灰と幻想のデジャブガル   作:なにがし

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【メシア】モグゾー

『捨てる神あれば拾う神あり』

 

 人生とはこれの繰り返しである。

 

 こういうのは結局は人の捉え方では変わる。しかし、今の自分たちの心境を表すならばこれであった。

 

 救世主。メシア。それこそが戦士゛モグゾー゛である。

 

 ランタが戦士になる予定を急遽変更したことにより、一時は途方に暮れていたがモグゾーという心強い、正に頼れる戦士が仲間に加わったことで殺伐とした空気は終息することができた。

 

 義勇兵でチームを作る時に必須とされている神官と戦士。その内の戦士がメンバーにいなかったのだ。それはもう途方もない苦労することは必至であったというところにモグゾーだ。マナトとエルは他のメンバー以上にモグゾーが仲間に加わったことを喜んだ。

 

 クズオカに有り金の全てを奪われたモグゾーもまた途方に暮れていた。ギルドに入ったのに剣を持っていなかったら意味を成さない。それが分かってたからこそモグゾーも途方に暮れていたのだ。

 

 その時に現れたマナト一同。マナトの一言によってメンバーに加わることができたモグゾーもまたマナト達に感謝していた。正にwin-winの関係である。

 

 剣もマナトやハルヒロが自分のお金から出してくれたのだ。

 

 それはもう感謝せざるを得ないだろう。(エルはダガーや串肉、シホルの髪留めを買ったのでお金があまりないので払えませんでした。ハルヒロ達もそれがわかってたのでエルは払わないように言った。因みにランタは払いませんでした)

 

 戦士モグゾーを仲間に加えた一行はようやく狩りに出かけることができるのだ。

 

 そして、現在森の中を探索中である。談笑しながら歩いていた皆にシホルは核心をつく質問をする。

 

「あの……あたしたち、動物を、ころ──やっつけるの?」

 

 この言葉に皆は足を止めた。しかし、その中に一人だけ冷静な者がいた。エルである。エルは見習い義勇兵になった頃からそのことを理解していたし、動物を倒す決意をしていた。その上で10シルバーを貰ったのだから。

 

「まぁ、そうだね。冷静に言うならばこの世は既にそうだしね。僕達が食べた串肉だって誰かが動物を殺めたものだし。それにまだ俺たちは見習い義勇兵なんだし、これから少しずつ慣れればいいんじゃないかな?」

 

「確かにそうなんやけどなぁ、ユメは動物好きやし、ほんとは殺したりとかそんなしたくないねん。かわいいし、かわいそうやしなぁ」

 

「甘ぇーこと言ってんじゃねーよ。どっかのお嬢様か、てめーらは。どうせ生き物はみんなくたばって、スカルヘル様に抱かれることになるんだからな。エルが言ったようにオレらが生きるために殺されるやつがいたって、何の不思議もねーんだよ」

 

 エル、ユメ、ランタと三人の考えは人それぞれであった。しかし、エルはランタと同じと言われるのは少し語弊があると思った。

 

「まぁ、俺は俺らが生きる為に死ぬ奴がいたって普通だとは言ってないけどね」

 

「あぁ? だが結局は同じことだろ」

 

「まぁ、そうだけどランタの言い方だとわかりづらいというか他の人が本質を理解しにくい言い方だから……ね? 俺は見習い義勇兵になる時には既にそういう決意をしていたから冷静なだけだし。それに僕達は動物を倒さないと生きていけない職業になったんだしね」

 

「まぁ、エルの言う通りだ。わかったかてめーら」

 

 ランタはエルの説明に賛同して、ある意味ではいいとこ取りをするのだった。

 

「じゃあ、ユメたちが生きるために、ランタが殺されてもいいってことやなぁ」

 

 弓を構えて矢をつがえたユメは、ランタの方に弓を向けた。打つ用意は万端である。何がこんなにユメを突き動かすのかエルには検討もつかなかった。いや、あった。ランタのあの人をおちょくってるいると人によっては捉えるあの態度である。だが、ユメは優しい女の子なのにそんなことで怒るとはエルには到底思えなかった。

 

「ばっ! ば、ばば、ばばば、馬鹿なこと言ってんじゃねーぞ、このちっぱい女! オ、オレを殺したって何の足しにもなんねーだろ!? なんねーよ!? マジでなんねーから! てか、ならエルはどうなんだよ!? エルも俺と同じこと言ってただろ!? マジ! ほんとにやめてください!」

 

「少なくとも、ユメの気がすむねんやんかあ。ちっぱいとかゆわれたし。だから、エル君はこのことには関係あらへんよ」

 

(なるほど。ユメはランタにお胸のことについて揶揄されたから怒ってたのか。てか、ランタの言い方俺がランタのようにユメのお胸を小さいって言ったみたいじゃん。何かひどくね?)

