東方人形誌   作:サイドカー

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先に謝罪と注意を……

今回、アリスは登場しません! それどころか、男しか出てきません!
アリスを期待していた方々、申し訳ありませんでした!!

それを了承したうえで、今回も読んでいただけたら、嬉しく存じまする。


第十話 「バイト DE 鑑定団 ~真実はいつも一つ~」

「今日はよろしく頼むよ、優斗君」

「うぃっす! お任せあれ!」

 霖之助さんに向かって、俺はビシッと敬礼を決めた。

 今日は、先日の約束通り、香霖堂のアルバイトに来ていた。アリスは博麗神社に遊びに行っている。なので今回は俺一人だ。さすがに、アリスにバイトを手伝ってもらうわけにもいくまい。というか、向こうの道具のこと知らないだろうし。 

 早速仕事に取り掛かるべく、俺は店長に質問する。

「それで、まずは何をすれば?」

「奥の倉庫部屋に色々置いてあってね、まずはそこに行こう。ついて来てくれるかい?」

「了解っす」

 俺の返事を聞き、霖之助さんは座っていた事務席の引き出しからカギを取り出すと、椅子から立ち上がった。

 というわけで、俺達は店の奥へ進んだ。途中、通路の邪魔になりそうなガラクタ類を退かしつつ、移動する。物をずらす度に埃が舞うのが、ちょっと気になった。あとで掃除するか。クリンリネスは商売の基本です。ハンバーガーショップで働いている魔王もいれば、家電量販店で働いている勇者っぽい男もいるんだ。しっかりやろう。

 

 やがて倉庫らしき部屋の前まで来た。霖之助さんが錠を外し、中に入る。俺も後に続いた。

「ほうほう、これはまた何とも……」

 中の様子を見て、思わずそんな言葉が漏れた。

 予想はしていたが、そこは店先以上にゴチャゴチャした空間だった。商品なんだか粗大ゴミなんだか分からない物が、あちこちに無造作に放置されている。ややカオスな状況だ。ふと壁の方に視線を向けると、「大日本帝国」と雄々しい文字で書かれた巨大な旗が、ロープで括り付けられてあった。大和戦艦にでも付いていたやつだろうか。何故こんなの拾ってきたんだ? 謎である。

 俺が目の前の光景に呆然としている間に、霖之助さんは壁際に置いてあったものをいくつか運び出し、俺の前に並べた。その数は三つ。全て電化製品だった。

「この間拾ってきたものだ。どうだい? わかるかい?」

「まぁ、わかりますけど……結論から言うと、どれも電気がないと動きませんよ」

「やっぱりそうか。だとしたら、河童が買っていってくれるかもしれない」

「河童?」

 霖之助さんの言葉を聞いて、首を傾げる。もちろん、河童は知っている。そこまで世間知らずではない。問題なのは、なぜ河童がこれらを欲しがるのかということだ。

 そういえば、文に出会った時、鴉天狗は白狼天狗や河童を部下にしているって、アリスが教えてくれたっけ。

 先日の出来事を思い出していると、霖之助さんが俺の疑問に答えてくれた。

「幻想郷で発明好きと言ったら、彼女達のことさ。僕と同じで、『外』の道具に深く興味を持っていてね。それらを拾ってきては、自分達なりに改造しているんだよ。なかなか面白い機械を作ったりしているそうだけど、よくわからないものばかりっていうのが専らの噂さ」

「マジっすか。俺の河童に対する認識が、大きく変わったんですが」

 河童の技術は世界一ィイイイイ!! とか言っているのだろうか。これで紫外線掃射装置なんて作ったら、レミリアに叩き潰されるんじゃね?

 

「んー、とりあえず順番に説明していきますね」

「頼むよ」

 霖之助さんが頷いたのを見計らって、俺は新しく入荷された商品の解説を始めた。

 俺が最初に指差したのは、箱のような形をしている、黒い立方体の物体。特徴は正面にモニターが取り付けられていること。そう、テレビだ。しかもブラウン管タイプ。確かに、今は液晶の時代だもんな。此処に流れ着いてしまったのも、その血の運命というわけか。関係ないけど、これ中心に集めていったら、「香霖堂」ではなく「ブラウン管工房」に改名できないだろうか?

