灰と幻想のデジャブガル   作:なにがし

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二巻までやっと行きました。三巻とか四巻に本当は突入したいところなんですが、やっぱりそんな簡単に行くものでもない。ふむ、難しい。


二巻
オーク襲来


 やっと前を向いて、進むことが出来る。そう思っていたし、きっと皆もそう思っていた。だけど、今の現状を見ると前を向いている様には残念ながら言えない様に思う。

 

 義勇兵になってからもずっとダムローに行ってゴブリンを相手にし、以前持ち合わせていたやる気や向上心が薄くなり、毎日が──日常生活が潤えば良いや。ぐらいに考え、皆日々を怠惰に過ごそうとしている様に思う。

 

 目標を見失っている。ハルヒロが前に言った言葉が再び俺たちに降りかかっているのだと思う。さて、どうしようか? 

 

 皆がダムローでの成果の分け前を話している横で一人考えていると、鐘の音が鳴る。

 

 鐘は午前六時から午後六時の間に鐘が七回鳴る。つまりは、二時間ごとに鐘が鳴るのだが、今の鐘は少しいつもとは違う様な気がしてならない。

 

 まず、今はまだ明るく、夕陽が出ていたりしないことから、この鐘は六時を伝える鐘ではないと思う。

 

 そして何より、いつも時刻を告げる鐘の音はかーん、かーん、かーんという様なゆったりとした鐘の音で鳴るのだが、今日はかんっ! かんっ! かんっ! かんっ! かんっ! と、鐘を叩く音が速く。いつもとは違う。まるで緊急事態を伝える様な鐘であった。

 

「オークだっ!」

 

「オークが来たぞっ!」

 

「皆、急いで逃げろっ!」

 

 何故、いつもと鐘の音が違うのか考えていたら、急に辺りが慌ただしくなり、俺たちは人混みに巻き込まれ、

 

「あわわっ!」

 

「わっ!」

 

「うおっ!」

 

 皆とはぐれてしまった。

 

 近くに一緒にいる人といえば、ハルヒロのみ。いや、人の波は恐ろしいものだ。

 シホルが人波によって落としてしまった帽子を拾い、ホコリを払う。

 運が良いことにシホルの帽子は人混みと少し離れた場所に落ちたのか誰かに踏まれて、ふにゃふにゃになっている様なことはなかった。

 

「さて、どうしよっか? ハルヒロ?」

 

「いや、そんなこと急に聞かれても……てか、オークって何なんだろうな?」

 

「あんたたち童貞かい?」

 

 何処かの店屋の中で人混みが無くなるのを待っていると、その店屋の主人であろうお婆さんがしゃがれた様な声で、しかし少し癖のある様な声で此方に急にそんな話を振ってきた。

 

「えぇ、そうですが……」

 

 だから、何だろう? それに、何故俺はそんなことをこのお婆さんに話さなければならないのだろう? 答えた後、俺は疑問に思った。

 

 そしてハルヒロ。

 

「どっ……!?」

 

 ハルヒロは急に変なことを聞かれて動揺したのか物凄く驚いていた。しかし、ハルヒロ。その反応はからかわれるぞ。まぁ気持ちは分からなくもないが。本当、何故このお婆さんにそんなことを話さなけりゃならんのだ。

 

「その反応、どうやらお前さん。さては知らない様だねぇ? 童貞って言うのは義勇兵になって、まだオークを狩ったことがない者を呼ぶ別称みたいなものでね、オークを狩ったことがない人は義勇兵では新米とか童貞とか呼ばれてるんだよ。まぁ小僧は分からないが、あんたは二つの意味で童貞みたいだがね」

 

 ハルヒロの方をニヤニヤと見ながら、ハルヒロのことを弄くるお婆さん。流石、お婆さん。こういうこと好きだね。としか言い様がない。だが。

 

「お婆さん、セクハラはいかんぜよですよ?」

 

 セクハラはいかんぜよなのですよ。えぇ。

 

「そんなケチなことを言うんじゃないよぉ、チェリーボーイのお仲間さん」

 

「いや──」

 

 ──バサッ! 

 

 お婆さんとお話しをしていると急に露天に掲げられていた風呂敷をめくって、此方を見てくる緑色の怪物。腰には剣が掲げられている。

 

「あっ、どうも」

 

 ──ペコっ

 

 此方を見て、何故か固まっているオークに挨拶をしてみる。すると、何故かオークもお辞儀して挨拶を返してきて、露天から出ていった。

 

「何だったんだ?」

 

「それは俺も聞きたい」

 

「これはあれだねぇ……私の美貌にときめいちゃったんだろうねぇ」

 

 いや、それは……。

 

 ──タッタッタッ! バサッ! 

 

「ほら、お婆さん。また来たよ? お婆さんの美貌でときめいさせちゃいなよ?」

 

「私の美貌は10秒過ぎると有効期限切れだよ」

 

 お婆さん……

 

「だから、やってしまいなっ! お前たち、私の美貌の力を見せてやりなっ!」

 

「いや、それだと。俺たちがお婆さんの美貌の虜になったみたいじゃん」

 

「良いツッコミだねぇ、小僧。童貞の癖にやるじゃないか。その調子でオークも倒すんだよ?」

 

「いやいやいやいや、無理だから俺たちには無理だから、なぁエル?」

 

「ん~、どうだろうね?」

 

 オークの体は緑色に肌をしていて、身長は俺たち人間よりもやや高く、横幅も大きい。これは人々が必死に逃げるのも頷ける。

 

「それよりさ、オークがいる前で話してて良いの?」

 

 ハルヒロの一声によって、ハッとしたオークが此方を急に攻撃してくる。

 

「ガシュっ!」

 

 だが、オークが攻撃するのは一番遠いお婆さんだ。流石お婆さん。オークは自分の美貌にやられたというだけある。

 お婆さんが杖でオークの攻撃を受け止めているのを少しの間、お婆さんすげぇと感心する。だが、それも一瞬。お婆さんがオークの剣を何とか耐えているのを見て、後ろから首を堂々と晒しているオークの首にダガーを突き刺す。

 

「流石だよ、お前さん。わたしゃ、あんたにときめいたよっ!」

 

「あはは、どうも」

 

 ときめいたと言われても反応に困っちゃう。困惑した顔をしながら、お婆さんの言葉を受けとる俺とキラキラした目で見てくるお婆さん。まさに変な図だ。

 

「じゃあ、お婆さんじゃあね? 外に行って様子見てこよっか? ハルヒロ」

 

「あ、あぁ」

 

 ハルヒロの方を向いて、外に向かおうと提案すると、ハルヒロは何か驚いた表情で此方を見ていた。解せぬ。

 

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