(非)日常編②
食堂に入ると、まだ誰も戻って来ていなかった。
「あれ?まだ誰もいないみたいですね。という事は………しばらく凛さんと2人っきり!?キャーー!!!!興奮してきました!!!!」
「はいはい」
うちは適当にあしらいながら、戻ってくるみんなの為に飲み物を用意する。もちろん無料の水だ。
「はぁ………。言われずとも他人の為に飲み物を用意する凛さんの優しさ………。そういう所も本当に大好きです!!」
業ちゃんがうちの真横で見つめてくる。近い。せめてパーソナルスペースは守ってほしい。
「分かったから業ちゃんも手伝って欲しいな……」
「はい!!他の人に水を用意する義理は全く無いですけど、凛さんが言うなら喜んで手伝いますよ!」
前半部分が余計だ。
10:00
集合時間が近づいてくると、探索に行ったみんなが戻ってきた。
「疲れた〜。もう歩けないよー」
「ただいまでござる!!あれ、これは拙者らが飲んでいい水でござるか?」
「私と優しい優しい凛さんがわざわざあなた方の為に用意しておいたんです。感謝して飲んで下さいね」
「かたじけないでござる!『相川殿』は優しいでござるね〜」
「……………………………」
「う、嘘でござる!ほ、北条殿もとてもお優しい心の持ち主でござるよ!!」
ジロリと睨まれて慌てふためく霞ヶ峰さん。霞ヶ峰さんってかなりビビリだよね。
「あと戻ってきてないのは………、銀山さんとジャック君ですね」
「ジャック君は幸村さんを部屋に送ってから来るって。幸村さんは………昨日のがかなりショックだったみたい。顔色も悪かったし、まだ本調子じゃないと思う」
「そうかい………。出来るならばボクが直々に雪さんを慰めてあげたかったんだけど」
「どうせ万斗君、そこから変な事しようとするんでしょ?」
「と、とんでもないよ凛さん!!そこから色々お世話して最終的に友人以上の関係になって夜の営みを………なんてこれっぽっちも考えてないよ!!」
「いや確信犯じゃん」
完全に変質者だ。後でどこかに縛っておいた方がいい気がする。
「すまない、遅くなった」
すると、銀山さんが帰ってきた。そして………
「………………オッス」
朝食の時にはいなかった黒瀬君が後ろに立っていた。
「…………………」
「…………………」
みんなは黙って黒瀬君を見る。その目には若干敵意が含まれていた。
それはそうだ。だって昨日、黒瀬君は犯人である中澤君を最後まで庇い続けた。そして女子が犯人だとひたすら主張していた。危うくうちらはまとめて処刑されるところだったのだ。無理はない。
ちなみにうちは別に怒ってはいない。数日間共に過ごしてきて分かったけど、黒瀬君はかなり直情的な性格だ。友達が目の前でピンチになっていたらどんな理由があろうとも迷わず助けるだろう。今回も別にうちらを犠牲にして中澤君を勝たせるみたいな悪意があったわけじゃなくて、単純に友達である中澤君を助けたいという気持ちからあんな行動に出たんだと思う。そこはうちはすごく共感出来るから、みんなより怒りを抱いていないのかもしれない。
それでも、どうして犯人を庇うなんて行動に出たのか、そしてそもそもなんで黒瀬君は中澤君が犯人だって知ってたのか、色々説明して欲しい事はあるけど。
そううちが考えていると………。
「みんな、ホントにすまねぇ!!!!!!!」
黒瀬君が突然みんなに向かって土下座をした。
突然のその行動にみんな目を丸くしている。
「昨日は………、翼が脚男を殺したって事が信じられなくて、アイツが、そんな事するはずがねぇって、そう思ったからつい庇っちまって……」
黒瀬君は、必死に言葉を繋ぎながらどうにか説明しようとしている。
「急に何を言い出すかと思えば……。あなた、自分が何をしたのか分かっているんですか?私と凛さんが生命の危機に晒されたんですよ?そんな土下座1つで許されると思ってるんですか?」
業ちゃんは怒り心頭の様子で捲し立てた。
「流石にこの程度で許されるなんて思ってねぇ………。だからオレは………これから償ってくつもりだ。オレはバカだから、体を張る事くらいしか出来ねえけど、どうかオレをもう一回仲間に入れてくれ………頼む!!!!」
黒瀬君は額を床に擦り付ける勢いで更に土下座をする。
「バカバカしい。私達を殺そうとした上に仲間に入れろだなんて、虫が良すぎますよ。皆さんもそう思わないですか?」
業ちゃんはみんなに同意を求める。が、
「別にいいんじゃない〜」
独島さんは眠そうにしながらそう言った。
「独島さん。あなたは何を言って………」
「だってさー。黒瀬くんこんなに謝ってるし、反省もしてるみたいだから許してあげてもいいでしょ〜。それに、別に黒瀬くんは悪意があってあんな事した訳じゃないみたいだしー」
