血液由来の所長   作:サイトー

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 FGOのブラックバレルが藤丸の令呪砲であり、且つ運命力キャノンとのことで、多分大令呪持ってるカドック君が下手したらカドック砲になるんじゃないかと言う危惧が、クリプター弾丸考察の元でした。
 錬金術師と初代所長が技術提供で組んでいますので、カルデアとアトラスのコラボレーションっぽいのが怖いですね。


啓蒙61:ドラゴン・ゴッド

 端的に言えば、この世の地獄。だが、それも正しくは無い。地獄と言う概念以外に相応しい言葉がない為、そう称する以外に良い表現方法がないだけ。屠殺場、虐殺現場、魔女の釜の底、臓物の宴、人間娯楽施設、欲求の街、堕落の市。そう言っても正しいが、その全てが当て嵌まる。

 故、それらを纏めて此処は――地獄と、人はそう呼ぶしかない。

 美しい夜空によって焼かれた森の先の、石作りの街。歴史のある人間の古い大都市。血と、命と、欲と、魂に塗られた魔都となった羅馬である。

 

「悪性情報の坩堝を作る為だけの……その為の、特異点。

 アン・ディール、いやアッシュ・ワン。人理焼却に必要になった地獄をその為だけに、自分の探求の為の地獄に塗り潰した」

 

「どう言うこと、所長……?」

 

 吐き気を耐える顔で藤丸立香(マスター)は問う。所長によって考案・開発された藤丸専用の礼装を、更にカルデアの技術部が開発した礼装を組み合わした新型召喚礼装で、彼は簡易召喚サーヴァントの影を従えて死地を生き足掻く。

 

「街の中心部の底へ、黒い悪に染まった情報(タマシイ)が流れてるのよ。良く、こんな地獄を思い付く。人間と言う生物の業の全てが、きっと魂から大好きなんでしょうね。悪徳を尊ぶ人理の人間性が、愚か過ぎて堪んないのでしょうね。

 言ってしまうと、巨大な魔術実験施設とでも言うべきもの。

 魂を収集する聖杯戦争を発想の起点とした、人間の遺志から絶望(マリョク)を……いえ、魂から遺志を抜き取る人食いの聖杯かしら」

 

「そんな……ッ――そんなことで、これをッ!?」

 

 エミヤの弓矢が頭蓋を吹き飛ばしている。脳漿が飛び散った。清姫の火炎放射が肉体を焼き払っている。蛋白質が焦げる悪臭が漂う。マシュの大盾に霊体化して仕掛けられた機関銃が連射される。肉片が散らばり血煙りが舞う。ネロが炎を纏った隕鉄の片刃大剣を振う。人体が燃えながら両断された。ブーディカの偽りの聖剣から黒い魔力弾丸が連射される。人肉が砕けながら四肢が捥げ堕ちた。

 そして、藤丸が召喚したシャドウ・サーヴァント―――アタランテ(アーチャー)の宝具、訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)が真名解放される。藤丸を中心の空白地帯として、周囲全てに神からの矢が雨のように降り注いだ。フランスで猛威を振った脅威が人理を守る為に使われ、ローマ市民だった者たちを一斉に虐殺した。

 突破する為に必要な所業。相手は人間だった人外の化け物だ―――だが、本当に?

 分かっていた。藤丸は本心では理解していた。目を逸らしてはならない事実―――これは、虐殺だ。

 

「そんなことで……アン・ディールは、この地獄を!!」

 

「そうね。そんな事ってだけじゃなくて、あいつなりの理由もあるにはあるのだけど……――いえ、まぁ私達には関係のないことね。搾取される少数からすれば、幸運を求める大多数の願望こそ諸悪の根源だもの。これを断つには人理焼却が一番手っ取り早いんだろうし、あいつも必要な分の犠牲で確かな成果を得る実験だしね。

 どちらにせよ、どんな理由があろうとも私達は狩らないといけない。

 迷えば、死ぬ。戦いに限った話じゃなくて、一度した決断を後悔で揺らせば行動に隙間が生まれてしまうもの」

 

「―――あ、え……それってどう言う……?」

 

「迷えば死ぬのよ、藤丸。私が予想する事実は戦いには無価値だから。まぁ迷う暇もない今だから言うけど、善の為に悪を為すってのが人間の基本原理なの。悪い事が愉しくて悪事を働くっていうのは破滅願望でね、精神的な風邪みたいな症状に過ぎないの。

 私達が特異点でサーヴァントや敵対者を殺す罪が、一種の善へと繋がるように、人間社会の営みは基本的に明日を良くしたいと言う願いを叶える行動なの」

 

「だったら……たったら、それじゃ―――!?」

 

「報われないわね。でも、私達は初めからそう言う生き物じゃない。だから、どう言う願望で相手が罪を犯すのかは、貴方自身の瞳で見定めなさいな。

 私がカルデア所長として、職員の藤丸立香へ言っても自分に対して許せるのは―――……うん、貴方は敵の罪を狩りなさい。

 結果として殺す事になるけれども、多分そこにはそれ以外の価値が有るかもしれないから。

 だからカルデアが為した罪科は、所長である私だけが贖罪を行うことが赦されるのです。誰かの報いの前に貴方は自分の願いの為に人理焼却を防ぐのよ」

 

「……ッ―――了解、しました!」

 

 サーヴァントと繋がったラインを通して殺人の触感が藤丸に伝わった。魂で、殺意が伝播した。殺す意志と、殺される遺志であった。

 特異点が消えれば無かった事になる。そんなのは、この地獄の前では都合が良過ぎる。

 だから、嘘ではないが全ての事実ではないとフランスで悟っている。きっと、罪は自分の魂から死んでも消えないと彼は理解し尽くしてしまった。

 

「――――――ッ」

 

 坩堝と所長が称した事に対し、何もかもが正しいと藤丸と直感する。自分達カルデアが市民を虐殺するしか都市部中心に進む手段がない事を思っているのではない。

 此処は、不死が己が不死性を娯楽とする魔都だった。

 星見の忍び(アサシン)からの報告で知り、殺す以外に道がないことも分かっていたが、覚悟が全く足りておらず、そもそも覚悟をする心理状態に意味がない惨状だった。

 ……藤丸は、平和な国で生きていた少年に過ぎない。

 覚悟と言う言葉を使うことにさえ、僅かばかりの羞恥を覚える思春期の男だ。

 だが、その意味を正しく知る事態に陥る非日常を前にし、自分の常識が如何に無力で脆い世界だったのかを肌で実感するしかない。

 

「アタランテ……!」

 

「――――――――」

 

 その呼び声に応え、アーチャーはまた矢の雨を降らした。都市には男だけでなく、女も幼い子供をいる。だが、それらに構わずサーヴァントはマスターの声に応え、問答無用で宝具を解放する。

 本来ならば、子供好きな彼女からすれば有り得ない事。相手がサーヴァントならば姿形に拘らず殺害するも、中身まで子供なら相手が英霊でも殺害に魂まで歪ませる罪悪感を覚えてしまう。よって市民を相手に対軍宝具を向けるなど、言うなれば戦いにもならない残虐な殺戮行為。現代の戦争で例えるなら、老若男女全ての一般市民が日常生活を送る市街地へ無差別空爆を行う倫理を失くした鬼畜外道の所業。

