ダンガンロンパ キャンパス   作:さわらの西京焼き

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お久しぶりです………。
忙しくて長らく更新出来なかったんですけど、やっと落ち着いてきたのでゆっくりと更新を再開したいと思います。
今回とてつもなく文章量が多いので、時間のある時に是非ご覧下さい。
(一応軽く前回までのあらすじを最初に載せておきました。前の話を忘れてしまったという方はそちらからご覧下さい)





学級裁判(後編)

〜〜〜前回までのあらすじ〜〜〜

 

 

 超高級の調理部、喜屋武流理恵殺しの犯人を突き止める2回目の学級裁判が始まった。相川達生徒は、前回と同じく集めた証拠から議論を進めていく。

 途中、裁判前から執拗に柴崎武史を疑う幸村雪の態度に疑いが集まり始め、彼女が犯人ではないかという話が出る。が、相川は喜屋武の運搬やプールの飛び込み台に喜屋武を吊すという行動が幸村1人では難しい事から共犯者の可能性を挙げる。そして議論が進んだ結果、体格的にも1人で十分作業が可能で、かつ事件前と後で格好が変わっている分倍河原剛が犯人、幸村が共犯者という結論に辿り着く。

 幸村は必死に否定するが、研究教室に残されたダイイングメッセージやアリバイの関係から分倍河原が犯人である事は逃れようのない事実であった。そんな中、ずっと無言を貫いてきた分倍河原がついに口を開いた。だが、第一声は自身が犯人だと疑われている事に対する肯定、否定ではなく、「よくやった」という幸村に対する謎の労いの言葉、そして普段の分倍河原からは考えられないような大きな笑い声だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

コトダマ一覧

 

 

[モノカバファイル②]

被害者は《超高校の調理部》、喜屋武 流理恵。

死体発見場所はB棟のプール。

飛び込み台で首を吊っている状態を発見された。

死亡推定時刻は20:25頃。

腹部に刺し傷が2箇所存在する。

 

 

[ロックされたドア]

爆発が起きた瞬間、アナウンスが流れると同時に全てのドアの鍵がロックされ、中にいる人間は出られなくなった。鍵がロックされた状態は15分程続いた。

 

 

[プールの照明]

夜でも泳げるように、21:00以降になるとプールサイドや天井に付いている照明が付くらしい。光度は相当高く、真っ暗でもプールの底面がはっきり見えるほど明るい。これを知っているのは相川と北条だけ。

 

 

[プールに沈んでいたカバフォン]

誰のか分からないカバフォン。水に沈んでいたからか、完全に壊れてしまっている。

 

 

[喜屋武の全身]

髪から服まで、全身がずぶ濡れだった。

 

 

[ジャックの検死結果]

腹部の傷の深さが違うらしく、1つは内臓付近にまで達していた。また、喜屋武の顔色はピンク色のかなり良い顔色をしていて、苦痛の表情は読み取れなかった。加えて、肺には水が入っていなかった。その為、溺死の可能性は低いとの事。

また、首の縄の痕から絞殺の可能性もないらしい。

 

 

[相川に送られたメッセージ]

爆発直前に送られてきた差出人不詳のメッセージ。霜花にも全く同じメッセージが送られている。

 

 

「スパイは既に動き出した。お前の対応の遅さが招いた結果だ。お前には誰も救えない」

 

 

 

 

[調理部の研究教室で起きた爆発]

20:40頃発生。ガスに引火した為爆発が起きた模様。火は天井に設置されたスプリンクラーとモノカバによって消火された。爆発の規模は教室全体を包み込む程であった。しかし、準備室には爆発は届かず、無事であった。

 

 

[切断されたガスホース]

机の下にあるガスホースが全て切断されていた。ここからガスが漏れていた模様。

 

 

[霞ヶ峰の証言]

喜屋武が首を吊っている写真が送られてきた為、霞ヶ峰が慌ててプールに行き喜屋武の死体を見た瞬間、死体発見アナウンスが鳴ったという。

 

 

[準備室の包丁の行方]

準備室から包丁が2本消えていた。一本は研究教室内に落ちていた。先端には血が付着している。もう1本の行方は不明。

 

 

[ダイイングメッセージ]

準備室にある冷蔵庫に、血文字で「TはKaであり、NはGである」と書かれた紙が入っていた。死の間際に書かれたにしては非常に達筆であった。

 

 

[調理部の研究教室にある机]

小学校の家庭科室にあるような机。

調理実習用にガスコンロが2つ端に設置されている。

下にはガスホースとガスの元栓、そして人1人入れるくらいの収納スペースがある。

 

 

[秘密の抜け道]

調理部の研究教室の端に隠されていた抜け道。入り口には血痕が付着している。どこに繋がっているかは不明。どうやら独島は知っているようだが………。

 

 

 

[幸村の証言]

19:50頃、柴崎がB棟の才能研究棟へ向かうのを見たという。

 

 

[銀山の証言]

19:00頃、幸村の個室で幸村と誰かが口論する声を聞いたらしい。

 

 

[それぞれのアリバイ]

20:25頃

黒瀬、独島、万斗→食堂

相川、霜花→保健所

分倍河原、幸村→トレーニングルーム

柴崎→不明

他→アリバイなし

 

爆発時

黒瀬、独島、万斗→食堂

相川、霜花→保健所

柴崎→不明

他→個室(点呼時に全員確認)

 

 

 

[購買の在庫]

昨日と比べて無くなっていたのは、ロープ、マッチ、救命キットの3つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

学級裁判(後編)

 

 

 

 

分倍河原 剛「いやァ、本当に驚いたぜェ。まさかこんな早くバレちまうとはなァ!!」

口調、表情など全てが別人のように変化した分倍河原君は豪快に笑っている。

前回の柴崎君の時もそうだったけど、「開いた口が塞がらない」とはまさにこの状況を指していると言えるだろう。実際、普段おしゃべりの人でさえ、口を開けて固まってしまっている。

 

 

 

分倍河原 剛「オイオイ、なんで黙るんだァ。本当のオレ様が登場したんだァ。何か言うことはねぇのかよォ」

分倍河原君は不満げな表情で絶句の表情を浮かべたうちらを見渡す。

霞ヶ峰 麻衣子「えーっと……………お主、分倍河原殿でござるよね?」

分倍河原 剛「あァ?オレ様はどこからどう見ても分倍河原 剛だろうがァ。寝ぼけてんのかァ?」

独島 灯里「う〜ん、もしかして本当に夢だったりするー?ちょっとほっぺつねってみよう〜。…いたい、やっぱ夢じゃないみたいー」

霜花 優月「それが貴方の本性ですか。やっと化けの皮が剥がれましたね」

相川 凛「霜花さん、まさかそれって………」

霜花 優月「そのまさかですよ。私はずっと彼を黒幕側の人間だと疑っていました」

霜花さんは分倍河原君を睨みながらそう言い切った。

銀山 香織「では………柴崎の言っていた裏切り者は分倍河原なのか………?」

香織ちゃんは動揺した表情のままそう尋ねる。

が、分倍河原君はここで衝撃の言葉を発した。

 

 

 

分倍河原 剛「少し違うなァ。オレ様は裏切るもなにも最初から黒幕の味方なんだよォ。つまり、『スパイ』って事になるなァ」

 

 

 

万斗 輝晃「す、スパイだって!?」

さらに分倍河原君は、自分がスパイだとハッキリ宣言した。

待って。理解が追いつかない。なんでそんな事言っちゃうの?うちと霜花さんに動機として送るぐらいの秘密なのに………。もしかしてバレても問題無いって事?

 

 

 

分倍河原 剛「でも、『裏切り者』もちゃんといるぜェ。それは……」

すると今度は、

北条 業「幸村さん、ですよね?」

名前を呼ばれた幸村さんは気まずそうに顔を伏せる。

分倍河原 剛「おい!?オレ様のセリフ取るんじゃねぇよォ!!」

万斗 輝晃「嘘、だよね………?ねぇ、雪さん………」

続けて発覚する衝撃の事実に打ちひしがれている万斗君が辛うじて声を出す。すると、

幸村 雪「………そうだよ。ウチは『裏切り者』。フランケンの仲間だよ」

幸村さんは顔を上げ、あっさりその事実を認めた。

 

 

 

ジャック「………騙して、いたのカ………ずっと、今まデ………」

すると、暫く口を閉じていたジャック君は呆然とした表情で幸村さんを見た。なんだかんだ言って仲良くしてた幸村さんの裏切りにショックを隠せない様子だ。

幸村 雪「………そうだよ。ずっとみんなを騙してた。ジャックきゅんも、それにみんなの事も」

ジャック「………!!」

分倍河原 剛「ちなみに、1回目の裁判が終わった後、幸村が精神的に不安定になっただろォ?アレも全部演技だぜェ」

ジャック「…………!?あれも全部、演技………?」

分倍河原 剛「オレが幸村に指示してやらせたんだァ。でもなかなかの演技だっただろォ?医者のお前でも本当に病んじまったって勘違いするくらいだからなァ」

ジャック「………………」

分倍河原 剛「……ハッハッハッ!!最高だなァ、今のお前の顔!!やっぱりなァ、人間の絶望した時の顔を見る時こそ、至福のひと時って言えるんだろうなァ!絶望こそがオレの欲望を満たしてくれる!!あァ、なんて素晴らしいんだろうなァ………」

柴崎 武史「……………()()?」

分倍河原君が両手を広げて叫ぶ。 

うちは、今すぐ目を閉じて耳を塞いでしまいたかった。もう何も聞きたくない。分倍河原君の狂った声を聞きたくない。表情を見たくない。そして………分倍河原君のようなスパイが、あと4人もうちらの中にいるという事実から目を背けたい。そんな気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

 

黒瀬 敦郎「な、なぁ。剛。嘘だろ。全部、お前の演技なんだろ………?」

黒瀬君は、語尾を震わせながら高笑いをしている分倍河原にそう問いかける。

分倍河原 剛「………ん?あぁ、そういやお前は前回も中澤に裏切られたんだったなァ。まァ、信じたくない気持ちも分かるけどなァ。ハハッ、けど残念ながらこれは演技じゃねぇよ、黒瀬ェ」

黒瀬 敦郎「嘘だ嘘だ嘘だ!!お前は、最初剣が飛んできた時オレの事庇ってくれたじゃねぇか!!それに何回もトレーニングしただろ!!あの一緒に過ごした時間は………全部嘘だったのかよ!!違ぇだろ!!少なくともオレは、仲間だと思ってたんだよ……」

黒瀬君は、裁判台に拳を叩きつけながら熱弁する。が、

分倍河原 剛「………全部予定通りだなァ。さすが()()()だ。俺の崇拝する人だけあるぜ」

北条 業「予定通り?どういう意味ですか」

すると、分倍河原君は頭をガシガシ掻いて面倒臭そうな表情を見せると、

 

 

 

 

 

 

分倍河原 剛「んあ?お前ら全員の反応、行動全てが()()()()()()だって事だァ」

 

 

 

 

 

 

また衝撃の事実を口にした。

黒瀬 敦郎「シナリオ通りって………なんだよそれ………」

分倍河原 剛「どうも何も、言葉通りの意味だァ。ここまでの展開は全てあの方が作ったシナリオの通りだって事だァ」

柴崎 武史「…………あの方っていうのはこのコロシアイの黒幕、って事でいいんスよね?」

柴崎君は非常に愉快そうな様子だ。

分倍河原 剛「それはノーコメントだァ。そこのモノカバから喋る許可を貰ってないからなァ」

モノカバ「そうカバ!!オマエらがそれを知るのは早すぎるカバ!!」

銀山 香織「では、今まで起きた事も全てそのシナリオ通り、という事か?」

分倍河原 剛「当然だろォ。()()()はお前らの行動全てを予測してシナリオを作ったからなァ。例えば例を出すと………相川」

分倍河原君はうちの名前を呼んだ。

相川 凛「え?」

分倍河原 剛「お前はコロシアイみたいな野蛮な事を心から憎み、仲間との団結を何よりも重んじる奴だって分かってたからなァ。お前が最初の動機の時点でパーティーのような催しを開く事は予測出来ていたァ」

相川 凛「……………………は?」

分倍河原 剛「さらに言うなら、そのパーティーを利用して中澤が誰かを殺す事も分かっていたし、その殺される相手が飛田だって事も分かってたァ」

相川 凛「嘘、でしょ………。じゃああなたは、それを全て知っていながら………止めなかったって事?」

分倍河原 剛「何でオレ様が止めなくちゃいけないんだァ?オレ様はお前らの敵だぞォ。むしろコロシアイが起きるように仕向けてるんだから大歓迎なんだよォ」

相川 凛「じゃあ………うちがパーティー提案しなければ………」

分倍河原 剛「それはねぇなァ。シナリオは完璧だからなァ、お前は必ずあのタイミングでパーティーを開いてた。これは偶然じゃなくて必然なんだよ。運命は変えられないって事だァ。ただ、一つ言えるのは………」

 

 

 

 

 

 

 

分倍河原 剛「お前の提案のせいで、2人の命が奪われたって事だァ」

 

 

 

 

 

 

 

うちは、一瞬で奈落の底へと突き落とされた気分になった。

うちはみんなともっと仲良くなって、それでコロシアイなんか起こさせないって思ってたのに。

それが初めからあの2人が犠牲になる事が決まってた?

それもうちがパーティーを開いたせいで?

そんなの、あんまりだよ………。

全部、無駄だったの………?

今までやってきた事は、なんだったの………?

