東方人形誌   作:サイドカー

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やったね! ケータイがiPhoneになったよ! ←昨日までガラケー使ってた時代遅れ
さっそく使い方がわからず音信不通の危機に遭遇……もしや自分って機械音痴? 助けてにとり!!

今回はまさかのアリス視点での展開、主人公は出てきません!
ごゆるりと楽しんでいただけると、嬉しいです。


第十六話 「お泊り会でガールズトーク」

 さてさて、場所は変わって博麗神社。

 そこの居間では、三人の少女がちゃぶ台を囲んでいた。そのうちの一人、ショートの金髪が特徴の美少女、アリス・マーガトロイドが目の前の円卓を叩かんばかりの気迫で、怒りをあらわに語気を強めていた。

「何よもう! そんなにメイドが好きなわけ!?」

「おーおー、荒れてるなぁ」

「茶化さないでよ!」

 魔女風の白黒衣装の金髪少女、霧雨魔理沙が苦笑交じりに肩をすくめる。付き合いが長く、親友と豪語するだけあって、ご立腹状態のアリスを前にしても怯むことはない。もう一人の親友、博麗霊夢もいつもと変わらず緑茶をすすっている。傍から見れば無関心を決め込んでいるようにも見えなくもないが、ちゃんと話は聞いているのが彼女のスタイルなのだ。

 今朝、怒髪天を突く勢いで優斗を家から追い出した後、アリスは友人達に相談(プラス若干の愚痴)を聞いてもらうべく、幻想郷の重要スポットである博麗神社を訪れた。ちなみに上海人形の猛攻によって滅茶苦茶になった家の中は、きちんと片付けてある。そのあたりはしっかりしていて合理的なのが都会派魔法使い。もっとも、それはそれ、これはこれで優斗への不満が無くなったわけではないが。

 湯呑が空っぽになったところで、さっきまで黙って話を聞いていた霊夢がようやく、「というか」と口を開いた。

「優斗が女の子に弱いのなんて今さらでしょ?」

「それもそうだ。何がそんなに気に入らないんだ?」

 博麗巫女のごもっともな意見に、普通の魔法使いも同意する。いつのまにか、幻想郷での彼のキャラ認識がナンパ野郎になりつつあるという現状に、誰も疑問を抱かないのが不憫に思えるが、それも仕方ない。だって事実なのだから。もっとも、そうなっても周囲の彼に対する好感度が下がらないのは、「ナンパはしてもセクハラはしない」という彼なりの紳士道があるからかもしれない。

 二人の問いかけに、先程までとは一転して口数が少なくなったアリスが「それは……」と、言うのを躊躇うように目を伏せる。その仕草から大方の予想がついたのか、霊夢と魔理沙はニヤついた表情でアリスを見た。

 アリスは両手の指をモジモジと絡めていて、そんな二人の態度に気付く様子もない。さらに頬にも赤みが差している。やがてギリギリ聞き取れるくらいの、本当に小さな声でぽそっと答えた。

 

「ゆ、優斗が内緒で他の女の子に会っているのが……何か、ヤなの……~~~~っ」

 

 自分で言っていて恥ずかしくなってきて、言葉がどんどん尻すぼみになっていく。最後あたりには、まるでリンゴみたいに真っ赤になった顔を隠すように俯いてしまった。その姿はまさに純情にして可憐なザ・女の子。もし、この場に優斗が居合わせたのなら、鼻血を出していた危険性すらある。そして彼女の魅力は、彼以外にも効果てきめんだった。

 おもむろに霊夢がちゃぶ台から身を乗り出し、恥じらうアリスの肩をガシィッ! と勢いよく掴んだ。突然の出来事に驚いて「きゃっ!?」とアリスの肩がビクッと跳ねる。困惑している彼女に対し、霊夢は真顔で告げた。

