今回は探索編です。
(非)日常編①
2章 (非)日常編①
気がついたらうちは見覚えのない場所に立っていた。
「………………………?」
辺りを見渡す。どうやら今いるのは学校の廊下みたいだ。
そして目の前には教室に入るドアがある。
中からは話し声や笑い声が聞こえる。
ドアを開けて恐る恐る入ってみると、中には閉じ込められてから出会った16人がいた。全員制服を着ている。
「あ、凛さんおはようございます!!」
「おはよう、相川」
「……………おはようございます」
ドアの近くの席には業ちゃんと銀山さん、それに霜花さんがいた。
それだけじゃない。後ろの窓際では中澤君と分倍河原君が談笑している。
教卓の前では黒瀬君、幸村さん、霞ヶ峰さん………あと1人うちの知らない誰かの4人でゲラゲラ笑っている。
前の窓際の席では、錦織さんと喜屋武さんが独島さんに勉強を教えている。独島さんは眠いのか、時折意識を失っては錦織さんに叩き起こされている。
他にも、嫌そうな顔をした柴崎君になにか頼み込む万斗君、千野君にノートを見せてあげている飛田君など、それぞれが思い思いの時間を過ごしている。
おかしい。
うちらは全員初対面だった筈だ。だから、こんな知らない場所で全員仲良く過ごしている事なんてあるはずがない。
「どうかしましたか?」
霜花さんが心配そうに声を掛けてくる。これもおかしい。霜花さんはうちの事を一方的に嫌っている。なのに霜花さんがうちにこんな心配そうな表情をするわけがない。しかも、霜花さんの表情がとても豊かだ。まるで別人のように見える。
それに加えて霜花さんが他の人と一緒に過ごしているのも不自然だ。あれだけ他人を信用できない、って言っていつも1人で行動しているのに。だけど今は、他の2人と一緒に楽しくお喋りしている。
「どうしたんですか、凛さん?さっきから深刻そうな顔をして」
「具合が悪いのであれば早めに保健室に行った方がいいと思うが」
2人も心配そうな表情をうちに向ける。
「何でもないよ!!ちょっと考え事してただけだから」
うちはなんとなくごまかしてイスに座る。
その瞬間、突然教室の電気が消えて真っ暗になった。
そして、
うちの近くにいた、業ちゃんの体が溶け始めた。
「は???」
業ちゃんだけじゃない。銀山さんも、霜花さんも、教室にいたみんなが溶けていく。
「な、なにこれ………。ちょっと待ってよ………」
うちはガタンとイスから立ち上がり後ずさる。
すると、ドロドロになったもはや誰のかも分からない手がうちの足首を掴んだ。
「っ!?やめてっ!!!!」
慌てて振り払おうとするが、手は次々と現れうちを掴んでいく。
「………オマエノセイダ」
「………オマエノセイデミンナシンダ」
「オマエガヨケイナコトヲシナケレバ」
「ワタシタチガシヌコトハナカッタ」
そして足元からは幻聴が聞こえてくる。
「嫌っ!!!!!!」
うちは耳を塞いでしゃがみ込んだ。
しばらくすると、足を掴んでいた手は消えて、幻聴も聞こえなくなった。が、うちの前に誰かが立ち塞がった。
「なんでアタシの事止めてくれなかったの?相川ちゃん」
「僕が、死んだのは、間違いなく、相川さんのせい、だよ」
「俺を躊躇いもなく殺しやがって。そんなに自分の命が大事だったか?相川」
そこには、剣で全身を刺され血塗れの錦織さんに、青白い顔の飛田君、そして片腕と片足、脇腹が欠損した中澤君がいた。
「あ、ああ………………」
うちは恐怖で尻もちをついた。足が動かない。
3人がじわじわと近づいてくる。
「ねぇ、なんでなんだい?相川ちゃん」
「相川さん………なんで……?」
「なんでなんだよ?相川」
「「「なんで助けてくれなかったの」」」
「もうやめてっ!!!!!!!!!!」
叫びながらベットから飛び起きた。
目の前にはいつもの個室の風景が広がっている。
うちはさっきの出来事が夢だと気づくのに数秒を要した。
「夢か………………」
ゆっくりと体を起こす。カバフォンで時計を見ると、まだ朝の5時だった。そうか、昨日裁判が終わってすぐ寝ちゃったんだ。てことはうち、17時間も寝てたの?いや寝過ぎでしょ流石に。
ふと、自分の服に違和感を覚えた。
パジャマは寝汗で濡れていた。
身体中がベタベタして気持ちが悪い。
「とりあえずシャワー浴びよう………………」
うちは疲れの取れてない体を引きずってシャワールームに向かった。
「それにしても、なんだったんだろうあの夢」
シャワーを浴び終わったうちは身支度をしながら考えていた。モノカバはうちらの記憶を消したって言ってたけど、もしかしてあれが消された高校生の記憶だったりするのかな?
