血液由来の所長   作:サイトー

50 / 100
 神秘や叡智を観測した啓蒙系幼年期狩人がそれらを脳の瞳(インサイト)で見た場合、クトゥルフ神話技能(万能):100の成功率で理解するような雰囲気です。そして、会話パートでも心理学:100の理解力を持っています。それに対抗出来るのは、魂そのものを自由自在に偽れる化け物だけとなってます。
 所長の啓蒙による察しの良さはそんな雰囲気で書いてます。



啓蒙45:侵食固有結界UMA

 彼の軍師だった陳宮は、嘗て仕えた主君に神を見た。それも唯の神ではない。闘争を権能とする絶対なる軍神の威容。その為に、もはや無用と唾棄していた古い文明技術を甦らせた。雷気が溢れる闘いの神にして、武勇で戦場を捻じ伏せる絶対的な個人の兵力。

 五つの形態を持つ人工宝具、方天画戟。

 斬、刺、拳、薙、払―――そして、砲。

 軍師が考案した五形態と、飛将軍が編み出した最後の形態。

 

「―――軍神五兵(◆◆■■■◆■)ッ!」

 

 個人が持つ兵器として、桁外れの大量破壊兵器。解き放たれた今、多重変形する他形態全てが弾丸として装填され、大弓より殺戮の五矢が射出される。

 宝具の担い手――呂布の中に眠る膨大な雷気(オド)が、ローマの黒き城壁と暗い木々を焼き払う。

 

「撤退する―――!

 マシュと藤丸は何も考えるなッ!!」

 

 所長の叫び。全員が一斉に行動する。何故ならば轟音の後、樹人が登攀していた神祖の木々が、その城壁と共に粉砕された。外部より穿たれた逃げ道だけがカルデアの生き残る道。

 

「あたしが来たぞ! ローォォオオォオオマァァアアア―――ッ!!」

 

 対城砲撃が飛んで来たのは、森の遥か上空。女王が駆る戦車より大弓(ウェポン)を構える大男。そして、戦車の担い手が、耐えきれない圧倒的な憎悪を解き放っていた。威圧感で言うならば、神祖の城壁を破壊した宝具よりも重く、殺意を向けられた訳でもないカルデア側であろうとも、心臓を握り潰されたような息苦しさを錯覚させる。

 轟く雄叫びが、余りにも重々しい。声を聞いただけで、脳髄を掻き回したくなる生者の怨念。その憎悪が聞く者全員に伝播する。

 

「ハッハッハハハハ、反乱軍残党か!」

 

 同様に空飛ぶ戦車に乗る暗帝が、その戦車に向かって駆け昇る。雷気(オド)より具現される矢を軍神五兵(砲門形態)に装填し、呂布は同じ中華ガジェットを擬似的に宝具とした女を射殺さんと砲撃を開始。だが双頭の騎馬が引く戦車には電磁バリアが張られ、飛んで来た矢を全て逸らし、地面へと勢いそのままに墜落する。

 避けるまでもない。それ程の防御力。

 技巧の極み(ゴッドフォース)として放たれるのなら兎も角、戦車の雷気障壁は唯のAランク宝具に破れない。

 

「―――ネロ・クラウディウス……っ!?」

 

 同じ高度、重なる視線。呂布を乗せた戦車の主――女王ブーディカは、怨敵の名を叫んだ。

 忘れるものか、と決意が煮え滾る。憎たらしく、百度殺しても殺意が薄れない邪悪な暴君の成れの果て。彼女にとって今の暗帝は、故郷を玩具にしたローマの地方役人やローマ市民と同等の、死なすべき殺戮対象。殺したくて堪らない。その魂を貪り壊してくて、どうしようもなく思考が黒く澱んでしまう。

 

「おぉ、余に魂を捧げたシモン・マグスの作り上げた女奴隷英霊もどきの……確か、あぁーと、いや、その……―――ふむ、復讐鬼よ。

 すまんな、忘れた。貴様の名、何だったろうか?

 ローマに復讐して呆気なく死ぬ所を、余の宮廷魔術師が奴隷として拾い、ついこの間まで飼っていたのはマグスのソウルが記録に持っておるので分かるが……―――ははははは!」

 

 帝国の罪は全て皇帝の咎。地方役人の暴走であろうとも、ローマにとって善悪は関係ない。殺したと言う事実のみが世界に残り、けれども暗帝は全てを理解した上で切り捨てる。同時に、恨む事しか出来ない女を嘲笑う。暗帝が抱く憐憫の念は傲慢と愛玩に変わり、善悪亡き復讐を果たす為に人理(アラヤ)へ加担する愚か者でしかなかった。

 何故なら、人理では死後に英霊となる運命の憐れな存在。

 本来なら死んでいなければならない死人にして、この特異点でしか生きられない犠牲者。

 

「オマエェェエエ―――ッ……」

 

「余と言う半人半霊を生み出す為、死後に英霊となる生きた貴様は実験動物であり、その献身的な行為でローマ発展の礎となるもなぁ……ほら、実験は終わっておる。

 故にもはや、我らローマにとって貴様は―――名の要らぬ獣でしかなくてな!!」

 

 名を忘れている訳がない。シモン・マグスのソウルをサーヴァントの霊基にするべく貪った暗帝は、死後に英霊となる生きた女王(ニンゲン)をデミ・サーヴァント作成の実験動物として扱った記録が残っている。

 だが、全てが嘘ではなかった。

 暗帝は女王の事を正しく、憎悪に狂った名に意味がない獣だと侮蔑していた。

 そして、バーサーカーのサーヴァントである飛将軍呂布が自身の意志と共に戦場に狂っているように、ブーディカは裏切り者のローマ全てに憎悪し尽くしている。白い竜の狂気が月光となって照らさせる戦場だろうと、黒一色に染まった女王の憎しみは他の狂気に曇る余裕など皆無。

 

「ローォォォオマァァアアアアア―――ッッ!!」

 

 心全てが―――砕けた。女王の戦車を怨嗟が覆い、纏い砕く。

 

◆■◆■◆◆(是非もなし。)■◆■■■■◆■◆■(戦場で上がる憎悪は、)◆■■■■◆■◆■■■(命を噛み砕く牙とならん)ーー!」

 

 呂布はブーディカの殺意を否定しない。むしろ、良くぞ吼えたと称賛する。生きるも死ぬも、前のめりに戦士は死ぬべきだ。そこには、裏切りも忠義も挟まれない純粋な闘志のみが戦場を沸き出させる。

 正に戦火の沸点―――暗帝の狂気と、女王の憎悪が衝突する。

 超軍師陳宮(中華ガジェット)製の戦車より結晶の弾幕が撃ち放たれ、しかし飛将軍が操る人工宝具(中華ガジェット)の射撃攻撃が暗帝の機関砲撃を阻止した。

 

「流石なるや、復讐の女王よ。

 我が月下の狂乱でさえ、狂いし女の憎しみは乱れんか!」

 

「―――……」

 

 そして空中のドッグファイトに隠れ、中華の暗殺者が虚空より飛んでいた。狙いは無論のこと皇帝。その名はカリギュラ。だが近付くにつれて月明かりは強まり、気配遮断によって忍ばせている筈の殺意が暴れ出す。皇帝を殺したい、殺めたい、屍を作りたいと、狂気的殺意が蠢き出す。故に人の心を暴き照らす月光を背負うカリギュラは、全ての暗殺者にとって隠密行動さえも暴き出す天敵。

