(非)日常編③
軟禁生活10日目 16:30
香織ちゃんを部屋に送り届けたうちは、売店にスナック菓子を買いに来ていた。前来た時見つけた「ポテトチップス フルーツ盛り合わせ味」がずっと気になっていたのだ。なんかよく友達に「凛ってフルーツ関連になると途端に頭おかしくなるよね」なんて大変失礼な事を言われてたけど、これに関してはどう考えてもうちが正しい。だってフルーツは生で食べたら美味しいんだから、他の製品に加工しても美味しいに決まってんじゃん。例えばフルーツラーメンとか、フルーツ味のホットドックとかね。
なんて事を考えながらお目当ての物を探していると、
「おや、相川殿。こんな所で会うとは奇遇ですな」
雑貨のコーナーを物色している千野君と出会った。
「千野君も何か買いに来たの?」
「拙僧は座布団を買いに来ました。普段和室で過ごしているせいか、どうもイスに座るのに違和感を感じてしまうのです」
「そっか、お茶を点てるのは基本的に和室でだもんね。でも、座布団なんてここにある?パッと見た感じ見当たらないけど………」
「そう、さっきから探しているのですが拙僧の探し方が下手なのか、はたまたそもそも置いていないのか分かりませんが、一向に見つかる気配がなくて困り果てていた所です」
確かにこの乱雑に並べられた物の中から見つけるのは、骨の折れる作業かもしれない。
「じゃあうちも探すの手伝うよ。2人で探した方が効率もいいし」
「ですが……それは相川殿に申し訳ないですな」
「いいのいいの!座布団1枚探すくらい気にしないで大丈夫だよ」
「ではお言葉に甘えて、お力をお借りしましょう」
そう言ってうちらは座布団を探し始めた。
「千野君!座布団あったよ!!」
探し始める事20分。うちは奥の方にある座布団を見つけた。
「本当ですか。おお!これは……」
「どう?若干サイズが小さめな気がするけど……」
「いや、拙僧にとってはこれくらいがちょうどいいのです。礼を言いますぞ、相川殿」
千野君はとても満足してるみたいだ。
「相川殿。先程のお礼といっては何ですが、拙僧の淹れた茶を飲んでは頂けないですか?」
「え!?でもうち座布団見つけただけだよ。それだけで千野君のお茶貰うのはちょっと申し訳ないよ」
「どんな小さな事であれ必ず恩は返す。これが拙僧の信条なのです。なに、拙僧の才能にかけて決して後悔はさせません。どうですかな?」
そこまで言われたら断る理由は無い。
「じゃあ……お願いしようかな」
「ありがとうございます。では拙僧の部屋でおもてなしさせて頂きます」
こうしてうちらは買い物を済ませてから千野君の部屋に行く事になった。
3F 千野の個室
「お邪魔しまーす」
千野君の部屋は、当たり前だが構造自体はうちの部屋と全く一緒だった。違うのは、お茶を淹れるのに必要な道具があちこちに置かれてる事と………。
「あれ?千野君、ベット使ってないの?」
「拙僧は地面で寝る事に慣れてるのでベットじゃ寝付けないのですよ」
ベットには茶道具等が置かれていて、完全に物置と化していた。その代わり、地べたには布団と枕が綺麗にセッティングされている。
「さて、では茶を淹れる準備をしますので少し待って頂けますかな?」
「うん!というか、千野君がお茶淹れてる姿見ててもいい?」
「それは構いませんが………相川殿も物好きですな」
そう言って千野君は準備を始めた。
「は〜〜〜〜〜!美味しかった」
「満足して頂けたのなら何よりです」
うちは千野君が淹れてくれたお茶を飲み干し、ほっと一息をついた。千野君のお茶はどうだったかと言うと、結論から言って淹れるまでの千野君の所作、音、そして味、その全てが芸術と言っても過言ではない、最高のお茶だった。
さっき淹れてくれた香織ちゃんも自分で言ってたけど、素人とプロじゃステージが違うよ。うん。
「よければお菓子もどうぞ」
「ありがとう!!いただきます!!」
