3日あればサイドカーでも小説投稿ができる!
情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さそして何よりもぉぉぉお!!
アリスが足りない!!
というわけで最新話でございます。
今回もごゆるりと楽しんでいただけると嬉しいです。
玄武の沢は妖怪の山の麓に位置する、断崖絶壁の岩場を流れる大きな河川である。
川の上流では轟音を響かせる滝が水しぶきやらマイナスイオンやらを振りまき、下流へ進めば流れが穏やかな小川に枝分かれしているところや無数の洞穴がある浅瀬など、バリエーションが豊かでまさに水の楽園。
そもそもなぜ「玄武の沢」と呼ばれているのか。それは、岩の表面にできた六角形の亀裂がびっしり並んでいるため亀の甲羅に見えるからだ。また、崖の断面はまるでいくつもの柱が密集している光景に似ており、探してみると階段状になっているところもある。おかげで、うまくいけば崖の下まで降りることが可能だ。なお、これらは非科学的なモノではなく「柱状節理」という自然現象なので興味のある方はウェブで検索してみよう。
椛の話によると、噂のにとり氏はこの時間だと滝のさらに向こう側にいることが多いらしい。そんなわけで白狼天狗のお導きのもと、俺達は探検隊のごとく山の奥まで足を運んでいた。進むにつれて川の規模もデカくなってくる。鮭とかニジマスとか大きめの魚が釣れそうな予感。店に戻ったら釣竿がないか探してみようかしら。
そして何よりも驚きだったのが、椛は俺を知っているというではないか。その原因となったのが、やはりというかアレだった。
「文さんの新聞で何度か取り上げられていましたから。最近は下級妖怪と戦ったんですよね。武道の心得があるんですか?」
「いーや、全然さっぱり。もみっちゃんみたいに剣を握ったこともないし、弾幕も出なけりゃ銃も持ってねェ。赤いコートと金色のグラサン身に着けたヒューマノイドタイフーンとは似ても似つかぬ、せいぜいちょいと喧嘩ができる程度のド素人よ」
「もみっちゃん!?」
質問の答えよりも呼ばれ方に反応する犬走椛もといもみっちゃん。
アリスは彼女をちゃん付けで呼んでいたからありかと思ったのだが、本人は思いもせぬ呼ばれ方だったらしくメッチャ動揺していた。魔理沙にいたっては「も、もみっちゃん……プククッ!」と笑いを堪えきれていない。アリスもどこかツボったのか顔を綻ばせている。可愛い。
「いいじゃない。あなたにピッタリの可愛らしいニックネームだと思うわよ」
「アリスさんまで……えっと、つまり早苗さんとは違って本当にただの一般人なんですね」
「そういうこった。つーか、早苗とも知り合いだったのか?」
「同じ山に住むご近所さんですから。――あ、いましたよ。この先に河城にとりがいます」
「おっ、そうか。さすが千里眼の使い手、そこにしびれる憧れるゥ!」
椛が目的の河童の姿を捉えたらしい。頼れる味方ができたものだ。やったね。
そうそう、出会いがしらに本人も言っていたが彼女の能力は千里眼、正式名称は「千里先まで見通す程度の能力」。俺が最初に察知した視線はハーミットパープルな念写ではなく直視だったわけだ。やりおるわ。
そして我々が辿り着いたのは上流の先、山の湖。
真っ先に見つけたのは、俺が背負っているやつ以上に大きいにもかかわらずパンパンに膨れ上がっている緑色のリュックを、さも当然とばかりに背中に装着した小柄な少女の姿。青色の髪をツーアップにまとめている。長靴を履いているのもあって、上下ともに水色の服装はまるでレインコートを着ているかのよう。「ああ、水属性だな」と思わざるを得ない。
椛が件の少女に向かって「にとり」と呼びかけると、「んー?」という生返事とともに相手がこちらを振り返った。
「おやおや、今日は団体さんのツアーガイドかい? 椛」
「あなたのお客さんですよ」
「そうかい。ご苦労さん」
彼女こそが我らが探し求めていた河童、河城にとりその人(妖怪)か。今更だが、予想はしていたが、幻想郷は河童も普通の女子でした。強いて言えば皿の代わりに帽子をかぶっているのがそれっぽい……のか?