「う〜ん………。後で誰かに相談してみよう」
そう考えて散歩がてら外に出ることにした。
3階の女子トイレにあった飛田君の死体は綺麗さっぱり無くなっていた。
まるで初めからここに死体が無かったかのように。
「飛田君………………」
うちはどんな事があっても絶対にあなたの事を忘れたりはしない。あなたの無念、必ず晴らしてみせるから。
数秒間黙祷をしてから、トイレを出た。
2階の204会議室は当たり前だがとても静かだった。
一昨日はここでパーティーして大騒ぎしたんだよね………。
あの時は楽しかった。みんな笑って、はしゃいで………。錦織さんの死を乗り越えて、一致団結してここから脱出しようって、意気込んでた。でも、中澤君はこの時から既に飛田君を殺す事を考えていた。うちらを欺き、1人で脱出しようとしていた。中澤君は、うちらの事どう思ってたんだろう?少しでも仲間だって思ってくれてたのかな。
「………………………………。」
それに答えてくれる人は、もういない。
うちは、悲しみを抱きつつ教室を後にした。
少し早いが、うちは食堂に来ていた。
もしかしたら誰かいるかもしれないし、仮にいなかったとしてもあったかいお茶でも飲んでゆっくり誰か来るのを待てばいい。
とにかく誰かと話がしたかった。
「おはよう………。誰かいる?」
扉をそっと開けると、厨房から何やら音がしている。誰かいるのだろうか。
厨房に入ってみる。すると、
「凛さんのための〜、素敵なご飯〜♪」
業ちゃんがウキウキルンルンしながら何かを作っていた。
「………………………………………」
前言撤回。誰かと話したいとは言ったけど、業ちゃん………後柴崎君。この2人とは話したくなかった。特に業ちゃんは、裁判後のこともあって、結構気まずい。酷いこと言っちゃったし。
うちはそーっと厨房から出ることにする。このまま見つかると面倒な事になりそうだ。
「誰かいるんですか?いるなら出てきてください」
ダメだ。もう遅かった。
うちは観念して姿を見せる。
「お、おはよう、業ちゃ………」
「凛さん!!!!!!!!!!」
業ちゃんは、うちが挨拶し終わる前に抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと!?」
「凛さ〜ん!!私、昨日凛さんに嫌われたんじゃないかって思って夜も寝れなかったんですよー!!!声かけてくれて嬉しいです〜!!」
いや、実際嫌う手前まで来てるんだけどね。
うちは慌てて業ちゃんを引き剥がす。
「えっと………まず何してるの?」
「はい!実は今日ちょうど私食事当番なので、先に凛さんだけにスペシャル朝ご飯を作っておこうかなって思ったんです!!」
それを聞いて厨房を見ると、既に様々な料理が出来上がっていた。
「まず、こんなに食べられないと思うんだけど………」
「もうー遠慮しちゃって!!あっ!もしかして、これを作るのに大量のモノマネーを使った私を心配してくれているんですか??嬉しいです!!その心遣い、やっぱり凛さんはいい人です!惚れ直しちゃいます!!」
待て。色々おかしい。まず業ちゃんの心配をしてるなんて一言も言ってない。うちは自分の心配をしただけだ。あんなに食べたらお腹が爆発する。
それに、最後の「惚れ直した」ってなんだ。うちはそっちの趣味は全くない。なんというか、その、色々と困る。
だが、それより、うちは聞きたいことがあった。
うちは業ちゃんから少し距離を取る。
「えっ、凛さん?」
「ごめん、この距離で話させて。業ちゃん、まず昨日の事を謝らせて欲しい」
うちは深く頭を下げた。
「凛さん!?」
「昨日はあなたの事を怖い、距離を置きたいって言って拒絶した。酷い事も結構言ったと思う。ごめんなさい」
「そ、そんな事気にして………いや、ちょっと傷つきましたけど、頭まで下げる事ないですよ!」
「………うん、だから謝罪はこれで終わり」
「え?」
うちがあっさり頭を上げた事に驚く業ちゃん。
「改めて業ちゃんに聞きたい事があるの」
「あなたは、これから誰かを殺すつもりなの?」
業ちゃんは一瞬ぽかーんとした表情になった後、すぐ笑い出した。
「ふっふっふっふっ………。ちなみに、なんでそう思ったんですか?」
「あなたは私に執着している。だから、自分の命を犠牲にして私をここから脱出させる可能性もあるんじゃないかって思った。それで、どうなの?返答次第ではあなたへの対応も考えなくちゃいけなくなる」
「………さすが凛さん、私のことをよく分かってる、と言いたいところですが、残念、不正解です。私は殺人など絶対にしません」
「え???」
「私の目的は、『凛さんと一緒に外に出ること』です。そんな事したら一緒にいられないじゃないですか。それに、他の人を犠牲にして凛さんだけ脱出させても、凛さんが喜ぶわけがない。私は凛さんを悲しませたくないんです」
業ちゃんはうちを見つめてくる。完全に信用は出来ないけど、とりあえず、今は大丈夫そうかな…。
「分かった。その言葉、とりあえず信用するよ」
「わぁい!!ありがとうございます!!」
