早いものであと10日くらいで8月も終わりですね。あ、夏コミに参加された方々お疲れ様でした。自分は2~3回くらいしか参加したことありませんが……
とまぁ、前置きはここまでにして本編行きましょう。
今回もごゆるりとお付き合いいただけると、嬉しいです。
「おー、ここが噂の旧都か」
パルスィの自宅から移動すること数千里……ってほどの距離は歩いちゃいないが、俺達は目的地である旧都と呼ばれる街にたどり着いた。結局あのあと、姐さん達に追いついたのは旧都に着く直前だった。どんだけ先に行くんだよと思ったが、まぁおかげで道中ずっとパルスィと二人で話しながら歩いてこれたわけだし、結果オーライということで無問題としよう。パルスィは相変わらずどこかそっけない態度だったが、それが彼女のナチュラルスタイルだとわかっているので、特に気にすることも無かった。あと可愛いし。ここ大事。
さてさて、その旧都の様子だが、人里が日中の商店街とするならば、こちらはさながら夜の繁華街といった印象を受けた。といっても、シャレオツに銀座でフィーバーみたいなもんではなく、屋台が並んでいる類の飲み屋街ってな感じだ。実際、あっちこっちに居酒屋が建ち並んでおり、それぞれのドアやのれんの向こう側からは、喝采やら笑いやらの賑やかな声が聞こえてきた。楽しい夜の始まりとばかりに活気づいている。イイね。
飲み会大好き大学生の血がうずうずしていると、突如として後ろから声をかけられた。
「あっれー、勇儀にパルパルじゃん。何してんの?」
「知らない人もいるよ……」
気さくな感じなのと、大人しめな感じなのと二つの声に振り返ると、二人組の少女の姿があった。片や、黄金色の髪をお団子状に一まとめにしている、黒と茶色で構成された服を着た女の子。片や木桶にすっぽりと身を入れた、深緑の髪をツインテールにした小柄な少女だった。イエローヘアの方が「やっほー」とフランクに手を振りつつこちらにやってきた。桶娘の方も彼女に続く。
「なになに? 揃いも揃ってゾロゾロと。っていうかこっちのお兄ちゃんは誰?」
興味津々な目で俺を観察する少女。好奇心旺盛なタイプとみた。何というか、アイドルみたいなテンションの高さだな。いや、自分でも何言ってんのかわかんないんだけど。
アイドル系少女(第一印象)の質問攻めに、俺に代わって姐さんが答えた。
「これから皆で飲みに行くところさ。この人間は優斗。さっきパルスィが拾ってきた」
「へぇ~~? じゃあ、ひょっとしてパルパルのオトコ?」
「バカ言うんじゃないわよ、妬ましい」
ハイテンションガールのニヤニヤ顔の問いを、パルスィはバッサリと切り捨てた。というか今、さらりと拾いもの扱いされた気がするんだが。誠に遺憾である。何とも言えない気分でいたら、件の少女が「ねぇねぇ」と話しかけてきた。
「君、優斗っていうの?」
「おう、フルネームなら天駆優斗だ」
「天駆かぁ、じゃあ『天っち』だね。私は黒谷ヤマメだよ。よろしくね!」
「じゃあ『ヤマっち』って呼ぼうか?」
「えぇ~? もっと可愛いのにしてよ」
「ふむ。なら『ヤマちゃん』でどうだ?」
「それならオッケー!」
俺とヤマメもといヤマちゃんの会話を聞いていた桶少女が「いいんだ……」と苦笑いを浮かべていた。そういえば、こっちの子はまだ名前を聞いてなかった。俺は少女に向き直り、尋ねることにした。
「君とも初めましてだな。名前を聞いても良いか?」
「えっと……キスメっていいます」
桶に隠れるように身をかがめながら、小さな声でキスメは答えた。ヤマちゃんとは対照的な大人しい子だな。凸凹コンビとまでは言わないが……だからこそ馬が合うのだろうか。
新たな仲間達との自己紹介も終えたところで、大方予想していたが二人も一緒に飲みに行くことになった。もちろん、こちらとしては一向に構わんどころか、女の子が増えるのだからグッジョブだ。姐さんほどではないにしろ、皆でわいわいと酒を飲めることが楽しみな俺は、先陣を切るように一歩踏み出す。
「よっしゃ、早く行こうぜ!」
「待ちなさいよ」
が、パルスィに肩を掴まれストップをかけられた。
「どしたよパルスィ?」
