灰と幻想のデジャブガル 作:なにがし
この状況への心境は何て表すのだろう? エルはデッドスポットと相対しながら今の心の心境をどう形容するかを考える。
一人でいるということに物寂しさは感じるんだけど、それ以上に落ち着く感じもあるんだよね。
デッドスポットとそろそろ此方へと近づいてくるであろうコボルトの団体様を眺めながらそんなことを思う。
思えばマナトと二人で居た時もこういう感覚だったかな。二人で静かにお酒を飲んだり、まったりとした時間を過ごしながら話したり、心地よかったよな。あの時間。
これから俺たちはどうして行けば良いか? とか、ままならない人生だよな? とか話したり、馬鹿みたいなことも話したりもした。だからこそ、マナトが俺の背中の中で死んだのには堪えたな。
マナトは死んだというのに優しい微笑みだったから″あぁ、死ねて良かったなマナト……″とも思ったりもした。勿論、俺はマナトが死んだことはとても悲しくてどうしようも無かったけど、マナトは肩の荷が降りた、楽に成れたみたいな感じで幸せそうだったから。案外メリイがマナトは死んでいると言った時、安心したりもした。
マナトは此処ではない何処かを見ている様な感じで、余り本当の意味で何かをしている様な感じでは無かったから。
ただなんとなく日々を生きているという感じだったから。
って、俺はなんで今こんなことを考えているんだろう? メリイが三人の最期を看取ったから? 俺が今、窮地に立たされているから?
まぁ結局そんなことは何の役にも立たないことだし、この答えは何時か考えることにしよう。
──ウォォォォォォォン!
無駄な思考を中断したエルは叫んで此方へと攻撃をしかけてくるデッドスポットの攻撃をかわす。
さっきまでの洗礼された感覚が戻ってくるのを感じる。何処に攻撃してくるか、どうデッドスポットは動くのか手に取る様に分かる。だけど、それでも傷は負っていく。
デッドスポットの攻撃の威力が高いから色々なものが破壊されていって、その破片とかが俺へと降りかかるのだ。だけど、俺も防戦一方では味気ないし、ただ避けるだけ避けて死ぬみたいなことは嫌だ。
「もう此処には誰もいないから良いよな?」
ダガーを持っていない左手から何かがこの場へと顕現される。それは──。
「
魔法ギルドでは習えない。エル特製のオリジナル魔法。名前の通り、
「──行け」
その言葉と共に左手の手のひらの空中を浮かんでいた丸い炎の球体は形を変えながら速い速度でデッドスポットや近くまで近づいてきているコボルトたちを襲いかかる。
″瞬間″
──グウォォォォォォォッ!!
辺りは無残な姿へと変貌する。
既に辺りは阿鼻叫喚。直撃した全ての生きとし生けるもの悲鳴を上げ、身体を燃やす。
身体が燃えたあるもの悲鳴を上げながら息絶え。またあるものは身体を地面へ転がし火を消そうと奮闘する。
──そしてデッドスポットは後者だった。
近くにいるコボルトたちには目をくれず、自分の左半身まるごと直撃して未だ尚燃え盛る炎を何とか消そうとデッドスポットは自分の身体をゴロゴロと転がし自分に付いた炎を消そうと奮闘する。だが、デッドスポットのこの行動によって加勢に来たコボルト、エルダーコボルトたちは見るも無残にデッドスポットの何メートルもある大きな身体の下敷きになり、ぐしゃぐしゃで血腥い臭いが辺りに漂う。
「あぁ~、くそ……これでも駄目か。ってか、今までとは比べ物にならない火力が出たな」
エルは自分が繰り出した魔法の威力に驚きながらも地面へと倒れる。
「あぁあぁ~。身体がもう思う通りに動かないな。これでも頑張って戻って来ないといけないと言うんだから、皆は鬼畜だよな~」
身体を起き上がろうと手を使って何とか踏ん張って立とうと試みるが身体に上手く力が入らなくて何度も起き上がろうとして身体が滑る様に倒れる。
「くそ、時間もないって言うのに……まぁ唯一デッドスポットが暴れているからコボルトたちが混乱して此方へ攻撃して来ないのが唯一の救いなんだけど」
バランス感覚が上手く取れない身体の中何とか立ちながらダガーを握る。しかし、その力は弱々しい。
「魔法の過度な使用で身体が壊れたのか。それとも血を流し過ぎたのが今になって身体へと降りかかったのか」
漸く自分に付いた炎を消し終わったデッドスポットが此方を睨み付けて来る。しかし、デッドスポットもまた明らかに決死の表情で、左腕は丸焦げ。最早使いものにならないのではないだろうか?
涎を垂らしながら此方へと今までより速い速度で怒りのまま迫って来るデッドスポットに此方もまた無理矢理に身体を動かして避ける。
今、身体を動かすのを辞めたらそのまま倒れてしまう。このまま何とか身体を動かし続けないと。
必死に走りながらデッドスポットの攻撃を避けるエル。デッドスポットもダメージを負っているからか無茶苦茶な動きで恐ろしく獣らしい身体の使い方をしている。
デッドスポットに踏み潰されるのを恐れたのかコボルトたちの大半は既にこの場から逃げ果せており、またこの場に残っているコボルトもデッドスポットの無茶苦茶な動きに付いていけないのかずっと佇んでいるのみ。
実質エルとデッドスポットだけの戦闘である。
──だが
「ぐっ、あぁ、くそ……っ!」
それだけで上手く事が運ぶ訳ではなし、エルは身体が上手い様に曲がらなく、地面へと転げてしまう。
──ガヴォォォンッ!
此方へと嫌らしい笑みをしながら迫ってくる様に見えるデッドスポット。それをただ見ることしか出来ない自分。それが酷く忌々しい。
「終わったな……っ」
目を瞑って自分を落ち着かせ、再び目を開けて自分の現実を受け入れる。
此方へと物凄い勢いで飛んでくるデッドスポット。動きは左腕を庇うかの様に右側に重心を置いた感じだが、それでも包丁剣を持っているというのだから、いやはや恐れいる。
「これで終わりかな?」
走馬灯というものはどうやら自分にはやって来ないらしい。自分が死を受け入れているからだろうか?
「良い最期かな?」
「まだ最後じゃねぇよ、馬鹿やろう!」
「──ネムン・ダーシュ!」
「エル!」
……どうやら助けに来てくれたらしい。だけど。
「お前たちにデッドスポット任せても大丈夫か?」
「はっ、任せやがれ! あんなボロボロな奴には負けねぇ! てか、この状況お前がやったのか!?」
辺りの血腥いこの悲惨な状況に驚いているのだろうみんなの言葉を代弁するかの様に此方へと問いてくるランタ。
「コボルトについてはほぼデッドスポットが自分で殺したんけどね、あれは何ていうか凄かったね……」
デッドスポットについては俺だけど別に言わなくても良いだろう。
「どうも~!」
シホルの魔法──
そしてそのモグゾーの後ろからハルヒロが現れて、デッドスポットの後ろに回って切り裂いたと思ったら、バタンとデッドスポットが倒れた。
「ハルヒロは凄いね」
あんな強敵を一撃で倒すとは……ハルヒロが言う
「ちっ! 俺がトドメを刺してやろうと思っていたのに、ハルヒロのやろうっ!」
「うるさいし邪魔。光りよ、ルミアリスの加護の下に
「あぁ~……無理、かな? もう疲れ過ぎて……」
どうやら俺の人生は運が良いことにまだ続くらしい。取りあえず疲れた。後、自分で動けないとか辛い。
……後でみんなに怒られるのかな? それなら嫌だな。面倒だから……