「ただ、1つお願いがあるの。疑いたい気持ちは分かるけど、みんなを過剰に疑うのはやめて欲しい。不和に繋がるからさ」
「うーん………。まぁ、凛さんが言うのならしょうがないですね。極力仲良くする様にします。ただ、あのサイコパス野郎は絶対無理です。アイツと会話する気もないし、なんならもう2度と顔も見たくありません」
「柴崎君か………。なんとか仲良く出来ない?」
「無理です」
「そこをなんとか………」
「無理です」
うん、ダメみたいだ。
「分かった。じゃあ柴崎君以外で大丈夫」
「はい!!ただ、さっき殺人はしないと言ったんですけど、私と凛さんが窮地に陥った時は別です。その時は、躊躇なく殺します。私も死にたくはないので」
急に業ちゃんの眼光が鋭くなる。
これは、引き続き警戒した方が良さそうだ。
8:00 1F 食堂
うちと業ちゃん、そして後からやってきた今日の朝食当番である千野君、霞ヶ峰さんと朝食の準備をしていると、続々と人が集まってきた。
ちなみに、あと1人の朝食当番である黒瀬君は姿を見せていない。やっぱり昨日のが相当堪えているのだろう。
「今日は………いつにも増して人が少ないですね」
喜屋武さんがぽつりと呟く。
今いるのが、うちと、業ちゃん、千野君、霞ヶ峰さん、喜屋武さん、ジャック君、分倍河原君、万斗君の8人だ。
「いつも寝坊する灯里さんはともかく、香織さんや雪さんまで来てないなんて………ボク、心配で心配で胸が張り裂けそうだよ!!!!」
「どうする?全員呼んでくるか?」
「時間の無駄ダ。どうせ後から来るだろウ」
ジャック君は既に食べ始めている。相変わらず行動に無駄がないな。
「うーん、ではどうするでござるか?」
「うち、みんな呼んでくるよ。なんか心配だし」
「あっ!凛さんが行くなら私もっ!!」
うちらが立ち上がり食堂を出ようとした瞬間、
「すまない。遅くなってしまった」
銀山さんが入ってきた。
「銀山さん!その、大丈夫?」
「ああ。少し寝過ごしてしまっただけだ。それよりどうかしたのか?」
「ちょうど今から来てない人を呼びに行くところだったんだ」
「そうだったのか。では、私が呼んでこよう。みんなは先に食べててくれ」
「うーん………眠い……」
「独島さん。目が半開きになってますよ」
「結局来たのは独島殿だけでござるか」
「すまない。ドア越しに何度も呼びかけたのだが……」
独島さんはいつもの寝坊だったが、黒瀬君と幸村さんは呼んでも返事がなかったらしい。
「来ない奴など放っておケ」
「でもでも〜ジャックくん、実は幸村さんの事すごく心配してるんでしょ〜?わたしには分かるよ〜。やっぱり2人って実は………」
独島さんはさっきの眠気が嘘のように饒舌になった。ああ、恋愛話っぽいから食いついたのか。
「……………………」
「………すみません」
無言でジロリと睨むジャック君。独島さんは一瞬で縮こまってしまった。
「みんな、ちょっといいか?」
すると、銀山さんがみんなに声を掛けた。
「昨日の事について話したい事がある」
「あ、それなら拙者も1つあるでござる!!」
霞ヶ峰さんが手を思いっきり挙げた。
「では、どちらの話から聞きましょうか?」
「では私は後でいい。霞ヶ峰、先に話してくれ」
「かたじけないでござる。では、拙者が気になっているのは………」
「凛さん、はい、あーん。私が食べさせてあげます」
「いや、本当にそういうのいいから」
「あーん」
「いや、だから………」
「あーん」
「はぁ…………はい」
「やったーーー!凛さんにあーん出来た!!嬉しいです!!」
「北条殿、それについて詳しく説明を求めるでござる」
霞ヶ峰さんはさっきからうちにべったりくっついてる業ちゃんを指差し、そう言った。
「説明、とは?別に説明する事は何もないですよ」
「いやいやいや!!ありまくりでござるよ!!というか昨日の裁判からおかしかったでござるよ!相川殿の話になった豹変して、それで今日来たら相川殿にベタベタしているでござるし!。これに違和感を感じるなという方がおかしいでござるよ!」
「少し落ち着け、霞ヶ峰。確かに、昨日の態度は私も、それにみんなも疑問に思っている。説明してはくれないか?」
「説明、と言われましてもね………。私は、あの裁判中に今まで隠していた凛さんへの想いを解放しただけですよ」
業ちゃんは肩をすくめてそう言う。
「それは………相川殿の事を好いている、という解釈でよろしいのですかな?」
「好いている、なんていうレベルではありません。愛している。そう言って過言ではありませんね。ハッ!?凛さんが隣にいるのにこんな事言っちゃった!キャーー恥ずかしい!!」
顔を赤らめ覆う業ちゃん。みんな、なんとも言えないような表情をしている。
「そんな事はどうでもいイ。それより、重要なのは貴様が俺らに敵対する存在であるかどうかだろウ」
すると、黙々と食事をしていたジャック君がそう言った。
「なるほど、皆さんそれを気にしていたのですか。安心して下さい。私はあなた達と敵対するつもりはありません。もちろん、殺人を犯すような事も絶対しません」
「……………信用出来ないナ」
