お久しぶりでございます。サイドカーでございます。
サブタイ通り、もう一つの物語「東方扇仙詩」と繋がった内容となります
正直あんまり関係ないけどな!(暴露)
完結したはずの東方人形誌のオマケ話
此度もごゆるりとお付き合いいただけると嬉しいです。
守矢神社に遊びに行く約束なのよさ!
そんなわけで、マグロマンになれない俺たちは妖怪の山の麓までやってきた。あとは守矢神社を目指して登らなければならないのだが、ついこの間、なんとロープウェイが建造されたのだ。やったぜ。
おかげで登山も楽々チンチン。人里の村人らも参拝がしやすくなったそうな。守矢、ロープウェイ始めるってよ。
「善き哉、善き哉。飛べない俺にはありがたい限りだっちゃ」
「そうね。優斗が空を飛べるようになったら違和感あるかも」
「マジで? そんなに変な感じ?」
「ふふっ、冗談よ」
天使のような声でくすくすと微笑む女の子がいた。お洒落なショートヘアに整えられたサラサラした金髪に赤色のカチューシャを飾り、サファイアを彷彿とさせる青く澄んだ瞳が芸術的に美しい。綺麗な顔立ちと容姿はさながら人形のようだと謳われる。彼女が着飾っている群青色のスカートをはじめとする洋服もよく似合う。一言でまとめば、すっごく可愛い。
七色の人形遣い、アリス・マーガトロイド。俺にとっては何よりも大事な女の子だ。彼女が居るからこそ、俺は幻想郷に残る道を選んだのだから。
なんつって、いざ口にすると超恥ずかしいでありますなぁ。甘露甘露。
はてさて、此度のきっかけは何気ないところから出てきたものに候。
数日前にアリスと早苗がお菓子談義に花を咲かせていたことがあった。その際、風祝の地元で作られるモノがあると聞き、人形遣いが興味を持ったのだ。んで、せっかくなので一緒に作ってみましょうと緑髪の巫女さんに誘われて、人形遣いが二つ返事でOKした。
ちなみに、今回は早苗に教えてもらう側だが、この次はアリス邸で洋菓子作りを教える約束も交わしていたり。可愛い女の子たちの教え合いっこを想像するだけで夢が膨らむ。漲ってきたお。
「楽しみね、早苗の故郷のお菓子ってどんなのかしら。和菓子なんてほとんど作ったことないから気になるわ」
「んー、俺は地元が違うから詳しくは分からんけど、やしょうまっていうらしい。何でも信州の春を迎えるには欠かせないらしい」
「特定の時期に限られるってことは、おせちみたいなものなのかしら……? 今の時期には合わないかもしれないわね」
「いいんじゃね? 夏に餅食うこともあるだろうし、逆に冬にアイスとか珍しいもんでもないし。臨機応変にいこうや」
おせちも良いけどカレーもね。ただし漬物テメーはダメだ。
なんて立ち話をしながらロープウェイを待ちぼうけ。小耳にはさんだところ、ちょうど上から降りてくる乗客がいるのだとか。ロープウェイの建設に一役買っていた河童、河城にとり工場長閣下がそう言っていた。間違いない。なお、その河童氏は麓サイドの操作盤に不具合がないかチェックしに行っています。
まだ来ぬアトラクションにまだかまだかと首を長くしながら、本日もよく晴れた青空を仰ぎ見る。
「アリスは乗ったことあるか?」
「ううん、今回が初めて。いつも自分で飛んでいるのとどう違うのか、ちょっと楽しみなの」
えへ、と小さく舌を出してお茶目に照れ笑いする金髪碧眼の美少女が可愛いのだが、はたして俺はどうすればいい?
さらに待つこと幾しばらく、お山の向こうからユラユラと揺れながらこっちに来る箱らしきものの輪郭をボンヤリと捉えた。やがて近付くにつれて、その形がハッキリと映る。まるで櫓のような造り、三角屋根が特徴な木造の乗り物が見えてくる。
お待ちかね、ロープウェイの乗車時間だ。
「おっと」
索道のアトラクションが停止すると、まずは中に居た先客が降りてくる。俺とタメっぽい若い男女ペアで少しだけ驚いてしまった。なんてったって格好が目立つのだコレが。
片や、黒髪オールバックにシャツもズボンも全て黒尽くめの男。コナンの敵組織ではない。ちょいとガラの悪そうな、ぶっきらぼうな印象を受ける青年であった。マジヒクワー。
そして片や、桃色のミディアムヘアにシニョンを括り、赤い薔薇の花飾りが付いた中華衣装を纏った女の子。ミニスカートは緑色なのだが、全体的にピンク色なイメージを抱く。うわぁお、すんごい綺麗なお嬢さん。
擦れ違い際に、クロムクロよりも黒い青年がジロリと横目で一瞥してきた。が、特に何も言わずに通り過ぎていく。すぐ後ろをピンク属性な美少女が追う。こちらに軽く会釈してきたので、つられて俺たちもペコリと返しておいた。「あ、ども」って感じで。
何となく気になって、俺もアリスも彼らの後ろ姿を見送った。当然、あちらさんはこっちを振り返ることなく歩き去って行く。
人里の方に向かった男女が遠くに消えて、人形遣いがポツリと零す。
「変わった二人組だったわね」
「そうやねぇ……」
初めて見る顔ぶれだったが、守矢神社の信徒だったのだろうか。いや、そんなことよりも見逃せない点があったでぇ。
