ダンガンロンパ キャンパス   作:さわらの西京焼き

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(非)日常編②

 

 

相川凛side

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………」

目が覚めると、そこは真っ暗な空間だった。

うちはベットから起き上がって周りを見渡す。

真っ暗なせいか何も見えない。

ここはどこなんだ。

確かうちは剣で貫かれて………。

 

 

 

 

 

 

 

「目覚めたか」

するとどこからか無機質な声が聞こえた。

酷く冷たい声だ。まるで感情がこもってないロボットが喋ってるようだった。

 

 

 

 

「………誰?」

うちは警戒しつつも呼びかける。

「………お前は私だ」

その声の主はそう言ってうちの前に現れた。

真っ黒なマントに身を包み、顔は珍妙な仮面で隠している為正体は分からない。

けど………声は………うちにそっくりだった。

今お前は私って言ったけど………、つまりあの仮面の奥にうちの顔があるっていうの?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぐっ!?あ、頭が………痛い……!」

その姿を見た瞬間、うちは頭痛に襲われた。

風邪の時になる軽い頭痛とかのレベルじゃない。

頭が割れそうな程痛い。

それにあの仮面………どこかで………。

 

 

 

 

 

 

 

「………記憶が戻ってきたようだな。これもシナリオ通り、か。順調で何よりだ」

仮面の人物はうちに近づく。

「どういう………こと?それにアンタはうちって………」

「私も相川凛だ。シナリオの事は………もう分倍河原が喋ったんじゃないのか?」

「シナリオについてはそうだけど………。うちが2人いるって………そんな訳ない……。うちは1人しかいない………。アンタは……うちを名乗る………偽物だ………」

「そう言うしかないだろうな。なにせ私を肯定したならお前は存在しない事になってしまうからな」

そしてうちの偽物はうちの顔を掴み強引に仮面の方を向かせる。

 

 

 

 

 

 

「この仮面を覚えておけ。これがお前が知りたい謎を解くヒントになる」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう………ぐあぁぁ!?」

痛い。頭が割れる。うちは思わずベットから転げ落ちる。

そして意識が遠のいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が…………私を止めるんだ。この役割は………お前にしか出来ない事なんだ…………」

 

 

 

 

 

 

そんな意味不明な言葉を聞いた直後、うちの意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(非)日常編②

 

 

 

 

 

「…………………!!」

うちは目をパッと見開いて目覚めた。

視界に映ったのは先程の黒い空間ではなく白い天井。

ゆっくり起き上がり周りを見渡す。

さっきとは違って電気が付いた明るい部屋だった。

窓からは光が差し込んでいる。内装は白の壁に茶色の木の床というとても綺麗で清潔感のある雰囲気になっている。

うちはそれを見てさっきの暗い部屋は夢で今が現実だという事を理解する。

 

 

 

 

 

「……あっ!?うちの傷はどうなって………」

気を失う直前に受けた傷を思い出し、着ている患者服をめくって自分の脇腹を見る。

それを見てうちは絶句した。

「嘘でしょ………綺麗に治ってる」

腹部は傷一つない元通りの状態に治っていた。

記憶によれば剣は完全にうちの腹部を貫通してた筈だ。それなのにこんな何もなかったかのような状態になるなんて……。

それとも傷が綺麗に治るくらいうちが気を失ってたって事?いやいやだとしてもここまで傷が塞がるのは常識的に考えておかしい。

いったい誰がどんな方法でうちを治してくれたんだろう………。

 

 

 

 

 

「おや、お目覚めカバ?」

そんな事を考えていると白衣を着たモノカバが現れた。

コイツどんなコスプレでもするな。

前は消防士のコスプレもしてたし、いったいどれほどのコスプレ装備が存在するんだろう。

「うちの怪我治してくれたのって、もしかしてモノカバ?」

「その通りカバ!!オイラの最先端モノカバ式治療で相川サンの傷をちゃちゃっと治したカバ!!」

「………ちょっと待って。今裁判が起きてから何日後?」

「おかしな事聞くカバね。裁判があったのは昨日カバ。今日はその翌日カバよ」

 

 

 

 

 

………what???

 

 

 

 

 

「いやいやいやいやいや!?うちの傷を一晩で治したって事!?そんなバカな事ある訳ないじゃん!?!?」

「なーにをバカな事を言ってるカバ。今の医療技術を侮っちゃいけないカバ。今は人に空いた穴を塞ぐくらい、30分で出来ちゃうカバ。上半身と下半身を切断された人間でさえ1時間も有ればくっつけられるカバ」

「そんな訳あるか!!!!!それに最後のは明らかにおかしいだろ!!絶対死んでるからその人!」

「お、ツッコミのキレもいつも通りカバね。これならもう安心カバ!」

「だからうちの話を聞いて………」

「細かい事はいいカバ。はい、この話はおしまいカバ。それよりも聞きたい事があるんじゃないカバ?例えば………ここはどこ、とか」

「それは………そうだけど………」

話をはぐらかされてしまった。けどこの場所がどこなのか、そしてみんなは今どうなっているのかについては気になるのは正直なところ。

 

 

 

 

 

「えー、そんなに教えて欲しいカバ?じゃあオイラの足を舐めながら『可愛くて凛々しいモノカバ様、どうかこのわたくしめに教えて頂いてもよろしいでしょうか』って言えば教えてあげてもいいカバ?」

コイツウザ。この綿埃が。死んでも舐めんわ。

「さようなら」

うちは布団に潜り直す。

「あ、拗ねちゃったカバ?まあ軽い冗談カバよ、ここはC棟。通称『遊園地エリア』で今いる場所は『簡易診療所』カバ。ほら、外から何か色々聞こえてくるカバよね?」

確かに、それはさっきから気になっていた。なんだか外が騒がしい感じはしてたんだよね。

「てゆーか、なんで大学に遊園地あるの?まずそこからおかしくない?」

「え?大学に遊園地あるのなんて当たり前カバ。常識カバよ」

「普通ねーよ」

「とにかく、ここは遊園地エリアで相川サン達は自由に遊んでいいカバ!!じゃあオイラは帰るカバ!」

「ハァ!?もしかして説明それだけ!?」

「詳しい事は他の人に聞くカバ!多分そろそろ来る頃だと思うカバ!!あ、一応治ってはいるけど今日は絶対安静カバ!ジェットコースターとか絶対乗っちゃダメカバよ!!」

そう言い残しモノカバは出て行った。

 

 

 

 

 

「とりあえず、ここは遊園地でみんなもここに向かってきてるって事かな」

今いる場所とみんなの無事が分かっただけでも十分だ。

だったらうちのするべき事は………。

「遊園地とやらを探索するしかないでしょ」

このままじっとなんてしてられない。うちはすぐ立って診療所を出ようとする。

「ッ!?」

しかし立った瞬間脇腹に激痛が走った。

「痛てててて………流石に歩き回るのは無理か………」

モノカバの言ってた絶対安静というのは本当の事らしい。

ならしょうがない。

「みんなの事………待つしかないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めちゃくちゃ暇なんですけど。

モノカバが去ってから約1時間が経過した。

うちはベットでごろごろしたり外を軽く眺めてたりして時間を潰したけど、それでも経った時間はまだ1時間。

最初は近くの机に置いてあったうちのカバフォンをいじってだけど、すぐ飽きて今は電源をオフにして置いてある。

しかもなんと、時間を見たらまだ朝の6時。てっきり昼間だと思い込んでいたけど、どうやらこの遊園地エリアは昼夜の概念がないらしく、常に照明はピカピカ、騒音は鳴りっぱなしみたいな状態だとの事。だから目覚めた時外の明るさを見て昼と勘違いしてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

「みんな、今頃どうしてるかな………」

生き残っているみんなの顔を思い浮かべる。

一番心配なのは業ちゃんだ。うちが怪我をした時どんな反応をしたのかは容易に想像がつく。うちの事を何よりも心配してくれる子だからうちが怪我した事について心から怒ってくれてると思う。それはとっても嬉しいんだけど、問題はうちを探す為に暴走してしまう事だ。例えば誰かを無理やり脅したり他人を悪口で傷つけたり………。

そんな業ちゃんを止められるのは多分うちしかいない。彼女は……正直言って危険すぎる。前回の裁判でも包丁を持ってたし、どうにかして説得しないと。

 

 

 

 

香織ちゃん、千野君、独島さんは心配ないかな。あの3人メンタル強そうだし。

黒瀬君は……大丈夫かな?分倍河原君の裏切りで落ち込んでなければいいけど。

ジャック君と幸村さんはちゃんと仲直り出来たのかな?あの2人なんだかんだ言ってお似合いだし、2人が仲違いしてるの見るのはうちも辛いからなぁ。

万斗君は………、多分うちが女子だから必死に探してくれるんだろうなぁ。もしいなくなったのが男子だったら絶対嫌々探すんだろうけど。

霞ヶ峰さんはちょっと心配だな。彼女、結構繊細な一面があるから昨日の裁判で落ち込んでなければいいけど。

柴崎君は………まあいつも通りだろう。あのすかぽんたんの事はどうでもいいや。

 

 

 

でも一番心配なのは………………。

うちは霜花さんの顔を思い浮かべる。

彼女はうちに庇われた事、どう思ってるんだろうか。

感謝してる……?いや、それは無い。だって彼女は死にたがってたから。むしろ自分が死ぬチャンスを邪魔されて憤慨してる可能性の方が圧倒的に高い。

でも………霜花さんを助けた事が間違ってるとは思わない。

自分で死を選ぶなんて………間違ってる。それも喜屋武さんみたいに仕方なく自死を選んだんじゃなくてまだ生きられる今の状態で死を選ぶなんて絶対に間違っている。

彼女と話がしたい。

何故彼女がそんな考えを持つようになったのか。

彼女の過去に何があったのか。

うちは、霜花さんの事を知らなすぎる。

たとえ嫌われてようが煙たがれようがうちは彼女と話したい。

でも…………どう考えても霜花さんがうちと話をするとは思えないんだよなぁ………。どうしよう。

なんて事を色々考えながら暇な時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暇だ。

今は天井をボーッと見つめている。

最初は暇すぎて二度寝しようかと思ったけど、こういう時に限って眠れない。これっぽっちも眠れない。一睡も出来やしない。

「誰か来てくれないかな……」

そんな事を呟いた時だった。

 

 

 

 

 

 

なにやら慌ただしく足音が聞こえて、

 

 

 

 

 

「凛さん!!!」

ドアが思いっきり開かれた。

そして入ってきたのは………業ちゃんだった。

 

 

 

 

 

 

「………業ちゃん?」

 

   

 

 

 

 

 

