それから今後ですが、筆者の都合上、更新頻度が今より低くなると思います。すみません。ただ、最低でも1ヶ月に1回は投稿しようと思っているので、気長に待って頂けると嬉しいです。
オシオキ編
モノカバ「カバカバカバ〜〜〜〜〜〜!!!見事大正解カバ!!《超高級のバイク便ライダー》、飛田 脚男クンを殺したのは、《超高級のフットサル選手》、中澤 翼クンでしたーーー!!なんか色々お粗末な犯行だったし、今回はあんまり盛り上がんなかったカバね。中澤クンにはがっかりカバ〜」
中澤 翼「チッ、悪かったな。お粗末な犯行で」
中澤君はいつも通りの冷静な表情でそう言った。
黒瀬 敦郎「なんでだよっ!!!!翼!なんで脚男を殺したんだよ!!!!!!テメェは殺人なんかする奴じゃないって信じてたのによ………!」
黒瀬君は悔しそうに中澤君に呼びかける。
幸村 雪「そうだよ!!!!!!ざわさんは、絶対そんな事しないって、ウチ信じてたのに!!」
霞ヶ峰 麻衣子「中澤殿、説明して欲しいでござる!!!!」
みんなが次々と中澤君に問い詰める。
うちらは正解した。そして生き残れた。けど、素直に喜ぶ事なんて出来なかった。だって、飛田君が死んで、その犯人である中澤君もこれから処刑されるから。
でも、だからこそ聞いておきたい。なぜ、いつも冷静なあなたが殺人をして外に出る、なんていう選択肢を取ったのか。なぜ、飛田君を狙ったのか。うちもそう中澤君に問いかけようとした時だった。
柴崎 武史「えーそんなのどうでもいいじゃないッスか?さっさと処刑して部屋に帰らせてほしいんッスけど」
今回の裁判で、うちらに一番悪意を見せつけた彼が、また信じられない一言を発した。
黒瀬 敦郎「テメェ………いい加減にしろよ!!!!テメェには人の心がねぇのかよ!!!!仲間になんでそんな残酷な事が言えるんだよ!!!!」
柴崎 武史「仲間?笑わせないで欲しいッスね。少なくとも、僕はここに来てから中澤サン含めて誰一人、仲間だとは思ってなかったッスよ」
銀山 香織「だとしても、この1週間、共に過ごしてきたのは事実だろう。そのうちの1人が今から死ぬのにその言い草はなんだ。今すぐ撤回しろ」
柴崎 武史「いやいや。僕なんにも間違った事言ってないんで。というかなんでみんなそいつの事庇うんスか?だってそいつ、人殺しッスよ。庇ったりしたら殺された飛田サンが浮かばれないッスよ。まあ、飛田サンも無能の雑魚だったし、死んでも別に僕にとっちゃどうでも良かったんスけどね」
黒瀬 敦郎「ふざけんな!!!!!!」
分倍河原 剛「よせ!!」
暴れだそうとした黒瀬君を分倍河原が抑える。
相川 凛「もう、いいよ。そんな奴の事放っておこう」
柴崎 武史「あらら。そんな『奴』だなんて、僕も相川サンに随分嫌われたもんっスねー」
相川 凛「それより、中澤君。なんであなたみたいな人が殺人を犯したのか……その理由を聞かせて欲しいんだ」
うちはまっすぐ中澤君の目を見る。
中澤 翼「………………分かったよ。これは正直、隠しておきたかったんだけどな」
中澤君は観念したのか、下を向いてため息をついた後、周りを見渡して、
「俺は飛田の秘密、そしてこの大学の秘密を見て飛田を殺そうと思った。その内容は、『飛田 脚男は人を見殺しにした事がある』、そして『黒幕は生徒の中にいる』。この2つだ」
それは、うちらにとって予想だにしない内容であった。
喜屋武 流理恵「飛田君が、人を見殺しにした………?」
霞ヶ峰 麻衣子「それに、黒幕が生徒の中にいるって……、じゃあ、今いる拙者らのうち誰かが黒幕という事でござるか!?とても信じられないでござる!!」