 許されない罪科だ。許してならない罪悪だ。

 殺す相手の顔も名も必要とせず、蟻を踏み潰すように人の命を吹き飛ばす。

 これを良しと笑って明日を生きる人間は、本当にもはや人間としか言えない怪物と成り果てる。

 

〝引き金を引くのは、俺……ッ―――自分自身じゃないと、駄目なんだ”

 

 特異点へ突入する前、藤丸へ所長が言った事は全て正しい現実だった。サーヴァントを従がえるマスターの役目とは、そうであった。目を逸らせば、やがて罪に意志が呑み込まれる。

 何時か、現実に直面する時が来る。

 やがて、罪が魂に溢れる時が来る。

 あらゆる残酷な事実に耐えるには、予感をしておくこと。フランスであった事が今日また目の前で起きるかもしれないと、特異点で活動する時は脳を加熱させておかねば、思わぬ事態に行動が停止する可能性がある。戦いの中、手が止まる醜態を晒してしまう。

 

〝―――言い訳を、自分にするな。

 目を逸らすな、戦いから逃げるな、背中を向けるな”

 

 殺しているのは、元人間の怪物。だが、剥き出しの魂となった人間の本性。理性と言う倫理の皮を精神から失くした人間が至る姿。

 人間ではないが―――殺人である事に、間違いはない。

 化け物のような人間もいると、彼も分かっている。殺さなければ市外を突破出来ず、襲い掛かって来る人外市民を撃退しなければならない。気絶も出来ず、無力化は不可能であり、半端に殺すだけでは不死故に甦る。

 止めるには概念武装によって、生命を断たねば意味がない。

 サーヴァントの神秘によって、概念で押し潰す必要がある。

 フランスにおける吸血鬼と同じ存在。亡者とも言える人の成れの果て。だから、分かってはいる。殺すしか道はなく、命を奪わないと自分達が皆殺しにされる。人理焼却から人類は脱せず、カルデアは生存期間を無為に過ごして自滅する。

 藤丸とてカルデアに来る前は殺人など見た事はないが、人間と言う生き物が善である等と過度な期待は一切していない。人は人を殺すだろう。強姦もするだろう。あらゆる罪科の積み重ねが人類史でもあるのだろう。

 だが此処まで、罪深く在って良い訳がない。死体が街に飾られている。頭に袋を被さられた人間が、逆さ吊りにされて、槍に串刺しにされ、磔にされて燃やされてもいた。刃物で解体している最中の惨劇もあれば、乱交会場となった大通りもあった。幼い女児が男を素手で四肢を捥ぎ取り、達磨になった胴体で料理ごっこで愉しんでいた。妊婦の胎に素手を刺し込み、水子を取り出し、違う女性の胎に捩り込んでもいた。人間の生きたままに工作素材にし、意味の分からないオブジェクトを人々が協力して作り上げていた。人と人の首を差し変え、四肢や胴体も換え、人間のパーツを使って新しい人間を組み立てていた。苦悶の梨で飾った人を吊り下げて飾り、鞭を振い、ナイフを投げ、斧を投げ、矢を射ち、的当てのゲームをしていた。全身を縛り付けて芋虫にされ、地面に横たわる人間を貪って内臓を食べていた。

 狂気が伝播する。脳を侵す汚物が流れ込む。

 殺意が無ければ正気を失う地獄。憎悪も無くして理性は保てない悪夢。

 

「―――進み給え、人間の少年。

 人生は迷う故に苦悶で満ち、その痛みに耐え続ける悪夢なのだよ。

 そして貴公の生き抜く意志がなければ、人理に明日は無い。責任もなく、責務を問う者もないが、貴公だけがその運命に選ばれた」

 

 藤丸立香に、悪魔殺しは現実だけを教えた。この世が、ただそうなのだと無理矢理にも理解させる言霊だった。

 

「おまえ……!」

 

「良い敵意だ。普段は隠しているが、貴公にとって私は友を隻腕にした元凶となる男。憎しみを持たねば、マシュ・キリエライトに向ける貴公の感情も虚偽となる。

 それを、捨てずにいるが良い。一度でも心が折れれば、貴公は今以上の無力感に精神を殺される事となる」

 

 悪魔は地面に手を当て、味方を除けて周囲に火炎柱を噴き上げる。ソウルごと灰燼へと市民を焼き尽くし、その魂を自分の口へ吸い込んでデモンズソウルの養分として貪った。

 殺人とは食事。殺戮は暴食。虐殺は宴である。この地獄を普段の日常と変わりなく感じるその姿は悪魔でしかなく、むしろほのぼのとした雰囲気で気軽に命を刈り取っている。

 

「理解は出来ぬだろうが、あの星見の狩人では人理を取り戻せるが……人類の未来は、決して救えないだろう。即ち、彼女だけがマスターならば貴公らのカルデアに明日はない。

 我らの所業を怒れる貴公でなければ、恐らく縁は消えて無駄なのだ。

 藤丸立香よ、貴公はただの人間で在り給え。運命には関係ない事だ。

 私はとても、素晴しき因果律を有した貴公のソウルに期待している」

 

「………………」

 

「あぁ、今は無言で良い。それが正しい選択だ。戦いの最中、悪魔狩りの奇人が発する警句など戯言だとも」

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「―――………戦術、戦略。策謀、策略。

 お互い、人並み外れた軍師ですのに関係ありませんね」

 

 魔都ローマから反乱軍と羅馬軍の戦局を確認していた灰は、暗帝と話し込んでいる内に戦局が大分進んでいることに驚いていた。異形化市民兵は駆逐され、改造人間飛将軍と反乱軍サーヴァント達が殺しっている。そして、今はエルメロイ二世とステンノが、陳宮とレオニダスとタッグバトルを行っている。

 レオニダスの守りを抜くのに、女神の神秘はかなりの有効打。物理的攻撃に対して強い盾の槍兵を仕留めるのに、彼女を使った軍師の眼力に狂いなし。

 だが、その天才軍師が超軍師と殴り合っているのは血濡れの泥沼だった。体術を得意とする者同士ではないので、一撃必殺の轟打を放つことは出来ず、ジワジワと生命を削り合う泥仕合。そして超軍師とのラインを灰は薄め、宝具の贄として灰の生命を使うのもない為、インチキ軍師を己が拳で殴りたいと言う衝動の儘に超軍師は戦場を愉しんでいるのだろう。

 

「虚空を見上げて独り言とは……貴様、狂ったかね?」

 

「レフさんにだけは言われたくありませんね、それ?」

 

 宮殿の前、聖杯に羅馬のソウルを注いでいる暗帝の頼みを受け、教授と灰はカルデアを待っていた。

 

「独り言の多さでは其方に負けます。それと、これは貴方に聞かせていたのですよ?」

 

「ふん。ああ言えば、こう言う女だ。会話するのも気が滅入る」

 

「良く言われます。言い訳好きの責任逃れとも。自分の所業を直視したくない人間に、他者から見られるのかもしれませんね」

 