 

 納得は言ったがエルはランタの言い方が自分もユメのお胸を揶揄したみたいな言い方をしているのに不服を感じた。実はハルヒロ達もエルと同様にランタがエルもユメのお胸を揶揄したみたいに聞こえるなと思っていたりした。

 

「お、おまっ、おまえが自分で言ったんだろ!? ちっぱいだって!」

 

 ランタとユメの言い争いをみながら、エルはランタは必ず一日の内に誰かと争うなぁ、と思うのだった。使う言葉を気をつければいいのに、とも思ったりする。

 

「自分ではゆっても、ひとにはゆわれたくないねんもん。とくに男の子にゆわれたらなあ、傷つくやんか」

 

「ご、ごめんなさいっ! あ、謝る、謝るから! 謝りますから! このとおり!」

 

「──―な! 悪かった! 許して! 頼む! ユメさんはちっぱいじゃないです! きょ、巨乳です! 爆乳! もはや奇乳レベルの!」

 

 ランタはそれはもう今まで生きた人生の中でもみたことのない華麗なジャンピング土下座をかました。シホルやハルヒロはランタのことを冷たい目でみていて、マナトやモグゾーは苦笑いをしていた。

 

 そして、エルはと言うと"いい経験をしたなぁ、こんな土下座を間近でみるなんて初めてだ。しかも、ジャンピング土下座。だけど、ランタ。それ誉めてるのかもしれないけど、それセクハラだよ。"と少し呑気であった。

 

 しかし、フォロー? に入るのをしっかりと忘れないエル。

 

「そうだぞ、ランタ。人には言われたくないことがあるんだぞ。ランタだって女性に背が低いとか言われたら傷つくだろ? それと同じだよ」

 

「なるほど、確かにな。……まぁ、そのなんだ、悪かったな、ユメ。てか、俺は背は低かねぇぞエル!」

 

「それでとりあえずなんだけどね、オルタナの近くにも、泥ゴブリンとかグールとか見習い義勇兵でも相手できよそうなやつがいるらしいよ」

 

 マナトは話題転換する目的も兼ねて獲物についての話をする。

 

「……それじゃあ、その、泥ポプリと、クールというのを、基本的に狙うことにしない?」

 

 シホルは意気込んでそう言ったがしかし、厳密には泥ゴブリンとグールである。それはきっと皆もわかってるだろうし、指摘したいだろう。だからこそ、ここでエルの光ったフォローが入る。

 

「そうだね。泥ゴブリンとグール狙っていこうか」

 

 シホルはここで自分が言い間違えをしたことに気づき羞恥心で少し顔が赤くなる。しかし、指摘してこなかったことにより、ダメージは薄い。

 

 シホルの提案に賛同した一同は再び歩き出すことが出来た。歩いている最中も会話は当然続く。ユメはランタに謝罪を貰ったもののランタに対する評価は低水準である。また、ちっぱいと言ったことも原因であろう。どうやら反省はあまりしていないらしい。

 

「──のぁ!? な、何だ!?」

 

 ランタが咄嗟にちっぱいって言ったことを謝ろうとしたその時、ランタは何者かに足を捕まれた。どうやら穴ねずみである。

 

「たしか、穴ねずみは群れで獲物を襲うはずやから、まだそのへんにいるかも」

 

 ユメのその言葉を聞いて、一同は武器を構える。穴ねずみは地面の中を潜って移動しているらしく一同攻めあぐねていた。魔法で地面から引き釣り出そうと考えたエルはエレメンタル文字を描きながら呪文を唱える。

 

「マリク・エム・パルク」

 

 エルは目の前にエレメンタル文字で呼びだした魔法の光弾(マジックミサイル)が出現する。手を下に下げることで魔法の光弾(マジックミサイル)を下に落ちるように操作する。

