後半が前半の倍近い文字数だって! すごーい!(病気)
そんなこんなで最新話、ごゆるりと楽しんでいただけると嬉しいです。
「で、うちに来たと」
どうでもよさげに平坦な口調でパチュリーが結論をまとめる。
さすが紅魔が誇るブレインだ。理解が早くて非常に助かる。彼女に事情を説明していたアリスが「そうなの」と頷いた。
「パチュリー、何とかならない?」
「アリスも分かっているでしょう。この程度の症状、ほっておけばそのうち勝手に治るわよ。寧ろわざわざ余計な手間をかける必要なんてない」
一秒たりとも本から顔を上げようとすらしないあたり、全くと言っていいほど興味なさそうな魔女殿でござる。ごもっともなんだけど、なかなかドライな返事だった。
さりとて、こちらとしても別に大至急で治してほしいわけでもないので「ですよねぇ」の一言で片づけられる。アリスも予想通りの答えだったらしく「まぁね」と軽く肩をすくめた。
魔法使い二人がその後もいくつか言葉を交わす。その一方で、俺は彼女たちから些か離れた場所にいた。なぜならば、
「わーい! ユウのお人形さんだ~♪」
「いやいや本人やで!?」
先ほどのアリスと同じく、今度はフランに抱っこされております。
幼げな容姿の少女は、俺をホールドしたまま図書館の中をてててっと走ったりくるくると回ったりと大変お気に召した模様。
さて、その辺も踏まえて俺たちが紅魔館を訪れたあたりから語ろう。時系列は二十分ほど前まで遡る。
最初は正門にて、ポカンと呆気にとられた顔で出迎えてくれた美鈴に経緯をかいつまんで話し、次いで館内にて、いつもと変わらず接してくださった咲夜さんにも同様にかくかくしかじか。レミリアには咲夜さんが伝えておいてくれるというので、お言葉に甘えて我々は一足先に地下の大図書館へ。
七曜の魔女に助けを乞うべく扉を叩いてから数分と経たずに、「アリス・マーガトロイドが小人族にクラスチェンジした天駆優斗を連れてきた」などと知らせを耳にしたフランがキラキラと目を輝かせながらこの部屋に飛び込んできた。結果はご覧のとおり。貸して貸してとせがむフランにアリスが優しく微笑みながら俺を手渡す光景は、まるで可愛い妹にプレゼントを贈るお姉ちゃんのようで心温まる描写だった。だがしかし忘れるなかれ。その代償に一人の青年から男としての尊厳が密かに、そして確実に失われつつあるのだと。
「イイ子イイ子、たかいたかーい!」
「頼むから落とすなよゼッタイに落とさないでくれよ!? いつでもいつも本気で生きてる俺たちなんだから!」
無垢な少女のお気に入りおもちゃとなって振り回される。ギャーギャー喚いているのが余程うるさかったのか、アリスとの会話中も手元から視線を動かさなかった図書館の魔女がとうとう本を閉じた。読書の邪魔をされて苛立っているとかじゃないと信じたい。
限りなく無表情に近いジト目が俺を射抜く。
「こんな初歩的なミスをやらかすなんて迂闊ね」
「慰めてとは言わないけどせめて冷たくしないでよぉ! いつもいつでも上手くいくなんて保証はどこにもないんですよ!?」
「でしょうね」
「もー! ユウ、暴れちゃメッ!」
「ギュピィッ!?」
懸命に身をよじって抗議の声を上げる俺を、フランがギュウッと押さえつける。ほっぺたを膨らませる表情が愛らしい。小さい女の子が小動物にしつけを教えているかのよう。けれど彼女も立派なヴァンパイアであり、しかも現在の俺は骨まで細くなっている。よって、このままではマジで折れる五秒前がカミングスーン。
一部のモビルスーツのごとく胴体が上下に分離すると思われたまさにその時、悠然とした足音と余裕に満ちた声が大図書館に行き渡った。
「フラン、そろそろ下ろしてやりなさい。さっきからその男の血流が止まっていそうよ。そんなのじゃ美味しい血は飲めないわ」