 

 

 

 

北条 業「ちょっと凛さんになんて事言ってるんですか今すぐ取り消してください」

業ちゃんが隣の席の分倍河原君を睨みつける。

分倍河原 剛「オレ様は事実を言っただけなんだがなァ」

北条 業「ふざけるのも大概にしろ………。というか、あなたがスパイならとっとと知ってる事全部話して下さい」

分倍河原 業「………嫌だと言ったら?」

北条 業「拷問でも何でもして吐かせます。力で劣るとはいえ、やり方はいくらでもありますから」

分倍河原 剛「おいおいおっかねぇなァ。……でも、お前なら俺とやり合えるかもしれねぇなァ。何せ()()()()()()()()()()を持ってるんだからなァ」

北条 業「………!?私の才能を、知っているんですか………?」

分倍河原 剛「当たり前だろ。俺はスパイだぞ。当然参加者であるお前らのデータは全て頭の中に入ってる」

北条 業「……予定変更です。今すぐあなたを拷問します」

そう言い終えると業ちゃんは、なんと懐から包丁を取り出した。

相川 凛「業ちゃん!!!!」

霞ヶ峰 麻衣子「ギャァァァ!?ほ、包丁でござる!!」

万斗 輝晃「準備室のもう一本の包丁は業さんが持っていたのか………」

北条 業「これはそこのクズを痛めつけるために使う予定でしたが、あなたに使う事にします。………刺されたくなかったら、私の才能を教えてください」

柴崎 武史「ほら、霞ヶ峰さん。クズって呼ばれちゃってるッスよ」

霞ヶ峰 麻衣子「言われてるのは拙者じゃなくて柴崎殿でござるよ!なんて失礼な事言うのでござるか!!」

分倍河原 剛「………そんな事していいのかァ?学級裁判はまだ終わってないんだぞ?」

北条 業「そんなの知ったこっちゃありません。それに、クロはあなただって既に分かってるじゃないですか。もうこんな茶番を続けるつもりはありません」

分倍河原 剛「俺に拷問は通用しねぇぞ?それどころが返り討ちににして半殺しにしちまうかもなァ」

北条 業「上等です。やれるもんならやってみろ」

業ちゃんはそう言って包丁を振り上げた。

 

 

 

 

北条 業「………!?」

霜花 優月「何をやっているんですか貴方は……!」

けど、霜花さんがとてつもないスピードで駆け寄り、間一髪のところで業ちゃんの手首を掴んで抑えた。

北条 業「………離してくださいよ。じゃないとあなたも怪我しますよ」

霜花 優月「もしかしたら貴方が分倍河原さんに怪我をさせて私にまでペナルティがあったからどうするんですか。困るんですよ、そういった行動は」

北条 業「他人がどうなろうがどうでもいいんですよ私は」

霜花 優月「貴方が慕っている相川さん、もですか?」

北条 業「!?」

業ちゃんはゆっくりとうちの方を向く。

 

 

 

 

 

相川 凛「………もうやめてよ、業ちゃん」

北条 業「凛さん………!」

相川 凛「もう、誰かが誰かを傷つけるのは見たくないんだよ………」

うちはゆっくりと歩み寄り、業ちゃんが包丁を持つ左手を押さえた。

北条 業「………………………」

業ちゃんは包丁を持つ手を降ろすと包丁を地面に落とした。

北条 業「………………すみません。私とした事が、凛さんに悲しい思いをさせてしまうなんて。凛さんのパートナー失格ですね」

相川 凛「いやパートナーじゃないけどさ。とにかく、一回落ち着こう」

業ちゃんは一回深呼吸をすると、頬をパンと自分で叩いた。

分倍河原 剛「お?拷問はしなくていいのかァ?」

北条 業「………凛さんが悲しむのでしません。それに、別にあなたに聞かなくても黒幕に直接問いただせばいいだけの話ですし」

分倍河原 剛「オレ様としては拷問された方が面白い展開になったんだけどなァ。まあいっか、どうせ結末は変わんねぇんだ」

 

 

 

 

柴崎 武史「さて、無様に、そして惨めに取り乱してた北条サンも正気に戻った事だし、議論を再開させるッスか」

北条 業「……………………」

相川 凛「業ちゃん、今の柴崎君の言ってる事は間違ってないから。だからそんな殺意のこもった目で柴崎君を見ないで」

独島 灯里「でもさー、議論の再開って言ってもー………」

千野 李玖「議論する事などあるのですか?先程分倍河原殿が自白してしまいましたが」

分倍河原 剛「おう、オレ様が犯人だァ」

霞ヶ峰 麻衣子「こんな堂々としてる犯人、初めて見たでござるよ………」

分倍河原 剛「そりゃあオレ様がクロとしてオシオキされるのもシナリオのうちだからなァ。ほら、さっさと投票しろよ」

黒瀬 敦郎「………なぁ、本当に流理恵を殺したのは剛なのかよ………?」

すると、黒瀬君が改めてそう問いかける。

分倍河原 剛「しつけぇぞ、黒瀬。オレ様が犯人だって言ってるだろ?この事実はお前がどんなに喚こうが変わらねぇんだよォ。分かったかァ?」

黒瀬 敦郎「………そうかよ。だったら………」

黒瀬君はバンと拳を叩きつけてから分倍河原君を指差して、

黒瀬 敦郎「この裏切り者に投票だ!!コイツは絶対許さねぇ!!」

憤慨した様子てそう言った。

霞ヶ峰 麻衣子「そ、そうでござるよ!!分倍河原が犯人で間違いないのでござるから、投票に行っても問題はないでござる!」

独島 灯里「わたしもさんせーい。早く終わらせようよー」

モノカバ「アレ?もしかしてもう投票いっちゃってもいい感じカバ?なんか分倍河原クンが自白したせいでどうもあっさり終わっちゃいそうけど………まあこれもシナリオ上、仕方のない事カバね………」

 

 

投票を急かす分倍河原君と、今すぐ投票しようとするみんな。

確かに、犯人が自白してる以上、それを疑う余地はない。

うちも、自然とみんなに合わせて投票する考えにシフトしていた。

モノカバ「では、ちゃっちゃといっちゃいましょーか!」

 

 

 

 

 

 

これでいいんだ。結論はもう出た。

謎も全て解けたし………

 

 

 

 

 

 

 

モノカバ「投票タイ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

謎が全て解けた………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「ちょっと待って!!!!」

 

 

 

 

 

うちは、無意識のうちに投票を止めていた。

 

 

 

 

 

 

 

モノカバ「もう、相川サン急に大きな声出さないでほしいカバ!!」

分倍河原 剛「………………………あァ?」

霞ヶ峰 麻衣子「ど、どうしたのでござる相川殿?まだ何かあるのでござるか?」

相川 凛「あ………、えっと、その………」

思わず声に出してしまったけどうまく説明する事が出来ない。

でも、うちの本能がこのまま投票するのはマズいって訴えかけている。それだけは確かだ。うちが冷ややかな視線を浴びながら理由を説明しようとすると………

 

 

 

 

銀山 香織「……………………投票はまだだ。この事件、分倍河原が犯人だとしたら不自然な点がいくつかある。それを放置して投票するのは得策ではない」

北条 業「さすがは凛さん。やはりそこら辺の有象無象とは頭の出来が違いますね。というか、こんな状態で投票なんて出来るわけないでしょう」

香織ちゃんと業ちゃんがうちに同意してくれた。

分倍河原 剛「あァ?なんだお前らまで。何か言いたい事でもあるのかァ?」

北条 業「言いたい事があるかって?ありまくりですよ。今回の事件はまだ何もまだ解決してないですから」

銀山 香織「それに、私達は『犯人だ』という自白は聞いたが、『どのように犯行を行ったか』については、まだ何も君の口から聞けてないんだ」

そうだ。うちらはまだ完全に謎を解き終えたわけじゃない。まだ議論する点がいくつもある。

それに、分倍河原君は自分が犯人だと言うだけで詳細は一切話してない。それを聞くまで投票なんて出来ないよ。

分倍河原 剛「………それを全部オレ様に言えってかァ?めんどくせぇなー。オレ様が犯人って言ってんだからいいじゃ……」

相川 凛「なんで頑なに言おうとしないの?」

分倍河原 剛「………あァ?」

相川 凛「やましい事が無いなら話せる筈だよ。それに、分倍河原君はシナリオ?とやら通りにこれからオシオキを受けるんでしょ?だったら真実を話した所でなんの問題もないよね?それとも何か話せない事情でもあるの?」

柴崎 武史「おぉー!グイグイいくっスねー!!」

北条 業「黙ってろ生ゴミが」

分倍河原 剛「………言ってくれるじゃねぇかァ。分かったよ、全部話しゃあいいんだろォ?」

そう言って軽く舌打ちすると、分倍河原君は一から話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

分倍河原剛「まずオレ様は幸村に喜屋武に向けてチャットでメッセージを送らせたァ。『話があるから調理部の研究教室に来てくれ』ってなァ。そしたらアイツ、ノコノコやってきやがったよ。幸村の事は全く疑ってない様子だった。本当、お人好しでバカな奴だよなァ」

万斗 輝晃「なっ………!?流理恵さんの事をバカにするな!!この裏切り者が!!!!」

千野 李玖「万斗殿、堪えてください。今は彼の話を聞くべきですぞ」

万斗 輝晃「………クソ」

 

 

 

分倍河原 剛「そんで幸村が喜屋武の気を引いているうちに、オレ様が背後から包丁でブスリと刺したわけだァ」

霜花 優月「傷口が2つあるのは何故ですか?」

分倍河原 剛「………あ、あァ、そりゃァちょっとビビっちまったんだよ。だから1回失敗しちまって2回刺す羽目になっちまった。それだけだァ」

霜花 優月「……………」

分倍河原 剛「けど、それだけじゃ芸がねぇからなァ。お前らの言う通り、死因を偽造する為にガスホースを切ってガスを部屋に充満させて、喜屋武を一酸化炭素中毒死させることにした。幸村に手伝わせてなァ」

幸村 雪 「…………………………」

銀山 香織「ガスホースの場所など余程詳しく調べない限り分からないはずだが………、君がスパイだとすれば場所を知っているのも当然か」

相川 凛「…ダイイングメッセージを書いて冷蔵庫に入れたのはあなたなの?」

分倍河原 剛「あァ。少しでも裁判を盛り上げる為に入れておいたんだが………。どうやら大成功だったみたいで良かったぜ」

黒瀬 敦郎「何が大成功だこのクソ野郎が!!」

あのダイイングメッセージは分倍河原君が偽造した物だったのか……。

やっぱり喜屋武さんが書いた訳じゃなかったんだ。

 

 

分倍河原 剛「その後、オレ様が喜屋武を担いでプールまで行って吊るす間に、幸村に研究教室を爆破させた。やり方はお前らがさっき話してた通りだァ。予め売店から持ってきてたマッチで火をつけてガスが充満した部屋にそれを投げ入れた」

相川 凛「幸村さん、それは本当?」

幸村 雪「………………何でいちいちウチに聞くの。全部本当だよ。フランケンの言った通り」

幸村さんはバツが悪そうな様子で答えた。

霜花 優月「爆発を起こした理由は?」

分倍河原 剛「そりゃあ裁判を盛り上げる為に決まってんだろォ。シナリオには確かにオレ様が誰かを殺して、裁判で負けて死ぬって筋書きだけどなァ、そこにはただ死ぬんじゃなくて極力難しい謎で、しかも裁判が盛り上がるような殺し方にしろって書いてあるんだァ。だからオレ様はわざわざこんな手の込んだ事した。どうせ負けて死ぬのは決まってるしなァ。少しくらいド派手にやってやろうと考えたんだァ」

霞ヶ峰 麻衣子「最終的にクロになるのが分かりきってるからそんな大胆な行動が取れたのでござるね……」

 

 

 

分倍河原 剛「そんで喜屋武を吊るした後は、その写真を撮って霞ヶ峰に送りつけた。こいつに死体を発見させる為になァ」

霞ヶ峰 麻衣子「ええ!?あれを送ってきたのは分倍河原殿でござったか!!」

黒瀬 敦郎「な、なんだよその写真って?」

霞ヶ峰 麻衣子「あんまり見せびらかすものではないのでござるが……」

霞ヶ峰さんは、全員にその写真を送信した。

黒瀬 敦郎「!?テメェ、ふざけんのも大概にしろよコラ!!」

銀山 香織「悪趣味にも程がある」

分倍河原 剛「気に入ってもらえたようでなによりだァ」

豹変した空手家は、愉快な表情で話を続ける。

分倍河原 剛「その後は、自分の研究教室に行って武道着に着替えた後、ダッシュで個室前まで戻ってドアが開くのを待ってた訳だ」

万斗 輝晃「自分は爆発のせいで個室に閉じ込められていた、と言い訳する為かい?フン、随分と用意周到なもんだね」

分倍河原 剛「簡単にバレちゃシナリオとして成立しないからなァ。銀山の点呼も含めて色々うまく利用させてもらったァ」

独島 灯里「点呼ー?銀山さん達何かしてたのー?」

銀山 香織「………ああ。点呼というほどではないが、爆発によってドアがロックされ閉じ込められた私は、ロックが解除された直後廊下に出て、同じく廊下に出てきた者の安全確認をしたんだ」

相川 凛「そこには誰がいたの?」

銀山 香織「廊下にいたのは………。私と霞ヶ峰、北条、幸村、ジャック、千野、分倍河原の7人だった。間違いない」

分倍河原 「ほらなァ。言った通りだろ?これが事件の全貌だァ。お前らいい加減満足したかァ?」

分倍河原君は楽しそうな表情でみんなを見渡す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いい加減にしろ。

 

 

 

 

 

 

 

どこまでうちらを弄べば気が済むんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うちは、ここに来て分倍河原君に対してある感情が芽生え始めてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

コイツが憎い。仲間のフリをして喜屋武さんを手にかけ、うちらを嘲笑うコイツがとてつもなく憎い。

 

 

 

 

柴崎君に騙された時に抱いた感情と同じだ、と一瞬考えたがすぐに否定する。

彼に抱く怒りは単純に「怒っている」という表現が正しい。

人の命を何とも思っていない彼に怒りを覚えた回数は何回もある。

 

 

 

けど、分倍河原に対する怒りはそんな生易しいものではない。

彼に抱く怒りは………()()だ。

 

 

 

うちは今コイツをとにかく憎み嫌悪している。シナリオで全て決まってる?だから喜屋武さんは殺される運命にあった?ふざけるな。何でうちらの運命を他人に勝手に決められなくちゃいけないんだ。

人の命をおもちゃのように弄ぶコイツに、そして黒幕に吐き気を覚える。

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、()()()()()()()()には絶対させない。

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

相川 凛「ねぇ、分倍河原君。最後にいくつか質問してもいい?」

分倍河原 剛「………あァ?まだ何かあんのかよ。いい加減飽きたぜもう」

相川 凛「これで納得したらもう………終わりにするから」

分倍河原 剛「………チッ、しょうがねぇなァ。オレ様の心は寛大だからなァ、答えてやるよォ。ただし、答える質問は3つまでだァ。それ以上は付き合ってらんねぇぞォ」

相川 凛「十分だよ。まずは………分倍河原君が喜屋武さんを吊るしたって言ってたけど、それは1回で成功したの?それとも何回かプールに落ちたりして失敗したりしたの?」

分倍河原 剛「あァ?なんだその質問?当然、1回で成功させたに決まってんだろォ。個室に戻る時間もあるし、そう何回もやり直し出来ないからなァ」

相川 凛「そう。じゃあ次の質問。喜屋武さんを運ぶ時どこを通ってプールまで行ったの?」

分倍河原 剛「どこをって………普通に廊下に出て普通にプールまで行ったに決まってんだろォ」

相川 凛「分かった。じゃあこれで最後の質問。…………あなたが喜屋武さんを吊った時、プールの照明は()()()()()それとも()()()()()()()()

分倍河原 剛「……………!!」

うちがその質問をした瞬間、分倍河原君の顔色が明らかに変化した。

北条 業「あれ?答えられないんですか?そんな大した質問をしてないと思うんですけど?」

業ちゃんもその様子を見て追求する。

やっぱ業ちゃんも分かってるんだ。この質問の答えがとても重要だって事を。

 

 

相川 凛「そうだよ。そんな言い淀むような質問じゃないよ。照明が付いてたかを答えるだけなんだから。それで、どうなの?」

うちも追い討ちをかけるように問い詰める。

分倍河原 剛「………あァ、確か付いてなかったなァ」

北条 業「随分と返答までに時間がかかりましたね?何か隠している事でもあるんですか?