「まぁ信用出来ないならそれでもいいですが。とにかく、私は基本的には無害ですのでご安心を。ただ、命の危機が迫っている場合や先に襲われた場合は別です。誰であろうと躊躇なく殺しますから。あと、裏切り者もですかね」
「………………………」
2人が睨み合う。まさに一触即発の状態だ。
「まあまあ!2人とも落ち着いて!!業ちゃんもこう言ってるんだし、大丈夫だよ!うちもちゃんと見張ってるからさ!」
うちは慌ててこの場を諫めようとする。
「………………フン」
「凛さんが言うのであれば!」
2人は視線を逸らす。はぁ、ヒヤヒヤした。
「とりあえず、北条の話についてはみんな納得したか?」
「むぅ……。まあ、理解はしたので大丈夫でござる」
「よし。では次は私からだ。さっき北条もチラッと言っていたが、恐らく私達の中に『裏切り者』がいる。そいつをどうするかについて、みんなの意見を聞きたい」
うちは一瞬ドキッとした。
「確か、昨日柴崎君もそんな事言っていたよね?ボク、どういう事かさっぱり分からないんだけど」
「中澤殿が最後に言っていた事ですか。確か、『飛田に傷をつけたのは俺じゃない』と言っていましたね」
「では、他の誰かがわざわざ傷を付けたという事でござるよね?」
「俺たちを撹乱するためか。それか、ただの頭のおかしい奴がやっただけか………」
「前者だったら裏切り者の可能性はありますが、後者だと厄介ですね」
「だったら柴崎君じゃないの?彼、なかなかクレイジーな発言してたし!」
「女子トイレに死体がある以上、男子に出来る訳が無いだろウ。そんな事も分からないのカ」
「う、うるせぇ!!ちょっと言ってみただけだっつーの!!」
みんながそれぞれ裏切り者について議論している。うちは「生徒の中にスパイが4人、裏切り者が1人いる」という事実を言おうかどうかさっきから迷っていた。でも、言えばみんな混乱するし、疑心暗鬼になって団結どころではなくなってしまう。
うちは、この事実を黙っておく事にした。
「みんな!!裏切り者が誰かなんて、多分議論しても答えは出ないと思う!だからとりあえずは警戒しつつ泳がせておく感じで大丈夫じゃないかな?」
うちは、みんなにそう提案する。
「………同感だナ。無駄な事に時間を割くのは非合理的ダ」
最初に賛成してくれたのは意外にもジャック君だった。
「もちろん、私は凛さんに従います!!」
「わたしもさんせーい」
「拙僧もそれで構いませんよ」
「右に同じでござる!」
「ボクは正直怖いけど………まあ、みんながそう言うなら」
「俺も………それでいい」
「決まりだな。とりあえず、この件に関しては保留だ。何か気になった事があったら教えてくれ」
「いないない………バァーーーカバ!!!!」
「ぎゃあああ!?」
すると突然、霞ヶ峰さんの足元からモノカバが飛び出してきた。あれ?なんかデジャブ?
「モノカバ………。なんの用だ」
銀山さんが鋭く睨みつける。
「ひゃー銀山さん怖いカバ〜。人が2人死んだくらいでそんな殺気出されちゃたまったもんじゃないカバ〜」
「貴様………」
「戯言はそれくらいにして、用件を早く言ってもらえますかな?こちらもそんなに暇ではありませんので」
千野君も若干棘のある言い方で促す。
「はいはい分かったカバよー。つれないカバね〜。オマエらに学級裁判を勝ち抜いたご褒美として、新しいエリアを解放しましたーー!」
「新しいエリア」
「そうカバ!隣のB棟、運動エリアを解放したカバ!運動好きには堪らない最高のエリアカバ〜!」
「俺達にそこに行けと?」
「もちろん、行くのは個人の自由カバよー。けどいいのカバ?もしかしたら、新しいエリアに何か脱出の手がかりがあるかもしれないカバよ」
モノカバはニタニタと笑う。
「………………」
「あ、ちなみに場所は2階にある扉から行けるカバ。鍵を開けておくからこれからは自由に出入り出来るカバ」
「分かった。用件はそれだけか?だったら失せろ」
「言葉遣い荒すぎィ!!ああ、あともう一つのご褒美として10000モノマネーをオマエらに送っておいたカバ!大事に使うカバよ〜。じゃ、よいキャンパスライフをカバ!!」
モノカバは出てきた場所から戻っていった。
「さて、そういうわけだが、どうする?」
「十中八九罠だろうナ。手がかりなんてあるとは思えなイ。俺は反対ダ」
「拙者も運動苦手でござるし、行くのは気乗りしないでござるなぁ」
「ですが、このまま放置というわけにはいかないでしょう。手がかりがないとは言い切れない以上、探索するべきだと私は思います」
「俺も………正直少し気になる」
「うちは行くよ。ここにずっといてもしょうがないし」
「凛さんが行くなら、勿論私も行きます!!」
「では、多数決を取ろうか。新しいエリアの探索に行くか、行かないか」
多数決の結果、ジャック君と霞ヶ峰さん以外は全員行く方に手が挙がった。
「どうやらみんな行く気満々みたいだが………ジャック、霞ヶ峰。君達はどうする?もし行きたくなければ無理についてくる必要はないが」
「むむむ……まあ、みんな行くというならば、拙者も行くでござるよ」
