灰と幻想のデジャブガル   作:なにがし

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シェリーの酒場

 メリイとはあの日、俺たちの目標を告げた日から距離が近くなっても避けられる様なことが無くなってきて、普通の関係になれた様に思う。だって、今までなら食事に誘っても断れただろうが、何日も一緒にダムローへ通っている内に一緒に食事をしないか誘ってみると少し考えた後に頷いてくれる様になったのだから。まぁ他にも俺たちがダムローでゴブリン狩りをしているからかいつの間にかシェリーの酒場に行くと俺たちのことを知らないという人はおらず、何故かゴブリンスレイヤーというアダ名で呼ばれる様にもなっていたが……。

 

「けっ、あいつら俺さまのことを嘗めやがって、ゴブリンにもモテない様な非モテ野郎がっ!」

 

 ドカンっ! とジョッキをテーブルに勢い良く叩き落としながら、イライラしているのか顔をしかめているランタ。

 

 いつもランタはジョッキを勢い良く机に叩き落としている様に感じるのは気のせいだろうか? 

 

「そういうランタはどうなんだよ?」

 

「はぁっ!? モテるに決まってるだろうが、馬鹿かハルヒロっ! この中で誰と付き合うか聞かれたらそりゃ真っ先に俺さまの名前が出るだろうがっ! まぁ、エルは分からねぇが……」

 

「ユメはランタとなんて絶対付き合わへんよ~、だ」

 

 そんなことはないとあっかんべーをしてランタに伝えるユメ。

 

「あたしもゼッッッタイに付き合わない」

 

 凄い嫌な顔──ランタのしかめっ面とは比べものにならないぐらいに顔をしかめながら否定するシホル。

 

「私も」

 

 そして二人の意見に言葉少なめに同意するメリイ。見事にランタは三振だ。

 

「おいおいおいっ! 照れてんじゃねぇよ! それとシホルっ! マジなトーンで溜めて言うんじゃねぇよっ! 傷つくだろうがっ!」

 

「ふふん、残念やね~、ランタ?」

 

「はっ、戦闘力5のゴミが……っ」

 

 体のある部分を見て、ユメを嘲笑うランタ。

 

 そんなにユメに揶揄られたのが嫌なのだろうか? うん、ランタなら嫌だろうな。

 

「あっ、ランタ絶対今、ユメの胸を見て言ったっ! ランタの変態っ!」

 

「はぁっ! 見てねぇしっ! これだから戦闘力5のゴミはっ!」

 

 こんな風景をお酒をゆっくりと飲みながら、俯瞰して眺めるのがエルは楽しみだったりする。

 

 そして、静かにランタたちのやり取りを見ているメリイを見ると、ハルヒロたちからメリイのことで相談されたことを思い出す。

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 休暇の日、メリイとばったりお洒落で人が少なく静かな喫茶店で遭遇し、本談義で仲を深めた気がして、いつもより気分が良い感じで帰宅したのだが、其処で待っているのはエルの気分とは真反対に何か思い悩む様な表情をしたハルヒロたち一向だった。

 

 丁度気分が良かったし、何を皆で思い悩んでいるのか気になったエルはどうして皆思い詰めた顔をしているのか聞いてみた。それに宿舎の外で悩んでいたということは俺を待っていたということであると思うから。

 

『それで何があったの?』

 

『実は──』

 

 其処から話された内容は今でも印象的なこととして頭に残っている。とても濃密な一日の一部として。

 

 ハルヒロから話された内容はエルが用事があって外出した間、俺たちは何もすることがないから皆で何かしようということになって、皆でぶらぶらと色々と店を回っていたらしい。其処でどうやらメリイともっと仲良くするにはどうしたら良いかという話になったらしい。まぁハルヒロたちが言いたいことは理解出来る。きっとメリイにはなんていうかこれ以上は踏み込ませないという壁がある感じがするからね。

 

 それでそれを取り除いて仲良くするにはどうするかという話になり、以前メリイがシェリーの酒場でシノハラさんとお話ししているのを見たというランタがシノハラさんに聞こうぜと言って、その時に運良くシノハラさんを見かけてメリイの元仲間だった人からお話しを聞かせて貰ったということらしい。

 

 まぁハルヒロから聞かされた内容はとてもじゃないが気分が良くなる話では無かった。

 

 内容を簡単に纏めるなら、サイリン鉱山でデッドスポットというコボルトが異常進化した様な凶暴なモンスターに出くわし、それにパーティーを壊滅させられた。そしてそのパーティーを壊滅させた理由が自分にあると未だ自分を責め、苦しんでいる……と。

 

 話を全部聞き終わった俺はマナトを思い出した。だって、話の内容がまるでマナトと同じ様なものだったから。

 

 マナトもいつも一人で色々とこなし、無理していて、魔法力を全部使い果たしてしまい、自分の怪我を治せず、死んだ。

 メリイも前のパーティーでは隠れて色々と無理をしていて、魔法力を使い果たしてしまい、メリイは自分のパーティーを大事な時に助けられなかった。

 

 まるでもしかしたら俺らにもあったかもしれない。架空の話の様だった。

 

 だが、だからこそメリイがあんな風になるのも理解出来る。だって、怪我を負った人を神官なのに肝心な時治療することが出来ず、あまつさえ、その怪我を負った仲間がデッドスポットを相手したからメリイともう一人の仲間は逃げられることが出来たなんて……。

 

 さっきまで気分が良かったところに冷水をかけられて、メリイと仲良くなるには甘い道のり何て無いぞ? と突きさされた気分の様だ。

 

 だから、メリイは人にあんなに冷たい態度を取るのだろう。もうあんな苦しみには耐えられないから。

 

「それで、さ。エルはこの話を聞いてどうしようと思う? どう、これからメリイと接したら良いと思う?」

 

「普通に接してあげた方が良いと思うよ? 俺なら普通にして欲しいし、急に態度を変えるなんて無駄に心配させてしまうし、ね?」

 

 それに──勝手に同情するのは失礼だと思う。理解と共感は違うし、相手の気持ちが理解出来るなんて傲慢だから。

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 まぁ結局皆、いつも通りに出来ずに色々とあったけど、結果として仲良くなれたから良かったのかもしれない。

 

「そろそろ過去と終わりを着けないとね……」

 

 皆が騒がしく騒いでる中、静かにポツリと一人言を呟き、自分の気持ちを飲み込む様にお酒を口にした。

 

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