「ほぜけ。業好きの屑め。人を煽るのが好きなだけだろうが。好んで面倒事に首を突っ込み、厄介事を娯楽にする者が、自分を見繕う為の言い訳などするか」

 

「良く観察してますね。その通りです。侍のような詫び自殺をする誠実な人間だとも、私も自認していますから」

 

 特に意味もなく人の眼前で投身自殺をした過去を持つ灰は、死ぬことが責任を取る事にならないのを理解していた。強いて言えば、限界を遥かに超えて現実と戦い、魂が崩壊して精神が燃え殻となっても苦しみ続けることがそうなのではないかと考えている。

 

「誠実な人間はな、武士の切腹を詫び自殺と(なじ)らんのだよ」

 

「グウの音も出ない正論、有難う御座います。しかし、レフさんも偶に無性に、何千何万回も死に続けてみたくなる気分に陥ることってありませんか?」

 

「――――……さぁ?」

 

 死にたい。あるいは、死ぬべき。その想いは有った。だが教授は死に時を逃したが故にカルデアで教授として働き、結果としてそのカルデアを裏切る為に生きていた。

 

「オルガマリーもその類ですから、三人で御揃いですね。トリオ・デ・フッシーとか、組んでみませんか?」

 

「止めろ。本気で吐き気がする」

 

 星を焼け野原にする程に強い眼力で、教授は灰の戯言を全力で否定。実際、濃密な呪詛が視線に乗って灰を襲うも、彼女の暗い魂からすれば蠅が肌に止まったとしか思えない程度。

 火の簒奪者(アッシュ・ワン)からすれば、魂を熱却処理する炎など熱いとも感じられない。

 

「つれない態度ですねぇ……ふふ。それでは久方ぶりに再開するオルガマリーから、あのダンディー・ライノールがって愛想を尽かされてしまいますよ?」

 

「戯けが。この局面でも人を揶揄する性根が気に喰わんのだ。

 私が人間に言える台詞ではないが、敵なら敵として、真面目に殺せ」

 

「何時も自分の魂には真面目ですから。しかし心配性なので、必要なことを必要分を越えて過剰に行ってしまいます。

 レフさんにはリラックスして貰いたいと考えていましたが、要らない気遣いでしたか」

 

「ああ。本気で要らぬお節介だ」

 

「それとレフさん。御節介と言えばカルデアの皆さんに、私からジャンヌさんとその家族について伝言がありまして。殺し会う前、少し話をしておきたいのです。

 人類史において彼女をレイプして殺したのはブリテンの、魔女狩りが性癖で拷問と処刑に興奮する鬼畜外道の侵略者でしたが、特異点で妊娠した暗い水子を上位存在の赤子に蘇生したのは私です。

 まぁ正確に言えば、狩人の上位者に彼女が古都の贄として必要であり、強いては汎人類史が詰む点を皆さんが保証可能とする布石でもありましたので、人類全てにとって有益な特異点だったと言えるでしょう。

 私の友人になったジルさんも、ブリテンの胸糞悪い審問好きと聖女を売った涜神者へ報復を行いつつ、世界を救う手助けを出来たとなれば、救国の元帥としても、子供好きな青髭としても、魂から本望だと嗤って死ねたことでしょう」

 

 欺瞞を嗤う。それを繁栄に必要とする人間を、魂から嘲る。灰が棄てた世界の神が人間を贄と駒として利用したように、神のように人間を使い捨てる抑止と人理を灰は哂う。

 ―――愉しい、とソウルから笑った。

 楽しい人の世界だと―――微笑んだ。

 自分の探求さえ利用する抑止の人間運用を灰は尊んだ。

 

「貴様、何を言って―――」

 

 神が何故、神なのか。その視点を得て、必要だからと欺瞞を為し、それをこの特異点でやっと終えられる。

 社会の模倣にして、神の真似事。人間が人間として生きるのに、魂に真実だけが在れば良かったが、此処では在りの儘に生きて死ぬには愉しい不純物が多かった。

 この世界に流れ着くも、呪われ人となって探求を得て、枯れて墓に入るも灰として蘇り、ロスリックで繰り返す残り火となった火の時代の最後。あの日々の長さからすれば、灰の人生にとって二千年は余りにも短過ぎる。

 殺すだけで良く、殺されるのも当たり前。そんな灰にとっては慣れない偽善と偽悪。魂ごと偽り、人間性を人理へと最適化する。

 

「―――嫌ですね、レフさん」

 

 簒奪者は、もはや灰ではなかった。墓から甦った火の無い燃え殻が灰であり、火を宿した灰は神でも人でもなかった。

 暗い、暗い魂なのだ。

 太陽を黒く呑み込む黒い孔。

 故に名は亡く、何者にも成れぬ者。

 只の、何でもない人間と言う現象。

 

「騙して悪いが、と言うお決まりですよ」

 

「なに……?」

 

「ジルさんは良い人間でした。善に真剣で、故に悪に真摯な英雄です。言葉通り、本当の意味で良き人なのです。彼を人理焼却の特異点発生の元凶に選んだ獣は、千里眼に相応しく人を見る目をお持ちでしょう。

 彼の望みは―――私にも、貴方達にも、そして人理にとっても有益でした。

 保険と言うものは大切ですので、ええ……魔神による再誕失敗も私は考慮する必要がありますから。

 ですので、貴方達には思う儘に事業へこのまま没頭して欲しいと考えています。どちらに……いや、どのように結果が転ぼうとも人理定礎が固定された点より、平行世界の枝がまた伸びるのですからね」

 

 何を灰が見ているのか、獣には分からない。獣性では、人間の悪意を理解出来ない。教授は悪寒を覚える事も出来ず、悪意を持たない空の魂に騙されるしかない。そう言う人間だと分かった上で、嘘が何一つなく、笑みは優しく、魂が問答無用で表情通りの印象を刻まれる。

 まるで感情を白紙のキャンパスに描かれる様に。不死ではない魂に灰の魂を察することなど出来ないと、その事実を“簒奪者(ニンゲン)”は人間に悟らせない。

 

「ほぉ、成る程―――……うむ、成る程?

 探求者、アッシュ・ワン。貴様は相変わらず、思考回路が全く分からん。そも失敗など有り得ん。見給え、あの我らの作り上げた光帯を」

 

 空の向こうの、宙に浮かぶ光の輪。地上を焼き払って得た魔術式の神秘。

 

「綺麗ですねぇ……フフフ。人間の文明って一皮剥けば、ああも美しい形になるとは思いませんでした。エネルギーの有効活用は大切です。

 しかしながら、己が創造種族を放っておけば勝手に増える自然燃料扱いとは。造物主を愛するように作られた筈の被造物が、その愛する意志を持つ故に悪を覚えるとは面白い魂です。

 貴方(アナタ)方は人間から愛される事もないと言うのに、憐憫を人として覚えてしまいましょう」

 

「―――……言い合いを、貴様とするものではないな。

 我ら以上の年寄から見れば、絶望と恐怖のない世界を夢見る事を、悪夢に眠り疲れた子供と逆に憐れむと言う訳か」

 

 まるで幼子を見る瞳をする灰。教授は気味の悪さを何時も通りに覚えるが、カルデアでは誰に対しても似た雰囲気だった。

 オルガマリーは例外であったが。強いて言えば、あれは実験動物を解剖する研究者に似た好奇の瞳だったかもしれないと、今になってその感覚に教授は辿り着いていた。

 

「この世を悪夢とは。貴方達らしい達観ですね。人理を取り戻そうとするカルデアの皆さんが聞けば……いえ、取り戻すべき人類史が地獄の頂点に位置する欺瞞の世だと知っても尚、立派な魂を持った人間は生きることを諦めはしませんか」

 

「だから、燃やした。己が正しさだけを妄信し、作り上げた文明を正しいと盲信し、その所業を美化する狂った知性。その様から進化出来なかった化け物だよ、人間共はな。

 しかし、悪夢か……まさか、そう言うカラクリかね?

