灰と幻想のデジャブガル   作:なにがし

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これから

 モグゾーはクズオカに連れていかれて、ブリちゃんには義勇兵団事務所から追い出されて、と色々なことがこの短時間で起こってしまったからなのか、自分の周囲にいる人たちから漂う。憂鬱というか、重苦しい空気は変わらないままであった。だが、"あぁ、向かってる途中の静かな空気は好きだったけど、こんな重苦しいような静けさは苦手だな"と実感することができた。

 

(これも一つの経験だな)

 

「あの、これから、どうしましょう?」

 

 不安そうな声で質問してきたのはやはりシホルという女性であった。

 

(こう何度もおどおどされると保護欲というものを刺激されるような感じがしてしまうな)

 

 一緒に事務所から出たハルヒロ、ランタ、ユメはこれからどういう行動を取ったらいいのか計りかねているのか答えられないようであった。

 

「分からない。あの、エルはこれからどうしたらいいかとかって考えてたりする?」

 

「どうして?」

 

 何故自分に質問してきたのか疑問に思い、質問してみる。どうやらシホル達もこちらの会話に注目しているようだった。

 

「いや、エルは落ち着いているからさ、何かもうどうしようか決まってるのかなって……塔にいた時だってシホルの質問に冷静に答えてたし、義勇兵の時だって不安があったけど、エルの質問のお陰で一歩踏みだす勇気を貰ったというか……」

 

「勿論僕だってハルヒロ達のように戸惑っていたさ、だけどこんな時こそ冷静に行動しないといけないし、周りが戸惑っているのをみて冷静になれたんだよ。言い方は悪いかもしれないけど、ハルヒロも周りが戸惑ってるのをみて、少し落ち着きを取り戻したりしなかった?」

 

「確かに。他の人達が戸惑っていたのをみて、少し冷静になれたかも……」

 

「でしょ? それに女性が怖がっているのに僕達まで怖がってたりしてたら余計に不安にさせちゃうかもしれないでしょ?」

 

「あっ……た、確かに。ごめん」

 

 ハルヒロはエルの言葉に思うことがあったのか謝ってきた。何故かハルヒロに謝罪をされたと思ったエルは"もしかして、やらかしちゃった? "と不安に為らざるを得なかった。

 

「なんだなんだぁ! エル! カッコつけやがって! まぁ、俺も超冷静だったけどな! 冷静すぎてやばがったけどな!」

 

 ランタもエルの言葉にある意味では思うところがあったのか、自分も同じであるということを強調してくる。しかし、ハルヒロ一同(エル以外)のランタに向ける目は少し冷たい。

 

「いや、それは流石に無理があるでしょ?」

 

「ハッ! まぁ、そうだろうな。ハルヒロには俺様の凄さがわかるはずもねぇ!」

 

(また、ハルヒロとランタのコント? というか漫才みたいなやり取りが始まった)

 

 エルはこれからどうしたら良いのか分からないという絶望的な状況の中、ハルヒロとランタの言い争いをそんな目でみていたのだった。エルは案外呑気なのかもしれない。

 

(だけど、漫才が続くと話を戻せないから一度話を中断させよう)

 

 そう。このようなハルヒロとランタの漫才的やり取りは義勇兵団事務所に行く道中から既に始まっていたのだった。

 

「まぁまぁ、落ち着いて。今大事なのはこれからどうするか……でしょ?」

 

「あぁ、ごめん。エル」

 

「ハッ、まぁ俺もそんなことは分かってけどな」

 

 ハルヒロとランタも悪いと思ったのか漫才を中断してくれた。

 

「ほぇ~、それにしても凄いなぁエル君は。頼りになるなぁ。なぁ、シホル?」

 

「う、うん。あ、あの、塔の時はありがとうございました」

 

「あぁ、大丈夫だよ、あれくらい。それで、皆はこれからどうするか決めた?」

 

「ハッ、それを今考えてたんだろうが」

 

「それってどうするか決まってないってことだろ? ランタ」

 

「ユメはこれからどうすればいいかさっぱりでなぁ、シホルはどうなん?」

 

「あ、あたしも全然」

 