 ならば―――酒を呑もう。景気付けに、吐くまで呑もう。

 殺す前に酒気で自分の殺意を夢想に漂わせ、狂気からも無想させよ。

 大事なのは何も分からないよう、自らの意志を酔わせる事だ。狂気もなく人を殺せるのなら、人を静かに殺めるのに気を狂わせる必要もない。

 

〝―――なに、月明かりなど酒の肴ではないか”

 

 無音落下にして静寂交差。風を切る音もアサシン―――荊軻は殺し切り、皇帝を殺す筈だった短刀を突き立てる。瞬き程の間もなく、頸に刃が突き刺さり、そのまま掻き斬られる。

 その直前――月下にて、酒気で狂気を麻痺させた暗殺者を導き出した。

 輝き出した月明かりは視界を潰し、だが本質は心を動きを停止させる精神干渉の呪詛。

 

「くぅ―――ッ……!」

 

「――――ヌッ……!」

 

 カリギュラは月光の大剣を抜かず、セスタスが装備された拳で短刀を弾き逸した。無の境地に達した灰のパリィ技術には及ばないが、刃を徒手空拳で相手する技巧は皇帝特権による技能があってこそ。

 しかし、場所は空中。互いに姿勢が崩れ落ち、そのまま地面へと落下する。

 

〝ち。吐くほど呑んで、傍若無人の儘に落ち着いていた筈だが”

 

〝おお、狂気の月光さえも風流とはな。遠き東の義侠は、浪漫(ローマ)に満ち溢れておる”

 

 対峙する二人。どちらも酒気と狂気に酔いつつも、理性的に敵抹殺にのみ思考を働かせる。

 

「おい、皇帝。何で気が付けた?」

 

 間合いを計り、退路を把握。本音を言えば、殺すべき相手に背を向ける気はなくも、だがまだ死ねない。殺す隙と同時に逃げる隙間を見付ける為に、彼女は笑みを浮かべながら狂帝に問い掛けた。

 

「我が月光は余の瞳。気配の有無など関係なく、月下全てを感じるのみ」

 

「ああ、そうかい……ッ―――!?」

 

 懐に忍ばせていた暗具、煙玉を地面へと思いっ切り叩きつけた。月下が全てを丸裸にするならば、その光を遮れば良い。煙幕など彼女本来の武器ではないが、召喚された現地サーヴァントと共に、暗殺に必要となる道具は一通り揃えている。

 その時、斬撃がカリギュラに飛来する。

 空間断絶を起こす人智を超えた奥義の一つ、竜閃。

 だが大いなる月光の大剣によって彼は忍びの斬撃をしかと受け止め、しかし一瞬で荊軻には逃げられた。月下の視界から姿を煙幕が隠し、文字通り煙に巻かれたのだろう。

 

「ネェェェエロォォオオオオオ―――!!」

 

 ならば、叫ばずにはいられない。カリギュラは逃げ去るカルデアと反乱軍残党に向かって、疾走を開始する。まだ誰も狂い殺していないのだから。

 ―――ローマの狂戦士は笑い叫び、だが反乱軍の狂戦士も微笑みながら狂気をと轟かせた。

 荊軻と同時にスパルタクスも、ブーディカの戦車から飛び降りていたのだ。落下地点にいるのは所長のガトリング銃撃によって足を止め、一射一射全てを回転する双刃槍で弾き返す神祖の姿。

 

「―――圧政者よ!

 木端となりて、暴虐を懺悔せよ!!」

 

 刹那、神祖は跳んだ。ガトリングの射線から逃れ、皇帝特権(魔力放出)で瞬間上昇。空中から落ちる巨漢に最初から気が付いており、ならば敵が身動きが出来ない虚空で頸を一閃するのが仕留め易い。しかし、スパルタクスにとってそれこそ好機。自分から殺すに行くよりも、敵を迎え撃つ方が戦法に合う。

 双刃槍と両刃剣がぶつかり合い―――神祖の鋭い蹴りが、巨漢の頸に命中。

 サーヴァントであろうと首があっさり撥ね飛び、頑丈な者でも骨が砕ける程の威力。霊核は確実に破壊される一撃であった。

 

「おぉ、強靭(ローマ)なる五体なり!」

 

「ぬふぅ……ッッ――!!!」

 

 だが、死なずして――バーサーカーのサーヴァント。

 彼は首に喰い込ませ、顎で足を受け止めた。スパルタクスに肉弾戦を挑む事が愚の骨頂。殴れば殴る程、蹴れば蹴る程、急所を抉ろうとも必ず生き延び、絶対に戦いを諦めず、叛逆を解き放つ力を溜める。

 しかし、それを凌駕してこそ―――ランサーのサーヴァント。

 もう片方の足で反対方向から首を蹴り当て、そのまま両脚で締め付け、皇帝特権(魔力放出)で身体を空中で急回転させた。そして、スパルタクスの首から足が解放され、その彼を蹴り落とし、追撃に双刃槍を回転させて投げ放った。

 

「ぬぐぅ……ぉおおおおおおおおおおおお!!」

 

 音速以上でローマ化した硬い地面に叩き付けられ、更に槍が胴体を切り裂いた―――なのに、彼は五体満足。

 

「ハハハハハハハ、傷口が笑っている。そうだ、圧政者よ―――もっとだ!

 もっと笑顔を私の体に与えよ! 強く刻み付けよ! 暴虐を受けた果てに、我ら叛逆者は自由を掴む力を見出すのだ!!」

 

 予め解き放つ事せず溜めていた苦痛(魔力)が、この一撃で堪り切る。反乱軍と戦う帝国軍人が叛逆者(スパルタクス)を切り刻み、神祖によって遂に臨界まで到達した。

 今こそ―――その一撃を。

 圧政を始めた建国の英雄にこそ、剣闘士(ドレイ)にされた英雄は剣を振わなければならない。 

 

「行くぞ、圧政者―――疵獣の咆吼(クライング・ウォーモンガー)ァァアアアアアアアアア!!!」

 

 直後―――地面から城壁が生えた。守りの壁は真っ直ぐに立つだけではなく、神祖を守る為ならば斜めに角度を付けても具現する。しかし、その頑強な守護をスパルタクスは一瞬で砕き割り、そして一瞬さえあれば回避するには十分過ぎる隙間だ。

 尤も、それを見抜けないカルデアはなかった。

 所長は肉体を加速させ、ぐったりと力が抜けたスパルタクスを肩で持ち上げて疾走。その反対側には、同じく何処かの悪夢で学んだ加速の業を所長と同じく悪魔は自分に施し、スパルタクスを高速運搬するのを手伝っていた。

 

「―――転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)!」

 

 頭部だけを火竜の炎で変化させ、森を一斉に焼き払って焦土に変えた。狙いは神祖であり、スパルタクスの一閃を回避したが、炎に包まり、神祖は全身が燃え上がった。

 だが、そんな光景を確認する暇はない。

 清姫は内部を竜の筋肉に変化させ、その人外の膂力と敏捷性で一気に離脱。ついでとばかりに、足から炎を噴射させた。何とか彼女は全力疾走することで、何故かずっと微笑みを絶やさない巨漢を連れる所長と悪魔へと追い付いた。