「凛さん!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

業ちゃんはうちを認識すると、一目散に駆け寄り号泣しながら抱きついてきた。

「うわわぁぁぁぁぁん!!!!無事で良かったです!!!!本当に、良かったぁ………!」

「うわっ!ちょっと業ちゃん!?そんなに抱きつかないでよ!!うわ鼻水出てるし!!汚っ!?うちの服に付けないでよ!!」

「凛さぁぁぁぁん!!私の体液、全部受け止めて下さぁぁぁい!!」

「きったな!!!!!!!今すぐ離れて欲しいんだけど!!!!」

「嫌です離しません!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません。凛さんが無事だと分かった瞬間理性が崩壊して……」

「うん、それはよく分かった。けど毎回服を鼻水でぐしょぐしょにされるのはこっちも困るから、出来れば理性を抑えて行動して欲しいな」

「すみません………」

うちはなんとか業ちゃんを落ち着かせ、いまは一緒にベットに腰掛けている。ちなみに鼻水でベッドベトになった患者服はモノカバに言って替えてもらった。

「でも…………業ちゃんが無事で良かったよ」

「それはこっちのセリフですよ!!私が凛さんをどれだけ心配したか………」

「うん、それは容易に想像がついたよ。………でもありがと。うちめっちゃ嬉しいよ」

「うぅぅぅぅ………!凛さんにそんな事言ってもらえるなんて……私、今死んでもいいです!!」

「いや駄目だよ?死んじゃ駄目だからね?」

業ちゃんだったらやりかねない気がする。

「ところで業ちゃん。うちがいない間に何か変わった事とかなかった?」

「そうですね………。今朝、一部の人間を除いて食堂に集まったんですよ。そこでですね………」

 

 

 

業ちゃんは今朝あった事をうちに話してくれた。

幸村さんの事。

絶望の残党と分倍河原君が所属する『絶望の庭』の事。

そして謎の転校生、明智麻音さんの事。

 

 

 

 

「なるほど………」

話を聞き終わったうちはため息をついた。

絶望の残党に謎の転校生………。また新たな謎が増えた。

「凛さん、実は凛さんに一つ言っておきたい事があります」

すると、業ちゃんが真剣な眼差しでこっちを見た。

「ん?」

「霜花優月と関わるのは今後やめて下さい」

「………え?」

「あの女は私達にとって害でしかありません。集団行動は出来ない、凛さんに強く当たる、おまけに学則違反なんかして凛さんに大怪我を負わせる。ああ、もしかしたらあの女も分倍河原剛と同じ『絶望の庭』所属のスパイなのかもしれませんね」

「な………なんでそんな事言うの!?まだ霜花さんがそうだとは限らないじゃん!それに霜花さんは別に害じゃないよ」

うちがそう訴えるが業ちゃんは首を振り否定する。

「凛さん、冷静に状況を見てください。あの女がどんな考えを持っているのかはさておき、凛さんが怪我をしたのは事実です。その凛さんの怪我はあの女の学則違反によるもの。あの女が余計な事さえしなければ………」

業ちゃんは自分の拳を強く握りしめ歯軋りをした。

「それは………うちが勝手に霜花さんを庇っただけであって霜花さんは何も悪くないよ!」

「いいえ違います。あの女が全て悪いんです。凛さんは何も悪くないです。チッ、死にたいならどっかで勝手に野垂れ死ねよ、クソ女が……」

最後の言葉は聞き取れなかったが、きっと霜花さんの悪口を言ってたんだろう。

「業ちゃん………どうしたの?そこまで霜花さんに敵意を向けるなんて……」

「凛さんこそどうしてそこまで霜花優月に執着するんですか?アイツは死にたいって言っているんですよ。放っておけばいいんじゃないですか?あんなやつ、死んで当然だと思いますよ」

うちはその言葉に愕然とした。業ちゃん………そんな事言う人じゃなかったのに………どうして。

「今の言葉………取り消してよ」

「凛さん?」

「どんな事を思っていようがそんな事口に出さないで。死んで当然の人間なんて………いないよ」

「で、でも……前の裁判で凛さんは言ってたじゃないですか!!分倍河原剛に対して『うちらに敵なす異分子は排除しなきゃ』って!あの女も立派な異分子ですよ!」

「うん。確かに言ったよ。でもそれは間違ってた。例え協調性が無くても、スパイであっても、最初からそうだったわけじゃない。きっとそうなった訳がある筈。だからうちは対話を諦めない」

きっと話せば分かり合える。そうまでは思ってないけど、最初から拒絶していたら進展は何もない。たとえ結果が徒労に終わったとしても動く価値はある。

「凛さん………」

「てゆーか、うちの取り柄はこれだけだしね」

一応コミュ力には自信がある。後は諦めずに何度もトライする事だけだ。

 

 

 

 

 

「………そうですか。凛さんがそこまで言うなら止めません」

少しため息をついてそう言う業ちゃん。

「業ちゃん、ごめんね。我がままで頑固なうちの事嫌いになったでしょ?無理に一緒にいてくれなくてもいいんだよ?」

「いえ。凛さんのそのちょっぴり頑固なとこも私は大好きですから。ただ………霜花優月は私が監視します」

「監視?」

「………仮にあの女が敵であった場合かなり厄介です。だから何が起きても対処出来る様に私が監視します。これくらいはいいですよね?」

「うん。分倍河原君の件もあるし、誰でも疑わざるを得ないよね……。でも気をつけてね。業ちゃんが怪我したらうち寝込んじゃうかも」

「…ああ、凛さんにそう言ってもらえるだけで私は幸せ者です!危うく昇天しかけるところでした!!」

「昇天!?大袈裟すぎない!?」

業ちゃんはうちの事を考えて助言をしてくれた。危なっかしいけど、業ちゃんの優しさには毎回助けられる。これがうちだけじゃくてみんなにも優しいければなぁ………。

 

 

 

 

 

 

 

「コンコン」

 

 

すると、扉をノックする音が聞こえた。誰か来てくれたのだろうか。

「どうぞー」

「チッ、アイツか……」

業ちゃんが何か小言を言ったみたいだがうちには聞こえず。

扉が開くと1人の少女が入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「助手………………久しぶりだな」

  

 

 

 

 

 

 

「………………え?」

うちは、謎の人物の登場に口を開けたまま固まってしまっていた。

その人物はうちに話しかけているようだ。

「えーっと……どちら様ですか?」

失礼なのは承知でそう返す。流石に知らない人に『久しぶりっ!』とは言えない。

「その顔………やはりキミもワタシの事を覚えていないみたいだな。実に残念だ。ワタシ達は親友であり、かつキミはワタシの助手でもあったのに」

「そ、そうだったんだ」

うちがこの子と親友………。なんてこった。うちは親友の存在すら忘れてしまったというのか。あと助手ってなんだ。助手は絶対嘘だろう。

 

 

 

 

「凛さん。騙されちゃダメです。この人、私達と会った時から凛さんの事についてずっと私達の記憶にない事ばかり言ってるんですよ。どうも虚言癖があるみたいです」

すると、近くにいた業ちゃんがうちを庇う仕草を見せる。

「随分と酷い言い草じゃないか。ワタシの話した事は全て事実だと言うのに。自慢じゃないが、ワタシは生まれてから一度たりとも嘘をついたことがないんだ。誠実で完璧なガールだからな」

謎の人物は胸を張りながらそう言う。

「その発言がもう嘘くさいんですよ。何が完璧なガールですか。凛さんが嘘で汚れてしまうので近寄らないでもらえますか?」

「キミの言葉は相変わらず日本刀のように鋭いな。ふむ、さてはキミ、幼少期に悪口を言う自分かっこいいー、と勘違いして友人の悪口を喚き散らし、次第に周りから友達が離れていった悲しい過去を持っているタイプじゃないかね?」

「は?なんですかコイツ本当にムカつきますね。一発ぶん殴ってもいいですか?」

「ちょっ!?業ちゃんやめて!?というか人の病室で喧嘩しないで!?」

瞬く間に激しいレスバを繰り広げ、さらにリアルファイトにまで発展しそうな2人を慌てて止める。

 

 

「問題ないさ。ただの言葉遊びだよ。それよりも北条業クン。キミはもう十分助手と話しただろう。ワタシは助手と2人きりで話がしたいんだ。だから部屋から出て行ってもらえるかね?」

「絶っっっっっっっ対に嫌です。胡散臭くて味方がどうか分からない探偵を自称する痛い女と私の愛しき凛さんを1秒たりとも接触させたくないんですよ。分かったらあなたが出て行って下さい」

「ふむ、どうやらキミは盛大な勘違いをしているようだ。まず、助手はキミの所有物ではない。だから助手が誰と接触しようがキミにそれを止める権利はない筈だ。それと、キミはどうやら助手と相思相愛だと思い込んでいるみたいだが、助手がキミに抱いている感情はどう考えても恋愛感情ではない。キミが自己の欲望を勝手に押しつけているだけだろう。助手は優しいからな、キミを傷付けまいと黙っていたのだろうが、ワタシから言わせればキミの行為は助手にとってはただの迷惑行為と変わりあるまい。つまり、ストーカーと同じという事だよ」

「………私と凛さんはお互いに結ばれているんですよ。会ったばかりのあなたに何が分かるんですか。次喋ったらマジで殺しますよ」

「………やれやれ。これは重症だ」

「………ねぇ、病室では喧嘩しないでって言ったよね?」

「………………!?」

2人がまさに一触即発の空気になったところで、うちは堪忍袋の緒が切れた。

「次喧嘩したら2人ともぶん殴るから。いいね?」

「り、凛さん………。ご、ごめんなさい!!!謝るので嫌わないで下さい!」

「………す、すまない、助手。少し熱くなってしまった」

2人とも顔面蒼白な状態でうちに謝罪する。

「反省してるんだったら2人で握手して仲直りして」

「………すみませんでした」

「ああ、ワタシも悪かった」

2人は素直にうちの前で握手した。

「あと、うちはこの人と話がしたいから業ちゃんは一旦外に出て欲しい」

「えっ!?でも凛さん、この人は味方じゃないかもしれないんですよ!?もしかしたらスパイかも……」

「………………」

「………はい、分かりました………」

うちが無言で睨むと業ちゃんはとぼとぼと病室を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………やれやれ、彼女のキミに対する愛情は相当のものだな。暴走気味なのが少し心配だが………」