「黒瀬君が善意で中澤君を庇ったという証拠はあるんですか?」
「無いよ〜。でもさー、じゃあ北条さんは黒瀬くんが悪意でそんな事する人に見える〜?」
「知りませんよ、そんなの」
「じゃあ黒瀬くんを悪だって決めつけて仲間外れにするのはまだ早いんじゃないかなー。少なくともわたしはもう一回黒瀬くんにチャンスをあげてもいいんじゃないかーって思ってるよ〜」
「灯里………」
独島さんは普段マイペースでボーッとしてる事が多いけど、自分の意見をしっかり持っていて、それをハッキリと主張できる人だ。こういう時の彼女はとても頼もしく見える。
「拙僧も黒瀬殿を信じてみたいと思います」
続いて千野君もそう発言した。
「はい?千野さん、あなたは独島さんほどお気楽な人ではないと思っていたんですが」
「わたしがお気楽だなんてそんな失礼な〜」
「いや、それは間違ってないでござるよ」
「拙僧は黒瀬殿が人を殺めるような人間だとは到底思えないのです。ですから、拙僧はもう一度黒瀬殿を信じてみようと思います」
「私も賛成だな。黒瀬は私達を道連れにするような愚かな人間ではない。数日間共に過ごしてきたからこそハッキリと言える」
「拙者も黒瀬殿を信じるでござるよ!!」
「………俺もだ」
「ケッ、イケメンを庇うだなんてキモすぎてじんましん出そうだけどな!コイツバカだし人を陥れるマネなんてしねぇだろ」
他のみんなも続々と声をかける。
「業ちゃん、黒瀬君にもう一回チャンスあげてくれない?」
うちは、信じられないという顔をしている業ちゃんにそう言った。
「凛さん………」
「確かに黒瀬君は1度うちらと敵対する形になったけど、でもうちは黒瀬君が悪人に見えないんだよね。だからさ、もう一度黒瀬君も含めてみんなで団結し直そう。そうすれば、きっとモノカバにも勝てるよ!」
「………………………やっぱり凛さんの言葉は響きますね。だから好きなんです」
業ちゃんはうちが聞き取れないくらいの小声で何かを言った。
「えっ!?」
「何でもないです!分かりました。私もとりあえず黒瀬さんを信用する事にします」
「業………ありがとう」
「ですが………」
「条件があります」
業ちゃんの言葉に被せるようにずっと黙っていた喜屋武さん
が言った。
「え…?」
「申し訳ありません北条さん、話を遮ってしまって。ですが、これだけは言っておきたかったので」
喜屋武さんは未だ正座の体勢でいる黒瀬君に近づくと、しゃがんで黒瀬君と目線を合わせた。
「る、流理恵……?」
「私も皆さんと同じ意見です。黒瀬君を今一度信じてみようと思います。ですが、その為にはまず中澤君が犯人だと分かった経緯を説明して頂きたいのです。そうでないと恐らく私、そして他の皆さんも納得出来ないと思います」
数人がうんうんと頷いている。
「………分かった。けど、別に大した事は話せねぇぞ」
「オレはパーティー当日の………朝4時ごろだったか。ちょっと早く目が覚めたからいつもより早めのランニングをしようと思って部屋を出たんだ。そしたら、ロープと睡眠薬の瓶を持った翼と偶然会ったんだ。アイツ、相当驚いてたよ。こんな朝早い時間になんで、って思ったんじゃねぇか?オレは翼を問い詰めた。それで何するつもりなんだって。そうしたら翼は「最近眠れないから睡眠薬を持ってきたんだよ。あとロープは………脱出にもしかしたら役に立つと思って持ってきた」って言った。オレはそれをまんまと信じて深く追求しないで別れたんだ。それでオレは………」
「あーはいはい。それ以上は長くなりそうなので大丈夫です。つまり、黒瀬さんは中澤さんが殺人に使われた道具を部屋に持って帰るのを見たから、犯人だと分かっていたんですね」
「あ、ああ」黒瀬君は戸惑いながら話を遮った業ちゃんに返答する。
「理解できました。じゃあさっさと探索の結果をお互いに報告しましょう」
「え?でもオレは………」
「くどいです。私はジャックさん程じゃないですけど、無駄な時間は極力省きたい人間なんです。だからこんな茶番や報告会なんて早く終わらせて1秒でも多く凛さんとラブラブな時間を過ごしたいんです。ですよね、凛さん!!」
「後半部分は全く理解出来ないけど」
「ええええ!?凛さん!?」
うちは正座の黒瀬君に手を伸ばす。
「もう犯人を知ってた理由も黒瀬君の思いも聞けたし、うちは十分だよ。もう土下座とかいいから、黒瀬君も椅子に座って一緒に報告会しよう?」
「凛………ありがとう!!!!!!オレ、もう泣きそうだよ………」
「既に泣いてんじゃねぇか、汚ねぇな」
涙でぐちゃぐちゃの顔の黒瀬君は近くの椅子に座った。
「喜屋武さんもいいよね?」
「ええ。聞きたいことも聞けましたし、私から言うことはもはや何もありません。またこれからよろしくお願いします、黒瀬君」
