今回は『ダンガンロンパ 』シリーズ恒例の『アレ』がありますよ〜
相川凛side
軟禁生活15日目 AM7:50
「うーーーん!やっと退院だ!」
うちはベットから起きてゆっくりと伸びをした。
モノカバから絶対安静と言い渡されてから1日。ようやくこの寂しい空間から脱出出来る。嬉しすぎて涙が出そう。
「でも………夜はみんな来てくれたし楽しかったなぁ」
昨日の夜を思い出す。
昼から夕方頃にかけては業ちゃんとずっとお喋りしてたけど、夜にはみんなが続々とお見舞いに来てくれた。
おかげで時間はあっという間に過ぎていった。『楽しい時間程経つのは早い』。うん、間違いない。
「時間もちょうどいいし、食堂に行ってみようかな」
うちは食堂に行くことにした。実は昨日、香織ちゃんに『8時になったら食堂に来てくれ』とお誘いを受けていたのだ。
お腹もペコペコだし、早速行くとしよう。
1F 食堂入り口
「………ん?なんだろうこの飾りつけ」
食堂の入り口に来ると何やら折り紙で出来た花で飾り付けがされていた。
パーティーでもやっているのだろうか。え?もしかしてうち抜きでパーティー!?いや、うん、それはいいんだけど………もしそうだとしたらうち、ちょっとショックだな………。
そんな事を考えながら中に入ると………。
「「「「「退院おめでとう!!!!!!!」」」」
パンッとクラッカーが鳴らされ、紙吹雪が舞う。
「え………?」
「りんりん、退院おめでとう!!!」
「あの………幸村さん、これって……?」
腕を掴んできた幸村さんに尋ねる。
「ん?見たら分かるじゃん。りんりんの退院おめでとう会だよ!!」
「うちの為の………パーティー?」
「そうだよ〜」
独島さんがクラッカーを持ちながら話を続ける。
「霜花さんが相川さんを迎え入れるパーティーを提案してくれたんだー。それでわたしたちも頑張って準備したんだー。えらいでしょー?」
「優月ちゃんが……」
「凛が戻ってきた時に何もないと………少し寂しいと思いまして………」
優月ちゃんが恥ずかしそうにしながら言う。
「勿論、この程度で私の凛に傷を負わせた罪が消えるとは思っていません。ただ、少しでも凛に楽しい思いをしてもらいたいと………うっ!?」
「ありがとう!!!!!うちすっっっっごく嬉しい!!!」
うちは嬉しさのあまり抱きついた。やばい、最高に嬉しい。テンション爆上がり。
「ちょっ………凛、あまり抱きつくと恥ずかしいです……」
「そんなのいい!!とにかくうちの感謝のハグを受け取って!!」
「………喜んでもらえたら何よりです」
うち、本当に恵まれてるなぁ………。みんなに心配してもらえて、さらにはこんなパーティーまで開いてもらえるなんて………。
「………凛、もしかして泣いているんですか?」
「うぅ………ぐずっ………だってぇ………嬉しくて………」
「おいみんな見ろよ!凛が泣いてるぜ!」
「あ、本当でござる!写真にとって動画のサムネにするでござる!」
「お二人とも、相川殿をあまりからかってはいけませんよ」
「ふふ、やはり相川がいると場が一段と明るくなるな」
「相変わらず騒がしい奴ダ」
「こ、この状態だったらボクもどさくさに紛れて凛さん達に抱きついても問題ないんじゃ……」
「ウチが聞いてるから。てるるんマジさいてー」
「今度はあの2人が百合かー………妄想が捗りますなあ……」
「ふふふ、助手よ、ワタシも手伝ったのだぞ!ワタシの指揮能力があってこそ、このような豪勢な催しを開く事が出来たのだ!だから存分に褒めてくれたまえ!………あれ、聞いてる?」
そしてうちらはしばらくどんちゃん大騒ぎした。
今まで起きた悪夢のような出来事を一時的に忘れるくらい。
しかし………そこに業ちゃんの姿は無かった。
PM19:00 A棟 3階
「業ちゃーん、いるー?」
うちはパーティーが解散になった後、業ちゃんの個室の前に来ていた。
業ちゃんがどうやらうちのいない間に他のみんなと少し揉めたらしく、心配になって様子を見に来たのだ。
パーティーにも来なかったし、もしかしたら何か相当深い悩みがあるのかもしれない。
「………」
しかし呼びかけても返事がない。留守だろうか。
「しょうがない。出直そう」
うちがドアから離れようとしたその時、
「凛さん!!!!」
「うっ!?」
うちはドアからにょきっと出てきた手に掴まれ、部屋の中に引きずり込まれた。
「ああ、凛さんが私の部屋にわざわざ来てくれるなんて………感動で涙が止まりません!!」
「わ、わかったから………とりあえず離して………、首絞まってるから……」
うちを抱きしめる業ちゃんを離すのに5分はかかった。
「それで凛さん、私の部屋を訪ねてきてくれたと言う事は………夜這いですか?」
「うん、それはないね」
「またまた〜。そんなに照れなくてもいいじゃないですかぁ」
