東方人形誌   作:サイドカー

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(二週間で投稿が)できたじゃないか ←シローアマダ感

東方人形誌、本編からOVAと続きましたが、ひとまず完結でございます。
ここまでの閲覧感想評価メッセージその他諸々、皆さま本当にありがとうございました!

というわけで残るはOVA後編のラスト一本!
最後までごゆるりと楽しんでいただけると嬉しいです。


OVA後編 「優アリが子守りするハナシ」

 紅魔館に泊まりませう。

 結果からいえば、その日のうちにフランが本来の成長段階まで戻ることはなかった。気付いた頃にはすっかり夜の帳が下りており、もうここまでくればどのみち同じ。アレコレと治す方法を調べていたパチュリーも「一晩経てば治るわ」と時間による解決を推した。下手な策を打って余計に長引いてしまったら厄介だと。それあるー!

 んでもって本題。この状況で俺たちが帰ろうものなら、主にアリスがいなくなったのが原因で赤ちゃんフランが大泣きするのは明らか。そういうわけで、今宵は紅魔館で過ごすことが決定したのでござる。いいか、よく聞け。ここをキャンプ地とする。

 そして、時は流れていき……

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

「……ふぃ~、ようやっと寝てくれたか」

 一日の大半を寝て過ごすのが赤ん坊かと思いきや、まさかこんな遅くまで起きているとは予想だにせんかった。あるいは魔法の影響による幼児化だから、普通の赤ちゃんとは事情が違うのやもしれぬ。詳しいところは俺も知らん。興味があるヤツは適当にググれ。

 フランの自室で彼女愛用のテディーベアを動かしたりして遊んでいたら、おねむの兆しがあったのがついさっきの出来事。そこから眠りにつくまではあっという間だった。

 ダブルどころかキングサイズのベッドにフランを寝かせ、健やかな寝顔を覗き見る。和むわぁ。

「いっぱい遊んだからね。パチュリーも言っていたけど明日には元に戻っているはずよ」

「つまりこれにて一件落着ってか。いやはや、頼まれた時はもっと大変かと思ったが……案外何とかなるもんだな」

「フランは素直なイイ子だもの」

「ハッハッ、ちげぇねぇっすわ」

 アリスが添い寝してフランのお腹にゆったりリズムで手を置く。無垢な幼子に慈しみの眼差しを送る姿は、地上に舞い降りた天使かはたまた女神か。ふつくしい。

 優しくて温かな、そんな陽だまりの世界に心が満たされていく。その光景を俺もすぐ傍で見続けていた。

 金髪碧眼の少女と同じく、大きなベッドに身体を横たわらせながら。

 

 お気付きだろうか。フランを真ん中にして、左右それぞれに俺とアリスが添い寝している。いわゆる「川の字」というヤツである。

 

 いや、言っておくがいかがわしい気持ちは断じてない。というか俺用に客室も貸し与えられている。それもメッチャ豪華なのが。ならば、どうしてこうなったか。答えは実に単純。たった一つのシンプルな理由だ。

 俺がそっち行こうとしたらフランがぐずり出したから。どうやらアリスだけじゃなくて俺にも居てほしかったっぽいのよ。さすがにコレで出ていくわけにはいかなくない?

 以上により、ツインルームの四人使用ならぬキングベッドの三人使用となったのだ。QED。まぁ、こっちは全然狭くないけどね。

 

「ふふっ、可愛い寝顔」

 アリスが微笑みながら、フランの前髪をさらりと撫でる。ベッドサイドに置かれた小型のランタンから仄かな灯りが漏れて、タンポポのように柔らかな黄色の髪が照り輝く。

 照明器具の隣には彼女のお気に入りだというオルゴールが並ぶ。ネジを回して箱を開くと、どこか子守唄や揺りかごを連想させる、懐かしく繊細なメロディーが静かに流れ始めた。

 あえて真っ暗にしなかったおかげなのだろう、部屋の雰囲気とも相まって夢心地な気分になる。俺まで眠気を誘われる。

「なんか、イイもんだな。こういうの」

「そうね……」

 愛らしい幼子をアリスと二人で見守るひととき。なんだかんだ言いつつも、この子守りが今日限りと思うとちょっとばかり名残惜しい気もする。フランからすれば堪ったもんじゃないだろうけど。