喜屋武さんはいつもの優しい笑顔で言った。
「というか黒瀬殿はいつも土下座してるイメージがあるでござるなぁ。分倍河原殿の時もそうだったでござるし」
「なっ……!」
「あと、さっき『もう一回仲間に入れてくれ』って言ってたけど別に誰も仲間外れになんかしてなかったよー。そう、つまり黒瀬君は勝手に勘違いして仲間に入れてくれなんてクサイセリフを言っちゃってたって事〜。うわー恥ずかしい〜」
「ななななな………!!!!」
黒瀬君の顔が羞恥で真っ赤に染まっていく。
「ギャハハハハハ!!!!おいバスケ部なんだその顔!ブッサイクだな!!まったくざまぁねぇぜ!!!!」
「万斗殿、そのような事を言ってはいけませんよ。黒瀬殿は今、恥じらいという感情と闘っているのですから」
「く、黒瀬……。俺は、あの時の土下座はとても男らしいと思ったぞ」
「黒瀬君の『仲間に入れてくれ』ってセリフってあれだよねー。ワ◯ピース45巻のウ◯ップが一度離脱した一味に戻る時に言う感動的なセリフの事でしょー?いやーいいよねあのシーン、一回船長と対立したウ◯ップが泣きながら……」
「独島殿、少し落ち着くでござる!あとそれ以上の発言はマズいでござるよ!?」
「おいおい、そろそろ始めるぞ。今にも怒りが爆発しそうな奴がいるからな」
「………………」
「業ちゃん、今は大目に見てあげてよ」
「まあ、凛さんがそう言うのならば………」
そして、B棟の探索結果をみんなで報告しあった。
しかし結果から言えば、脱出の手がかりとなるものは何も見つからなかった。
「やはりそう簡単に脱出させてはくれないか………」
「まあそう簡単に見つかったら手がかりが見つかったら苦労しないよね〜」
「では、これからどうしましょうか?」
「とりあえず今は解散して各自自由行動にしよう。自分の才能教室が気になる人もいるだろうしな」
「拙者、今すぐにでも行きたいでござる!!!!」
「では、お昼はみなさん別々という事でよろしいですか?」
「その方が動きやすいだろう。みんな、次集まるのは夕食の時だ。時間に気をつけてくれ」
「はーい」
銀山さんの一声でこの場は一旦解散となった。うちはまだ実際に見てない体育館に行ってみようかな。おっと、業ちゃんに捕まるとマズいから早く行こう。ごめんね、業ちゃん。
うちはこそこそと食堂を抜け出した。
「あれ?凛さんはどこに?」
「相川殿なら既に出て行きましたよ」
「そんな!?!?!?!?私を置いてかないで下さ〜い!!私の愛しき凛さ〜ん!!!!」
「………………愛されすぎるのも大変ですな」
B棟の体育館はうちが想像してた以上に大きかった。
「大学の体育館ってこんなにデカいの???」
大きさで言うと中学の体育館の軽く3倍はある気がする。
ただ、中に入ってみると構造自体は普通の体育館とほぼ同じだった。違うのは、2階に観客席があるのと、ステージの横に何やら怪しい通路がある事くらいか。
「こういう場所なんか凄くワクワクするんだよね〜」
1人で呟きながら通路への扉を開く。すると、奥には廊下といくつかの扉があった。
「もしかしてここって………さっき無かった運動系の才能教室?」
早速1番手前にある部屋の看板を見る。そこには「超高校級のテニスプレーヤー」と書かれていた。
「テニスプレーヤー………錦織さんの教室だ」
そこは、今はもういない錦織さんの才能教室だった。
中には、芝のテニスコートが一面とラケット、ボールなどテニスに必要な道具が完備されていた。
さらに、どうやらグラウンドの一部と繋がっているらしく、ほぼ外にいるような状態だった。
けど、これらが使われる事は恐らくないだろう。
「錦織さん………うち、あなたと一緒にテニスしたかったよ。あなたがテニスしてる姿、見たかった」
うちは教室を出た。
「エイ!!セイヤッ!!!!!!!!」
廊下に出ると、誰かの掛け声が聞こえてきた。
「この声は………」
声は隣の教室から聞こえてくるみたいだ。
実際に隣の教室の前に行ってみると、「超高校級の空手家」と書かれていた。
「やっぱりそうだ。気になるけど今入ったら邪魔になるかな?」
声を聞く感じかなり真剣みたいだし。
「うーん、じゃあドアから覗くだけにしよう」
うちはドアを軽く開けて覗き込む事にした。
ちょっと待って。これ完全に犯罪行為じゃん。心が痛い。
中では、道着を着た分倍河原君が掛け声をかけながら様々な構えをとっていた。
「セイッ!!!!!!ヤーーーー!!!!」
うちは武道に関してはまったくの素人だから、今やっているのがどういう型なのかとか全然分かんないけど、普段絶対出さない声量と真剣な表情からいかに分倍河原君が集中しているのかがよく分かる。というかめっちゃカッコいい。真剣に何かに取り組む人っていつもの十倍増しでカッコよく見えるって誰かが言ってたけど、ホントにそうだと思う。思わずそのままじーっと見ていると、