現れたるは紅魔館の主、永遠に幼き紅い月の異名を持つ吸血鬼レミリア・スカーレット。最後の一言については考えるのを止めた。
「はーい、お姉さま」
フランちゃんは素直なイイ子なので、お姉ちゃんの言うことにキチンと従う。嫌がる様子もなく、宝石の羽を持つ少女は俺を床に下ろした。
「いやはや、ようやく地に足の着いた生活ができるぜ」
久しぶりに地面の固さを足の裏で感じ取って、なんとなく額を拭うフリをする。
思えばアリス邸を出てからずっと誰かしらの腕の中だったな。一番ヤバかったのはもちろんアリスに抱えられたとき。柔らかいのが当たるしイイ匂いもするしで色んな意味でも限界ギリギリで危なかった。異性として扱われないという諸刃の刃も含めて。
俺が自分の足で立てた頃合いに合わせて、レミリアの後ろに控えていた麗しき銀髪メイドが俺の前に歩み出た。
「優斗様、テーブルまでお連れいたしますので――」
「いかぁあああああん!!」
「優斗様!?」
突如、謎の絶叫とともにセルフサービスで右フックを頬に叩き込んで吹っ飛ぶ、もはや奇行としか思えない行動に、さすがの咲夜さんも目を丸くさせる。決して頭がパーになったワケではないのであしからず。これには深いワケがあった。
考えてもみてほしい。スラリとした美脚の眩しいミニスカメイドが身長十五センチの世界の俺へ無闇に近付けばどうなるか。答えなどいわずもがな。
咲夜さんに対してそのような、清らかな聖域を汚すに等しいマネは絶対に許されぬ。理由など他にないと心が叫んだ。俺が己に拳を振るうには十分すぎた。
というかアリスも咲夜さんも無防備すぎです! こちとら小さくなっても頭脳は同じなの! 幼児化したわけじゃないの!
あと当たり前だがフツーに痛い。わりと本気で殴ったから膝がガクガクしてやがるぜ。力絶え絶えに立ち続けるボクサーにも似た姿勢で、かつ顔を横に背けたまま彼女にどうにかこうにか意図を伝える。
「ごふっ。さ……咲夜さん、これ以上俺に近付いてはダメです。俺の紳士がケダモノと化す前にお離れください」
「お気遣いありがとうございます。ですが、ご心配には及びません。メイドですもの、お客様の前ではしたない粗相などいたしませんわ」
相も変わらぬ瀟洒な声色で従者の鑑と称えたくなるセリフを口にすると、メイド長は左右の手のひらで俺をすくい上げた。一瞬だが、うっかりそちらに目が行く。ミニスカでしゃがむというメッチャ危険なポーズであるにもかかわらず、確かにそういうのは見えなかった。むしろ見えないとおかしいポジションなのに。完全無欠に鉄壁のスカートであった。
とりあえず、男の本能に支配されてガン見しそうになった罪は生涯誰にも言わないと心に誓った。
咲夜さんに運ばれて、アリスたちがいるテーブルに戻る。吸血鬼姉妹もすでに椅子に腰かけていた。
ひとまず、お茶の支度を始めたメイド長の邪魔になってはいかんので、人形遣いのところまで移動しよう。テーブルの上をテクテクと歩き、彼女のもとへ。
「優斗、おかえりなさい」
「うぃ、ただいま。なんか、遊びに行ってた飼い猫が帰宅したみたいな反応じゃね?」
「あ、言われてみれば確かにそれに近いかも。ネコミミ付けたら似合いそう」
「…………」
無言で崩れ落ちる。その場に四肢を着いて心の汗を流した。
おかしいな。小さくなって女の子からチヤホヤされるってラブコメなら美味しい展開なのに、現実は想像と違った。どうやら俺ではリトさんになれないらしい。誠に遺憾である。
男の密かな嘆きなど露知らず、始まるのは毎度お馴染みのティータイム。放課後じゃなくてもティータイム。あとキャラの中では唯が一番好きです。
