅ」

 

 何とか一人で倒したゴブリンを横目に見ながら他の人達はどうなったのか気になり辺りを見渡す。

 

 見渡してみると、皆もまたどうやら丁度ゴブリンを倒し終わっていた様だった。

 

 しかしまぁ、何故俺だけが一人でゴブリンを相手することになったのか? そんなことを思う時がある。

 

 まぁ結局この疑問は、皆が一つのスキルを身につけている間に俺が新しく二つも魔法の身につけたというのが原因であると結果は出るのだが。だがまぁ本当は、俺魔法使いなのに何で一人だけでゴブリンを相手とるの? とか思ったりもする。しかし、マナトもまた神官職なのに前衛で戦っているのだから文句は言えない。

 

 倒したゴブリンが持っていた所持品を盗み出して、ハルヒロ達がいる方へと向かいながらそんなことを思う。

 

(さぁ、ハルヒロ達はどうなってるのかな?)

 

 またランタとハルヒロが漫才をしているのだろうか? そんなことを考えながらゆっくりとした歩みで皆の元へと向かった。

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲

 

 

 エルは十四日目のダムロー狩り、いや、ゴブリン狩りはいつもの様に少し拙いながらも上手く倒すことが出来る。そう思っていた。

 

 ……そう思っていたのだが……。

 

 今、目の前にある。この現実は何なのか? 

 

 そう思わずにはいられない様な光景が俺の目の前には広がっていた。

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲

 

 

 

「今日も何とか上手く立ち回ることが出来て、ゴブリンを倒すことが出来たね」

 

 マナトはゴブリンを倒した後の小休止の時に、皆に向けて優しい口調で語りかけた。

 

「何言ってんだよ、マナト。めっちゃ上手くいってただろ。まぁ全て順調なのは俺様のお陰なんだけどなっ!」

 

「いや、それはないから(あらへん)」

 

「な、パルムンテとユメーリアの分際で……っ!」

 

「なんだよ、パルムンテとユメーリアって、ハルヒロとユメだから」

 

「そうやそうやっ! 名前を間違えるんやあらへんっ!」

 

 ハルヒロはランタのこの行動はいつものことだからなのか、冷静に。ユメはランタに名前をわざと間違えられたのが癪なのか、弓に手をかけてランタに向けて狙いを定めながらランタの言葉を否定していた。……まぁユメがランタに向けて、弓を向けたのにはそれ以外にも理由がありそうだが……。

 

「なっ……! お、おいっ! ユメっ! 弓に手をかけるのは止めろっ! いや、止めて下さいっ!」

 

「え~どうしようかな~。ユメはユメーリアって名前らしいから、別にランタに向けて弓を向けても大丈夫やしな~。それに例え、ランタが死んじゃっても、ランタを殺したのはユメって言う名前の人やなく、ユメーリアって名前の人やからな~」

 

「なっ……なっ! いや、本当に許して下さい。出来心だったんです。ジョークだったんです。だから、ユメ様、ユメ大臣様、ユメ大明神様っ! どうか……っ! どうかご慈悲を……っ! ……お、おいっ! エルも楽しそうに見てないで助けてくれっ! このままじゃ、本当に殺されてアンデッドにされちまうっ!」

 

 しょうがない、ランタが悪いっちゃ悪いんだけど。ランタも場を和ます為に俺様のお陰って言ったのに、ハルヒロとユメに即座に否定されたのが癪に触って、意地悪しちゃったのかもしれないから助けてやるか。

 

「そうだね。ランタも反省しているらしいし、許してあげればユメ?」

 

 そう思ってユメに向けて言葉を紡ぐと、ユメも──。

 

「はぁ……。エル君が言ってるから今回は見逃してあげるけど、次はあらへんからな? ランタ?」

 

 ユメもエルが会話に入ったことで、ランタとの会話が一時中断されることになり、その一時の間に心を落ち着かせることが出来たのかランタを許すことにしたようだ。

 

 まぁ、俺もユメはなんだかんだ言っても優しいから、こうなることが分かっていて二人の会話に入ったのだが。

 

「へへぇ~っ! ユメ様ありがとうございまする~っ! おいっ! エルっ! お前もユメ様に感謝しろよっ!」

 

 何でランタのことなのに俺が感謝しなきゃならないの? と思いつつも、まぁ確かに俺の言ったお願いをユメは聞いてくれたことにもなるんだし、感謝しても問題ないか。と自分の脳内の中で少しの間、自問自答し、ランタの言う通りというのは些か微妙な気分になるがユメには感謝の気持ちを伝えようという結果が脳内会議で議決された。

 

「……そうだね。ありがとうユメ」

 

「エル君は何も悪くあらへんから別にお礼を言わなくても良いんよ? それにもとはと言えば……っ!」

 

「あぁ~っ! だからユメっ! 俺に弓を向けるんじゃねぇ! いや、向けないで下さいっ! 怖いからっ! まじ怖いですからっ!」

 

 そんな会話を聞きつつ、マナトとアイコンタクトをして一緒に苦笑いをする。こんな風なことがいつもの様に続く。そう思っていた。

 

 ……そう思っていたのに……っ。

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 この目の前に広がる光景は何だ……っ。

 

 いつものありふれた馬鹿げた光景は何処へ行った? 

 

 

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