「誰だ!?」
うちの気配に気付いたのか、分倍河原君は警戒しながらこちらを向いた。え?なんで気づかれたの?そして当然、うちと分倍河原君の視線が合う。
「あ」
「あ、相川……お前、いつからそこに………」
「ごめん、結構前から覗いてた」
うちは正直に白状する。が、返答が無い。
「分倍河原君?」
近づいてみると………
「………………………」
顔を真っ赤にして固まってしまっていた。
「ごめん、本当に悪気はなかったんだ。ただ、大きな掛け声が聞こえたから何かなーと思って、つい……」
「いや………大声を出した俺にも非がある。相川は悪くない」
あの後、なんとか謝ったり慰めたりして分倍河原君の硬直を解いたうちは才能教室にお邪魔させてもらっていた。「空手家」の才能教室であるここは、ザ・武道場といった感じだった。床には畳が敷き詰められ、無駄な物は一切置いていない。ここも錦織さんの教室と同じで外に飛び出してる形になっているのか、窓からはグラウンドが見える。
「………………………」
「………………………」
分倍河原君は下を向いたまま黙っている。会話の無い時間が続く。
き、気まずい………。やっぱ覗いた事怒ってるのかな………。
何か会話をしたいけど………。
「もしかして………覗いた事怒ってる?」
「いや、そうじゃない。前の裁判中に話したと思うが………」
分倍河原君は下を向いたまま話し始めた。
「俺は………その………女子と接するのが……苦手なんだ、昔から。自分でも、なんとかしたいと思っているんだが……」
あ、そういう事か。どうりでさっきからうちの顔見て話してくれないわけだ。
「そっか……。じゃあうちで良ければ練習相手になろうか?」
「え??」
分倍河原君は顔を初めて上げた。
「聞く限り分倍河原君は女子が苦手なの治したいって事でしょ?だったらうちで良ければ克服するの付き合うよ。さっき迷惑かけちゃった償いもこめてさ」
「だが………、いいのか?」
「うん!!だってうち、分倍河原君の事もっと知りたいから!」
「………………………!!」
分倍河原君は驚きの表情のまま固まってしまった。
「………どうしたの?もしかして嫌だった?」
「………優しいな、お前は。まるであの人の面影を見ているようだ」
「え?何か言った?」
「いや、ついビックリしてしまった。俺にそんな事言ってくれたのはお前が初めてだ。ありがとう………相川。では、少し雑談に付き合ってくれないか?」
「もちろん!!」
「うちずっと分倍河原君に聞きたかったんだけど、なんで空手をやろうと思ったの?」
「………俺の家は空手一家なんだ。両親は空手の道場を開いているし、上の兄と姉は空手で全国レベルの実力を持っている。………だからそれを見ていた俺もやりたくなった。それだけだ」
「へぇー!なんか最強になりたい、みたいな理由は無かったの?武道始める人ってそんな理由で始める人結構いると思うけど」
「………いや、俺は別に力で1番になりたい思ったことはないな………」
「あ、そうなんだ」
「だが…………俺が今も空手を続けているのには理由がある。それは、大切な人を守るためだ」
「大切な人?それって家族とか?」
「俺の家族は俺に守られるほどヤワじゃない。いざとなったら自分の身は自分で守れるだろう。俺が守りたいのは………俺の恩人だ」
「恩人?」
「俺は昔から体が大きかったから周りからずっと怖がられていた。そのせいで友達は1人もいなかった。そんな俺を救ってくれた人がいるんだ。俺は、その人を守るために体を鍛えている」
分倍河原君は少し懐かしむような表情でそう話す。分倍河原君の心の支えになってた人かぁ。一体どんな人なんだろう。
「その人は今何してるの?」
「………今は、自分の夢を果たす為に色々動いているようだ。あまり自分の事を語らない人だから詳しくは知らないが」
なるほどね……。聞けば聞くほど会ってみたくなるなー。
「あ、というか分倍河原君、普通にうちと喋れてるじゃん」
「………!確かに、そうだな………」
「そうだよ!多分分倍河原君は、自分が思ってるほど女子と話すのが苦手じゃないんだと思うよ!!」
「そうなのか………?」
「そう!だからさ、今度はうち以外の女子とも喋ろう!そうすれば段々と女子に慣れてくるはず!」
「そう言われてもな……。ここにいる女子は、クセがある人ばかりだからな………」
確かに。
「そうなんだよね〜。じゃあさ、比較的クセの少ない人と話すことから始めてみれば?例えば喜屋武さんとか」
多分この中で1番の常識人といえば喜屋武さんだろう。
