東方人形誌   作:サイドカー

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この前の休日に、ガンダムUCをepisode1からepisode6まで、ぶっ通しで観ました。
いくつになってもロボットアニメで熱くなるとは、自分も男なんだなぁと改めて実感……

さて、そんなわけで今回もごゆるりと楽しんでいってくださいまし。


第六話 「クールなメイドさんはお好きですか?」

 あのあと、じゃあ早速その紅魔館とやらに行ってみよう、といきたかったのだが、今から行くと帰りが大幅に遅くなってしまうとのこと。それに加えて、香霖堂が魔法の森入口にあるため、アリスの家も近いことから、出発は明日ということになった。

 魔理沙みたいな暴走運転ができれば、あっという間に到着するんだろうが、そもそも俺は飛行自体が不可能だ。誠に遺憾である。

 

 

 翌日。今日も絶賛良い天気なのだが、山の方の雲行きが怪しい。近々雨が降るやもしれぬ。

 アリスの話によると、紅魔館は霧の湖とかいう湖の畔に建っているそうな。というわけで、俺達はその湖がある方に向かっていた。

 霧の湖につながっている小川に沿って、ゆったりとしたペースで歩く。さらさらと流れる水のせせらぎと、ポカポカした春の陽気の二重奏が、何とも心地よい。思わずその辺に寝っ転がってしまいたくなる。が、今回は自重しよう。日向ぼっこはまた今度だ。

 

 

「アレが紅魔館よ」

「はぁー、いかにも館って感じだな」

 やがて、湖の畔に聳え建つ、見上げるほどに大きな洋館が見えてきた。一昔前のロンドンにでもありそうな、アンティーク感あるお屋敷。建物全体の色合いが赤っぽいのは、その吸血鬼の趣味なのだろうか。

 俺達は、屋敷の門前まで移動した。門番が居るらしいので、ちゃんと挨拶していこう。

 なお、魔理沙は強行突破で突撃ラブハートするそうだ。来る途中でアリスが教えてくれた。なんというか、うん……めっちゃ想像できた。

「時にアリスよ」

「何?」

 

「あそこで寝ている女性は、ホームレスか何か?」

 

「………いいえ、彼女が門番よ」

「……そうか」

 目の前で何が起こっているか説明しよう。

 現在、閉じられた門の前には、腕を組んで仁王立ちする一人の女性の姿があった。紅色の長髪に、スラリとした長身。深緑色のチャイナ服が良く似合う。服と同じカラーの帽子の「龍」と書かれた星の装飾が特徴的だ。

 そんな武闘派チャイニーズっぽい女性は、直立不動のまま、気持ち良さそうにいびきをかいていた。紅魔館のセキュリティー問題に心配を抱かずにいられない。

 女性の姿を見て、アリスは「まったくもう……」と溜息を吐くと、居眠り門番の肩を揺らし、名前を呼んで起こす。何度か揺すっていくと、ようやく彼女は目を覚ました。

 

「ちょっと、美鈴。起きなさいよ」

「んぁ? ありゃ、アリスさんじゃないですか。おはようございますぅ……」

「もう昼だけどね」

「細かいこと言わないで下さいよ~。あれ? そちらの人は?」

「私の家に同居している外来人よ。彼に紅魔館を案内してほしいんだけど、お願いできるかしら?」

「わっかりましたー」

 眠気眼をこすり、ようやく意識がハッキリしてきたのか、ぽわぽわした笑みで返事をする門番。確かアリスが美鈴って呼んでいたな。

 屋敷に入る前に、俺達は互いに自己紹介と、紅魔館について説明を受けることにした。

「初めましてです。私は門番をしてます、紅美鈴といいます」

「俺は天駆優斗。さっきアリスが言ってた通り、外来人で現在アリス家に世話になっている。とりあえず、この屋敷について教えてくれないか?」

「はい、この紅魔館は、吸血鬼であるレミリアお嬢様が当主をなさっております。お嬢様にはフランドール様、私達は妹様とお呼びしているんですが、妹がいらっしゃいます。お嬢様方のお世話をしているのが、メイド長の十六夜咲夜さんです。咲夜さんは、優斗さんと同じ人間なんですけど、すっごく頼りになるんですよ? あとは、地下にある大図書館では魔法使いのパチュリー様が、本の管理をなさってます。うーん、こんな感じですかね?」

