東方人形誌   作:サイドカー

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二十四時間以内といった時点で既にストックがあったのだよ(ドヤァ)

というわけでアフターストーリー?の続きでございます。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


???回  「もう一人の外来人 ~another side 2/2~」

 一つ食い終わると、早苗に続いてアリスもお皿を持ってきた。

「私も作ってみたの、味見してくれる?」

「もちろん、もちのもっちー」

「うふふ、なにそれ」

 ヘンテコな返事で答えたら、彼女は可笑しそうに綺麗な顔を綻ばせた。可愛い。

 コトン、と調理台に置かれた大皿には、人形遣いデザインのやしょうま詰め合わせが彩られていた。決して適当な盛り付けではなく、一つ一つの模様が分かるようにちゃんと並べられておった。几帳面な彼女の性格がよく表れている。

 どれにしようかな、と昔ながらのフレーズで順繰りに指差しながら選んでいく。さすが七色の人形遣いは女子力もハイスペックでござった。手先が器用なうえに料理上手なのもあって、すぐにコツを掴んだらしい。よくよく見れば上海印のやしょうまもある。その愛らしさに笑みが零れる。

 むむむ、優柔不断な軟弱主人公に成り下がった覚えはないが、どうにも悩んでしまう。

 

「優斗」

「ん? どしたのア――」

「えい」

「んむぐぅぉ!?」

 

 金髪少女から名前を呼ばれて顔を上げると、いつの間にスタンバっていたのか手にしていた団子を口の中に押し込まれた。その拍子に、ちょっと勢いがあったせいで彼女の指まで咥えてしまう。

 やしょうまのモチモチした食感をじっくり咀嚼し、喉に詰まらせないよう飲み込む。何でだろう、さっき早苗が作ったものよりも甘く感じる。特別な隠し味でも入っているのかしら。

 俺が食べ終わったのを確かめて、イタズラな笑顔で少女が感想を尋ねてくる。

「美味しい?」

「おうとも、チョーイイネ!」

 ネイティブ発音で親指を立てながらデリシャスっぷりを伝える。いきなりで驚いたけれど、こういうおちゃめ機能なのも大歓迎です。アリスが楽しそう、ただそれだけで十分に満たされる。

 ゴメン、ウソついた。できれば「はい、あーん(はぁと)」もやってほしかったです。心も体も正直なの、俺。

 そんな俺たちを早苗がニコニコと微笑ましげな様子で眺めながら、こそっと口を開く。

「幸せいっぱい、ご馳走様でした」

 えっと、よく分からんけど……お粗末!

 

 さてさて、アレコレやっているうちに楽しい楽しいお料理タイムも終わりを迎えてしまった。誠に遺憾である。しかも、ここで一つ問題まで発生したもんだからえらいこっちゃ。

 いくつものお皿がテーブルに所狭しと密集し、さらにそれら一枚一枚にもまたやしょうまが満員御礼のオンパレードで大名行列。あっちもこっちもやしょうまで、もはややしょうま祭りじゃった。まかでみ・WAっしょい!

 どう見ても作り過ぎです本当にありがとうございました。

「どうしてこうなった……」

「う~ん、作っているうちに楽しくなって……ね?」

「あはは……」

 八坂様と洩矢様を数に入れたとしても、とても五人で食べきれる量ではない。そのうえ俺以外は全員女性ときたもんだ。さすがにお団子は別腹にならないっしょ。とはいえ生モノ、いつまでも保つものでもあるまいて。

 こうなったからには作戦をプランBに変更するしかない。一人は皆のために、皆は一人のために。つまるところお裾分け大作戦でござい。

 いざ行動開始にあたって早苗たんからお呼びがかかった。

「優斗さん、お手伝いをお願いしても良いですか? 重箱を取りに行きたいのですが、私一人で全部持てるかちょっと不安なんです」

「いいよぉ、女の子からのお願いとあらば喜んで行くよぉ!」

「ありがとうございます。アリスさん、すみませんが少し待っていてもらえますか? すぐに戻りますので」

「いいわよ。片付けられるところは先にやっておくから。それよりも優斗のことお願いするわね」

 役割分担。ひとまず現場を人形遣いに託し、俺と風祝はお裾分け用のタッパーもとい重箱を取りに台所を後にしたのであった。

 ところで、お願いされちゃった俺ってどういう扱いなんだべか?

 

 金髪碧眼の少女、アリス・マーガトロイドに台所の留守は任された。本人がそう言った手前、後片付けに入るであろう。

 ところが、すぐに取り掛かるものかと思いきや、そうはならなかった。原因は少女の挙動不審な行動にあった。

「…………」

 彼と早苗の二人がいなくなってから、おもむろにキョロキョロと周りを見渡し始める。その様子は、まるで他に誰もいないか確認するかのよう。やがて自分を除いて誰も居ないと分かると、少女はほっと息を吐く。

 直後、彼女の顔がみるみるうちにカァアアッと紅潮していった。キメ細やかな白い肌が真っ赤に染まるのに時間はかからなかった。

(わ、私ったら早苗が見ている前で何てことを……)

 先ほど彼にしたことを思い出す。軽いイタズラの感覚でやってみたけれど、よくよく考えれば彼にまで食べさせっこ(こちらが一方的にだが)したのと変わりない。そのことに気付いてしまえば、今更になって恥ずかしさが込み上げてくる。

 せめて二人きりだったらまだよかったのに、と後悔したところでもう遅い。友人の目の前であんなにも堂々とやってしまった事実は変わらないのだ。

 顔が熱い。でも、美味しいって笑ってくれたのが嬉しくて。この胸のドキドキはしばらく治まりそうもなかった。どうしよう、心が切ないのに、こんなにも幸せだなんて。

「……っ」

 ぽーっと自分の人差し指を見つめる。ちょっぴり勢いつけすぎちゃったせいで、うっかり彼の口に触れてしまった。本当に、今が誰もいないときで助かったと思う。耳まで真っ赤になっているのが自分でも分かってしまうから。