 テレビについて、どうやら多少知っていることがあったようで、俺が説明する前に、霖之助さんが質問してきた。ちなみに、彼の能力は「道具の名前と用途が判る程度の能力」だそうだ。

「コレは、別の場所を見ることが出来る道具で合っているかい?」

「Exactly. この窓みたいなのに、その光景が映るんですよ。ただし、実際に現場に行く人とか、コレで見ることが出来るように編集する人とか、細工する施設がないと何も見れないっす。イメージで言うなら、新聞の映像版ってところですな」

 ニュース番組を想像しながらの解説だったが、あながち間違ってもいないだろう。話しながら、「文々。新聞」のことを思い出したので、最後にそう付け加えた。あ、もっと良い例があったな。

「もっと近いもので言えば、魔法の水晶みたいなのが、それなんですがね」

「う~ん、僕は見たことないな。新聞の方なら、天狗がたまに届けに来るけど」

 店主殿は魔法の水晶を見たことがないらしい。誠に遺憾である。パチュリーとかが使っていそうな雰囲気だな。今度聞いてみようか。アリスは……あまり想像できないな。薄暗い部屋で水晶を眺めているよりも、ぽかぽか日の当たる窓辺で愛らしい人形を作っている方が、彼女に似合う。それに何より可愛い。

「どうかしたのかい? 優斗君」

「あ、いえいえ。何でもないっす」

 おっと、いかん。楽しそうに人形作りをしているアリスの姿を想像したら、ついニヤけてしまっていたようだ。霖之助さんが声をかけてくれたおかげで、現実に戻ってこれた。引き続き、商品チェックをしないとな。

 

「これはまた何とも懐かしい。一時期流行ったなぁ」

 二つ目のブツを見て、俺は思わず苦笑してしまった。今でもコレやっている人は、はたしてどのくらいいるのだろう。

「一見したところ、奇妙な椅子みたいだけど」

「当たらずとも遠からず、確かに座って使うもんですね。何が狙いだったっけな……ダイエット?」

 バイクの座席部分だけを抜き取ったような外観。側面には色々とスイッチが埋め込まれており、機能満載感バリバリな雰囲気。夜の通販あたりに登場しそうな、よくわからんメカ。その正体は――乗馬マシーンだった。

「『外』の世界の人達は、楽して痩せたいって人が多いんですよ。ついでに、向こうじゃ馬なんてまず乗りませんから、ちょっとした疑似体験で遊べるのも、人気の理由だったんですかねぇ」

 俺自身、使ったことがないせいで、曖昧な説明になってしまった。とはいえ、多分間違ってはいないはずだ。

「へぇ、『外』はなかなか面白いことを考えるんだね」

 まぁ、すぐに飽きられてしまうのが、通販アイテムの悲しい宿命なんだがな。しきりに感心している霖之助さんに対し、俺は愛想笑いで誤魔化すしかなかった。

 

 さて、最後となる三つ目は、他の二つと違い、小型の機械だった。手に取って眺める。真ん中で折り畳める形状になっており、パカッと開くと、上側には画面が、下側には数字や記号が書かれたボタンが複数ついている。どう見ても携帯電話だ。それもガラケーってやつだな。

「コレは似たようなものをたまに拾うんだ」

「あー、時代が進むと、どんどん新型が出ますからねぇ」

 おそらく霖之助さんが今まで拾ってきたのは、折り畳みすら出来ないもっと古いタイプのケータイだろう。今はスマホが主流だから、ブラウン管テレビと同様に、こっちに来てしまったのか?

「これは遠くの人とも会話できる物だね?」

「その通りでございます。使える条件としては、これと同じものを相手が持っていることですな」

 霖之助さんの確認に、俺は肯定の返事をする。実際の使用条件には、電波やらなんやらも関わってくるのだが、めんどいし上手く教えられる自信も無いから、割愛することにした。

