これからも見て頂けると、非常に嬉しいです。
「
殺戮の火刑が直撃し、灰は燃え上がった。しかし、太陽を宿す灰のソウルを焼くには同じ領域の神秘が必要であり、全身が燃えているが無傷である。
むしろ最初の火により灰は常日頃、身の内から灼熱が煮え滾り、闇を薪に燃え上がる暗い孔の炉。魂を焼く程度の焰では、何ら意味はない。よって焔の影に隠れ、とあるアイテムを上空へ密かに投げたのだが、そんな灰は燃えながら、何故か燃えている暗帝を見ていた。
「アッ、あつ、熱いっ! 飛び火が酷い、熱いのだ!!
余、燃えてるよ!!
相手を実際に燃やすなど情熱的な愛に過ぎぬか、魔女!!」
なので灰が例外であるだけで、火の粉を被った暗帝が熱がるのは当たり前である。
「愛を偽る詐欺師がいましたので、えぇ……神罰よりも、身に沁みる応報の方が魂に響きましょう」
「これだから性格破綻の存在不適合者は、余が愛するに面白い歪さよ。
躾が甲斐が有って――堪らんな!」
「あっそ、ふーん」
変態の戯言を聞き流し、藤丸達の方へ魔女は歩み寄る。
「あら、こんな荒野で奇遇。久しぶりですね。マスターちゃん、元気?」
「元気」
「なら、良し。無事ね」
「来てくれて、ありがとう」
何かしらの、言い様のない衝動。藤丸の安心した笑顔を見た魔女は、彼の心を暴きたくなる血腥い情念が湧くも、暗い殺意を自分に向けることで下卑た欲望を浄化した。
それは、性欲と独占欲が混ざる尊厳性。堪らなく獣を狩りたくなる狩猟衝動に近く、だが自分の手で触れて汚したくはない想い。
「分身のサーヴァント体の方は、貴方とカルデアに世話をされてますから。
ま、ギブアンドテイクって奴よ。この言葉、良い響きじゃない?
それに仇は絶対返すのに、受けた恩を返さないのは……復讐に品性が生まれないでしょう?」
「新宿でも、ジャンヌには助けれた」
「相変わらず、義理堅いわね。ま、恩有っての縁でもありますからね」
「良き雰囲気の所、悪いがな……余、灰狩りなんて不毛はせず、逃げたいのだが?」
髪の毛が少し煤けた暗帝が灰を指差し、嫌そうな表情を浮かべる。敵はジャンヌの黒炎をクレイモアに纏わせた上、また最初の火による呪術で炎を刀身へ付与していた。序に攻撃能力向上と防御力上昇の各種加護も無拍子の祈りによって一度に全て自身に与え、先程よりも明らかに強くなっているのが分かる。
静かな様子で佇み、戦意も殺意もなく、だが凶悪な存在感。悍ましいのは強大な魔力反応は皆無であり、並の魔術師よりも魔力を感じられない。武装からは魔力の迸りが分かるのに、灰本人は藤丸立香と同じ唯の人間としか魔術的な視点からだとそう判断せざるを得ない。
「見るからに無理じゃない?
あれ、凄くやる気になってます。ほら、何か分かり易く暗黒チックなオーラも纏ってるし」
「―――貴公等、久方ぶりぞ。魔女と暗帝、二人揃いが様になっているようだ。
仲良しだな。良い事だ、友と仲が良いのはな。永遠を生きる以上、孤独は避けられぬが、故にその思い出もまた永遠に魂へ残留する」
「そう言う、何と言うか……その気遣いな言葉?
殺し合いの中で言うの、やめろ。殺し殺され、恨み恨まれ、アンタらが始めた地獄なら、そう徹しなさい」
「しかして、それもまた道楽の中の娯楽。愉しめる事を、人間性の儘に楽しむ事が人の在り様だ。
我ら灰、所詮は出歯亀の変態だ。
嫌がる者を揶揄するのが堪らぬのさ。
それにほら、魔女の狩人よ――頭上、注意だとも」
「―――あ」
べチョ、という音。頭部に落ちた形容し難き汚物。
直後、猛毒劇毒による吐血。皮膚は爛れ、眼球は解け、髪が頭皮ごと蕩け抜ける。
何より、魂を腐らせる肥糞。枯れた不死の生命を穢す毒を受ければ、魔女だろうと肉体ごと魂が蝕まれる。これは超高密度放射能汚染の被爆以上の致死性で、ある種の霊体に対する放射能とも言えた。糞に触れた魔女の人肉が糞に溶け、同化し、生きた糞となるのが必然だろう。
この世において、最も悍ましい毒。
魂に食され、消化され、人体から捻り出された魂が宿る人肉排泄物。
「糞呪手製の糞団子だ。頂戴し給えよ」
ブチリ、と血管が引き千切れる幻聴を藤丸は聴こえた。それ程までに、魔女の怒気は恐ろしかった。
更には自分を体内から炎上することで、付着した糞を焼き飛ばし、糞呪の毒素も血液ごと熱消毒。魔女は憤怒と憎悪の儘に燃えがる姿を見せ、鬼よりも化け物な表情を浮かべ、悪魔よりも悪夢に出そうな目付きとなった。