強いて言えば、皆の視線がやたらと俺に集まっているのがいつもと違ってむず痒いったらない。まぁ、ある日いきなり知り合いがミニマム化してたら誰だって注目するわな。気持ちは分からんでもない。
紅茶のひとときが訪れる。しかしながら、十分の一スケール以下の俺が普通サイズのカップなどもちろん持てるはずもない。ってなワケで代わりに用意されたのは喫茶店とかでコーヒーと一緒についてくる小さいマグカップ。ほら、あるじゃん。銀色で取っ手が付いてミルクを入れるためのアレ。名前は知らん。
「超ピッタリな大きさで逆に驚きなんですけど」
「良かったわね、優斗」
「せやろか、せやな」
なお、焼き菓子の方はさすがに小さいものを準備することもできず、俺の隣には寝ッ転がれそうな分厚いパンケーキが敷かれている。そいつをアリスが小さく千切ってくれたものを受け取るかたちで落ち着いた。
「ふふっ。ほら、おいしい?」
「ンマーイ!」
窓辺に留まる小鳥がエサをもらっている気分でござる。彼女の視点だと小人が焼き菓子の欠片を頬張っているようにしか映らないのだから言いえて妙なのかもしれない。やべ、自分で言ってて辛くなってきた。早く大きくなりたい。
そんな俺たちをレミリアが愉快そうに眺める。
「相変わらず貴方たちが来ると退屈しないわね」
「もう、人をトラブルメーカーみたいに言わないでくれる?」
「褒め言葉よ。私の友人なのだから常に話題性に溢れていてこそ相応しいわ」
「私たちよりも霊夢や魔理沙の方が話題に欠かないんじゃないの? いつも異変解決の中心なんだから」
「そうとも限らない。貴方たち二人が出会ってから運命の歯車は大きく回り始めたわ。面白いくらいにね。今回の件も定められていた運命の一つなのよ。そもそも、天狗の新聞に何度も取り上げられた時点で既に目立っている証拠でしょう?」
カリスマっとばかりに悠々とカップを傾けるレミリア。あらやだ素敵。
すると、今度はアリスの対面に座るパチュリーがレミリアに問いを投げかけた。
「だとすれば、レミィは私にも話題性を求めるつもりかしら?」
「まさか。パチェがアグレッシブになったらそれこそ異変よ。すかさず霊夢が動くほどにね」
吸血鬼が意地の悪い微笑を浮かべる。ニィッと吊り上げた口の端から八重歯が覗く。
インテリなジョークを交えた会話が繰り広げられる傍らでは、またもやフランがアリスに子どもらしいおねだりをしていた。
「ねーねーアリス。フランもユウにおやつあげてもいい?」
「いいわよ。ちゃんと細かくしてからあげるのよ?」
「うん!」
「君たち、本人に直接聞かないのはどうかと思うのですが僕は――」
「はい、どうぞ」
「うむ。もぐもぐ」
いよいよもって俺の立ち位置が危うくなっている件について。差し出されたお菓子は素直にいただいておくけど。たとえ体が十五センチになろうとも、子どもの期待にはしかと応える男でありたい。断じてロリコンではない。
気が付けばアリスとフランから交互におやつをもらうという、色々と腹いっぱいなシチュエーションになっていた。
「えへへ、こいしちゃんにも見せてあげたいな」
「お持ち帰りされてその辺に放置される未来が予想できるからホンマ勘弁してください」
あの無意識妹の手に渡ったりでもしたら。始めのうちはいいかもしれないが一度でも別のものに興味を抱かれたら最後、だだっ広いうえにアニマルたちが闊歩する地霊殿のど真ん中に置いていかれてしまう。あなおそろしや。さとりんかパルスィが来なければ即死まっしぐらだ。スフィンクスを恐れたオティヌスの気持ちが痛いほど分かった。
実のところ、先ほどからそれと似た体験をしている最中だったり。フランお気に入りのテディベアがいつの間にやらテーブルに置かれている。こやつでさえも俺にとってはツキノワグマに匹敵する。せめてシルバニアファミリーにしてくれ。