彼女は白狼天狗と一言二言交わすと、人懐っこい笑みで俺の前に立った。
「やぁ盟友。この河童に何か御用かな?」
「ようカッパさん。機械の修理を頼みたいのだが引き受けてはもらえまいか? 依頼主は香霖堂だ」
「あー、あそこからの依頼か。ってことは電池式に改造する必要があるね」
「よくお分かりで。おっとそうだ。これは店長からの差し入れ、今後ともよろしくってさ」
お得意さんというのは伊達じゃないらしい。店の名前を告げたらほとんど察してくれた水属性エンジニアの洞察力に舌を巻く。なお、彼女が俺を盟友と呼ぶのはワケがあり、曰はく河童と人間は古くから盟友なのだとか。霖之助さんの教えより。
香霖堂&人間の代表として友好の証に彼女達の好物を手渡すと、にとりは感嘆の声を上げた。同時にヤル気ゲージもアップした模様。
「おお、キュウリか! オッケー、引き受けた。これくらいなら大して時間もかからないからすぐに終わるよ。工房でちゃちゃっと済ませてくるけど待てる? 悪いけど工房は関係者以外入れないんだ」
「大丈夫だ、問題ない。サンキュな、これからも香霖堂を良しなに」
「盟友の頼みだからね。あと、この辺は水底が深いから待ってる間に川に落ちないように気を付けて」
「うぃっしゅ」
水のプロが言うと軽い忠告も重みが違う。俺だからというのもあるのだろうけど。
早速キュウリを一本ポリポリとかじりながら仕事場に向かうにとり。ここからは職人の時間だ。我々は大人しく待つとしよう。
さ、そんなこんなでにとりが戻ってくるまで時間ができてしまったわけだが。アリス達の顔を順に眺め、今後の方針について意見を求む。
「とりあえず、これからどうすっかねぇ」
「せっかく水があるところに来たんだ、涼んでいこうぜ。何より私が休みたい。さすがに歩き疲れたぜ」
「そうしましょうか。にとりがいつ戻ってくるかわからないし、あまり移動しない方が賢明だわ。椛ちゃんはどうする?」
アリスが椛に尋ねると、彼女は「そうですね」と呟きながら上空のある方向に視線を定めた。
「見回りに戻ろうかと思ったのですが……私も残ります。もう一人こちらに向かってきているようですし」
「え?」
千里眼の意味ありげなセリフにアリスが疑問の声を漏らす。つられて俺も椛が見つめる先を仰ぐが、真っ白い雲が流れる青空が広がっているだけでスズメの一羽も飛んでいない。
「……むむむ?」
と思ったのも束の間、ゴォオオッと風を切る音が聞こえてきそうな物凄いスピードで俺達に急接近してくる「何か」が目に映る。初めは豆粒サイズだった「何か」はあっという間にどんどん距離を狭めていき、やがて人型のシルエットが認識できるところまで迫ってきた。人の姿をしていて、疾風のごとき速さで空を飛べて、ここは妖怪の山で……もしかしなくても鴉天狗ですねわかります。
頭に浮かんだのは毎度お騒がせな清く正しい新聞記者。いつもどおりネタを集めて文字通り「飛び回って」いるのか。入院しているときに取材されたばかりなのだが……
ところが、その予想は外れることになる。俺達のもとに飛んできたのは、
「ああーっいたいた! ちょっと聞いてよ椛! また文がアタシのパンチラ撮っていったんだけど――って何よこの集まり」
開口一番マシンガントークで愚痴をぶちまける、女子高生オーラ全開のミニスカ女子が現れた。
ほどけば腰ぐらいの長さまでありそうな栗色の髪をツインテールにまとめ、文や椛と同じデザインの帽子を頭に載せている。半袖ブラウスに紫と黒の市松模様のミニスカート、そして彼女の右手に収められた携帯電話それも折り畳み式のガラケー。どこからどう見ても完璧なまでにJKであります。
勝気そうな顔を怒りに染めていたギャル系少女はこれまでの猛スピードに急ブレーキをかけて椛の前に着地し、そのまま彼女に詰め寄る。が、俺達がいるのに気付いて今度は疑惑の眼差しを向けてきた。このお嬢さん、文とは違った方向でテンション高いわね。
少女は俺とアリス、魔理沙の三人を交互に見比べ始めたかと思えば、ハッとした顔で「ああーっ!」と歓声に近い大声を上げながら俺を指さしてきた。あ、なんかデジャヴ。
「アリスとカレシじゃない! それに魔理沙も……え、うそコレもしかして修羅場の真っ只中!? ネタにしていい!?」
「ちょっ、はたて!? い、いい、いきなり来てヘンな想像しないの!!」
「いくらなんでもその発想はないぜー」
キラキラと顔を輝かせる少女(アリスがはたてと呼んでいた)の爆弾発言に、瞬く間に顔を真っ赤に染め上げるアリス。人形遣いが全力の弁解をしている傍ら、白黒魔法使いは呆れた顔で「ないわー」と手を振っていた。温度差すごい。しかし魔理沙よ、お前だってルーミアのときに盛大な勘違いをしただろうに。
「昔のことは忘れたな」