「まあね。でも、かと言って業ちゃんを拒絶する事なんて事したら………どうなるか分かんないから」

正直、業ちゃんが心の底で何を考えているのかが全く読めない。だからこそ、彼女を下手に刺激して感情を爆発させるような事はしたくない。

「それはいいとして………………あなたが何者なのか、いい加減教えてくれない?誰だか分からなくてさっきからずっとモヤモヤしてるんだから」

そうは言ったもののこの人物の正体な何となく想像がついている。間違いじゃなければ、この人が例の………。

「………そうだな。確かに得体の知れない者と話すのは非常にストレスになるだろう。いいか、一度しか言わないからよく聞きたまえ」

その人物は羽織ったマントを翻すと、探偵帽子を取って高らかに宣言した。

 

 

 

 

「ワタシの名前は明智麻音。超高校級の探偵であり、天下に轟くスーパーガールだ。二度と忘れぬ様にその胸に深く刻み込んでおきたまえ」

 

 

 

「……………」

「どうした?そんな物珍しそうな顔をして」

「いや、今まで会ったことないタイプの人だなぁって」

うちの記憶の中では、初っ端からこんなに自己主張の激しい自己紹介をした人には会ったことがない。

「いや、だからワタシとキミは以前から………、まあいいか。こればかりは言ってもしょうがない事だからな」

「!?そうだ!!!そのうちの事以前から知ってるってどういう事?なんで明智さんは急に現れたの!?あと助手って何??」

「少し落ち着きたまえ。そう同時に質問を投げかけられるとたとえ完璧なワタシでも答えられない。ひとまず一問一答形式にしないかね?そうすれば簡潔にキミの問いに答えられるだろう」

「一問一答か………分かった、それでいいよ」

 

 

 

 

 

「よし。ではまず何から聞きたい。助手の頼みだからな、出来る限りの質問に答えよう」

「はい!まずその『助手』って呼び方何??」

「最初の質問がそれか………」

「最初呼ばれた時から気になってしょうがなかったんだよ」

「なるほど。では答えよう。キミはワタシの助手として高校時代、ワタシと常日頃から行動を共にしてたのだ。だから助手と呼んでいる」

「えっ!?待って何そのシャーロックホームズとワトソンみたいな関係!?絶対嘘じゃん!!」

「はい次」

「いや全然納得してないんだけど!?えっと、じゃあ………明智さんとうちは希望ヶ峰学園の同級生、って事でオーケー?」

「オーケーだ。ちなみにクラスも一緒だった」

「それで明智さんも、うちらと同じで拉致されてここに来たと」

「その通り。境遇はキミ達と全く同じだ」

「うちの事を覚えてるのは………なんでなの?」

「それはワタシが教えてほしいくらいだ。何故かワタシはキミ達とは違い、希望ヶ峰学園での高校生活を全て覚えている。もしかしたらこの相違に何か黒幕側の意図があるのかも知れない」

「あなたは今までどこにいたの?」

「食堂にある隠し扉の中だ。いわゆる牢屋、だな。キミ達が来るまで監禁されていたのだ。当然誰もいないし、喋り相手は時々来るあのカバのぬいぐるみのみ。アイツの顔を見るのはうんざりだ」

明智さんはげんなりした顔でそう言う。

「じゃあ、明智さんはこのコロシアイを仕掛けた黒幕側ではない、って事で信じていいんだよね」

「勿論だとも。とは言ってもそれを証明できる物は何一つ持ち合わせていないがね」

「………………」

うちは明智さんをじっと見る。………嘘をついている様には見えない。ただ、見ただけで全てを信用するべきではない事は自分でもよく分かっている。飛田君を殺した中澤君だって、実はスパイで喜屋武さんを弄んだ分倍河原君だって。そして豹変した柴崎君だって最初はそんな事をする風には見えなかった。だから、本当はもっとじっくり味方かどうか見定めないといけないはずなんだけど………。

 

 

 

 

 

「分かった。その言葉信じるよ」

「………キミのその真っ直ぐな目。相変わらず人を疑うという事を知らないようだな」

明智さんは少し困った様に笑った。

「でも、ワタシはその実直さに興味を惹かれたんだ。ワタシの好きなキミのまま変わっていなくて安心したよ」

「そ、そうなんだ………」

なんかこうストレートに言われるとなんだかむず痒いな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても………。

「………………………」

うちは改めてまじまじと明智さんを見る。いや見てしまう。

 

 

 

 

 

 

髪色は暗めのネイビーカラーで、髪型は少し外ハネしたミディアムボブ。

目は二重で、肌は透き通るように白い。

アイドルと間違えられてもおかしくない程の美しい顔だ。

同性であるうちもドキンとしてしまう。うちがもし男だったら、会った瞬間に恋に落ちていただろう。

 

 

 

 

ただ、座っていたから分からなかったけど身長はとても低い。多分140センチいってるかどうかだと思う。

超高級の肩書きだけ見たらとても頼りになりそうだけど、この小学生みたいな見た目を見ると、頼りになるかと言われたら迷わずノーと答えるだろう。うわ、うちめっちゃ失礼な事考えてるな。絶対言わないでおこう。

 

 

 

 

 

 

「今、肩書きは凄いけど身長は低いし頼りにならなそう、なんて思っていただろう」

「うわっ!?」

気がつくと、いつの間にか明智さんがうちの真正面、しかも鼻と鼻がくっつくくらいの距離まで来ていた。うちは慌てて後ずさる。

「ま、まさかそんな酷い事思ってるわけないじゃん!!」

「正直に話したまえ。ワタシはその程度でキミに怒ったりはしないさ」

どうやら既に見破られているみたいだ。

「………ホントは少し、そう思ってました。すみません」

「素直でよろしい」

明智さんはニヤリと笑った。

「だが………この冷静沈着な探偵でも流石に少し動揺している」

「ごめん、やっぱり傷ついたよね………」

「いや、その事じゃない。記憶を消された事によってキミがワタシを覚えていなかったという事実にだよ。ワタシにとって唯一の友と呼べる存在はキミだけだったからな」

「もしかして、うちらかなり仲良かった友達だったの?」

「キミはどう思っていたか知らないが、少なくともワタシはキミを親友、………そして最高の助手だと思っていた」

「そんな風に思ってくれてたんだ…………」

なんか申し訳ないな、と思っていると………。

明智さんが真剣な表情でうちの肩を掴んだ。

「えっ!?明智さん!?」

「そんなキミに改めて頼みがある」

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助手よ。いや、ワタシのワトソンよ。ワタシとまたコンビを組んではくれないか?そしてこの奇怪な事件を一緒に解決して欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀山香織side

 

 

「何故………大学に遊園地があるんだ…………?」

「…………………」

私は第3のエリアに入った瞬間絶句した。

何故なら目の前には私の想像を遥かに超える規模の遊園地が広がっていたからだ。

私は遊園地に来るのはこれが初めてだが、これ程のものだとは思いもしなかった。過剰な照明、鳴り響く騒音。とても楽しめるとは思えない。世の中にある遊園地とは全てこのような雰囲気なのであろうか。

「霜花、遊園地とはこんなにも騒々しい場所なのか?」

「私に聞かないで下さい。私も遊園地に来るのは初めてです。……とっとと探索しますよ」

そう言って霜花は私の前を歩き出す。

「……よし、集中しよう。きっと手がかりはある筈だ」

私も気合を入れ直し霜花の後を追った。

 

 

 

 

「………ここは?」

「………ミラーハウス、だそうです」

私と霜花は、入り口からすぐ近くにある『モノカバドッキリミラーハウス』という施設の前にいた。

「明らかに怪しい施設だが………どうする?」

「………貴方にお任せします」

霜花は昨日の学級裁判以来ずっとこのような調子だ。誰とも目を合わせず、常に下を向き返事もどこか上の空だ。恐らく、昨日相川に庇われたのが余程衝撃的だったのだろう。

だから私は今回の探索に霜花を誘った。彼女にある助言をする為に。

「ここに留まっていても仕方がない。警戒しつつ入るぞ」

「………………はい」

私達は結局、目の前の施設に入ることにした。

 

 

 

 

 

「…これがミラーハウスか」

中に入ると、名前の通りあらゆる場所に鏡が設置されていた。

周りを見渡すと反射された私の姿が全方向に存在し、まるで別世界に足を踏み入れたと錯覚してしまう。

「……これを見て下さい」

霜花がある場所を指差す。そこにはこの施設の遊び方が書いてあった。

 

 

 

 

 

『この施設は迷路と謎解きを両方味わえる大人気アトラクション!!ルールは超簡単!!ミラーハウスの中を突き進みクイズに挑戦!正解したら新たな通路が開けて先に進めるよ!全5問のクイズ正解すればゴール!!ゴール出来た先着3名の方には景品をプレゼント!」

 

 

 

 

 

「迷路を進みながら問題を解く施設か………」

一見すると単純明快なルールではあるが、それが逆に怪しい。モノカバは間違いなくこの施設にも何らかの罠を仕掛けている筈。いつも以上に警戒する必要があるな。

「………面倒な場所ですね。早くここをクリアして脱出しましょう」

霜花は早歩きでミラーで出来た通路を進む。

「………ああ。だが霜花、あまり急ぐのは得策では………」

「痛っ!?」

私がそう言った束の間、霜花は目の前にあるミラーに思いっきりぶつかっていた。

子供がミラーハウスではしゃいで走った瞬間、目の前にあったミラーに激突、号泣するみたいな話はよくあるそうだ。

流石に泣いたりはしてないが、霜花は額を抑えて蹲っている。

「…大丈夫か?」

「………平気です。今のは油断しただけなので。そんなことより早く…」

「待て」

またもや先走ろうとした霜花の腕を掴む。

「……何ですか?」

「ゆっくり歩くぞ。どんな罠が仕掛けられているか分からない。急いでも私達に何の得もないだろう?………普段の君だったらこれくらい当たり前に認識している筈だが」

「…………!!」

私の言葉で霜花の顔色が明らかに変わったのが分かった。

「今の君は視野が極端に狭くなっている。超高校級の狙撃手の名が泣くぞ。ゆっくり歩いて気持ちを落ち着かせた方がいい。それに私も君に話があるんだ」

「それで私を誘った訳ですか………。分かりましたよ」

霜花は観念したように私の後をついてきた。

 

 

 

 

 

 

「君は………相川に関することで悩んでいるんだろう?」

1つ目の問題を探している最中、霜花にそう問いかける。すると彼女は体をビクッと震わせた。

「やはりな。………彼女と話がしたいんじゃないのか?」

さらに問いかけると、霜花はゆっくりと首を振った。

「私には………彼女に会う資格はありません」

「資格がない?」

「私は彼女を拒絶し続けてきました。あれだけ好意的に接して来てくれた彼女を。その上私は彼女に『殺してやりたい』なんて決して言ってはいけない言葉を浴びせてしまったんです。おまけに学則違反の処刑を庇われてしまい、結果彼女に大怪我を負わす事になってしまった。合わせる顔がありません」