 

「面白き輩であるな。ローマへの叛逆者……羅馬狩りの悪魔と、そしてカルデアの者達よ!」

 

「ねぇ。ほら貴方、スパルタクスに言われてるわよ?」

 

「私は契約者の手足と為るまでのこと。頼まれたならば、そう役目を全うすることを喜びとする」

 

「それって、遠回しにネロの所為にしてるだけじゃないの?」

 

「そうとも言うかもしれぬな。だが、人助けは嫌いではない」

 

「あっそ。だったら、転んでヘマとかしないでよね……ねぇ、ちょっと、何してるのよ?」

 

「草を食べているだけだが。神殿で増殖栽培している自家製でな、美味いぞ。食べるか?」

 

 それも、香料をまぶしたハーブ。生命と魔力を一気に回復させる薬効を持っていた。

 

「喰うか―――!」

 

「そうか。実に残念な返答だ」

 

「ふはははははははは! 実に仲良きことよ!!

 圧制者を討ち倒す為、我ら叛逆者は互いに愛を爆発させねばな!」

 

「……ねぇ、仲間になれそうだったから助けたけど、もう置いて行きましょうか?」

 

「照れることではないが、星見の狩人。私と貴公の仲ではないか?」

 

「―――はぁ!?」

 

 自分の両側で走りながら喧嘩する男女に、スパルタクスは何時も通り微笑んでいる。

 

「構わないとも。ほら、傷口も微笑んでいる。この五体、今こそが万全である……」

 

 しかし、笑みを絶やさない彼は神祖に叛逆せんと傷を直し、悪魔と所長の手助けから立ち上がる。そのまま反転して神祖を討伐ようと思ったが、彼は天上で憎悪を立ち上らせる女王の殺意を感知した。

 ―――此処で自分が軽率な叛逆を行えば、彼女の叛逆を台無しにする。

 彼が今抱く叛逆の狂気は、スパルタクス本人が持つべき叛逆の意志によって中和する。

 復讐の女王ブーディカがいなければ……いや、そもそも眼前の敵へ叛逆しないと言う選択肢さえ本来ならば存在しないと言うのに、スパルタクスは更なる叛逆の為に叛逆行為を我慢する理知的狂気を選択した。彼がブーディカとサーヴァントとして対等な立場なら話は違ったが、彼女はそうではなかった。

 

「……だが、今は生き延びねば。

 圧政者共から距離を取り、素早くこの圧政の森林公園から脱出せん!」

 

 そう叫んだ彼が近場の樹人を抱え、そのまま持ち上げ、巨大な丸太を大槌のように振り回した。樹人で樹人を叩き割り、だが一切足の動きを止めずに逃走を続けた。加速が切れた所長と悪魔もスパルタクスに続き、清姫も足を止めずに逃げ続ける。

 地上の離脱は万全。逃げ延びる準備が完成する。

 しかし、空中での戦闘はまだ続き―――場外からの横槍こそ、膠着した状況を良くも悪くも変化させるのだろう。

 

我が骨子は捻れ狂う(I am the bone of my sword.) ……ッ―――偽・螺旋剣(カラドボルグ)!」

 

 魔力臨界充填。投影宝具狙撃。投影した隠蔽型宝具で姿も気配も消し、弓兵(エミヤ)は即座にネロと名乗る皇帝抹殺の為に行動を開始していた。

 

「―――何奴!?」

 

 真下からの衝撃。ブーディカと呂布が乗る戦車に結晶槍を叩き込む直前の危機。

 暗帝が操る刑罰戦車は上空に吹き飛び、制御を失って乱回転する。しかし宝具による衝撃は、中華ガジェットの電磁バリアに抑え込まれ―――

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

 ―――螺旋の矢が、周囲に構うことなく爆裂した。

 

「ぬぅわー! 爆発して落ちるとは、正しく爆発オチではないか!! 

 余の女神が見たら使い擦れた古典芸能だと、三段笑いで失笑されてしまう!!」

 

 何処となく余裕そうに、場末の三流役者でも考え付かない酷い断末魔を上げ、だが遠い席の観客でも愉しめる舞台役者らしいオーバーリアクションで暗帝は大森林の中へ墜落していった。

 聖杯による文明知識と、灰の闇による人間性の叡智。

 合わさるとこのように危険な感性を生み出してしまうのだろう。しかし確実に言えるのは、爆発オチなどと言う現代娯楽の表現方法は灰の趣味だと言う点だった。

 

「ローマめ……―――惨たらしく、爆死しろ」

 

 しかし、女王は憎たらしい暗帝に一切の愛嬌を見出さない。血濡れた聖剣もどきを掲げ、憎悪に染まった黒球の飛沫を散弾銃のように発射。黒い飛沫は落下する暗帝の戦車に当たり、だがまだ電磁バリアによって守られていた所為か、落下速度を速めただけに止まった。

 この黄金剣(モドキ)では障壁は破れない。やるならば、戦車で突撃するか、軍神五兵の砲撃形態か。

 

「呂布、追撃して!」

 

■◆■■(非なり。)■■■■◆◆■■■◆◆■◆(逃走せねば、戦場が台無しぞ)

 

 唸り声と共に、飛将軍の視線が森の外側に向けられる。

 

「――……ッチ。わかった。作戦通りにする」

 

◆◆(応。)■■■◆◆■■■◆◆■■■◆◆(叛逆者が叛逆せぬ意味、理解せよ)

 

 女王が下を見れば、援護狙撃をしてくれたカルデアの弓兵は既に撤退済み。ここで策を蔑ろにし、このまま暗帝殺害に固執すれば、呂布と取り残される。ローマを虐殺する為に、まだまだ女王は我慢を自分に強いなければならない。

 とは言え、呂布の叫びは雰囲気で察しているだけ。何となくブーディカがそう意訳し、声から伝わって来る感情で言葉のように感じるのみ。だが、呂布の制止を聞いた所で、彼女の憎悪が止まる訳ではない。

 

〝殺してやる。殺してやる殺してやる、殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる、殺してやる、殺してやる。殺してやる。呪い殺して、斬り殺して、轢き殺して、殴り殺して、突き殺して、焼き殺して、裂き殺して、弄り殺して―――殺してやる。

 死ね。直ぐ死ね。ただただ―――死ね。燃える藁の様に死ね。

 なのに、まだ届かない。鏖殺まで程遠い。加えて、理性がない筈の狂戦士に、落ち付けと諭されるなんて。はぁ……けれど、目的第一ね”

 

 森に姿が消えた暗帝とその戦車へと、憎悪の瞳と共に思わず手を伸ばす。だが、敵に捕まった反乱軍リーダー・アルテラのこともある。そして憎きローマを殲滅する為、ブーディカは絶対にカルデアの助力が必須。此処で殺しに掛っても止めまで刺せず、

 

「悪かった。行くわね、呂布」

 

◆◆■■■(是非もなし)!」

 

 その頃、戦闘を走るマスター達は上空の大爆発を肌で感じていた。消費した魔力量から、藤丸はエミヤが投影宝具の真名解放からの壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)を行ったと判断。伝えられた念話より、カルデアの撤退準備が整ったと理解した。

