東方人形誌   作:サイドカー

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待たせたn(大爆発)


皆さま大変長らくお待たせいたしました。
失踪疑惑の汚名挽回サイドカーでございます。

そして、サブタイの通り今回はちょっとした繋ぎとなります。
いつもと違った感じですが、ごゆるりとお楽しみいただけると嬉しいです。


幕間

 昔話をしよう。

 

 とある青年が後に自らを「気分屋」と称するに至るまでの道のりを。

 

 他愛のない与太話だ。拍手喝采の面白おかしい内容ではない。幻想はなく、あるのは現実の壁と正解がわからない選択肢。似た話がそこかしこにありそうな、ほんの些細なサブストーリー。もしかしたら途中で退屈してしまうかもしれない。

 

 それでも、頼まれてやって欲しい。

 

 少しだけでも構わないから、

 

 どうか聞いてはくれないだろうか――

 

 

 

 彼はごくありふれた一般家庭に生まれた、どこにでもいる男子でした。

 頭は悪くなく、成績もそこそこ良い。けれども、かといってテストで常に上位一桁にいるほど頭が良いワケでもない。

 運動もそれなりにできる。けれど、体育祭でヒーローになれるほどスポーツ万能というワケでもない。

 授業は真面目に受けて、休みになれば年相応にバカみたいな悪ふざけだってやらかす。

 言い方は悪いかもしれませんが、彼は良くも悪くも「普通」の一言で表せられる男子学生でした。

 それと、彼も年頃の男子でしたので、女の子からの頼みは二つ返事で引き受けたり一段と気合が入ったりする一面もあったのは仕方のないことでしょう。

 面白半分で厄介ごとに首を突っ込むお祭り野郎でもありましたが、なんだかんだで困っている人を放っておけない、そういう性格の持ち主なのでした。

 

 そんな彼にはお兄さんが一人いました。

 彼の兄はとても優秀でした。まさしく、完璧超人という表現がこの上なくピッタリと当てはまる逸材でした。

 兄は非常に頭が良かった。知識はもちろん、他の人とは違った視点からの斬新な発想力で周囲をいつも圧倒させました。天才だったのか秀才だったのかはわかりません。ズバ抜けた頭脳に同級生だけでなく教師さえも一目置かずにはいられませんでした。ですが、肝心の兄は羨望や称賛などどうでもよく、黙々と己の見識を広めることだけに徹しました。

 兄は運動神経も抜群でした。腕力もあれば足も速く、その身体能力を欲して数多の部活動がこぞって勧誘をかけ続けました。しかし、当人である兄はその全てを一蹴し、ただ己を鍛えることだけに集中しました。

 

 まるで、密かに牙を研ぐ一匹の狼。

 他人に関わる時間を一切作らず、兄は全て自身を磨くために費やしていたのです。

 唯一の欠点は協調性の欠如。しかしながら、その欠点すらも、自身の実力をもってすれば容易に補えてしまえたのでした。ある意味で真っ直ぐな姿勢が密かに女子からの人気を集めていたという裏話もあるのですが、結局、それさえも兄には眼中になかったようです。

 誤解しないでほしいのは、兄は決して他人を貶めているのではなく、ただ興味がなかっただけなのです。

 

 仲が悪かったわけではない。でも、両者の差は明らかでした。

 

 勉強においても運動においても常に首位を独走し、にも拘らず決して奢りもせず精進を続ける兄と、何事においても良くも悪くも平凡な弟。

 

 両親がどちらを推すかなど考えるまでもないでしょう。

 あらゆる場面において、父も母も長男を鼻高々に褒めちぎりました。ある時は勉学で、ある時はスポーツで。多少人付き合いに難があったとしても、兄は間違いなく理想かつ自慢の息子像でした。

 幸いにも長男と次男を比べたりはしませんでしたが、両親の目には次男などまともに映っておらず、いつしか彼を褒めることさえも忘れていきました。嫌味ではなく、単純に彼への関心が薄れていく。それは却って辛辣な仕打ちだったのかもしれません。

 とはいうものの、弟も兄の能力の高さをよく知っていましたから、当然のことだと割り切っていました。そもそも、実力差があまりにも違い過ぎて、対抗意識すら湧いてこなかったのですから。不貞腐れもせず、あるがままを受け入れて日々飄々と振る舞いました。

 いつしか、彼は自宅よりも外にいることの方が次第に多くなっていきましたが、彼の立場をみればそれも当然なのでしょう。

 

 兄と弟は考え方も真逆でした。

 片や、信じられるは己の実力のみ。他者との関わりを疎ましく思って避ける。

 片や、様々な人たちと関わりを持ち、もし困っているなら放っておけなくて、軽い調子でカッコつけたりなんかしつつも手を差し伸べる。

 

 あくまで生き方の違い。

 どちらかが正しいかどうかなんて誰にもわかりません。ただ一つだけいえるのは……

 皮肉にも、あらゆる面で兄に劣った弟は、兄が唯一持たなかった他者との繋がりが自身の強みとなったのです。

 

 お人好しで、お調子者で、変なところで情に厚くて、厄介事に自分から巻き込まれに行って、優しくて、臆病で、平凡な男の子。

 

 そんなある時。

 

 たった一つの行動が、これまで築き上げていったものを彼自身の手で壊してしまう結末を招いてしまったのです。

 




Q. 読者を散々待たせた割には短くない?
A. 一日一回しか投稿しないと誰が言った?
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