お菓子の欠片で腹が満たされるという凄まじくエコロジーな体験をしたお茶会も終わり。アリスとこれからについて作戦会議を開く。
「どうしたもんかねぇ。食物連鎖の底辺目指してこのままじゃ野良猫さえも百獣の王だべ」
「家に帰りましょうか? おそらく今日中には戻るでしょうし、大人しく待っていた方が安全だと思うわ」
「そうすっか」
命の灯が危ういのもあるが、俺一人では移動もままならない現状がとんでもなく不便極まりない。ミニマムライフはもういいや。いつもの日々がたまらなく愛しいものだと気付くテンプレなオチですね分かります。
すると、俺たちの会話に耳を傾けていたレミリアが、「あら」と意外と言いたげな声を出す。続けて、さも当然とばかりに一つの案を出してきた。
「ここに居ればいいじゃない。うちは猫も飼っていないし安全は保障するわよ」
「吸血鬼の館で安全が保障されるというのもどうかと思うが……」
「その吸血鬼の館に頻繁に遊びにくる人間がこの期に及んで何を言っているのかしら?」
「はっはっはっ、そいつぁごもっともですわ」
テーブルに両肘をつき、組んだ指に顎を乗せてレミリアが妖しげに笑う。彼女に対して、俺も気障ったらしく肩をすくめて応えた。
主と客人が織りなす小粋なユーモアに、さらに従者と図書館の魔女も加わった。
「猫はいませんがネズミは出ますね」
「そうね、手癖の悪いのが一匹」
「名前を出さなくても誰を指しているのかすぐに分かっちゃうのも考えものよね……」
魔法に森に住む魔法使いの親友を思い浮かべてアリスが困ったような顔をする。借りていた本を咲夜さんに全部持っていかれたと、件の少女がこの前遊びに来たときにブー垂れていたのは記憶に新しい。
ふいに、遠くから扉が開く音が聞こえた。立て続けに、
「おーい、誰もいないのかー? 魔理沙さんが遊びに来てやったぜー!」
「あら。噂をすれば陰ね」
人形遣いの青い瞳が、聞き覚えのある声がした方に向けられる。っていうか名乗ってたな。なんともタイミングの良い。話題にあがっていた張本人がおいでなすった。
同時に、図書館の魔女が諦めを含んだ溜息を吐く。
「いつから図書館はたまり場になったのかしら」
「くっくっ、そう言ってやるなパチェ。これも運命なのよ。アリス、ホビットよりも小さくなったこの男を魔理沙にも見せてやりなさい。きっと愉快な反応を晒してくれるでしょうから」
「いいわね。せっかくだし、ちょっとだけ驚かせちゃいましょうか」
レミリアがまさに悪魔と呼べる表情と態度で人形遣いを唆す。白黒魔法使いがおったまげる姿を思い浮かべたのか、アリスもイタズラっぽいウインクで返した。あ、可愛い。
「優斗、じっとしててね」
「マッ」
待ってと言う暇も与えられず、おかげでラスカルの鳴き声っぽい音が口から漏れた。
椅子から立ち上がった彼女にひょいっと持ち上げられ、そのまま再び柔らかな感触のもとへ導かれる。
俺を腕に収めながら、アリスが本棚を隔てた先に呼びかける。
「魔理沙、こっちよ」
「ん、その声はアリスか? お前も来ていたのか」
靴音がこちらに近づいてくる。
そして――
ボフンッ
『……………え?』
脈絡もなく、どこからともなく生じた煙が十五センチの体を包む。それは瞬く間もなく、すぅーっと幻のように霧散していった。
視界が晴れればアラ不思議。先ほどまでの見上げる世界はどこへやら。しかと己の足で大地もとい床を踏みしめ、慣れ親しんだ高さで全てが目に映った。つまるところ、
「お、おお? 戻った、のか……?」
前触れなく復活したせいでいまいち実感が湧かず、情けなくも疑問形になる。何秒もかけて、ようやく全てを理解した。感情がじわじわと身体中に染み渡っていく。全身の隅々まで行き届いた途端、俺は思わずガッツポーズと喜びの雄叫びを上げた。