「あなたねぇ、その恰好で飲みに行く気? 服の背中破けてるその恰好で?」
「へ? あ~……」
パルスィに指摘され、思わず溜息に似た声が漏れてしまった。考えてみれば、怪我の方は彼女が手当てしてくれたが、服の方は完全にそのままだった。脱いだ時に確認したが、熊モードのタヌ吉にバッサリやられた部分が、ベロンとカッコ悪く垂れ下がっていた。ついでに血の染みもできている。
「申シ訳ネェ。アッシガ旦那ノ服ヲコンナニシタバカリニ……」
「なぁに言ってんだ。別にお前のせいじゃないさ」
タヌ吉がしょんぼりとうな垂れてしまったので、大丈夫だという意味を込めてヒラヒラと手を振って返す。とはいえ、どうしよう。いっそ新しく服を調達すべきかと悩んでいると、「あ、そうだ」と何か閃いたのか、ヤマちゃんの頭上に電球がピロリーンと点灯するようなエフェクトが見えた。
「私いいもの持っているよ」
「いいもの?」
「えっと……あった、コレコレ」
じゃーんと、彼女が懐から取り出したもの、それは小学校とかでお目にかかるような安全ピンだった。それから俺が何か言う前に、破けた所の真ん中あたりを勝手にピンで留めてきた。何という雑な応急処置。インデックスの修道服か。ヤマちゃんにいたっては何かやり遂げた感の爽やか笑顔だし。
されるがままになっていると、パルスィが呆れたように聞いてきた。
「あなた、これでいいわけ?」
「うーむ……まぁ、いいんじゃないか? よし、気を取り直して飲みに行こうぜ」
「まったく、その適当さが妬ましいわね」
そして、念願の飲み屋にて。
やってきたのは、宿屋も兼ねて営業しているという店。通されたのは宴会場みたいな広いお座敷タイプの部屋だった。ここならもし酔い潰れて寝てしまっても大丈夫という、完全にオールナイトする気満々な意見から導き出された結論である。俺としても泊まる場所が欲しかったところだし、ちょうどよかったんだけどさ。
五人プラス一匹が収まっても十分な広さを誇る部屋の中央にあるテーブルを囲み、晩飯も兼ねて酒やらつまみやらを次々とオーダーしていく。数分もすると、頼んだものが続々と食卓の上に並べられていった。焼き鳥、唐揚げ、手羽先、そして大量の日本酒。って鶏肉ばっかじゃねぇか。え、どゆこと? 今日はそういう日なの? カーネルおじさんの感謝祭?
俺が料理のチョイスに戸惑っている間にも、全員の手に酒が行き渡る。盛り上げタイプなのか、ヤマちゃんが「よーし!」と立ち上がり、乾杯の音頭を取った。
「それじゃ、パルパルと天っちの出会いを記念して――」
「ヤ~マ~メ~?」
「ウソウソ冗談だって、そんな睨まないでよ~。こほん、それじゃ新しい仲間との出会いに乾杯!!」
『乾杯ーッ!!』
パルスィとヤマちゃんの漫才もどきを前置きに、各々コップやら升やらを掲げる。こうして、俺の初地底での飲み会の幕は盛大に上がった。
それから数十分後。
「――というわけでアリスを怒らせてしまったんだが、俺はどうすればいいと思う?」
どうしてこうなったか忘れたが、気が付いたら俺は皆に人生相談をしていた。
パルスィと姐さんには、さっきパルスィの家でざっくばらんに話していたが、詳しいところまでは言っていなかったので、今朝のことを事細かに説明する。
俺の話を一通り聞き終えて、真っ先に口を開いたのはパルスィだった。安定と信頼のジト目で俺を見据える。
「何でそこでダジャレなんか言うのよ? バカじゃないの?」
「うぐ……面目ない。だ、だけど俺なりに場の雰囲気を良くしようと小粋なジョークをだな――」
「は?」
「何でもないですゴメンナサイ」
パルスィの目つきが一際険しいものになった瞬間、最速を名乗る鴉天狗並みのスピードで、俺は白旗を上げた。彼女はふんっと鼻を鳴らすと、コップを手に取りアルコールで喉を潤した。どうやら怒っているわけではないようだ。彼女の隣に座っていたヤマちゃんが、テーブルの上のお猪口を指先でコロコロと転がしながら、「うーん」と思案する。
「切腹でもしちゃえば?」
「ヤマちゃん言うこと過激!? せめて土下座までで堪忍してぇ!!」
「土下座ならいいんだ……」
