灰と幻想のデジャブガル   作:なにがし

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遅くなって申し訳ありません。


後に悔やむ。それを人は後悔と呼ぶ

 この目の前に広がる光景は何だ……っ! 

 

 いつものありふれた馬鹿げた光景は何処へ行った!? 

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 ランタとユメのやりとりが一段落着いた後、少し色々と会話をしてから休憩を終わらせ、再びゴブリン狩りを始めようと休んでいた建物の中から出ようとして、いの一番にハルヒロが建物の中から出た。

 

 そこで異変が起こった。そう。予想外の出来事だ。

 

「ぐぅ……っ!」

 

 ハルヒロが射られたのだ。それもやや離れている場所からボウガンが……。

 

 矢が飛んできた方向を脳内の中で思いだしながら、その方向に向けてハルヒロの姿を一時でも隠す為に火炎壁(ファイアウォール)を繰り出す。

 

「マナトっ!」

 

「エル、魔法が切れたらすぐに皆をつれて逃げてくれっ! ハルヒロ、痛いだろうけど我慢してくれ」

 

 マナトは一瞬で何故エルが火炎壁(ファイアウォール)を繰り出したのかを理解したのか、ハルヒロの方向に駆けつけた後、すぐにハルヒロの足に刺さっている矢を抜き出して、ハルヒロに向けて癒し手(キュア)を繰り出した。

 

 俺はマナトがハルヒロの治療をしているのを確認した後、すぐに皆を連れてハルヒロとマナトより先に、皆より先に先陣を切って、駆け出した。でも、それがいけなかった。

 

 何故なら、ゴブリンから逃げ切ったのを確認して、足を止めたすぐ後にマナトは倒れ、目の前には背中から血を流すマナトがいたのだったのだから……。

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲

 

 

 

「……お、おいっ! マナトっ! マナトっ!!」

 

 あぁ、何故こうなってしまったのか? 

 そう思ったのも一瞬で意識を現実へと戻した。だって、こういう時は俺がどうにかしなきゃいけないから。

 

「お、おいっ! マナトっ! 早く癒し手(キュア)を使って回復しやがれっ!」

 

「……そっか」

 

 マナトは息も絶え絶えに、そして息をするのも辛そうになりながらもランタの言った言葉の意味を理解して、すぐにランタの言う通り、自分へと癒し手(キュア)を繰り出して自分の背中の傷を塞ごうとした。

 

 しかし──。

 

「……だ、だめ、だ。魔法、つか、ぇ……なぃ」

 

「それ以上しゃべるんじゃねぇっ! 楽にしろマナトっ! ……ら、楽にってどうすれば良いんだよっ! お、おいっ! エルっ! どうすりゃ良いっ! マナトの野郎血を流して倒れてるけどどうすりゃ良い!? これを抜けば良いのか!?」

 

「それは駄目だっ!!!」

 

 ランタが背中に刺さっている投げナイフに手を触れた瞬間、自分でも驚くような大きな声が出た。だが、今はそんなことを言っている場合じゃない。マナトの傷口の付近を自分の服を使ってキツく縛りつつ、皆へと指示を出す。この方法で血が流れるのが少なくなるのかは分からない。だけど、やって見ないと分からない。だから、やってみる。

 

「俺がマナトを担ぐ。そして今からオルタナへ帰る。だから早く皆も用意して、俺は先にいくからっ! マナトっ! お前も絶対に疲れたからって寝ようとするなよっ! 良いなっ!」

 

「……は、はっ。エル……お前も、そんな大きな声……出すん、だな……っ」

 

「今そんなこと言ってる場合じゃないからっ! マナトっ! 今すぐオルタナへ連れていって神官見つけて治療して貰うからその時まで耐えてくれっ!」

 

「そ、そうだマナトっ! 早くオルタナに連れてって神官呼んで助けてやるからその時まで持ちこたえろっ!」

 

 走った後にすぐに走るのはとても辛い。だけどそうも言ってられない。ここからオルタナへ走っても何分かかるのか分からない。だから、そんなことを考えるくらいなら走ることだけを考えろ。一分一秒がマナトの生死を分ける。だから走り続けろ。足が疲れても、呼吸をするのが辛くて吐きそうなほど辛くなっても。俺はただ、走ることを考えれば良い。

 

 皆がマナトを励ましているのが聞こえる。だけど、そんなことを気にしている暇はない。今は只、走ることだけを考えろ。早く早く。きっと大きな武器を持ってるモグゾーや体力がないシホルは着いてこれないだろう。きっとユメもそうだ。だけどそんなことを言っている暇はない。今は一刻を争うのだ。だけど……っ。

 

「ハルヒロっ! お前だけ俺と一緒に着いてきてマナトに声を呼び掛けろ! 他の皆はゆっくりで良いから確実にっ! オルタナへと帰ってこいっ! ランタ他の皆のこと頼むっ! 後で全員無事で会おうっ!」

 

 もう心残りなことはない。後は只、目の前を見て走れば良い。

 

 そう、走れば。

 

 だけどこの時にはきっともう気づいていたのだろう。

 

 マナトがどうなるかなんて。

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 どのくらい走っただろう。ただただ走って走って走り続けてどれくらい経ったのだろう? 

 

 後ろには息も絶え絶えになりながらも一生懸命にマナトに声をかけているハルヒロの声が聞こえる。そして、マナトの体温が走れば走るほど冷たくなっているのが感じる。それが俺をどうしようもなく焦らせていた。

 

 きっとこれは俺の体温が上がったに違いない。そう思いながらずっと走り続けた。ダラダラと流れてきた血は最初は温かったというのに、今はもう温かった血の気配はなく、冷えきった血がぽとぽとと薄く一滴、また一滴と。俺の服、そして腕を赤く照らす。

 

 俺の体温が熱くなればなるほど、マナトの体温をより一層冷たく感じさせ、どうにかなりそうなほどの衝動に駆られた。

 

 マナトの存在を感じさせればさせるほど、叫びたいようなもどかしさと末恐ろしい果ての見えないこのオルタナへの道のりに気が狂ってしまいそうだった。

 

 だから、オルタナへと早くつけるなら普通なら危険な道だと思って使わないであろう道でも飛んで、駆けていった。

 

 そして遂に、やっと──。

 

 オルタナの街が段々と見えてきた時にはもう舞い上がってしまいそうな程に安堵した。少し後ろではもう何度も何度もマナトに大きな声をかけて、喉がカラカラでフラフラとしているハルヒロが見えた。だが、オルタナの街が見えた瞬間に目が照らされていくのが見えたそれを一瞬見たと同時に俺はハルヒロを置いて、オルタナの街へとせわしなく駆け出した。ただただマナトを助けたかった。マナトが一命を取り留めて安心したかった。

 

 ここまで来たら脅威になる怪物は来ない。それを理解したからこそハルヒロを安心して置いていって、早くマナトをオルタナの街に連れて行き、オルタナの街にいるであろう神官に見せて、一緒に着いてきて一生懸命マナトに声を駆け続けたハルヒロを──。置いてきてしまったランタ、ユメ、モグゾー、シホルに大丈夫だったと安心させたかった。

 

 なのに──。

 

 なのに神官にすがるように懇願して、マナトを治してもらうようにお願いして、どうにかマナトに癒し手(キュア)を使ってくれるところまで漕ぎ着けたのにその時にはもう──。

 

 マナトにはもう癒し手(キュア)を使っても意味が無かったのだ──。

 

 そう。意味が無かったのだ。

 

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