分倍河原 剛「ちょっと忘れていただけだァ。特に深い意味はねぇよォ」

北条 業「そうですか。分かりました」

業ちゃんは納得したような表情で引き下がった。

霞ヶ峰 麻衣子「な、何が起こっているのでござるか?分倍河原殿はびっくりした顔をしてるし、一方で相川殿達は勝ち誇ったような顔をしているし……」

千野 李玖「相川殿、まだ状況が理解出来ていない拙僧達にも説明してもらってもいいですか?」

相川 凛「勿論だよ。まず今の分倍河原君の回答で分かった事なんだけど………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「今回の事件、分倍河原君は犯人じゃない可能性が高いと思う」

 

 

 

 

 

 

 

黒瀬 敦郎「は、ハァァァァァァァ!?」

独島 灯里「これはおどろきびっくり爆弾発言が出たねー」

うちの発言にみんなは驚きを隠せないようだ。

分倍河原 剛「………フハハハハ!何を言い出すかと思えば、オレ様が犯人じゃねぇだとォ!?ついにとち狂っちまったのかァ!まあそりゃあしょうがねぇかァ!なにせ自分のせいで飛田と中澤が死んだって聞かさせれて絶望してるから……」

相川 凛「何勝手な事言ってるの?うちは絶望なんてしてない。今頭の中にあるのは………アンタへの怒りだけだよ」

うちは、ふつふつと湧き上がる怒りを静かに分倍河原君にぶつける。

分倍河原 剛「……へぇ、お前、そんな顔も出来たんだなァ」

分倍河原君はうちの表情を見て意外そうな顔をした。

北条 業「随分余裕ですねあなた。自分が失敗したとは思わないんですか?」

分倍河原 剛「オレ様はこう見えても優秀なんでなァ。失敗なんてするわけがねぇよ。いや、失敗なんてしたらシナリオに大きな影響が出る。あの人の為にも絶対に失敗するわけにはいかねぇんだァ」

北条 業「へぇ、そうですか。そのドヤ顔が崩れる瞬間が楽しみですね」

業ちゃんがニコニコしながらうちの方に向き直る。

北条 業「じゃあ凛さん。説明、お願いしちゃってもいいですか?」

相川 凛「そうだね。時間も残り少ないだろうし」

 

 

 

 

 

 

相川 凛「さっきの分倍河原君の話で説明の付かない点は3つ。①喜屋武さんの全身が濡れていた事。②喜屋武さんをプールに運ぶまでのルート。③プールの照明。この3つだよ」

分倍河原 剛「何もおかしいところはないと思うけどなァ」

北条 業「今あなたに発言する権利はないので黙っててください」

相川 凛「順番に説明してくね。まずは1つ目だけど………」

 

 

 

[喜屋武の全身]←

 

 

 

これだよ!

 

 

 

相川 凛「喜屋武さんの死体を降ろした時、全身がびしょびしょに濡れてたんだ。でもさっき、分倍河原君は喜屋武さんを吊る時、喜屋武さんをプールに落としたりしてないって言ってた。じゃあ喜屋武さんはどのタイミングで全身が濡れるような事があったのかな?」

霞ヶ峰 麻衣子「確かに、プールにも入ってないのに全身が水で濡れているのは変でござるね……」

黒瀬 敦郎「気合を入れる為にとかじゃねーか?ほら、よく男気を見せる為に水被ったりするだろ?」

北条 業「は?どんな育ち方したらそんな発想が出てくるんですか?もしかして私達の命がかかっている裁判だという事忘れてるんですか?もう少しちゃんと考えて発言してください

黒瀬 敦郎「業の言葉、なんかすごく傷つくんだけど………」

銀山 香織「分倍河原、君は何か知っているんじゃないか?」

分倍河原 剛「そんなのオレ様が知るわけねえだろうがァ」

分倍河原君は香織ちゃんの言葉を一蹴する。が、

 

 

 

霜花 優月「………目が泳いでますよ。貴方、嘘をつくのが下手ですね」

分倍河原 剛「………!」

動揺した様子を霜花さんは見逃さなかった。

霜花 優月「貴方はどうやら嘘をつく時視線を左に泳がせ、右手で頭を掻く癖があるようですね。しかも今、大した暑くもないこの空間で1人だけ大量の汗をかいている。知ってますか?人間は大きな隠し事をしている時、汗をかく性質があるんですよ」

霜花さんは鋭い視線で分倍河原君を見る。そうか、霜花さんは分倍河原君が怪しいと思っていた時からずっとつぶさに観察して癖を見抜いてたんだ。霜花さんの観察眼には毎度毎度驚かされる。これも超高校級の狙撃手の才能なのだろうか。

分倍河原 剛「おいおい、それは全部お前の憶測だろうがァ」

図星を突かれた分倍河原君だったが、すぐにいつもの状態に立て直す。

分倍河原 剛「オレ様が嘘をついている明確な証拠があるのかァ?それがねぇ限りオレ様が嘘つきだって事は認められねぇぜェ」

霜花 優月「なるほど、あくまでシラを切ると。まあいいでしょう。確かに貴方の言う通り、私のはただの憶測。証拠はありませんから。だったら……」

そこで霜花さんはうちの方を見ると、

霜花 優月「彼女に任せることにしましょう。どうやら、貴方が嘘をついているという根拠を他にも持ってるみたいですからね」

相川 凛「霜花さん……」

霜花 優月「正直、私は今議論についていくので精一杯なんです。なので今回も貴方に任せますから、前回のように全員が納得する説明をしてください」

相川 凛「………うん、分かってる」

投票を止めたのはうちだ。だから、うちには最後まで説明する責任がある。考えもまとまってきたし、今ならちゃんと説明出来る気がする。

 

 

 

 

 

相川 凛「じゃあ続きを話すね。2つ目は、喜屋武さんの死体をプールまで運んだ時のルートだよ」

分倍河原 剛「どの質問も意味分かんねぇが、この質問は特にだなァ。研究教室からプールまでのルートなんか1つしかねぇし、おかしいところなんか本当にあるのかァ?」

分倍河原君はここでもとぼけるつもりらしい。………喜屋武さんにあんな事しておいて、なんでそんな顔してられるの?うちはここでも怒りがこみ上げてきたけど、ぐっと怒りを我慢した。

相川 凛「1つなんかじゃない。うちは見つけたんだよ。あなたがとある抜け道を使って喜屋武さんを運んだっていう証拠をね。そうだよね?独島さん」

分倍河原 剛「………………は?」

独島 灯里「おぉ!!相川さんー、ついにあのカードを切るつもり〜?」

うちがそう言うと、独島さんが心底嬉しそうな表情でうちを見てきた。多分自分が見つけた手柄をみんなに言うのをずっと楽しみにしてたんだろう。

相川 凛「うん。今こそあの情報が役に立つ時だと思う」

柴崎 武史「んー?もしかして、2人だけが知ってる秘密の情報でもあるんスか?」

うちと独島さんしか知らないあの情報。それは………。

 

 

 

[秘密の抜け道]←

 

 

 

これだよ!

 

 

 

 

相川 凛「調理場の研究教室の後方に隠された抜け道があったんだ。そこは………」

独島 灯里「はーい、ここからはわたしが説明するよ〜() ()() ()() ()()見つけた決定的な証拠だからね〜」

独島さんがここぞとばかりに手を挙げてうちの話を遮った。手柄アピールが凄いな………。

黒瀬 敦郎「灯里が見つけた証拠ぉ?これはあんまり期待しねぇ方が良さそうだなー」

独島 灯里「むー。黒瀬くん失礼すぎ〜。少なくともおバカの黒瀬くんよりよっぽどわたしの方が役に立つと思うよー」

黒瀬 敦郎「あ、テメェまでバカって言いやがったな!?オレは少なくとも、灯里よりは絶対頭いいしみんなの役に立ってる自信があるぜ!」

独島 灯里「ないない〜。それだけは天地がひっくり返ってもありえないよー」

黒瀬 敦郎「あんだと!?」

霜花 優月「どんぐりの背比べですよ。それより独島さん、早くその手柄とやらを話して下さい」

霜花さんが少し苛ついた様子で催促した。霜花さん、目つきが怖すぎるよ。

独島 灯里「はーい。わたしねー、研究教室を調べてる時に秘密の隠し通路を見つけたんだ〜。それでどこに繋がってるのか気になったから突入してみたらー………、なんとなんとー!、プール前にある倉庫に繋がってたのでした〜」

やっぱり。うちは今の独島さんの証言で確信が持てた。分倍河原君は確実に喜屋武さんを運ぶ為にその通路を使った筈。

千野 李玖「なんと……そんなところに繋がっている隠し通路が存在するとは」

銀山 香織「プール前の倉庫………!だとしたら、相川の言う通り研究教室からプールに向かう方法は2つあったという事になるな」

 

 

 

 

分倍河原 剛「……………ハッ、くだらねぇ。オレ様がその通路を使ったって証拠はあるのかァ?」

分倍河原君は動揺した心をごまかす様に台を叩きながらそう発言した。

相川 凛「当然だよ。うちと独島さんがその通路を発見した時、入口の端に血痕が残っていたんだ。しかもその血痕はまだ乾ききっていなかった。これって………どう考えてもあなたが喜屋武さんを運んだ際に付いたものだよね?」

分倍河原 剛「なっ………!?」

驚愕の表情を見せる分倍河原君。きっと血痕が付着してたことは彼にとって予想外だったんだろう。

独島 灯里「ちなみにー、その血痕わたしも見たから間違いないよ〜」

銀山 香織「………決まりだな。分倍河原は間違いなくその隠し通路を使っている」

霞ヶ峰 麻衣子「でも、分倍河原殿がその通路を使ったからどうだというのでござるか?何もおかしな事はないと思うのでござるが」

霞ヶ峰さんは不思議そうに首を傾げる。

相川 凛「それは違うよ霞ヶ峰さん。確かに隠し通路を使った事自体はおかしな事じゃない。けど分倍河原はさっきこう言ったんだよ。『普通に廊下に出て普通にプールまで行ったに決まってんだろ』って。つまり分倍河原君は嘘をついてたんだよ。自分がクロだって自白してるのに今更嘘を付くなんて変じゃない?」

霞ヶ峰 麻衣子「本当でござる!?確かに分倍河原殿は隠し通路を通ったとは一言も言ってなかったでござる!」

相川 凛「ねぇ分倍河原君。なんで最初から隠し通路を使って喜屋武さんを運んだ事を言わなかったの?それとも隠さなくちゃいけない理由でもあった?」

分倍河原 剛「て、てめぇ………………」

分倍河原君は顔を真っ赤にしてうちを睨みつけている。

千野 李玖「ちなみに、相川殿は分倍河原殿が事実を隠蔽した理由について分かっているのですかな?」

千野君が穏やかな目でうちを見る。

相川 凛「まあ大体想像はつくけど………それは後回しにして、3つ目を話すね」

 

 

 

 

相川 凛「3つ目はプールの照明についてなんだけど、これがうちが分倍河原君が犯人じゃないと思った決定的な理由なんだ」

独島 灯里「あのー、1つ質問してもいいですか〜」

独島さんはのんびりと手を挙げた。手を挙げるのもスローなのかい。

独島 灯里「プールの照明ってなにー?あのやたら眩しいやつのこと〜?」

万斗 輝晃「あ、それはボクも疑問に思ってんだ。そもそも、あんな照明初めからあったかい?」

黒瀬 敦郎「確かに、オレが昼泳いでた時もあんなデケェ照明無かったぜ」

みんなどうやらあの照明自体を見るのが初めてだった様だ。それは恐らくうちを含めてほとんどの人がそうだと思う。

北条 業「凛さん。あの証言を使って説明した方がいいんじゃないですか?」

あの証言。それは確かプールサイドで聞いた………

 

 

 

 

[プールの照明]←

 

 

 

これだよ!