霜花はぽつぽつと言葉を絞り出す。ここまで霜花が口を動かしたのは久しぶりに見たな。

しかし………彼女の心は今相当拗れているようだ。何が正しいのか、自分が今何をすればいいのかが分からず混乱している状態だと考えられる。

「君は今も相川や私達を殺したいと、そう思っているのか?」

「いえ。というより、あの時の言葉は全て嘘です。貴方達に少しでも嫌われるように言っただけなので」

「………周りに迷惑をかけずに死ぬ為に、か?」

「………ええ」

彼女の表情が一層暗くなる。やはり彼女の根底にあるのは『死にたい』という負の感情か。

「私は今でも死にたい。けどそうしたら庇ってくれた彼女の好意が無駄になってしまう。それに彼女の生きてという思いが私を惑わせているんです。一体私はどうしたら………」

難しい話だが、解決方法は一つしかない。

 

 

 

 

 

 

「霜花、君は一刻も早く相川と話すべきだ」

私は、この場で与えられる最大限の助言を霜花に伝える。

「私は君の保護者でもなんでもない。だから君の生き方に文句をつけるつもりはない。本当は君が死にたいというのは全力で止めたいのだが、私に生きることを強要する権利はないし、最終的に決めるのは君だからな。だが………生きるにしろ、死ぬにしろ相川と話しておくべきじゃないのか?お互いに……知りたいことがあるんじゃないかと私は思っているが」

霜花は何故相川が自分を庇ったのか、相川は霜花は何故そこまで死にたがるのか、お互いに聞きたいことはたくさんある筈だ。

「…………貴方も大概お人好しですよね」

「そう、なのか?」

「ええ。勝手にナーバスになっているはぐれ者にまで声をかけるなんて………。相川さんといい、ここにはお人好しの人が多すぎですよ」

「私は大したことはしていない」

「ともかく貴方の助言、素直に聞き入れることにしますよ。………助かりました」

「役に立てたのなら何よりだが…大丈夫か?」

「意外に心配性なんですね、貴方。ですか心配は無用です。ただ話すだけですし」

「そうか、なら私から言う事は何も無い」

霜花はどうやら相川と会う決意を固めたようだ。これで霜花の心が整理出来るといいのだが。………相川、頼むぞ。

 

 

 

 

 

そうこう話しながら探索しているうちに1つ目の問題を見つけた。

タッチパネルが用意されておりここに問題が提示されるみたいだ。

「早速開きますね」

霜花が画面に触れる。すると問題が出題された。

 

 

 

 

 

 

漫画『ドラ○もん』の登場人物、スネ○の月の小遣いはいくらか?

 

①1万円

②2万円

③3万円

④5万円

 

解答権は一回のみ!

 

 

 

 

 

 

「………全く分からん」

「……同じく」

この漫画のタイトルは聞いたことがある気がする。だが内容は全く知らない。この問題の難易度が高いか低いかすら判別がつかない。

出される問題は雑学だと踏んでいたが………このような分野からの出題とは。

「独島がいればな……」

「分からない問題を考えても仕方がないでしょう。正解は4分の1なんですから、適当に押しましょう」

「……一理あるな」

霜花はそう言って④のボタンを押した。

「ブブーっ!!不正解!残念でしたカバーー!」

だが、画面に現れたのはモノカバが舌を出して馬鹿にしてる絵だけだった。

「………………不正解だそうだ」

「ムカつきますね」

するとガチャンと音がして一つの通路が開いた先には『敗者の出口』と書かれている。

「敗者は去るのみ、か」

「……行きましょう」

敗者となった私達は出口に向かうしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はメリーゴーランド、コーヒーカップなど他の遊具も回ったが特に変わった点は無かった。

「ここが診療所か」

「…………」

次に私達が向かったのは遊園地の西端にある『簡易診療所』だ。

恐らくここに………相川がいる。

「………」

霜花は自身の拳を握り直す。

「私も行くか?」

「1人で行けますよ。子供じゃあるまいし」

「そうか。私は入り口で待っている。存分に話すといい」

「………ええ」

霜花はゆっくりと中に入っていく。

さて、私はゆっくり待つとしよう。

これからの事を考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛side

 

 

「コンコン」

業ちゃん、そして明智さんが来てから数分後。

誰かがまた来てくれたみたい。

「どうぞ」

うちは返事をする。するとその人物はゆっくりと入ってきた。

「失礼……します」

 

 

 

 

 

 

入ってきたのは………………霜花さんだった。

 

   

 

 

 

 

「霜花さん!!!」

うちは思わず立ち上がる。………腹部の痛みを忘れて。

「痛っ!?」

案の定痛みがうちを襲い思わずベットに座り込む。

「大丈夫ですか!?」

霜花さんが思わずうちに駆け寄ってくれる。

「ごめんごめん、ちょっと痛かっただけだから」

「無理しないで下さい。貴方の怪我は重症なんですから」

「大丈夫だって。それよりも………」

うちはベットに腰掛けて隣をぼふっと叩いた。

「ここ座ってよ。ゆっくり話そう?」

「………ええ」

霜花さんは素直に私の隣に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………」

「…………………」

き、気まずい………。

なんかお互い積もる話が多すぎて何話したらいいか分かんない状態。私も霜花さんも処刑が執行される前お互いに怒鳴りあったから余計に話しづらい。

「………怪我は、その、大丈夫ですか?」

沈黙に耐えきれなかったのか、霜花さんがうちに声をかける。

「……うん。モノカバが綺麗に治してくれたんだ。ほら」

うちは綺麗に治った脇腹を見せる。

「傷がない………そんな馬鹿な」

「うちも有り得ないって思ってモノカバに聞いたんだけど、何も教えてくれなかったんだ」

「そうですか………」

うちの返答を聞いた霜花さんはこっちに向き直る。

「まず、昨日の件について謝罪します。本当にすみませんでした。私は貴方に怪我をさせる気は無かった。これだけは本当です」

「ええ!?霜花さんが頭下げる事なんて無いよ!?うちが勝手にやった事なんだから!」

「それでも、貴方が私を庇って傷ついたのは事実です。そしてそれは私が学則違反をした事が原因で起きたもの。謝って済む問題ではありませんが………私には頭を下げる事しか出来ません」

「大丈夫だって!過ぎた事なんだしさ」

「………ですが、今日私はここに謝罪しに来ただけではありません。貴方に質問があります」

「………うん」

「何故、あの時貴方は私を庇ったのか。私が聞きたいのはこれだけです」

霜花さんが決意に満ちた表情でうちを見る。

やっぱり聞きたいのはそれかー。うーん、ぶっちゃけ説明出来る程大した理由はないんだけど………。

 

 

 

「う〜ん、それには答えてもいいんだけど………、じゃあ先に霜花さんの話を聞かせてよ」

「……私の話、ですか?」

「うん。前は教えてくれなかった霜花さんが狙撃手になった経緯とか、霜花さんの過去。それに………なんで死にたいって思ってるのかとか」

「…………………」

「それを答えてくれたらうちもさっきの質問、答えるよ」

「先に私に言わせるんですか。卑怯な手を使いますね、貴方」

「卑怯って………」

そう言われるとうちが性格悪い奴みたいじゃん!!

「………分かりました。私から話しますよ」

霜花さんはゆっくり深呼吸をすると全部うちに話してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(霜花の過去の話はchapter2.5の『狙撃手の独白』に書かれています。まだ見てないと言う方は是非そちらからご覧ください)

 

 

 

 

 

 

 

「今話したのが私の過去の全てです。これで満足ですか………って貴方、もしかして泣いてるんですか?」

「うぅ………だってぇ……霜花さんの過去が壮絶すぎて………」

霜花さんが話し終わる頃には私の顔面は涙でぐしょぐしょになっていた。

「とりあえずこのハンカチ貸しますからその醜い顔面を拭いて下さい」

「ぐずっ………ありがとう」

うちは涙を拭く。これじゃあさっきの業ちゃんと変わらない。人に言える立場じゃなかったんだな、うちって。

「私の話を聞いて分かったでしょう。私は一生消えない罪を背負っている。そして師匠の遺言通り命を懸けて守りたい人を探してきましたが、もう限界です。私は結局そのように思える人物に出会えなかった」

「………」

「だから私は死に場所を探していた。師匠には悪いですが意味のない人生を送るよりかは師匠や死んでいった仲間の元に向かいたいと思ったんです」

「………」

「改めて質問です。何故私を助けたのか、それについて教えてください」

霜花さんの鋭い視線がうちに突き刺さる。

霜花さんの話を聞いて………彼女が何を求めているかちょっと分かった気がする。

 

 

 

 

 

彼女は………自分が生きていていい存在なのか、そうじゃないのか。その答えを欲しているんだと思う。

 

 

 

 

それを踏まえてうちは答える。

彼女に生きていてもいい、と伝える為に。

 

 

 

 

 

 

 

「うちはさ………我がままで自分勝手なんだ」

「………え?」

「自分がしたい事をするし、したくない事は絶対にしない。だからさ………霜花さんを助けたのもうちの我がままなんだ」

「……それは、どういう……」

「相手の事情なんか知ったこっちゃない。うちが助けたいと思ったから助けた。それだけ」

「だから、何故私を助けたいなんて………」

「前にも言ったと思うんだけど、霜花さんを初めて見たとき思ったんだ。『なんて悲しい眼をしているんだろう』って。あの眼はうちには分かる。………酷く孤独で寂しそうな眼だった。うちさ、そんな眼をしてる人見ると放って置けないんだよね。だから霜花さんを救いたかった。友達になろうってしつこく言ってたのもその為なんだ」

「それだけの………理由で?」

「そう。というか、人を助ける理由って大体そんなもんだよ。大した理由なんかない。直感で助ける感じ。ああだこうだ理論づけてから助ける人なんてそういないんじゃないかな」

「……………」

 

 

 

「霜花さんってさ、自分のことどう思ってる?」

うちは話を変えて彼女に問いかける。

「自分の事、ですか……?」

「そう、自分のこと」

「私は………師匠を死なせ、仲間も守れなかった力不足の臆病者だと」

「ほら、そこだ!!」

「えっ?」

「霜花さん、自分を卑下しすぎなんだよ!だからネガティブ思考になって死にたいなんて思うんだ!」

「ですが、これは誇張でも何でもないんですよ。本当に私が全て悪いんです」

「じゃあ聞くけどさ、誰かに『お前のせいでお師匠や仲間が死んだんだ』って責められたりしたの?」

「それは………」

「ないんでしょ?だったら霜花さんのせいじゃないよ。それにさ、師匠や仲間達は霜花さんを守れて良かったって思ってるんじゃないかな」

「良かった………?」

「うん。話を聞く限り霜花さんが恨みを抱かれてたとかは無さそうだし、とっても仲が良かったんでしょ?だったらその人達は霜花さんに生きて欲しい、そう思って身を挺してまで守ってくれたんだと思うよ」

