灰と幻想のデジャブガル 作:なにがし
ダムロー旧市街地に向かう一時間少々の間という長い距離の道中、ランタ達とは会話は勿論あるのだが何処かぎこちない雰囲気であり、皆、メリイさんのことをちらちらと見ていることから皆が距離感を計りかねているようであることが分かった。
「それでメリイさん。メリイさんはどのくらいまで、神官として僕たちの仲間として居てくれるの?」
ランタやハルヒロから色々とメリイさんの情報や噂を教えて貰っていたが、ランタ達からいつまで俺達の仲間として支援をしてくれるのかは教えて貰ってなかったので、早速メリイさんに教えて貰う兼接触を試みることにした。
「さぁ? そんなこと言われても私は知らないんだけど。まぁ、あなたたちが私のことを嫌だと思って、解雇するまでじゃないの?」
「じゃあ、ずっと居てくれるってことだね?」
つまり、此方がメリイさんのことを解雇しなければずっと仲間として一緒に居てくれるということだ。なら、安心じゃないか。メリイさんには恩があるし、それにそう易々と何処にも所属していない神官なんて見つけることは出来ないし、メリイさんを見つけてきたハルヒロ達には感謝せねば。
「は? あなた馬鹿?」
「いや、だって此方が解雇しなければずっと居てくれるんでしょ? なら、安心でしょ?」
「あなた馬鹿なのね……」
「そうかもね。俺は器用な人間じゃないし」
「そういう意味で言ったんじゃないけど」
「分かってるよ。ただ、言っただけ」
それからもたまにメリイさんに話しかけたり質問したりしたが、どうやらメリイさんは業務の話は此方へ返答を返すが、業務とは関係ない私事についての話には返答を返さないというか、別に関係ないでしょ? と一蹴することが分かった。まぁ、まだ信頼していない人に私事を話さないのには納得が出来るので別に気にしたりはしなかった。いや、やっぱり少し気にしてる。まぁ問題はないけどね。
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「じゃあ早速始めようか?」
そう格好つける様な言葉を使って、ダムローに着いてすぐ見つけたゴブリンを今まで通りな感じで戦闘を始めることを提案し、皆とメリイさんと一緒にゴブリン三匹との戦闘を始めたのだが。
「おわっ! お、おいっ!」
「くっ!」
どうしたことかいつもの様に戦闘はいかなく、よくよく見なくても皆が冷静を欠いて行動していることが分かる。皆が戸惑って行動しているのを見ていると此方も冷静さを欠いてしまいそうだ。
作戦会議の時のメリイさんの態度に皆が苛立ったことが影響したのか? それともマナトのフォローが無いなかゴブリン三匹と戦闘するのは厳しいのか? いやきっとどちらともだろう。
これはきっとあれが原因だね。
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それは作戦会議の時──。
『じゃあハルヒロ、ゴブリン三匹いるけどどうしよっか? 意見を聞かせて?』
ハルヒロがこれからこのメンバーのサブかリーダーとして、皆を統率することになることを予想(予定)し、その為に今からハルヒロの持ち会わせている思考力などの能力を鍛える為にハルヒロに意見を聞かせて貰うことに
した。
『いや、エル。どうして俺に聞くんだ?』
まぁこれはマナトが居た時にはハルヒロに無闇に意見を聞くことは悪いと思い、気を使って聞かなかったから不思議に思うのも無理はないと思い、ハルヒロにしっかり、自分の考えを伝えることにした。
『ハルヒロは盗賊だし、いち早く敵を見つけることが多いと思うんだ。その時に上手くその状況を口頭で伝える様にする為にこういう時に鍛えといた方が良いと思ったのが一つと、もしハルヒロが一人偵察して敵を見つけて戻ってきた時に、ハルヒロもまた敵に見つかって此方へと戻ってくる場合があるかもしれないでしょ? そういう緊急の時には敵の数や武器とか色々と探ってきたハルヒロが俺達に指示しないといけない時がきっと来ると思うんだ。だからその時の為の練習兼実習。キツイと思うし、何で俺がこんな目にと思う気持ちも分かるけどこれからもう後悔しない為にはハルヒロの皆を引き連れて統率していくという力が必要だ。だから、俺もフォロー意見は言っていくから協力してくれ。それに……いつ俺が死んでも可笑しくないからね』