 

 

 

相川 凛「プールの照明なんだけど、実はこれって夜にも泳げる様に夜の9時以降になったら自動的に付く仕組みになってるんだ」

北条 業「皆さんも捜査の時に見たと思いますが、光度は非常に高く、夜中でもプールの底面がはっきり見える程です」

万斗 輝晃「なるほど、道理で昼間見かけなかったわけだね」

万斗君は納得した表情で頷く。

独島 灯里「ほぇー。そんな便利なものがあるとはー」

独島さんは興味なさそうにそう言った。だよね。独島さん絶対泳がなそうだもんね。

分倍河原 剛「そ、そんなの別に普通だろォ。照明があるナイトプールなんて別に不思議じゃねェ」

慌てて否定する分倍河原君だったが、それは何か隠していると言っているようなもの。

霜花 優月「見苦しいですね。貴方のその焦り具合から察するに、照明が付いてたら何か不都合な事があるんでしょう?」

分倍河原 剛「はァ?そんなわけ………」

相川 凛「あくまでシラをきるつもりなんだ。じゃあさ、証拠を出せば納得してもらえる?」

分倍河原 剛「証拠、だと………」

相川 凛「みんな、さっき霞ヶ峰さんが送ってくれた写真をもう一度見てもらえるかな」

黒瀬 敦郎「さっきのって………流理恵が、その、首吊ってるやつか?」

いつも物事をハッキリ言う黒瀬君もこれに関しては流石に歯切れが悪い。

相川 凛「うん。辛いかもしれないけど、これが重要な証拠になるから。だからお願い」

黒瀬 敦郎「………分かったよ。凛がそう言うならオレはそれを信じるぜ」

黒瀬君を初め、全員がうちの言う通りカバフォンを取り出し写真を見る。

相川 凛「今してた照明の話を思い出しながらこの分倍河原君が撮った写真を見て欲しいんだけど………、この写真、何か変じゃない?」

千野 李玖「変、ですか。………拙僧は特に変なところはないと思いますが………」

独島 灯里「全然分かんないよ〜。わたしなぞなぞとか苦手なんだよねー」

北条 業「なぞなぞじゃありませんよ。凛さんがあんなに丁寧に説明してくれたのに分からないなんて………本当におバカですねあなた達は」

霞ヶ峰 麻衣子「北条殿、少し辛辣すぎるのでござるよ…」

銀山 香織「………そうか!この写真、どう考えてもおかしいぞ」

北条 業「銀山さんは分かりましたか。他の人はどうですか?」

黒瀬 敦郎「うーん、もう少しで分かりそうな気がするんだけどな……」

北条 業「あなたはどうせ分からないので考えても無駄ですよ」

黒瀬 敦郎「オレにだけ当たり強すぎだろ!?」

柴崎 武史「僕もギブアップッス〜。相川サン、答えを教えて欲しいッスー」

柴崎君がヘラヘラしながら両手を挙げてギブアップを宣言する。コイツ、絶対分かってるだろ。

 

 

 

 

 

相川 凛「簡単に説明するよ。まず、さっきも話したけど、このプールの照明は9時にならないと付かないんだ。それってつまり9時になるまではプールは真っ暗って事になるよね。この写真を見ると、照明はバッチリ付いてるし、喜屋武さんの姿もはっきりと写っている。つまり、この写真は9時以降に撮られたものだって事が分かるんだ」

万斗 輝晃「それはそうだね。真っ暗の状態じゃ、こんなはっきりとは写せないから」

相川 凛「分倍河原君はこれを撮ったのは自分だって証言してたけど、分倍河原君が喜屋武さんの死体をプールに運んだのは8時40分〜55分までの間なんだ。その時間はまだ9時にはなっていない。つまりプールの照明は付いていないんだ。だからこの時間にあの写真を撮るのは不可能なんだよ」

分倍河原 剛「そ、それは………」

黒瀬 敦郎「9時になったらもう一回プールに戻って写真を撮ったんじゃねぇの?」

相川 凛「いや、それは無いよ。黒瀬君は知らないと思うんだけど、8時55分になって爆発のせいで閉まってた扉が開いたでしょ?その時、さっきも言ってたけど自室にいて出てきた人達は香織ちゃんが全員点呼を取ったらしいんだ。そうだよね?香織ちゃん」

銀山 香織「ああ。少なくとも部屋から出てきた者は確実に生存を確認した」

相川 凛「その時、分倍河原君はいたんだよね?」

銀山 香織「ああ。その事実に間違いはない。ついでに言うと、駆け出して行った霞ヶ峰以外はその時から死体発見アナウンスが流れるまでその場を一歩も動いていない」

香織ちゃんは、うちの言いたいことを察してか、有力な情報をみんなに伝えてくれた。

独島 灯里「あれ〜?それじゃあー、分倍河原くんは9時以降プールに行けないじゃーん」

分倍河原 剛「………………!?」

相川 凛「そう。独島さんの言う通り、分倍河原君にはあの写真を撮ることは理論上不可能なんだよ。………ねぇ分倍河原君。これってどういう事?」

分倍河原 剛「………………クソがァ…!」

彼はそう呟きながら顔を真っ赤にして拳を叩きつけた。

相川 凛「それにさ、これには根本的な問題があるんだ。……みんなは真っ暗な中でさ、人を吊るなんて作業出来ると思う?」

黒瀬 敦郎「それは………無理だな」

独島 灯里「携帯の明かりは〜?」

北条 業「この携帯は、どうやら周りの明るさに応じて携帯の明るさも変わる仕組みみたいです。真っ暗な場所で携帯を開いたら画面も暗くなるから、明かりとして使うのは難しいと思いますよ」

霜花 優月「事前に夜光塗料等の目印を付けておけば可能ですが」

銀山 香織「だが、そんなものは現場から見つかっていない。つまり暗い中作業と行ったとは考えられないな」

 

 

 

相川 凛「ね?分倍河原君は自分が犯人だと主張する割に3つも嘘をついている。ここまで来たなら全部正直に話せば済む話なのに。だからうちは分倍河原君が犯人じゃない可能性があるって言ったんだよ」

霞ヶ峰 麻衣子「確かに、犯人の割には話に矛盾が生じてるところが多すぎるでござるな」

銀山 香織「だが、仮に分倍河原が犯人ではないとしたら一体誰が犯人なんだ?」

万斗 輝晃「そうだよ!せっかくここまで議論して犯人候補を絞り込んできたのに!」

独島 灯里「えー!また振り出しなの〜?」

黒瀬 敦郎「ど、どうすんだよマジで!!オレらこのままだと死んじまうぞ!?」

北条 業「落ち着いて下さい」

全員が慌てふためく中………彼女、業ちゃんは一切動じる事なくそう呼びかけた。

北条 業「そんな慌てなくても、明らかに怪しい奴が1人いるじゃないですか。まずソイツに話を聞くのが1番手っ取り早いと思います」

黒瀬 敦郎「だ、誰だよその怪しい奴って!?」

北条 業「凛さん、あなたに任せます。ここは私のでしゃばる場面ではないので」

業ちゃんはこの場面でも自分で答えずにうちを指名した。

顔を見ると、満面笑みでこちらを見ていた。

業ちゃんの意図がよく分からないけど、指名されたからには答えるしかない。

 

 

喜屋武さんを殺した、もしくは殺人に関与した可能性のある人物。

あの写真を撮れたのはごく僅かの人しかいない。

その中でアリバイがない人物。それは………、

 

 

 

 

 

 

怪しい人物を指定しろ!

 

 

 

相川 凛

 

飛田 脚男

 

霞ヶ峰 麻衣子

 

喜屋武 流理恵

 

分倍河原 剛

 

北条 業

 

柴崎 武史

 

錦織 清子

 

千野 李玖

 

霜花 優月

 

 

 

ジャック ドクトリーヌ

 

独島 灯里

 

黒瀬 敦郎

 

中澤 翼

 

幸村 雪

 

万斗 輝晃

 

銀山 香織

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川l 凛「あなたでしょ?柴崎君」

柴崎 武史「………ん?僕ッスか?」

うちは、ニヤニヤしている柴崎君を指差した。

黒瀬 敦郎「は、ハァァァァァァ!?」

万斗 輝晃「柴崎君だって………?」

全員からどよめきが上がる。

柴崎 武史「えーっと、ちょっと理解出来ないんスけど。なんで僕が指名されたんスかね?」

柴崎君は、名指しされたにも関わらず動揺する様子は一切ない。

相川 凛「だって、この写真撮れたのあなただけだから」

柴崎 武史「………その理由は?」

相川 凛「消去法だよ。まず、独島さん、黒瀬君、万斗君は食堂にいたからプールには行けない。次に、さっき言ってた香織ちゃんが自室前で点呼をした際にいてその場を動かなかった香織ちゃん、業ちゃん、千野君、ジャック君、幸村さん、そして分倍河原君。この6人にも9時以降プールに行ける時間はない。………うちと霜花さんはその時爆発が起きた研究教室の前にいたから写真を撮るのは不可能。霞ヶ峰さんは写真を送られた張本人だし、その時間には個室前にいたからやっぱり不可能。残ったのはあなただけなんだよ」

柴崎 武史「なるほど………」

柴崎君は満足そうな表情で頷く。

北条 業「お前しかいないって言ってんだよ。さっさと白状しろこの屑野郎」

柴崎 武史「………僕を犯人と断定するには少し証拠が弱いんじゃないッスかね?それに、相川サンと霜花サンがグルだった可能性も十分考えられるッスよ。ほら、相川サンさっき自分で言ってたじゃないッスか。『共犯者の存在が明らかになった以上、たとえ2人で一緒にいたとしても完璧なアリバイとは言えない』って。それに霞ヶ峰さんの自作自演の可能性もあるんじゃないッスか?自分で写真を撮ってさも写真が送られてきたように演技をするとか」

霞ヶ峰 麻衣子「せ、拙者は演技などしてないでござるよ!?」

余裕の笑みを浮かべたままそう返答する柴崎君。

なんだろう、この余裕は。追求されているのは柴崎君の筈なのに、焦っているのはうちの方だ。これじゃあまるでうちが犯人みたいじゃん。

相川 凛「証拠は………まだあるよ」

柴崎 武史「おや、まだあるんスか。自信なさげに見えるッスけど………果たしてどんな証拠が出てくるんスかね?」

証拠としては弱いけど………、まだ持っている筈だ。

 

 

 

 

[相川に送られたメッセージ]←

 

 

 

これだよ!

 

 

 

 

相川 凛「このメッセージを見て」

うちは、柴崎君にうちと霜花さんに送られてきたメッセージをみんなに送った。

柴崎 武史「なんスか?………えーっと、『スパイは既に動き出した。お前の対応の遅さが招いた結果だ』?」

分倍河原 剛「なんだァ、これはァ………!?」

銀山 香織「このメールは君にだけ送られてきたものか?」

相川 凛「いや、全く同じメールを霜花さんも受け取ってるんだよ。しかも全く同じ時間に」

霜花 優月「はい。私も相川さんも保健室にいましたから。間違いないです」

千野 李玖「つまり、このメールを送った人物というのは、スパイについて把握しているという事でいいのですかな?」

黒瀬 敦郎「ただのハッタリかもしれねぇぞ。凛と優月を脅すための」

独島 灯里「それかイタズラとか〜?」

柴崎 武史「どちらにしろ、相川サンはこれを送ったのは僕って言いたいんスよね?」

相川 凛「そう。根拠ならちゃんとあるよ。あなたは前回の裁判の時、裏切り者について知っているような素振りを見せてた。だったら、スパイの事も知っててもおかしくないよね?それにもしスパイについて知らなかったとしても、あなたの性格上、うちらに嘘の情報を送って混乱させて楽しむみたいな事もしかねない」

柴崎 武史「………………なるほど」

相川 凛「どう?これで納得してくれた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸村 雪「………………いつまで続けるつもりなの?もう十分でしょ?」

相川 凛「幸村、さん………?」

だが、うちの問いに柴崎君は答えず、代わりに口を開いたのは幸村さんだった。幸村さんの視線は柴崎君に向いている。つまり彼に対して言ったのであろうが、その言葉の意味が全く分からない。

 

 

 

 

黒瀬 敦郎「はぁ?雪、テメェ何言って……」

幸村 雪「あっくんは黙ってて。今ウチはたけくんに聞いてるの」

黒瀬 敦郎「お、おぅ………」

幸村さんは黒瀬君をピシャリと黙らせたあと、また柴崎君の方に向き直る。

幸村 雪「もういいでしょ?たけくんの思い通りの展開になったんだし。これ以上引き伸ばしても無意味だよ」

柴崎 武史「………………確かに、今以上のおもしろ展開は無さそうだし、ここら辺が潮時ッスかね。まぁ、相川サンの成長っぷりも見れたし、分倍河原サンの無様な姿も拝めたし、僕としては大満足の結果ッスね」

満足げに頷く柴崎君。

何がなんだかさっぱりだ。思い通りの展開?引き伸ばし?