中澤 翼「最初は俺も信じてなかったさ。でも一応、嘘かどうかを確かめる為に一昨日からお前ら全員を観察してた。けど、そこで飛田を観察してるうちに、コイツが黒幕なんじゃないかって思ったんだ。実際、動機を貰ってからの飛田の挙動は明らかにおかしかった。普通、アイツみたいな性格の奴はあたふたして、パニックになってもおかしくない。けど、アイツは全く動じる様子は無かったんだよ。だから、俺は飛田が黒幕で、コイツを殺せば全てが終わると思っていた。けど、飛田は黒幕じゃなかった」
霜花 優月「仮に飛田さんが黒幕であったなら、とっくにコロシアイなど終了してますからね」
中澤 翼「けど、それじゃ俺も飛田も犬死にだ。だから、せめて外に出て飛田の分まで生きていきたい、そう思ったんだ」
北条 業「だから、自分が犯人だと隠して裁判に臨み、そのまま私達を犠牲にして外に出ようとした。そういう事ですよね?」
中澤 翼「………ああ、その通りだ」
北条 業「そうですか。でしたら私も癪ですがサイコ野郎と同意見です。さっさと処刑を終わらせた方がいいと思います」
相川 凛「業ちゃん………?」
うちはその瞬間やっと気づいた。業ちゃんの様子がおかしい事に。
北条 業「凛さん。私はあなたのその非情になれない優しい性格も好きです。だから凛さん、あなたはそのまま優しい凛さんでいて下さい。その分、私が徹底して非情になります」
銀山 香織「北条、君は一体何を言っているんだ………?」
北条 業「ああ、皆さんには関係ない話でしたね。失礼しました。とにかく、私が言いたいのは、理由がどうであれ、中澤さんは飛田さんを殺して凛さんの命と引き換えにここから脱出しようとした殺人犯だから、同情の余地はないだろうという事。処刑を躊躇う必要性は全く無いと思います」
業ちゃんはそう言ってうちを見るとニコッと微笑んだ。
その瞬間うちは鳥肌が立ってしまった。
今までの業ちゃんが見せていた柔らかい笑顔とは違う、酷く冷たくて、そして無機質な笑顔。
なんで。なんでそんな事言うの。
業ちゃん。
ジャック「驚いタ。まさかここにもサイコパスがいるとはナ」
北条 業「失礼な。私を学級裁判を楽しむようなサイコパスと一緒にしないで下さい。私はただ凛さんに仇なす輩を排除しようとしているだけです」
霞ヶ峰 麻衣子「サイコパスというより、ヤンデレと言った方が正しいでござるね………」
幸村 雪「政子までどうしちゃったの………?もう嫌だよ、みんなのこんな一面なんて見たくなかった……………」
柴崎 武史「おやおや。北条サンも僕と同じく異分子認定されてしまったッスね。僕としては興味のある人が同じラインに立ってくれて嬉しい限りッスけど」
北条 業「………………黙れ」
独島 灯里「ねーモノカバちゃんー?そういえばこの動機って全部本当なのー?」
すると、混乱しているみんなを他所に独島さんがいつものテンションで尋ねた。
千野 李玖「独島殿?なぜ今そのような事を聞くのですか?」
独島 灯里「だってー普通気になるでしょー?もし全部本当の事だったら、また中澤くんと同じように秘密を鵜呑みにして誰かを殺す人が出てくるかもしれないじゃん〜」
喜屋武 流理恵「独島さん、そのような不安を煽るような言動は謹んで下さい」
独島 灯里「ごめんねー。でもわたしどうしても気になるんだー。それでー、どうなのーモノカバちゃん?」
モノカバ「なるほど、ではお答えしましょうカバ!今回配った動機は全て真実です!嘘は1つも入っていないカバよー!