「違う。断じて違う」
うちら2人は今、地べたに座っている。ベットに座っても良かったけど、そこまで長居するつもりもなかったし、シーツとか乱れちゃうから遠慮しておいた。
「業ちゃん………優月ちゃんやみんなと喧嘩したんだって?」
「……………」
うちは早速本題を切り出す。業ちゃんは少し気まずそうに下を向く。
つまりYES、ということか。
「だからパーティーも来なかったの?」
「そ、それは………。本当は行きたかったんですけど、私がいると変な空気になっちゃうかなって思って参加はやめておいたんです」
「優月ちゃんが仲間になるの………そんなに嫌?」
「正直言うと………嫌です」
業ちゃんはうちの脇腹を指差した。
「だってあの女は、団結を拒んで勝手に学則違反をして、無関係な凛さんを巻き込んで怪我をさせたんですよ。それなのに謝罪一つでやっぱり仲間にしてくれだなんて、虫が良すぎると思うんです。それに急に態度を変えて仲間にしてくれなんて怪しすぎます。分倍河原剛のように仲間のフリをして何か企んでいるのかもしれません」
「それはでも、うちはもう優月ちゃんに謝ってもらったし、スパイに関してはそうやって疑ってたらキリがないと思うけどなぁ」
「うぅ…でも………」
「まあ業ちゃんの気持ちも分からなくもないよ。優月ちゃん、前まで結構うちらに対して当たり強かったし、急にあんな風になったら戸惑うよね」
「そ、そうです!!!スパイの件もあるし、簡単には受け入れられないんですよ!それなのに他の人たちは軽々と受け入れて………危機感ってものがないんです!」
業ちゃんの言う事も一理ある。人が急に態度を変えたら何か裏があるんじゃないかと考えるのが当然だ。
でもこのままじゃ黒幕の思うつぼだ。ここでみんなが仲違いするのだけは避けなければならない。でもスパイも見つけなければならない。さてどうしたものか。
「う〜ん………、あ、一個いい事思いついた」
「ん?なんですか?」
「みんなでお風呂入ろうよ」
「え?お風呂、ですか?」
「そう。遊園地に温泉があるんでしょ?そこでみんなと一緒に入って親睦を深めるの。スパイを見つけるにしてもまず仲良くなってその人を知る方がいいでしょ?」
「………はあ」
「あ、あんまり乗り気じゃないでしょ業ちゃん」
「温泉行くなら凛さんと2人きりがいいです」
「温泉なら後でいくらでも一緒に行ってあげるから。ね、一回はみんなと入ろうよ」
「え、ええええええ!!今聞きましたからね!絶対ですよ!必ず私と一緒に行って下さいね!!」
「はいはい」
ともかくうちは温泉女子会を開催する事に決め、カバフォンで女子全員に明日の朝みんなで温泉に入らないか、いう提案のメッセージを送った。
軟禁生活15日目
今日はとっても楽しい一日だった。なんと退院したうちの為にみんながパーティーを開いてくれたのだ。うちは感動で思わず涙を流してしまった。
こんな風に祝ってもらったのは生まれて初めてかもしれない。
そして明日、女子のみんなで温泉に入る事になった。ここに来てからずっとシャワーだったから正直言ってすごく楽しみ!早く明日にならないかなー。
軟禁生活16日目 AM7:30
「ふわぁぁ………よく寝た」
うちはベットから起きて伸びをした。
診療所のベットも悪くなかったけど、やっぱり個室のベットが一番だよね。
そんな事を勝手に考えていると、
コンコン
「ん?誰だろう」
誰かがドアを叩く音が聞こえたので開けて外を見る。
「優月ちゃん!?」
「おはようございます」
目の前には優月ちゃんが立っていた。
「良かったら温泉まで一緒に行きませんか?」
「え!?」
まさか優月ちゃんから誘ってくれるとは!こんな日が来るとは夢にも思わなかった!!
「うん!じゃあ一緒に行こ!!準備するからちょっと待ってね!」
「ええ。では私はここで待ってますので」
うちは一旦ドアを閉めて急いで準備する。
持ってく物は………下着と服とタオルと洗顔料と………これくらいかな?
あ、トリートメントとかってあっちにあるのかな?一応持っていとこう。
準備が出来たので廊下に出る。が、
「だから、私は凛と一緒に温泉に行く為に待ち合わせをしてるだけだと何回説明すれば気が済むんですか、貴方は」
「嘘つくな。どうせ凛さんの命を狙おうと待ち伏せしてたに決まってる。それに凛さんは私とお風呂に行く約束をしてるんですよ。貴方みたいな女と一緒に行くわけがないんです。身の程を知れ」
………本当に仲悪いね、キミタチ。
「何してるの、2人とも」
「凛。実は業が……」
「凛さん!!この女が凛さんを殺す為にずっと扉の前で待ってたんです!!しかも凛さんとお風呂に行くとか嘘ついてるんですよ!」
「だから違うと言ってる……」
「黙れこの悪魔。凛さんを殺そうとしたくせに」
バンッ!!
