灰と幻想のデジャブガル   作:なにがし

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サイリン鉱山突入

 オークとお婆さんの抗争から少し経ち、オークはいつの間にか去っていった。そして今、俺たちはシェリーの酒場にいるのだが。

 

「くぅ~っ! ったくよぉ、レンジの奴、ヤバかったんだせっ! 俺さまは近くで見てたんだがよぉ、レンジの奴、銀髪の如何にも普通の奴とは違うオークと一騎討ちしてよぉ! 最初レンジがオークに左腕を剣で刺されてピンチでよぉ、片手だけで戦ってたんだがよぉ、最後の最後に右腕と怪我していた左腕の方を使って、オークの攻撃を受け止めた後、アイツ、オークに剣を刺して、後はぶん殴ってオークに勝ちやがったんだぜっ! ったくっ! あのピンチを切り札に変えて、勝つところには俺の魂が燃えたぜっ! あれは絶対俺もやってやるっ!」

 

 ランタが何かレンジの凄い男らしいところを見たのかいつもより騒がしく興奮していた。

 

「いや、まずはそんな状況にならない様にしろよ」

 

「はぁ!? 当たり前だろうがっ! 万が一の時の話をしてるんだろうがっ!」

 

「まぁ、ランタには無理やろうけどなぁ」

 

「はぁっ!? やってやるよっ! きっちり、凄惨になぁっ!」

 

「まぁまぁ落ち着いて。取りあえずこれからの話をしよっか?」

 

「これからって?」

 

 ハルヒロがどういうことなのかと少し不思議そうに此方に尋ねてくる。

 

「いや、あれだよ? これからもダムローでゴブリン狩りをするのは如何なものかな? と。今日みたいにオークが来たり、予想外のことが起きた時に対処出来る強さは持って起きたいし、弱くて後悔したくないからね」

 

「そう、だな。今日オークが来たとき、俺は何も出来なかったし……」

 

「俺もエルの意見に賛成だぜっ! ゴブリンにはもう飽き飽きだし、楽勝になってきたしな!」

 

「じゃあ、次は何処に行きたい? 皆?」

 

 ハルヒロたちに何処か行きたい場所がないか尋ねると、ハルヒロたちはウンウン悩みながら良い場所がないか探す。だが、良い場所は見つからない様だ。

 

「メリイは何処か行きたい場所ある?」

 

「サイリン鉱山」

 

 メリイに聞くと無表情な表情で淡々とサイリン鉱山の名を告げる。それが、メリイが如何にサイリン鉱山のことを強く思っているのか感じさせる様で自然と気を引き締めていた。

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 翌日、サイリン鉱山へと向かった。

 

 メリイの話によると、サイリン鉱山は見た目はただの山で、人間の最大の敵不死の王(ノーライフキング)率いる諸国連合によって、人間国──アラバキア王国が駆逐されてから、グリムガルの近くには数々のモンスターが住み着く様になった。そして、その内の一つがサイリン鉱山。勿論、ダムローも同じ要因である。

 

 サイリン鉱山はコボルトの棲みかで、一層にはあぶれ者で他のコボルトと比べると極めて弱い下級の(レッサー)コボルト。二層からは通常のコボルト。三層からは通常のコボルトの他に通常の上位種のエルダーコボルトがおり、エルダーコボルトは通常のコボルトを何匹か引き連れているらしい。

 

 それと、コボルトの社会にも人間社会の様に労働階級があるんだと。恐ろしいことで。

 だから、エルダーコボルトは親方、通常のコボルトは子分と言われるらしい。

 

 中に入ると、想像しているのと反して明るかった。メリイが言うには、ヒカリバナという金緑(エメラルド)色に発行する花がサイリン鉱山が明るい原因らしい。

 

 ランタはメリイの説明を聞いた後に突然。

 

「ペッペッ。食えたもんじゃねぇな」

 

 ヒカリバナを食べだした。多分、迷ったり、どうしても外に出られない時の為に確認としてこの花は食べられるのか調べる為に食べたのだと思うが、この花を食べるとは普通に想像出来なかった。

 

「何、やってんだよ?」

 

 ハルヒロもどうやらいきなりのランタの行動に戸惑っていた。いや、本当に何をやっているのか理解出来なくて、困惑していた。

 

「は? わかんねぇかな? 場の雰囲気が悪いから、このオレが和ませてやったんだろうが」

 

 ランタはそう言うが、本当はランタが食べられるか試していたのは見ていて分かる。

 

「和んでないし、場の雰囲気は普通だから。悪いとしてもランタが原因だろ?」

 

 だが、ハルヒロはランタの行動が理解出来ないらしく、何かイライラとしていた。まぁランタの突然の行動をなんとなく理解出来る俺の方が特殊か……。だが、ハルヒロは最近、ランタのことを本当の意味で嫌悪しつつある気がする。

 

「あ? 何でオレのせいなんだよ? 何でもかんでも人のせいにするんじゃねぇよ」

 

 ランタもランタでハルヒロの言葉に少しイラついたのかしっかりと反論をしている。だが、此処でこんな感じで二人の会話が続くと雰囲気が悪くなる。悪いが、此処は止めさせて貰おう。

 

「まぁまぁ、一旦落ち着いて。此処はもう敵の陣地なんだから」

 

「悪い……」

 

「わーってるっての、エル」

 

 はぁ。本当に二人の仲、どうするべきか? 

 

 ◆

 

「二層に降りるには井戸(・・)を使うしかない」

 

 あれから暫く歩いて、一つの縦穴を見つけた。メリイが言うにはこの縦穴のことを井戸(・・)と皆言っているらしく、この縦穴でしか俺たち人間がコボルトに比較的バレずに降りる方法がないんだとか。

 

 ハルヒロや皆はこの井戸(・・)を使って下に向かうかどうか決めかねているらしく。じっと井戸を見ている。俺もまた、降りようとは思ってるのだが、皆の姿を見て、若干決めかねている。

 しかし、そんな俺たちを他所に降りようとするのがランタ。こういう時、ランタは本当に頼りになる。

 

「ほら? さっさと行くぞ? 此処まで来て降りないのんて選択肢ないよな? あるわけねーよな? だから、さっさと来いよ、タコスケども」

 

 ランタは無鉄砲の様に何でもやってみようと言ってくるのに、たまに困る時はあるし、きっと皆にはランタは自分勝手でウザい奴として見えてるだろう。だけど、やっぱりランタがいるからこそ余り迷わずに決断出来ること、一歩踏み出せることが良くある。

 だから、俺にとってはランタの様な一握りの様な人材は有り難い。まるでさっさと指示を出せ、行動しろ。と言ってきている様で。

 

 それに、何をしようか悩んでいると、思考が鈍って通常の選択が出来ないからね。

 まぁ……場の雰囲気を乱される様で皆からしたら嫌なのかもしれないね。もうちょっと気合いを入れる時間をくれって。

 

 

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