………………と言ってもオマエらは信じないだろうから、特別に死んだ飛田クンの秘密についてオイラが説明してやるカバ!」
すると、モノカバは突然紙芝居のような物を出してそれをモニターに映した。
飛田クンがバイク便ライダーを始めて間もない頃、といっても当時はバイクに乗れる年齢では無かったので自転車で配達をしていた訳ですが、配達を終えて帰る飛田クンは脇道で不良に囲まれている女子中学生を見つけました。
助けてと飛田クンに目で訴える女子中学生ですが、飛田クンはヒョロヒョロ体型の上に喧嘩をした事など当然無く、さらに極度のビビリであったので、自分に出来ることはない、他の人がきっと助けてくると勝手に思い込んで、なんとその少女を見捨てて逃げてしまったのです。
そして数日後、その少女が不良に性的な暴行をされた挙句、バラバラにされて川に捨てられたという報道を見てしまった飛田クンは、自分が少女を見殺しにしたという事実から自己嫌悪に陥り、そして人と関わる事に怯えるようになってしまいました。
その後も飛田クンは何度も何度も逃げ続け、その度にビビリで卑屈な自分を否定し続ける。そんな陰湿な飛田クンの人生は、1人の身勝手な男によって奪われてしまったのでした。
モノカバ「どうカバ?オイラのセンスある紙芝居は?すっごく分かりやすいって巷で評判なんカバよ!」
分倍河原 剛「………………悪趣味にも程がある。飛田を愚弄しているものにしか思えん」
黒瀬 敦郎「バカにするのも大概にしろよ!!!」
喜屋武 流理恵「………………飛田君」
喜屋武さんは悔しそうな表情で俯いた。
喜屋武さんは飛田君と親しくしていたから、飛田君を死なせてしまった事に責任を感じてるのかもしれない。
黒瀬 敦郎「それでも、脚男を殺していい理由にはならねぇだろ………!何でだよ、翼、何でよりによってテメェなんだよ……」
黒瀬君は悔しそうにそう呟く。仲間思いの黒瀬君だ。きっと中澤君が殺人に手を染めた事がどうしても許せないのだろう。
中澤 翼「すまねぇ、黒瀬。期待を裏切るようなマネしちまったよな?それは謝るよ。でも俺はお前が思ってるほどの人間じゃない。ただの自分勝手なクズさ。だからお前がそんなに失望する必要はねぇよ」
黒瀬 敦郎「……………………」
霞ヶ峰 麻衣子「そういえば、なぜ裁判中黒瀬殿はあんなに中澤殿を庇っていたのでござるか?」
銀山 香織「それ以前に男子が犯人、という話の流れになった際も執拗に反対していたな。もしかして………君は犯人が中澤だと分かっていたんじゃないか?」
黒瀬君は既に犯人が中澤君だと知っていた?でも、そんなのどうやって知ったんだろう。
幸村 雪「えっ!?だって犯人間違えたら自分含めて全員死ぬんだよ!!そんな庇うような事してもなんの意味もないじゃん!!」
黒瀬 敦郎「オレは………………」
モノカバ「はいはいそこまでーーー!なんか身体中が痒くなるようなクソ寒い話が続きそうだしそろそろいいカバ?オイラオシオキがしたくてしょうがないカバ!」
黒瀬君が話そうとしたその時、モノカバがそう言った。
中澤 翼「ああ。もう話すべき事は話した。早く殺してくれ」
モノカバ「もぉー中澤クンは最後まで冷静カバね〜。こっちとしては泣き叫んでくれた方が面白いんだけどカバ」
中澤 翼「ざけんな。最後までお前の思い通りになってたまるかよ」
相川 凛「ちょっと待って!!処刑なんてうちが絶対させない!」
中澤 翼「………お前は最後まで優しいんだな、相川。でももういいんだ。俺は罪を償わなくちゃならねぇ。さっき北条も言ってたがどんな理由であれ、俺は人を殺したんだ」
相川 凛「だったら生きて償ってよ!!!!死んだら何もかも終わりなんだよ!!!!」
うちは中澤君に叫ぶ。
万斗 輝晃「凛さん………」
霞ヶ峰 麻衣子「相川殿………」
中澤 翼「………悪りぃな。それでも俺は生きて罪を償うくらいなら死を選ぶ」