「喜屋武か………そうだな、では今から喜屋武の所へ行ってみるとしよう」
そう言って分倍河原君は立ち上がった。
「うちも付いて行こうか?」
「いや、1人で大丈夫だ。ありがとう、相川。おかげで少し克服出来た気がする」
そう言って教室を出て行った。
「まだ若干ぎこちないけど………いつか今よりもっと楽しく分倍河原君と会話出来たらいいな」
空手家の研究教室を出たうちは、当てもなく才能研究棟をふらふら彷徨っていた。
「そういえば、霞ヶ峰さんがさっき自分の研究教室に行くって言ってたっけ」
うちは霞ヶ峰さんの研究教室へ向かうことにした。
超高級の動画投稿者の研究教室
「失礼しまーす」
軽くドアをノックして中に入ると、霞ヶ峰さんはヘッドホンを付けてパソコンの前に座っていた。画面を凝視しながら一心不乱にキーボードを叩いている。
「霞ヶ峰さん、教室の設備はどう?何か見つかった?」
「…………………」
霞ヶ峰さんは何も答えない。そっか、ヘッドホン付けてるから聞こえないのかな。
うちは霞ヶ峰さんの肩を叩いてもう一度声をかけた。
「霞ヶ峰さん!ごめん、ちょっといい?」
「……………………」
え?これも聞こえない?結構大きな声で言ったつもりなんだけど。
「霞ヶ峰さん!!!!聞こえる!?!?!?」
「………………………」
うん、これはダメだ。全く聞こえてない。
そうなったらやることは一つしかない。うちはヘッドホンが繋がってる機械のボリュームを最大に上げた。
「ギャーーーーーーーーー!?!?!?耳が、耳がぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
霞ヶ峰さんはイスから転げ落ちた。そのまま床をゴロゴロ転がっている。
「何をするでござるか相川殿!!!!!危うく拙者の耳が使い物にならなくなるところでござった!!!!」
「ごめん、声かけたのに全然気がつかなかったから………」
「だったら肩を叩くなり体を揺するなりビンタするなりいくらでも方法があるでござる!!相川殿は考えることが鬼畜なのでござる!」
「さっき肩は叩いたよ………。というか、ビンタされてもいいんだね」
「それで、相川殿は拙者に何の用でござるか?」
霞ヶ峰さんは若干機嫌が悪い様子でうちに尋ねた。
「いや、何か手がかりとかは見つかったのかなって………」
「見つけたとしても相川殿に話す義理はないでござる」
霞ヶ峰さんはぷいと首を横に向けてしまった。訂正。若干じゃなくて相当機嫌が悪いみたいだ。どうしよう、なんとかして怒りを鎮めてもらわないと………。あ、そうだ!
「本当にごめん!!お詫びに前言ってた霞ヶ峰さんの動画にうちが出るって話、ok出すからさ。それでどうか………」
「ほ、本当でござるか!?」
「う、うん。それで良ければだけど」
「だったら許してあげてもいいでござるよ!!」
嬉しそうに言う霞ヶ峰さん。どうやら機嫌を直してくれたみたいだ。ちょろいな。
「では、そうなればこっちも情報を隠すのはフェアではないでござるな。いずれ皆に伝えるつもりでござるが、まず相川殿には先に教えておくでござる」
「本当!?ありがとう!!」
「礼には及ばないでござる。では、まずこれを見て欲しいでござる」
霞ヶ峰さんはパソコンにあるファイルを開いた。
希望ヶ峰学園第88期生 入学者一覧
A組
【外国語研究家】
【探偵】
【神父】
【軍医】
【動画投稿者】
【機械工】
【棋士】
【運び屋】
【ハッカー】
【医者】
【秀才】
【鍵師】
【薬剤師】
【投資家】
【情報屋】
【物理学者】
【完全記憶能力】
17名
B組
【達人】
【スリ】
【喧嘩屋】
【バスケ部】
【不運】
【狙撃手】
【くノ一】
【十種競技王】
【水泳選手】
【バイク便ライダー】
【フットサル選手】
【テニスプレーヤー】
【ボディビルダー】
【空手家】
【サッカー選手】
【バトミントン部】
【激運】
17名
C組
【オカルト研究家】
【ピアニスト】
【作曲家】
【調理部】
【芸人】
【かるたクイーン】
【歴史学者】
【カメラマン】
【合唱部】
【茶人】
【スタイリスト】
【漫画家】
【自宅警備員】
【サブカルマニア】
【グルメリポーター】
【女将】
【マジシャン】
17名
計51名
「これは………希望ヶ峰の名簿?」
「そのようでござるな。しかし、名前の所だけ不自然に全て消されてるでござる」
確かに才能が書かれている隣の文字が全て黒く塗りつぶされている。知られるとマズいから黒幕が全部消したって事か。
「うちはどの組なんだろう………って1番上にあった」
うちの才能はA組の1番上に書いてあった。じゃあうちはA組の出席番号1番だって事でいいのかな?