 魔元帥の欲望の儘に動かしたのは、貴様の悪辣な趣味嗜好だと思ったが?

 千里眼でも覗けぬ……いや、一目見れば魂が狂気に侵される異界から来た魔物と関係が?」

 

「あの狩人とは協力関係にありまして、フランス特異点は赤子の素体作りが彼に対する私からの報酬です。葦名が其処の悪魔の願望を叶える為の蟲毒の壺だとすれば、フランスは赤ん坊が目覚めを得る為の悪夢でした。

 ただ、それだけの特異点ですよ。

 目的と手段を揃えてこそ、探求の一歩は踏み込めますからね」

 

「成る程……正しく、貴様は魔術師だ。我らの願望自体が、そも貴様にとって利益となる訳か」

 

「はい。因果を正す為、運命を糺すのが私の使命ですので」

 

「まぁ良い……事、此処まで来れば裏切りも何も無い。人類史の最後まで付き合って貰おう」

 

「勿論ですとも。自分達を守る筈の被造物に愛想を尽かれた人間の最後は、とても見応えがありそうで楽しみです……―――あ。来ましたね」

 

 焼き払われた森より魔都に突入したカルデアと抑止のサーヴァントを灰は確認。邪魔となった人間性を暴走させた市民を殺しながら走り抜け、到達地点である宮殿前までやって来た。

 灰と教授を確認した時、カルデア側は二人を狙撃しても良かった。

 接敵する為に攻撃を行った方が、より効果的だったかもしれない。

 しかし、それを選ばなかった。遠距離戦をするよりも、向こう側が近付くのを誘っているのなら、まずは敵陣戦線の突破を優先すべきと判断した。

 

「アッシュ・ワン――――!!」

 

「はい。お久しぶりですね、オルガマリー。後、カルデアの諸君との再会も嬉しいです。それと其処の悪魔、何をやっているのですか?」

 

「侵入者として、貴公が世界を愉しめるように礼節を尽くしていた。だから、邪魔をした。ほら、葦名の外側では契約の効果範囲外ではないか?

 それとも貴公、もしや行儀良く敵味方に拘り、殺し合いが許される場所で闘争を行わないとでも?」

 

「何と言う正論ですか。確かに、その通りです。我ら不死にとって、命が奪い合えるのに人を殺さないで我慢する方が不健全でしたね。もはや、この特異点には利益も不利益もないのですから」

 

 不機嫌を装った顔を一瞬で無くし、灰は言葉全てに納得して頷いている。しかし、カルデアの中の一人を見て少しだけ驚いた。

 

「あれ、清姫さん。また出会えるとは、一度絡んだ運命は離れ難いのでしょうかね」

 

「誰です、あなた。初対面で馴れ馴れしい声色ですね」

 

「貴女の元マスターですよ。あんなに愛し合ったと言うのに、これが寝取られと言う文化ですね。この浮気者め、と罵っておきましょう」

 

「はぁ……ッ―――!? ちょ、ちょっと言い掛かりは止めて下さい!!

 しかも旦那様(ますたぁ)の前で(わたくし)を浮気者扱いするなんて、もう燃やすしかありません!!」

 

「えー残念です。まぁカルデアに召喚された貴女は私の事を雰囲気何となくでしか覚えていないでしょうけど、愛して欲しそうだから私も愛を演じてみただけですので、えぇ……すみません。実は愛って良く分からないのですよね。

 恐らくは獣性的本能から作られる衝動を愛と名付けて呼んでいるのでしょうが、衝動そのものが無い場合はどうすれば良いですかね。奪った魂から、心が欲しい、肉を貪りたい、性を交じりたいと言う感情が生じる大元の衝動も模倣出来たのですが、どうも酔い切れなくていけません。

 人が欲しいって、どうするのか分かれば良かったのですが。

 涙が流せる魂が私にも皆さんと同じくあると言うのに、とても可笑しな話です。

 アナタ達人類種が生み出したその虚構を現実として信じる人間性を、取り戻せればあるいは……清姫さんを召喚した時、あるいは……と、一人の女として期待はしたのですがね」

 

 侮蔑と、軽蔑。清姫の生前を、まるで人を解さない獣ような瞳で憐れんでいる。所詮、愛を語ろうとも罪人は罪人。罪が魂から消える赦しはこの世にない。

 

「――――……殺します。焼いて、殺します。

 言葉に嘘は一つもありません。つまり、あなた……本気で、私の愛を哂いましたね」

 

 灰が彼女を本気で愛そうとしたのを、清姫は理解してしまった。精神を理解し、感情を把握し、思考を読取り、魂を知られた。愛する為、全てを呑む様に啓かれた。

 故に、何一つ嘘はない。清姫の愛が持つ熱量を過不足なく解した上で、灰は嘲笑っていた。自分の魂を温めるには余りにも熱が足りないと。

 

「はい。清姫さん、貴女は私と似ています。誰も貴女は、その人をその人として愛せない女です。自分の中の幻に囚われ、過去の自分が報われないと前に進めない死人です。

 死に切れない綺麗な魂だと……私は、本当に思ったのですよ?

 己が感情を燃料に焼かれた火を、私が求めずに誰が価値を見出すのでしょう」

 

「……この、この――――」

 

「清姫」

 

 静かな声が、理性をまた失おうとした意志を冷静に戻す。

 

「―――っ………旦那様……いえ、藤丸立香さん。私は……」

 

「大丈夫だ。俺は、清姫のマスターだから」

 

 藤丸は今の清姫が、狂気がないために不安定なのを分かっている。彼女にとって愛は熱狂であり、自分の火で自分を燃やさずにはいられない少女である。それを月光の狂気で相殺され、まともである精神が自分の愛を客観視してしまう。

 それを藤丸はあっさりと認めた上で理解を示す。精神攻撃を受けたサーヴァントを安定させるのも、彼にとってマスターとしての責任である。

 

「はい、はい。すみません、マスター。これからも、ご迷惑を掛けると思いますけど、私はあなたのサーヴァントでいたいと……今も、昔を忘れられなくとも……そう思っております」

 

「美しい人間関係ですね。何やら満たされているようですが、清姫さんは―――」

 

 だが、追い打ちは灰の嗜み。精神攻撃も関係ない。いや、むしろ相手の戦う意志を挫く事が不死同士の殺し合いではより重要。命を奪っても意味がないなら、心を折って初めて勝利と呼べるのだから。

 

「―――アッシュ、私の職員を迷わすな。

 サーヴァントだろうと、英霊だろうと、カルデアの一員は私の保護下にあります。裏切り者には関係ないけど、それでも傷を付けると言うならより惨く、より酷く、貴女を狩り殺す」

 

「うーん……まぁ、そう思われても仕方ないですかね?