霜花 優月「それは罪から逃げるのと同意ではないのですか?死んで全て償えるとは到底思えませんがね」
ずっと黙っていた霜花さんがそう言う。
中澤 翼「そうかもしれないな。でもどっちにしろ処刑からは逃げられないんだろ。だったら選択肢は1つだ」
モノカバ「その通りカバー!!じゃあもう初めてもいいカバ?」
中澤 翼「ああ、始めてくれ」
中澤君は覚悟が決まった顔でそう言った。
モノカバ「では、今回は………」
相川 凛「中澤君、嘘でしょ?これでお別れなんて……そんなのあんまりだよ!!」
黒瀬 敦郎「翼!!!!!!!!」
幸村 雪「ざわさん!!ウチこのままじゃ全然納得出来ないよ!」
モノカバ「『超高校級のフットサル選手』中澤 翼クンのために!!」
中澤 翼「みんな、すまねぇ。こんな事に巻き込んじまって」
モノカバ「スペシャルなおしおきを用意しましたっ!!」
中澤 翼「そんな俺がお前らに頼むのもおこがましい話だが、お願いだ、黒幕を見つけて殺して欲しい。そしてこのふざけたコロシアイを終わらせてくれ。お前らだったらきっとできる筈だ。俺が成し遂げられなかった事………お前らに託したぞ」
モノカバ「では、おしおきターイム!!」
中澤 翼「あ、そうだ。最後に弁解させてくれ」
中澤 翼「飛田の全身に傷を付けたのは俺じゃない。一体、誰がやったんだ?」
GAME OVER
ナカザワクンがクロに決まりました。オシオキを開始します。
モノカバがオシオキ宣言した直後、錦織さんを連れて行った時と同じ、鉄の首輪が中澤君に装着される。そして一瞬で中澤君をどこかに連れて行ってしまった。
《超高校のフットサル選手》中澤 翼 処刑執行
『運命のPK大合戦!!!!』
気がついたら俺は見慣れたフットサルコートのゴール前に立たされていた。周りの観客席には大量のモノカバ、そして正面には赤のユニフォームを着たモノカバがいる。俺がいつの間にか着ていたユニフォームが青という事は、俺らは敵同士で今まさにPK戦が始まろうとしてるってわけか。
すると、電光掲示板に『モノカバチームvsナカザワチーム!
PK10本止められたらオシオキ免除!!!ここから生きて脱出出来ます!』と表示された。
なるほどな。これで俺に希望を持たせようって訳か。正直、俺は生きたいとは思ってねえけど、かといってここで手を抜くのはフットサル選手として俺の矜恃が許さねぇ。
俺は両手を広げて構える。そして、審判のモノカバがホイッスルを吹いてPK開始を告げた。
一球目。モノカバはボールを蹴った。
ボールのスピードは遅く、しかも方向はゴールの正面。
「まずは小手調べってか。舐められたもんだ」
俺はボールをキャッチする。
二球目。さっきよりスピードが上がっている。コースは右寄り。
けどまだまだ余裕で取れる。俺は飛び込んでキャッチした。
三球目。さらにボールのスピードが上がった。コースは左端。だが、取れないボールじゃない。
「オラッ!!」
俺はパンチングで弾いた。
四球目。ボールのスピードは常人だったら反応出来ないくらいまで上がっていた。けど、俺はこんな球を何回も受けてきた。小さい身長を補う為に身につけた反射神経を生かして。
「ッ………!絶対取る!!!!」
俺はとっさに飛んで、腕をありったけ伸ばしてボールを取ろうとする。そして、ボールを取る事は出来なかったが、なんとか弾いて阻止する事が出来た。
「よし!!」
俺は思わずガッツポーズをする。だが、俺は見てしまった。
モノカバの目が赤く点滅し始めた事に。
五球目。さっきとはまるで雰囲気が違うモノカバが大きく足を振りかぶってボールを蹴った。
俺は蹴る前の動作から左に蹴ると予測し、重心を傾けて準備する。
しかし、そのスピードはもはや人間が反応出来る速度では無かった。
そして俺はいつの間にかモノカバの足元にボールが無くて、
俺の左手が無い事に気がついた。
「ぐあああああああああああああ!?」