うちは埒が明かないと思いドアを叩いた。
「り、凛さん………?」
「いい加減にして業ちゃん。次優月ちゃんにそんな事言ったらうち本気で怒るから」
「で、でも………」
「優月ちゃんはそんな事しない。うちが保証する」
「凛………」
うちはそう言って業ちゃんの方に向き直る。
「業ちゃん。うちを心配してくれるのはありがたいけど、そうやって他の人を貶めるやり方は好きじゃない」
「………すみません」
「分かったならよし。優月ちゃんに謝って」
「…………軽率な発言でした。すみません、霜花さん」
「………別にいいですよ」
「よし。じゃあ早速行こう!久しぶりのお風呂〜♪」
「じゃあ私、凛さんの背中流しますね!!」
「ええーなんか恥ずかしいよー!」
「私も流しますよ」
「2人もいらなくない!?」
温泉がある施設の前に着くと、他のみんなは既に揃っていた。
「よーしみんな揃ったし早速入ろう〜」
「うぅ………拙者大勢でお風呂など入った事ないでござるから……なんだが気恥ずかしいでござるよ」
「あれ?でも霞ヶ峰さんも小中で修学旅行とかあったでしょ?そこでクラスの女子とお風呂入ったりしなかった?」
「拙者修学旅行が嫌すぎて全部仮病で欠席したでござる」
「なんか闇が深いエピソード出てきた!?」
「ぼっちの陰キャには修学旅行は地獄でござるよ………」
「あれ?かおりんさっきからもじもじしてどうしたの?」
「な、なななななんの事だ?わ、わたしは別に、ななにもないいいぞ」
「銀山さんも慣れてないんだー。ふふー、反応かわいいー」
「何も恥ずかしがる事などないだろう。男と入るわけではないんだし気兼ねなく入れる。むしろ自身の磨かれたボディーを他人に見せられるいい機会だとは思わないかね?」
「明智さんらしいなぁ」
「ただアホなだけだと思いますけど」
そして脱衣所に入り各々が服を脱ぎ出す。
実は言うとうちも大勢でお風呂に入るのは苦手だ。
お風呂自体が苦手なわけじゃない。
他の人に裸を見られるのが嫌なのだ。
うちは自分の胸を見る。
発達途上、にしてはあまりにも未発達なうちの胸はぺったんこと呼ばれてもしょうがないくらいほぼ平らだ。
胸を大きくする為の努力は常にしている。なのに一向にそれが実る気配はない。
そして………周りの人の胸と比べて自身の貧相なモノに絶望する。これがたまらなく嫌なのだ。
「凛、どうかしたのですか?動きが止まっていますが」
右隣で着替える優月ちゃんが心配そうに聞いてくる。
優月ちゃんの体は戦場を駆け回って鍛えられたのか、引き締まったとてもいい体をしている。胸は着痩せするタイプなのか思ってたよりかなり大きい。十分巨乳と言ってもいいだろう。
「優月ちゃん、凄くスタイルいいね………」
「そうですか?筋肉がついているし女っぽい体とは言えないですけど」
いやそこがいいんだって。程よく筋肉が付いた巨乳の女の子とか欲情しないわけないじゃん。
「うわ!!凛さんこそスタイルめちゃくちゃいいじゃないですか!?もしかして私の事誘ってます!?じゃあ触ってもいいですよね!?」
「絶対駄目。しかもスタイルがいいって………それを業ちゃんが言うか………」
業ちゃんの体はどこも平均以上のバランス型だ。胸もちょうどいい大きさだし………何より形がめっちゃ綺麗。何あの綺麗なお碗型。うちに一生出来なさそうな形しやがって。
「何言ってるんですか!!凛さんの体型はこの中でダントツ一番です!!」
「あまり気にしなくてもいいと思いますよ。凛も十分綺麗な体ですし」
「うん………ソダネ………アリガト」
うちよりスタイル良い2人に言われてもなんの慰めにもならない。
「へー相川さん結構そういうの気にするタイプなんだー」
すると独島さんが素っ裸でこっちにやってきた。
せめてタオル巻け。恥というのを知らないのか。
「独島さんはそういうの気にしないの?」
「う〜んわたしは別に気にしないかなー。他の人と比べてもしょうがないしー」
独島さんの体型は確かにスタイルがいいとは言えない。胸もうちと同じくらい控えめだ。ただ、独島さんはうちより身長が10センチ以上低い。それで胸の大きさが同じという事は、よりうちの方が貧乳だという事………。くそ。ここでも敗北か。もしかしてうち……完全な敗北者?
「それよりもきてきてー。こっちで凄いこと起こってるからー」
「凄いこと?」
うちは独島さんの後をついていった。するとそこでは……。
「このやろう!!どいつもこいつもなんでそんな巨乳なんだよ!!!腹いせに揉ませろ!!」
「やややややめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「幸村殿!?話せば分かるでござる!!話せば分かるでござるよ!!」
チラッと顔を覗かせると幸村さんが大暴走していた。下着姿の香織ちゃんの胸を鷲掴みにして揉みしだいている。霞ヶ峰さんはその2人を止めようとオロオロしている状態だ。
「なんじゃこの弾力!!どんな物食ったらこんな乳がデカくなるんだ!!」
「だだだ誰か………たすけて………」