「………」

「だからさ、霜花さんがもし生きるのを諦めたら天国にいるお師匠さん達、きっと怒るんじゃないかな。せっかく守ってやったのに!みたいな感じで」

「私は!!!!!」

霜花さんが堪らず叫ぶ。

「私は!!ずっと罪だと思っていた!!!師匠や仲間達が死んでいったのは私のせいだと思っていた!!」

「ううん、違うよ。霜花さんだけのせいじゃない」

「師匠や仲間達は私を恨んで死んでいった!!お前のせいで死んだんだって!!」

「恨んでなんかないよ。きっと霜花さんを守ったこと、後悔してない」

「私は罪人だ!!生きていてはいけない人間なんだ!!!」

「そんな事ない。霜花さんに生きて欲しいって人は沢山いるよ」

「嘘だっ!!そんな人間どこにも」

 

 

 

 

 

 

 

うちは霜花さんをそっと抱きしめる。

 

 

 

 

 

 

 

「…………………!!!」

「ここにいるじゃん。霜花さんに生きてって思う人がさ」

「…………どう、して………」

「うーん、それも我がまま、かな?」

「………私、なんか」

「なんか、なんて言っちゃダメ。霜花さんは普通の高校生だよ。だから普通に生きていいの。もう罪悪感とか持たないでいいんだよ」

「………でも………それじゃあ師匠は……」

「別に忘れろだなんて言ってない。けど………無理に過去を背負い込まないで」

「……………」

「それと………苦難を一人で抱え込まないで。うちも一緒に悩むから。うちにも関わらせてよ」

「………でも……」

「大丈夫。そういうのうち慣れてるし。それに言ったじゃん、うちは霜花さんと『友達になりたい』だけだって」

「………私は………許されたんでしょうか?」

「許すも何も悪いこと何もしてないんだよ。まあ黙って抱え込んだもの全部吐き出したみたいだし、それで許されたって事でいいんじゃないかな?」

「普通に生きて………いいんですか?」

「全然オッケーだよ。てゆーか、お師匠もそれを望んでたんじゃない?過去を振り返らず前を向いて普通に生きろって事をさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うわわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

霜花さんはうちに抱かれながら大きな声で泣き出した。

「もう、大丈夫だよ。もう罪悪感に蝕まれる必要なんてない」

「うわわぁぁぁぁぁんんんん!!!!!!!」

「もう、大丈夫。大丈夫だから」

それからしばらく霜花さんは泣き続けた。

今まで溜めてきた全ての感情を吐き出すかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

「すみません、見苦しいところを見せました」

「大丈夫だよ、泣くことは恥ずかしい事じゃないよ。それに可愛かったし」

落ち着いた霜花さんに診療所内にある水を飲ませた。

目には泣き腫らした跡がある。

「こんなに泣いたのは………久しぶりですね」

「最後に泣いたのはいつなの?」

「幼少期………師匠に思いっきりしごかれた時ですかね」

「聞くだけで怖いなその師匠………」

しごかれるって、まずうちろくに怒られた事すらないから想像が出来ないな。

「それで霜花さん。今後の方針は決まった?」

「ええ。私は………もう少し生きてみようと思います。貴方の言う通り、このまま死んだら命がけで私を守ってくれた師匠や仲間達に顔向け出来ませんから」

「そっか。ならよかった」

いやー、一時期どうなるかと思ったけど霜花さんがそう言ってくれて安心したよ。うちはほっとしてベットに倒れ込む。

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、うちらさ、こんだけ腹を割って話し合ったじゃん。だからさ……もう友達だよね?」

「………貴方は口を開けばそればっかりですね」

霜花さんは呆れた表情でため息をつく。

「えーそうかなー?」

「そうですよ。それに私は………貴方の友達として相応しくないと思います」

「あ、また自分を卑下してる。それ悪い癖だよ」

「あ」

「うちは今の霜花さんと友達になりたいの!……そうだ、なんかもう苗字じゃなくて名前で呼ぼう。これから優月ちゃんって呼ぶね」

「え?」

「うちの事も凛って呼んでいいよ。はい、これで友達」

「話の流れが強引すぎますよ……。どんだけ人との距離の詰め方が早いんですか」

「だって優月ちゃん、うちがどれだけ口で言ってもネガティブな事ばっかり言うんだもん」

「……それは、否定出来ませんが」

「もしかして、うちと友達になるの嫌?よく考えたらうち、優月ちゃんにエゲツない嫌われ方してたよね………。あ、ヤバいうち身の程知らずで人に友達になるのを強要してるクズじゃん」

「今度は貴方がネガティブになってどうするんですか。………確かに当初は嫌いでしたが今はそんな事思ってないです。貴方が私と友達になろうという誘い、非常に嬉しく思っています。なにせ私を救ってくれた命の恩人なのですから」

「そ、そんな大袈裟な………」

「こんな私で良ければ、貴方の友でいさせて下さい。改めてよろしくお願いします、凛」

優月ちゃんが晴れやかな表情で握手を求めてきた。

うちも当然それに応じる。

「うん!こちらこそよろしくね!優月ちゃん!」

 

 

 

 

「あと、みんなにも一応謝っておきなよ。悪口言ってたんだし」

「そう、ですね……。私の事、許してくれるでしょうか?」

「大丈夫じゃない?ちゃんと謝れば許してくれるいい人達ばっかりだし。そうだ、ついでに友達になっちゃえば?

「私は凛と違ってコミュニケーション能力は皆無なんです。そう簡単に出来ないですよ」

「そう?じゃあみんなの事名前で呼んじゃえば?そうすればグッと距離が縮まると思うよ。まあ言うてうちも全員名前で呼んでるわけじゃないけどね」

「名前………ですか。なるほど、分かりました。やってみます」

「うんうん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀山香織side

 

「どうやら終わったみたいだな」

「……………」

私は診療所から出てきた霜花に声をかける。

「もしかして………全て聞こえていましたか?」

「全てではない。だが、誰かの泣き声はここでも聞こえた」

「………そうですか。これは一生の恥ですね」

軽く笑いながら慌てて目を擦る霜花。ふふ、ここに来た時とはまるで別人のようだな。

「相川とは………しっかり話せたか?」

「ええ。私は……彼女に救われた。今度は私がその恩を返す番です」

「そうか」

まさかあの霜花まで説得してしまうとは。やはり君は凄いよ、相川。

………私は君と友でいたいのに、君がどんどん離れていく気がする。

 

 

「今まですみませんでした」

「ん?」

「今までの身勝手な行動、他者を攻撃するような言動について謝罪します」

「いや、分かってくれたならいいんだ。これから協力していこう」

「これも私を後押ししてくれた貴方のおかげです。ありがとうございました、香織」

「か、香織………!?」

急に名前で呼ばれた私は恥ずかしさで顔が真っ赤になった。

だ、駄目だ!友を作るのに慣れてない私は名前で呼ばれる事に慣れていない!!

「凛に近しい友になるには名前を呼べばいいと言われました。………駄目でしょうか?」

霜花が申し訳なさそうに私を見る。そ、そんな目で見ないでくれ!!そんな目をされたら私は………断れない!!!!

「い、いや。そ、それは、全然、か、構わないぞ」

私はなんとか見えを張り心を保つ。

「そうですか。では改めてよろしくお願いします、香織」

「………きゅうぅぅぅ」

「えっ、」

私は恥ずかしさのあまり卒倒した。

名前を呼ばれるのは………………まだまだ慣れない。

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霞ヶ峰麻衣子side

 

 

「うぉぉぉぉ!!遊園地だぜーーー!!!」

「広ーい!!楽しそうなアトラクションたくさんあるー!!」

大はしゃぎする黒瀬殿と独島殿。けど拙者のテンションはだだ下がりでござる。

C棟、通称遊園地エリアは拙者が思ってた以上の大きさでござった。その大きさはディ○ニーに引けを取らないのではござろうか。

しかし拙者、ただでさえ引きこもり気味でこのような騒々しい場所は苦手な上極度の高所恐怖症持ち。こんな場所、一刻も早く帰りたいというのが本音でござる。

「じゃあまずどこ行く〜?」

「そりゃあもちろんアレだろ!」

黒瀬殿が指差したのは、よりにもよってジェットコースター。しかもぶら下がり式の絶叫型でござる。

決めたでござる。拙者、ここから絶対動かないでござる。

拙者は近くにあるゴミ箱に捕まり決して動く意志がない事をアピールするでござる。

「…………何してんだ?麻衣子」

「拙者、ここから動かない事に決めたでござる。ジェットコースターは二人で行ってくるでござるよ」

「えー、ジェットコースターそんなに嫌なのー?」

「嫌でござる」

「大袈裟だろ……」

「黒瀬殿はなーんにも分かってないでござる!!高所の恐ろしさは高所恐怖症の人にしか分からないでござるよ!」

 

 

 

 

「う〜ん、確かにいきなりジェットコースターはかわいそうだしー、まずはそこまで怖くない奴からにしよっかー」

すると独島殿がそう提案してきたでござる。

妙でござる。あのイタズラ好きの独島殿がこんなあっさり引き下がるなんて。けど、拙者は深く考える事はしなかったでござる。

「それならいいでござる」

「えー!オレジェットコースター乗りたかったんだけどなー」

「まあまあ〜。後でわたしが一緒に乗ってあげるからー」

「マジで!!流石灯里だぜ!!」

「ふふーん。もっと褒めてくれても構わんよー」

2人はジェットコースターについての話で盛り上がってるでござる。なんか………拙者だけ仲間外れの感じがして釈然としないでござる。

「よーし。じゃあまずアレ乗ろうか〜」

すると独島殿があるアトラクションを見つけたでござる。

ジェットコースターではなくてあまり怖くないアトラクション……。

 

 

 

独島殿が指差したのは空中ブランコでござった。

 

 

 

 

 

「どこが怖くないのでござるか!!!」

「ん〜?空中ブランコ楽しいじゃーん」

「いいチョイスだな灯里!早く乗ろうぜ!!」

ニヤニヤする独島殿にウキウキする黒瀬殿。

「拙者、少しお腹が痛くなってきたので今回はパスで……」

「ほら行くぞ麻衣子!これくらいなら大丈夫だろ?」

逃げようとするも黒瀬殿にあっさり捕まり連行される拙者。

「だ、誰か助けて欲しいでござるぅぅぅぅぅぅぅ!!」

園内に拙者の悲鳴が響いたでござる。

 

 

 

 

 

「シ、シヌ……………。モウムリ…」

空中ブランコに散々振り回された拙者はもう瀕死状態でござる。

高い場所にいる恐怖、そこで振り回される恐怖。拙者に深刻なダメージを与えるには十分でござった。

「楽しかったね〜」

「いやー久しぶりに乗ったなー空中ブランコ」

何故お二人は平気なのでござる。本当に同じ人間でござるか?