 私なりに本心からの感謝と謝罪と、嘲笑だったのですが……いえ、嘲笑の部分は隠した方が思いは伝わり易いのも分かってはいたのですがね?

 ですがほら、清姫さんに隠し事をするのも失礼かと思いまして。

 思ってしまったのでしたら、素直に言うのが元マスターとしての礼儀と言うものではないかと、ねぇ?」

 

 言葉を交わす事に意味はないと所長は察してはいた。出会って直ぐに殴った方が利口だとも。しかし、そうはさせないのが灰の厭らしい点。相手へ不意打ちをさせた方が自分に利益がある戦場を構築し、思い通りに戦略を運び込む。

 カルデアは、出来れば悪魔を囮にして此処を素通りしたい。だが灰へ不意打ちをして、言葉を無視して攻撃すれば、全員を通さない様に嫌がらせでしてくる可能性が僅かにある。それを解する灰は、相手が教授と並ぶ自分を無視出来ないと全て分かった上で、戦場では無益な無駄話を聞かせている。あるいは、これを聞かせる事自体が目的なのかもしれない。

 

「クソ、糞、この糞女―――匂い立つわ。

 分かってはいたけど、貴女と煽り合いする私が愚かだったわ……」

 

 冷静さを意識しても苛立ちが募る。殺意の儘、骨髄の灰を込めた教会の連装銃(リピーティング・ピストル)を無意識に構えていた。

 それを見る灰は所長の戦略を見抜いている故に、その机上の策へ乗る。

 むしろ、最適解としてそう考えさせる為の、ローマの戦略でもあった。

 

「仕方ありません。私への不利益も別にありませんからね。

 オルガマリーの思惑も分かりますし……ふぅ―――其処の悪魔殺し、相手をして上げます」

 

「うむ、予定調和だな。貴公は人間性が腐っている。元より、暗帝に彼らだけで戦わせる気であっただろう」

 

「はい。邪魔ですからね、私達は―――」

 

 ―――パン、と遮るように銃弾は放たれた。会話の途中、何の脈絡もなく、灰へ二連銃弾が襲った。真正面からの意識外の不意撃ちであり、直感を持つ達人の英霊でも第六感の隙間を通る絶技である。だが強化された弾丸二発を騎士直剣で弾き逸らし、忍びと同等の技巧で以って灰は無傷。

 しかし、それも当然である。灰は新しい技巧と神秘と加護に貪欲であり、今の極めた業を更に鍛え上げる向上心の権化。

 古い獣が眠る葦名で溢れた日ノ本伝承のデーモンを狩る日々。そして、あの葦名は銃弾を容易く見切る音速戦闘が常識の達人が溢れ、その死んだ忍びがデーモンとして甦って人間のソウルを食べる地獄。それを簒奪者は新たな業として学び、その上で互いに殺し合い、技巧を鍛え続ける日常。

 

「流石、月の狩人の娘。星見の狩人と言った処でしょう。殺意よりも迅速に銃弾を撃つとは、死に慣れた不死ではないと見逃してしまいます」

 

 その動きを見ただけで所長は全てが啓蒙された。あの女はフランスの時よりも更に強靭な魂へと練り上げ、己が業を鍛え上げていた。

 

「―――黙れ、アッシュ。良い加減、一度くらいは私達の手で死に給え」

 

 また所長は撃つも、灰に弾き逸らされた。恐ろしいのは当たると同時に液状に破裂する二発の水銀弾を、どう言う技巧で行うのか分からないが、刃幅の短い直剣で弾き飛ばすと言う魔技だった。そして、盾で防げばより楽に守れると言うのに、敢えて剣で防御すると言う挑発行為。

 あれを自分が出来るのかと鍛錬不足を所長は葛藤した。

 まだまだ殺し足りない。狩りが足りない。武器を振り足りない。

 狩り殺したくて堪らないが今、血管から湧き出るその狩猟衝動に身を任せる事を、理性が彼女に許さない。

 

「……スレイヤー、協力者として要請します。とっととあの女の魂を奪い取れ」

 

「分かっているとも、星見の狩人。何時も通りの、魂狩りの職務だからな」

 

 オン、と魂から灰の魔力が迸る。悪魔を見た灰は、楽し気に貌を歪める。殺し合いの出来る本当の人間と魂を賭けた戦いこそ、より強く進化する為に必要な経験。同時に、より暗く深化する為に必要な儀式。

 火の簒奪者以外の“不死(ニンゲン)”と邂逅出来た事が、本当に僥倖なのだと灰はソウルの深淵から理解していた。

 

「憐れなる不死の隣人、悪魔を殺す者(スレイ・オブ・デーモン)なる人間の成れの果て。黒い盲の悪魔を神殿より解き放つ為、律儀にも古い獣より人間種を守護し続ける旅する要人。

 どうか、殺して見て下さい。そして、御照覧あれ。

 私が鍛えたのは命を奪う為の殺人の業………そうですね、殺戮技巧だけではないのですよ。

 己がソウルを極め続けるとは、この闇を更に深め、貪った火を強く燃やし続ける事に他なりません。勿論、あらゆる神秘に対する知識も深め、見識を広める事も、この魂を鍛え上げる大事で面倒な鍛錬でした」

 

「同感だな。心まで燃え殻となり、生前の遺志も枯れた不憫な灰の人(アッシェン・ワン)。贄の炉となった貴公のソウルは何と言えば良いのか……むぅ、そうよなぁ……大雑把に暗過ぎるのだろう。

 だが、それで良い。我らは時間だけは贅沢に使う事が許されている。

 あれもこれもと己がソウルで貪り、己が業に節操なく取り込み続けなければ、そもそも生きている時間が無価値になってしまう故に。

 まぁ等と言いつつも、結局は生身での殺し合いこそ最大の喜びであるのだろうが」

 

 殺し合う前の口上など実に贅沢な時間の使い方。だが永劫を生きるしか未来がない不死が、人の命を奪う罪業に効率など求めて如何すると言うのか。其方の方が余りにも無様であり、無駄のない殺戮など記憶にも残らない。

 感動など……―――否、葦名から此処まで、心が蠢く感動の日々の連続だ。

 ありがとう、と笑みを浮かべよう。全てのソウルの業を啓蒙した獣との邂逅こそ、この世界に漂流した簒奪者が得られた幸運の始まり。竜が支配していた古い灰の時代より始まった“人間”が本当に死ねない原罪を、その大元の罪が生まれた根源を探求する機会が今。

 何よりも、人間種をこれまで守った悪魔(ニンゲン)に感謝を。

 これより、無色の魂で絵画を描いた人間(デーモン)へ祝福を。

 

「えぇ、えぇえぇ。そうですとも。そうでしょうとも。

 ですからねぇ……ふふふ。悍ましきデーモンが大好物な悪魔が相手となれば、こう言う趣向も卑怯にならずに嬉しいです。

 必ず勝てる手を使った勝負なんて、そもそも相手の命を愉しむのに失礼極まりましょう?」

 