「幸村殿!!そんな悲観する必要ないでござる!?幸村殿は発展途上なのでござるよ!きっとこれから大きく………」
霞ヶ峰さんがなんとか宥めようとするが効果はなし。それどころか、
「うっさい!!それに一番おっぱいが大きいかすみーに言われると腹立つんじゃコラ!よし、アンタのも揉んでやる。覚悟しろや」
「冗談でござるよね………幸村殿………やめて欲しいでござるぅぅぅぅぅ!!!」
「あ!待て!!逃げるな!!」
逃げる霞ヶ峰さんに対し幸村さんは、香織ちゃんを投げ捨て獲物を追うハイエナの如く追いかけていった。
「ねー?面白かったでしょ〜」
「見てる方からしたら………そうだね。うん」
正直うちとしては幸村さんの気持ちもすっごいよく分かるし、襲われた2人もかわいそうだって思うから複雑な気持ち………。
「香織ちゃん、大丈夫?」
「………………」
香織ちゃんは恥ずかしさのあまり気絶してしまっていた。
「あららー。銀山さんこういうスキンシップに対してはほんとに初心だねー」
独島さんはそう言いながら香織ちゃんの胸をツンツンしている。
あ、いいな。うちも触っちゃお。ごめんね、香織ちゃん。
ふに。
香織ちゃんの大きなおっぱいはとっても弾力があって柔らかい。
えなにこれ。女の子の胸ってこんなに柔らかいの?うち自分の柔らかいとか思ったことないんだけど。
うちらは夢中になって少しの間ずっとぷにぷにと触っていた。
「ん?これは一体なんの騒ぎだね?」
すると入り口から姿が見えなかった明智さんが現れた。
「あなたどこ行ってたんですか?」
「トイレに行っていた。風呂に入る前無性にトイレに行きたくなる事があるだろう。今がまさにそれだった」
「普通ないですけど」
「ふむ、そうかね」
明智さんもみんなに習って服を脱ぎ始める。
明智さんの肌、白くて本当に綺麗だなぁ。艶もあるし絶対ツルツルだよ。明智さんの腕持って顔にすべすべしたい。
「助手よ」
そんな事を考えながら明智さんを見てると声をかけられた。
「ん?」
「いくらワタシのボディーが美しいからといってそこまでガン見するのはいかがなものかと思うがね」
「ハッ!?」
うちは思わず目を逸らす。いかん、今のままだとうちは変態に成り下がってしまう。万斗君と同類だけは避けなければ。
「それにしても助手は………思ってたよりも貧相な体をしているではないか」
明智さんはなんとも失礼な事をうちに言ってくる。自分も幼児体型のくせに。ロリのくせに。
「うぅ………そんな事うちが一番分かってるよぉ……」
「まあ気にする事はない。助手のような体型もどこかに必ず需要があるはずだ。世の中には欲情した男などいくらでもいるからな」
「いや言い方!!!はしたないよ明智さん!!」
「しかもあなた今凛さんの体型馬鹿にしましたよね?」
「まさか。その体型も含めてワタシは助手を好ましいと思ってる」
「思うな。あと凛さんに近寄るな」
「そろそろ行きましょう。この格好のままでは風邪をひいてしまいます」
「そうだね………行こうか」
「ふうぅぅぅぅ….生き返る〜〜〜〜」
うちは湯船に浸かりながら気の抜けた声を出す。
数日ぶりのお風呂はやっぱり気持ちいいねぇ。
やっぱりシャワーだけじゃ物足りないよ。
どうせなら個室にも浴槽つけて欲しかったなー。
うちはそんな事を考えながら天井をボーッと見つめる。
「凛さん♪」
「あ、業ちゃん」
業ちゃんが顔を覗いてきた。
髪が水に濡れた業ちゃんはいつもよりなんだか色っぽい。
「隣座りますね」
「いいよー」
業ちゃんはうちの右隣に座る。
「凛、隣いいですか?」
「いいよー」
今度は優月ちゃんがうちの左隣にちょこんと座る。
「霜花優月、あなた最近凛さんにくっつきすぎですよ。凛さんがちょっと気を許したからってあんまり調子に乗らないで下さい」
「別に乗ってませんよ。私は貴方と違って凛にやましい気持ちなど抱いてないですから。あといちいち突っかかってこないで下さい。面倒くさいんで」
「随分饒舌だな社会不適合者今ここで殺すぞ」
「はいはい喧嘩しなーい。次悪口言ったら出禁にするからねー」
「…………」
「…………」
うちは2人を宥めつつひたすらボーッとする。
あー。温泉って何も考えずにこうしてボーッ出来るからいいよねー。
嫌な事を全部忘れられる気がする。
心も体のリラックス出来るし。
「どーーーん!!」
うちの上空を独島さんの影が通ったのが見えた。
数秒後に大きな水しぶきが上がる。
「ぶへっ!?」
「凛さん!?」
「は、鼻に水入った……」
「大丈夫ですか!………おいそこ動くなよ今沈めてやる」
「ぶはっーー!わー逃げろーー」
飛び込んできた独島さんを追いかける業ちゃん。
まあこの人数だし静かにリラックス出来るわけないわな。
「あ、相川………その、私も、入っていいか……」
「いいよ〜。というか別に許可とかいらないってば。みんなで一緒に浸かろう〜」
「し、失礼する………」
普段の凛々しい雰囲気の彼女はどこへやら、今の香織ちゃんはロボットのような動きで顔も強張りっぱなしだ。でもその表情が逆に初心な感じを引き出していてとてもイイ。ああ、くそ、なんでそんなに色っぽいんだ香織ちゃん!!