「じゃあ次はー………アレ乗ろうっかー」

独島殿が次乗ろうとしているのは………さっきとは違うタイプのジェットコースターでござるな。アトラクション名は「モノカバジェットコースター、『疾風』」………。もう少しいいネーミングはなかったのでござろうか。しかし……文字だけ見たら超高速型のジェットコースターだと考えてしまうでござる。

 

 

「独島殿………お主、拙者を殺すつもりでござるか?」

「そんな大袈裟な〜。わたしはただ霞ヶ峰さんが楽しめればいいなって思ってさー(笑)」

「さては独島殿、拙者が苦しんでる姿を見て楽しんでいるでござるな!?

お主ドSでござるな!?」

「冗談だよ〜。霞ヶ峰さんは乗り場まで来てもらうだけだからー。乗るのはわたしと黒瀬くんだけー」

「えっ?」

独島殿の意外な返答に拙者は思わず聞き返したでござる。

「いいのか?灯里。麻衣子も含めて3人で乗りたいってさっき言ってたじゃねーか」

「そうだけど………、嫌がる霞ヶ峰さんを無理矢理乗せても可哀想だしねー。遊園地っていうのはみんなが楽しくなければ意味ないからさー」

「さっき強制的に空中ブランコに乗せた人がよく言うでござるな」

「さっきのはやりすぎたよー。ごめんねー霞ヶ峰さんの気持ち考えないで」

独島殿がやけに素直に謝ってくるでござる。流石に反省した………と信じたいでござるが、果たして本当でござろうか。

「じゃあしょうがねーな。とりあえず乗り場まで行ってみようぜ」

ひとまず拙者らはジェットコースターの乗り場に向かったでござる。

 

 

 

「…誰もいねぇぞ」

「ほんとだねー」

「乗り場は…至って普通でござるな」

しかしこのジェットコースター、どうやって動かすのでござる?乗ったら自動でスタートするのでござろうか?

「んー?見てみてー。ここに操作パネルがあるよー」

すると独島殿が操作盤らしきものを見つけたでござる。なるほど、乗りたかったら手動で動かせという事でござるか。

「じゃあわたしこれ調べるから霞ヶ峰さんは座席調べてー。黒瀬くんはそのまま乗ってスタンバイしてていいよー」

「おう!!」

「え?拙者でござるか?」

何故か座席を調べるように言われたので大人しく座席に乗り込み調べようとした瞬間、

ガチャン

拙者の調べてた席から安全バーが落ちてきて拙者は席に固定されてしまったでござる。あれ、これじゃ拙者出られない………。

「モノカバジェットコースター『疾風』 発進まであと5秒」

「な!?」

「ふふふー。引っ掛かったねー霞ヶ峰さ〜ん」

後ろに乗り込んできた独島殿が大笑いしてるでござる。まさか………。

「独島殿!!!!また拙者を嵌めたでござるな!!!」

「騙された方が悪いんだよ〜ん。ほら、腹括りなってー」

「誰のせいでこんな事になってると思ってるでござるか!!!この性悪!悪魔!!超ドS!!!!」

「お!結局麻衣子も乗るのかよ!なんだ、本当は乗りたかったんじゃねーか」

「お主の目は節穴でござるか!?このバカ!!」

「3.2.1.………『疾風』発進します」

「い、嫌でござる!?拙者こんな所で死にたくないでござるぅぅぅぅぅ!」

拙者の悲痛の叫びも虚しく、ジェットコースターは出発、頂上までじりじりと登っていくでござる。

そして頂上に着き………。急降下!!!

「やっほぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

「うひゃゃゃぁぁぁぁ〜〜〜〜!!」

「もう………ころして………いっそのこと………ころして………」

拙者はこの時、本気で走馬灯を見たでござる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

万斗輝晃side

 

 

 

「ああ………遊園地………夢と希望の国………ははは………でもボクには一緒に行く相手がいない………はは」

「万斗殿。決まってしまったものは仕方がありません。それにまた後で誘えばいいじゃないですか」

ボク、万斗輝晃は女の子の誰にも誘われなかった事実に絶望しながら探索していた。隣で千野君が励ましてくれるけどボクが欲しいのは慰めじゃない。女の子だ。クソッ、神様は不公平だ。ボクがこんなにレディーを大切に思っているのに。どうしてボクだけこんな不幸なんだ。

「おや。万斗殿、何やら妙な建物がありますぞ」

千野君は呆然としているボクを他所にある建物に入っていく。

ボクもなんとなくそれに続いて入った。

 

 

 

 

 

「なんだ、ただの売店じゃないか」

中にはこの遊園地限定のグッズが売られていた。

モノカバのカチューシャにモノカバのお面、モノカバクッキーなんて物

もある。………どれもこれも趣味が悪い。見ていて気持ち悪くなるよ。

ただ………。

「万斗殿?どうかされましたか?」

ボクは周りを見渡す。この建物の構造………どこかで見た事がある。過去にボクが国家の機密書類を盗み出す依頼を受けた時、似たような建物に潜入した。確かその時は数ある商品の中の一つがボタンになっていて……、それを押すと隠し通路が開く仕組みになっていた。

もしかしてこの部屋もそんな仕組みがあるんじゃないか………。

ボクはそう考え手当たり次第に商品を触り始める。

「万斗殿?」

千野君の言葉も耳に入らないくらい集中して仕掛けを探す。

すると案の定、雑貨が入った缶のうちの一つにボタンがあった。

「ビンゴ」

ボクがそれを押すと商品棚が横にスライドして地下への階段が表れた。

「これは………」

「どうやらボク達に見せたい物じゃないらしい。行こう、千野君」

「ええ。ですが万斗殿……先程とは雰囲気が全然違うように見えますが……」

「これでも情報屋だからね。こういうの見つけるとスイッチ入っちゃうんだ」

さっきまでの萎えた気持ちが嘘のように今は真剣になっている。

ボク達は慎重に地下への階段を降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下にはまず廊下があり、ドアが4つ存在した。

片っ端からドアが開くか試したけど、どうやら開くのは1つだけのようだった。早速中に入る。

中には机と椅子、それに本がぎっしり詰まった本棚があるだけだった。

「本棚ですか。何か手がかりが見つかるといいのですが」

「ひとまずぜんぶ見ていこう」

ボク達は本を端から見ていく。

殆どが何の変哲もない小説だが、これは恐らくダミー。ダミーの中に重要な書類を混ぜるというやり方は機密書類隠蔽でよくあるパターンだ。

そう考えた矢先、ホチキス留めされた資料らしき物が足元に落ちてきた。

 

 

 

「これは………?」

「万斗殿、何か見つけたのですかな?」

千野君も作業を中断してこっちに寄ってくる。

どうやら何かのレポートのようだ。

「見るからに怪しいですな」

「だね。ひとまず見てみるよ」

ボクは資料を一枚めくった。

 

 

 

 

 

 

希望ヶ峰学園観察レポート

 

 

 

 

観察1日目

 

 

 今日から教師として希望ヶ峰学園に潜入、生徒を観察する事になった。

希望ヶ峰学園絶望化計画成功の為に観察は必要不可欠らしい。

 こんな重大な任務を私なんかに与えてくださった()()()には感謝しかない。『江ノ島盾子の生まれ変わり』とまで呼ばれた()()()からのご命令ならば、私はどんな事でもする自信がある。例えそれが『死ね』という命令だったとしても。

 さて、早速今日の観察結果だが、今回の88期生は活きのいい生徒が多い印象だ。果たしてこの生徒らが全人類再絶望化計画に相応しい生徒なのか………。じっくり見極めていくことにしよう。

 

 

 

 

 

4日目

 

 

 今日、()()()から私に通達があった。全人類再絶望化計画の対象者に予備学科生を1人加える事にしたという。何故落ちこぼれの予備学科の生徒なんかを加える事にしたのか。()()()が考えている事はよく分からない。けど()()()が何を考えているのかなんて凡人の私に分かる筈がない。考えるだけ無駄だ。私は与えられた任務をこなせばいい。()()()の力に少しでもなれるなら私は本望だ。

 

 

 

 

9日目

 

 

 また()()()からの通知が来た。どうやら希望ヶ峰学園の生徒の中から4人ほどあの方の陣営に引き込むつもりらしい。つまりはスパイだ。既に2人はスカウト済みで、残り2人も()()()自らスカウトに向かうそうだ。流石は()()()行動が早い。私も見習わなければな。

 

 

 

 

 

 

「…………………」

資料を読み終わったボク達は呆然とした。

「拙僧達はどうやらとんでもないものを見つけてしまっのかもしれないですな」

「うん。これが事実だとすると………」

後でみんなに報告する必要があるみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャック・ドクトリーヌside

 

 

 

「うわぁーーー!!すっごーーい!!ねぇジャックきゅん!何から乗る?」

「浮かれるナ。ここに来た目的を忘れたのカ?」

「分かってるよ〜!ほら早く行こう!!」

「引っ張るナ。自分で歩ク」

俺はこの女、幸村雪に引っ張られてC棟に来ていタ。遊園地………。俺は一度しか行った事はないガここまで騒々しい所だったカ?あちこちにあるクソカバの顔も精神を逆撫でするシ、長時間いたら頭がおかしくなりそうダ。

「ねぇねぇ」

俺がそう考えているト、ユキが俺の袖を掴んできた。

「何ダ」

「うちがジャックきゅん無理やり連れてきた事………怒ってる?」

申し訳なさそうな顔をこっちに向けてくル。その顔に思わず俺は顔を背けタ。

「別に………怒ってはなイ」

「ホント!?」

「………あア」

「良かった!!」

そう言ってユキはスキップをしながら園内を進ム。

 

 

 

俺はここ最近、気がついたらアイツの事を目で追っていル。そしてアイツに見つめられるト………、何故か目を逸らしてしまウ。俺はアイツの事を意識しているのカ?いやそんな筈はイ。アイツは俺と違ってガサツでバカでうるさくテ………。だがアイツの事はどうしても嫌いにはなれなイ。アイツと話していると楽しいと感じてしまウ。

アイツが俺を好いていると知った時はとても驚いタ。俺はアイツに悪口しか言った記憶がなイ。そんな奴に好印象を抱く筈がないと思っていたのだガ………。

駄目ダ。こんな考え事をしていたからいずれ黒幕に隙をつけいられる。アイツは元裏切り者ダ。また何か企んでいる可能性もゼロでは無イ。全面的に信用するのはもう少し見極めてからダ。

「ジャックきゅん何してるのー?早く行こうよー!!」

俺がそのような考え事をしているト、前にいたユキに声をかけられタ。どうやら自然と立ち止まっていたらしイ。

「分かっていル」

俺はユキを追いかけるように歩みを進タ。

 

 

 

 

「ジャックきゅん見て!!遊園地に温泉があるよ!!」

「…………」

俺達は園内の奥で温泉施設を発見しタ。

何故遊園地に温泉があル。ここは複合レジャー施設という事カ?