うん、お菓子も最高に美味しい。もしかしたらうちにとっての天国はここなのかもしれない。
「ふむ………相川殿はとても美味しそうに食べたり飲んだりしますな」
「そうかな?あ、でも結構それ言われる」
お母さんがうちを見てよくそう言ってた気がする。
「………………」
「………………」
千野君はうちの顔を見ながらうんうんと頷いている。
なんか孫の姿見て満足してるお爺ちゃんみたい。
こっちも見ててほっこりする。
「ねえ、せっかくだからさ、千野君の話色々聞かせてよ!」
うちはこの際千野君に色々聞いてみることにした。
「拙僧のですか?」
「うん!例えば超高校級の才能についてとかさ!」
「超高校級の………拙僧の茶人の才能についてですか」
「そう!あ、でも千野君はなりたくて茶人になったわけじゃないんだよね………ごめん、無神経な事言っちゃって」
確か自己紹介の時、僧になりたかったけど家柄のせいで仕方なくお茶を淹れるようになったって言っていた。ああ、また人の気持ちを考えずに喋ってしまった。うちの悪い癖だ。どうしてこうも無神経なんだろう。
「相川殿、そこまで落ち込む必要はないですよ」
「えっ!?なんでうちが落ち込んでるって分かるの?」
「相川殿の表情が全てを物語ってます」
…これもうちの悪い癖だ。
「ですが、相川殿が気を落とす必要は全くありません。むしろ拙僧の話を覚えていてくれて感謝しているくらいです」
「そ、そうなの…?」
「そんな相川殿には話してもいいかもしれませんな。…拙僧が僧を目指している理由、それは束縛され、苦しんでいる方々を仏さまの智慧を活かして救いたいからです」
「束縛………?智慧を活かして…?」
千野君はいつもと変わらない口調で静かに話し始めた。うちは普段聴き慣れない言葉に一瞬困惑した。
「拙僧の家は茶道の名家だというのは前説明しましたが、そこがどのような家柄なのかは言っていませんでしたね。千野家ははっきり言って………拙僧にとっては地獄でした」
「地獄?厳しかったって事?」
「そんな生易しいものではありません。その家に生まれた者は1年もしないうちから茶道についてのあらゆる知識、技術、そして千野家以外の人間がいかに無能で、低俗で、野蛮で、傲慢だというのを教わります」
「え!?じゃあ自分達以外の人間を見下してるの?」
「その通りです。自分達以外の人間をゴミ、いや蛆虫としか見ていないのでしょうね。そして当然、千野家の三男として生まれた拙僧はこの教えを深く脳に刷り込まされました。俗に言う洗脳という奴ですな」
「三男って事は千野君、お兄さんが2人いるの?」
「兄が2人と姉が2人です」
「じゃあ………そのお兄さんお姉さんは今……」
「……………………」
千野君は、しばらく沈黙した後悲痛な表情で口を開いた。
「千野家の子供達はある程度茶道の実力がついたと分かると、すぐある事をさせられます。それは………………兄弟同士での潰し合いです」
「え?」
「兄弟間で茶道の腕を争い、無能だと判断された子供はすぐ家を追放される。そんな争いをさせられるのです。拙僧も勿論参加させられました。そして結果は………」
「千野君が………1番になっちゃった。そういう事でしょ?」
「よく分かってらっしゃる。そう、手を抜く事を許されなかった拙僧は全力で取り組んだ結果、兄弟の中で1番になってしまったのです。そうなると必然的に他の兄弟は不要だと判断される。案の定、他の兄弟はそれぞれ別の家に追放されました。無能、というレッテルを貼られて。その時の1番上の姉が拙僧に言った言葉が未だに忘れられません」
「あんたさえいなければ私は1番になれたのに!!私があんな屑共と一緒なんて………絶対あり得ない!!!!………あんたは絶対に許さない。いつか必ず………………殺してやる」
うちは一瞬背筋がゾワッとするのを感じた。現代でそんな家が存在したなんて。とてもじゃないけど信じられない。