 ―――オォン、と世界が捻れた。

 空間が砕け散る不協和音が街全体に響き渡り、人間の魂に災害の足音となって聞こえてきた。

 

「―――――――――――」

 

 皆が、余りの威容に黙るしかなかった。

 見た事もない異様な姿に思考が止まる。

 

「カルデアの皆さんでしたら、フランスでは良く見ましたでしょう。ドラゴンですよ。竜種など、もはや珍しくもない生き物ではないですか。

 ですが、この世界の竜種でドラゴンもどきのワームはまだまだ珍しい部類でしょう?」

 

 個体名、カーサスの砂ワーム。全長百メートルを超える気色の悪い大蚯蚓。それが動く。ただそれだけで市街地が崩落する。

 ワームが地面に潜ると石作りの道も建物も盛り上がり、何もかもが破壊されて崩れ落ちる。巨大であるだけで、人は死ぬ。

 藤丸もマシュも、その余りにも悍ましい存在感に嫌悪した。灰はまだ、余りにも強靭で膨大な魂で理外の人間だったが、この竜種は魔術師の感覚で何となくでも把握する事が可能な怪物だった。

 無数の人間が、死骸となってまだソウルが消化されている。

 不死の人間が、魂を生きた儘にワームの素材となっている。

 果たして、何で作られているのか、考えてはならない生物。

 何をエネルギーにして口に雷撃を蓄えているのか、何を食べているのか、知らなくても良い事実。

 

「……何なのですか、これは―――?

 何がどうして……ぁ、ぐぅ……うぁ……何が、どうなってそんな化け物が……」

 

 聖なる加護を持つデミ・サーヴァントから見ても、正気が削れるナニカだった。藤丸は脳味噌が停止する感覚に陥り、フランスで見た竜種と余りにかけ離れた異形に理解することを拒絶する。

 啓蒙(インサイト)とは、気付きである。

 あるいは、知るべきではない未知へ対する洞察力。

 僅かとは言え、狩りの血が流れる星見の盾は、脳が啓かれる快感を覚えてしまう。

 

「――――ローマ。おぉ、ローマが喰い漁られるとは。

 だが、特異点(ローマ)は黒い染みの孔なれば、一夜に見る暗い悪夢に他ならぬ」

 

「神祖殿。だが、これもまた現実」

 

「ならば月光が、我らの狂気を癒しましょうぞ」

 

 気が付けば、三人の皇帝が並んでいた。盾騎士は啓蒙をまた覚える。

 

「貴様らは憐れだよ。何故、このローマへ来たと言うのかね?

 まさか、まだカルデアの諸君は勝てると言う幻想を抱いているのか?」

 

 力の抜けた笑みを教授は浮かべ―――肉の、瞳が生えた柱が一つ生まれていた。盾騎士の脳が震えた。

 

「熱い火のような絶望を皆さんにどう演出しようかと悩んでいたのですが……これ、とても分かり易い恐怖でしょう?」

 

 何時の間にか毛皮のコートが付いた騎士甲冑を灰は着込み、普段は見せている貌を隠している。ファーナム騎士の鎧であるが、灰にとってそれは絶望を焚べる者にこそ相応しい姿。

 嘗て闇から魂を救いたかったが、それを諦めた後悔の形。

 因果に挑み、運命に敗れ、心が折れる呪われ人の戦闘服。

 一目で絶望を人の魂に叩き込む不死の遺志が染み込み、瞳を持つ狩人は永劫を生きても果たせない最悪の絶望を啓蒙されてしまった。オルガマリーは、この世で最も最悪なカタチに至る絶望を垣間見てしまった。

 因果に敗れた騎士姿(ファーナム)こそ、灰が持つ全ての鎧の中で罪悪の結晶だった。

 己自身と称しても良かった。墓に眠る前、この鎧は闇から人のソウルを救えないと理解した時に棄てた筈なのに、灰となった彼女はまた旅の中で拾ってしまった。生前の記憶を取り戻しても捨てられず、まだこの鎧を克服する事も出来ず、恥知らずにもカルデアの前で見せていた。

 

「あ、ぁ……っ―――あぁぁああああ、うぅぅ、ぁぁ……この、アッシュ・ワン………!」

 

 絶望。空の器。燃え殻の魂。望みが絶たれ、何も無くなる人生。死ぬしかないのに、死ぬことも出来ない。この世の終わりまで眠るしかないのに、目が醒めてしまった。

 ―――闇。深淵。暗黒の底。

 暗い。死ねない。魂の永劫。

 遺志は無駄だった。人間も同じだ。

 諦めが、救い。心が折れた時、人は休めるのに。

 自分がやがて同じように、そう成り果てるしかない永遠の先の未来――――オルガマリー・アニムスフィアは、きっと諦められないのだと悟ってしまった。

 

「貴公、まだそれは絶望ではないぞ。気を確かにし給え」

 

 暗くなった片目から血を流す所長の肩に、悪魔は優しく手を置いた。

 

「スレイヤー……?」

 

「あやつの絶望は、もう終わりを迎えている。絶たれた願望を諦められぬ故、苦しむ為に戦っているだけの存在。いや、苦しみ続けなければ魂に深化はないと理解した人間。

 私も同様、人が住まう世界など幾度か救う程度で満足すれば良かった。魂には底があると人間らしく見限り、人が選んだ世界の間違いを正そうとしなければ良かった。自分自身の魂は此処で限界だと諦めれば良かった。

 しかし、貴公はまだ旅路の最中。

 やがて、使命を全うした末に己へ絶望するのは逃れられぬが、まだ始まってもおらぬのだ」

 

「ぁ……ッ―――」

 

 全身に着込む騎士甲冑。その兜の奥で煮え滾る悪魔殺しの騎士(デーモンスレイヤー)の瞳。それを所長が見た時、ヤーナムで得た全ての啓蒙に匹敵する絶望が、悪夢となって脳の瞳に映り込む。

 ―――悪魔、だった。

 デーモンは人間ではないが、だが人間はデーモンへとなれた。

 彼と言う何でもない人間は、悪魔を超える知性へ進化出来た。

 真性悪魔など所詮は人間の餌。全て喰らう魂が人間と言うデーモン。何故、と言う疑念も纏めて呑み込む深い霧。

 

「―――あく、ま……?」

 

 オルガマリー・アニムスフィアにだけ、デーモンスレイヤーは本性を露わにした。彼の言葉には何一つ虚偽はなく、人の世から生み出る悪夢はヤーナムだけでには収まらない。

 何処からも無く、霧が溢れ出る。濃い霧が宙から吹き荒れる。

 降り立つ者―――濃霧からの尖兵、デーモン。獣が惑星に住まうソウルを蒐集する生命。

 

「無論。私は人間のデーモンである」

 

 頭部が竜の形をした人型。背中より生やした翼を大きく広げ、二重の牙顎を有し、六本指の手を持つ巨人のようなドラゴン。あるいは、ドラゴンのような巨神。

 古い伝承より甦った者。

 名付けられたデーモンの名―――竜の神(ドラゴン・ゴッド)