 ひょっとしたら、レミリアの言う通り俺には親バカの素質があるのかもしれない。

「でもまぁ、本当に愛娘ができた気分だ」

 スヤスヤ眠るいつもより幼いフランに笑みを零しながら、ふとそんな言葉が口から出た。俺の何気ない呟きに人形遣いも頷く。

 

「ええ……いつか、ほんとに――」

 

「…………え?」

「…………あっ」

 

 オルゴールの音色が、ピタリと止んだ。

 ランタンの薄明りだけが残される。微かな光に照らされた少女の頬がみるみるうちに赤く染まっていく。オーシャンブルーの澄んだ瞳が潤み、サファイアのように綺麗だった。

 「いつか、ほんとに――」アリスが言いかけたその先に、どんな言葉が続くはずだった? 

 お互いに言葉を発するのも忘れて見つめ合う。まるで意識が吸い込まれるように、相手に惹かれて目が離せない。

 

『…………』

 

 静寂の中、呼吸の音だけが聞こえる。

 時間が止まったみたい、なんてベタな表現がまさにそれ。気恥ずかしくてむず痒い雰囲気に包まれる。彼女との距離の近さと添い寝というシチュエーションに、今更になって心臓が早鐘を打ち始めた。

 

「………あ、えと」

「~~~~~っ!!」

 

 オィイイ!? なんでここで言葉に詰まっちゃうのかなぁ俺よォ! 草食系男子かコノヤロウ!

 だけど、本当にそういう未来が訪れる可能性もあるのだろうか。彼女と二人で子どもを育てたりする、素晴らしく幸せなルート。つい想像してしまう。神聖な教会で純白のドレスに身を包んだアリスをってファアアアア! いかんいかんいかん、恥ずかしい妄想禁止! と、とにかく何でもいいから何か言え!

 照れ臭さが溢れて身悶えしそうなのをグッと堪え、必要以上に真剣な顔になって口を開く。

「ありす」

「は、はいっ」

 名前を呼ぶとアリスが緊張した面持ちで声を上ずらせる。かくいう俺も声が引っくり返ってしまった。ダメだこりゃ。テイクツーをお願いしたい。

 彼女に至っては暗がりでも認識できるくらいに耳まで真っ赤になっている。おそらく俺も。コレはマズイ。こちらの理性がブッ飛ぶ五秒前。どうするの俺、どうするの!?

 と、その時。

「ぅ~……」

『!?』

 枕元のフランが唸り声っぽいものを上げた。決して大きい声ではなかったのだが、あまりにタイミングがピンポイントすぎて俺もアリスも揃って肩をビクつかせた。違う意味でドキドキした。

 もしや起こしてしまったのかと焦ったが、どうやら寝言の類いだったらしい。その後は何事もなかったかのようにスヤスヤと眠り続ける。夜泣きの危機は去ったみたいだ。

 それにしても助かった。あのままいたら、勢いに任せてトンデモナイこと口走ったりしていたかも。ギリギリセーフ。

 あとは撤退するべく、いそいそとベッドから身体を起き上がらせる。

「おぉおしッ、んじゃ俺はそろそろ部屋に戻るかな。二人ともおやすみ――」

 

「ま、待って」

 

 アリスが手を伸ばしてシャツの袖を掴んだ。二人が動いたせいで寝具が僅かに軋む音を立てる。

 なぜか人形遣いに引き留められる俺氏。恥ずかしげに、けれど手を離そうとしない彼女の行動に、高鳴る鼓動と戸惑いが隠せない。

「えっと、アリス……どしたの?」

「…………から」

「へ?」

 ラノベの難聴系主人公みたいに聞き直してしまったが、本当に小声だったのであしからず。

 僅かな間が生まれた後、再びアリスが口を開く。頬を紅潮させた彼女が告げたのは、いつになく大胆なものだった。

 

「だから、優斗もここで一緒に寝ましょう……?」

 

「なん……だと……」

 鼻血を噴出さなかった吾輩を褒め称えたい。

 健全な青少年の妄想さえも上回る圧倒的な破壊力を目の当たりにして、狼化ではなくブリーチ化してしまった。フリーズしたともいう。

 深みのある真顔で固まった俺に対して、アリスが弁解するように理由を捲し立てる。 

「ち、違うの。ほら、フランがいつ起きるかも分からないし。もし目を覚ました時に優斗がいなくなってたら泣き出しちゃうかもしれないでしょ?」

「あ、あぁー。なるほど確かになぁ」

「さっきだって優斗が一度出て行こうとしたらぐずり始めたじゃない。だから、ね? お願い」

 上目遣いで俺を見上げる金髪碧眼の少女。ベッドに横になっているのも悩ましげな仕草に映って小町的に超ポイント高い。もういっそ余計なことは考えないで流れに身を任せてしまいそう。そもそも言い出しっぺはアリスの方だし。