分倍河原 剛「どういう事だァ………!おい、何がどうなってるんだァ!!………!?幸村ァ、てめぇまさか………」

狼狽たえた表情で幸村さんを見る分倍河原君。

幸村 雪「ウチは………後悔してない。アンタ達に従うくらいなら……」

相川 凛「柴崎君……、一体何をしたの………?」

ウチは思わず柴崎君に上擦った声で尋ねる。とにかく、彼が何をしたのか知りたかった。

柴崎 武史「知りたいッスか?正直、無能の馬鹿共に説明しても理解出来ないと思うんでする必要はないと思うんスけど、頑張った相川サンに免じて今回だけ、僕自らが説明してあげるッス。ありがたく思うッスよ」

分倍河原 剛「てめェ………一体何をしやがったァ!!!!」

柴崎 武史「だからそれを今から話すんスよ。知能が著しく低い筋肉だるまはそんな事も分かんないんスか?」

分倍河原 剛「クソッタレがァ………………!!」

銀山 香織「それで、まずは何から説明してくれるんだ?言っておくが、生半端な説明では私達は納得しないぞ」

柴崎 武史「はいはい分かってるッスよ。まずは、結論から言った方がいいッスかね。今回の事件は……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

柴崎 武史「喜屋武サンの自殺ッス」

 

 

 

 

 

 

 

柴崎君の発言は、全員を驚愕させるのに十分すぎるものだった。

分倍河原 剛「ふ、ふざけんのも大概にしろよてめェ!!」

分倍河原君は台を叩きつけて怒鳴り散らす。

分倍河原 剛「喜屋武を刺し殺したのは間違いなく俺様だァ!!あの傷で死なないわけがねぇんだよォ!!」

柴崎 武史「あれ?分倍河原サンさっき喜屋武サンを一酸化炭素中毒で殺したって言ってなかったッスか?包丁の刺し傷なんて別に関係ないでしょ?」

分倍河原 剛「!?ち、違う、これは……」

柴崎 武史「もう口を開かない方がいいッスよ分倍河原サン。アンタはこれから喋れば喋るほど醜態を晒すだけだと思うんで」

相川 凛「ちょっと待ってよ!喜屋武さんが自殺だってどうして分かるの!?」

うちは思わず身を乗り出した。

柴崎 武史「それは当然、僕がこの事件の当事者だからッス。つまり、この事件の関係者は4人。被害者である喜屋武サンと加害者になろうとした分倍河原サン。で、それを阻止したのが僕と分倍河原サンの共犯者かつ、僕の協力者である幸村サン感じッス」

霜花 優月「私達がさっき議論していた『第三者』は貴方だったんですね」

銀山 香織「それで、君は一体どこまで関与しているんだ?」

柴崎 武史「そう急かさなくてもちゃんと話しますって。えーっと………ダラダラ話してもしょうがないんでかいつまんで説明するッスよ。あ、無能共でも理解出来るように説明するんで、そこは安心して欲しいッス」

千野 李玖「最後の一言は余計でしたな」

黒瀬 敦郎「いちいちムカつく野郎だな……」

柴崎 武史「はいはい静粛に。今から超有能柴崎武史による馬鹿共に向けた喜屋武サン殺し解説講座の開講ッスよ〜」

 

 

 

 

 

 

柴崎 武史「まず僕は、喜屋武サンが刺された8時5分頃に合わせて個室から購買に向かったッス。理由は言わなくても分かるッスよね?」

銀山 香織「………救命キット、か?」

香織ちゃんが少し考えてそう答える。救命キットって………確かロープやマッチと一緒に購買から無くなってたんだよね。今まで用途が不明だった物だったけど、柴崎君は一体どうして救命キットを?

柴崎 武史「お。さすが銀山サン。頭の回転だけは他の人達(有象無象共)よりずば抜けてるッスね」

銀山 香織「……それは褒め言葉として受け取っておこう」

万斗 輝晃「いちいち煽らないと気が済まないのかな。麗しき女子の皆さんをこれ以上侮辱されるのは流石に気分が悪くなるよ」

柴崎 武史「そんなの僕の知ったこっちゃないッスね」

 

 

霜花 優月「それより、1つ気になる事があります」

柴崎 武史「なんスか?いちいち質問に答えてたらキリがないのでこれっきりにして欲しいんスけど」

霜花さんが落ち着いた声で柴崎君に質問をする。

霜花 優月「今の貴方の言い方だと、貴方は喜屋武さんが刺されたのを把握してから購買に向かった、と聞こえるんですが」

霞ヶ峰 麻衣子「確かにそうでござる。まるで……」

独島 灯里「盗撮とか盗聴して何してたか把握してるみたいだねー。全てを掌握しているエージェントみたい」

柴崎 武史「その通りッスよ」

独島 灯里「………へ?」

同意されると思っていなかった独島さんが驚きの声を出すと同時に、柴崎君は自身のポケットから何かを取り出した。ん、待て。アレは……。

相川 凛「柴崎君………。まさかそれ、盗聴器とか言わないよね……」

柴崎 武史「おー。相川サン大正解ッスよ。5ポイントあげるッス。僕はアンタ達全員に取り付けてある盗聴器で普段から動向を把握してるんスよ」

 

 

 

 

「「「えーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」

大勢の声(特に女子)が裁判場に響き渡った。

え待って嘘でしょ?じゃあ今までうちが喋った事、全部柴崎君に筒抜けだったの………?

分倍河原 剛「盗聴、だと………?バカな………」

柴崎 武史「そうッスよ。アンタがスパイだって事もとっくにバレてましたよ。そうとは知らずにドヤ顔でスパイ宣言なんかして………何回笑いそうになったか分からないッスよ」

分倍河原 剛「………クソがっ!!!」

霞ヶ峰 麻衣子「じゃ、じゃあ柴崎殿は、拙者らのプライベートは全て把握済み、という事でござるか……?」

柴崎 武史「当然じゃないッスか。あ、今朝霞ヶ峰サンは個室で『ハァ、また体重が増えてしまったでござる……。お腹に肉がこんなに付いて……』なんて事を言ってたッスね」

霞ヶ峰 麻衣子「ギャーーーーーー!?それを言われちゃ拙者はおしまいでござる!!!!もう生きていけないでござるよ!?」

霞ヶ峰さんは絶叫しながら蹲る。

万斗 輝晃「ウヒョ!?麻衣子さんのお腹のお肉!?ぜひボクも堪能させてもらいたいなぁ」

霞ヶ峰 麻衣子「ダメに決まってるでござろう!!!!あぁ、もう死にたいでござる………」

柴崎 武史「後は………千野サンが朝お経を読んでる最中思いっきり舌を噛んでた事とか、銀山サンが『また胸が少しキツくなってきたな….』とかぼやきながら着替えてたとか事とか、独島サンが1人でアニメのキャラのクッソ似てないモノマネの練習してた事とか………まだまだたくさんあるッスよ」

千野 李玖「なんと………。それはお恥ずかしい」

銀山 香織「な、ななななななななななんでそれを!?!?!?!?いや、こ、これは違うんだ!!!た、たまたまその日だけ、その、胸のサイズが………」

独島 灯里「えー聞かれてたの〜?むー、せっかくみんなを驚かせる為にこっそり練習してたのにー」

名指しされた3人の反応からするにどうやら盗聴されていたのは本当らしい。じゃ、じゃあ本当にうちらのプライベートは柴崎君に筒抜けだった………。

幸村 雪「ふーーーーん。かおちゃん、そんな事言ってたんだ………。そんな経験、ウチにはないのに………」

幸村さんは香織ちゃんの胸を羨望と憎悪が混じった目で見ていた。幸村さん、その気持ちは非常によく分かる。けどその視線はやめよう。

北条 業「チッ、あのクソ野郎、凛さんのプライベートを盗聴しやがって………。あぁ、私も盗聴して凛さんのプライベートを暴き出したい……」

あ。こっちではさらにヤバい事言ってる。うん、聞かなかった事にしておこう。

 

 

 

 

霜花 優月「話が脱線していますよ。早く続きを話して下さい」

全員が動揺してる中、霜花さんが話を本筋に戻す。

柴崎 武史「はいはい分かってるッスよ。それで僕は……」

黒瀬 敦郎「ちょっと待てよ!まずなんで武史は盗聴器なんか持ってんだよ?それにいつ、それにどうやってオレ達に盗聴器を付けたんだ?」

柴崎 武史「その説明はダルいんで今は省略するッス。次に僕は、分倍河原サンに見つからないように調理部の研究教室に向かったッス。さて、ここで問題ッス。この次に僕がとった行動は一体なんでしょうか?」

黒瀬 敦郎「ハァ!?問題とかいいから答えを言えよ!!」

柴崎 武史「うるさいッスね。僕は今楽しみながら解説をしてあげてるんスよ。邪魔しないでもらっていいスか?」

黒瀬 敦郎「くっ……」

柴崎 武史「じゃあ回答者は相川サン!どうぞお答え下さい!!」

相川 凛「えっ?」

クイズ番組みたいに回答をうちに求める柴崎君。相変わらずふざけてるな。

でもここで答えないと話が進まなそうだし………。

 

 

 

 

 

柴崎が研究教室に行った後にとった行動は?

 

 

 

・喜屋武をさらに包丁で刺す

・阿波踊りをする

・救命キットで喜屋武を治療する←

 

 

 

 

 

相川 凛「持ってきた救命キットで喜屋武さんを治療したんじゃないの?」

柴崎 武史「おぉ!相川サン大正解ッス!」

相川 凛「というか、さっき自分で救命キットを購買から持ってきたって言ったでしょ。だったらその用途は誰かを治療する為に決まってるじゃん。うちの事バカにしてるの?」

柴崎 武史「落ち着いて落ち着いて。今のはちょっとしたウォーミングアップとして事実確認をしただけッス。いきなり難問出されてもつまんないじゃないッスか。これも学級裁判を楽しむ為の演出ッス」

いつものようにヘラヘラしながら話す柴崎君。その態度が今のうちにはとても癪に触った。

相川 凛「知らないからそんなの。うちには今、柴崎君の遊びに付き合う時間も心の余裕もないの。次ふざけた事抜かしたら顔面にドロップキックかましてやる」

柴崎 武史「おー怖い怖い」

うちが睨みつけると、柴崎君は面白がりながら目を逸らした。

黒瀬 敦郎「なんか凛………めっちゃキレてね?」

千野 李玖「あれはまさしく修羅、ですな」

独島 灯里「相川さんの背後に鬼が憑依してるのが見えるよ〜」

北条 業「ああ………怒ってる凛さんも素敵です………」

万斗 輝晃「ボクはどんな凛さんでも受け入れるよ!」

霞ヶ峰 麻衣子「お二人は本当にブレないでござるな………」

 

 

 

銀山 香織「それで?何故君はわざわざ喜屋武を治療するような真似をしたんだ?」

柴崎 武史「ん?それは勿論、僕の計画に喜屋武サンが必要だったからッスよ。それも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のね」

分倍河原 剛「!?だからァ…、てめぇは一体何をしたんだァ!?いい加減答えろォ!!!!」

柴崎 武史「せっかちッスね。楽しいのはここからなのに。………その前にこの会話を聞いてもらう必要があるんスよ」

そう言うと柴崎君はポケットから小型の盗聴器を取り出す。

霜花 優月「……喜屋武さんが息絶える前の会話も盗聴してた訳ですか」

柴崎 武史「そうッス。モノカバー。これなんか大型のスピーカーかなんかに繋いで欲しいんスけど」

モノカバ「zzz………ファ!?誰かがオイラの噂を!?」

黒瀬 敦郎「あっ!コイツ今寝てやがった!!」

モノカバ「失敬な!!オイラはぱっちり目を覚まして一言一句逃さずオマエらの会話は聞いていたカバ!」

さっき鼻ちょうちん膨らませて寝てたのはどこのどいつだ。

柴崎 武史「何でもいいから早くして欲しいんスけどー」

モノカバ「はいはいちょっと待つカバ。えーっと、これカバね。その盗聴器貸すカバ」

モノカバはどこからか出てきた機械に柴崎君の盗聴器をセットすると音声を再生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「どうもー。死にかけの喜屋武サンに裏切り者の幸村サン」

「柴崎………君………?」

「たけくん……!?どうしてここに!!それになんでウチか裏切り者だって……」

「全部丸わかりッスよ。これのおかげでね」

「‥!!それって……盗聴器??」

「そうッス。バカッスねー、盗聴されてるとも知らずにあんなベラベラ喋るなんて。自分が裏切り者だっていう自覚をもう少し持った方がいいんじゃないッスか?そんなんじゃすぐバレちゃうッスよ」

「う、うるさい!!たけくんには関係ない!!!!」

「あーあ、人が親切に忠告してあげてるのに……。まあいいッス。ぶっちゃけ僕はアンタの事情には一切興味が無いんで。………それよりも、そこの喜屋武サンをどうするつもりッスか?」

「………聞いてたなら分かるでしょ。きゃべっちは他の人に見つからないように机の下に隠す。それで証拠隠滅した後に部屋を出て10分後にフランケンと合流する」

「でも、誰にも見つからない手筈だったのに早速僕に見つかっちゃいましたよ。どうするんスか?」

「それは………ウチがたけくんを………口封じのために殺す」

「へぇ………どうやって?女の幸村サンが男の僕を殺せるとは到底思えないんスけどね」

「う、うるさい!!そこから1歩も動くな!!」

「幸村さん………やめてください………あなたまでそんな事しては………」

「うるさいうるさいうるさい!!!!ウチはやらなくちゃダメなんだ!!じゃないとあの人が死んじゃう!!!!」

「………包丁を持つ手が震えてるッスよ。それになんスかそのへっぴり腰は。本当に僕を殺す気があるんスか?」

「……………く、来るな!!!!」

「近づかなきゃ殺せないでしょ。ほら、あと少しで僕に包丁をぶっ刺せるッスよ。さぁ、早くしないと」

「や、やめて………来ないでよ………」

「………………泣くくらいだったら殺すなんて言うんじゃねぇよ。つまんねぇな」

「キャッ!?」

「幸村サン、アンタは本当にこの選択が正しいと思ってるんスか?」

「…え?」

「だから、このまま裏切り者として分倍河原サンの言うがままに行動するのが正しいと思っているのかって聞いてんスよ」

「そんなの………これしか手がないんだからしょうがないじゃん!!ウチだって、こんなみんなを裏切るような真似したくなかったよ!!でも……これしか選択肢が無いんだから………」

「なんで選択肢が無いなんて決めつけるんスか?これだから無能は困るッスね」

「じゃ、じゃあ他にどんな選択肢があるの!!!!!!」

「何故仲間を頼る、という選択肢を選ぼうとしないんスか?」

「なか、ま………」

「アンタには、相川サンをはじめとするここで苦楽を共にしてきた仲間がいるんじゃないんスか?1人で無理だったら仲間を頼ればいいでしょ」

「でも、頼ったって………黒幕側に勝てるわけないよ………」

「なんでやる前から決めつけるんスか?それとも勝てないという根拠を何か持っているんスか?」

「それは………」

「無能はやる前からすぐ諦める。出来る可能性を考えようともしない。だからいつまで経っても無能のままなんスよ。いいか、アンタが今取れる選択肢は2つある。1つは分倍河原サンの言う通りに動き、さらに口封じに僕を殺してこのまま黒幕側に従い続ける選択肢。そしてもう一つは、僕の作戦に乗って黒幕側を裏切り、相川サン達と一緒に黒幕に立ち向かう選択肢。さぁ、どっちにする?」

「そ、そんなのすぐには選べないよ!!ウチの大事な人の命がかかってるのに……」

「決断が遅い。今すぐ決めろ。アンタがちんたらしてる間にチャンスはどんどん失われていっているんだよ。無能はすぐ悩む。そしてチャンスを逃し続ける。………アンタの気持ちはどうなんだよ。黒幕側と相川サン達生徒、どっちを信じたいと思っているんだ」