 

「そして、私のペットを紹介しよう」

 

「――――――――――!!!」

 

 雄叫びである。

 大噴火である。

 

「絶望を焚べる者よ。貴公、竜が趣味であったな。見給えよ、これが人間に駆逐された憐れなドラゴンの神である」

 

 ワームから吐き出る雷電咆哮。

 竜の神から吹かれる火炎吐息。

 爆散する力の衝突。破壊が撒き散らされる新たな地獄。

 雷撃から市街地を破壊し、竜炎が石作りの街を溶岩に変化させる。その瞬間、全員が敵味方関係無く全力で戦域から離脱。

 

「ちょっ―――はぁ! 馬鹿なの、阿保なの!? 死ぬの!? むしろ死ね!!」

 

 所長、全力全開の罵倒。しかし、あれを咄嗟に盾で防ごうとしたマシュと、彼女に守られることに良い意味で慣れた藤丸を片腕づつで刹那もなく米俵持ちし、所長は遺骨による加速で全力疾走。真名解放したマシュの盾なら大丈夫かもしれないが、その暇もない強襲では死ぬ可能性は非常に高い。

 所長の圧倒的初速の早業はこの場の誰よりも迅速であり、それに釣られて全員が逃走に成功した為に無事ではある。身動きがし辛い一柱を除いて。

 

「グワァーー―――――!」

 

 魔神柱化してしまった教授は咄嗟に逃げられず、ワームの対抗として召喚された竜の火で少し焦げる。魂そのものが燃焼する壮絶な苦痛に叫び声を上げるもだが、流石のレフ・ライノール。巨体だろうと構わず空間転移をすることで全焼する事態は逃れられた。

 

「―――アッシュ・ワン! この、貴様!!

 自信たっぷりで出した手駒がこの様だぞ!! 恥を知れ、恥を!!!」

 

「すみません……いや、本当に」

 

 次の瞬間、空間が割れる轟音が響く。竜の神が砂ワームの頭部へアッパーを喰らわす音だった。ドラゴンの頂点に位置する神秘と巨体なのに、戦闘方法が完全にグラップラー。全身を使って筋肉をバネとし、衝突の破壊力を一点集中する殴り方。

 拳に全体重を乗せた文字通りのジャイアント・パンチだった。

 そして、宙に浮いた砂ワームの尻尾を掴み、頭上でそのままカウボーイの投げ縄のように振り回し始めた。遠心力が莫大な運動エネルギーを生み出し、そのまま市街地が広がる地面へ叩き付けた。ワームは渾身の苦痛を込めた絶叫を雷撃と共に叫び、竜の神は竜殺しの雷撃を全身に味わうも、構わずまた叩き付ける。叩き続ける。地震でローマが崩壊する程に、叩きまくる。

 

「惨い……」

 

 思わず、影に徹していた忍びが感想を漏らす。葦名で作られた注連縄の巨大人形に匹敵する大きさか、それ以上の人型巨竜の凶行に内心で引いていた。

 それも当然。完全に伸びた砂ワームの顔面を片足で巨竜は踏み潰す。潰す。潰す。また潰し、更にもう一度、全力で体重を乗せて踏み潰した。その挙げ句、六本指の手で掴んだ砂ワームの頭部を自分の眼前に持ち上げ、更に両手でワームの口を強引に拡げる。雄叫びと共に広く開けたドラゴンの顎によって、竜炎の噴火口がワームのソウルを確実に捕えた。

 直後、ワームの口内へ竜の吐息が流し込まれる。まるで風船だ。空気を吹き込まれて膨れ上がるようにワームは膨張する。そのまま呆気なく、砂ワームはボンと焼けた血肉を撒き散らして破裂した。

 

「え、自信満々に出した砂ワームが……私の面目、丸潰れですねぇ……いやぁ、効果的な挑発ですねぇ……得意気な顔で紹介した手下を、目の前で嬲りものにされるのは。

 ソウルが成仏寸前になる屈辱は、実に久方ぶりとでも言いましょうか」

 

 ドヤ顔に糞団子を投げられた気分になったその次の瞬間、灰は竜の神と視線が合わさった。竜の神は、その瞳が一気に赤く染まり上がる。神の殺意が一点凝固し、空間自体に過重を掛けるソウルの波動を発し、あらゆる魂が自らの重さに押し潰れる重圧。見るだけで人間は立っていられない殺気であり、生きようとする意志を奪うには十分過ぎた。

 

「――――はぁ……これ、私、本気でどうすれば良いのでしょうか?」

 

「ふざけて言ってる場合か、愚か者め!」

 

「嫌ですね。私は何時でも大真面目ですよ、レフさん」

 

 最初の火を絶やさずに見守っていた王たちの化身の、その燃え殻となった不死の誰かを記録を持つ灰は、歩く茸に殴り殺された古い記憶を有している。その時に匹敵する悪寒を、彼女は竜の神の燃え上がる灼熱の瞳に感じ取れる。

 茸人と似て、竜の瞳は全く感情が感じられない据わった目だった。

 巨竜は軽く一歩踏み出すだけで何十メートルも進み、その巨体が飛び上がれば一瞬で何百メートルも進むことになる。

 挨拶代わりの―――一殴り。

 何はともあれ殺す先手必勝の右ストレート。

 地面を吹き飛ばす隕石の如き一撃鏖殺は死。

 翼を広げて飛び上がり、巨体を生かした重力加速のパンチを前にすれば、灰だろうと絶対の死は避けられない。

 

「―――――――!!!」

 

 瞬間―――マシュ・キリエライトは、己が業の最果てを理解した。あろうことか、灰は取り出すと同時に大盾を魔力で強化し、巨竜と盾一つで対峙。

 その時、拳と盾が激突。

 竜の体躯に対し、灰は蟻でしかなく、押し負けるのは必然。人間大でしかない灰は質量が竜と比較すれば余りにも軽く、如何に重い魂を持とうがこの世の物理法則にソウルの重量に意味はない。

 だが―――無傷。灰は掠り傷一つ無し。

 吹き飛び、地面を転がるも拳を何の問題もなく受け止め、破壊力を完璧に流し逸らしていた。

 

「―――――――」

 

 その次に来た左ストレートの二打目さえ、灰は完璧に弾き逸らす。

 

「あぁ、そんな……そんな、これが人に至れる業なのですか―――!?」

 

 正に啓蒙そのもの。盾技の究極。身一つで竜と渡り合うの為の業。脳と繋がった魂へと、マシュは己の業が何処まで進化可能なのかを強引に理解されてしまった。

 守るとは、これ。即ち、死を前に退かない絶対の意志。

 マシュの十字盾は真名解放によって堅牢と化すも、人は身に修めた業だけでそれに匹敵する魂を持っている。魂とは、ただそれだけで素晴しい力なのだと―――マシュだけは、あの大盾の業を見て理解出来てしまったのだ。

 

「裏切り者に感銘するな……って、私は言わないけど?」

 

「す、すすす、すみません所長! 今直ぐ降りますので!」

 

「駄目。マシュ、私より鈍足だし。ぶっちゃけ、ストーキング・キヨヒメよりも鈍いもの」

 

「はいぃ!?」

 