「ねー早速探索しようよ!中に何かあるかもしれないよ!!」

「貴様何故そこまではしゃいでいるんダ………」

「だって温泉だよ!!ウチ温泉大好きなんだよね!」

「その貧相な体を見せるのは恥ずかしいとは思わないのカ」

「また言いやがったなゴルァ!!!」

「貴様は女湯を探索しロ。俺は男湯を見に行く」

「無視すんなあああ!!!!!」

俺は怒り出したユキを放っておき、男湯の入り口に向かウ。

すると入り口は個室に付いているのと同じカードリーダーのようなものが付いていタ。

「トイレと同じ仕組みカ」

恐らく男湯に入るには男の携帯をかざす必要があるのだろウ。

覗き防止の為カ。あの変態情報屋がいる以上、このシステムは必要不可欠だナ。

素直に自分の携帯をかざス。すると扉のロックが解除された音が聞こえタ。

俺は躊躇いも無クガラガラと音を立てて中に入ル。

 

 

 

 

 

「………無駄に豪華だナ」

中は外見からは想像もつかない程豪華な造りになっていタ。

脱衣所は勿論の事、ドライヤー、マッサージチェアが完備さレ、さらには漫画を読めるスペースもあル。至れり尽くせりとはまさにこの事だナ。

俺は漫画のコーナーに行き、一つ手に取ってパラパラめくル。

本は新品同然カ。わざわざ揃えたのだろうナ。

ここまで用意する意図が読めなイ。この遊園地もそうだガ、コロシアイをさせる上でこのような娯楽施設を開放する理由とは何ダ。俺達にとってはプラスにしかならないのは黒幕も分かっている筈。

疑問を抱きつつも今度は中に入ってみる。

中には巨大な温泉が広がっていタ。それに加えてサウナやジャグジーまで付いていル。

「………あまりに豪勢すぎル。やはり何か裏があると考えるべきカ……」

しかし、パッと見たとこロこれといった妙な点は見つからなイ。

………考えすぎだろうカ。

その後も探索をしてみたものの特に成果は得られズ、俺は手ぶらのまま入り口に戻るはめになっタ。

 

 

 

 

 

「お、戻ってきた」

「こっちは何も見つからなかっタ。そっちはどうダ?」

外に出るとユキが入り口で既に待っていた。

手には何かを持っていル。あれハ……新聞カ?

「へぇ〜〜〜〜??ジャックきゅん、成果なしだったんだ〜〜〜?ウチはちゃんと見つけたよ〜〜」

「下らない問答に付き合ってる暇は無イ。早く探索の結果を言エ」

「むぅ〜〜〜〜!!!!ちょっとくらい褒めてくれたっていいじゃん!」

また面倒な事になりそうだから話を聞き流ス。

「はぁ…………………。ほら、これだよ。脱衣所で見つけた新聞なんだけど……」

「待テ。脱衣所に置いてあったのは漫画じゃないのカ?男の脱衣所には新聞なんて無かっタ」

俺は新聞を見て最初に感じた疑問を口にすル。

「え?こっちには新聞とか雑誌があるだけだったよ?」

そうカ、男と女の脱衣所で置いてある物が違うのカ。これにも何か意味が………いや、無いカ。単純にそれぞれのニーズに合わせて置いただけだろウ。

「それデ?一体どのような記事を見つけタ?」

「ここ見てよ」

ユキが指差した記事に俺も目を通ス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「希望ヶ峰学園予備学科の生徒3人、遺体で見つかる」

 

 

 

○○県警は本日15時、先月から行方不明になっていた希望ヶ峰学園予備学科の生徒3人が遺体で発見された事を発表した。3つの遺体は酷く損傷しており人物の特定が不可能だった為、DNA判定により身元が判明した形だ。この3人は希望ヶ峰学園本校舎の88期生徒に対し嫌がらせを行なっていたグループの中心人物だったという話も出ており、警察は捜査を進めると共に予備学科の生徒、それに本科生対し事情を聞く方針だ。

 

 

 

 

 

 

 

「これハ………」

「この『88期生徒』ってウチらの事だよね?だから何か関係あるんじゃないかって思ったんだけど」

この記事を見た瞬間、俺はある仮説が浮かんダ。

バラバラになったピースが繋がる。

それは最悪の仮説であリ、もしこれが真実であるとしたラ……。

「どうしたの?何か分かった?」

考え込む俺の顔をユキが覗き込ム。

この仮説を言うべきカ………。いヤ、これはあくまで仮説ダ。そうと決まったわけでは無イ。いたずらに情報を公開しては混乱を招くだけダ。

それニ………俺はコイツを心配させたくは無イ。

コイツには笑っていて欲しイ。

「いや、分からなイ。もしかしたら他の奴なら心当たりがあるかもしれないナ」

「そっか……。あ、あのさ……」

「何ダ」

「ウチの持ってきた新聞、ジャックきゅんの役に立ったかな……?」

物欲しそうな目で俺を見てくるユキ。

俺はまたもや視線を逸らス。

「………あア、かなり重要な手がかりだっタ」

「そ、そっか………。えへへ、えへへへ」

嬉しそうに小さくガッツポーズをしていル。……そこまで褒めて欲しかったのカ?

「ここはもう十分調べタ。戻るゾ」

「うん!」

俺達は食堂に戻る事にしタ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北条 業side

 

 

AM11:00 A棟 食堂

 

 

私達は探索を終え食堂に集まっていました。

ほぼ全員千野さんの淹れたお茶を飲んでまったりしています。

まあ私は丁重にお断りしましたけど。

他人の淹れたお茶なんか怖くて飲めないですよ。

あ、凛さんの淹れたお茶だったら500杯は飲めますけどね。

「みんな揃ったようだし、成果の報告を始めよう。まずは私達から」

銀山さんは霜花 優月と目を合わせ頷き合いました。

それにしてもあの女………、探索の前は死人のような顔をしていたのに今は随分と顔色がいいですね。凛さんを危険な目に遭わせた癖にそんな顔してんじゃねーよ殺すぞ。

「私達は『モノカバドッキリミラーハウス』という場所を調べたのだが………、そこはミラー迷路を進みつつクイズに答えていく、という形式だった」

「へー、なんか面白そうだな。オレも後で行ってみよっと」

「あっくん、頭悪いからクイズで詰むじゃん………」

「誰がバカだ!?」

「クイズは全部で5問あり、1問正解しないと次は進めない。そしてクリアすると先着3名に景品が配られるそうだ」

「どうせろくなものではないでござるよ……」

「クイズのジャンルはなんダ。貴様らはクリアしたのカ?」

「雑学………と言うべきだろうな。私達は1問目でリタイアした。アニメの問題だったのだが全く歯が立たなかった」

「アニメ〜!?」

独島さんが思わず椅子から立ち上がりました。

「ああ。恐らく独島だったら難なく答えられただろう。後で行ってみるといい」

「いくいく〜。わたし無双しちゃうよー」

「でもアニメの問題だけじゃないんでしょ?どくちゃん、めっちゃ難しい数学の問題とか出てきたらどうするの?」

「それはー………まあ、なんとかなるでしょ〜」

無理ですね。あの人には絶対クリア出来ません。

 

 

 

 

 

「じゃあ次はボク達からでいいかな?」

次に手を挙げたのは万斗さんと千野さんの組でした。

そういえばこの2人は探索中に見かけませんでしたね。

一体どこにいたのでしょうか。

「ボク達は売店を調べてたんだけど、あるボタンを押したら地下への階段が現れたんだ」

「すげぇな輝晃!大手柄じゃねーか!」

「え〜地下への階段ー!?凄いねー万斗くん、そんなの発見するなんてー」

「イケメンは喋んな。………灯里さんに褒められるなんて光栄の極みだよ!!!よかったら後で案内するよ!!地下に………それも2人っきりで………」

「ノーサンキュー。自分で行くよー」

「地下には4つ程小部屋がありましたが、今開くのは1部屋のみのようですな」

「そこでボク達はこれを見つけたんだ」

万斗さんはある資料を私達に見せてきました。

「そんな馬鹿な………」

「これはつまり………ウチらが入学したのと同時期に『絶望の庭』のスパイが学園に潜入してたって事?」

資料を見た私達は驚愕せざるを得ませんでした。

『絶望の庭』のスパイが潜入していて、しかもここでも『あの方』が出てきている。どうやら『あの方』は相当前から計画を進めてきたようですね。

「しかしこの黒塗りされた部分は何でござろう」

「…………」

私達は黒塗りされた部分を見ます。

記憶を辿ってみますが、何も思い出せそうにありません。

まあ記憶を消されている以上、思い出せる訳ないんですけど。

「これはひとまず後でいいんじゃねーの?思い出せそうにねーし」

「そうだな。もし後で何か思い出した者がいたら教えてくれ。何か手がかりを掴めるかもしれない」

 

 

 

 

「じゃあ次はオレ達だな」

黒瀬さんは手にパンと拳を打ちつけます。

「オレ達は空中ブランコとジェットコースター2つに乗ったぜ。めちゃくちゃ楽しかったぞ。なぁ?」

「ちょー楽しいよ〜。あと、ジェットコースターは手動で作動するよー。乗りたい時はパネルを操作して乗ってね〜」

「いやただ遊んでるだけじゃないかい!?」

「拙僧も少し3人を見かけましたが、とても楽しそうに遊んでいましたよ」

この3人がまともに調査する訳ではないと思っていましたが……本当に馬鹿ですね。幸村さんを入れればお馬鹿四天王です。

「あれ?かすみー、なんだかご機嫌斜めだね。何かあったの?」

幸村さんが霞ヶ峰さんを見ながら言います。

「拙者、もうあそこには行かないでござる。もうこりごりでござる。あと独島殿とはしばらく口を聞きたくないでござる」

「あ、これ相当怒ってるやつだ」

「だからごめんって〜。もう二度とあんな事しないからー」

「ふん!でござる」

「何だかよく分からないが………、独島、後でしっかり謝っておけよ」

「何回も謝ったんだけどな〜」

「謝って済むなら警察はいらないでござる!!」

 