「多数決の結果ダ。異論は無イ。ただ、俺は1人で行ク」
「1人で?少し危険ではないか?」
「自分の身くらい自分で守ル。それに群れるのは嫌いなんダ」
「分かった。ジャックはそれでいい。他のみんなは極力2〜3人で組んで行動してくれ。私は黒瀬と幸村を連れてくる」
「待テ」
みんなが動き出そうとした時、ジャック君が声をかけた。
「どうした?何か不満か?」
「まな板女は俺が連れてくル」
全員が茫然とした。
「なんダ、その目ハ」
「いや、意外だな、と。ジャック君がまさかそのような事をおっしゃるとは………」
喜屋武さんも珍しく驚いた表情で答える。
「………………アイツがいないと、全体の士気に関わるからナ。騒々しいバカでもいたら多少は役に立ツ」
ジャック君がうちらに背を向けながら言う。
え?それってつまり、遠回しに幸村さんがいないと寂しいって言ってるのと同じじゃ……。
「うひょーーーー!ついに来ましたか、ジャックくんと幸村さんの恋愛フラグ回収!!!!さてさて、表面上はいがみ合いながらも実際はお互いに想っていて、そしてなかなか素直になれない非常にもどかしい恋ですが、果たしてどうなるんでしょうかーー!!」
「おめでとうでござるジャック殿!!!動画のネタになるかもしれないでござるから、後で幸村殿とのなめそれをぜひ教えてほしいでござる!!!!」
「貴様ら離れロ!訳の分からない事を言うナ!!」
照れ隠しなのか、頑なにこっちを向こうとしないジャック君。普段は無愛想で馴れ合いを嫌うジャック君がこんな事言うって事は、やっぱり幸村さんに何か思うところがあるのかな。
「へーあのジャックさんが………。これはカップルの先輩である私と凛さんがしっかりアドバイスしてあげないといけませんね!!」
「いや、うちらカップルじゃないから」
「そんなぁ…………」
09:00 2F
「銀山殿とジャック殿は後から来られるみたいですし、拙僧達で先に向かいましょう」
うちらは2階にある今まで閉ざされてた扉を開けて、B棟へと向かった。
A棟からB棟をつなぐ廊下を抜けると、そこには、超巨大なグラウンドが広がっていた。
「ひ、広い………。というか、広すぎではござらんか!?」
「サッカーゴールにラグビーゴール、野球場に陸上のトラック………本当になんでもあるな」
「あー、みてみてー。ここに案内図があるよー」
独島さんがB棟の地図を見つけたみたいだ。
見てみると、どうやらB棟には正面にある多目的グラウンドの他に、体育館と才能研究棟とやらがあるらしい。
「才能研究棟………。どうやら私達の才能に関する建物みたいですよ、凛さん」
「そうだね………。ちょっと気になるかも」
「では………ここからはさっき分けたグループで行動、という事でいいのか?」
「そうですね。では、万斗君、分倍河原君、参りましょうか」
「そうだね!いやぁ、流理恵さんとの探索デート、楽しみだなぁ!!」
「万斗、俺もいるんだが………」
「ではこちらも出発しましょう。独島さん、霞ヶ峰さん。準備はよろしいですかな?」
「おっけー。準備万端だよ〜」
「レッツゴー探索でござるよ!!」
そう言って各グループは散っていった。
「さあ凛さん!!私達も早速、デートしましょう♪」
「はぁ………………」
なんでうちらだけペアなんだ。
才能研究棟 1F
うちらはまず気になっていた「才能研究棟」の前に来ていた。
「えへへ……凛さんとデート……嬉しすぎてニヤケちゃいますぅ」
「えっと、とりあえず離れて欲しいんだけど……」
今、うちの手を組んでぴったりくっついている業ちゃんを離そうとするけど………、
「ダメです!離しません!せっかく凛さんと2人きりなんですから」
「あらあらおふたりでデートッスか?今日もアツアツッスね〜」
「ッ!?」
「あ………」
業ちゃんがうちから瞬時に離れて警戒態勢に入る。
「いい反応ッスね。そうッス。ここにいる以上、全てに用心、警戒して下さい。アンタらに簡単に死なれるとつまんないッスからね」
そこには、裁判後から完全にうちらと決別した柴崎君がいた。
「柴崎武史………あなた何してんですかこんな所で」
「なにって………探索ッスよ。モノカバに今朝聞いたんスよ。新しく行ける場所が増えたって。だったら見に来るのが当然じゃないッスか」
「目障りなんだよ。今すぐ消えろ」
「待って。柴崎君に聞きたい事がある」
「凛さん!?」
「おやおや。僕に質問ッスか。本来なら無能の質問には答えない主義なんスけど、昨日の裁判で面白いもの見せてくれた相川サンには特別に答えてあげなくもないッスよ」
「ありがとう。まずはこの先にある才能教室について。どんな所だったか簡潔に教えてくれない?」
「ここはその名の通り、僕ら超高校の才能を持つ生徒達に与えられた専用の研究施設みたいッス。ちなみに、僕の部屋には歴史に関する書籍や資料が大量にあったッスね。ああ、あとここの部屋は全部鍵が無いんで他人の才能教室にも自由に出入り出来るそうッスよ」
1人1人に与えられた才能教室……?ここは希望ヶ峰学園じゃないのに、なんでうちら専用の教室なんかがあるんだ……?