 

『藤丸君、全員での脱出も可能になった。カルデアを助けに来たサーヴァント達も、管制室で観測済みだ』

 

「わかった、ドクター」

 

『所長も狼君も無事さ』

 

「うん……まぁ、心配はしていないかな。死んでも殺されない人たちだし」

 

 魔術師として不死性を持つ特殊な存在とだけ彼は聞いていたが、実際にまだ目の前で死んだ所は見たことはない。それを抜きにしても、あの二人が死ぬとは思えないのも事実。

 

『さて―――……で、走りながらで申し訳ないのですが。ボク達を守ってくれた貴女は、人理側のサーヴァントと考えても?』

 

「うむ。何処となく、声だけで胡散臭い魔術師よ。余こそが抑止に呼ばれた最優のクラス、セイバーのサーヴァント―――ネロ・クラウディウス。

 真名は特別サービスだ。どうせ、貴様らにバレていることだしな!」

 

 全力疾走するマシュに藤丸は強化した四肢で抱き付き、背負って貰いながら森を駆け抜けていた。迫り来る樹人の猛攻を立体的に動くことでマシュは避け、必然的に藤丸もその恐怖体験を同時に味わいつつ、しかしまだ会話をする余裕があった。そして、マシュも背負ったマスターだけに気を使う余裕はなく、巨大な樹人から逃れる為に身体機能をフルに使わなければならない。そして、樹人から一撃でも受ければ足止めを喰らってローマに追い付かれる恐怖との戦いでもあり、精神を極限まで集中させて逃走を行っていた。

 そんなジェットコースターも霞む闘争劇。藤丸は所長のVR訓練がなければ、肉体に襲い掛かる重力()と、上下左右の高速移動による三半規管の乱れで気絶していたことだろう。

 

「しかし、この……―――鬱陶しいな、こやつら!?」

 

 赤い片刃大剣から火炎を吹き出して戦うネロだが、彼女は自分だけを守れば良い訳ではない。

 本来の目的通り、カルデアと共に森を脱出しなければならず、藤丸とマシュの護衛も彼女が自分に課した責務でもある。そう理解はしていても、何千何万と樹人は森林内に生息し、道を塞ぐ者を何十体も焼き斬り捨てたが、それでも数が衰えずに進路を邪魔するように湧き出て来る。

 マシュは、そのネロの後に追随するだけで精一杯。眼前は炎で斬り開かれる樹人林。

 左義腕のワイヤーで繋がった射出式鉤拳(ロケットパンチ)を使い、忍びの鉤縄のように木々を立体的高速機動でマスターを運搬する。

 

〝本当にあの人は、未来が見えてるのですか……不思議です。人理が焼けていると言うのに、それでも関係なく見通せるのでしょうか?”

 

 カルデアでの噂話で、マシュは聞いた事がある。オルガマリーは未来を視る千里眼を持つのではないか、と。実際にカルデアで受けた訓練は、全て必要不可欠であり、この義手の機能はフランスでも、来たばかりのローマでも有能だった。対精神干渉防御の措置もなければ英霊の加護を持つマシュだろうと、月下の浮かぶカリギュラと相対しただけで即座に戦闘不能になっていたことだ。

 猟奇的な人間が持つ底無しの悪意。文明を紡ぐ原動力でもある負の喜び。

 同時にヒトのような知性体が抱く際限のない嫉妬、憎悪、恐怖、渇望、知識欲、好奇心。

 藤丸立香が邪悪と狂気を幻視したように、マシュ・キリエライトも同じく発狂した精神を体験していた。大盾の加護とカルデアの守りで耐えられていただけで、こうして森から逃げている最中も冒涜的恐怖が心に焦げ付いて離れない。

 

〝白い竜……鱗がないドラゴン。あぁ何故、貴方の感情が分かってしまうのですか。どうしようもなく、皆が羨ましい。人が、妬ましい。普通の命が、憎くて堪らない。自分が短命であることの、差異のある生まれで足り得る理由が知りたい。

 何で私は―――死なないといけないのですか?

 どうして私は孤独なんですか、神様?

 仲間は全員、殺されてしまいましたよ?

 何の価値もなく、虫けらの様に肉体が焼却処分されました。

 これを許せと言うのですか。自分が、自分として生まれたと言うだけで、全て認めろと。

 出来る訳がない……許せません。でもこの感情は猛毒です。私の狂気ではありません。それでも、耐えられる訳がありません。疑念と嫉妬を、植え付けられると……今は耐え切られたとしても、最後は問い殺されてしまいます……!”

 

 そんな狂気から逃げるように、マシュはローマからも逃げるべく必死で駆け抜けた。まるで小さな虫がジワジワと精神を穢すように、自分が自分以外の何かに変貌していく錯覚を覚え続けている。

 

「フォウ、フォフォウ!」

 

「……あ」

 

 今まで戦闘の邪魔にならないようにずっとマシュに隠れていたがフォウが、そんな狂気の渦に嵌まっていた彼女の精神を呼び覚ました。些細な切っ掛けであったが、マシュは自分がフォウと一緒に送っていた日常を咄嗟に思い返し、通常の感覚を取り戻す。

 

「マシュ、そろそろ森を抜けられる……!」

 

「はい、先輩。急ぎましょう!」

 

「良く耐えたな、二人と一匹。さて、これで神祖の領域からも脱出である!」

 

 ―――脱出の成功は、何処か呆気なかった。

 周囲に木々のない平原地帯。月明かりがない通常の昼間。

 

「皆の者、喜びたまえ。まずは叛逆の第一歩、成功である」

 

◆■◆■◆◆◆■◆■◆■◆■(撤退戦もまた、武勇の一つなり)!」

 

「あの皇帝と戦うと頭が狂って仕方がない。狂気を酔えるように、早目に酒の補充をしないといけないな」

 

「みんな、お疲れさま」

 

「この悪魔、取り敢えず礼は言っておくわ。でもそれはそれとして、何時か絶対に殺しますので」

 

「ふむ。貴公は捻くれ者と見せ掛け、実は素直であるのな」

 

旦那様(ますた)ぁ……あぁ、旦那様(ますた)ぁ……何処ですか?