「ちなみに拙者も同じ組でござるよ」
「本当だ!あと一緒なのは………銀山さんとジャック君、それに万斗君だね」
「この名簿を見る限りだとここにいる拙者ら16人は、少なくとも数人とは面識があるはずでござる」
「けど、誰も覚えてなかった。という事はやっぱり記憶を消されたのは間違いないって事だよね?」
「その通りでござるな」
「やっぱりそっか………。はぁ………」
うちは思わずため息をついてしまった。モノカバから最初それを聞かされた時は嘘だって思ってたけど、残念ながら本当のことらしい。
「それと………この名簿、違和感を感じる場所がいくつかあるござる」
「違和感?」
「そうでござる。まず、才能についてでござる。見たところ、同じような才能がいくつかあるでござる。例えば、B組に飛田殿の才能があるでござろう?」
「うん。『バイク便ライダー』だよね?」
「しかし、A組を見ると、『運び屋』という才能があるでござる。これはほぼ同じ才能ではござらんか?」
確かに、響きだけ聞くと同じ職種に聞こえる。
「けどさ、これはうちらが知らないだけで実は細かな違いがあるんじゃないの?組も違うみたいだし。希望ヶ峰学園が全く同じ才能の人を同時に入学させるなんて思えないけど」
「むむむ………それは一理あるでござるな。では、これらもそうでござるか?」
霞ヶ峰さんが指差したのは、A組にある2つの才能だった。
「この『医者』と『軍医』の違いが拙者分からないのでござるが。さっきとは違って組も同じでござるよ」
「う〜ん………。これは後でジャック君に聞いてみようよ。何か知ってるかもしれない」
「そうでござるね」
しかし、霞ヶ峰さんの言う事も一理ある。他にも、『フットサル選手』と『サッカー選手』みたいに似たような才能もあるし、何か意味があるように感じてしまうのも無理はない。
「まあこの件については後回しにして………。次に違和感を感じたところを言ってもいいでござるか?」
「うん」
「次は組の分け方でござる」
「分け方?」
「これを見るに、B組は恐らく運動系の才能を持つ人達で構成されたクラスでござる」
「そうだね。スポーツ系の才能ばっかりだし。………ん?でも幸村さんの『激運』もそうだし、『不運』とか『スリ』みたいに関係ない才能も入ってるよ」
「そこなんでござるよ。拙者が違和感を感じたのは!どうしても拙者にはこの組分けに何か意図を感じざるを得ないでござる」
「まあ言いたいことは分かるけど………、さすがに深く考えすぎじゃない?」
「それだけじゃないでござる!仮にB組の組分けに規則性があったとすれば、A組とC組にも規則性があるという事でござる!しかしその両組になんの規則性も見出せないでござる!!これは如何なる事かと」
「ちょっと落ち着いて霞ヶ峰さん!?ほら、水飲んで!」
うちは興奮してる霞ヶ峰さんを落ち着かせるために近くに転がっていたペットボトルの水を渡す。
霞ヶ峰さんはそれを受け取ってぐびぐび飲んだ。
「………………………。ぷはっ。面目ないでござる。拙者、興奮すると話が止まらなくなるでござる」
「大丈夫だよ。その気持ち、すごく良く分かる」
うちもそのタイプだし。
「でもA組は割とインテリというか、知識とか知能がある人じゃないと出来ない才能が固まってる気がするよ。規則性はあるっちゃあるんじゃない?それにC組も文化系の才能で固まってるみたいだし」
「そうでござるが………なにか引っかかるんでござる」
霞ヶ峰さんはどうも納得できないようだ。
「これも後でまた考えようよ」
「そうするでござるか……。では、最後の違和感についてなのでござるが、なぜ、組単位ではなく、クラスがバラバラの拙者らが連れてこられたのでござる?」
「確かにね。これに関しては間違いなく意図があるだろうね」
「それをさっきからずっと考えていたのでござるが………相川殿は何か考えつくでござるか?」
「うーん………。ダメだ、全然分かんない」
情報が少なすぎて推理のしようがない。
「そうでござるね………。ではこれも後回しに………って全部後回しでござるよ!!」
「まあまあ、いくつか情報も手に入ったし、大きな収穫だよ」
「では、この情報を後で皆に伝えて………」
「ちょっと待って!!!!」
うちは霞ヶ峰さんの話を止めた。
「む?どうしたでござるか?」
「この情報、まだみんなに伝えないほうがいいと思う」
「ど、どうしてでござるか!?」
「まだ『裏切り者』の問題がまだ解決してない以上、無闇に情報を出すのは良くないよ。それに、もし勘づかれたらうちらの命が危ないかもしれない」
「ひぇ!?では拙者ら、もしかしてとんでもない情報を手に入れてしまったのでは………?」
「それはまだなんとも言えないけど………。とにかく、しばらくこれはうちらだけの秘密にしよう」
「わ、分かったでござる。2人だけの秘密でござる」
裏切り者は1人しかいないとみんな思っているが、実際は全部で5人。しかも誰一人分かってない。そんな状況で黒幕に繋がる情報を公開するのはリスクが高すぎる。
「相川殿」
「ん?」
「相川殿は………裏切り者ではないでござるか?」
「え?ちょっと急にどうしたの?」