「分かった。じゃあ次の質問。あなたは………裏切り者が誰かもう分かってるの?」
柴崎君一瞬固まると、楽しそうに笑い出した。
「クックック………。僕はもう既に分かってるッスよ。誰が裏切り者なのかをね」
「……………!」
「今すぐ教えろ」
「嫌ッス。だってすぐ答えを言ったら面白くないじゃないッスか」
「………殺す」
「やめて。……分かったよ。それが分かっただけでも大きな収穫だった。行こう、業ちゃん」
うちはさっさと歩き出す。
「あれ?相川サンは僕に聞かなくてもいいんスか?もしかしたら、僕の気分次第では答えるかもしれないッスよ」
「聞いても絶対答えないでしょ。ああ、それと」
うちは振り返って柴崎君を睨みつける。
「昨日裁判でうちの仲間をバカにした事、絶対許さないから。いつか土下座させてやるから覚悟しといて」
そして、また柴崎君に背を向け、歩き出した。
「二度と凛さんに近寄るな。このクズが」
業ちゃんも柴崎君に暴言を吐いて背を向けて歩き出す。
柴崎は、去っていく女子2人を見ながら、ニヤリと口角を上げた。
「おー怖い怖い。けど、しばらくは退屈せずにすみそうッスね」
自動ドアを抜けて中に入ると、真っ直ぐ伸びた廊下と、両端にあるそれぞれの部屋が目に入った。
「というか、なんでこんなやたらとキレイなの?」
「そうですね……。ここも全部モノカバが手入れしてるんでしょうか?」
白を基調とした壁を始め、どこもかしこもピッカピカだ。今朝建てられたと言われても納得できる。
「よし、じゃあ手分けして探索しようか」
「えぇ〜!!せっかく2人きりなんだから一緒に回りましょうよ〜!」
「そうしたら時間がかかっちゃうでしょ?それに、柴崎君がうちらを冷やかしに来る可能性もあるよ」
「うっ…………」
柴崎君の名前を出すと、顔をしかめた。どんだけ嫌いなんだよ。
「わ、分かりました……。とりあえず1人で探索します……。ですが!!!!」
業ちゃんはうちの両肩を思いっきり掴んだ。
「ぎゃっ!?何!?」
「いいですか凛さん。怪しい奴に襲われそうになったら悲鳴をあげて下さい。私がすぐ助けに行きますから。あと、柴崎武史に関しては遠慮はいりません。悲鳴を上げつつ、ぶん殴ったりして精一杯抵抗してください。そして私がタコ殴りにしてブチ殺しますから」
「物騒な事言わないでよ……」
そう言って、うちは1階、業ちゃんは2階を探索する事になった。
まずは自分の才能教室の前に来ていた。
「確か鍵はかかってないんだっけ………。」
うちは、スライド式のドアを開けようとした。
しかし、ドアは開かない。
何度やっても同じだった。
「もしかして、柴崎君の嘘?」
柴崎君だったらあり得るな。あの野郎。一杯食わされたか。でも残念。自分の才能教室くらいは見ておきたかったんだけどな。そうして、別の教室に行こうとした時だった。
「残念でしたーー!!相川サンの教室はまだ開いてませんカバ!」
またどこかからモノカバが飛び出してきた。
「あ、モノカバだ」
「あ、じゃないカバよ!!相川サン、最初はいいリアクションしてくれてたのに、今じゃ顔の表情すら変えないノーリアクション。そんなんじゃ社会で上司に『お前リアクションが薄い!クビ!』って言われちゃうカバ!」
リアクションが薄いとクビってどんな会社だよ。
「それで、どういう事?さっきうちの教室は『まだ』開かないって言ってたけど」
「この才能棟にある教室は、学級裁判を乗り越えるごとにランダムで何箇所か開くシステムになっているカバ。今回開いたのは、霞ヶ峰サン、喜屋武サン、黒瀬クン、柴崎クン、分倍河原クンの5人の部屋だけカバー!自分の教室が見たいなら次の殺人が起きるのを待つしかないカバねーー!」
「………ホント最低」
誰かを犠牲にしないと開かない教室。そんな事しないと開かないんだったら一生開かなくて結構。
「あ、ちなみに既に死んだ3人の教室は開けてあるカバよ。だから自由に入ってもらっても構わないカバよ〜。じゃ、オイラこれから会社の同僚と飲み行くから、お疲れカバ〜!」
モノカバは一瞬で姿を消した。
というか会社の同僚ってなんだよ。しかもこんな朝から飲みって。典型的なダメ人間じゃん。
あ、アイツ人間じゃなかった。
うちは、他の空いてる教室に行く事にした。
『動画投稿者』の才能教室
まずは、隣にある霞ヶ峰さんの教室を見てみる事にした。
中に入ると、パソコンやモニター、カメラなど動画投稿に必要な機材があちこちに置いてあった。
「なんか本格的……」
霞ヶ峰さん凄い喜ぶだろうなぁ。
あ、もしかしてここにあるパソコンを使えば、外部と連絡が取れたりするのかな?