 この清姫、貴方と離れると寂しくて堪りません!」

 

「初手にて敵の待伏せか。このローマは、カルデアに対してフランスと心構えが違うな……」

 

「…………」

 

 一人、忍びだけは無言の儘に悪魔を見ていた。不審な行動をすれば、即座に忍殺する心構えだった。他のカルデア勢も警戒しているが、忍びのそれは一つ次元が違う警戒心。殺気が漏れる前の、殺意が生じる直前の段階で抹殺することが可能な技量である。

 しかし、そんな忍びでも不足の事態と言うことはある。あの極致で自分達(カルデア)を救助しに来たと言うことで勘違いしてしまうのも無理はないが、あの場所でそれぞれの思惑が重なった結果、五つ巴となった戦場であった。

 ローマ陣営。カルデア陣営。ネロ陣営。反乱軍陣営。そして、監視していた灰の人。それぞれが、それぞれの理由であの場所で邂逅していた結果、今こうして出会ってしまった。

 

「ネロ・クラウディウス……―――へぇ、英霊としてもあんたはローマにいるんだ?」

 

「貴様は……」

 

 接触するのは、このローマで二人は初めてだった。偶然にも帝都の様子をこの2グループが監視に来ており、偶々カルデアの来訪を察知し、ローマ攻略の戦力として迎え入れる為に助けただけ。

 あるいは、危機的状況下であろうとそんな偶然を味方に出来たのが、カルデアの強みなのか。

 

「……まさか、ブーディカか」

 

 死後の知識としても、それは知っている。ネロの人生に直接的間接的に関わらず、女王ブーディカと言う女の人生を知っている。

 

「そうよ。ローマに蹂躙されたそいつだよ。尤もローマ(あんた達)からすれば、大勢いる搾取用の地方家畜に過ぎなかったんでしょうけど?」

 

「それは……ッ―――すまぬ。余は、もう語るべき言葉はない」

 

「―――あっそう。

 まだ恥とか、ちゃんとあるんだ。死んで覚えたのね?」

 

 恥知らずに生きて自害した女だものね、とブーディカは想いを言葉に隠す。それが分からないネロでもなく、同時にブーディカが恥辱を果たせずに自害した恥知らずの復讐者と自分自身を罵っていることも、聡明な彼女には理解出来てしまった。

 

「―――っ………そうか。

 そなたは、生きておるのか。あの余のと同じで」

 

「ふふふ……うん。そうだ。だからね、あたしは死人のあんたに問うべき想いはない。でも、ローマである貴様ら全員に殺意がある。

 憎んで、憎んで、憎んで憎んで憎んでも―――尽きない怨嗟が、あたしにはある。

 もう殺したいから、殺す。それで良い、それが良い。あんたみたいな女をこの世から消すのに、理由なんて高尚な人道は一切必要ないのだから!」

 

 憎悪に染まった約束されぬ女王の剣。その色の通り、憎悪の念が刀身に集まり出す。ネロが迎撃しようと大剣を取り出すが、それで攻撃して良いものかと悩む。

 ……少しだけそう苦悶するが、殺される訳にはいかない。

 受け止めた上で、謝ろう。死んでからでは贖罪など遅いのだろうが、まだ相手は生きている。

 

「はいはい、お止め」

 

「ほげぇ!?」

 

 背後に回った荊軻が、ブーディカの膝裏に膝蹴りをしていなければだが。正にその所業、空気を粉砕する膝かっくんであった。

 

「キミ、なにすんのさ!?」

 

「別に誰を恨んで良いが……そうだな。殺す相手は一人に定めたなら、浮気は止めるべきだ」

 

 キョトンと女王は、殺意も憎悪もない顔になった。恐らくは、それが彼女本来の表情なのだろう。

 

「…………はぁ、そうね。血迷った。

 すまなかったね、ネロ。本気で殺すところだった」

 

「そうか……」

 

 ネロは憎まれており、しかしそれ以上に憎悪すべき怨敵がいる。ローマに対する憎悪が、更なる憎悪によって憎悪に塗り潰されているだけ。ブーディカは英霊ネロではなく、暗帝ネロこそを全てを否定した上で殺し尽くし、同時にこの英霊は復讐の良い道具となる。

 手段を選ぶなど―――女王には赦されない。

 どうやら動機は違えど、現状から目的は一緒と判断出来る。

 

「貴公ら、森からは抜けられたが油断は出来ぬ。ネロと私で用意した馬車が有る故、カルデアの者共もそうだが、そちらの反乱軍の方々も使われると良いだろう」

 

 しかし、悪魔は物騒な雰囲気を良い意味で読まない。殺気立つブーディカを気にせず、平然と必要なことを話すのみ。

 

「我らにはブーディカの戦車があるが、魔力を温存したいので有り難いが……この大人数を乗れるのか?」

 

「心配御無用。人数を見越し、大型にしてある。私が作った」

 

「余も手伝った! とは言え、巨漢の二人は屋根の上に乗って欲しいがな……」

 

「圧政!」

 

「◆◆!」

 

 この悪魔は一体ネロのような美少女とこのローマで何しているのだろうと、所長はらしくもなく本気で疑念を抱いた。荊軻の質問にも、こうも淀みなく悠長に答える姿に違和感が凄い。もしかして味方側になるのと、ああ言う中々に気安い人格なのだろうかと所長は考えた―――結果、本当にそのようだと知りたくない事実が啓蒙された。

 

(隻狼。油断しちゃ駄目よ。あの悪魔、味方であることに嘘偽りはないけど、アッシュみたいに魂を偽られると全く意味ないから)

 

(御意)

 

 念話で短めに問答する。そして所長は、ロマニには通信を聞かれてカルデアの情報を余り悪魔に渡したくないと、通信機による会話を余りしないように命令済み。管制室としても所長の意見は賛成で、本当の緊急時以外ならば、所長からの指示がない限り沈黙を選ぶ。

 

〝ふむ……―――成る程。

 随分と警戒心が強いと見えるな。私なりに私を描き直し、気安い雰囲気にした筈だが”

 

 互いに、互いを見抜かれている事を悪魔と所長は理解し合っていた。狩人が所長を志し、悪魔が騎士を演じるように、本質的に不死は世界を碁盤(ゲーム)として遊ぶ役割を演じる者(ロールプレイヤー)に近いのだろう。空虚な自我にどのような色彩を描くのか、そんな自由だけが残されている。

 必要なのは、揺るがない意志一つ。

 魂さえも不確かな不死の存在にとって、寄る辺となるのは自分自身に他ならない。

 

「そろそろだ」

 

 悪魔とネロを先頭に、何も無い平原を進む。馬車と言ったが、そんなモノは千里眼を持つエミヤが周囲を見回しても何処にもない。それもその筈、重要な移動手段をそのままにしておく訳もない。隠蔽工作は十分に施され、目視不可の状態にして隠されていた。近付けば、悪魔が気取った仕草で指を鳴らし、透明化も解除された。

 全員が乗れる大型の馬車。超重量のそれをたった一匹で引くだろう騎馬の姿があり―――

 

「ひひぃん、呂布です」

 

「啓蒙高いわぁ……」

 

 ―――喋る馬を見たオルガマリーは、素でそう呟いてしまった。

 他の者は黙り込んでしまった。ネロとの邂逅で憎悪が溢れていたブーディカや、他のサーヴァントも、少し現実を受け入れられない。

 

「……うん。啓蒙高いですね」

 

 所長が二度呟く程のインパクト。例えるならその衝撃具合、秘匿を破った初見時のアメンドーズに匹敵する。そして、そもそも自分達カルデアが守ろうしている人理は、果たして如何なる未来を見通してこのサーヴァントを抑止力として召喚したのか?

 いや、召喚してしまったのか?

 メルゴーの高楼で冒涜的思索実験を繰り返すメンシス学派の連中でさえ、こんな珍妙な生命体を悪夢と言う異空間で生み出そうと考え付く事も出来ないだろう。

 

〝あれぇー……赤兎馬?

 そんな名前が私の瞳で見えるけど、え―――赤兎馬?”

 

 取り敢えず、生前からの責任者に問い正すことにした。

 

「バーサーカーのサーヴァント、呂布奉先。この……この、何と言うか、本当に何と言えば良いのかしらね? あぁもう分かんないけど!