若い男女が二人きりでお出かけ。見たところ、彼も彼女も距離が近くて親しそうな雰囲気だった。つまりリア充か。
「破ったな……ルルーシュが遺した平和を……!」
「ルルーシュなんて人いたかしら……?」
思わずナイトメアで出撃しそうになった俺の横でアリスが小首を傾げていた。シャーリー生存ルート万歳。
その後、戻ってきたにとりに「早く乗っておくれ」と急かされて乗り込んだ。特に発車トラブルもなくロープウェイが動き始める。飛行機の離陸する瞬間にも似た高揚感が湧き上がってくる。
手すりに掴まって身を乗り出し、声高らかに叫ぶ。
「こいつ……動くぞ!」
「もう、小さい子じゃないんだからあまりはしゃがないの」
「うぃ」
穏やかな時間。アリスと二人乗りな旅のひとときを楽しむ。駅弁ほしかったなぁ。
それから到着するまで、貸し切りのゴンドラもといロープウェイからの絶景を眺めたり、たまたま見回り中だったもみっちゃんに手を振ったり。とっても充実していました、まる。
「それでは、やしょうまを作ってみましょう」
「お願いね、早苗」
「はい、任せてください」
そんなこんなで所変わって所沢……じゃなくて、守矢神社のお台所にお邪魔なう。ちなみに俺は埼玉じゃない。
外来人にして女子高生にして巫女さんにして現人神と盛り沢山で、されどお淑やかな清楚系美少女。強化人間(1.25ver)な俺とは違ってお空も飛べちゃうミラクル☆ガール、東風谷早苗先生によるクッキング教室が始まった。本日のメニューはズバリ、やしょうま。
実況はワタクシ、天駆優斗の提供でお送りいたします。
「まずは――」
守矢に仕える巫女と一緒にお菓子作りに勤しむ人形遣いの表情は真剣そのもの。一つ一つの説明にふむふむと相槌を打ちながら賢明な頭にインプットしていく。ともあれ、可愛い女の子たちが仲良くお料理しているこの光景を尊ばずにはいられない。はぁ~、ありがたや。
ちなみに、八坂様と洩矢様の二柱は居間でのんびり駄弁っている。「できたら持ってきて~」と仰り賜れた。なんか、さっきまで来客があったらしく結構話し込んでいたんだってさ。お勤めご苦労様です!
さて、他にやることもないので解説でもしよう。先ほどから名前がでている「やしょうま」とは一体何ぞや。
ざっくりいうと、信州地方で涅槃絵に作って食べる団子っぽい食べ物である。涅槃絵とはお釈迦様の入滅の日に行うイベントのこと。詳しく知りたい人は近くのお寺さんへGO!
そんでもって件のやしょうまだが、面白いのがその形にありけり。団子といってもよくある真ん丸な玉ではない。蒸し上がった段階ではまるで沢庵のような棒状なのだ。もちろん、それで終わりではない。恵方巻きとは違うのだよ、恵方巻きとは。
「こうすると……」
「あら、綺麗ね」
早苗が包丁を手にして棒団子の端っこを切り取った。すると、その断面から風情ある花模様が形を見せた。いかにも祝い事に適した雰囲気を醸している。お見事にございまする。
要するに金太郎アメみたいな作りなのだ。模様を付けられた輪切りの団子、それがやしょうま。趣もあり、見てよし食べてよしの万能タイプなのよさ。
「さらにこっちは……はいっ」
「あはは、これは霊夢なのね」
もう一つにも包丁を落とせば、今度はマスコットっぽくデフォルメされた博麗の巫女が出てきた。仏様絡みの祝い事のはずが、年頃の女の子たちの手によってキャラ弁みたいなノリに早変わり。だが、それがいい。
さらにトントンと立て続けに霊夢柄のやしょうまを輪切りにすれば、五つ子姉妹ばりに同じ顔をした少女が並んだ。ちなみに俺は四葉推しなんで。その次に一花です。
「はい、アリスさん。あーん」
「あむっ……うん、美味しい。はい早苗も」
「あー……ん。こっちも良いです。やっぱりアリスさんはお上手ですね」
「うふふ、ありがと」
しかも、何ということでしょう。
目の前で、アリスと早苗が食べさせあいっこしているではありませんか。ペロッ……これは、ゆるゆりっ! ディモールト! ハラショー!
くわっと目を見開いてガン見してしまった俺を誰が責められようか。キモイとか言ってはいけない。ふいに、清楚な巫女さんが俺に視線を移した。
「優斗さんもお一つどうですか?」
「キタコレ! もちろんいただきますのですっ!」
魅惑の一言を受けて我は喜び庭駆け回る。そのまま浮き足立って彼女の元へ馳せ参じた。オラワクワクしてきたぞ。
ところがどっこい、やしょうまがたんまり載ったお皿が俺の前に差し出された。穢れのない巫女の笑みとともに、
「どうぞ」
「……ですよね」
テンションゲージが重力反比例で急降下していく。嗚呼、泡沫の夢よ。笑えよベジータ。
ショボンな顔文字みたいな表情になりながらも、とりあえずお一つ頂戴いたす。一口サイズにはやや大きいものの、そこは男らしく豪快にパクッといっとく。お団子特有の素朴な甘さが口の中に広がった。餡子も入っていないため、生地の味わいがダイレクトに伝わってくる。
うまし。元気出てきたお。
つづく
だからどうして一話分で完結できないんかねこのマンモーニは(憤怒)
後編は二十四時間以内に投稿します