「でも勝手にいじるのもなんか悪いし……。後で霞ヶ峰さんに調べてもらおう」
うちはパソコンをいじろうとして止めた。
あと気になるのは………部屋がやたらと暗い事ぐらいだが、でも恐らくうちが知らないだけで、動画投稿する場所ってどこもこんな感じなんだろう。
気にせず次の教室に向かった。
『調理部』の研究教室
調理部の教室は他の才能教室よりひと回り大きい造りになってるようだ。中は、小学校にある調理実習とかで使う家庭科室のような場所だった。
4.5人が座れる机が7つ程あり、それぞれにガスコンロと流しが設置されている。また、講師が本来立つ場所にも同じ設備が用意されていた。なんか小学校の家庭科の授業を思い出すなぁ。
壁には和食、中華、イタリアン、ゲテモノ料理など、あらゆる料理のレシピが貼られていた。中には、「モノカバ校長大絶賛!!人肉とゾンビ肉のステーキ」、「綺麗なお姉さんの指先を使用!指先ごろごろビーフシチュー」なんてふざけた料理のレシピも貼ってあったが、見なかったことにした。
もう一つ「準備室」と書かれた扉があったので入ってみると、その名の通り、調理に必要な物がひと通り準備出来るような部屋だった。包丁の数も食堂の厨房に比べたらかなり多い。また、大型の冷蔵庫や電子レンジなど、厨房には無い物もたくさんある。
幸いにも、この準備室には鍵がかかるようなので、鍵の管理さえしっかりすれば、包丁などを悪用される心配はないだろう。
うちは次の教室に行く事にした。
『歴史学者』の研究教室
次は柴崎君の教室に入ろうとした。しかし、
「………あれ?開かない」
ドアをいくら開けようとしても全く開かない。他の教室は開いたのに。
「もしかして、柴崎君の仕業?」
あの柴崎君だ。自分の教室を他人に見られるのを嫌って、擬似的な鍵を作って自由に入れなくしたのかもしれない。無能達に僕の部屋を見せるわけがないじゃないッスか、とか言いそうだし。
「次の教室行こうっと」
果たして、柴崎君の部屋を見る機会は来るのだろうか……。
うちは中が気になりながらも、柴崎君の教室を後にした。
「あとは黒瀬君と分倍河原君の教室だけど………あれ?ここには無いのかな?」
どうやら、この才能研究棟には文化系の才能教室しかなく、運動系の才能教室は体育館にあるらしい。だから2人の教室はここには無いみたいだ。
「うーん………。正直気になるけど、体育館の探索してる人達に任せようかな」
後でどんな感じだったか聞けばいいし、そっちの方が効率的だよね。そう自己完結して行くのはやめた。
「凛さん!」
すると、2階を探索し終えた業ちゃんが階段から降りてきた。
早速抱きつこうとしてたのでサッとそれを躱す。
「業ちゃん、2階はどんな感じだった?」
「はい、2階も1階と同じように様々な才能の教室がありました。ただ………」
「ただ?」
「とりあえずこれを見てもらってもいいですか?」
業ちゃんは深刻そうな顔をしながらカバフォンを取り出して画面を見せてきた。
2階にある才能教室
合唱部 漫画家 運び屋 不運 ハッカー 機械工 スタイリスト 死神 投資家 鍵師 芸人 薬剤師
「え?」
うちはただ困惑した。この才能って………。
「凛さんが戸惑うのも分かります。だって、私達の中にこの中の才能を持った人は1人もいませんから」
「つまり、私達の他にここに連れてこられた人がいるって事?」
「正しくは、『いた』と言った方がいいと思います。凛さん、これを見て下さい。さっき撮った写真なんですけど………。少しグロい写真なので注意した方がいいです」
今度は、業ちゃんが写真を見せてきた。
「写真?そんな機能カバフォンにあったっけ?」
「はい。どうやらさっき新しく追加された機能みたいです。10枚まで写真を撮って保存できるとあのカバが言っていました」
そしてうちは写真を覗き込む。
そこには、ありとあらゆる場所が血で染まった凄惨な部屋が写っていた。
「うっ!?」
うちは思わず吐き気を催した。口を押さえてしゃがみ込む。
「凛さん!?」
業ちゃんはうちの背中を優しくさすった。幸いにも吐き気はすぐおさまった。
「っ………。ごめん、もう大丈夫。ありがとう」
「すみません、やっぱり凛さんには見せるべきではなかったですね………」
「いや、どうせいつか見る事になるんだから変わんないよ………。それよりこれは?」
「2階の『機械工』の教室で撮影したものです。実際入ってみましたが、血はすっかり乾き切っていました。ですから、ああいう事になってから相当時間が経っていると思います」
「血があるってことは………やっぱり、殺人が起きたって事だよね………。この教室で」
「……間違いないと思います。あと、これは、その……非常に言いづらいんですけど、機械工の教室には様々な大型の機械があって、そのうちの1つの電動丸ノコに大量の血がこびり付いていました。恐らくはこれで………人を解体したんだと思います。もしそうであれば、この血の量も説明がつきます」
うちは人が解体されている状況を想像してしまい、また吐き気がこみ上げてきた。しかし、今度はなんとか我慢した。
「凛さん!?」
「大丈夫。耐えた。後は何か見つけたものはある?」
「いえ、特には。一応全ての教室を回って見たんですけど、めぼしい手がかりは何も………」
ん?全ての教室?