 そのこの、えぇ……この馬のサーヴァント……サーヴァントって認めると、他の同属の英霊が怒りそうだけど。兎も角、貴方と生前からの付き合いなのよね!?」

 

()?」

 

「素で驚いてんじゃない!?」

 

「あ、呂布。お久しぶりです。天下飛将の貴方とまたこうして出会えるとは。この呂布、赤兎馬のように運命に歓喜しましょう!

 ですが、その身はどうやらバーサーカーである御様子。

 今は互いに別々、そして嘗ての戦友のように戦場を駆け回るが吉でしょう。

 人馬一体(レッド・フォーム)を超えた天下無双の真なる人馬一体(エクサレッド・フォーム)は、我らの魂が一体として邂逅する時まで我慢致しましょう!」

 

■■■◆■◆(ならば、良し)―――!」

 

「この呂布も、赤兎馬に乗る呂布として感無量ヒヒィン!」

 

 そして薄情なのが、カルデアのメンバーは全員が責任者である所長に対応を丸投げしていた。関わったら頭が狂うと判断し、森から脱出して早くローマ達から逃げようと言う緊迫感ある真面目(シリアス)な表情を浮かべ、内心では無の境地で全てを達観していただけだった。

 

「皆の者、急ぐのだ!!」

 

「素早く乗らねば、あのローマから生き延びられんぞ?」

 

「それはそうと御二人共、お疲れ様でした。この呂布、首を馬のように伸ばして待っておりました!」

 

「うむ。労り感謝する、赤兎馬。だが、今は本当に急ぐのでな」

 

「そうだな、赤兎馬。まるで馬のような首の胴体から、馬の面が生えているぞ。それは兎も角、人参だ。気張ってくれ給え」

 

「ヒヒン! 美味(UMA)い、馬だけに!」

 

 人馬に慣れているネロと悪魔。要求を聞き全員、一気に無口になった。喋ると気が狂いそうで、何かの間違いであの人馬(UMA)に興味を持たれて話し掛けられたら、何と返事をして良いのか全く分からない。

 カルデア全員の結論は満場一致―――ローマは地獄。

 奇しくも無言で心を通わせ、何の澱みもなくカルデアとブーディカ達が大型馬車に静かに乗り込んだ。

 

「ふむ。乗車を確認。忘れ物、無し」

 

「相変わらず変な所で生真面目だな、スレイヤー……いや、すまん。貴様といると何故か気が抜けてな、ぼやいてしまう」

 

「そうか。癖でな、心配症は治らん。ではネロ、行こうか」

 

「うむ。ならば赤兎馬よ、頼む。インペリアル・ドォムス、発進だ!!」

 

「―――ヒヒン!!」

 

 乗り込んで直ぐ、ネロの声で直ぐ様に走り出す。あのローマの森から脱出出来たと言う安堵と共に、感じられない敵の気配から敵地から撤退の成功を実感する。ブーディカ達四人もカルデア救出成功に達成感を持ち、ネロと悪魔もそれは同じだろう。

 なのにまるで―――お通夜のような雰囲気だった。

 ひひん、ブルブル、人参美味しい、と騎馬(ウマ)の人間の声にしか聞こえない唸り声と、平原を疾走する馬車の音だけが世界を支配していた。とは言え、それも数秒だけの事。

 

「―――はぁ……すみません。そして、ありがとうございました。

 私はカルデア代表のオルガマリー・アニムスフィア。状況も十分に落ち着きましたから、まずは互いを知る為に自己紹介をしませんか?」

 

 狭いからと屋根に登らされたバーサーカー(巨漢)二人は兎も角、言葉なくして信頼は生まれない。人理の危機と言う状況もあり、またローマ側にも人理側のサーヴァントが真名をバレているのもあってか、反乱軍のサーヴァント達はまずは簡易的に自分の名を明かし、立場も明かした。ネロと悪魔も同様に、反乱軍ではないがローマと敵対していると話した。

 

〝成る程。暗帝を名乗る生前のネロ皇帝と、変貌したローマ帝国ね……”

 

 全体像は見えてきたが、まだ細部までは分からない。何時もであれば瞳で以って見明かせるのだが、暗い深淵の闇が世界を簿やかし、真実を見え難くしている。啓蒙される知識にも限りがあろう。

 だが、今はその前に解決しないとならない疑問がった。そして、それを解決しようにも所長は自分が狩人で在る為か、獣に警戒され易いので適任ではないのが残念でならなかった。

 

「ちょっと、マシュ。あれが本当に馬なのか、聞いてみてくれる?

 ほら、その……助けてくれた人達との交渉は必要だけど、まずはあれが何なのかが先決だと思うのよ」

 

 月下の狂気から逃げられたと言うのに、何かもっと凄い狂気が所長からマシュは囁かれた。疲れから一息吐きたいと思っていたのに、そんな疲労感を吹き飛ばす指示が下された。

 

「え、いや……はい?」

 

「ほらあの馬……だと思うサーヴァント、一応そこにいる悪魔野郎の一味でしょ。それとなく、情報収集して欲しいのよ」

 

「はぁ……?」

 

「お願い。動物に嫌われ易い私だと、警戒されちゃうしね。それに、ほら……知能の高さ的には、あの馬もフォウもそう変わらないから。

 だったら、カルデアで最もフォウと仲良しなマシュなら、あの馬も話を聞くかもしれません」

 

「先輩。すみません……私、オルガマリー所長が何を言ってるのか、全く理解できません。悪夢を見てしまう程、疲れているのかも。

 どうか令呪を使って、私をレムレム睡眠状態にしてくれませんか?」

 

「くぅ……くぅ……スヤスヤ」

 

「―――先輩が寝ています!?

 それにスヤスヤとか、本当に寝てたらそんな寝言を言いませんから!」

 

「あらら。旦那様(ますたぁ)、御可愛い寝顔です……―――何時も通りに」

 

「清姫さん、今何と。何時も通りって言いましたか?」

 

「ええ。何時も通り、と」

 

「いえ……いえいえ。あれ、それってどういう意味なんですか!?」

 

「うん。マジでそれってどういうこと?」

 

「先輩、やっぱり起きてたじゃないですか!?」

 

「―――マシュ。さぁ、行きなさい。馬が貴女を待ってるわ」

 

「~~……ッ―――はぁ、カルデアのブラック企業! マシュ・キリエライト、任務遂行します!」

 

 馬車の御者席に向かうマシュの後ろ姿。あのような手合いを相手するのも良い経験になる。もし敵対者に珍妙な面白生物だこれから先の戦いにいたといても、ある程度は慣れることだろう。そんな事を蛇に巻かれた小動物みたいに清姫からホールドされる藤丸を見つつ、所長は親のような気分で考えていた。

 尤も、本当の目的は別だが。今のマシュは危うい。オルガマリーは他人に対する強烈な嫉妬と羨望の念が、狂気となってマシュの中に渦巻いているのを察していた。そう言う場合、自分の感情を忘れられるインパクトのある出来事があれば、その狂気の残り香を薄める事が出来ると判断した。狂帝の月光は、所長が思う以上に厄介であるようだ。

 ……等と、所長が考え事をしているとマシュは御者席から声を出していた。

 

「すみません。赤兎馬さんは、馬のサーヴァントで良いのですよね?」

 

「いえ、呂布ですから人間ですよ。ヒヒン!」

 

 馬車を引きながらも、彼は軽快にマシュの問いに答えた。

 

「あの……その鳴き声、馬では?」

 

「いえ、呂布です。人より少しだけ人参が好物なだけですから」

 

「やはり馬では?」

 

「恐らくは綺麗なお嬢さん……いえ、すみません。実は私、人間の美意識など分からぬのですが。まぁ、馬的にもお美しいお嬢さん、私は馬かもしれませぬが、それでも呂布なのです。ならば、私が人間であることも道理!」

 

「だったら、(UMA)なのでは!?」

 

「いえ、呂布です」

 

「で、でも……それって―――」

 

「―――アイ、アム、ザ、ヒショウグン!