「真剣な話でござる。どうか、拙者の目を見て答えて欲しいでござる。拙者、仲間だと思ってた人に裏切られるのはもう嫌なのでござる」
「霞ヶ峰さん………」
うちの顔を見る霞ヶ峰さんの瞳には涙が浮かんでいた。きっと、これから先柴崎君みたいに本性を曝け出すような人が出てくる事を危惧しているのだろう。
「うちは裏切り者じゃないよ。って言っても信じてもらえないだろうけど」
うちはしっかり霞ヶさんの目を見て答えた。
「………………………。その言葉、信じるでござる」
「え?でも、証拠もなにもないけど……」
「拙者、自慢ではござらんが人間観察が得意なのでござる。普段の相川殿、そして今の目を見れば相川殿が嘘をついていないのは明白でござる」
霞ヶ峰さんは手を差し出してきた。
「秘密同盟の結成でござる!共に裏切り者を見つけるでござる!!」
「うん!!よろしくね!!!!」
こうして、改めて霞ヶ峰さんと協力する事を誓い合った。
これ以上邪魔するのも悪いなと思って霞ヶ峰さんの教室を出たうちは、小腹が空いたので食堂へ来ていた。すると、
「パシッ」
「パシッ」
中から、なにやら心地いい音が聞こえてくるのに気がついた。
「なんだろうこの音」
うちはドアを開けた。
中では、銀山さんが椅子に座って将棋盤と向き合っていた。しかし相手はいない。どうやら1人でやってるみたいだ。
「相川か、どうした?」
「お腹減っちゃって食堂に来たんだけど、将棋を打ってる音が聞こえて誰かな、って思ってさ。ごめん、邪魔しちゃったみたいだしすぐ帰るよ!」
うちはそそくさと帰ろうとする。さっきからみんなの邪魔ばっかりしてる気がするし、流石に罪悪感を覚えていたところだ。
「ま、待ってくれ!!全然邪魔じゃない!全然ゆっくりしてくれて構わないんだ!!」
しかし、銀山さんがうちを凄い力で止めた。
「い、いいの………?けど銀山さん、さっき集中してたでしょ?うちがいると気が散るんじゃない?」
「大丈夫だ!!むしろ大歓迎だ!!!!」
「そ、そうなんだ………。じゃあお言葉に甘えて」
銀山さんの不自然な様子に違和感を覚えながら滞在させてもらう事にした。
「銀山さん、お茶淹れるの上手だね。これ凄く美味しいよ」
「ありがとう。だがこれでも千野の淹れたお茶に比べたら天と地程の差があるな」
「千野君は別格だし、しょうがないよ」
うちは銀山さんと向かいあって座りながら先ほど淹れてもらったお茶を飲んでいた。食堂には珍しくうちらの他に誰も居なかったので、今は貸し切り状態だ。
「銀山さん今1人で将棋やってたけど、もしかしてやってたのって詰将棋?」
「よく分かったな。もしかして相川も将棋出来るのか?」
「数えるくらいしかやった事ないよ。おじいちゃんが将棋やってて、昔一緒に指したことあるってだけだから」
おじいちゃんがやたらと目をキラキラさせながら教えてくれてたからよく覚えている。
「そうか………。じゃあもし相川が良ければ、今から一局指さないか?相手がいないから退屈だったんだ」
「ええ!?うち素人だし、銀山さんとじゃ勝負にならないよ!?」
「私はこれでいい」
すると、銀山さんは自分の駒のうち、飛車と角に香車そしてを桂馬を弾いた。
「えーっと………6枚落ち?」
「もし不満なら銀も無しでいいが」
銀山さんはニヤリと笑う。完全に舐められてるな、うち。なんか燃えてきた。
「いや、不満はないよ。けど銀山さん。あなたはうちを舐めすぎている。その油断が命取りだよ。うちがけちょんけちょんにしてあげる」
「面白い。君に私を打ち負かす事が出来るかな?」
お互いに何故か変なテンションになった状態で将棋はスタートした。絶対打ち負かしてやる。
「王手」
「嘘でしょ!?また負けたーー!!!!」
うちは王手を宣告され、テーブルに突っ伏す。これで5連敗だ。
「だが、先程の一手はかなり焦ったぞ。危うくこちらが王手を取られるところだった」
そう言いつつも、銀山さんに焦りの表情は一切見られない。
これが王者の余裕ってやつか。
「………完敗です。参りました」
「ありがとうございました」
うちらはお互いに礼をする。
「いやぁ、本当に強いね銀山さん。もしかして銀山さんより強い人いないんじゃない?」
「そんな事はない。私より強い者など世の中にはいくらでもいる」
銀山さんは2杯目のお茶を飲みながらそう言う。
「銀山さんってさ、なんで将棋を始めたの?」
「私が将棋を始めた理由か?」
「うん、だってこんなに強いって分かったんだもん。そりゃ気になるよ」
「………………ふふっ」
すると、銀山さんが静かに笑みを浮かべた。
「えっ?」
「いや、すまない。どうしたら強くなれるのか、と聞かれる事はよくあるのだが、なんで将棋を始めたのかと聞かれたのは初めてだ」
「そうなの!?普通気になると思うけど……」
まあ銀山さんの将棋の実力を知ってる人だったら、強さの秘訣の方が気になるのかもしれない。
「私が将棋を始めた理由か………。少し長い話になるが、それでもいいか?」
「うん!!」
「そうか。では遠慮なく話させてもらおう」
「私の生まれた家は普通の一般家庭だった。両親に厳しく、そして何不自由なく育てられた私は、5歳の時テレビで初めて将棋という物を知った。だが、その時はまだ面白そうだと思いつつも、自分でやってみようとまでは思わなかった。