「そんなに緊張してたら疲れも取れないよ、香織ちゃん」
「そ、それは分かってるのだが………、こ、このような集いはどうしても、慣れなくてな………」
「まあまあかおりん!そう緊張しないでさー!気楽に気楽にー!」
幸村さんが笑いながら励ます。うちはつい幸村さんの胸元をチラッと見てしまった。………うち以上ぺったんこだ。なんか見てると安心するなあ。
幸村さんとは一生酒を酌み交わす仲になれそうだよ。この中で唯一の良心といっても過言ではない。
「君の先程の暴動も原因の一つなんだが……」
「そうでござるよ!全く困ったものでござる」
被害者である霞ヶ峰さんも迷惑そうな顔をする。
あの後、霞ヶ峰さん嫌と言うほど揉みしごかれてたしそりゃあ嫌そうな顔するわ。
それにしても………。
「霞ヶ峰さん………まさかそれ、浮いてるの?」
「………!?」
うちは霞ヶ峰さんのメロンみたいなおっぱいを見て指摘する。
なんとその大きさから完全に沈んでおらず湯船に浮かんでいるのだ。
霞ヶ峰さんは慌てて隠そうとするが時既に遅し。
「かすみーはさ………もしかしてウチの事バカにしてる?」
「そんなわけないでござる!拙者もこれにはずっと悩まさせてるのでござるよ!!」
「問答無用!!かすみーには天罰を与える!!」
「拙者が一体何をしたっていうのでござるか!?」
「おっぱいが大きい罪」
「理不尽でござる!?理不尽でござるよぉぉ!?」
またぎゃあぎゃあと騒ぎ出す2人。
「楽しそーわたしも混ぜて〜」
「騒ぐならあっちでやって下さい凛さんに水がかかるでしょう」
「まあそう言わずに〜、ほれっー、北条さんにもお湯のプレゼント〜」
「…………殺す」
「ひゃー北条さんが怒った〜」
「キミ達はここがどういう場所か理解していないのかね?ここは温泉、日頃溜まった疲れを癒す為に作られた憩いの場所なのだよ。そこで暴れるなど言語道断、子供でも分かる理屈だと……ぶっ!?」
「あ、ごめんまおぴょん。水思いっきりかかった」
「…………幸村雪クン、キミには制裁が必要のようだな」
「お、まおぴょんウチとバトる気?受けて立つよ」
「相川、銭湯とはいつもこのような雰囲気なのか?」
「まさか〜。普段は静かで落ち着く場所だよ。今が異常なだけー」
「私が言うのもなんですが随分と他人事ですね………」
「今はリラックスモードだからね〜。ツッコミの相川は活動休止中ー。だから何も言わないし見なかった事にしてるー」
「君も普段から苦労しているんだな……」
うちは天井を見つめる姿勢から元に戻す。
流石に浸かりすぎたかな。少しのぼせてきた。
「うち、のぼせたから先上がるね。2人は?」
「私も上がります。十分温泉を堪能したので」
「私もだ。それにそろそろ恥ずかしさが限界突破しそうだ」
うちらはバトルに巻き込まれないようにこそこそと退散する事にした。
脱衣所への入り口をそっと開く。
「うわぁぁぁぁ!?」
「ぎゃあああ!?」
「………え?」
「な………」
「……………」
扉を開けた衝撃で何故か黒瀬君と万斗君がなだれこんできた。
………………………は?
何故女湯に男がいるのか、どのようにして侵入したのかなど疑問が脳内に溢れ出す。
「きゅぅぅぅぅぅぅ………」
その横で香織ちゃんが顔を真っ赤にして気絶してしまった。
だが、今一番重要な事は………コイツらが覗きを働いていた事。
「………覗きは犯罪です。身をもって知りなさい」
優月ちゃんが目にも留まらぬ速さで黒瀬君に足蹴り。
うちは万斗君の顔にフック。
「ぐへっ!?」
「おふっ!?」
2人は床に倒れ込む。そしてうちは陰でコソコソ動いている人物も見逃さない。
「動くな」
「………」
なんといたのは、普段絶対に覗きなどしなさそうなジャック君だった。
「ご、誤解ダ。俺はコイツらみたいに堂々とは……」
「でも覗いたんだ」
「……………」
ジャック君の顔が真っ青になっていく。
「ち、違ぇんだよ!!最初に覗きをしようって言ったのは輝晃で……」
「てめぇもノリノリだったじゃねーか!凛さん、ボクを信じてよ!主犯はこのバスケ部の野郎で」
「問答無用」
うちらは3人の前に仁王立ちする。
「とりあえずお前ら、覚悟は出来てるんだろうな」
「ず、ずびばぜんでじだ」
「もうじまぜん」
「チッ………何故俺まで」
「文句言わない。ジャック君も同罪だよ」
あの後3人をボコボコにしたうちらは、購買からわざわざ買ってきたロープで縛り上げ食堂で正座させていた。
「しかし驚いたねー。万斗くんと黒瀬くんならともかく、ジャックくんまで覗きに加担するとはー。もしかしてジャックくんー、むっつりスケベ?」
「ふざけるナ!俺がむっつりスケベなど……」
「ジャックきゅん………。ウチ、がっかりだよ。まさかジャックきゅんがそんな事する人だとは思わなかった」
「………!」
幸村さんはジャック君をゴミを見るような目で見ながら吐き捨てた。
ジャック君はショックでガクンと首を下げてしまった。
「でもでもー、幸村さんは愛しのジャックくんに裸見てもらえて嬉しいんでしょー?」
「な……………!!どくちゃん!?そんなわけないじゃん!」
「ほら図星〜」
幸村さんは顔を真っ赤にして独島さんの頬をつねっている。