今、ハルヒロに言った言葉は事実で、本心で、ハルヒロだけじゃなく、皆にも向けて言った言葉でもある。
『エル……』
これには流石に皆もマナトのことを再び強く思い出してしまったからか空気が重くなっている。だけど、これは酷な事だと思うけど、少しずつでも良いからしないといけないと思う。
『ぁ、っ……』
そしてまたメリイさんもまた、皆は気づいていないが、俺が『いつ死んでも可笑しくない』と言った時、何か思ったのか薄く口を開いたと思ったらすぐに悲壮げに唇を閉じてしまった。そしてこのメリイさんの場面を見たことでメリイさんにも人を思いやる感情を持ち会わせているであろうということが少しだけだが理解することが出来た。
『さぁ、暗くなってないで前を向こう。これには深い意味はない。過去を忘れろと言う言葉でもない。ただ、目の前を真っ直ぐに見て……少しずつで良いからゆっくり道を踏み外さずにしっかりと歩いて行こうって意味だ。マナトに、マナトの努力が無駄じゃなかったってこと見せてやろうぜ?』
『そうだな、そうだよな。分かった、俺やるよ。やってやるよ。マナトに、マナトがやってきたことは無駄じゃなかったって見せてやらないとな』
『へっ、そんなことわーってるんだよ』
『ユメもマナト君に頑張ってる姿、見て貰わないとな~』
『僕もマナト君にしっかりしている姿見せて、安心させたいな』
『あ、あたしもマナト君がしてきたことがやって良かったって思って貰える様に頑張る』
どうやら皆も思うことがあったのか、俺の言葉が心に響いてくれたようだ。よし、この調子で頑張ろう。
そう思ったのも束の間、ハルヒロが指示を始めたその直後にメリイさんと俺たちとの一つの衝突が起きる。
◆
『じゃあまず三匹いる内の槍を持ってる槍ゴブにユメとシホルとエルが攻撃を放って、その後にシホルとモグゾーとユメが槍ゴブをそのまま攻撃。残りの二匹の長剣ゴブと短剣ゴブは俺とランタにエルにメリイが相手をして、もしもモグゾー達が槍ゴブを相手にするのがキツそうだったら俺かランタがヘルプに向かうってことで良いかな?』
ハルヒロの作戦情報を聞いていると素直に感心した。これはバランスが取れているし、単純に理が叶ってると思える。これには皆賛成だろうと思ったら一つの中断を願う言葉が飛び交った。
『待って』
『え、なに? 駄目……だった? エルはどう? 悪かったかな?』
『いや、悪くないし、理に叶ってたと思うよ。だけど、メリイさんにも何か意見があるのかもしれないと思うし、此処は素直に聞いてみようよ? 別に意見が全て反対意見って訳じゃないんだしね』
『そ、そうだよな。それで何処か駄目なところあったかな?』
『えぇ、合ったわ。何で私が前に出ないと行けないの? 私は神官なんだし、なんで危険なところに足を突っ込まないといけないの?』
確かにそうかもなぁ~。神官は前衛で積極的に戦う職じゃないし、最もモンスターから狙われやすい人物だからメリイさんの言うことにも一理ある。これはあれだろうね。マナトがそうする様な人だったから、自然とハルヒロも俺もこうするのが最善だと思ってしまったのかもね。
一人エルが心の中で納得する中、メリイの言葉にカチンと来たのかランタがオドオドしながらメリイに物申した。
『お、おい……おまえ』
『おまえ?』
『い、いや、きみ? いや俺さまが君とかねえだろ? おい、メリイ』
『さん』
『め、メリイ、さんよ。あのな? 神官で、おまえが──『メリイさん』
メリイさんが持ってる、その錫杖的なやつは飾りなのか? あ?』
何とか色々とありながらも自分が言いたいことをしっかりと言えたランタはやりきったぜ、って顔をしながらどうなんだよ? んんっ? 見たいな顔をメリイに向けている。そして当のメリイさんは──。
『そう。これは飾り』
胸を張って、それが悪い? という感じを醸し出しつつランタに返答を返したメリイ。
『て、てめえ……』
『てめえ?』
『いや、メリイ、さん、あなたね──『はいはい、言ったんランタも落ち着こうね?』
だけどよ、エルっ! コイツがっ!』
『コイツ?』
『はい、落ち着いて。取りあえずは槍ゴブにはハルヒロが言った通り、俺とユメとシホルが攻撃をし、それを攻撃の狼煙として、それからモグゾーとシホルとユメで槍ゴブをそのまま攻撃、それでその近くでシホルと一緒にメリイさんがいて、それで長剣ゴブにはハルヒロとランタが短剣ゴブに俺が、ってことで皆良いかな? メリイさんもそれで良い?』