「アリス、結婚しましょう」

「ふぇええええ!?」

「待て霊夢。アリスは私のものだぜ」

「二人とも何言ってるの!?」

 霊夢だけでなく魔理沙まで加わってきて、アリスは完全に動揺していた。鼻息荒い二人の親友に迫られ、顔を引きつらせる。

 アリスの肩に手を乗せたまま、爛々と目を輝かせながら霊夢が一つ提案してきた。

「そうだ。アリス、今日はうちに泊まっていきなさいよ。久しぶりに良いでしょ?」

「え……でも」

「そりゃいいな。私も同伴するぜ。今夜は朝まで女子会しようじゃないか」

「……そうね。わかったわ」

 まだ若干妙なテンションの霊夢&魔理沙に押し切られた感はあるものの、二人の言う通り、たまには女の子同士でお泊り会というのも良いかもしれない。優斗のことがちょっとだけ気になったが、それを頭の片隅に追いやりながら、アリスは小さく頷いた。

 

 

 そんなこんなで博麗神社に泊まることになった、その日の晩。

 夕食も風呂も済ませ、少女達は再び居間でちゃぶ台を囲んで、談笑に花を咲かせていた。昼間と違うのは、テーブルの上に乗っかっているのが湯呑ではなく一升瓶とお猪口ということ。幻想郷では酒はなくてはならない存在なのだ。なお、神社の風呂は広く、三人で一緒に入ることが出来た。その際に、霊夢と魔理沙がアリスのスタイル(主に一部分)と自分のそれを比較して、彼女に羨望の眼差しを向けたりとか色々あったのだが、詳しいことはご想像にお任せする。

 さて、美少女が集う和室では、湯上りなのも加わって火照って上気した柔肌が、寝間着用の浴衣からチラリ覗くという、なかなかのパラダイス的な空間が広がっていた。同性しかいない上に、気心の知れた間柄のため、ついつい無防備になっている。といっても、アリスに関していえば、着崩れしないように時々着衣を整えているのが、女子力の高い彼女らしい。また、女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、夜が更けても話題のネタが尽きることがない。

「それでさー、早苗がこの前『珍しいお茶なので、ぜひどうぞ』って、福寿草のお茶くれたのよ」

「福寿草って、毒草じゃんか。よくそんなの手に入ったなぁ」

「相変わらず、どこかちょっと天然なのね。早苗は」

「そうそう、昨日人里に行ったら文が寺子屋の取材してたぜ。授業参観とか言ってたっけ」

「なら今度の新聞は慧音の記事なのかしら?」

「お賽銭が入りそうな記事でも書いてほしいわね」

「それってどんな記事よ?」

 ほろ酔い気分で誰もが饒舌になっている。それを差し引いても、他愛のない日常の出来事一つで会話がここまで盛り上がるのも、乙女のなせる技なのか。

 ほのぼの平和に続くかと思われた女子会だったが、日付も変わる時間になった頃から空気が変な方向にずれ始めた。きっかけは、そろそろ寝ようかと三人で寝室に移動して、布団を仲良く川の字に並べたあたりから。真ん中は霊夢の布団……かと思いきやなぜかアリスの場所となった。理由は霊夢と魔理沙が「アリスの隣が良い」と言ったためである。

 部屋の明かりを消して各々寝床に潜り込む。静寂の中、真っ暗な天井を眺めながら霊夢が何気なく放った一言が、夜を永いものにさせた。

 

「それで、あんた達どこまで進んだのよ?」

「お、私も気になるぜ」

「ふぇえええええ!?」

 

 質問の内容が突拍子もなさ過ぎて、アリスは思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。眠気が吹っ飛んだのではないかと思うくらいの驚きっぷりである。暗くて顔がいまいちハッキリとは見えないが、酒の酔いとは違う原因で頬が上気しているみたいだ。顔の下半分を覆うように布団を引き上げているのが、表情を隠しているようにしか見えない。

 口元が布団で隠れているため、くぐもった声でアリスが質問を返す。

 

「す、進んでるって何よ?」

「そんなの、アリスと優斗は最近どうなのかに決まってるでしょ」

「別に何もないわよ! 今日だってケンカしちゃったし……」

「ケンカというよりじゃれ合いだと思うぜ。それだって、優斗がこそこそ咲夜に会いに行ったのが面白くなかったんだろ?」

「うぅ……恥ずかしいから言わないでよ……」

 さっきの自分の発言を思い出して、布団をかぶってアリスはさらに顔を隠してしまう。そんないじらしい姿を見た二人の親友は、萌えという感情に精神を支配される。直後、本能の赴くままの言動&行動に移った。