(でも、ほんのちょっとだけ……)

 それでも、乙女の気持ちは一歩踏み込んでみたいと願う。

 心の中で言い聞かせながら、アリスは指先を自分の唇に重ねた。密かな想いを添えるように、そっと瞼を閉じて。

「~~~~~ッ!!」

 もっとも、触れた瞬間に何かもう羞恥心がとんでもないことになってしまい、すぐに離してしまったのだが。

 まるでリンゴみたいに赤みを帯びた顔の熱を冷まそうと、人形遣いは何度も首を横に振るう。その後、いそいそと誤魔化すように後片付けを始めるのであった。

 

「アリス、顔赤いけど大丈夫か? 水飲んでおいた方がいいぞ。熱中症だったらマズイで」

「な、なんでもないのッ! 大丈夫だから心配しないで」

「お、おう……」

 ようやっとこ発見できた空箱を抱えて戻ってきたら、なぜか赤面したアリスがお出迎えしてくれた件について。この短時間で一体何があったのか分からぬ。あと、どうしてか俺と目を合わそうとしないんですけど。俺ってばまたやっちゃったパターン?

 とにもかくにも、気を取り直して箱詰め作業に取り掛かりませう。重箱なんてお正月のおせちぐらいしか出番がないと思うかもしれないが、そうとも限らないのが幻想郷なのだ。なんてったって宴会が多いんですもの。毎度毎度の参加人数もさることながら、おかげで料理の持ち込みも結構大事だったりする。

 つーわけで、何気に登場シーンが多いキャラな重箱キュンにやしょうまを詰め込んでいく。一箱埋まれば脇に置き、二箱埋まれば積み重ね。蓋を開ければやしょうまの玉手箱や。

 しかしながら単調なオシゴトだもんでトークタイムは欠かせない。ふと思い出したこともあって口を開いた。

「そういやさ、ここに来る途中で変わったコンビを見たんよ。キリトみたいに真っ黒なのと、ミルヒ姫みたいなピンク色のべっぴんさんじゃった」

「そうそう、もしかして早苗のお客さんだったの?」

「あ、お二人も会ったんですか? 実はですね、男性の方は私たちと同じく外来人なんです。私もビックリしました」

「へー、あのイカ墨が? 確かに現代風……と呼ぶには些か個性派ファッションだったで」

「い、いかすみ……」

「こら、勝手に変な名前付けないのっ」

 早苗からリアクションに困った苦笑いを浮かべられる傍ら、アリスに窘められてしまった。

 だって黒の組織って全員コードネームが酒じゃん? でも黒いお酒ってないじゃん? だからピンときたのよ、イカ墨でいいじゃないかと。ジョースターさんだって逆に考えるんだって言ってた。

 

 テキパキと手作業を進めながらも会話が弾む。お題はやはり、さっきの二人組について。

「外来人が訪ねてきたのね……じゃあ、元の世界に戻ろうとしたの?」

「いいえ、仙人様のところで数日間の修行していたそうで、帰りにロープウェイを使わせてほしいとお願いに来たんです」

「あぁ、そういうこと」

「いやいやいや、仙人様のところで修行って何事? それどこのドラゴンボール?」

 風祝の解説に人形遣いが納得していたが、俺としては謎が謎を呼ぶミステリー状態となり申した。どっちかといえば龍が如くに登場しそうなキャラしていましたが。

 というか修行って、彼奴めっちゃ綺麗な女の子連れていましたぞ。めちゃ許せんよなあ。あ、めちゃ続いちゃった。

 そんな折、アリスが残念そうに声のトーンを下げた。

「彼らもタイミング悪かったわね。もう少し居ればお裾分けできたのに」

「あ、その手がありましたね」

「うむ、確かに。でもまぁ帰っちゃったもんは仕方あるまいて。それに何となくだが……あの二人とはまた会いそうな気がするって俺のゴーストが囁いているぜよ」

「そう? ……うん、私もそんな気がする。ふふ、これが霊夢の勘だったら当たりなのにね」

「はっはっ、ちげぇねぇっすわ」

 アリスと顔を見合わせて、可笑しくなってお互いに吹き出してしまう。

 そゆこと。今回は偶々擦れ違っただけ。きっと、彼には彼の物語が紡がれている途中なのだろう。ひょっとしたら、またどこかで道が重なる偶然が起きるかもしれない。そんな可能性だって皆無じゃない。なぜなら、未来は誰にも分からないのだから。

 なーんて、それっぽいモノローグを思い浮かべながら、やしょうまボックスを積み重ねていった。んでもって、こいつが終わったら次はピザハット気分でデリバリーに転職だぜ。

 

 見つめ合っていたとき、早苗の呟きを二人揃って聞き逃していたことに最後まで気付かずに。

「どうしてまだ付き合ってないんだろう……?」

 

 

 おまけのおまけ。デリバリー先の紅魔館であった一幕。

「はい。パチュリーも良かったら食べてみて?」

「へぇ、めでたそうな色合いしている食べ物ね。祝い事……もしかして二人ついに結婚したのかしら?」

「ふぇええ!? なななっ、なんでそうなるの!? これはね――」

「おめでとう。幸せになってね」

「~~~~~ッ!! もうっ、パチュリーのばかぁ! だから違うんだってばぁああ!!」

 

めでたし、めでたし?




ここまで閲覧いただき、本当にありがとうございました!

→ ending
  to be cuntinued
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