「いぃぃぃやっほおおおう!!グレートだぜ、ついに俺は失っていたものを取り戻したァアア!!」
「おーおー、なんだぜ賑やかなのがいるじゃないか」
まさに紙一重のタイミング。こちらの騒ぎに乗っかるように魔理沙が本棚の裏側からひょっこりと顔を出した。
「おっす、魔理沙」
「よっ。一体何があっ……た……」
なぜか彼女の言葉が途切れた。こちらへの歩みもピタリと止めて、さらには活気な表情を真顔に変え、かと思いきや今度は慄いて一歩下がるリアクションまでした。なんでや、もう小人化しとらんやろ。
俺が訝しげな面をしているのも気に留めず、魔理沙が思わず口に出した一言が全てを物語った。
「本当に何があったんだ? アリスがこんなに積極的になるなんて珍しすぎるぜ……」
メーデー、メーデー。状況を整理されたし。
今しがたアリスはミニマム化した俺を持ち上げていた――異論なし。
前を向いている俺を彼女が後ろから抱っこするような感じだった――異議なし。
そして、その状態でいきなり本来のサイズになっちゃったわけで――ここ重要。
そんでもって、間髪入れずに魔理沙がやってきちゃったわけで――即ち。
彼女が目撃するものなんて……
そんなの、どう見ても誤解される光景に決まっているじゃないの。
俺の背中に身を預けて、華奢な腕を胴に回してぎゅっと力を込めているのは、俺を落とさないようにしていたから。なんだけれども、現状だけだと第三者にはどう映るだろうか。空を飛ぶときの、運ぶ側と運ばれる側の関係とは全然ワケが違う。まるで離さないと縋っているような、誰にも渡したくないとしがみ付いているかのような。はたまた、精一杯の甘えの気持ちにもとれるかもしれない。
全身が沈められるほどの巨大な柔らかさの塊に代わって、伝わってくるのは女性らしい豊かな膨らみと、少女の顔が埋められていること。先ほどまでの俺たちとは真逆で、アリスの顔がすっぽり隠れてしまっている。要約すると、
『仲間たちに見守られる中で、金髪碧眼の少女がすぐ傍にいる青年の身体を、体温を、匂いを、その存在の一つ一つを大切そうに確かめている』という映画のワンシーンがみたいな状況が出来上がっていた。
「~~~~~~ッ!?」
鮮やかな金色のショートヘアから覗いていたアリスの耳がみるみるうちに真っ赤に染まる。後ろに密着する温もりが熱っぽいものに変わったのは気のせいかマジなのか。
「~~~~ッ! ~~~~ッ!!」
「おおお落ち着くんだアリスこれは事故だ孔明の罠だ!」
アリスが声にならない悲鳴をあげて俺の腰に回していた左右の腕にさらに力をかけてくる。離れるどころか反対にもっとくっつくなんて相当テンパっているに違いない。かくいう俺も自分が何を言ってんのか分かんない。
もはやここまでタイミングが良すぎるミラクルが重なると、レミリアが運命をいじくったんじゃないかと疑いたくなるが、紅魔館勢の誰一人として言葉が出てこないあたりガチな偶然なのだろう。
そしてついに人形遣いが微かに声を出す。あかん、嫌な予感。
「ひ………」
「ちょま――」
直後、ふっと足の裏から感触が消えた。立て続けに景色がぐるんと反転、上下逆さまで真後ろにあるはずの図書館の背景が視界に飛び込む。もしやコレは……
トドメばかりに、喉の奥から生み出された叫びが少女から解き放たれた。
「きゃぁああああああああああああ!!」
「バックドロップぅううううううう!?」
迫りくる床面に指す術もなく叩きつけられ、脳天に迸る激痛と首筋に走る筆舌に尽くしがたい鈍い音が響く。意識が遠のいていくなかで、どういうわけか白玉楼にいるゆゆ様と妖夢の幻覚が見えた。
つづく
無性に観たくなったのでDVDをレンタルしてきました。
感想、
ミュウツーの逆襲が二十年ほど前の映画って……嘘やろ……