 

 ランタの近くの地面にいる穴ねずみに向かって魔法の光弾(マジックミサイル)を放つ。地面が抉れたことによりその反動で穴ねずみが地上に姿を現す。

 

「うぉっ! た、助かった。ナイスだエル!」

 

「だったら、頑張って穴ねずみを倒してくれ!」

 

「──そんぐらいわかってるっつの! うおおりゃ憎悪斬(ヘイトレッド)っ! ──俺の暗黒闘法が!? 当たらねぇだと…………っ!?」

 

 只の力量不足なのに大袈裟に驚くランタ。演技力がとても高いことで。

 

「マリク・エム・パルク」

 

 今度はシホルが魔法の光弾(マジックミサイル)を放とうとする。

 

「シホル落ち着いて、皆のいるところより少し離れたところの穴ねずみを狙って」

 

 目を瞑っていたシホルがそのまま魔法の光弾(マジックミサイル)を放とうとしたのでエルが助言をする。

 

「は、はい!」

 

 シホルが地面に放った魔法の光弾(マジックミサイル)は運よく穴ねずみに直撃し、穴ねずみは動かなくなった。

 

「ナイスだよ! シホル!」

 

 マナトは穴ねずみを相手しながらもシホルは褒める。その一方でハルヒロ達は穴ねずみに手こずっていて、冷静に戦えていなかった。

 

「えっ!? あっ、はい!」

 

「じゃあ、シホル。ハルヒロ達の加勢に行ってくるね。シホルの魔法凄かったよ」

 

 シホルも自分が穴ねずみを倒したことに驚いたようであった。シホルに負けてられないなと思ったエルもダガーを取り出し、ハルヒロ達の方に向かう。

 

「──あいだぁっ!」

 

 ハルヒロも負けていられないと思ったのか怪我を覚悟で倒そうとしたが途中で他の穴ねずみに加勢に入られ、右脛と左脛両方を噛まれた。エルはハルヒロの右脛を噛んでいる穴ねずみのうなじを力を込めて切る。変な感触がして、一瞬力を弱めるも倒すことができた。左脛はマナトがショートスタッフで追い払う。穴ねずみ達は不利な状況だと思ったのか去っていった。

 

「動いないで、光よ、ルミアリスの加護のもとに…………癒し手(キュア)

 

「すげー・・・さっきは助けてくれてありかどね、エルにマナト」

 

「ハルヒロが囮になってくれたおかげだよ」

 

「そうだね。そのおかげさまで一匹穴ねずみ倒せたし」

 

「ほんとは俺一人でなんとかするつもりだったんだけどさ・・・・・・」

 

「しょうがないよ。数があっちの方が多かったんだしさ」

 

「そうだよ、ハルヒロ。それに結果良ければすべてよしっていうし」

 

「それにしても俺何も出来なかったな。エルとシホルは魔法使いなのに穴ねずみ倒してるし」

 

ハルヒロは"魔法使いの二人が穴ねずみを倒したのに、前衛の自分が倒せないとは"と少し落ち込んだ。

 

「たまたま運が良かっただけだよ」

 

「くそーっ!エル!俺を抜け駆けして倒すとは・・・っ!シホルもだぞ!」

 

ランタはどうやら自分より先に倒したエルとシホルが羨ましいらしい。エルはそう捉えることにした。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「ごめんね。次はランタも倒せるよ」

 

「いや、抜け駆けも何もないだろ」

 

ハルヒロは冷静にランタにツッコミをいれる。漫才コンビも伊達じゃない。

 

「あっ!?ハルヒロてめーは少し黙れ!」

 

「取り敢えず今日は疲れたし、エルとシホルのおかげで穴ねずみを二匹倒したことだから今日はもう帰らないかな?」

 

マナトの提案に賛同する一同。穴ねずみはヨロズ商店で売ることができ、一匹3シルバーで計6シルバーを手に入れることができた。

七人で分けて分け前は一人85カパーであった。残りの5カパーは前に串肉を奢ってくれたエルの物となった。

皆様は灰と幻想のグリムガル。ご存知でしょうか?

  • アニメまたは原作小説なら観た。
  • アニメも原作も読んでいる。
  • 知らない。
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