「こうして1人残された拙僧は、千野家の人間に監禁され、ひたすら洗脳という死ぬより辛い日常を過ごしました。こうして出来上がったのが千野李玖という人間なのです」
千野君は淡々と自分の生い立ちを話す。
「じ、じゃあさ…………千野君はうちらの事、今もそう思っているの………?無能とか、低脳とか………」
うちがそう言うと、千野君は静かに首を横に振った。
「とんでもない。確かに拙僧はある時期まではそのように思っていました。千野家は誇り高き一族であり、周りの低脳人間とは違う。千野家こそが茶道界の頂点にふさわしい、と。しかしそんな時拙僧が出会ったものが仏教なのです」
「仏教は、家に縛られ、自由というものを知らなかった拙僧に救いを下さったのです。それに感動した拙僧は、今度は自分が教えを説く側になって拙僧と同じような境遇の人達を救いたい。そう思ったのです」
千野君は話が一区切りつくと綺麗な動作でお茶を飲み干した。
うちは千野君が茶人ではなくてお坊さんになりたいのはただ単に好みの問題だと思っていた。お茶を点てるのが好きじゃないからお坊さんになろう。そんな軽い気持ちだと思っていた。けど実際は幼少期から自由を奪われ、うちには到底計り知れないような思いをしてきたんだ。
「大丈夫!!千野君ならきっと立派なお坊さんになれるよ!!」
うちはいつの間にか千野君を励ます為に声を出していた。
「相川殿………?」
「うち、千野君が今までに抱いた悲しい気持ちとか、辛い気持ちとかを完全に分かる訳じゃない。けど、ここまで耐えてこれた千野君だったら絶対なれるよ!うちが保証する!!まあ、根拠は特にないけどね…」
うわぁ…。根拠がないのにこんな綺麗事をペラペラとよく言えたもんだなぁ。自分でもドン引きだよ…。
「……いやぁ、やはり相川殿は拙僧の好みの性格の方ですな」
「ふぇっ?」
千野君が急に脈絡もない事を言い出したから思わず変な声が出てしまった。
「拙僧は、相川殿のような理論など細かい事を考えずにとにかく先へ進もうとする人が好きなのですよ。逆に理論で詰めてくるような人は苦手ですな。………拙僧の家は全員、そのような性格でした」
「そ、そうなんだ………。ありがとう」
これって褒められてるって事でいいんだよね?
「ふぅ……。まさか人を救う職業を目指す者が他の人に救われるとは思ってもいませんでした」
そう言って千野君はうちの前に改めて座り直すと、
「相川殿………。これから先、様々な困難が立ちはだかるかと思います。されど、どうか自分を見失わず、最後まで今の相川殿らしくいてください。それがきっと、皆さんの希望になるはずです」
「希望………?」うちは首を傾げる。
「そう、そして希望こそが自由に繋がる。拙僧はずっとそう信じてきました。希望に理屈など存在しません。それこそ相川殿のように物事を深く考えずにひたすら突き進めば希望は必ず手に入るはずなのです。どうか、それを最後まで忘れないでほしい。これが拙僧の切実な願いです」
「千野君………。うん、分かってる。うちは絶対、諦めない。必ずここから出て希望を見つけるよ。千野君も一緒に頑張ろう。自由を手に入れるんでしょ?」
「………ええ。お互い、頑張りましょう」
うちらはお互いに握手をした。最後の千野君の言っている事はちょっと分からない部分もあったけど、脱出を目指す仲間というのには変わりない。
その仲間とより一層、絆が深まったひと時だった。
軟禁生活14日目 7:00 相川の個室
「オマエら、朝7時になりましたカバ!さぁ今日も1日張り切っていきましょうカバー!」
「…………朝か」
うちはいつものように朝のモノカバアナウンスで目を覚ました。
ベットから起き上がり一度大きく伸びをする。
そして自然な流れで充電していたカバフォンを確認する。
「よし、今日も早起き成功っと」
今日のモノマネー増減額を見ると、「プラス300円」と表示されている。
2日目で早起き(7:30までに起床)すると300円が入る事に気がついたうちは、毎日7時には起きるように心がけてきた。おかげでモノマネーをかなり貯める事が出来ている。