「アッヒャ!」
「お、余は知っておる。この魔女、マジ切れだ」
勝率、効率、安全――その程度の思考、肥溜めへ消えた。
自分の神秘で自分を火炙りにする糞塗れな魔女は、あらゆる熱量を機動力に叩き込む。もはや距離の概念を零にする狩人の歩行により、時間が逆行して始めからその場所に居たように、灰を真正面から奇襲する。
首を狩る軌道で魔女は葬送刃の曲刀を振い、クレイモアは余りにも柔らかな動きで斬撃を受け逸らした返しに、カウンターの首斬りを行う。魔女は左手に握る獣の柄頭で弾き逸らし、曲刀の連撃を振い、それを灰は連続して弾き逸らし、斬り返す。
互いに全身を炎上させ、灰と魔女は凄惨に殺し合う。
正しく燃え上がる殺意。火炙りの最中、暗帝は逃げる機を失ったと認識し、邪美なる黒炎を暗黒片刃剣より放つ。
「こうなっては仕方無し。
何よりも、友に糞を投げ付けた人間の屑を生かす道理など―――ローマに通じぬわ!!」
真紅の炎に黒炎が纏わり、死の焔を色濃く醸す暗帝の片刃剣。
「カルデアのマスターに、褪せ人よ。余達二人は助けに来たが、貴様らは好きにせよ。
軽く安い我らの命に責任など無意味故、逃げたいなら今直ぐにでも、行け。何処へ向かうべきかは、褪せ人が分かるだろう」
暗帝は二人にそう言い、凄まじく劣勢に追い込まれている魔女を助けに、文字通りの火中へ飛び込む。灰はクレイモアをただ振うだけで軌跡の全てが切断され、時空間は無論、魔女の憎悪の炎も斬り裂かれ、死さえも斬るのだろう。
己がソウルを究極に至っても鍛え上げた灰の剣術は、全ての魂を斬り消す零の境界の先にある業。そして人理が観測した境界記録帯も灰は観測し、クレイモアの為に有能な英霊や人間の業は全て、クレイモアの戦技に還元されている。
尤も、やはり灰は灰。クレイモアを斬り払い、薙ぎ、上げ、落し、突く。そんな基本的な殺人動作を己が魂へ祈る様に行い、永劫の中で無限に繰り返し、当たり前な剣術が全て絶技と化している。
「―――この、クレイモア野郎が!」
魔女が左手の散弾銃をぶっ放すも、灰は余りにも容易く避けながら踏み込み、愛剣を一突き。魔女は死点から体を逸らして避けるも、灰は避けた方向へ斬り薙ぐ。何とか曲刀を腕全体で回すことで弾き逸らすも、技量差により、灰は剣の軌跡を動かさずにそのまま斬り裂いた。
胸を魔女は斬り裂かれ、乳房が肺ごと血塗れとなる。戦いの邪魔になるからと、狩り装束で固く小さく抑えていたが、中身ごと血液が零れ落ちる。しかし、その自分の姿を一切気にせず魔女は戦おうもするも、接近する灰にクレイモアを意識誘導の囮に使われ、顔面へ思いっきり頭突きをされた。鼻が陥没した上で前歯が砕け散った魔女が体勢を崩した所を暗帝は助けるも、そもそも魔女を追い込む事自体が暗帝への罠。
暗帝の片刃剣をクレイモアで抑え込むと同時、左腕による首狩り攻撃―――ラリアットが炸裂。
勢いそのまま後頭部を地面に叩き付けられ、暗帝は白目を剥き、喉が潰される。地面にクレーターが出来、その中心に沈む女の胸にクレイモアを突き刺し、心臓を破る。その後、選定の剣を抜く様に
噴水のように血液が上空へ吹き上がる。血の雨だった。
暗帝の魂に染まった暗い黒血が荒野に降り、人間のソウルを冒涜するあらゆる呪詛が具現する。それはローマの罪科であり、暗帝が特異点を生き延びてしまった後の、無限に等しい時間で見続けてきた人類種の悪と罪だった。
――暗黒なる邪悪。輝ける死の歴史。
荒野が黒く染まり、死が啓蒙される。
灰はソウルより暗帝が味わった絶望と悲痛を理解し、そのやるせなさを魂で吟味する。灰にとって、これこそ人殺しの醍醐味であり、人生を味わう悦楽であった。
「見給えよ。輝ける人類史、今こそ黄金時代。星の上に人は地獄を創造する。あぁ星よ、人を生んだ地球よ。人理を欺瞞と人類種が理解する時、貴公の魂は宇宙の暗黒へ還るのだよ。
とは言え、クレイモアで魂を斬りたいだけの私には、価値無き感傷だがな。
人理を巡る戦いも所詮、人を騙す貴公にすれば……いや、決めるのはこの世に生きる人間である」
突如、暗くなる。夜空である。星が輝く宇宙が荒野の上空で輝き、数多の隕石が降り注ぐ。
謂わば、流星群の煌きだ。狙撃銃染みた精密さで蒼白く燃える星が灰を狙い、その全てが一斉に襲い始める。
「―――