「それは………………し、信じたいよ!!みんなの事、信じたい!!!ウチは、みんなと一緒にここから出たい!!!!」

「………決まりッスね。第一、仮にアンタが黒幕側に付いたとしても、アンタとその大切な人とやらが助かる保証なんてないじゃないッスか」

「………あ」

「その時点で黒幕側に付くなんて選択肢は普通消える筈なんスけどね………。本当にバカッスね」

「バ、バカって言うな!!ウチだって必死に考えたんだよ!!」

「うるさいッスよ。誰かに勘づかれるじゃないッスか。………さて、じゃあ始めるッスか」

「ねぇ、さっきから気になってたんだけどそれって……」

「救命キットッス。まずはこれで喜屋武サンの出血を止めるッス………おっと、こりゃ本当にギリギリじゃないッスか。こんな血流しておいてよく生きていられるッスね」

「な、何故、私を…助けるんですか………」

「勘違いしないで欲しいんスけど、僕がやるのはアンタの出血を止めて延命させるだけッス。僕の作戦では………どっちにしろアンタには死んでもらうッス」

「なっ!?なんでよ!!治療したんだったらついでに助けてよ!!」

「仮に僕がここで喜屋武サンの命を救ったとしても、恐らく黒幕側は別の人間をターゲットにする可能性が高いッス。つまり誰かが死ぬまで黒幕側の狼藉は止まんないんスよ。分かります?」

「そんな……」

「私は………それで……いいですよ………」

「きゃべっち!?」

「私の命が………皆さんの役に立つなら………喜んで、差し上げます………」

「でもそうしたからきゃべっちが!!」

「大丈夫ですよ………幸村さん。私の事は………気にしないで…下さい……」

「アンタ、呆れるほどお人好しッスね………。他人の為に自分を犠牲にするなんて。それに僕がアンタを騙してそのまま1人で脱出する可能性もあるんスよ。どうしてそこまで他人を信頼出来るんスか?」

「なんでしょう………。特に根拠は……ないんですけど………。数日間皆さんと過ごしてきて分かったんです………。ここに全く信頼出来ない程の極悪人はいないって………」

「いやいや、それ分倍河原サンや僕らの中に潜んでるスパイにも同じこと言えるんスか?」

「はい………。私、こう見えても………人を見る目には自信があるんです………」

「驚く程楽観的な考えッスね」

「そう、なんでしょうか………」

「そ、そんな事ないよ!!ウチもみんな悪い人だって思わないもん!きゃべっちは間違ってないよ!」

「幸村さん………」

「はいはい。じゃあ喜屋武サンも幸村サンも僕の計画に乗る、って事でいいんスね?もう後戻りは出来ないッスよ」

「………うん」

「私は………元から覚悟は決まっているので……」

「………そうスか。じゃあ早速始めちゃいましょ」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柴崎 武史「という風に、まず前提として今回の事件、僕達3人が協力して起こした事件なんスよ」

盗聴器から流れた音声は、確かに柴崎君が喜屋武さんと幸村さんに協力を持ちかけている場面を録音したものだった。

でも……正直信じられなかった。うちらを見下し、無能だと嫌悪してきた柴崎君が幸村さんをあんな風に説得するなんて。

銀山 香織「柴崎………、君は一体何を企んでいる?正直、さっきの君はまるで別人のようだった」

柴崎 武史「僕はただ、自分が楽しめればそれでいいんスよ。だから今回の事件も、学級裁判が盛り上がりそうだって思ったから協力しただけッス。別に企みとかはないッスよ。あ、さっき言ってた仲間やらなんやらとかは説得する為に全部口から出まかせで言っただけなんで。本心じゃないッスよ」

そう言ってニヤリと笑う。彼は………本当に純粋にこのゲームを楽しんでいる。今回も自分の為に行動しただけ………。

本当にそうなのだろうか。うちには、さっき柴崎君が幸村さんを説得する際に言っていた言葉がどうも引っかかってしょうがなかった。柴崎君は本心じゃないって言ってたけど、実際は………。

 

 

 

 

 

 

柴崎 武史「じゃあここから、サクッとネタバラシしていくッスね。まず僕達がやった事は3つ。ダイイングメッセージの作成、ガスホースの切断、そして机の下にあるスペースに喜屋武サンを入れる事ッス」

万斗 輝晃「えっ!?ダイイングメッセージはキミが作ったものだったのかい?」

霞ヶ峰 麻衣子「で、でもさっき分倍河原殿は俺様がダイイングメッセージを書いたって言ってたでござるよ?」

北条 業「それは自分が犯人だと思わせる為に咄嗟についた嘘ですよ。さぞびっくりしたでしょうね。全く見覚えのないダイイングメッセージが準備室の冷蔵庫から見つかったのだから」

黒瀬 敦郎「テメェやっぱり嘘ついてんじゃねぇか!!」

分倍河原 剛「チッ………!」

柴崎 武史「ちなみにアレは正真正銘、喜屋武サンが自分で書いたものッスよ。まあ書く内容は僕が決めたッスけど。いやぁ、ヒントとか無かったんでもう少し苦戦すると思ったんスけど、案外簡単に見破られちゃったッスね。さすが外国語研究家の相川サン。侮れないッス」

相川 凛「うちを………試してたの?」

柴崎 武史「そう捉えてもらって結構ッス」

銀山 香織「そうか……!ダイイングメッセージがあんなに綺麗だったのは、柴崎が喜屋武を治療して喜屋武の余力が回復したからか!」

柴崎 武史「そう、全員を混乱させる為に喜屋武サンには出来るだけ綺麗に書いてもらったッス。そのおかげでアンタ達は見事に騙されたッス。被害者以外の誰かが偽造工作したんじゃないかってね」

謎のダイイングメッセージの正体は、本当に喜屋武さんが自分で書いたものだった。だが、それは犯人を示すものであると同時に、柴崎君のうちに対する挑戦状でもあったのだ。

 

 

 

 

独島 灯里「えーっとー、ちょっと気になることがあるんだけどいいー?さっきガスホースとかスペースとか言ってたけどー、それってさーどこにあるのー?」

独島さんがのんびり手を挙げる。

柴崎 武史「あー、そこからッスか………。面倒ッスね、説明が」

独島 灯里「そんな冷たい事言わないでよ〜」

柴崎 武史「ハァ………じゃあ相川サンにでも聞いてください」

相川 凛「うちに丸投げ!?」

独島 灯里「相川さん〜教えて〜。うちら運動音痴仲間じゃんー」

非常に不本意な括りにされてしまったが、どうやら調理部の研究教室の机ついて説明しなければならないようだ。

 

 

 

 

[調理部の研究教室にある机]←

 

 

 

 

これだよ!

 

 

 

相川 凛「机については万斗君が見つけてくれた備品書があるから、これを見れば分かるんじゃないかな」

万斗 輝晃「そうさ!!ボクが見つけたんだ!!女子の皆はボクの事褒め称えてくれてもいいんだよ!」

独島 灯里「へー、こんな風になってるんだー。本当に学校の家庭科室にあるやつみたいだね〜」

霞ヶ峰 麻衣子「下にあるスペースは思ってたより広いのでござるね」

北条 業「確かに、ここなら人1人なら十分隠せそうですね」

万斗 輝晃「……………」

万斗君が涙目になっている。日頃の行いでここまで冷たい対応をされるのか………。

相川 凛「と、とにかく万斗君が見つけてくれた備品書によると、机の下にはガスの元栓とガスホース、そして人が入れるくらいのスペースがあるんだ。ここなら喜屋武さんを入れる事が出来るよ」

霜花 優月「なるほど………、貴方の行動が見えてきました。喜屋武さんが入る机のスペースにあるガスホースを切断し、喜屋武さんを下のスペースに閉じ込める事によって、素早く一酸化炭素中毒によって死亡させようとしたんですね」

柴崎 武史「その通りッス。分倍河原サンが戻ってくるまで時間無かったんでそれまでに喜屋武サンには一酸化炭素中毒で死んでもらう必要があったんスよ。あ、ちなみにガスホースを切断したのは喜屋武サンッスよ。自分でやらないと自殺にならないッスからね」

千野 李玖「なんと………、隠す為だけではなかったのですか」

そうか。柴崎君はさっき分倍河原君に一泡吹かせるって言っていた。分倍河原君は自分が刺して殺したと思い込んでいるけど、中毒死したら実際殺したのは彼じゃなくなる。柴崎君が狙っていたのはこれだったんだ。

 

 

霞ヶ峰 麻衣子「あ、拙者そういえば思い出したのでござるが、喜屋武殿の腹部の傷が2つあるのは何故でござるか?」

柴崎 武史「あぁ、それをすっかり忘れてたッス。………何でだと思います?答えられたら0.2ポイントあげるッスよ」

霞ヶ峰 麻衣子「さっきからそのポイントって何でござるか!?」

独島 灯里「んー?分倍河原くんがビビったからじゃないの〜?」

黒瀬 敦郎「それも嘘だろ?今までアイツが言ってた事はほぼ全部嘘なんだからよ」

千野 李玖「もしかして………喜屋武殿が自分で自分を刺したのではないですか?」

霞ヶ峰 麻衣子「えぇ!?なんでそんな事する必要があるのでござるか!?」

銀山 香織「分倍河原の傷で自分が死ぬ可能性を少しでも減らす為じゃないか?仮にガスで死ななかったら他殺になってしまうからな。だからあえて自傷して傷を増やす事をしたんだ」

柴崎 武史「なんだ、無能でも集まって知恵を絞ればちゃんと答え出せるじゃないッスか。………まぁこれに関しては実際僕もなんでなのかよく分かんないッスけど」

万斗 輝晃「どういう事だい?キミが指示したんじゃないの?」

柴崎 武史「いやいや、自傷は喜屋武サン自身が選択した事ッスよ」

自分に包丁を刺すなんて相当な覚悟がないと出来ない事だ。

喜屋武さん………、あなたのその勇気のある行動が今まさにうちらを救ってくれようとしてるよ。

 

 

 

 

柴崎 武史「ついでに僕は、万全を期す為にこれも使ったッス」

柴崎君はさっきと同じように自分のポケットに手を入れ、ある物を取り出した。

霞ヶ峰 麻衣子「それは…ガムテープ、でござるか?」

柴崎 武史「そう、空気が漏れ出ないように扉を塞ぐため持ってきたんス。これで喜屋武サン自身に扉を塞いでもらったんスよ」

北条 業「ガムテープ………!?けど、今日購買からガムテープは持ち出されていない筈……」

柴崎 武史「僕がこれを持ち出したのは1回目の学級裁判の次の日ッスよ。北条サン、アンタ時々購買の在庫チェックをしない日があったでしょ?その隙にボクがこっそり持っていたんス」

北条 業「チッ……ふざけやがって……」

独島 灯里「あのさー、さっき分倍河原くんが自分でガスホースを切ったって言ってた気がするんだけど〜…」

霜花 優月「嘘でしょうね。これ程具体的な話をされては、柴崎さんの方を信用するしかないです」

自分が入る机の細工は自分で行う事によって一酸化炭素中毒の原因が自分だという事実を作る。これなら自殺という結果になる。けど……

 

 

 

 

 

 

分倍河原 剛「へッ………へっへっへっへっへっ……………」

さっきまで黙って話を聞いていた分倍河原君が小さく笑い始めた。

柴崎 武史「ん?もしかして諦めて笑うしかないんスか?だとしたら滑稽ッスね。今まで僕らを嘲笑ってたアンタが追い込まれるんスから」

分倍河原 剛「ハッ、追い込まれる?追い込まれてるのはてめぇの方だァ、柴崎ィ」

柴崎 武史「ん?」

分倍河原 剛「てめぇらも薄々気が付いてるんじゃねぇのか!!今回の死因……一酸化炭素中毒だとは限らねぇんじゃねえかってなァ!!」

両腕を広げ大声で叫ぶ分倍河原君。

銀山 香織「……何を言っている?今までの話から、喜屋武がガスを吸った事による一酸化炭素中毒で死亡したのは明らかだ。それにジャックの検死でも一酸化炭素中毒の患者に見られる症状があったのだろう?」

分倍河原 剛「だとしても、致死量のガスを吸い込む前に俺様の傷が原因で力尽きた可能性もあるだろうがァ。それとも、てめぇはそれを否定できる証拠を持っているのかァ?」

銀山 香織「それは…持っていないが…」

分倍河原君の圧に香織ちゃんが言い淀む。

北条 業「何を言うかと思えば………無駄な足掻きはやめてくださいよ。どう考えても死因は一酸化炭素炭素中毒です。あなたが付けた傷はそこのカスが救命キットで治療したんでしょう?だったら少なくともそれが原因で死ぬ事はあり得ません」

分倍河原 剛「あり得ません、じゃねぇんだよォ!!!考えてみろォ、俺様が部屋を出てたのは20:10くらいで喜屋武の死亡推定時刻は20:25、つまり間に15分くらいしかねぇんだァ!!そんな短時間で一酸化炭素中毒死ィ??それこそあり得ねぇんだよォォ!!!!」

霞ヶ峰 麻衣子「言われてみれば………そうなのでござる、か??」

千野 李玖「どのくらいの時間で一酸化炭素中毒になり、そして死に至るのか………うぅむ、さっぱり見当がつきませんな」

銀山 香織「こういう時、実際に一酸化炭素中毒になった者を見た経験がある人物に聞くしかないのだが……」

そして、全員の視線が先程から全く言葉を発していない人物へと向く。

 

 

 

 

相川 凛「ジャック君………」

その人物、ジャック君は下を向き、腕を組んだ姿勢で一切動いていない。

やっぱり、幸村さんの裏切りが相当ショックだったんだ。本人は否定してたけど、2人はなんだかんだで仲良しだったし、ジャック君は幸村さんの不調に対して献身的にサポートしていた。幸村さんもそのジャック君に相当な信頼を寄せていた筈だ。それなのに、その幸村さんがジャック君を騙していたわけだから、こんな風になって当然だよ。

でも、今はジャック君の持ってる知識が必要なわけだし、うちが説得してどうにか立ち直ってもらうしか………。

 