 けれど、だからこそ俺は彼女を大事にしたい。しなければならない。

 据え膳なんてもっともらしい言い訳でうやむやに誤魔化すのは、紳士としてご法度であろう。俺は俺であり続けたい、そう願った。

 

「………アリスはいいのか? その、何というかさ」

「うん……優斗だから、いいの……」

 見惚れるほどに美しい表情で、人形遣いが小さくもはっきりと頷いてくれる。女の子にそこまで言われたら、出ていくなんてマネが出来ようものか。それこそ男として。

 もっとも、ものっそい勘違いしちゃいそうな展開だけど、あくまでアリスはフランが寂しい思いをしないようにと案じて俺に「一緒に寝よう」なんて言ったんだ。だから、あくまで一緒に寝るだけ。そう自分に言い聞かせる。

 袖を掴んでいたアリスの手を取って、再びベッドに身を沈める。ゆっくりしていってね。

「わかった。今夜は三人で仲良くお休みしましょうかね」

「……ありがとう、優斗」

「俺の方こそ。信用してくれてあんがとな」

「うふふ、最初に出会ったときに言ったじゃない。あなたを信じるって」

 くすぐったそうに笑う人形遣いの可愛らしい声が耳に心地良い。初めて出会った彼女が俺にかけてくれた言葉。全てはここから始まった。

 というかアリスさん、その笑顔が可憐すぎてヤバいです。惚れてまうやろ。

 あやうく世界の中心で愛を叫んでしまいそうだったので、「んんっ」とわざとらしい咳払いをしてやり過ごす。人はそれを照れ隠しともいう。

 とはいえ、今夜はもう遅いしぼちぼち休むべきだろう。ヘタレいうなよ。

「おやすみ、アリス。フランは……もとから寝てるか」

「おやすみなさい。良い夢を」

「んー、今がよっぽど幸せな夢だな」

「もう、バカ……」

 おやすみの挨拶と他愛のないやり取りを交わして、ランタンの灯りを消す。真っ暗になったところで、ゆっくりと瞼を閉じた。ほどなくして聞こえてくる、少女たちの寝息。

 視覚以外の感覚に意識が集う。アリスとフランの息遣い。シャンプーと思しき甘い香り。直接触れていなくても、シーツを通じて彼女の体温が伝わってくるような感じさえも。

 だがしかし、緊張して眠れないなんてオチはなかった。

「………ふぁ~あ」

 今日も今日とてドタバタやってたせいか、あっさり眠気に誘われてうつらうつらと微睡み始める。やがて眠りにつく間際に、

「……えへへ」

 どこか嬉しそうな彼女の笑い声が聞こえた気がした。

 

 

 翌朝。

 俺たち全員が集まった食堂では、真っ白なテーブルクロスの上にパンやサラダを初めとする朝食メニューが上品に並んでいた。高級ホテルさながらの豪華テイストに食欲と涎がヤバし。いざ、ごちになります。

 けど、その前に。

「ごめんなさい」

 眠っている間に本来のサイズに戻っていたフランが、ペコリと小さな頭を下げていた。パチュリーの読み通り一晩で効果が切れたのだ。計画通りドヤァ。

 皆に迷惑をかけたと思っているのか、フランがしゅんとした表情を浮かべる。赤ちゃん時の記憶がうすぼんやりと残っているらしい。

 モチのロン、誰も迷惑だなんて思っちゃいない。しみったれた空気などお呼びじゃないぜ。

 ってなわけで、スライスされたフランスパンにレタスとチーズを乗せつつ、暗い顔した妹吸血鬼に向けて軽快なハイテンションで言ってのける。声高らかに、

「しーんぱーいないさー!」

「朝から無駄に通る大声出さないでくれるかしら? 頭と耳に響くから」

 レミリアがしかめっ面で睨んできた。すまぬ。しかし吸血鬼と一緒に朝ごはんを食べるとはね。これぞ幻想郷の一日といえよう。良き哉。

 ただ、その吸血鬼が手にしているグラスに赤い液体が注がれているのが気になってしょうがないのですが。もしやブラッド的なアレだろうか、それとも朝っぱらからワインを開けたのか。謎は尽きない。この世であなたの愛を~。バーロー。