「全て?もしかして、2階の教室って全部空いてたの?」
「??はい。全部空いてましたけど……1階は違ったんですか?」
うちは、さっきモノカバから受けた説明を業ちゃんにもした。
「なるほど、学級裁判をクリアする度にランダムで開く………。じゃあ、私の教室はまだ見れないと言う事ですね。せっかく私の才能が何か分かるチャンスだったんですけど、まあしょうがないですね」
業ちゃんは残念そうな顔をした。
「うん……。とりあえず、他の方法を探そう。うちも協力するからさ」
「り、凛さん………!やっぱ凛さん大好きです!!!!キスしましょう!!!!」
「絶対ヤダ」
「な、なんでですか!?私達、こんなにも愛し合っているのに!?」
「全然全くこれっぽっちも愛してない。ほら、そろそろ戻るよ。みんなに報告しなくちゃ」
「素っ気ないですぅ………。でも、そんなところも含めて大好きです!!」
業ちゃんはまたうちにくっ付いてくる。暑苦しいから離れてくれ。
うちらが集合場所である食堂に戻っている時、曲がり角で誰かにぶつかりそうになった。
「わっ!?ごめん!!」
「気をつけロ。貴様に付いてるその目はただの飾りカ?ビー玉でも入れているのカ」
そこにいたのは、相変わらず毒舌のジャック君と………
「……………………」
沈んだ表情の幸村さんだった。顔色も悪い。昨日とはまるで別人のようだ。
「幸村さん!?」
「……おはよ、りんりん。今日はごめんね、朝ご飯の集まり行かなくて」
「いや、全然大丈夫だよ!それよりも………大丈夫?」
「……うん、昨日に比べたらマシかな。けどさ、ウチ、未だに脳にこびりついてるんだよね。………ざわさんの最後の顔がさ。それに、ずっと友達だと思ってたたけくんがあんな事になって………」
そう言ってから、幸村さんは業ちゃんの事を見る。
「………政子もそうだよ。あの時の政子、すごく怖かった」
「それはすみません。ですが、あれが素の私です。そしてこれからもこの私でいきますので、どうかよろしくお願いします」
「………そんな簡単にはいって言えるわけないじゃん。少なくとも、ウチは前の政子の方が好きだったよ。今の政子、何しでかすか分かんないもん」
「そう言われましてもね………。別に何かするつもりはないんですけど、まあ信用して貰えないのならそれで結構です。私のやる事は変わんないので」
「やめロ。これ以上の会話は時間の無駄ダ」
険悪な雰囲気が漂ってきたところでジャック君がすかさず止めに入る。
「貴様ラは先に戻っていロ。俺はコイツを部屋まで送ってくル」
「分かった。あ、ジャック君。もしかして幸村さん、やっぱり精神的に……?」
うちは小声でジャック君に聞く。
「………チッ。アイツは昨日のオシオキのトラウマから『心的外傷後ストレス障害」に陥っている可能性があル」
「心的………何それ???」
「……説明は面倒だから省ク。自分で調べロ。もしそうだとしたラ、医者として見過ごす訳にはいかなイ。正直、精神科は専門外だガ、なんとかしてみるつもりダ」
「ジャック君………。やっぱり優しいね、あなたって」
「………!うるさイ」
そう言って背を向けるジャック君。あれ?今完全に照れてたよね?
「じゃあ、うちらは先に食堂に行ってるから。ジャック君も後でちゃんと来てね。幸村さんもまたね」
「貴様に言われなくても分かっていル」
「………うん。またね、りんりん」
そう言ってジャック君達と別れ、食堂に向かった。
生存者
LA001 相川 凛《外国語研究家》
⁇002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》
⁇003 喜屋武 流理恵 《調理部》
SA004 銀山 香織《棋士》
⁇005 黒瀬 敦郎《バスケ部》
⁇006 柴崎 武史《歴史学者》
⁇007 霜花 優月《狙撃手》
⁇008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》
⁇009 千野 李玖《茶人》
MC010 独島 灯里《サブカルマニア》
⁇011 飛田 脚男《バイク便ライダー》
⁇012 中澤 翼 《フットサル選手》
⁇013 錦織 清子《テニスプレーヤー》
⁇014 分倍河原 剛 《空手家》
⁇015 北条 業 《???》
⁇016 万斗 輝晃 《情報屋》
⁇017 幸村 雪 《激運》
残り14人