痛い。痛い。なんで俺の左手が。俺は後ろを振り向く。すると、吹っ飛んだ左手と血がべっとりと付いたボールが転がっていた。
すぐさま俺は理解した。モノカバの蹴ったボールが俺の左手を吹っ飛ばしてゴールに入った事を。
モノカバは既に六球目を蹴ろうとしている。俺は痛みを堪えて構える。次は右に蹴る。そして予測通り右にと思った瞬間、今度は右手を吹っ飛ばされた。
「ああああああああああああああああああああああああ!!!!」
俺は痛みに絶叫した。
その痛みに耐えられず、フィールドに倒れる。
すると、信じられない事にモノカバが2体同時にボールを蹴ろうとしている。
「おい、やめろ……………」
ふざけんな。そんなの反則じゃねぇか。
「やめてくれ………………」
俺の懇願も虚しく、モノカバは同時にボールを蹴る。そしてそれは俺の両足をピンポイントに打ち抜いた。
「ギャアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」
俺はあまりの痛みに転げ回る。
その間に大量のモノカバが俺の前に現れ、俺の体を突然地面から現れた壁に磔のような形で拘束した。
すると今度は、11体のモノカバが俺の前に並んだ。全員それぞれ足元にボールを構えている。
そうして、一番左のモノカバから順にボールを俺に蹴ってきた。
九球目。左腕を潰された。
十球目。次は右腕を潰された。
十一球目。今度は左膝から下。
十二球目。今度は右膝から下。
十三球目。左耳。
十四球目。右耳。
十五球目。みぎのふともも。
十六球目。ひだりのふともも。
じゅうななきゅうめ。みぎのわきばら。
じゅうはちきゅうめ。ひだりのわきばら。
じゅうきゅう………………………………
試合が終わった後のフィールドでは、子供のモノカバたちが仲良くサッカーをしていた。
顔が潰れて表情がわからない、中澤の生首をボールとして。
そしてフィールドは、モノカバチームの勝利を表すように血で真っ赤に染まっていた。
モノカバ「カバカバカバ!エクストリーーーームカバ!!!!いやあ、やっぱオシオキはこういうド派手なスプラッター式に限るカバね!!!オイラ興奮しすぎて漏らしちゃいそうだったカバ〜」
また1人仲間が死んだ。確かに中澤君の、黒幕を殺したかったという理由があるとは言え、無実の飛田君を殺してしかもうちらの命と引き換えに外へ出ようとした罪は重い。けど、ここまでする必要は全く無い。こんな、人間を、中澤君を弄ぶような事は許されるはずがない。
幸村 雪「キャアアアアアアア!!!!!!」
万斗 輝晃「こんなの、あんまりだよ……あんまりじゃないか!!」
喜屋武 流理恵「人の命を何だと思っているのですか………!」
銀山 香織「外道が………!」
悲鳴を上げる幸村さんに憤慨する万斗君、喜屋武さん、銀山さん。
しかし、うちを含めた残りの全員は黙ったままであった。驚き、恐怖のあまりに声が出ないのか、はたまた今の惨状に何の感情も湧いていないのか、そのどちらかだろう。
柴崎 武史「いや〜なかなか凝った演出だったッスね〜。僕が想像してた以上に楽しめたッスよ」
すると、柴崎君が満足そうに笑みを浮かべながら頷いていた。
銀山 香織「君は………まだそんな事を言ってるのか?」
柴崎 武史「まだも何も僕はいつも通り、平常運転ッスよ。というか、誰一人救えない無能でリーダーを気取っている銀山サンが僕に説教とかマジで勘弁して欲しいんッスけど。いい加減ウザいんで」
銀山 香織「ッ……………!」
柴崎 武史「じゃあ僕は先に戻るッス。いいんスよね?モノカバ」
モノカバ「はいはーい!もう終わったからとっとと帰ってちょーだいカバ!」
柴崎 武史「という事なんで帰りまーす。『裏切り者』がこの中にいる以上、一緒にいるとヤバそうッスからね」
霜花 優月「私も戻ります。ここに残っていても時間の無駄でしょうし」
そう言って柴崎君は余計な一言を残してさっさとエレベーターに乗り、霜花さんもそれに続いて戻ってしまった。