 

 

 

「次は俺達ダ。俺達は奥にある温泉施設を調べタ」

次はジャックさんと幸村さんの組です。温泉もあるんですか……。久しぶりにゆっくり湯に浸かりたいですね。

「温泉もあるのかよ!?すげぇな!」

「これは朗報ですな。拙僧も後でゆっくり堪能しましょう」

「中も見たけど色々凄いんだよ!!脱衣所にはファッション雑誌とかたくさんあったし、中にはジャグジーとかサウナとか、とにかく色々凄いんだ!!」

幸村さんの頭の悪い発言を聞きながら私は想像します。

湯船にゆっくり浸かりながら、凛さんと女子トークで盛り上がる。

凛さんの美しい裸体も拝めるし………、ああ、温泉最高。絶対後で凛さんと2人で行こう。

「入る方法はトイレと同じダ。自分の性別のドアの入り口に携帯をかざせばいイ。間違えると蜂の巣にされるのも同じダ」

「男湯も女湯と違いはないのか?」

「脱衣所に置かれている物が違ウ。男湯にあるのは漫画ダ」

「お、漫画あるのか」

「それと………こんな記事を見つけたんだ」

幸村さんはある新聞の記事を取り出しました。

「これは………私達と同じ88期生か」

「でも、これは予備学科の話じゃないかい?ボク達は本科生だし、そこまで関係ないとは思うけど」

「ですがここには『本科生にも事情を聞く』とあります。拙僧らも無関係、というわけではないのでは?」

「それにしても物騒な話でござるなあ……。犯人はよっぽど殺された3人を憎んでいたのでござろう」

高校生1人が3人を殺害………。犯人は余程殺人に手慣れていると言ってもいいでしょう。それにしても皮肉なものですね、希望を見い出す学園で殺人などという絶望が生まれるとは。

 

 

 

 

「ひとまずこの記事についても保留にしよう。まずは全部の報告を済ませるのが先だ。………まだ報告していないのは明智と北条のペアだな」

「報告なら明智さんがしますよ」

残った私達に視線が向けられますが、説明するのが面倒だったので明智さんに丸投げしました。まああのお喋りで目立ちたがり屋だったら喜んで引き受けるでしょう。が、しかし……

「………………」

明智さんは椅子に座り下を向きながら微動だにしません。

何か考え事をしているんでしょうか。

「おーい麻音ー?業が探索の結果報告しろだってよー」

「………」

「てゆーかまおぴょん、さっきから一言も喋ってないよ。普段あんなにおしゃべりなのに」

「………」

「ちょ、ちょっと待つでござる。なんか寝息が聞こえないでござるか?」

「…………すー……」

信じられない事にこのエセ探偵、報告を一切聞かずにガン寝してるみたいです。

「明智………、君という奴は一体……」

「凄いね………。今結構騒がしかったのにものともせず寝るなんて」

「じゃあさー、寝てる明智さんには罰を与えなくちゃだね」

「何をするおつもりですかな?」

「見てれば分かるよー。せーのー」

独島さんは明智さんが座る椅子を思いっきり後ろに引きました。

すると、明智さんは見事に尻餅をついて倒れました。

「………ふがっ!?」

彼女は普段絶対出さないような間抜けな声を出して目を覚ましました。フッ、いい気味ですね。

「……………」

そして周りを見渡し、状況を理解したのか何も言わずに椅子に座り直しました。

「いやなんか言えよ!!」

「いや済まない。話をするのは好きなのだが人の話を聞くのはどうも苦手でね、ついうたた寝をしてしまった。許してくれたまえ」

「テメー謝る気ねーだろ!?」

「……つまり今までの話何も聞いてなかった、と?」

「そう言うことになる。いや、厳密にはほぼ聞いてなかったという言い方の方が正しいな。銀山香織クンのミラーハウスの報告当たりから船を漕ぎ始めた覚えがある」

「それ一番最初じゃん!?」

「ハァ………明智には後で報告の内容を簡潔に説明する。それよりも今は君達の報告の番なんだ。すぐに頼む」

銀山さんが呆れながらフォローを入れます。彼女も苦労人ですね。

 

 

 

 

 

「ふむ、承った。私達は………じょしゅ………相川凛クンを遊園地西にある診療所で発見した」

「マジかよ!?それで凛は!?」

「ピンピンしている。明日にはワタシ達と合流出来るそうだ」

「りんりん………良かったぁ!!」

「めでたしめでたしだねー」

「無事でなによりでござる」

「……ありえなイ。あれ程の傷を負いながら明日には退院だト?」

ほとんどは凛さんの無事を喜ぶ声ですが、中にはジャックさんのように凛さんの傷の治りが早すぎる事に疑問を抱く人もいます。

「凛さんもそれについてモノカバに聞いたらしいんですけど、何も答えてくれなかったらそうです。なので聞いても無駄でしょう」

「………そうカ」

私が軽く補足を入れておくとジャックさんは渋々ながらも引き下がりました。

しかしモノカバを操るモノカバとは一体何者なんでしょうか。私達18人を攫い、大学に閉じ込められる程の力を持ち、現実ではあり得ない医療技術も行使出来る。ますます謎が深まるばかりです。

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ!!じゃあ今からみんなでりんりんのお見舞い行こうよ!」

「ちょっと待ってくれ」

幸村さんが立ち上がり凛さんのところに行こうと立ち上がりましたが、銀山さんがそれを止めます。

「ん?どしたのかおちゃん」

「皆………一度霜花の話を聞いてあげてくれないか」

「ゆうちゃんの?」

銀山さんがそう言うと同時に霜花優月が立ち上がりました。

「まず、今まで私の身勝手な行動や言動で皆さんに迷惑をかけてしまった事を謝罪させて下さい。本当にすみませんでした」

何を企んでいるのか、ソイツは急に私達に向かって頭を下げました。

「ええ!!霜花殿が頭を下げたでござる!?」

「……どういう風の吹き回しダ?」

「……話すと長くなるので割愛しますが、考えを改めたんです。………ここを生きて脱出したい、その為には他人との協力が必要不可欠だと。だから、その………なんと言いますか、虫のいい話ではあるんですが、貴方達と協力させてはもらえないでしょうか………」

「………おう、オレはいいぜ」

「黒瀬殿?いいのですか?」

「だって別に優月がオレらに対して害を加えた訳じゃねーだろ?確かに、口はめっちゃ悪いし団体行動しねー奴だったけど、裁判でもなんだかんだ言って協力してくれてたじゃんか。だったら別に拒む理由なんかなくね?」

「そうだよ!!別にゆうちゃん悪くないもんね!学則違反したのだって出口とか手がかりとか探す為だったんでしょ?」

「敦郎………、雪………ありがとうございます」

「お、名前呼びか!凛にでもアドバイス受けたのか?」

「………何故、分かるんですか……?」

「だって友達居なさそうなテメーがいきなり名前呼びなんて出来るはずねーからな!コミュ力の高い凛あたりに聞いたんだろ?ほれほれ!」

「ちょっと………頭を撫でないで下さい」

「皆さんがいいのであれば、拙僧も何も言いますまい」

「てゆーかさー、なんかこの『皆の前で頭を下げて謝罪する』っていうパターン多くないー?黒瀬くんに幸村さんに霜花さん………。読者もこのパターン飽きてると思うしーやめたほうがいいんじゃないー?」

「独島殿?一体何を言ってるのでござる?」

「……今までサボった分しっかり働いてもらうゾ」

「ふふ、仲間が増えるというのはいい事じゃないか。より賑やかな方が助手が帰ってきた時喜ぶだろうからな」

すっかり霜花優月を受け入れるムードになっています。

しょうがないですね。私もみなさんに合わせて受け入れ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………るわけないだろうが。この馬鹿が。ふざけるのも大概にしろよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた達は馬鹿なんですか?」

「…え?」

私は静かに言葉を紡ぎます。

「この女が今まで私達にどれだけ迷惑をかけてきたのか忘れた訳じゃないですよね?何より学則違反をして関係のない凛さんを巻き込み大怪我をさせた。そんな奴を仲間に入れる?冗談じゃない」

「………ええ、貴方の言う事は何一つ間違っていません。だからこそ私は、償いの意味も込めて貴方達に協力したいんです。それに凛にも一生を懸けて贖罪を……」

「お前如きが凛さんを名前で呼ぶな!!!!!!」

私は中身が入ったコップを投げつけます。

「ッ!?」

「お前みたいな犯罪者が凛さんに近づく事自体が罪なんだよ!!」

「北条!?」

「やりすぎでござるよ!!」

「うるさい!!いいか、私は絶対お前を認めない。たとえ凛さんがお前を認めようとも、私は認めない!!!!」

私はこれ以上ここにいる意味がないと考え、食堂のドアを開けて出て行きました。行く場所は決まっています。………凛さんのところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀山 香織side

 

 

 

「アイツどうしたんだよ。最近ヤバくねぇか?」

「あの女の精神状態がおかしいのは前からダ」

私は霜花の元に駆け寄る。幸いにも怪我をした様子はない。

「霜花……、大丈夫か?」

「………平気です。悪いのは彼女ではない、彼女が不快になる事を言った私です」

「いや〜今のはどう考えてもメンヘラこじらせた北条さんが悪いと思うけどねー」

「だとしても、私は彼女を含め全員と協力してここから出たい。その気持ちは変わりません」

しかし、今の北条の精神状態はとても危ういな。

ここに相川がいればだいぶマシにはなると思うんだが。

………いけない、最近私は相川に頼りっぱなしじゃないか。

彼女だけに負担させるわけにはいかない。私もリーダーとしての務めを果たさねばな。

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

生存者

 

 

LA001 相川 凛《外国語研究家》

MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》

⁇003 喜屋武 流理恵 《調理部》

SA004 銀山 香織《棋士》

MB005 黒瀬 敦郎《バスケ部》

⁇006 柴崎 武史《歴史学者》

MB007 霜花 優月《狙撃手》

MA008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》

MC009 千野 李玖《茶人》

MC010 独島 灯里《サブカルマニア》

⁇011 飛田 脚男《バイク便ライダー》

⁇012 中澤 翼 《フットサル選手》

⁇013 錦織 清子《テニスプレーヤー》

⁇014 分倍河原 剛 《空手家》

015 北条 業 《???》

MA016 万斗 輝晃 《情報屋》

MB017 幸村 雪 《激運》

MA018 明智 麻音《探偵》

 

残り14人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

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