「それはそうとして、貴方達がどうやって女湯に入れたのか、誰が計画を立てたのか、全て吐いてもらいますよ」
優月ちゃんが鋭い眼光で3人を睨みつける。
「お、俺ら3人はアイツの計画に乗っただけなんだよ!」
「アイツ?」
黒瀬君は初めから事情を説明し始めた。
「オレはついさっき、購買で『男のマロン』なるものを見つけたんだよ。最初は何だこりゃって思ったんだけどよ、見てると何故か無性に覗き見をしたくなったんだ。オレはそれを速攻で買って、偶然見つけた輝晃やジャックに見せたんだ。そしたら2人もノリノリで了承してきたから3人で覗きをする事にしたってわけだ」
「何それ、意味分かんないんだけど」
「………ふむ、実に興味深い話だ。黒瀬敦郎クン。今その『男のマロン』とやらを持っているかね?」
すると、覗かれたにも関わらずケロッとしている明智さんが問いかける。
「……ああ、ここにあるぜ」
「貸してみたまえ」
黒瀬君は明智さんにそれを手渡す。見たところただの栗のように見えるけど……。
「………ふむ、何やら栗の頂点から妙な匂いが漂ってくるな」
「………え?」
「助手も嗅いでみるかね?」
うちも匂いを嗅いでみる。すると、何か甘ったるい匂いがした。
「これは……」
「どうやら男の性欲を刺激する香りを放つ栗のようだ。これにより3人は自分の性欲を抑えきれなくなり覗きを実行する意思を固めたのだろう」
「成る程。普段堅物のジャック殿が覗きに加担したのはこれのせいだったのでござるな」
そうだったのか。確かに絶対そんな事しなさそうなジャック君がこのメンバーにいるのはちょっと変だと思ってたんだよね。
「………ごめんジャック君。事情も知らないで結構ボコボコにしちゃって」
「……いや、それでも俺が覗きをしたのは事実ダ。言い訳はしなイ」
「って事は………これ持ってきたあっくんのせいじゃん!!」
全員の矛先が黒瀬君に向く。
「違ぇよ!?まだ話の続きがあるんだって!」
「それでオレ達は脱衣所の前に行ったんだよ。でも男は女の脱衣所に入れねえだろ?だからオレとジャックはその事実を理解して覗きを諦めようとしたんだ。でも輝晃は『てめぇそんな事で諦めんのか!男の花園はこの扉一枚を抜けた先にあるんだぞ!ここで退いたら男が廃る!!』とか言って聞かなかったんだ」
「万斗殿?」
「そ、そんな事言ったかなぁ……。ボク全く身に覚えがないと言うか……」
あからさまに挙動不審になる万斗君。はい、ダウト。
「やっぱりてるるんだ。ジャックきゅん唆したのもてるるんでしょ」
「誤解だよ雪さん!?」
「そこに現れたのが………武史の野郎なんだ」
「んー?なんでそこで柴崎くんの名前が出てくるのー?」
「アイツはオレ達が立ち尽くしてるのを見て『じゃあいい方法があるッスよ』とか言って男湯にオレらを案内したんだ。それでアイツは………、脱衣所の本棚を動かして女湯の脱衣所への抜け道を見せたんだ」
「えええ!?そんな場所に抜け道が!?」
「電子ロックがまるで役に立ってないじゃないですか。あの綿埃………後で引きちぎってやろうか」
うちら女子に衝撃が走る。まさかそんな隠し通路かあったなんて。というか、柴崎君はなんで知ってたの。アイツ………後で問いただす必要があるな。
「おやおや、もう気づいちゃったカバ?」
するとモノカバがテーブルの下から現れた。
本当に神出鬼没だな。
「覗きは男のロマン!!だからつい覗きたくなるように売店にマロンを仕掛け、隠し通路もしっかり用意して餓える男共の欲望を満たせるようにしておいたカバ!まさかこんな早くにそれをする獣がいるとは思わなかったけどカバ……… 」
「やはり貴方の仕業ですか……」
「早く封鎖してよ!これじゃあてるるんに常に見られてるようで落ち着かないじゃん!!」
「ボク限定!?」
「しょうがないカバね………、後日ちゃんと穴は塞いでおくカバ。あーあ、男共は唯一のチャンスを逃したカバね。女の裸体を見る機会なんて滅多にないのに。あ、でも個室で男女2人であんな事やこんな事も出来ない事はないカバね!」
「消えて下さい。貴方の発言は不快でしかないです」
「はいはい邪魔者はとっとと消えるカバよー」
モノカバはどこかへと消えていった。
「結局はモノカバに踊らされてたってわけかよ………。クソ、不甲斐ねぇ」
黒瀬君は悔しそうな表情で歯を食いしばる。
黒瀬君、良くも悪くも正直だからなー。策略に嵌ったのも仕方ないのかも。
「くそっ、千載一遇のチャンスを逃した。今度こそは………」
それに対しこの変態情報屋は。ホントにどうしようもないな。
「おい、次凛さんの裸見たら全身バラすからな。それと凛さんの裸見た記憶今すぐ消せ」
「業さん……目がマジだよ、ボクちびりそうだよ……」
「ジャックきゅん………ごめんね、ウチ酷い事言っちゃった」
「さっきも言ったが結局俺が覗きをした事に変わりは無イ。一生の恥ダ……」
「多分、みんなも気にしてないからあんまり思い詰めなくても大丈夫だよ。ウチも………そんなに気にしてないし」
「………」
この2人は相変わらずイチャイチャしてるし。はぁ…なんかせっかく温泉入ったのにまた疲れちゃったよ。