「おう、何となくは分かったぜ。じゃあ早速、挨拶して回るか? アリス」

「ええ、そうしましょうか」

 

「では、ここからは私がご案内致します」

 

「あ、咲夜さん」

 突然、澄んだ声がしたと思うと、いつからそこに居たのか、女の人が丁寧な佇まいで立っていた。

 美鈴に咲夜さん、と呼ばれた女性は手に持っていたバスケットを美鈴に手渡すと、芸術的な程に丁寧なお辞儀をする。

 

「お初にお目にかかります。私、この紅魔館でメイドを務めております、十六夜咲夜と申します」

 

 そう、目の前にいるのはメイドさんだった。しかもただのメイドさんではない。これがまた、すんげー美人さんだった。

 まず目を惹くのが、アリスの金髪とは対照的に、ダイアモンドのように輝くショートカットの銀髪。頭部にはメイドの象徴ともいえるであろう、白いカチューシャをつけている。スレンダーな体型を見事に引き立てているのは、黒ではなく紺を基調としたメイド服。素晴らしいことに、スカート丈が膝より上にあるため、その美脚が露わになっている。

 着飾る美しさというより、無駄なものを徹底的に省いた、洗練された美しさがあった。こういうの、瀟洒っていうんだっけか。見惚れてしまうほどのクールビューティ―が、今、俺の目の前にいる。こういう場合、やることといったら一つしかあるまい。

 俺はその場で片膝をつき、右手を差し伸べると、自分に出来うる限りのダンディボイスを再現した。

 

「ご機嫌麗しゅうレディ。もしよろしければ、ワタクシと優雅な一時を過ごしませんか――あぁんっ! ちょっ、アリス足踏まないで! 痛い痛い痛いイダダダダっ! マジすんませんっしたぁあああああ!!」

 

 咲夜さんの美しさにデレデレしていたら、アリスに無言で思いっきり足を踏まれた。ブーツだから余計痛い。ハイライトの消えた目で、グリグリと足に力を込めてくる。いかん、このままではアリスがヤンデレにクラスチェンジしてしまう。

 俺は慌てて立ち上がり、「うぉっほん」と仰々しく咳払いをした。

「これはご丁寧にどうも。天駆優斗です。よろしくお願いします、咲夜さん」

「はい、優斗様」

 美人メイドに様付けで呼ばれた。鼻の下が伸びそうになるのを、全力で堪える。

 それにしても、俺が踏まれているのを見ても取り乱さないとは、なかなかの淑女だ。だけど、できれば助けてほしかった。俺とアリスの様子を見て、咲夜さんは口に手を当てクスクスと上品に、美鈴は「アハハ……」と若干頬を引きつらせて笑っていた。

「これからお嬢様のおやつタイムなのですが、よろしければご一緒しませんか? お嬢様には私の方からお伝えしますので」

「そうね、同席させてもらおうかしら」

 咲夜さんのお誘いに、何とか機嫌を直してくれたアリスが答える。ここは素直に従っておこう。そもそも、断る理由がない。

 俺達が同意したところで、正面の門を開き、咲夜さんが先導する。

 敷地内に入る前に、美鈴がさっき咲夜さんから手渡されたバスケットを掲げた。

「咲夜さん、これは?」

「ああ、それは差し入れよ。お腹が空いたら食べなさい」

「へ? わぁっ! スコーンだぁ。ありがとうございます、咲夜さん」

「ええ。作り過ぎた余りだけどね」

 