 一同どうすればいいのか分かりかねているようであった。思考の停止が人生の下落への一歩だと考えているエルにとっては゛少しハルヒロ達は危ういのかもしれない゛と思わざるを得なかった。

 

「まぁ、急なことだし、しょうがないかもね」

 

 しかし、エルはシホル達の為にフォローするような言葉をかけるのだった。

 

「そうだ! しょうがないことなんだ! 分かったか! ハルヒロ!」

 

「いや、ランタが言うなよ」

 

「あぁ!? じゃあ、ハルヒロはこれからどうするか決めたのかよ!?」

 

 最初の重苦しいような空気はどこへやら。今はもう、再び漫才を始めている。だが、これは近くにいると想像以上に五月蝿いやり取りであることに気づいた。

 

「ランタの相手をしてると、疲れてくるよ」

 

「そんなこと堂々と言うんじゃねぇよ! 悲しくなるだろうが!」

 

 どうやらハルヒロもランタとの漫才は懲り懲りらしい。しかし、ランタ゛悲しくなるだろ! ゛とか意外と可愛らしいことを言うんだな。

 

「ハル君の言う通りだと思うけどなぁ。なぁシホル?」

 

「う、うん」

 

 こちらはシホルがユメとの距離を計りかねているのか少しおどおどしている。しかし、ユメのほんわりとした話し方は周りを落ちつかせる空気がある。

 

「まぁ、皆落ち着いて。ハルヒロはどう? これからどうすればいいか考えた?」

 

「あ、あぁ……取りあえずはあのモグゾーを連れていったクズオカっていう人みたいに他にも義勇兵がいるだろうから、義勇兵の人に話を聞くとか? どうかな?」

 

 段々と声が小さくなっていったがそれはきっと自信のなさの表れだろう。しかし、それも一つの意見で自分と似た答えでもあった。

 

「そうだね。僕も同じ意見だよ。まぁ、僕は義勇兵じゃなくて、商売をしている人から情報を集めようかなと思ってるけど。皆はどうかな?」

 

「じゃー頼んだぞ! ハルヒロ! エル!」

 

「ユメもいいよぉ。シホルは?」

 

「わ、私も、それでいいです」

 

 ランタ達もハルヒロとエルの意見に異論はないらしい。後は、皆で行くかを決めるだけであった。

 

「皆一緒に行く? それとも僕とハルヒロが情報集めてくるのを待ってる? 此処にクズオカみたいな人が沢山いるなら何かあった時にランタ一人じゃ、シホルとユメを守れないかもしれないだろうし」

 

「あー、確かに」

 

「じゃー、ハルヒロおいてけ! エル! 後は任した!」

 

 どうやらランタは自分で行く気はないのか、他人任せらしい。

 

「いや、流石に俺が此処にいたとしても変わらないだろ?」

 

「なんだよ、ハルヒロ。使えねぇなぁ」

 

 ランタは何もする気がないのに、酷い言い草である。これにはもう女性陣からの目は冷ややかである。尚、そのことにランタは気づいていない模様。

 

「じゃあ、ランタはどうなんだよ?」

 

「俺か? 俺超つぇーから! 舐めんじゃねぇぞ、ハルヒロ!」

 

「じゃあ、ランタ一人でもユメ達守れるよな?」

 

「あぁ! 守ってやんよぉ! 舐めんなよハルヒロ!」

 

(何かもう面倒だなぁ)

 

 この時にはもうエルは段々と面倒臭くなっていた。ランタとハルヒロ(強制)の漫才を一々止めるのに疲れてきたのである。

 

「いや、ユメなぁ、そんなことを言われたらランタだけ何て心配になるやんかぁ。だから、皆で行かへん? なぁ、シホル?」

 

「う、うん」

 

「じゃあ、皆で行こっか」

 

 エルはこの時やっと気づいた"あれ? 何で俺がこんな事やってるんだ? もしかしてこれからも俺がやらないといけない? 早く誰かに押し付けないと"と。

 

「おい! 俺様を置いていこうと無視するんじゃねぇ! 寂しいだろうが!」

 

 

皆様は灰と幻想のグリムガル。ご存知でしょうか?

  • アニメまたは原作小説なら観た。
  • アニメも原作も読んでいる。
  • 知らない。
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