「って言ってもモノマネー貯めるだけじゃ脱出になんも意味ないんだけどね………」
うちはため息を吐きながら今日までの日々を思い出していた。
今日で閉じ込められてから2週間。未だに脱出への有力な手がかりは見つからず、外からの助けが来る気配もない。うちらは手がかりが見つからない焦燥感といつコロシアイが起こるか分からない不安に徐々に押しつぶされそうになっていた。けど、ここ数日でうちらの絆は確実に深まったと思う。B棟にあるプールでプール大会を開いたり、バスケをしたり………。
だから、少なくとも、うちらの中に誰かを殺すなんて事を考えてる人はいないって信じている。
だが、1つ気がかりがある。それはモノカバが1回目の裁判以降、何も仕掛けてこない事だ。そろそろまた動機等をうちらに配ってきてもおかしくない。常に警戒を怠らないようにしないと。
「よし、着替えよう」
うちは外に出る為の準備を始めた。
「凛さん!!おはようございます!!!!」
「お、おはよう業ちゃん。朝から元気だね………」
準備を終えて廊下に出ると、満面の笑みを浮かべた業ちゃんが目の前に立っていた。うちは一瞬心臓が止まるかと思った。ホラーかよ。
「ああ、今日も朝から凛さんの顔が見られて幸せです!!!!これだけで私は1日頑張れます!」
「それは分かったからもうちょっと声のボリューム落としてね………。まだ朝早いし」
「ハッ!?ごめんなさい、少し興奮しすぎてしまいました!」
業ちゃんは慌てて口を押さえる。
1回目の裁判を終えてから、業ちゃんは朝うちが廊下に出ると必ずこうしてドアの目の前に立って待っている。本人曰くうちと1秒でも多く一緒にいたいとの事だったが、ここまでくっつかれると正直迷惑に思えてしまう。
前までは良い友達になれると思っていたんだけどなぁ。
まさかこんな関係になるとは………。
すると、奥の方からドアを開ける音が聞こえて、
「おはよう、相川。それに………北条もおはよう」
いつも通り待ち合わせをしていた香織ちゃんがやってきた。
「おはよう、香織ちゃん」
「おはようございます、銀山さん」
最近はうちと業ちゃん、それに香織ちゃんの3人で食堂に向かうのが日課となっていた。
「あれ?銀山さんは今日食事当番ではないですよね?だったら別にもう少し遅く起きても良かったんじゃないですか?」
「君にそれを言われる筋合いは無い。それより北条、相川にベタベタしすぎじゃないか?相川が迷惑そうにしているぞ」
「あなたの目は節穴ですか?凛さんが私の事を迷惑がるなんて、隕石が凛さんピンポイントに落ちてくるくらいあり得ないです」
「なぜそう言い切れる。相川は優しいからな。本当は嫌でも言い出せないだけじゃないのか?なぜ相川の気持ちを考えてやらないんだ」
「それこそあなたに言われる筋合いはないですよね。それに私は凛さんの最大の理解者です。凛さんの気持ちなんか手に取るように分かります。付き合いの浅いあなたとは訳が違うんですよ」
「………………」
「………………」
2人はお互いに睨み合う。最近、この2人はとてつもなく仲が悪い。今みたいに会うたびに壮絶な口喧嘩を繰り広げ、お互いの顔も見たくないとまで言う始末だ。それも、何故かうちが居る時に限ってよく喧嘩している気がする。前はそこまで仲悪くなかったのに……。
「2人ともストップ!!喧嘩はダメ!」
「凛さん!?」「相川……」
「喧嘩なんかしてたらそれこそモノカバの思う壺だよ!はい、仲直りの握手して!」
「………すまなかった、北条。言い過ぎた」
「いえ、私も少し熱くなりすぎました」
2人を握手させ、とりあえず喧嘩を終わらせる。
「ほら、早く食堂に行こう!うちら今日は当番なんだから」
「そ、そうですよね!!私と凛さんの2人きりで作るんですよね!!」
「君達の班には独島もいるだろう?」
「独島さんはどうせ寝坊して来ないですよ」