 さて、ようやく建物の中に入ることができた。

 内部の構造は、外観と同様に赤がベースとなっていた。また、窓がほとんどなく、日の光が直接差し込まないようになっているのが、いかにも吸血鬼の屋敷って感じだ。といっても、薄暗い不気味な館というわけでもなく、ちゃんと照明の光がさしているので、貴族の豪邸というような印象を受ける。幻想郷に電気はほとんどないらしいから、魔法でも使って照らしているのだろう。

 そんな貴族の豪邸みたいな家の中を、咲夜さんの後をついて歩く。やがて一つの扉の前まで来ると、咲夜さんがノックし、部屋に入った。

「失礼します、お嬢様」

 

「待ちくたびれたわ。あら、アリスも一緒だったのね。それに、そこにいる男は外来人かしら?」

 

 テーブル席に腰掛けていたのは、小柄な少女だった。少女の背中には、コウモリを彷彿とさせる黒い羽が生えていた。薄桃色の洋服とナイトキャップみたいな帽子がよく似合う。どうやら彼女が当主のお嬢様らしい。幼い見た目からは想像できないほどのオーラが伝わってくる。カリスマってやつだろうかね。

「フランは?」

「まだお休み中です」

 咲夜さんの返答を聞いて彼女は「そう」と言うと、視線を動かした。

 吸血鬼お嬢様の真紅の瞳がこちらに向けられる。

「先に名乗ってあげる。私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の当主であり、吸血鬼よ。さあ、次はあなたの番よ、外来人?」

「天駆優斗だ。よろしくな、レミリア」

「へぇ、肝が据わっているじゃない。外来人が吸血鬼を目の前に平然としているなんて」

「まぁな。三日も経てば、この環境にも慣れるってもんだ」

 別にレミリアをなめているわけではないので、そこは勘違いしないでいただきたい。

 まぁ、外見の恐さでいったら、次元の方が上だけどな。だって、アイツと初めて席が隣同士だった時、ターミネーターみたいなグラサンしてんだもん。後日、当時のことを聞いたら「カッコいいと思ったから」だとか言いやがった。閑話休題。

 自己紹介が済んだところで、咲夜さんに促されて、俺とアリスも席に着いた。

 真っ白なテーブルクロスの上には、スコーンや、イチゴジャム、ストレートと思われる濃いめの色合いの紅茶などが、綺麗に並べられていた。

「あなた、気に入ったわ。どう? ここで働く気はないかしら? 特別に住む部屋も用意してあげる」

「ちょっと、レミリア! 何言い出すのよ!?」

 レミリアの勧誘に、アリスが思わずという具合で立ち上がった。怒っているというよりは焦っているといった方が近い。……焦っている? まぁ、俺の答えは決まっているんだがな。

「だが断る」

「………ほう。何が不服なのかしら?」

「不服じゃないさ。ただ、俺はアリスと一緒に暮らしたいってだけだ」

「ぷっ。いいわ、ますます気に入った。よかったわね、アリス。そんな不安そうな顔しなくて大丈夫よ」

「~~~~~~っ!!」

 隣に目を向けると、カァァッと顔を赤らめて、肩をプルプルと震わせているアリスの姿があった。

「アリス?」

「な、何でもない!! いいからコレでも食べてなさい!!」

「モガァッ!?」

 ちょっと心配になったので名前を呼んだら、物凄い勢いでスコーンを口の中に押し込まれた。ち、窒息してしまう……

 咲夜さんに淹れてもらった紅茶を一気に飲み干し、気道を確保する。ぜぇぜぇと荒い呼吸が収まるのを待った。そんなこんなしていると、突如、部屋のドアがガチャッと開いた。

 

「あなただぁれ?」

 

 

つづく

 




ラブコメは素晴らしい。
特に、「藍より青し」と「いちご100%」を読んだ時の感動を、自分は忘れることはないだろう……

どちらも読んだのは2年くらい前という、意外と最近の出来事ですけどね!
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