 俺の視線の先に気付いたのか、レミリアが自慢げにグラスを掲げた。

「新鮮なトマトジュースよ。今朝うちのガーデンで採れたばかりの逸品を使ってね」

「さいですか」

 もはやドッキリでも使わなくなったベタすぎるネタに引っかかってしまった。誠に遺憾である。ついでに俺にも同じものをキボンヌ。すると颯爽とグラスに注いでくれる咲夜さん。さすがやでぇ。

 そんな俺とレミリアの会話を可笑しそうに聞いていたアリスが、いまだに席に着いていないフランに手招きしながら優しく声をかける。可愛い。

「ほら、フランもこっちに来て一緒に食べましょう?」

「うん! アリスの隣がいい!」

 百点満点のスマイルでアリスのもとに駆け寄るフランちゃん。そうそう、こうでなくっちゃ。やっぱり癒しですわ。きっと最後は大団円、めでたしめでたしってな。

 

 さて、フランちゃんベイビー事件も無事解決したし、朝飯も腹いっぱい食った。これにてミッションコンプリート。いつも心は虹色に。

 レミリアたちに見送られながら洋館を後にして、正門へ向かう。去り際、そのレミリアから「頑張りなさい」と言われたのだが、終わった後に頑張れとは是如何に。ま、いっか。何が起きようとも為せば為る。じっちゃんの名にかけて。

 ともあれ、まずはお家に帰りましょ。

「あー、一時はどうなるかと思ったぞい」

「でも楽しかったわね」

「せやろか、せやな」

 軽い足取りでアリスと並んで歩いていく。数分とかからずにチャイニーズ門番が佇むデカい門が見えてきた。が、そこで一つ違和感が生じた。

 具体的にいうと妙に騒がしい。どうやら来客が押し寄せているらしく、美鈴が受け答えにあたっていた。いやはや、朝から賑やかなこって(人のこと言えない)。

 というか、アレは……

 

「お願いですから皆さん落ち着いてくださいって!」

「あやややや、これが落ち着いてなどいられましょうかッ! 幻想郷を揺るがしかねない大スクープなんですよ! 事態は一刻を争うのです、早くここを通してください美鈴さん!」

「ちょっと文! どさくさで抜け駆けして独占取材になんかしたら許さないわよ!?」

「私だってビックリしたんだから! 魔理沙が魂の抜けた顔で神社に来るから何かと思えば……!! とにかくアリスはまだ中に居るんでしょ!? さっさとどかないと退治するわよ!」

「アリスー! 私だー! 結婚してくれー!!」

「だから皆さんの勘違いなんですって! というか魔理沙さんだけおかしくないですか!?」

 

「むむむ、ありゃ何ぞ?」

「さあ……?」

 文にはたてに霊夢に魔理沙、四人の少女たちが血相をかけて門番に詰め寄っているではありませんか。鴉天狗の二人がいるあたり、さしずめフラン幼児化の噂を聞きつけて飛んできたのだと察する。残念だが事件は既に解決しているのだよワトソン君。

 しかしながら、どいつもこいつも美鈴の話しに聞く耳を持たず、説得が難航しているのも伺えた。仕方あるまい、ここは俺が代わりに事実を伝えてやりますか。

 文とはたてはガッカリするかもしれんが、どうか恨まないでくれよ。俺は悪くねぇ。

 正門を通り抜けて喧騒の中心に近付く。

「なーにやってんだ皆して」

「ホントにもう、こんな朝早くから一体何の騒ぎなの?」

 

『あぁああああああああ!! いたーーーーーーッ!!』

 

「おわっ!?」

「え、えぇ? 何?」

 なぜか美鈴を除く全員から大げさに指を差されて叫ばれた。いきなりな反応に俺もアリスもワケが分からず狼狽える。ちょ、おま、殿中でござるか!?