小さな声が宇宙足る時空間そのものを揺るがす言霊となり、世界自体を神秘なる呪文が汚染する。故、夜空とは脳が見る悪夢の宙であり、完全無欠な曼荼羅を描く宇宙へ至った彼女の心象風景である。
―――流星群。出来損ないの実験作。
同じ出来損ないだった彼女は、完璧でないからこそ死を繰り返し、未完の儘に成長する。完成されない為、完成した自分の未来を夢見続ける。
「魔女も暗帝も諸共とは…‥あぁ、仲良きことだ。仲が良いのは善きことだ。
星見の狩人、オルガマリー。貴公はカルデアの勇者が来る時空間を啓蒙されていたと思える」
その感傷を侵食されて描かれた夜空を見るだけで、灰は解した。その思考を言葉にすることで相手のソウルに自分の人間性を叩き付け、精神汚染を容易く引き起こし、周囲の人間を面白半分で発狂させる。
何より、素晴しき危機。灰はクレイモア一本で流星群に対峙する。
加速することで時が止まる体感時間の中、灰は眼前に迫っていた隕石を斬り弾く。その次の隕石も、次の次も斬り砕き、結果として地面に隕石が衝突することで暗帝と魔女が爆散するのも防いでいた。
「御命、頂く……」
「星見の忍びか」
それを見逃す忍びで非ず。灰を背後から心臓を一刺しした後、更に刃を捻って傷口を抉じ開け、止めと共に小さな慈悲の言葉を放つ。己が手で殺した命へ正面から向き合うのが忍びであり、その人間性を素晴しいと灰は感じ、感動の儘に奇跡『神の怒り』を解き放った。
最初の火による奇跡こそ、奇跡の大元である神を遥かに超えた神秘。
故、灰は祈る。好きなように奇跡を描き、神の怒りは人の手で深化していた。
「ぬぅ……」
忍びは灰から即座に剣を抜き、忍義手から仕掛け傘を起動。何気なく魔女と暗帝を見捨てて自分だけを守り、二人が衝撃波で吹き飛ぶのを察知しつつ、傘を扇状に変えた。何故ならば、隕石が雨の様に降り注ぐ戦場だろうと構わず、灰は忍びに斬り掛った。
既に爆風で火達磨状態ではなくなり、元の姿になった灰。
忍びの技量を知る為、こちらを優先するのが当然である。
むしろ、隕石斬り等、灰からすればバッティングセンターの打ちっぱなしと変わらず、やはり斬るなら人間相手が最高だ。そして隕石が降り注ぐと言うシュチュエーションも、それなりに愉しめる嗜好だろう。
「―――――」
そんな流星群に紛れ、隕石となった人間が一人。
「―――げっひゃっひゃっひゃははははは!!」
律たる概念そのものと化した褪せ人は、デミゴッドの神秘は無論、全ての外なる神の権能も手に入れている。ならば修練と実践により、星砕きの将軍が至った重力魔術の極みも体得する事が可能。もはや外より来た律の化身とも言え、重力と言う星の魔術は褪せ人にとって非常に相性が良かった。
結果―――人間隕石が、燃えながら墜落突進。
マスターの守りを援軍が来た事で気にしなくて良くなった褪せ人は、灰と言う難敵―――即ち、殺し切れぬ娯楽品に全てを叩き付ける遊びが出来る。何より、人生の何もかもをぶつけられる相手と出会う為、褪せ人は混沌律となってもまだ人間として、数多の世界が連なる宙を彷徨っているのだから。
「逃げぬのか、忍び?」
「諸共……」
死が降り当たる直前、その僅かな数秒にて自分と殺し合う忍びに灰は問うも、返答は単純。むしろ忍びにとって都合が良い死。忍びと斬り合い続ければ褪せ人の超上空からの落下突進攻撃で死に、褪せ人に対処すれば灰は忍びから葦名で高名極まる忍殺の一撃を受けるしかない。
とは言え、灰に現状を覆す手段は複数ある。となれば、純粋に成功率が高い手段を選ぶ。それは巨人の王のソウル由来の闇術―――反動の神秘。
忍びの刃を止めると同時、灰は隕石化した褪せ人と宙より降る流星隕石群も全て止めた。最初の火を蝕した暗い魂が放つ自分自身と言う歪みは周囲を覆う障壁となり、火で焦げ続ける深淵の暗黒が世界そのものからソウルを守る。
輝ける星達の爆心地。生温かい暗黒だけが生きる地獄。
褪せ人は灰へ至高の一撃を叩き付けるも、一寸たりとも破れず、あらゆる運動エネルギーが暗黒に吸収されたかのように停止してしまった。そして夜空から流星群は今も降り続けており、褪せ人ごと灰を宙は爆撃し続けた。
「あっはっははははははははは!! 久しぶりね、藤丸!
その様子、カルデアを爆破した糞獣を狩れた様で何よりです。私が帰還した際、所長権限での人理救済ボーナスを期待しておきなさい!!