「それよりも助手。柴崎武史クンを追わなくてもいいのかね?」
「あ」
ウチは明智さんの言葉で思い出した。
「ちょっくら行ってくる」
「気をつけて行きたまえ」
ウチは柴崎君狩りに出発した。
「あれ、相川サンじゃないッスか。ブッサイクな面してどうしたんスか?」
柴崎君はB棟の才能研究棟に入ろうとしているところだった。
「アンタ………黒瀬君達に女子の脱衣所へと繋がる抜け道教えたでしょ」
「さて、なんの事やらッスね。というか、相川サン貧相な体なんだし見られても別にいいでしょ。そんな崖みたいな胸してる癖にピーピー騒がないで欲しいッスね」
「よし殴る今すぐ殴る歯ぁ食いしばれ」
「おー怖い。じゃあボクは全力で逃げさせてもらうッスよ」
「待てコラ!!」
「ゼー、ゼー、………もう走れない」
くそ………、柴崎君逃げ足早すぎ………。あっという間にまくられた。
「一体どこに隠れたの………あ、」
うちは気がつくと、『調理部』の研究教室の前に来ていた。
入り口には『KEEP OUT!!』というテープが貼られており中に入る事は出来なくなっていた。
「喜屋武さん………」
誰にでも優しかった調理部の少女を思い浮かべる。
あんな事件が無ければ………、もっと仲良く出来たのかもしれないのに。
でも………うちらは前に進まなくちゃいけない。
自らを犠牲にしてまでうちらを生かしてくれた喜屋武さんの為に。
「喜屋武さん……………助けられなくてごめん」
入り口に座り込んで手を合わせる。
「でもうち……喜屋武さんの命、絶対に無駄にしないから」
黒幕は必ず倒すから。だから天国で見てて。
しばらくの間、その場で手を合わせ続けた。
「万斗殿に黒瀬殿、それにジャック殿まで………。一体何があったのですか?」
「聞いてくれるナ」
「せ、千野君!!ボク達を助けてよ!!ボク達今囚われの身なんだよ!」
「それは見たら分かりますが………」
「オレらほぼ無実なんだよ!!これ解いてくれよ!」
「無実……?」
「おい。何をしている」
「ヒッ…!?」
「か、香織……」
「よもや君達、千野に助けを求めていた訳ではないだろうな?あのような大罪を犯したにも関わらず」
「お、大袈裟だよ香織さん。それにボク達は無実だって…」
「それでも覗きをしたという事実に変わりはない」
「厳しすぎる………」
「…………なるほど、事情はなんとなく理解出来ました。でしたら拙僧に出来る事は何もありませんな」
「千野君!?」
「男なら潔く罪を認め受け入れるべきです。それで邪な雑念も消え心が清められるでしょう」
「だそうだ。だから助けは来ない。しばらくここで反省しているんだな」
「そ、そんなあ!!」
「も、もういいだろ!?あ、待てって!?くそぉ、誰か助けてくれぇぇぇ……………!!」
軟禁生活17日目 AM9:30
朝食を食べ終わったうちは暇を持て余し、A棟の中をぶらぶらしていた。
うーん、みんなと合流出来たのはいいけど、いざすぐやる事があるかと言われると無いんだよね。手がかりを探索しようにも他のみんなが調べ尽くしちゃったみたいだし………。
いや、もしかしたら見落としがあるかもしれない。完璧な人間なんていないんだし。よし、今日は探索デーだ!A棟から徹底的に調べ直してやる!
そんな事を考えながら歩いていると、
「あれ、凛さんじゃないか。奇遇だね」
「あ、万斗君」
向こうから歩いてきた万斗君と遭遇した。手には大量の紙を持っている。
「どうしたのその紙?」
「ん?これかい?これはボクが書いたメモさ。今まで手に入れた情報を書き留めているんだ。情報屋としての基本だよ」
そっか。万斗君って超高校級の情報屋だっけ。いつもの変態キャラが板についてるから情報屋って事いつも忘れちゃう。
「ところで凛さん。今暇かな?」
「ん?どうして?」
「手に入れた情報を整理してボクなりに色々とこの場所、それに黒幕について考察してみたんだ。だから凛さんにどう思うか意見を聞きたくてね」
「うち?でもうち頭良くないし考察とか出来ないよ?」
「問題ないよ。むしろそういった考察とかじゃなくて直感のようなものをボクは求めてるんだ」
「そうなんだ。えーっと……」
ちょうど探索に出かけようとしていたところではある。けど、万斗君の考察も正直聞いてみたい。うーん……、まあ探索はいつでも出来るし、今は万斗君と一緒に過ごす事にしよう。
「うん、いいよ。うち今特に用事はないし」
「本当かい!?ありがとう!!じゃあ早速ボクの部屋で2人きりで……」
「場所は食堂で」
「………はい」
1F 食堂
「凛さん、何か飲む?」
「え、いいの?」
「誘ったのはボクだし、女性に奢るのはジェントルマンとして当然さ」
「じゃあお言葉に甘えて………フルーツオレで」
「オッケー。………はいどうぞ」
「ありがとう」
そんな訳で食堂にやってきた。朝食が終わったばかりだからか、誰もいなくてとても静かだ。
「さあさあ、そのフルーツオレをボクの体液だと思って存分に味わって飲んでね!!」
「一瞬で飲む気失せた」
「じょ、冗談だって……。だからそんな殺意のこもった目で見ないで」
万斗君の発言、これ普通にセクハラで訴えたら勝てるよね?