「………………………………」
裁判場が沈黙に包まれた。誰も戻ろうとせず、だからといって何か喋るわけでもない。
銀山 香織「………………ひとまず皆部屋に戻ろう。いつまでもここにいてもしょうがない。そして今日はゆっくり休んで明日の朝また集合しよう。動ける人は動けない人に手を貸してあげてくれ」
銀山さんの呼びかけでみんなのろのろと動き出す。動けない幸村さんを喜屋武さんが、霞ヶ峰さんを銀山さんが、黒瀬君を分倍河原君がそれぞれ支えてエレベーターに向かう。
北条 業「凛さん、一緒に戻りましょう!殺人鬼の中澤さんの事なんか忘れて、明日からまた頑張りましょう!!」
うちの前に業ちゃんが来てそう言った。
相川 凛「業ちゃん、なんでそんな事が言えるの……?中澤君が死んだんだよ!!今まで一緒に過ごしてきた仲間が!!!!」
思わず大きな声を出してしまった。みんなが咄嗟に振り返る。
相川 凛「………ごめん、大きな声出しちゃって」
北条 業「いえ、やっぱり凛さんは優しいんですね。殺人を犯した中澤さんさえもちゃんと仲間と呼び、死を悲しむ………。私はそんな凛さんが大好きです」
業ちゃんはうちを優しくハグした。そして耳元で、
北条 業「ですから、私はどんな事をしても凛さんを守ります。中澤さんの最後の発言が本当だったらこの中に『裏切り者』がいる事になります。もしそうだとしたら私は凛さん以外は信用してはいけないと思っています。だから凛さんも私だけ信用して下さい。私だけ見ていて下さい」
業ちゃんはうちを解放すると魅惑の目で見つめてきた。
うちは裁判中と同じく、鳥肌が立つのを感じた。
狂ってる。うち以外を信用しないだけでなく、うちだけを見てる。うちにそこまで執着する理由はなんだ。気持ち悪い。
うちは本能的に、1番の親友だと思っていた北条 業を恐れている事に気がついた。
相川 凛「………もう、やめて」
うちは業ちゃんと距離を取った。
北条 業「え………?」
相川 凛「ごめん。うち、業ちゃんの性格の変化をまだ受け止めきれない。ショックなんだ。だから、しばらく距離を置かせて」
北条 業「凛さん………?」
相川 凛「自分勝手なのは分かってる。けど、うちは今の業ちゃんが、怖い。怖いんだよ」
怒ってしまうだろうか。うちは恐る恐る業ちゃんの顔を見る。
北条 業「………そうですよね。こちらこそごめんなさい。凛さんの気持ちを考えていませんでした。いきなりこんな事言われても困惑しますよね。では、今日はこれ以上は何も言いません。また明日会いましょう」
業ちゃんは少し寂しそうな顔をしたが、すぐいつも通りに戻った。
北条 業「それと、これだけは忘れないで下さい。私はいつ、どんな時でも凛さんの味方ですから」
そう囁いて業ちゃんはエレベーターに乗った。
うちは1人、裁判場に残っていた。
皆には1人にして貰うように頼んだのだ。
理由は2つある。1人で現状を整理したかったからだ。
現時点での問題点は3つ。1つめは柴崎君についてだ。
本性を表した柴崎君は正直この上なく厄介な存在だ。ここから出るのを諦めている上にうちらの仲を不穏な発言で引っかき回す。おまけに学級裁判を1つの娯楽として見ている。
今回は殺人こそしなかったが、もしかしたら今後学級裁判を楽しむためだけに殺人をする可能性がある。そう考えると柴崎君には監禁等の措置を取るのがベストだと思うけど………うち的にはそれはまだしたくない。うちらは柴崎君を知らなさすぎる。もしかしたら対話を重ねればまだ改心してくれるかもしれない。その可能性が1%でもあるならば、うちは諦めたくない。幸いにもうちは柴崎君の興味の対象となっている。対話をする事自体は難しくないはずだ。