 それ即ち、赤兎馬と共に在るべき男、リョフホウセヒヒィン!!」

 

「ヒヒィンって言ってますから! それに、呂布さん本人が此処にいますし!!」

 

「◆■■■!」

 

 マシュの言葉を肯定するように、屋根に居る筈の呂布は軽快に吼えた。

 

「いけませんね、お嬢さん。そもそも呂布は偏在します。三国志の常識ですよ、馬から見ても美しい御人。馬にとっても世界共通の事実ですので、今日から覚えて下さいね。

 あ、後。いっそのこと、馬面になってみません?

 そうすれば貴女も私と一緒に呂布れます。エンジョイ呂布ライフってものです」

 

「え、え…‥―――え、あ?」

 

 それはつまるところ、馬は呂布で、呂布は馬ではないけど、この呂布は馬で、なのに呂布は偏在し、そして呂布は馬じゃないけど馬だった。

 そもそも―――なんで、馬が喋っているのか?

 此処は本当に現実なのか、意味が不明。カルデアのベッドでまだ眠っているだけではないのか?

 マシュ・キリエライトは邂逅してはならない神秘が啓蒙され、ついに目覚めを得ない悪夢への門が開いてしまった。

 それは永遠の問い。

 解決しない思考の迷路。

 赤兎馬は馬ではない精神異常馬な呂布人間だったのだ。その答えが啓かれ、マシュは新たな知識が脳に入り込んでしまった。

 

「あ、あぁ……ぁぁああああああああああああああああ!!」

 

「藤丸、マシュが発狂したわ! カリギュラの月光に今まで耐えていたけど、それが祟って現実を認識出来なくなってきたみたい!!」

 

「でしょうね……ッ―――!?

 毒電波に耐えて逃げた先に居たのが、未確認勢物だったなんて俺も発狂したいです!!」

 

 クッ、藤丸は悲痛な表情でマシュを抱き締めた。気の狂った相棒を介抱するシリアスの場面と見せ掛けて、彼はマシュの柔らかい肉体を下心満載であやしていた。藤丸は決して、マスターと言う役得を逃がさない男である。尤も、彼も馬相手にそこまで真剣になれないと言うのもあったのだが。

 ……とは言え、現実を理解し始めたマシュは、自分の今の状況を察し、まだちょっとこのままでいようかな、と言うらしくない欲望があるのも事実。案外、似た者同士の主従なのかもしれない。

 

「あぁん、旦那様(ますたぁ)……―――まぁでも、マシュなら仕方ないですか」

 

「そう言う所、藤丸に見せれば良いと思うのだけど?」

 

 自分から放した癖に、残念そうな顔でマスターを見る清姫に所長は不思議そうな顔をしている。

 

「嫌ですよ。押してダメなら引けってことでしょうが、恋に理性的な駆け引きは無粋なのです。何より、わたくし、自分の想いに嘘は吐けませんから」

 

「へぇ……そうなの?」

 

「貴女は情熱的に人を好きになれない女でしょうからね。理解出来ないかもしれません」

 

「おお、情熱の愛か。恋バナは余も好きだ!」

 

「あー……ブーディカ。あの男の所為で頭がまだ狂気に酔っている。酒はあるか?」

 

「荊軻……今は、我慢しよ」

 

 そんな騒がしい空間から悪魔は前方を警戒するべく、馬車の御者席に移動した。空気を切り裂いて平原を駆け抜ける爽快感。大型の馬車であり、且つ大人数が乗車しているも、軽量化の魔術を施しているため騎馬の速力に見た目ほど影響はない。乗っている人の合計体重も小さくしている。それでも重いもの重く、成人男性数人分はあるだろう。

 しかし、その程度なら十分許容範囲内。赤兎馬の筋力と技能により、ローマから逃げ切るには十分。

 

〝灰から聞いたことがある……確か、混沌の魔女と雰囲気が似ていると思う”

 

 悪魔は平原を駆ける馬を見つつ、一人思い悩む。類似点は人間の上半身と、人外の下半身。そして、初見時のインパクト程度だろう。嘗て呪術王に呪術を教え、薪の王となった不死にも火を授けた魔女がこんな感想を知れば姉妹として、悪魔を大発火した後、炎の大嵐で消し炭にすることだ。

 

〝馬の英霊(デーモン)、これが人理か。

 焼かれたと聞いたが……いやはや、凄まじい。まこと、どのような業が渦巻いていたのやら”

 

 独りそう呟いた彼は、両手の人差し指と中指で枠縁を作る。まるで一枚の絵を描く芸術家のように、景色をイメージする仕草で、その枠の中の呂布を名乗る生命体の姿を入れた。

 

「この呂布、最高に今を駆けております。明日に向かって。ならば、そう……呂布とは昨日の赤兎馬であり、赤兎馬とは明日に駆ける呂布!

 ――ヒヒン、ブルルル。ヒヒィン……ヒヒィィィイイン!!」

 

 悪魔がゆっくりと下から上にアングルを動かす。気分は画家そのもの。馬の下半身、人間の胴体、そして馬の頭部。ほぼ馬だった。ギリシャ神話の半人半馬のケンタウロスでもない人外で、人間部分は二から三割程度だろう。

 悪魔の視界の中ではそんな呂布を名乗る馬が一人芝居でテンション上げ、馬車を引きながら爆走している姿があった。

 

〝火防女よ。私はボーレタリアから、随分と遠くまで来たものだ……”

 

 ついそんな感慨深い独り言を、悪魔が沁々と内心で呟くのも無理はなかった。そんな悪魔がネロと自分の工作で馬車に取り付けたサイドミラーで何気なく後ろを確認すると、有り得ざる光景が目に入った。

 例えるなら、地面に広がる巨大なアメーバのようであり、規模を考えると緑の津波と言うべき現象だった。

 

「ネロ、ローマの森が追って来たぞ」

 

「なに! どう言う事だ、スレイヤー!?」

 

 森が追って来るなど、普通ではない。だがしかし、此処は異常なる世界。ネロと共に、他の者も一斉に後ろを振り返った。

 ―――地面から生える巨樹。直後、歩き出す樹人。

 まるで世界を“侵食”するように、森林の範囲が逃げる場所を追い求めるように広がって行く。

 

「……ッ―――有り、得ない」

 

 オルガマリーは固有結界が自然と広がると言う現象を見て、一つだけ見知らぬ智慧が啓蒙された。

 

〝まさか……馬鹿なの、あいつ。これって侵食固有結界……?