『えぇ、それなら問題ないわ。だけど一つ気になることがあるわ。貴方と他二人が先制攻撃を槍ゴブリンにするって言ってるけど、どうやって貴方はするの? 他の二人は杖を持っていたり、弓を持っていてそれで攻撃をするということは分かるけど、貴方、そのダガーしか持ってないじゃない?』
確かにそうだ。なら、此処はメリイさんの質問に答えよう。答えたら答えたで、その返答が『あなた本当に馬鹿じゃないの?』って返ってきそうだけど……。
罵倒されるのを覚悟でその質問のアンサーを答えようとすると、その前にその質問に意気揚々と答えるものがいた。
それは──。
『へへっ、分かってねぇなぁ。こいつはなぁ、そこのシホルと同じ魔法使いだが、前衛でもダガーを持って戦う。オールラウンダーなんだよ。分かったか…………メリイさんよぉ』
ランタだ。
最後のところで少し間が合ったが、これはきっと最後にメリイよぉ、とか言ったら『メリイさんでしょ?』って言われるのが分かってたから何とか、渋々、しょうがなく言ってやった。みたいな感じなのだろう。意気揚々と言ったのに最後に『メリイさん、は?』みたいに口出しをされたら堪ったもんじゃないだろうしね。
そして、ランタに意気揚々と自分の疑問の答えを聞かされたメリイはと言うと、
『……はぁ、あなた、本当に馬鹿なのね? 魔法使いなのに金属を着けちゃいけないと言うのも知らないのね……』
呆れていた。
しかし、この返答やどう言う言葉を返してくるのかは努め予想積みだったので問題はない。呆れた顔をされるのは少し心に来るものがあるが。
『あはは、まぁそれも──』
『それも問題ないんだなぁ! おい! これがっ! エルはなぁ、何と! 金属を持ってるとエレメンタルとの相性が悪くなって、余り強い魔法を撃てなくなるなら、魔法を使う間だけは金属を離せば良いじゃないか、って考えんたんだよ。これは俺さまもすぐに気づいていれば魔法使いになったんだがよ……まぁっ! 最終的には暗黒騎士になるんだが、わはははははははっ!』
『うるさい。それにあなたもそんなこと考えても誰もやらなそうなことを平然とやるなんて、呆れるを通り越して本当に尊敬するわ』
『ふふんっ!』
『ありがとう。後、あなたじゃないよ? 俺の名前はエル。メリイさんもランタに名前呼びを強要したんだから俺のことも名前で呼ばないって言うのは流石にしないよね?』
これで断り辛くなったよね、メリイさん? あなたが不快に感じたことをあなたもするのかな? それはどうなんだろうね? という言葉を暗に込めて、相手に伝える。ふふっ、どうだ。これが言葉の多元性による有用性だ。さぁさぁ、メリイさん。俺の名前を呼んでみろっ!
後、俺のことなのに自分のことの様に喜んでいるランタかわいい。
『そんなことより、さっさと攻撃しないの? しないならしないでさっさとして』
あらら、これは──。
『逃げたね』
『俺もそう思う』
『逃げやがったな』
『ユメもそう思うんよ~』
『僕も』
『あたしも』
『あ、あなたたち、さっさとどっちかにしてくれないかしら? それに私は逃げてないから』
あらあら、怒らせってしまったか、もしかして俺の意味が伝わらなかったかな? 残念。
『あはは、そうだね。じゃあ始めよっか』
『早くしなさいよ……エル』
おぉっ! これはっ!
『デレたね』
『デレてたな』
『へっ、デレやがって』
『デレデレやんか~』
『そうだね。デレデレかもしれないね』
『あ、あたしもやろうと思えばデラレるんだから……』
『あ、あなたたちいい加減にしなさいよ?』
ピキピキと顔から音が鳴りそうなほど、こめかみに力が入っているメリイを見た後、皆を一瞥して戦闘に入った。
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あれっ? これだけ思い返すと何も変なところ無かったことになるよね? なのに、何で皆こんな手間取ってる様に感じるんだろう?
あぁ、あれか!? マナトがいた時とのギャップの違い、そして三日間休んだことによって生じたギャップの差、所謂ズレ。
そしてメリイさんのデレによる気の緩み。
これが原因だったんだっ!
まぁ、結局は他にも理由があるんだけど、さぁ、取りあえず目の前の短ゴブを倒して、その後に皆の支援をして、色々な意味で傷ついている皆のことをフォローしますか。