限り無く兆に近い金額を円で用意して上げますからね。それに程度の低い現代経済社会の拝金資本家からお金巻き上げるのって、悪徳原始人騙して金儲けするみたいで楽しいのよね。そもそも私より頭の良い経済屋が現世に居るかっての」
「再会一番の話題がお金ですか、所長?」
「何言ってるの。一番に、綺麗な夜空を見せて上げたじゃない?」
星見の狩人、オルガマリー。そして人理保証機関カルデア所長、オルガマリー・アニムスフィア。
固有結界と化した世界卵、星見の悪夢。彼女の脳が夢見る宇宙が今、この荒野の空へ投影され、上位神秘たる宙が心の中より呼び出された。
「何はともあれ、御苦労様でした。それと、今日からまた宜しくね」
「はい。分かってますよ、所長!」
目的の人物である所長と忍びに直ぐ出会えた幸運。特異点を彷徨う覚悟をしていたが、一番の本当の目的を成し、藤丸は安堵の表情を浮かべる。
そして忍びは何気なく吹き飛び転んでいた魔女と暗帝を拾い、二人を俵持ちにして所長の元へ帰還。星砕きの隕石突進をしていた褪せ人は普通に動きを止められた後、灰に臓腑を燃える呪術の左手で掴まれていた。そのまま体内から太陽爆散攻撃な浄化を受け、所長達の方向へ狙ったように吹き飛ばされてしまう。
「ごめん、マスター。ちょっとあれ、理不尽過ぎるわ」
「随分と弱気だね、ニーヒル」
「倒してもさ、あの手の人間……死ねば死ぬ程に強くなるのだよ。私もその類の不死だけど、同じ速度で成長されるとなれば、堪んないよ」
「どんな人間なのさ、それ」
「こんな人間さ」
倒れる自分のサーヴァントに藤丸は手を差し伸べ、褪せ人は自然な動きでその助けを受け入れ立ち上がった。そして藤丸の元へ即座に集まった戦力を見回し、このマスターが人理を修復出来た所以を深く理解することが出来た。
これは確かに、獣の天敵となる人間だ―――と悟り、微笑む。褪せ人は自分の手を握るマスターの手を、特に意味もなくニギニギニギと幾度も揉み握った。何となく、そうしたいと感じていた。
「あー……―――成る程。貴女が褪せ人ね。噂は聞いています。何でも、頭狂い火のイエロー人間だとか」
無表情で握り揉む褪せ人と、困惑する藤丸を見て、所長は灰を瞳で監視しつつも褪せ人へ挨拶を行う事にする。そもそもこんな超特級の水素爆弾以上の危険人間が自分のカルデアに召喚されている事が驚きで、召喚システム「フェイト」の魔改造を行った過去の自分を叱咤すべきだとも考えた。
「そう言う貴公は、オルガマリー所長だね。自分も噂は聞いているのだよ。頭が良過ぎて、ちょっと未来に生き急いでいた女ってカルデアだと聞いてるぞ」
「一体、誰がそんな……あぁ、技術顧問ね。現行経済の万能マニュアルを見せた時に言われたわ……全く、理想の美女に性転換するオジサマに未来云々は言われたくないですね。
ま、その意味で言えば、貴女も中々に未来に生きてるみたい。
自分の貌の体の造形程度、手慰め程度の芸術作品としか感じてないみたいだし?」
「趣味なのだよ。美の造形は、暇潰しには最適だ」
丁度その時、褪せ人の声を聞いたからか、忍びが俵持ちにする魔女が目覚めた。
「……う、頭痛い。私、寝てたのね。
そうよね。顔面にうんこブツケられるなんて、有り得ない。全て、悪い夢だったのよ」
「残念だが、現実だ。ちょっと貴様から今も臭うしな。後で余が調香した香水をやろう。
糞呪の糞団子は各種毒素特盛ではあるが、やはり臭いがグランドエゲツつない故、な?」
「私の石鹸もやるぞ。狂い火で脳が焼かれてる私でも、顔に糞を塗られた女には優しくする人間性がある」
「―――……世界が、人が、私みたいな邪悪生命体に優しい。やっぱ、今も夢なのね」
「灰が来る。今、下ろして、構わぬか……?」
自分が抱えている状態で井戸端会議を始める女達へ、男一人で肩身が狭そうな雰囲気で忍びは会話を中断させた。とは言え、流石に顔面肥溜めにされた魔女には慈悲の念を盛大に抱かずにはいられなかったので、世界の優しさに魔女が涙目になった所で声を掛けておいた。
彼は気難しい所長と二人旅をしている内、お気遣いの修羅へと進化してしまったのだろう。
「そうね。助けてくれて、ありがとう。狼さん」
「余も、感謝である!」
「構わぬ。だが、感謝の意は……人として、受け取ろう」
褪せ人からの瞬間泡立ちシャンプーで悪臭と汚物を落とし、暗帝に香水を吹き掛けて貰うことで、魔女は時間にして五秒程度で元の暗黒聖女姿へと戻った。この葦名において糞団子対策は必須であり、受けた後の解毒は勿論、その汚れを落とす方法も持っていなければ人格不安定になり、やがて精神崩壊を起こす事だろう。
死んだ魚が更に解体されて生首だけになった後の瞳みたいな、徹底して人間性が穢された目付きとなった魔女は、もはや憎悪しかない。悪夢を焼き尽くす底無しの憎悪だけが、彼女の精神を煮え滾らせる動力源だった。
そんな瞬間を見計らっていたのか、タイミングが良いのか、灰は爆心地の煙から歩き出た。兜の顎の部分に手を当て、関心したように頷きつつ、クレイモアを血を払うように一回転させた後に背中の鞘へ収めた。