 霖之助さんは俺から携帯電話を受け取ると、まじまじと観察する。それを開いたり閉じたりしながら、「ああ、そういえば」と何かを思い出した。

「コレについては、似たような機能のものを以前、博麗の巫女が異変を解決する際に使っていたらしいね」

「霊夢が?」

「確か地底に行った時だったかな。それで地上の仲間と連絡を取り合っていたらしい」

 テレパシーによる脳内会話だろうか? いや、アイテムを使ったというなら、無線かそのあたりかもしれない。というか、それよりも今はもっと気になることがある。

 俺は、動かない携帯電話のボタンをカチカチと弄っている店主に、一つ尋ねた。

「霊夢も地底に行ったことが?」

「前に、地底の間欠泉が地上まで吹き出す異変があってね。それを解決するために、地底まで出向いたようだよ」

 地底のことは、この前アリスから聞いた。飛べないと行けないらしいが、俺もいつかは行ってみたいものだ。主に温泉目的で。

 地底に関する情報をさらに集めるべく、俺は質問を重ねる。

「入口がでっかい穴だと聞いたんですけど、そんなもの何処にあるんですか?」

「妖怪の山の何処かさ。僕も行ったことないから、詳しいことは知らないよ」

 そう言って肩をすくめると、霖之助さんは携帯電話を始め、並べていた道具を元の場所に戻していった。一応、置き場所は決まっていたみたいだ。適当に置いていたわけじゃなかったんだな。

「見てほしかったものは、以上だよ。さて、店に戻ろうか」

 

 商品チェックの後は店の大掃除をすることにした。窓を開け、外の空気と入れ替えながら、はたきを使って商品や棚の上の埃をパッパッと払っていく。汚れが目立つ所は、雑巾で拭き掃除だ。

 商品もキチンと並べましょう、という俺の提案を聞き入れてもらい、霖之助さんには陳列をやってもらっている。お互い別々の作業なので、背を向け合う恰好となった。

 雑巾を片手に、俺が棚の汚れと格闘していると、後ろから声をかけられた。

「働き者だね」

「そういう性分なんすよ」

「人形遣いさんも喜んでいるんじゃないかい?」

「だと嬉しいですね」

 背中を向けて語り合う。む、この汚れなかなかしつこいな。何度も擦って、ようやく多少ましになった。ふむ、こんなもんか。

 俺が汚れに勝利したことに満足していると、霖之助さんが何やら含みのある言い方で、とあることを尋ねてきた。

「ところで、二人はどういう仲なんだい?」

「どうって言われても……まぁ、家主と居候ですよ。アリスが家に住まわせてくれてるおかげで、野宿しないで済んだわけですし、ホント感謝っすわ」

「家主と居候か。優斗君は彼女のこと、どう思っているんだい?」

「アリスのことですか? ……大切な人、ってところですかね。上手く言えませんけど」

「ふむ、大切な人、か。そうか、そうか」

 背中合わせのせいで表情が見えないが、笑いを堪えているみたいな雰囲気が後ろから伝わってくる。可笑しそうな、または楽しそうな、そんな感じ。一体何だってんだ? 俺、変なこと言った?

 霖之助さんがアリスのことを聞いてきたから、ちょっとだけ彼女のことが気になった。アリス、今頃何してるんかな? 博麗神社に行ったわけだし、霊夢や魔理沙とお茶でも飲みながら、ガールズトークに花を咲かせているのかもな。

 

 

 ほぼ一日中、大掃除をしていたら、すっかり日も暮れる時間となり、今日のバイトは終了となった。なお、本日の来客はゼロ。香霖堂の経営難に、心配を抱かずにはいられない。

 帰り支度を整え、玄関まで移動する。俺が挨拶するよりも先に、霖之助さんが声をかけてくれた。

「今日はお疲れ様。また頼むよ」

「どうも、お疲れ様でした。こちらこそ、またお願いします」

「もちろん、客として来てくれても歓迎するよ」

「んー、良いものがあれば、考えときますぜ」

 そんな前向きな返答をして、俺は香霖堂を出た。

 さて、明日はどうしようか。紅魔館にでも行こうかしら? 咲夜さんから借りた傘を返しに行かないとな。そうだ、咲夜さんに聞きたいことがあったし、しばらく紅魔館に通うことにしよう。今後の方針を考え、一人ほくそ笑みながら俺は帰路につくのだった。

 

 

つづく

 




やらなければいけないこと(資格の勉強)が切羽詰っているときに限って、ネタが思いついたり、執筆がいつもよりはかどったりする不思議……
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