 蜘蛛の惑星環境を侵食する水晶の異界じゃないけど、その固有異界を固有結界で再現したっていうの?”

 

 灰がフランスで自分を語った通り、強くなる為に手段を選ばない女であったならば、神々からも問答無用で神秘と奇跡を簒奪する人間だったら、その存在に興味を抱かない訳がない。ソウルの業としてだけでなく、魔力さえも結晶化させている術理の神秘。それが一つだけではなく、この人理の世界で再構築された新しい灰の業なら、参考にされた術者がこの世の何処かに存在する筈。

 異界が世界を侵す仕組みを、魔術師として理解したのだろう。

 あるいは最初の火の雷槍によってその結晶を砕き、手に入れたのかもしれない。しかし、それはあの蜘蛛を起こした事実を意味する。

 

〝あら、気が付きましたか。頭が良いですね、所長は。でも、炉の火を甦らせ、再誕した今の最初の火でしたら、無機物だろうと熱を与えて命を宿させ、死を持つ存在に作り変えられます。

 後は、何時も通り火の雷で砕けば良い話でしょう。命無き岩と樹の古竜を闇の生物が殺せる生命体へと落したように、死を持たない存在である時点で火の簒奪者には届きません。むしろ、死なずの不滅である方が殺し易く好都合と言うものです”

 

 魂を捏ね合わせて広げた画布に描く心象風景。名前のない侵食固有結界。

 灰がこの異界に強いて名付けるとすれば、固有結界「アウグストゥス」とでもするべきか。ローマの画布に描いたローマの絵画であれば、王家から帝国が始まったそれが相応しいだろう。しかし、模された神秘からすると、灰はまだ工夫が物足りない。

 

〝とは言え、まだアレが落下して来たばかりの火では、殺し切れる死の雷は不可能でした。

 実に残念でしたが、ソウルを少し奪えただけで、大穴で睡眠中なのを不意打ちで魂にまで届いただけでしたしねぇ……ふふ。反撃で殺されて、それでも挑んで更にソウルを削って、生死を繰り返し、結局は殺し切れませんでした。

 けれども、異星の神秘は面白い業ですもの。

 我ら簒奪者が殺せぬのは―――魂が終われぬ亡者の王のみ。

 人理焼却の馬鹿騒ぎが終われば、後一歩で殺せる手段がなかった異星生物も皆殺しに致しましょう。まだまだ目的には程遠いですね”

 

 変わらず何処かから遠眼鏡で戦場を監視する灰は、この森が何を真似て作られた異界常識なのか露見したことを見破った。

 持ち得る神秘と知識を混ぜ合せ、彼女はあの異界を作りたかった。だから妖精の魂、定命のソウル、古樹の槍、神祖、灰の業、原始結晶、異界常識を組み合わせた。幻想種が住む星の裏側に赴き、そこで遭遇した様々な生物の魂を貪った利益があったというもの。そこには勿論、妖精も生活していた。森の材料となるソウルは、既に最初から揃えられている。

 それらから生まれる何かを灰は観測していた。自分に発想力が欠如していると分かっている灰は、古い獣を苗床に定着させる為に、ローマで何かを行っていた。悪魔の騎士がこの特異点にいるのは恐らく、好奇心によってそれに誘われたから。

 

〝アッシュ・ワンは……―――駄目ね。まだ最奥まで見通せないか”

 

 出会った人物と、土地の異常と、特異点の歪み具合。所長はピースを一つ一つ嵌め直し、けれど何を目指しているのか辿り着けない。目的は新しい灰の業を得て強くなる為だと分かっているのに、どのような手段でそれを為そうとしているのか、全く理解出来る状況ではない。

 

「エミヤ。警戒を頼む」

 

「了解した、マスター」

 

 藤丸からの指示を聞き、千里眼持ちのエミヤが屋根に移動。

 

「迎撃戦ね。追い付かれたら、今度こそ逃げられないと思いなさい」

 

「はい、所長!」

 

「マシュ・キリエライト、了解しました!」

 

「……で、カルデアの所長さん。あたしたちにはどうして欲しい?」

 

 ネロと対峙した所為か、その気持ちを整理する為に黙っていたブーディカだが、状況がそのようなことを許さない。そもそもあの邪悪な森を訪れたのはカルデアを助ける為であり、ここで共倒れになれば本末転倒だ。

 考えた結果、命令系統は一つの方が良い。

 ブーディカはあっさりと効率的な選択を行い、何の葛藤もなくカルデアの指揮下に入った。

 幾ら人理の危機と言う状況で、ローマの絶望的戦力を見たとは言え、躊躇わずに自分と仲間三人の命を見ず知らずの他人に預けるブーディカに所長は驚いた。他の者なら寒気を感じ、彼女を不気味に思おう。

 しかし、事の流れは単純明快。その方がローマ殲滅の近道だと、復讐の女王(ブーディカ)の憎悪が彼女の魂に囁いていたから。だからこそ、一番効率的な選択肢を取れるのだろう。

 

「暗帝ネロが戦車で来る。そっちの戦車で空中戦をお願い」

 

「ま、妥当ね。でもあたしの戦車は攻撃性が余りないから、呂布は連れていくよ?」

 

「ヒヒン! ですが、私には馬車を引く任がありま―――」

 

「―――キミ、じゃないからね。赤兎馬は、このままみんなを守ってね」

 

「分かりました。では、私は引き続き走り続けましょう!」

 

 そして、森の侵食速度が馬車を追い越した。地面から生える巨樹はまだ遠いが、地面の緑化が眼前にまで迫っている。ここはもう平原ではなく、植林したばかりな幼年期の森と化した。

 世界が腐るように―――豊かな森が、生い茂る。

 嘗て版図を拡げた大帝国。それに倣うように広がって行く神祖の異界。ならば、皇帝達が諦めないのも必然である。

 

「余は愉しい。実に愉しい―――!

 偉大なる余の叔父上、どうかこの狂おしい舞台を照らす光となって下さいませ」

 

「ネロよ、当然である」

 

 森から飛び出した巨影―――暗帝の刑罰戦車は、一気に高度を上昇させた。暗帝、神祖、狂帝の三人が、馬車と森を見下ろしていた。

 

我が心を喰らえ(フルクティクルス)()月の光(ディアーナ)……ッ―――!!

 月下なる世界、広がる我らの安寧をご覧あれ。余に狂気を与えし月の女神よ。

 そして、月に狂った余に結晶する月光を授けた人間、我が姪ネロに愛されし女神よ。もやは我が心、月に代わって人間共を罰しようぞ!」

 

 日が昇る昼間が、暗い月下に覆われる。狂気へと誘う月光の導きである。天幕はまだ下りず、月に狂う皇帝が次の舞台の始まりを告げたのだった。









 カリギュラ:|且_<月に代わってお仕置きよ!
 実は特異点にカルデアが来るまでの間、ローマでは呂布陣営が三つに別れてしました。ローマ陣営に超軍師、反乱軍に飛将軍、ネロ&悪魔陣営にUMAです。そして、果たして呂布とは一体どのような概念なのか、馬の存在で一気に壊れますよね。

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