「―――勢揃いか。やはり星々の中心、藤丸立香。カルデアのマスター。
貴公の活躍を葦名モールのアシナンシアターでは、悪趣味な灰が映像作品にし、大衆娯楽として放映していたが……あぁ、実物は良い。実に善い。
強き善き魂を引き寄せる因果律。悪しき魂へ、善き人間性を魅せる啓蒙性。
オルガマリー・アニムスフィア。貴公、この運命を整えた人理を如何に思うかね。まるで人理修復に協力させる為の固く閉じた心を開く鍵穴が、それぞれ違うサーヴァント共に対するマスターキーのような人間性ではないかね、彼は?」
「けれども、それが貴方達が理想とする、在るが儘の魂の在り方って話じゃない?」
「個体としては、な。しかして、その途を都合良く配置し、獣狩りの狩人に仕立て上げるのが気に入らん。結局、彼は我々と同じなのだよ。
同時に、我々と同じ簒奪の結論に至らぬのもまた、人理にとって都合が良い人間性だ。
自由で在る事が求められ、それが想定された利益を出す未来が定めっているとなれば、やはりそれは奴隷の人生となるだろう。欺瞞な世を作るのが、神か、人か、星か……いや、今のこの人代はそれら全ての成れ果てか。
星の簒奪者――――アニムスフィア。
だがね、貴公が宙を奪わないが故、欲の儘に罪を犯さなかった故、在るべき罪科は消えず、彼の旅は終われず。悪行が世界を穢す罪となる前にて、貴公ならば悪夢で終わらせただろうに」
「―――長い。無駄話、終わり?」
「あぁ、全て無駄だからな。最初の一人目として、藤丸立香の前にて貴公の悪事を密告するのもまた、この葦名を貴公等が使って解決させるのに必要な些末事」
「凡剣の灰。人には悪辣で、剣にだけ真摯な奴ね」
「否だとも。人もまた剣と同じ。叩けば叩く程、柔軟となり、硬質にもなる。悲運と真実が槌となって貴公等を叩き、その人間性を練磨する。
我ら灰の魂も同じく、日々奥底へ深化する。
固有結界―――
灰。崩れた巨塔。火が燻る残骸。無数の武器が突き刺さる広場。暗い火の太陽が浮び、螺旋の剣が火を灯す。
「世界卵を形作る等、貪ったソウルの数だけ創造出来るが……何、やはり炉となった灰にとって、この光景こそ簒奪の根底だろう。
―――魔術王には感謝しなくては。
彼は神より秘匿を啓かれ、素晴しき学問を人間で在る私達へ残してくれた」
「頭悪いわ。勉強好きは貴方だけじゃないって話」
侵食する夜空。暗い太陽が浮ぶも、月と星団も描かれ、星見の異空が灰の魂を塗り潰す。
「否。それで良い。それが善い。剣を振う新たな境地を、貴公が私へ啓蒙し給え」
直後、最初の火が燃え上がる。
灰の積もる地面に焔が広がる。
魂を焼く火炎は半端な不死性を容易く抹殺し、灰本人が不死で在る故に他の永遠を否定する。
「面倒臭いっての―――!!」
藤丸の前で自身の内から憎悪の火炎を出し、魔女は彼を守る防壁となる。魂を焼く炎を暗い憎悪の炎が遮る光景は地獄の一幕に見えるが、誰かの命を助ける途を啓いた魔女の業でもあった。
「マジサンキュー、ジャンヌ!」
「感謝の言葉が凄く軽いッ!!」
クレイモアを持つ灰は思うだけで殺意を操る。思念で動く霊体はそれぞれが武器を握り、敵に襲い掛かる。無論現状、所長が夢見る宙より隕石は墜ち続け、灰色の地面より湧く人間性が自爆特攻して隕石を空中で迎撃していた。
刹那、灰は剣を一振り。最初の火から漏れ出た熱量を練り込んだ魔力を、ソウルの大剣として形を与え、時空間を斬り裂く技量で解き放った。まるで月光剣のように斬撃が飛び、前方広範囲全てのソウルを斬り捨てる刃と化した。
「余の情熱が貴様に焼けるか……ッ――」
暗帝は剣先で円を描き、その斬撃に相対する。
「―――
斬撃を叩き斬り、暗帝は虚無を斬る灰の刃を爆散させる。
「宇宙は空にある。宇宙は空に、あぁ―――宙に脳が在る……あっひゃひゃっひゃひゃひゃはははははははははははははははははは!!
見なさい、藤丸。星よ、これが星の本質、宇宙の在り方!
何処まで美しき曼荼羅を描く星海。銀河の並び、恒星の煌きよ。私だけの宇宙、私が夢見る宙、きっと暗い魂さえも呑み込む闇に至るでしょう!!」
隕石を更に増やし、絨毯爆撃を敢行する。鼻血を垂らす、血涙を流し、耳から脳液を漏れ出す所長は、啓蒙を脳にキめ込んだ笑みを浮かべ、絶笑を声高らかに上げ叫ぶ。
藤丸は所長だなぁ…‥と思いつつ、脳が清らかになる感覚に陥る。
灰が拡げた固有結界の上空に描かれた所長の固有結界。人を狂気に誘う神秘に満ち溢れるも、彼は自然と正気を保っていた。
「―――あぁ、星よ!!」
灰と忍びが斬り合い、褪せ人が闇霊の群れを蹴散らし、魔女は藤丸を最初の火の熱波から守り、暗帝は藤丸を狙う遠距離からの大弓や結晶槍等の狙撃攻撃を守る。その自分達側が負ける膠着状態を打破せんと、所長は宙より巨大隕石群を招来させた。
蒼白く燃える隕石―――小惑星。
悪夢そのものを物質化させて墜落させるなど夢の中でしか許されず、故に此処は夢の中。小さな月が灰に迫り、固有結界を土地ごと抉り飛ばさんと大破壊を引き起こす。