 動揺する俺たちの事情などお構いなしとばかりに、少女たちが一斉に突撃してくる。さらにさらに、まるで特ダネに食いつくマスコミのように矢継早に質問攻めが押し寄せてきたのだった。

「あやや! ちょ、ちょっとお二人さん! 子どもが出来たって聞きましたけど本当なんですか!?」

「文どいて! で、どうなのよ!? ついにシちゃったの!? ヤッちゃったの!?」

「ちょオイ!? ナニ言ってんのこの新聞記者たち!?」

 お日様が出たばかりの朝っぱらにもかかわらず、鴉天狗組のブッ飛んだ発言に思わずツッコんでしまった。どうやら俺たちが知らない間に何やらトンデモナイ噂が幻想郷に流れている模様。言わずもがな、今回の子守り騒動があらぬ誤解を生んでしまっていると察した。っていうか、はたての台詞がやけに生々しいわ!

 その一方で、人形遣いも親友たちに取り囲まれてガックンガックンと肩を揺さぶられていました。

「水臭いじゃないのよアリス! なんで相談してくれなかったの!? こんな大事なことッ……私たち親友でしょ!?」

「れ、霊夢、話しを聞い――」

「ご祝儀はいくら欲しいアリス!? それとも子育てグッズの方が役に立つか!? リクエストしてくれれば香林とこから取ってきてやるぜ!」

「お願いだから魔理沙も聞いて!」

 もはや暴走列車と化した少女たちを前にして、先ほどの美鈴の二の舞になる俺たち。件の門番はやっぱりとでも言いたげな遠い目をしておった。俺の、俺の、俺の話しを聞けぇい!

「だから私たちはフランを――」

 どうにか場を宥めようと試みる人形遣い。しかし、それさえも無視してついにJK鴉天狗が紅白巫女と白黒魔法使いを押し退けて超弩級の爆弾を投下しやがった。

「ねぇねぇそれでどうだったのアリス!? 彼は優しかったそれとも激しかった!? やっぱり雰囲気作ってからベッドでシたの!? ハッ……まさか外で!?」

「ふぇえええええええええ!?」

「だから生々しいってばよ!!」

 ギャルゲーどころかエロゲに通ずる内容を大声でブチ撒けられ、金髪碧眼の少女は一瞬にしてボッと顔を紅潮させてしまった。そしてパニックは伝染する。

 よりによって、ベッドという単語を出されたせいで脳裏に昨晩のことを思い浮かべてしまう。薄明りの寝室でベッドに横たわるアリス、こちらを見つめる儚げな青い瞳、間近で感じた彼女の体温。そういえば、さりげなく手も重ねていたような……

 ふと隣をチラ見したら見事に目が合ってしまい、人形遣いが赤面しているのを隠そうと咄嗟に俯いた。彼女も昨日の夜を回想していたのだろう。うん、そのリアクションますます誤解されるパターンや。

 案の定、観衆がどよめく。

 そして、湯気を立ち上らせていたアリスがとうとう我慢の限界に達した。

 

「~~~~~~ッ!! もう知らないっバカぁあああああああああ!!」

 

「あ、アリスぅううう!? カムバーーーーーック!!」

 耳まで真っ赤にして叫びながら飛び去っていく人形遣い。残された俺は情けなく手を伸ばしたまま膝をついた。誤解が深まったのが確定した瞬間である。

 ガックリと項垂れる俺の肩にポンと手が乗せられる。嫌な汗が背中に滲んだ。俺だって逃げたいわ。

 頬をヒクつかせつつ後ろを振り返ると、不自然なほどに清々しい笑みを浮かべる少女たちが横一列に並んでいた。その彼女たちの目がこうも言っている。

 

 ――詳しい話は署で聞こうか、と。

 

 

 

 おまけ。

 後日、地底に遊びに行ったとき。

「お兄ちゃん、こいしも抱いて! フランちゃんにやったみたいに優しくベッドまで連れて行って!」

「ちょおおお!? だから言い方に語弊が――ファッ!?」

「……ロリコン」

「ちゃうねん、パルスィ。聞いて。ねぇ聞いて? あの夜はアリスとも一緒に寝たし大体俺はロリコンじゃなくて」

「うるさいケダモノ。妬ましいわ」

「さっき以上に絶対零度の視線が突き刺さる!? いやいやいやッ、そうじゃなくてですね?」

「抱きしめて! 銀河の、果てまでーーーー!」

「どこでそのセリフを覚えてきたァ!? ちょっ、パルスィ待って待って誤解なんやって!」

 拝啓、兄上様。ただいま子守りよりも誤解を解く方が大変そうだと身に染みております。

 

 

OVAおしまい




長らくの応援ありがとうございました!
サイドカーの次回作にご期待ください ←どっかで見たことある〆のセリフ

そして……

アリスは可愛い
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