彼女の発言の軽さと内容の重さとのギャップに、腰抜かすレベルでおったまげた。思わず悲鳴じみたツッコミ&命乞いをしてしまう。そんな俺のリアクションを見て、キスメが苦笑いのような愛想笑いのような、控えめな笑顔を浮かべていた。
頼みの綱である残る一人は、再びどこから取り出したのか自前の特大サイズの盃に、日本酒をなみなみと注ぎながら、気合の一喝とばかりに叫んだ。
「男だったら何も言わずに、力いっぱい抱きしめてやりな!!」
「んなことして嫌われたら俺もう立ち直れないっすよ!?」
ここにきてから俺がツッコミに回ることが多い気がするのはどういうことだろうか。誠に遺憾である。ちなみに、俺を旦那と呼ぶ狸は、よほど空腹だったのか夢中になって手羽先にむさぼりついている。お前も大概だな、と気落ちしたがタヌ吉があまりにも美味そうに食いついているのを見てたら、何だか俺も腹が減ってきた。というわけで、手前の大皿に山盛りになっている唐揚げに箸を伸ばそうとした。だが…
「痛ッ……」
不意に肩がズキリと痛み、思わず顔をしかめてしまう。まだこっちは治っていなかったか。動かせないわけでもないが、ちょっと油断してしまったわい。オーバーアクションはしてないから、おそらく周りにはバレていないだろう。と思っていたのだが、バッチリ見ていた女の子が約一名ほどいらっしゃった。
妬ましいが口癖で、冷めた態度とは裏腹に世話焼きな性格の彼女は、「……まったく」と小さく呟く。それから、自分の箸で唐揚げを一つつまむと、それを俺の口元に差し出した。
「ほら、口開けなさい」
「何ですと?」
「うるさい騒ぐな。いいから黙って食べる!」
「むぐっ!?」
強い口調と共に、食べ物を半ば強引に口の中に押し込まれた。突然の出来事に目を白黒させつつも、もぐもぐと咀嚼する。ジューシーかつボリュームがあって実に美味い。出血した分を取り戻せそうな勢いだ。血が足りないから食べ物をって、カリオストロの城のワンシーンみたいね。
そんな俺達のやり取りを見て、他のメンツはニマニマと、いっそ清々しいレベルのイイ笑顔をたたえつつ、わざとらしく口々に感想を言い合う。
「へぇ~、パルスィがここまで甲斐甲斐しく男の面倒見るなんてねぇ」
「あれあれぇ~、これってアレだよねー? 『はい、あーん(はぁと)』ってやつじゃない?」
「お似合い……なのかな」
「流石デヤンス旦那ァ!」
皆からの生暖かい視線が俺達に集中する。それにより先程の行動をやっと自覚したのか、パルスィが「んなっ!?」と驚愕の声を上げた。直後、慌てたように早口で言い訳じみたフォローを捲し立てる。
「し、仕方ないじゃない! この男がやせ我慢して平気なフリしているのが、見ていて妬ましいのよ! というか、あなたも何か言いなさいよ!」
「んぐ。いやぁ、俺としては嬉しい限りだぜ? パルスィみたいな可愛――」
「ふんっ!!」
「モグゥッ!?」
俺がセリフを言い切る前に、まるでフェンシングの突きのような鋭さで、再び鶏肉を口の中にブチ込まれた。その速度、電光石火の勢い。あまりの超スピードに、一瞬何が起こったのかわからなかったぞ。
イイ感じに酒が入ったテンションの知人達からヒューヒューと冷やかされ、とうとうパルスィが「あー、もう!!」と逆上した。一升瓶を片手に、あたかも魔人のごとく立ち上がる。
「いい加減に頭来たわ、この酔っ払いどもが! 全員酔い潰して黙らせてやるから覚悟なさいッ!」
それからは、宴会部屋はカオスな空間と化した。
一部紹介すると、タヌ吉の子分っぷりを気に入った姐さんが、飲めや飲めやとタヌ吉と同サイズくらいの大瓶を顔面ドッキングさせるという、はたから見れば動物虐待じみたアルハラ事件が起こったり。はたまた、ヤマちゃんが俺のところへにじり寄りながら「私とパルパルどっちが好み?」とか聞いてきた瞬間、橋姫のアイアンクローが彼女と何故か俺にも炸裂し、あやうく髪型どころか頭の形が変わりかけたり。
最終的には、パルスィの狙い通り(?)全員その場で雑魚寝する形で寝落ちとなり、俺の地底旅行一日目の夜は、翌朝の二日酔いの予感と共に更けていった。
つづく
ぱふぱふにゃーにゃー♪ ぱふぱふにゃーにゃー♪ ←すぐに影響されるタイプ