「忍びよ、退き給え。貴公も、あの石ころに潰されたくはあるまい」
「――――ッ!!」
灰は踏み込み、回転斬り、突き刺し、斬り上げ、薙ぎ洗う。ほぼ同時瞬間連撃を受け、忍びが何とか弾くも体幹を崩され、僅かに斬り裂かれながら吹き飛んだ。
「ふむ――――」
クレイモアを肩に担ぎ、彼は飛んだ。星の重力魔術により、火の玉となって宙へ墜ちて行く。狭間の地由来の神秘を学ぶ灰にとって重力魔術は新鮮であり、律たる褪せ人程ではないとしても、星砕きの将軍に届きそうな錬度まで鍛え、彼は己を隕石として宙へ自分自身を打ち上げた。
方向反転した超過負荷重力加速。神代の古竜を一撃で殺害する極大の落下攻撃。
クレイモアを叩き刺し、そのまま巨大隕石を破砕し、灰は悪夢の神秘を解した。
「―――宙か。良い試練だった」
「でしょう―――?」
灰の固有結界内ではあるが、空は所長が侵食した固有結界域。悪夢を繋げる空間転移により、所長は灰の傍へ転移する。そして足場を魔力で固めると同時に空間を歪め、高次元による湖面を作ることで空中を足場として立っていた。だが灰もまた魔術と奇跡を使うことで竜の雲をソウルから呼び、それを足場にして平然と浮遊する。
獣狩りの曲刀を所長はほぼ同時瞬間七連斬し、それを灰のクレイモアが全て弾き逸らす。凄まじい剣術だが、それを振るえるのも当然と言えば当然の理屈だった。英霊として葦名に召喚されたドイツ流剣術開祖、ヨハンネス・リヒテナウアーのソウルを貪った灰達は、この人理世界で生まれた両刃大剣を運用する究極の剣術理論を座から啓蒙された。英霊の業を知り、己が業をより深化させており、それはあらゆる武術に通じるソウルも同様。例外無く灰らは武の技術のみで魔法に等しい魂に至った術理の権化である。勿論、葦名の侍や忍びの業も同じ事。
そんな灰の一人は斬り返しに、英霊の戦技を放った。
名は―――
「――――――」
だが所長は良く見慣れていた。ローマの具現、建国王ロムルスと殺し合った彼女は次こそ完璧に勝つ為にと、既に対抗策を脳より編み出していた。
真っ向から所長はより加速する曲刀剣技を繰り出し、速度に特化することで九斬全ての一歩先を斬り放つ。
言うなれば、戦技―――射殺す百頭返し。所長に剣速の
そのまま所長は骨髄を込めたエヴェリンに魔術を施し、更なる魔力と啓蒙を注ぎ―――水銀弾を発砲。
所長の魔術により拳銃は固有時制御の小結界で覆われており、銃身内で弾速は十倍速に達し、超音速を超過した水銀弾が灰の胸部で爆裂する。
「―――ガッ!!!!」
魂に響く死の一撃。比喩無く魂を狩り取るオルガマリー特製の発砲魔術。脳に漂う啓蒙を神秘に代え、死を夢見る瞳の具現となり、灰は一瞬だけ意識を失い、魂の生命活動が停止した。
されど灰は灰。一秒もせず意識を取り戻し、空中で体勢を整える。
嘗ての自分なら潔く落下死を受け入れると灰は考えたが、此処は人理の世。自由落下の衝突によってソウルが物理的に弾け死ぬ訳ではなく、此処では世界の運営法則の違いによって魂は物理干渉を受けず、高所からの転落死で助からないと言う訳ではない。何より魔力の運用技術はソウルの業より多種多様な使い方があり、多数の神秘技術が世界に溢れ、使える手段が非常に多い。灰はそれらを葦名で学び、落下死から逃れる方法を幾つも修得していた。
「うーむぅ……」
空中でエスト瓶を呷り、何気なく完全回復した灰は悩んだ様に唸る。重力加速を低下させ、綿毛のように漂う灰に目掛けて落下攻撃をする所長を見上げつつ、物は試しで最初の火を雷電化した太陽の光の槍を投げ放つ。無拍子の祈りによって予備動作がほぼない投槍は空中でも正確に投げられ、所長は曲刀で雷槍を受け宿し、雷返しで投げ払い返した。
それをクレイモアで受け止め、物の序でに雷電をエンチャントさせ、灰は英雄の戦技をソウルから召喚した。
「戦技―――
「……ちぃ――!!」
所長の落下攻撃と灰の戦技が衝突。虚空にて雷電撃が爆散し、二人は弾き飛ばされる。
「座より簒奪した英雄の業だ。血に酔う狩人の魂には響く重みだろうよ」
「英霊の尊厳まで奪い取って、貴様等は……ッ―――」
空気振動として音は聞こえなかったが、魂に響く声によって嘲りを聞く。葦名の忍び凧を取り出し、所長は滑空しながら怒りを漏らすも、言葉だけで抑えるつもりはない。魔術によって反動を極限まで零に抑え、右手で凧にぶら下がりながら左手に取り出したガトリング銃を灰に砲撃。
秒間、数十発の水銀弾が飛ぶ。しかし、空中の灰は何かしらの障壁を作り、飛び道具を完全無効化。
「―――藁の様に、ただただ死ね」
直ぐ様に宙より召喚した隕石を落とし、だが灰は即座に世界を閉じることで所長の固有結界ごと自分の異界常識を終わらせた。
「結界を閉じたか……―――馬鹿が」
怒りを漏らした所長は世界が崩れ去る光景を見る。固有結界消滅後、内部に居る人間をある程度は好きな場所へ現実に戻せる。灰に出現場所の権利はあり、敵全員を一纏めにし、一網打尽の皆殺しがし易い距離と配置に決めた。