「まさか……君はわざと独島を班に入れたのか……。独島が来なければ相川と2人きりになれるからという私欲丸出しな理由で……」
「別に悪いことはしてないですよね?正しい手順で班を組んだだけですか」
「………」
「………」
「何、また喧嘩?」
「違います!!」
7:55 1F 食堂
集合時間付近になると、いつものように当番以外の人達が集まってきた。
ちなみに食事当番の班は、3人居なくなり柴崎君や霜花さんのように単独行動をとっている人もいる為、こんな風に新たに組み直された。
A班 相川 北条 独島 (霜花)
B班 喜屋武 万斗 ジャック 千野 (幸村)
C班 銀山 分倍河原 黒瀬 霞ヶ峰 (柴崎)
決め方は公平にくじで決めたのだが、うちと同じになって「運命だ」って大騒ぎしてた業ちゃんや、ジャック君と同じになって発狂した万斗君など、大騒ぎしてる人もいたけどなんとか決まった感じだ。
一応柴崎君達も班には入っているけど、恐らく来ることはないだろう。幸村さんに関してはまだ来るのは難しいだろうってジャック君は言ってたから、そこは幸村さんを信じるしかない。
そして、8時になりいつものメンバーが揃った。今日は普段寝坊してくる独島さんが当番で既に居るので(当番の時間には遅れてきたけど)、後から来る人はもう居ない。
「よーし!じゃあ全員手を合わせろよ!!いただきます!!!!」
「いただきます!」
すっかり板についた黒瀬君の挨拶で朝食が始まった。がその時だった。
「カバカバカバーーーーーー!!オイラもお腹減ったから混ぜてカバーーー!!!!」
「うわっ!?」
「ギャーーー!?あ、熱いでござる!?味噌汁が服に溢れたでござる!!」
突然モノカバが霞ヶ峰さんの座っている足元から飛び出してきた。
そのせいで霞ヶ峰さんは飲んでいた味噌汁をぶちまけてしまった。
「モノカバ!!!!テメェ何しに来たんだ!」
「お引き取り願えますかな。貴殿と話したい者など、この場には1人もおりません」
「今みんなでご飯食べてるんだから邪魔しないでよ〜」
「グズン……そんなに罵倒しなくてもいいカバ………オイラ、オマエら生徒の事を常日頃から考えて………」
「御託はいい。私達の前に現れたという事は何か用があるのだろう?ならさっさと要件を言え」
「チェッ!!どいつもこいつもオイラに冷たくしやがって。いいもん!オイラグレてやるカバ!」
モノカバはピョンとジャンプして机の上に乗った。
「机の上に乗らないでください。食事をする場所ですよ」
「うるせーカバ!!要件言うんだから黙ってろカバ!その要件とは………………。オマエら、最近講義出てないだろカバ!」
「講義?あの微塵もためにならない無駄な時間の事かい?」
「失礼カバ!!大学生だからって遊んでばかりじゃ駄目カバ!!ちゃんと講義に出ないと単位取れないカバーー!」
うちらは学級裁判後、一切講義には出てない。単位制度など一刻も早く脱出したいうちらにとっては無意味に等しいし、モノカバの仲間であろう講師からも何の情報も得られない事が判明した時点で出る意味は全く無いからだ。
「何言われようがうちらは絶対出ないよ。そんな事してる暇があったら少しでも脱出の手がかりを探すよ」
「凛さんの言う通りです。さっさと消えてください」
「そうでござる!!!!さっさと消えるでござる!あと味噌汁こぼしたの謝るでござる!」
「………帰れ」
「……………………ふーん、オマエらそう言う事言っちゃうんだ。まあ、その反応は予想内だけどカバ」
モノカバは静かに呟き始めた。
「あ?なんか言ったか?」
「じゃあそんなオマエらには罰としてキツーイ『動機』を与えちゃうカバ!」
「動機………」
全員の顔色が一瞬で変わる。
「そうカバ。そしてその内容は………」
「今日から1週間後に中間テストをするカバーーー!!そして点数が1番下だった奴は………………処刑されるカバー!!!!」
は?????