2つめは業ちゃんだ。うちは業ちゃんを制御出来るのはうちしか出来ないと思っている。業ちゃんがうちにあそこまで執着する理由は分からないけど、恐らく業ちゃんはうちの敵と認識する人にしか攻撃しないと思う。裁判中の柴崎君に対しての行動がいい例だ。だから、業ちゃんに皆がうちの敵じゃないって認識して貰えば、変な行動は起こさないと思う。さっきの態度から皆を信用してないのは明らかだから、説得するには骨が折れるだろうけど………。
3つめは中澤君の最後の言葉だ。中澤君は確かこう言っていた。
「飛田の全身に傷を付けたのは俺じゃない。一体、誰がやったんだ?」
つまり、中澤君以外に今回の殺人に関与していた人物がいるという事になる。それが誰かという話だが、これがさっぱり分からない。
飛田君を傷つけたのは、中澤君が飛田君を女子トイレに投げ入れた後だから、出来るのは女子トイレに入れる女子だけだ。さらに、死体発見アナウンスがあるので、もし最初に発見した柴崎君、万斗君、幸村さんの3人以外が傷をつけたとするならば、矛盾が生じてしまう。
例えば、傷を付けたのがうちだったら、その3人よりも前に飛田君の死体を見ている事になる。そうなると、死体発見の順番は、うち、柴崎君、万斗君の3人になるはずだ。だから死体発見アナウンスは万斗君が見つけた時点で鳴らないとおかしいのだ。けど、死体発見アナウンスは3人めの幸村さんが見た時点で鳴った。だから幸村さん以外の女子に犯行が不可能。そうなると、該当する人が居ないのだ。だから、今はとりあえず保留。答えが出ない問題を考えても仕方がない。
そして2つ目の理由、それは………。
モノカバ「ねーねー相川サン。オイラに聞きたい事って何カバ?そろそろ教えて欲しいんだけどカバ。オイラ、焦らされるのって苦手なんだ」
相川 凛「………モノカバ。これについて聞きたいんだけど」
うちはカバフォンに届いた動機を見せる。そこには、
「現在、生徒の中には5人の裏切り者が潜んでいる」
と書いてあった。そう、うちがここに残った理由のもう一つはこの動機について聞く為だ。しかも、誰も聞いていないこの場所で。
モノカバ「聞く?て言ってもここに書いてある内容通りカバよ。裏切り者はオマエらの中に5人いる。これが事実カバ〜」
相川 凛「違うよ。うちが聞きたいのはそれが『裏切り者』なのか、『スパイ』なのか。それをはっきりさせて欲しい」
もし仮にこれが『スパイ』を意味するのだったら、初めからモノカバ陣営の人間が5人いる事になるが、『裏切り者』が5人の場合、初めは味方だったけど、ここに来てから何らかの理由で仕方なくモノカバ陣営に付いた人が5人いるという事になる。
モノカバ「へぇー。面白い事聞くカバね。でも、相川サンはそれ聞いてどうするカバ?意味なんかないと思うけど」
相川 凛「意味はあるよ。もし『裏切り者』だった場合は説得できる可能性があるからね」
逆にもし全員がスパイだった場合は説得はかなり厳しいけど。
モノカバ「説得、ねぇ………。まあいいや、せっかくオイラを頼ってくれたんだし教えてあげましょうカバ!!」
相川 凛「………随分あっさり教えてくれるんだね」
モノカバ「そりゃあオイラはオマエらの学長だからカバね。生徒の悩みに答えるのが学長の努めカバ!それになんか話したら面白そうカバ!!」
結局は面白いかどうかかよ。
モノカバ「では発表しまーす!裏切り者の内訳、それは………………。」
モノカバ「『スパイ』が4人、『裏切り者』が1人でーす!!」
相川 凛「………………………」
なるほど。じゃあ当分の目標はその裏切り者を見つけて説得を試みる、事でいいか。
モノカバ「あれ?もしかしてショック受けちゃったカバ?そりゃあそうカバよね〜!まさかスパイが4人も………」
相川 凛「分かった。もう用は無いから消えていいよ」
モノカバ「え!?せっかく教えてあげたのにその態度は酷いカバ!!………というか相川サン」
すると、モノカバが急にうちの顔を覗き込み、
「『イイ顔』するようになったカバね〜。そう、オイラが見たかったのはそういう顔なんだよ!!」
イイ顔?