クレイモアに暗黒の光を込め、灰は居合の構えを取る。それは闇喰らいの竜の吐息に似た黒紫色を纏い、絶望的なまで高まるソウルの波動を放ち、時空間を歪ませ―――ドン、と銃弾一発。
灰の背後、十字盾を構えるアーマー姿の盾騎士が一人。
その盾に仕込んだ機関銃を撃ち、敵の頭部を木端微塵の挽肉に作り変えた。
「灰さん、こんにちは……――で、さようなら。
固有結界を解除しましたら、次回は待伏せされているのを注意しましょうね」
そして首の無くなった死体の心臓に十字盾の先端を突き立て、限界までエネルギーを溜め込んだ仕込みパイルハンマーの一撃を発射。もはや原型を止めずに爆散し、地面が巨大なクレーターとなって凹む。更には不死殺しの概念によって魂を粉砕し、灰のソウルは消え去った。
その数十秒後、静かに佇む盾騎士の近くに皆が近付いた。灰の気配はなく、また他の敵の気配もない。
「や、キリエライト。来てたの?」
「ダルクさん、来るに決まってるではないですか。相手はあの灰の一人、真っ向勝負は勿論、素直に奇襲や不意打ちをしても勝てませんよ」
「それで固有結界の展開まで隠れておったのか。余らは貴様が活躍する場を作っただけと?」
「残念ですが、そうなります。こう見えて、私はカルデアの頭脳でしたので」
全身近未来アーマーに包んだ機械的な盾騎士。彼女は
「マシュ……?」
「藤丸さん、その名は棄てました。私の事はただ、キリエライトとだけ呼ぶ様にして下さい」
「貴女も大変ね、キリエライト」
「黙って下さい、アニムスフィア。貴女が藤丸さんとの会話に割り込まれると、酷く心が乱れますので」
「ごめん。でも私、脳が故障してエアリーディング機能が働いてないから。それはそれとして、感謝してます。とても良い働きでした」
「それは……っ―――どう、いたしまして」
ぱちぱちぱち、と優しい音の拍手。気配は先程まで全く無かったと言うのに、その人物の存在感は空間がヌルリと這い出る様に現れた。
所長は咄嗟に相手を殺そうとするが、第六感も戦術眼も殺害行為を抑制した。不意打ちをむしろ敵は望んでいると理解し、体勢も万全。
思い浮かんだ百手を思考回路内で試すも、全て自分が血肉を地面に撒いて返り討ちに合うと予測され、待ちの一手が手ごろと判断した。
「いや皆さん、実に素晴しい戦いでした。灰の半殺しの達成、おめでとう御座います。そして殺し合い、御苦労様でした。
久方ぶりの再会となりますが、貴方達の雄姿を見れて感激しています。
狂っている私ではありますが、私の眼に狂いはなく、感動しています。
凡剣のクレイモアさんに情報を流してみましたが、理想通りの展開になって嬉しい限りです」
「アッシュ・ワン。こっちこそ、久しぶり。相変わらず、殺し甲斐のある挑発をする女ね。後、お生憎様。見る目が無いわよ、貴女。
不死だからどうせ蘇るんでしょうけど、その凡剣とやらの灰はちゃんと死んでるわ。
キリエライトが魂砕きで木端微塵にしたから、死体だって残ってません。馬鹿、阿保、死ね……あー、本気で死ね」
「嫌ですねぇ……ふふふ。ほら、そこで生きてるではないですか?」
荒野で残り火が燃え、体が空間が歪むように具現し、凡剣の簒奪者が蘇った。それを見た所長は起きた神秘を理解し、予めソウル内に秘匿した蘇生魔術によって命を治し、肉体を完全復元し、残り火によって魂を呼び起こしたのを理解した。
確かに、これでは半殺しが正解だった。
此処まで追い込み、この人数で囲んで戦っても、今は半殺しが限界だった。
「死灰の灰、アッシュ・ワン。負けておらず、私の愉しみは続いているが。むしろ、此処からが全力だ。魂を剥き出しにしよう」
「その通り、まだ負けてません」
灰の隣に立つ灰。二人に一切の隙はなく、単純に敵戦力は二倍となった。
「ですが、残念です。もう時間切れですよ。藤丸さんの元に、あのキリエライトさんが来てしまいましたから」
「そうか、残念だよ。契約は守ろう。何より、目的は達成されたのだろう?」
「はい。貴方の献身に感謝致します。ですので、えぇ……地獄を皆で作りましょう」
そして灰の呼び声に応じ、全ての火の簒奪者が此処へ召喚される。凡剣灰と同等の脅威が追加されたのだった。悍ましい事実ではあるが、一人一人が太陽の火と同規模の魂を持ち、一人一人が剣聖を超えた異次元の技量を誇り、一人一人が固有結界を有し、一人一人が底無しの闇と化す唯の人間達だった。
そして所長は瞳により、灰達全員の名が見えた。その暗い魂を啓蒙された。