 

 

 

幸村 雪「ジャックきゅん!!!!」

そう思っていた瞬間、幸村さんが突然ジャック君に対して声をかけた。

ジャック「……………」

幸村 雪「あなたを騙してた事、本当に申し訳ないと思ってる。でも、今はジャックきゅんの力が必要なの。みんなが生き残る為に」

ジャック「……………」

幸村 雪「事情は後で説明するつもりだよ。聞かれた事は何でも答えるつもりだから」

ジャック「……………」

幸村 雪「後でウチに好きなだけ悪口言ってもいい、ウチと2度と喋らなくてもいい。だから今だけは………お願いします」

そう言って幸村さんは頭を下げた。いつもの幸村さんとは違う、まるで別人のような話し方で丁寧にジャック君にお願いをしている。失礼だけど、うちはそれに対して驚きを隠せなかった。

ジャック「………」

その真摯な幸村さんの態度を、ジャック君は一切見ていない。ただ黙って下を向いているだけだった。

分倍河原 剛「ハッハッハッ!!どうやらコイツは裏切り者のお前と話すことは何もねぇみたいだなァ!残念なこったァ!これでてめぇの居場所はいよいよねぇなァ!」

幸村 雪「そ、そんな…」

分倍河原君の高笑いだけが裁判場に響き渡る。幸村さんの言葉で動かないなら、誰が説得しても不可能だ。一体どうしたら………

 

 

 

 

 

 

ジャック「貴様は一体何を勘違いしているんダ?」

 

 

 

 

 

分倍河原 剛「あァ?」

言葉の意味が分からず思わず分倍河原君は聞き返す。ジャック君は顔を上げ、いつもの鋭い眼を分倍河原君に向けていた。

ジャック「俺がずっと黙っていたのハ、貴様らの推理を元に自分の考えを整理していたからダ。決して感情的な理由で黙っていたわけでは無イ」

分倍河原 剛「ハッ、今更強がりかよォ、そんな事言っても俺様にはバレバレだ………」

ジャック「小物が囀るナ、俺を誰だと思っていル」

分倍河原 剛「………!?」

突然発せられたジャック君の低く、そしてドスの効いた言葉に分倍河原君の顔が引きつる。

ジャック「俺はアイツを診察しているうちに、アイツの精神的な病は嘘だと確信しタ。さっき俺が驚いたのはそれを悟らせない為の芝居ダ」

分倍河原 剛「そ、そんなわけねぇだろうがァ!幸村の演技は完璧だっただろうがァ!」

ジャック「何万人もの患者を見てきた俺が素人の演技に騙されると思うカ?」

分倍河原 剛「なっ!?」

幸村 雪「…………」

ジャック君の言っているのは……確か心的外傷後ストレス障害の事だっけ。1回目の裁判が終わった直後に言われたのを覚えてる。確かに、超高校級とも呼ばれるくらいの医者だったら演技を見破ってもおかしくはない。

ジャック「だガ、俺はあえて追求せず暫く様子を見ることにしタ。目的を知りたかったからナ。だが、アイツの様子を観察してるうちに、何かに怯え、苦しんでいるのが分かっタ。そして先程の議論でアイツが人質を取られている事を知っタ」

 

 

 

ジャック「俺はずっと貴様にどう報いを与えようかずっと考えていタ。命を粗末にするようなゲームの開催、そして人質を取り無理やり従わせるその卑劣さ。俺はそのような行為をする貴様を決して許さなイ」

分倍河原 剛「ぐっ………!」

幸村 雪「ジャックきゅん………!」

ジャック「勘違いするナ。事情次第では貴様も許さなイ。この裁判が終わった後、知っている事全て吐いてもらうからナ」

今度は幸村さんの方を向いて低い声で威圧するジャック君。

幸村 雪「………うん!!」

一方、厳しい事を言われてるにも関わらず、幸村さんの表情はとても嬉しそうだった。

独島 灯里さん「あぁ……尊い……。ジャック・幸村のツンデレカップル…見てるだけで鼻血吹き出しそう………」

天に昇りそうな独島さんは放っておいて、とにかく2人が仲直り?出来て良かった。やっぱこの2人には仲良しでいてもらわなくちゃ。

 

 

 

ジャック「少し話が遠回りしてしまったガ、貴様らの問いはこうだったナ。『たった15分の間に一酸化炭素炭素中毒で人が死亡することはあるのか』………その問いに俺は『可能だ』と答えル」

黒瀬 敦郎「マジか!?出来るのかよ!!」

ジャック「状況次第ではナ。モノカバ、1つ答えロ。ルリエが収納スペースに閉じ込められた時、家庭科室の空気の一酸化炭素濃度はどのくらいだっタ?」

モノカバ「一酸化炭素濃度ぉ???随分と変な事聞くカバねぇ。確か…1%くらいだと思うカバ」

ジャック「そうカ。なら一酸化炭素中毒死の可能性はほぼ100%だろウ」

万斗 輝晃「な、なんでそんな事が言えるんだよ!!適当言ったらそのイケメン面ブサメンに変形させるぞ!」

ジャック「一酸化炭素中毒の症状ハ、一酸化炭素の空気中濃度と吸入時間によって大きく左右されル。人間が死に至る濃度は約0.16%からダ。1.2%を超えてくると、人間は間違いなく約3分で死に至ると言われていル」

霞ヶ峰 麻衣子「3分!?カップラーメンが出来る間にお陀仏でござるか!?」

ジャック「今回の場合、濃度は1%らしいからナ。多少の誤差を見てモ、ルリエが死亡するまでおおよそ10分前後かかったと考えていいだろウ」

千野 李玖「10分………では分倍河原殿がいない間に喜屋武殿が一酸化炭素中毒で亡くなったと考えて良いのですかな?」

ジャック「その可能性が限りなく高イ」

分倍河原 剛「ぐっ………!!」

分倍河原君が悔しそうに歯軋りする。

 

 

 

柴崎 武史「さて、ジャックサンの補足で分倍河原サンが犯人じゃない事が確定したところで、次の説明に移るッスか。とは言っても、後はおまけみたいなものッスよ。僕達は一度教室から離れて、分倍河原サンがどう動くか盗聴して様子を見ようと思ったんス。そうしたらなんと分倍河原サン、教室を爆破しちゃったじゃないッスか。僕思わず面白くて大笑いしちゃったッスよ」

分倍河原 剛「てめぇ……どこまでも引っ掻きまわしやがって……」

独島 灯里「ん〜?じゃあさー、分倍河原くんが喜屋武さんがいた場所以外のガスホースを切断して教室を爆破したのと、喜屋武さんを担いでわたしが見つけた秘密通路を使ったのは本当って事〜?」

柴崎 武史「そうッス。お、バカの独島サンでもそこは分かったんスね?」

独島 灯里「へへーん。わたしそんじょそこらのおバカとは違うからねー。そこそこ賢いおバカだからさー」

霞ヶ峰 麻衣子「バカは否定しないのでござるね…」

北条 業「きっと分倍河原さんは喜屋武さんの状態を見て、ある程度の事情は察したんでしょう。だから、自殺という証拠の隠滅と、喜屋武さんをプールに運ぶまでの時間稼ぎ、そして後に起こる学級裁判をより複雑にするという3つの目的の為に爆発を起こしたんです」

分倍河原 剛「……………」

どうやら図星のようだ。

 

 

 

柴崎 武史「それで、分倍河原サンが喜屋武サンをプールまで運んだ後なんスけど………、分倍河原サンはこの後どうしたと思うッスか?」

黒瀬 敦郎「どうしたって……流理恵を飛び込み台に吊ったんじゃねぇのか?」

柴崎 武史「もう前の話を忘れたんスか?分倍河原サンがプールに行った時間は午後9時前。その時点でプールは照明が付いてない暗黒状態なんだから喜屋武サンをあの状態には出来ないって話ッスよね」

黒瀬 敦郎「あ、そうだった。なんか今回は情報が多すぎて頭が混乱するな……」

確かに黒瀬君の言う通りかもしれない。今回の裁判は、前回のとは比べて圧倒的に事件が複雑になっている。混乱するのも無理はない。

柴崎 武史「相川サン、アンタなら分かるッスよね?」

またうちに問題を振ってくる柴崎君。

分倍河原君がプールに来てやった事………。プールは真っ暗だったから明かりが必要な作業は出来なかった筈だ。なら、今までの証拠から考えて分倍河原君は喜屋武さんを………。

 

 

 

 

 

・プールに投げ入れた←

・プールサイドに放置した

・誰かと協力して首を吊らせた

 

 

 

 

相川 凛「プールに喜屋武さんを投げ入れた………?」

柴崎 武史「そう、大正解ッス」

満足そうに頷く柴崎君。

千野 李玖「プールに投げ入れる………。何故そのような事を?」

相川 凛「多分、うちらを学級裁判で混乱させる為だと思う。プールで喜屋武さんが発見される事によって、うちらは新たに『溺死』の可能性を疑う必要が出てくるからね。それに議題が増えるから学級裁判も盛り上がるって考えたんじゃないかな?分倍河原君の言う『シナリオ』にも盛り上げるよう指示があったみたいだし」

銀山 香織「成る程。これで喜屋武の全身が濡れていた説明が付くな。誤ってプールに落下させてしまったのではなく、意図的にプールに投げ入れたとなれば納得がいく」

霜花 優月「時間的に分倍河原さんが出来る事がそれしか無かったんでしょう。あまり時間をかけすぎると、ドアのロックが解除される8時55分までに間に合わなくなりますから」

分倍河原 剛「ぐ………が………」

次々と事件の詳細が明らかになっていく。

 

 

 

 

 

柴崎 武史「さて、じゃあこれで最後ッスね。分倍河原サンは喜屋武さんをプールに投げ入れただけ。では喜屋武サンをあんな風にしたのは一体誰でしょ………」

相川 凛「柴崎君でしょ?」

柴崎 武史「………お?」

ここまで来たらもうあの状態を作り上げたのは柴崎君しかいない。

相川 凛「プールの明かりが付いたのは9時以降。その時アリバイがないのはあなただけだし、誰がやったかは明白だよ。それにあなたの目的とも合致している」

柴崎 武史「………というと?」

相川 凛「喜屋武さんをあんな状態にした理由は、『学級裁判を盛り上げる』事じゃないかってうちは思ってる。そんな事を望んでいるのはスパイかあなたしかいない」

柴崎 武史「……………」

相川 凛「あの写真を撮って霞ヶ峰さんに送ったのも柴崎君でしょ?早く死体を発見させたかったのか、それとも後に学級裁判のネタになるからそうしたのか、どっちなのかは分かんないけど……」

柴崎 武史「………。成長したッスね、相川サン」

するも、柴崎君は拍手をしながらしみじみとそう言った。

柴崎 武史「満点回答ッスよ相川サン。そうッス、あんな風に首を吊らせたのも、写真を撮って送ったのも全部僕の仕業ッス。いやぁ、相川サンの成長具合に僕は興奮せずにはいられないッスよ。僕は大いに関心してるッス」

霞ヶ峰 麻衣子「ヒィィ!?なんでござるかあの気味の悪い笑顔は!?正真正銘のサイコパスでござる!!」

万斗 輝晃「こんな事までしなくても良かったじゃないか!!流理恵さんの死を冒涜するような事、ボクは許せないよ!!

銀山 香織「分倍河原の行動を阻止する為とは言え………余りにも非道な行為だ。ここまでする必要は無かっただろう」

ジャック「チッ、胸糞悪いことをしてくれたナ。最悪の結末ダ」

独島 灯里「やりすぎだよー。少しは反省してねー」

北条 業「このサイコパス野郎が。おかげで危うく私と凛さんが死ぬところだっただろ。今すぐ死んで詫びろ」

柴崎 武史「あららー。僕がせっかく分倍河原サンの企みを阻止してあげたのに。一体何が不満だったんスか?」

黒瀬 敦郎「本気で言ってんのかこのイカレ野郎が………」

 

 

 

 

 

 

相川 凛「みんな落ち着いて。今すべき事は柴崎君を糾弾することじゃない」

黒瀬 敦郎「凛!?でもよ!」

霜花 優月「今何の時間か忘れたのですか?学級裁判の途中なんですよ。全員が納得出来るような結末を出し、そして投票する。そうしないとこの裁判は永遠に終わりません」

万斗 輝晃「それは……そうだけど………」

相川 凛「霜花さんの言う通りだよ。まずはこの裁判を終わらせよう。柴崎君を責めるのは終わった後でも出来るから。それにもうこんな裁判、みんなこりごりでしょ?だから……」

うちはすっかり黙り込んでしまっている分倍河原君を見て言う。

相川 凛「………ウチが事件の全貌を振り返って、この事件を終わらせ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分倍河原 剛「まだだァ!!まだ終わっちゃいねェ!!」

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「……………」

巨体の分倍河原君が野獣のように咆哮した。

分倍河原 剛「喜屋武が自殺じゃない可能性は0じゃねェ!柴崎と幸村が共同して嘘をついてるケースだってある筈だァ!!」

相川 凛「……………」

分倍河原 剛「俺様は自殺なんて一番盛り上がりに欠ける結末認めちゃいねェ!それにシナリオ上自殺は一番あっちゃいけねぇんだァ!!!」

霜花 優月「相川さん、彼はこの裁判の結末を受け入れられず暴走状態に入っています。彼を止められるのは……貴方しかいません。だから……」

相川 凛「分かってるよ、霜花さん。コイツを止めるのは……うちがやる」

霜花 優月「………任せます」

分倍河原 剛「俺様は間違ってねェ!!俺様は()()()の為に完璧なシナリオを遂行しなくちゃいけねぇんだァ!!」

相川 凛「そんな事の為によくも喜屋武さんを………。ウチは絶対にアンタを許さない!!ウチがアンタの理論、全部ぶっ壊す!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理論武装、開始!!