うちは今、どんな顔をしているのだろう?
「………………………」
黙って裁判場を出た。
12:30 3F 相川の個室
うちは個室に帰ってまずシャワーを浴びた。気分をさっぱりさせたかったからだ。そして今洗面所で髪を乾かしている。
「はぁ………みんな大丈夫かな……?」
飛田君が中澤君に殺されたという事実。その中澤君が目の前で処刑されたという事実。この2つの事実はみんなにかなりのダメージを与えたはずだ。特に泣き崩れていた幸村さんと信頼していた男友達に裏切られた黒瀬君。この2人は特にダメージが深刻だろう。何かフォローをしてあげたいけど、今はそっとしておくのが1番な気がする。
「というかうち、なんでこんなに落ち着いているんだろう?」
うちはふと、目の前にある鏡を見た。鏡にはいつも通りのうちの顔が映る。
当然だ。錦織さんが死んだ時は涙が枯れるほど泣いたけど、今回は涙は一滴も流していない。だから目も全く腫れていない。
今回死んだ2人とはそんなに親しくなかったから?いや、紛れもなく2人もうちにとっては大事な仲間だった。死んで悲しく無い筈が無い。
そうか。うちが人の死に順応し始めているのかもしれない。段々と感覚が麻痺してきているのだ。
人が死ぬのは日常茶飯事。いちいち悲しんでも仕方がない。そんな風に考え始めるのも時間の問題かもしれない。
「………早くみんなで脱出しないと。こんな所ずっと居たら頭がおかしくなる」
うちはそう言って軽く日記を書き、寝る事にした。とりあえず今日は疲れた。ゆっくり休んでまた明日頑張ろう。
軟禁生活9日
ついに殺人事件が起きてしまった。昨日のパーティーで楽しそうに話してた飛田君も、その飛田君をモノカバの動機によって黒幕だと思い込んで殺してしまった中澤君も、もういない。ここに来てからもう3人もいなくなってしまった。さらに、柴崎君や業ちゃんの変化やスパイの存在とか、色々な問題が山積みだ。けど、これ以上犠牲を出さない為にも早めに解決しないといけない。
3人の事は決して忘れない。あなたたちの無念、必ず晴らしてみせる。
???「んーーーーーーーーむぐむぐーーーーーー!!」
モノカバ「はいはい大人しくしろって。オマエの出番はまだなんだから。さて、これからどうしようカバ〜?アイツに動いてもらうか、はたまたアイツを使うか………カバカバカバ………!楽しみはこれからカバよ〜〜〜!」
生存者
LA001 相川 凛《外国語研究家》
⁇002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》
⁇003 喜屋武 流理恵 《調理部》
SA004 銀山 香織《棋士》
⁇005 黒瀬 敦郎《バスケ部》
⁇006 柴崎 武史《歴史学者》
⁇007 霜花 優月《狙撃手》
⁇008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》
⁇009 千野 李玖《茶人》
MC010 独島 灯里《サブカルマニア》
⁇014 分倍河原 剛 《空手家》
⁇015 北条 業 《???》
⁇016 万斗 輝晃 《情報屋》
⁇017 幸村 雪 《激運》
残り14人
死亡者
⁇011 飛田 脚男《バイク便ライダー》
→中澤 翼による溺殺
⁇012 中澤 翼 《フットサル選手》
→オシオキによって死亡
⁇013 錦織 清子《テニスプレーヤー》
→学則違反によって死亡