「さりげなくさとりんの専売特許を取らないであげて。そもそもあの娘さんはどなたですかい? 椛さんよ」
「ははは……私の上司の一人で、姫海棠はたてといいます。文さんと同じ――彼女のは『花果子念報』というのですが、新聞を作っている鴉天狗です」
「新聞記者いうてもケータイしか持ってないぞ彼女。写メるの?」
「しゃめる? えっと、はたてさんはあれを使って念写ができるんですよ」
「マジでハーミットパープルいた!?」
時を止める美しきメイドさんに続いて念写の使い手までいる幻想郷マジ第三部。次はどれだろう、むしろ俺が覚醒したら嬉しい。オルフェウス! とか叫んでみたいね。それスタンドやない、ペルソナや。ちなみに入院中に聞いた話なのだが、過去に永琳先生が夜を永くした異変があるそうな。先生、薬だけじゃなくて影時間まで作れるんですか。
それぞれの第三作に思いを馳せている間に、アリスとはたての話し合いが終わっていた。どうやら勘違いは解けたようだ。
「だから私と優斗は全然なんでもないの。わかった?」
「そーなの? でもでもっ、取材には協力してくれない? あなた達をネタにするとイイ記事が書けそうなの! 変なことは書かないから、お願い!」
パンッと両手を合わせてアリスに頼み込むはたて。拝まれたアリスはしばし思案した後、俺に話を振ってきた。
「そうねぇ……優斗に任せるわ」
「おうふ、そうきたか」
アリスがそう言った途端、姫海棠氏は参拝の姿勢を維持したままグルリと回り、人形遣いから俺に標的を変更した。よっぽど新聞が切羽詰まった状況にあるのか、俺のところへじりじりと迫りつつ懇願を込めた上目遣いで顔を覗き込んできた。もしかして、文と新聞対決でもしているとか?
「ね、ね、いいでしょ?」
「まぁ、構わんけどよ。といっても俺もバイト中なもんでね。にとりが戻ってくるまでって条件付きで良いか?」
「ホント!?」
俺が首肯すると彼女は大輪の花が咲いたような眩しい笑顔をみせた。うむ、引き受けたのは正解だった。やはり可愛い女の子の笑顔はひときわ輝きを放っている。アリスの笑顔にいたってはもう、見るたびに生きててよかったと思うね僕は。
「やった! やった!」とどこかで聞いたことのあるフレーズで飛び跳ねていた彼女は、
「ありがとー!!」
「おほぉおおおおおおお!?」
「ふぇええ!?」
喜びのあまり勢いよく俺に抱き着いてきた。背中に回された細い腕と、前面に押し当てられる柔らかさ。至近距離から漂う甘い香り。どれもがまぎれもなき女の子のそれであり、予想できるはずもない不意打ちに変な声をあげて硬直してしまった。
突然すぎる急展開にアリスも同じく目を見開いて固まっていた。が、すぐさま頬を紅潮させてテンパりながらも俺にしがみついているJK天狗に飛びついた。
「ダメー!! は、離れて!!」
「きゃー」
どことなく楽しそうな悲鳴を上げながら人形遣いに引っぺがされる念写使い。危なかったぜ、主に俺の理性的な意味で。いかんいかん、紳士としてあるまじき失態だ。だがしかし悲しきは男の性。非常に心地よい感触でした。
「……グレートでしたよ、こいつぁ」
「優斗……?」
「ゲフンゲフン! と、とにかく! そういうスキンシップのサービスは俺じゃなくてアリスにやってくれ。女の子が簡単に男に抱き着いたりしたらあかんよ」
「そ、そうよ! はたても気をつけなさい、あなた可愛いんだから!」
「いやー、ごめんねアリス。あまりにも嬉しかったから。別に他意はないから安心してね? だから取材なしとか言っちゃ嫌よ?」
俺とアリスの注意のことばをはたては飄々とかわす。感情表現が豊かというか、切り替えが早いというか。それ以前に無防備すぎませんかね? 俺でなくても勘違いするぞ。
優斗達が騒いでいる一方その頃。たった今起こったToLoveるを遠目に見ていた二名はといえば、
「おーおー、ここに来ても暑くなってきたぜ」
「うわぁ……これは見ているこっちが照れちゃいますね」
白黒魔法使いは実に清々しいニヤニヤ顔でからかい、白狼天狗は両手で顔を隠しながらも指の隙間からしっかりとガン見していた。
傍観者ポジションに立った彼女達が視線を向ける先では、今まさにはたての質問攻めに遭おうとしている青年と人形遣いの姿があった。
「こほん、それじゃ取材させてもらうわね。では……二人の馴れ初めは? お互いの第一印象はどんな感じ? ぶっちゃけどこまでいった?」
「ちょっ、おま、質問の内容おかしくねェ!?」
「~~~~~~っ!!」
『花果子念報』を作る鴉天狗、姫海棠はたて。三度の飯より特ダネと恋バナが大好物の今時の念写記者である。
つづく
予告、ついに主人公の弱点が明かされる……かも?
次回 東方人形誌
第四十八話「天駆優斗は○○ない」
○○には答えが入りますぜ。デュエルスタンバイ!