しかし、その数ヶ月後に家にやってきた近所の老人から『近くに将棋教室を開いたのだが、ぜひ生徒として入ってみないか』と勧誘を受けたのだ。私はあまり乗り気ではなかったが、両親の強い勧めもあり、結局通うことになった。私は、最初は言われるがまま通っていただけだったが、次第に将棋の面白さに気づき、通うのが楽しみになってきていた。
だが、そんなある日、両親が交通事故に巻き込まれたとの知らせが入った。後から聞いた話だと、トラックと正面衝突したらしく、救出された時には既に死亡していたらしい。
私はちょうどその時将棋教室に通っていたから無事だったが、1人取り残される事になった。
そんな私を引き取ってくれたのが、私を教室へ誘ってくれた老人だった。その人は独り身の私の世話をしてくれるだけでなく、私を実の娘のように可愛がってくれた。そして、私の実力がついてくると、私を奨励会へと推薦してくれたんだ。
今の私がいるのは、間違いなくあの人のおかげだ。だから私は将来プロになり、あの人、そして生まれてから私を育ててくれた今は亡き両親に恩返しがしたい。そう思って今も将棋を続けている」
「すまない、話すのは少し苦手なんだ。それにここまで長く喋ったのは久しぶりで………おい相川!?」
銀山さんは涙をぼたぼた流しているうちを見て慌てふためいている。
「ひぐっ………だって………銀山さんが良い人すぎて………感動しちゃって………」
銀山さんは呆気に取られた表情になると、
「ふふっ………ははははははは!!」
大声で笑い始めた。
「ふえっ?」
「こんな私のつまらない話で泣いてくれる人がいるとは。びっくりして思わず笑ってしまったよ。いやぁ、こんなに笑ったのは何年ぶりだろうか。あ、これよかったら使ってくれ」
そう言って懐からハンカチをを取り出し、うちに渡してくれた。
「ありがとう………うちそんなおかしな事言ったかな?」
「いや、相川は何もおかしな事は言ってない。私はあまりにも驚いた時笑ってしまう癖があるんだ。気を悪くさせてしまったのならすまない」
「あーそうなんだ!というか、うちもびっくりしたよ。銀山さんがあんなに笑うの初めて見たから」
「………君が話し相手だからかもしれないな」
「え?」
駒を箱にしまいながら銀山さんが言った。
「私に初めて友達になろうと声をかけてくれた君とだからこそ、こうして心から笑いあったりする事が出来るのかもしれない」
「そ、そうなの?」
「ああ。だから君にはとても感謝しているんだ。ありがとう」
「えっ………こ、こちらこそ、いつもありがとう」
なんか恥ずかしくて変な返事しちゃったよ。面と向かって堂々と感謝の気持ちを伝えられる銀山さんはすごいなぁ。
「あ、そうだ!!うち、これから銀山さんの事下の名前で呼んでもいい?」
「なっ!?下の名前……?」
「そう!うちの事も下の名前で呼んでいいからさ!どうかな?」
「………………」
すると、銀山さんは顔を赤くしたまま固まってしまった。
「もしかして嫌だった?」
「………!いや、呼んでくれるのは構わないが………呼ぶのはもう少し待ってもらえないか?人の名前を呼ぶのは緊張するからな………」
「ん???」
最後の方は聞こえなかったけど、とにかく許可をもらえたので名前で呼ぶ事にした。
「ありがとう!!改めてよろしくね、香織ちゃん!!」
「……………!!!!!!!!」
すると、銀山さんの顔が一瞬で茹でダコのように真っ赤になった。あれ、この光景前見たような………?
「は、恥ずかしい………………同級生に名前を呼ばれるのがこんなにも照れるような事だとは………」
ん?もしかして、同級生に名前を呼ばれるの初めてだからこんなに恥ずかしがってるの?へぇ〜。これはまた面白い。ちょっとからかってみよう。
「どうしたの、香織ちゃん?」
「な、何でもないっ!」
「何でもなくないでしょ香織ちゃん。うちは香織ちゃんの友達なんだから悩み相談くらい乗るよ。ねえ香織ちゃん………」
ガタン!!
名前を呼ばれまくった香織ちゃんは、うちが喋ってる途中で顔をテーブルに突っ伏してそのまま動かなくなってしまった。
「ギャーーー!?香織ちゃん!!」
最後のはやりすぎたけど、また香織ちゃんとの絆が深まった気がした。
生存者
LA001 相川 凛《外国語研究家》
⁇002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》
⁇003 喜屋武 流理恵 《調理部》
SA004 銀山 香織《棋士》
⁇005 黒瀬 敦郎《バスケ部》
⁇006 柴崎 武史《歴史学者》
⁇007 霜花 優月《狙撃手》
⁇008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》
⁇009 千野 李玖《茶人》
MC010 独島 灯里《サブカルマニア》
⁇011 飛田 脚男《バイク便ライダー》
⁇012 中澤 翼 《フットサル選手》
⁇013 錦織 清子《テニスプレーヤー》
⁇014 分倍河原 剛 《空手家》
⁇015 北条 業 《???》
⁇016 万斗 輝晃 《情報屋》
⁇017 幸村 雪 《激運》
残り14人