『アリス、そっち行っていい?』

「え、え? どうしたの二人とも? ってもう布団の中入ってきてる!?」

 やがて一つの布団に三人が収まり、添い寝という名のキマシタワーが築き上げられた。男でこれをやったら地獄絵図でしかないのだから、性別の違いは大きいといえよう。

 

 

 翌日。花が散る描写で再現される一夜の過ちも起こらず、アリス達はいたって健全な朝を迎えた。

布団を片付けて、着替えを済ませる。洗面所で顔を洗い、身だしなみを整えてから、役割分担をして作った朝ご飯をいただく。食器を洗い終えたところで解散となり、アリスと魔理沙は博麗神社を後にした。今回は優斗がいないので、空を飛んで移動する。魔法の森に到着したあたりで魔理沙とも別れ、アリスは一人で自宅までのルートを進んだ。

 あれから一晩経って冷静になったからか、昨日のことを思い返すと少々反省の念が出てくる。あからさまに隠し事をしていた優斗も悪いのだが、自分も怒りに任せて言い過ぎてしまったところもあるかもしれない。それに、もしかしたら何か勘違いしているという線も考えられる。帰ったらきちんと彼の話を聞くのが一番良い方法だろう。

「昨日はやり過ぎたものね。ちゃんと謝ろう」

 そう決心したところで、ちょうど家の玄関前まで来た。懐から鍵を取り出し、カギ穴に差し込む。カチッと錠が外れる音を耳で確認した後、ドアノブを捻り家の中に入った。

「ただいま」

 帰宅の挨拶をしながら奥まで歩いていくが、返事が来ない。空しいほどの静けさが、彼の不在を告げていた。少し寂しいものがあるが、昨日の今日だ。あのまま誰かの家に泊まっていったのだろうと結論付ける。

「紅魔館かしら……」

 昨日もメイド長に会いに行ったのかも……そう思った途端、アリスの胸にチクリとした痛みが走る。彼が誰と会おうとも彼の自由なのに、どうしてこんなに心細くなってしまうのだろう。

「このままじゃダメね。気分転換でもしようかしら」

 一度自室に戻り、机の上と引き出しの中から必要な道具を一式取り出す。それらを抱えてリビングまで行きソファーに腰を下ろすと、持ってきたものをテーブルの上に広げた。布に糸に針などなど、いつも愛用している裁縫道具たちだ。

「こういう時は、やっぱり人形作りが一番よね」

 気持ちを切り替え、さっそく作業にとりかかる。これまで数えきれないほど作ってきたため、その手さばきは職人技といっても差し支えない。圧倒的な集中力で一心不乱に針を動かす。彼女が作る人形の完成度は人里でも評判で、祭りがあるときなんかはアリス自ら人形劇を披露することもあるのだ。

「………出来た」

 作業を始めてから数十分か数時間か。アリスは手にしていた縫い針を裁縫箱にしまうと、「うーん!」と伸びをして体をほぐした。彼女の言う通り、テーブルの上にはたった今完成したばかりの人形がちょこんと座っていた。その数は一体ではなく二体。同時に二種類の人形を完成させるあたり、さすがと言わざるを得ない。

 さて、その完成品なのだが、両方ともいつもの上海人形ではなかった。片や、グレーのジャケットと茶色いツンツン頭が特徴の、どこかで見たことある男の姿をした人形。片や、青いワンピースとショートの金髪が特徴の、これまたどこかで見たことある女の子の姿をした人形だった。

「…………」

 アリスは目の前にある二つをじっと見つめる。そして、そっと手を伸ばすと人形同士の距離を詰めるように並べ直した。見方によっては、まるで肩を寄り添わせて座っているように見えなくもない。

「……えへへ」

 ちょっとだけ照れ笑いが出てしまう。だけどそれ以上に温かい気持ちになる。

 ポカポカして心地いいのに、どこか切ない気持ちも混じってくる。考えてしまうのは、やはり彼のこと。

 出来立ての人形を眺めながら机の上で腕を組み、それを枕代わりに頭を乗せる。「はぁ……」という溜息と一緒に、ぽつりと呟きが漏れた。

 

「早く帰ってきて……優斗」

 

 

つづく

 




登場人物のキャラがブレていないか心配で仕方ない、そんな今日この頃。
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