「今、なんて言ったでござるか………?処刑なんていう物騒な単語が聞こえた気がするでござるが………。拙者の聞き間違いでござろうか」
「現実逃避は駄目カバよ霞ヶ峰サン。オイラは確かに『処刑』と言ったカバ!」
「つまり、ボク達の中から必ず1人は死者が出るって事………?」
「その通りカバ!!前回の動機は初めてだしちょっと甘かったからカバね、今回は厳しくいかせてもらったカバ〜」
「ふざけないで!!!!!!」
うちは思わず机をドンと叩いて立ち上がっていた。
「誰かが必ず犠牲にならなくちゃいけない試験なんて、そんなの絶対に間違ってる!!今すぐ撤回して!!」
「何を寝ぼけた事を言ってるカバ。これこそがオイラのやりたかった事カバ。オイラの望む事はオマエら生徒同士によるコロシアイ。けどオマエら、ここ最近すっかり仲良くなっちゃってコロシアイする気配が全くなかったカバ。だからこうして動機を与えることによってコロシアイを促進しようとしているカバ」
「ですが、これは流石に疑問を感じざるを得ません。この動機でどのようにコロシアイを促進するつもりなのでしょうか?」
「はいはい細かいことは気にしなくていいカバ。はい、じゃあカバフォンにメッセージを送るカバよ〜」
すると、全員のカバフォンがピロリンと鳴った。
見てみるとメッセージが一件届いていた。
「告知 中間テスト実施について」
・今日から1週間後、中間テストを実施します。
・テストで得点が最下位の者は処刑されます。
・テスト範囲は今まで行ってきた講義内容全てです。
・また、テストを放棄した者も処刑対象となります。それと最下位で点数が同じ者が複数いる場合は、その最下位の者全員が処刑されます。
「はいこれでオマエら全員に通知が届いたはずカバ!ここにいない奴らもちゃんと理解できる、ということカバ!!」
うちは目の前が真っ暗になるのを感じた。今まで全員が助かる方法を、誰も死なずに済む方法をずっと考えて、みんなと接してきたのに。
けど、モノカバがそんな事を許すはずがなかった。モノカバはうちら嘲笑うかのように絶妙なタイミングで動機を出してきた。うちらを絶望させるために。
「じゃあ、オマエらの健闘を祈るカバ〜。さて、この中で犠牲になるバカは誰か、楽しみにしてるカバよ!!」
そう言ってモノカバは消えていった。
「とりあえず、みんな落ち着いてくれ」
香織ちゃんが、みんなに声を掛けた。けど、うちには酷くそれが遠く聞こえた。
「私に考えがある。それは………………………だ」
ああ、駄目だ。何を言っているのか聞き取れなくなってきた。
「何だ………!!ふ………………………よ!!!!」
黒瀬君が大声を出している。けど、それすらもう聞こえない。
「………………!!」「………………!」「……………」
みんなが口々に何か言っている。もう何も聞こえない。
いや、それは違う。
聞こえないんじゃなくて聞きたくないだけか。
今も聞こえるはずだけど聞こうとしていない。
これ以上悲しい事実を耳に入れたくない。
言葉を聞くのを拒絶しているんだ。
もう嫌だ。
また人が死ぬ。
また誰も救えない。
もう目の前で誰かが死ぬのは嫌なのに。
ああ、もしかして今のうちの状態。これが、
絶望、なのか
うちは、床に倒れて意識を手放した。
「凛さん!?しっかりして下さい!!!!凛さん!!!!!!」
「ジャック!!!!」
「分かっていル!!誰か運ぶのを手伝エ!」
「分かった、俺がやろう」
「………………………」
生存者
LA001 相川 凛《外国語研究家》
⁇002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》
⁇003 喜屋武 流理恵 《調理部》
SA004 銀山 香織《棋士》
⁇005 黒瀬 敦郎《バスケ部》
⁇006 柴崎 武史《歴史学者》
⁇007 霜花 優月《狙撃手》
⁇008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》
⁇009 千野 李玖《茶人》
MC010 独島 灯里《サブカルマニア》
⁇011 飛田 脚男《バイク便ライダー》
⁇012 中澤 翼 《フットサル選手》
⁇013 錦織 清子《テニスプレーヤー》
⁇014 分倍河原 剛 《空手家》
⁇015 北条 業 《???》
⁇016 万斗 輝晃 《情報屋》
⁇017 幸村 雪 《激運》
残り14人