 ローマと言う地獄の中、更に混沌した地獄ような殺し合いからカルデア一向は離れる。狙いは聖杯を持つと思われる暗帝唯一人ならば、悪魔殺しは足止めの餌に使うに豪華過ぎる戦力だった。

 

〝面倒ですねぇ……ふふふ。ならばこそ、とても素敵な怨敵です”

 

 そして、二体目の砂ワームが、死んだワームを触媒に再召喚された。いや、周囲にはそう見えただけ。如何なる魔術基盤をどのような魔術理論で使用した分からない為、そう判断するしかない現実。

 ドラゴンの蘇生、その奇跡。魂を使い捨てる為の、生命の悪用。

 砂ワームに悪魔から学んだ蘇生(キセキ)をソウルに仕込み、擬似的な不死として使い捨てる魂胆。

 とは言え、瞳有る所長は悪魔の奇跡を啓蒙されてしまった。脳が悍ましい感触で震え上がり、恐らくは生きた神さえも死ねば蘇生対象とする魂への絶対冒涜。

 

〝偶には好きなだけ暴れるのも一興ですか”

 

 宙が荒れる。濃霧が滞留する大気を掻き回し、雷雲が立ち込める。成長した最初の火を燃料とする簒奪者の灰だからこそ可能な力技。

 フランスでも大量に居た飛竜―――だが、灰の呼び声に応えたワイバーンは神秘が桁外れに濃過ぎている。

 しかし、それでも竜の神は更に飛び抜けた神秘の権化。ドラゴンである時点で、この人型の巨竜に叶う道理を持ち得る訳がなし。

 

〝不死の業と成り()がった神の業、我らの奇跡。竜の形をした神へ使える好機に恵まれるとは、悪魔には感謝しかありませんね”

 

 その上で、最初の火をソウルに抱く灰が相手では無価値。左手に隠し持つタリスマンを触媒に太陽の光の槍は形成されるが、その上で更なる雷撃が凝固し、より濃密な概念が生まれ、高次元の神秘が集束。太陽そのものを燃料とした力で在る故、もはや神々の始祖である雷神の権能を超えた竜狩りの奇跡。

 ワームとワイバーンに襲われる竜の神は灰を相手に出来ず、最初の火の槍(サンライト・スピア)を前に出来る事は何もない。

 問題なく簒奪者の雷槍は放たれ――――その雷迅投槍を、ソウルの光が撃ち落とす。

 

「恐ろしい女だよ、貴公。それはいかんぞ。折角の召喚、一撃で終わってしまうのは勿体無い」

 

「厭味は好きですが、貴方のは少し魂に苦いですね。そもそも、怖いのはどちらなのでしょうかね?」

 

 二人は人間の魂として同じ領域の理力と信仰。しかし、純粋な魔術の錬度において悪魔は次元が可笑しい位置に立つ魔術師。最初の火を触媒にした槍を、己が魂だけで発するソウルの光で対消滅を引き起こすとなれば、人間を極めた高次元の魔術師でもある灰にとっても、悪魔を相手に魔術合戦をするのは一番の悪手。

 何より、飛来する雷槍を空中迎撃する命中力と瞬発力は、悪魔との撃ち合いが自殺に等しい戦法だと意味していた。悪夢を無限に繰り返し続ける聖杯狂い(ハンター)の銃撃に匹敵する早撃ちなど、迅速さで争って良い相手ではない。

 

「何だと言うのだ、これは。一体、何をどうすれば良い……?」

 

 神の鞭と呼ばれた英霊が、この地獄に対して疑問を呟く。それも無理からぬこと。濃霧から更に空飛ぶエイと巨大なエイが呼ばれた。同時に、巨大な古竜も雷雲から呼ばれ降りる。ワイバーンと砂ワームが、竜の神と殺し合う戦場がより混沌と化す。

 この世の地獄が、この世と思えない地獄で塗り潰される。まるで幻想の悪夢。世界の終わり。

 

「狂ってるってのは聞いてたけど。これ、あたしの狂気も醒める。

 なんて様―――ローマ。殺しても意味がない……こんなの、理不尽過ぎる。あたしが復讐する隙間がないじゃない」

 

 殺したい筈。殺し尽くしたい筈。己が心が死に、精神崩壊を引き起こしても暗帝を殺さなければならないのに、ローマに対する復讐心が薄れていく。殺戮の果ての虚しさを、こうも見せられて無関心ではいられない。

 

「勝利の女王よ。人代の国(ローマ)を始めた神祖(ローマ)として、お前にはこのローマを見せるのは忍びない。

 故、滅ぼしたくは戦うと良い。そのまま宮殿へ進むと良い。

 もはや駒ですらない魂の傀儡ではあるが、この匣の中身は皇帝(ローマ)であることに違いなし」

 

 暗い神祖を前に、英霊ネロは悲惨な表情を浮かべる。自分が治めた時代の、自分のローマが此処まで末期と化す光景は、受け入れて良い現実ではない。特異点と言う人類史の暗い染みに過ぎないのだとしても、やはりこの今の地獄は現実である。

 

「―――神祖殿、何故……何故なのだ?

 貴方程の御方が、どうしてこのような事に……?」

 

「我が子、ネロ。お前には、正にこの特異点(ローマ)は地獄。

 ならばこそ、戦え。殺せ。(ローマ)を、問答無用で破壊するのがお前の使命」

 

 神祖のその背後、無言で二人の皇帝は佇んでいる。黄の剣と月光の大剣を握り、カルデアに立ち塞がる。

 

「清姫。君はあの場……怪獣戦争へ、飛び込む気はあるかね?」

 

「私に貴方と心中しろと言ってますね、エミヤ?

 必要とあれば竜に化けられはしますが……無駄死に、マスターが悲しみますよ?」

 

「すまん。少し、血迷った。あれを、あの悪魔に任せるしかないのは不安でな。だがやはり適材適所こそ、効率的な戦略。私たちは私たちで、あの皇帝共を仕留めるか。

 ―――アルテラ。

 皇帝共は、予定通りに喰い止めるぞ?」

 

 そのエミヤの言葉で、地獄絵図から意識を彼女は取り戻す。

 

「分かっている……―――ネロ、ブーディカ。マスターらを連れて、行くが良い。

 あちらも、お前たちを誘っている。罠も策もあるだろうが、暗帝をカルデアのマスターと共に打ち倒せ」

 

 アルテラが持つ三色の光剣。込められた魔力に応じて輝きを増し、遠い遠い宙よりこの星へ飛来した古き者の神秘が姿を現し、現代の科学では理解不明な未知の文明技術による機能を発露する。

 闘神の怒り―――神の鞭(アッティラ)軍神の剣(フォトン・レイ)

 おぉ、と神祖(ローマ)は懐かしさの余りに感嘆を漏らさずにはいられない。見ただけで、神祖(ローマ)だけは英霊アルテラの宝具を解している。

 

「お前は……うむ。(ローマ)が相手をしよう。

 その輝きこそ、正しく我らローマを焼くのに相応しき天からの罰である」

 





 読んで頂きありがとうございました。ローマもそろそろ終盤戦ですので、頑張っていきたいと思っています。
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