達人の簒奪者、ブラッディクロウ。月光の簒奪者、ルドウイーク。戦神の簒奪者、ネームレスキング。原罪の簒奪者、アン・ディール。王兄の簒奪者、ローリアン。王弟の簒奪者、ロスリック。深淵の簒奪者、マヌス。糞呪の簒奪者、ダング・パイ。不死の簒奪者、アンデッド。暗月の簒奪者、ダーク・リング。造物の簒奪者、ピグミー。混沌の簒奪者、ケイオス。死瘴の簒奪者、グレイブ。枯薪の簒奪者、シンダー。闇血の簒奪者、ナイト。聖剣の簒奪者、サンクトゥス。探索の簒奪者、ロイ。旅卿の簒奪者、アッシェン・ジャーニー。獣飼の簒奪者、ベントリック。人喰の簒奪者、マンイーター。悦楽の簒奪者、アマナ。暗運の簒奪者、セラ。巡礼の簒奪者、ピルグリム。天使の簒奪者、コクーン。蝶遣の簒奪者、バタフライ。描手の簒奪者、ペインター。血画の簒奪者、ジェレマイア。救世の簒奪者、ダークハンド。火守の簒奪者、エメラルド。冒涜の簒奪者、ストロアン。啓示の簒奪者、モル。聖句の簒奪者、グリアント。蕩肉の簒奪者、ディバウラー。墓唄の簒奪者、ミルファニト。楽奏の簒奪者、ニコ。怪音の簒奪者、エレナ。行商の簒奪者、メレンティナ。武器の簒奪者、デニス。工房の簒奪者、フォルロイザ。絡繰の簒奪者、ファロス。機巧の簒奪者、エアダイス。忘却の簒奪者、ソダン。喪失の簒奪者、ロンド。酒造の簒奪者、ジーク。探求の簒奪者、ヴォイド。岩角の簒奪者、ドレイク。超越の簒奪者、エディラ。竜血の簒奪者、ヨア。鍛冶の簒奪者、ブラックスミス。錬成の簒奪者、キルン。遺骸の簒奪者、バモス。嵐王の簒奪者、ストームルーラー。経典の簒奪者、カルミナ。静氷の簒奪者、サリヴァーン。呪火の簒奪者、ザラマン。道化の簒奪者、トーマス。爆呪の簒奪者、スワンプ。戦魔の簒奪者、ストレイド。月蟲の簒奪者、フレイディア。結晶の簒奪者、スケイルレス。祈呪の簒奪者、スキュラ。雷光の簒奪者、スピア。聖人の簒奪者、アイボリー。闇囁の簒奪者、グランダル。幼婆の簒奪者、ヘクセ。魔法の簒奪者、ビックハット。源術の簒奪者、ロード。蛇瞳の簒奪者、アストラ。反呪の簒奪者、レイヴン。暗屍の簒奪者、レイス。灰殺の簒奪者、フィンガー。森番の簒奪者、マスク。覇印の簒奪者、フリン。鋼拳の簒奪者、エリー。騎士の簒奪者、オスカー。惨刃の簒奪者、ナイフズ。無双の簒奪者、ファーナム。壺狂の簒奪者、アッシェン・ポット。流血の簒奪者、グレイネン。影忍の簒奪者、シノビ。狼剣の簒奪者、ウォッチャー。凶鉄の簒奪者、ヒューム。凡剣の簒奪者、クレイモア。尖槍の簒奪者、アルスター。鉄壁の簒奪者、アンブレイカブル。撃盾の簒奪者、バッシュ。邪闘の簒奪者、ツイン。霊鐘の簒奪者、ベルスタッド。巨斧の簒奪者、ヴィクター。貴刺の簒奪者、リカール。射手の簒奪者、ガイラム。絶弓の簒奪者、ホークアイ。射殺の簒奪者、マーベラス。狩人の簒奪者、シュミット。暗殺の簒奪者、マルドロ。巌躰の簒奪者、ロック。鎌鬼の簒奪者、スケイス。旋舞の簒奪者、ドリフター。無明の簒奪者、サンティ。鎧砕の簒奪者、ルート。盾狩の簒奪者、ローシャン。蛮鎚の簒奪者、ハンマークラブ。捻鞭の簒奪者、エス。叢雲の簒奪者、ムラクモ。断命の簒奪者、マリダ。黒銀の簒奪者、オハラ。隠業の簒奪者、スタブ。
そして死灰の簒奪者、アッシュ・ワン。
葦名に召喚された百七の最初の火にして、全てを集めた火の一つ。
それはサーヴァント化した六騎と、宝具化した一匹に、百の簒奪者。
火の簒奪者に人間性を与えた上で、葦名へ召喚したマスターの灰。
その灰達はカルデアのマスター、狂い火の王、魔女の狩人、暗帝、星見の狩人、星見の忍び、盾騎士の七人を囲い、ソウルを愉し気に奮い沸かす。
「灰でしかない憐れな同志の皆さん、紹介します。此方、元同僚のカルデアです。人理保証機関の職員にして、人理修復を為した勇者です。
彼の名は、藤丸立香。人類史を取り戻したマスター!
永遠を是とした獣の時代を否定し、今の人類史を守った大英雄です。
私達は彼と同じ人間として、火の無い灰として、その素晴しき人間性こそ見習いましょう。星の魂が間接運営する人理に管理された人間の代わり、奴隷のソウルとして生きる自由無き今の人類種に代わり、時代を救った彼の偉業を祝いましょう」
「おめでとう」「素晴しい偉業だ」「感謝する」「貴公こそ英雄だ」「人間として尊敬する」「今の世界は君の御蔭で存在する」「良くやった」「藤丸万歳」「太陽万歳」「祝福の時間だ」「人間の鏡」「ファンタスティック」「好き」「獣狩り、おめでとう」「獣に打ち克った英雄だ」「時代を良く守った」「心を折らず、良く頑張った」「人が生きているのは貴公の御蔭だ、ありがとう」「感謝するぞ、人類史の守護者」「人類種の救世主だよ」「その人間性に、人の導きが在らんことを」「獣の天敵よ、幸せで在れ」
一人一人が正しく、藤丸の在り方を理解していた。心の底より欺瞞無く、最後まで生き延びた彼の人間性を祝福していた。
それは感謝と称賛。太陽のような光の祈りであり、人肌にも似た温かい思いやりだった。
「では灰、諸君―――殺して下さいね」
煌くソウルの奔流。最初の火の熱的魔力を炉の暗い魂が強め、魔力として補填。
藤丸達七人に目掛け、魂を完璧に破砕する死の光帯が百を超え、襲い掛かった。
読んで頂き、ありがとうございます!
葦名編における主なモブ敵である簒奪者達を登場させました。サリ裏や森みたいにウジャウジャと灰達はリポップしますので、どんどん殺さないと危険な特異点となります。