 

 

 

分倍河原 剛「こんな結末、許されるわけねぇだよォ!!!」

 

 

分倍河原 剛「そもそも、柴崎達の話が全部デタラメなんだァ!!!」

 

 

分倍河原 剛「アイツらは自殺と見せかけて外に出る為に喜屋武を殺したんだァ!」

 

 

分倍河原 剛「しかも、アイツらと喜屋武が手を組んで俺様を欺こうとしたァ?そんなうまい話があるわけねぇだろぉがァ!!」

 

 

分倍河原 剛「[アイツらと喜屋武が組んだ証拠もない]のに、よくてめぇらは信じられるなァ!!」

 

 

分倍河原 剛「つまり、今回の事件は自殺じゃねェ、立派な他殺だァ!」

 

 

分倍河原 剛「これ以上、()()()の前で恥かかすんじゃねェ!!!」

 

 

 

 

 

[アイツらと喜屋武が組んだ証拠もない]→ [プールに沈んでいたカバフォン]

 

 

 

 

これで終わりだよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「分倍河原君。これ………何か分かる?」

うちは、捜査中に拾ったカバフォンを見せた。

分倍河原 剛「なっ!?」

千野 李玖「それは……携帯、ですかな?」

相川 凛「そう。これはうちらが持ってるのと全く同じカバフォン。つまりうちらのうちの誰かのカバフォンなんだけど……。この中にカバフォンを失くした人はいないよね?」

「………………」

誰も手を挙げる者はいない。

相川 凛「オッケー。じゃあこれは必然的に喜屋武さんの物になる」

幸村 雪「きゃべっちの携帯……!りんりん、それってどこで見つけたの!?」

相川 凛「プールの底に落ちてたんだよ。業ちゃんが見つけてくれたんだ」

北条 業「凛さんのお役に立てたなら何よりです!!」

相川 凛「あともう一つ質問。この喜屋武さんのカバフォンをプールに投げ入れた人は誰?」

またもや誰も手を挙げない。

相川 凛「ありがとう。これであなたがやったって確信が持てたよ、分倍河原君」

分倍河原 剛「くっ………」

北条 業「まあ、今日プールに行ったのなんて彼とゴミカスぐらいですからね」

相川 凛「恐らく、この喜屋武さんのカバフォンの中に3人が組んだ証拠が残されてると思う」

独島 灯里「でもーそれってープールに落ちてたんでしょー?だったら壊れちゃってるんじゃない〜?」

分倍河原 剛「そ、そうだァ!!どんなに重要な証拠でも、開かないなら意味はねェ!!万策尽きたなァ、相川ァ!!」

 

 

 

 

 

相川 凛「………普通に電源付くけど?」

うちはわざと分倍河原君に見せびらかすようにカバフォンを見せる。それも電源がバッチリ付いた状態で。

分倍河原 剛「…………は?」

霞ヶ峰 麻衣子「まさか……完全防水でござったか!?」

モノカバ「おや?今更気がついたのカバ??このカバフォンは太平洋に沈めてもへっちゃらな完全防水、それに活火山の中にぶち込んでも全く動じない熱耐性の両方を兼ね備えた素晴らしいスマホカバ〜〜〜!あ、いっけね、この事誰にも説明してなかったカバ」

黒瀬 敦郎「なんだそりゃ!?というかそんな携帯がこの世にあるわけねぇだろ!?」

モノカバ「ところがどっこい、それがあるんですなぁー。ま、オイラの類稀なる才能なら朝飯前ってとこカバ」

独島 灯里「ドラ○もんの秘密道具に出てきそうだね〜」

相川 凛「うちも最初は壊れちゃってるって思ってたけど、持ち歩いてたら偶然電源が付いたんだよ。………ねぇ分倍河原君。これはうちの予想だけど、喜屋武さんのチャットを見れば、何か証拠が見つかるんじゃないかな。分倍河原君もそう思ったから、事実が明らかになるのを恐れてプールに投げ入れてカバフォンを壊そうとしたんでしょ?」

分倍河原 剛「っ!?それを開くなァ!それは……」

うちは分倍河原君の制止を無視してチャットを開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20:12柴崎 武史「喜屋武サン、中にあるガスホースは見つかりましたか」

 

20:12 喜屋武 流理恵「はい。白いガスホースですよね。ちゃんとあります。これを切ればいいんですよね」

 

20:12 柴崎 武史「そう、それを切ってください。それが終わったら後は身動きせずにじっとしていれば大丈夫です」

 

20:13 喜屋武 流理恵「分かりました」

 

20:13 幸村 雪「ダイイングメッセージ冷蔵庫にちゃんと入れたよ。後何故か包丁が2本無くなってた。もう一本誰かが持ち出したのかな」

 

20:13 柴崎 武史「さぁ、なんででしょうね。とにかく、これで準備は完了です」

 

 

 

 

 

 

 

霜花 優月「これは………喜屋武さんが死亡する直前のやり取りみたいですね」

喜屋武さんのチャットには、予想通り手がかりが残されていた。それも喜屋武さんと柴崎君、それに幸村さんの3人が協力している事を示すというまさに決定的な手がかりだ。

柴崎 武史「そうッス。これはまさしく僕達がチャットで会話したという記録ッスね」

柴崎君と幸村さんは同時に自分のカバフォンを取り出し、チャットの画面を見せる。そこには全く同じ内容のチャットが映し出されていた。

銀山 香織「ここまで一緒ならば偽造の可能性は無い……か」

黒瀬 敦郎「てゆーかなんでお前らわざわざチャットで会話してんだ?目の前にいるんだから直接話せばいいんじゃねぇの?」

万斗 輝晃「………盗聴防止、の為かい?」

柴崎 武史「お!万斗さん正解ッス」

独島 灯里「万斗くんどういう事〜?」

万斗 輝晃「敵地に潜入した際、一番最悪なパターンっていうのは敵に情報や作戦を聞かれる事なんだよ。それを防ぐためにボク達情報屋は、敵地に入ったら基本的には口で会話はしない。筆談やジェスチャーなど、盗聴される恐れがない方法でコミュニケーションを取るんだ」

柴崎 武史「ご名答。僕は万が一黒幕側の誰かが盗聴器を設置していた場合を考えてチャットで会話することにしたんス。そうすれば作戦を聞かれる心配もないし、何よりこうして証拠が残る」

チャットで会話することによって黒幕側の介入を防ぎ、さらに裁判での展開を予想して証拠を残した。頭の回転の速さら相変わらずだ。柴崎君…、あなた一体何手先まで予測しているの?

霞ヶ峰 麻衣子「じゃあなんで最初からチャットで会話しなかったのでござるか?」

柴崎 武史「もし時間に余裕があったなら最初からチャットを使っても良かったんスけどね。今回の場合なかなか時間がシビアだったんで作戦の部分だけにしたんスよ」

分倍河原君がまた研究教室に戻ってくる時間は確か20:40頃。全ての会話をチャットで行う余裕は確かになさそうだ。

 

 

 

柴崎 武史「はぁ、これでやっと終わりッスかね。何か反論はあるッスか?落ちこぼれスパイの分倍河原サン?」

分倍河原 剛「ぐぅ………ぐぁぁァ………」

分倍河原君は顔を真っ赤にして歯軋りをする。そして頭を抱え込む。

北条 業「凛さん、もういい加減終わらせましょう。こんな茶番劇を続けていたら私と凛さんの精神がおかしくなります」

相川 凛「………うちがこの事件をまとめるよ。それで……終わりにする」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クライマックス推理!

 

 

 

 

act.1

 

 今回の事件も前回と同じく動機が原因で起きた単純な殺人………と殆どの人が考えていたけど、蓋を開けてみると動機とは全く無関係であり、しかも数人が関与するとても複雑な事件だったんだ。

 

 

 この事件の主犯は、実は黒幕サイドでうちらをずっと騙していた分倍河原君だった。彼の目的は、黒幕の描いたシナリオ通りに喜屋武さんを自ら殺して自身がクロになる事だったんだ。彼は、まず同じくうちらを密かに裏切っていた幸村さんを共犯者として選んだ。その幸村さんを利用して、20:00頃喜屋武さんを調理部の研究教室に呼び出した。そして幸村さんが喜屋武さんの気を引いているうちに分倍河原君が喜屋武さんを後ろから刺したんだ。幸村さんは作戦とは違う事が起きて困惑していたと思う。どうやら当初の計画では、幸村さんが喜屋根さんを刺す予定だったみたいだからね。とにかく、分倍河原君は倒れた喜屋武さんと諸々の証拠隠滅を幸村さんに任せて部屋を出た。話によると後で2人は合流する予定だったみたいだけど、分倍河原君はそこで恐らく色々なトリックを仕掛けるつもりだったんだと思う。

 けどそれは、ある人物の介入で阻止される事になる。

 

 

 

 

act.2

 

 その人物が柴崎君だったんだ。彼は密かに仕掛けた盗聴器でうちらの動向を全て把握していた。だから分倍河原がスパイだという事も、今回の事件よ事も事前に察知することが出来たんだ。その為彼は、スパイに一泡吹かせる為、そして学級裁判を楽しむという自己の欲望を満たす為動くことにしたんだと思う。

 柴崎君は盗聴器で喜屋武さんが刺されたのを知ると、まず購買に行って喜屋武さんの応急処置をするための救命キット、そして後に必要になるロープを持ち出した。そして研究教室に向かって喜屋武さんと幸村さんに作戦への協力を申し出たんだ。この時点で幸村さんは、分倍河原君に協力していると見せかけて柴崎君に協力する、いわば二重スパイのような役割を持つ事になった。喜屋武さんも了承したからこの事件は、被害者が事件に協力する同意殺人という事になる。

 柴崎君の作戦は一言で言うと他殺に見せかけた自殺という状況を作り出す事だった。彼は分倍河原君の傷が原因で死なないように救命キットで喜屋武さんの応急処置を済ませ、次に喜屋武さんを机の下にあるスペースに入れた。その後、ガムテープで扉を喜屋武さん自身に塞いでもらい、ガスホースを切断してもらう。こうする事でガスで死ぬ原因を作ったのは喜屋武さんになり、自殺と判断される。これを柴崎君は狙っていたんだね。

 ダイイングメッセージもこの時作られたものだった。柴崎君が内容を考え、まだ余力のある喜屋武さんに書いてもらってから幸村さんが冷蔵庫に入れたんだ。内容は分倍河原君を示すものだったけど、これは彼を犯人だとうちらに誤認させ、分倍河原君本人にも自身が犯人だと思い込ませる目的があったのかもしれない。

 そしてガスが漏れ出し密閉空間にいる喜屋武さんは一酸化炭素中毒によって死に至った。ジャック君によれば当時の一酸化炭素濃度を考えれば10分前後で死んだ可能性が高いらしいけど、これは分倍河原君が研究教室に戻ってくる前だから、つまり彼が居なくなってものの20分前後でこの状況を作り上げたんだ。

 

 

 

 

 

act.3

 

 研究教室に戻ってきた分倍河原君は驚愕したと思う。自分が包丁で刺した筈の喜屋武さんが何故か閉じ込められて死んでいるんだからね。ここで分倍河原君は多分誰かがこの事件に介入したことを察したと思う。だから彼はなんとか状況を打開しようと、まずガスを利用して研究教室を爆破して証拠隠滅とうちらの行動の制限を図ろうとした。急いでマッチを購買で購入しに行き、部屋全てのガスホースを切断してから火をつけ爆破し、分倍河原君は喜屋武さんを担ぎ研究教室後方にある隠し通路から脱出したんだ。

 そしてうちらに死因を誤認させるためにプールに行き喜屋武さんをプール内に放り投げた。本当は色々細工をしたかったと思うんだけど、9時前だからプールの照明が付いてなくて作業は困難だったし、アリバイを作るために早く戻らなくちゃいけなかったから時間も無かった。だからこれくらいの事しか出来なかったんだよ。さらにその時、真実がバレるのを恐れて喜屋武さんのカバフォンをプールに落とした。けれど、実はカバフォンは完全防水で水に落としたくらいじゃ壊れない性能を持っていたんだ。分倍河原は何故かこれを知らなかったみたいだけど、とにかくこれは後に3人が協力したことを示す重大な証拠となる。

 後は運んだ際付着した血を誤魔化す為に研究教室で道着に着替えて個室の前で扉が開くのを待つ。そして同じく個室から出てきた人に向けてあたかも今慌てて部屋から出てきたように振る舞う事で、さっきまで部屋にいたというアリバイを印象づけようとしたんだ。

 

 

 

 

act.4

 

 ただ、事件はそこで終わりじゃなかった。9時になり、プールの照明が付いたところで柴崎君がプールに姿を現した。そこで彼は、プールに沈んでいた喜屋武さんを引き揚げてから、さっき持ってきたロープを使って喜屋武さんをプールの飛び込み台に首吊り状態にしたんだ。きっと彼の事だから学級裁判を盛り上げよう、とでも思ったんだろうね。さらに早く死体を発見させる為に死体の写真を撮って霞ヶ峰さんに送った。個室前にいた霞ヶ峰さんは当然慌ててプールに向かった。そして霞ヶ峰さんが首吊り状態の死体を見た瞬間、死体発見アナウンスが流れたんだ。

 だから、この事件で死体発見アナウンス前に死体を見た人は、分倍河原君、柴崎君、そして霞ヶ峰さんの3人になるんだよ。アナウンスは『クロ』以外の3人が死体を見ることによって流れるからね。つまり……

 

 

 

 

 

 

 

今回の事件のクロは………自分の命を殺す、つまり自殺した人物になるんだよ。

そうだよね……、超高級の調理部、喜屋武 流理恵さん。

 

 

 

 

 

 

 

うちは笑みを浮かべた喜屋武さんの遺影を指して言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

モノカバ「んん???どうやらやっと結論が出たみたいカバね!では、お手元にあるパネルで投票しちゃってちょーだいカバ!!」

うちは、躊躇いながら既にバツ印が書かれている喜屋武さんの顔写真をタッチした。

 

 

 

モノカバ「全員投票が終わったカバね!では、投票の結果、クロになるのは一体誰なのか?そして正解なのか不正解なのか?ドッキドキのルーレットターイム!!!!」

すると、うちらのドット絵が書かれた巨大なルーレットが出現し、回転し始めた。そして喜屋武さんの所で止まると、「guilty!!」の文字と共に大量のコインが出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

分倍河原 剛「クソが………クソがァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

分倍河原君の絶叫と共に、2回目の学級裁判は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

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