「じゃあ冗談は程々にして………、ボクの色々考えた考察について話すよ」
「う、うん」
一瞬で真剣な表情に変化した万斗君に少し驚きながらうちは返事をする。
万斗君はゆっくりと話し始めた。
「すごいね、万斗君は」
「ん?何がだい?」
「色々な情報から鋭い考察が出来るとことかさ。うちだったら頭こんがらがっちゃうもん。尊敬するよ」
万斗君の黒幕の考察について満足がいくまで討論したうちらは、飲み物を飲みながら一息ついていた。万斗君の考察はどれも納得せざるを得ないような内容ばかりだった。ただ、情報がまだ不足している以上、まだ断定は出来ないから他の人に話すのはナシ、という事になった。
「いやあ〜、凛さんにそんな事言われるとボク、思わず立ち上がっちゃうよ!どこがとは言わないけど!」
「しばくぞマジで」
こういう発言がなければ本当に尊敬に値する人物なんだけどなぁ。
「そういえば万斗君って、何で情報屋になろうと思ったの?」
「ボクが情報屋になった理由?」
「そう。せっかくの機会だし聞いてみようかなーって。あ、嫌だったら無理して話さなくてもいいよ」
万斗君に前から気になっていた事を尋ねてみる。
「いや、全然嫌じゃないよ。話にも付き合ってもらったし喜んで話させてもらうよ」
万斗君は飲み物を飲み干すと、少し嬉しそうに話し始めた。
「ボクは昔から体がとても小さくて運動も出来なかった。それに勉強もそこまで出来たわけでもなかったから周りに自分が得意だと言い張れるものが何もなかったんだ。何でも勝てない。勝てるものがない。つまり落ちこぼれだったんだよ。ボクはそんな自分が大嫌いだった。そんな自分をずっと変えたかったんだ」
「ボクはボクの父さんに相談してみた。自分に得意な事がない。どうすればこんな自分を変えられるのかってね。そうしたらボクの父さんはこう言ったんだ。
『じゃあ情報を握れ。この世界は情報が全てだ。情報をどれだけ持っているかで勝負は決まる』
『なにそれ。そんな事で周りの人に勝てるの?」
『いいか輝晃、これだけはよく覚えておけ。「情報を制するものは試合を制す」。たとえどんなに体格が大きかろうが、スピードが速かろうが、情報量で勝っていれば勝てるんだ。父さんが保証する。父さんも昔はお前と同じで何も特技がない平凡な男だった。しかーし!情報をかき集めた結果状況は一変!みんなにチヤホヤされ崇められるモテ男に進化したのだ!」
「も、モテ男………」
「そうだ。お前も女の子好きだろ?」
「うん、大好き」
「だったら情報を手に入れるしかない!女の子が欲している情報をお前が持っていればどうだ?女の子はその情報を得るためにお前に寄ってたかってくるぞ!」
「お、おぉ………!!」
「お前にはまだ可能性がある!誰もが欲しがる情報を手に入れて周りより優位に立つんだ!!」
「………うん!」
「いや、ツッコミどころが満載なんだけど今の話」
「だろうね。父さんの言ってる事はメチャクチャだ。どんなに情報量が多くても体格差はひっくり返らない事だってあるし、女の子が必ず振り向いてくれるとも限らない。でも、ボクはその言葉にひどく感銘を受けたんだ。敵よりも多くの情報を集めて勝負する。取り柄がないボクにも出来る、いや、ボクにぴったりの戦法だったんだ。
それからボクは『情報』というものに固執するようになった。そして『情報屋』として生きる事に決めたんだ。それに加えてそこでボクは、苦労して自分だけが知る情報を手に入れるという行為に快感を覚えるようになったんだ」
「か、快感………?」
「立ち入り禁止の厳重に警備された場所から機密情報を入手した時、あらゆるセンサートラップを潜り抜けて情報を手に入れた時………。とにかく命を張って情報を手に入れるという行為が楽しくてしょうがないんだ」
「で、でも一歩間違えれば死んじゃうんだよ?」
「そこが楽しいのさ。だから正直ボクは………、柴崎君の考えに少し同調してしまうんだ。彼もこのコロシアイ生活や学級裁判を楽しんでいる。スリルを楽しんでいるという点ではボクと同じだからね。まあいけない事だとは分かってるんだけどさ」
万斗君は声のトーンを少し落としながら言った。
彼が情報を求めている理由が分かった気がする。
「それにボクは………苦労して情報を得るのも好きだけど、情報を他人に公開するのも好きなんだ」
「公開するのも好き?」
さっきの表情とは一転、とても嬉しそうな様子で話を続ける。
「人間ってとんでもない情報とかスクープを聞いた時って色々な反応をするでしょ?大抵の人間は驚いたり、へーって納得したりするけど、その驚き方にも色々種類があるんだ。例えば腰を抜かしたり、口を開けたまま固まったり、瞬きが異常に多くなったり………。ボクはその様々な反応を見るのが好きなんだ。自分の得た情報でこんな反応をするんだーって」
「万斗君、よく人から『変わってるね』って言われたりしない?」
「この話を聞いた人はみんな揃ってそう言うよ」
でしょうね。
「でもボクは………この情報屋に誇りを持っている。私欲は抜きにしてもボクは実際に命を懸けて情報を手に入れて、それを欲している人物と取引をしている事に変わりはない。ありがたい事にお得意様もたくさん出来た。だからボクはその人達の期待に応えられるように全力を尽くす。その情報屋としての生き方に誇りを持っているんだ」
万斗君はフフン、と少しドヤ顔をしている。
「凛さん、これがボクが情報屋になったけど、軽蔑するかい?」
「え?」
「言ってる事は一丁前だけど、やってる事は犯罪だ。情報を盗み出すのもそうだし、裏で違法な取引をした事も何度もある。いわば犯罪者だよ」
「ううん、そんな事ないよ。確かにいけない事なのかもしれないけど………、軽蔑なんてしない。万斗君は自分の中に強い芯を持ってて、まっすぐそれに沿って生きてるじゃん。それってすごくかっこいいと思う」
「凛さん……」
「それに万斗君の情報を心待ちにしてる人とか喜んでくれてる人がいるんでしょ?人を笑顔にさせてる万斗君を軽蔑するなんてとんでもない。むしろ尊敬する」
「………そんな事言われたの凛さんが初めてだよ」
少し困ったような、驚いたような表情を見せる万斗君。
「……君に話して良かったのかもしれない。何か心がスッとしたよ」
「そ、そうなの?うちただ聞いてただけなんだけど……」
「凛さんカウンセラーとか向いてるんじゃないかい?」
「ムリムリ!!うちガサツだし絶対出来ないよ!」
静かな食堂に響き渡る2人の笑い声。
今まで知らなかった万斗君の一面を見れた時間だった。
「ああ、そういえばさっきから少し胸が痛くて……」
「え!?大丈夫なの!?何か病気とか??」
「さっき凛さんにベタ褒めされたからね………、少し刺激が強すぎたのかもしれない。………実はこれを治すには女性の乳首を舐める必要があるんだ。だから凛さんのその綺麗なピンク色の……」
「真剣に聞いて損した。気持ち悪いし生理的に無理だから二度と話しかけないでね。さようなら」
「ちょ!?そこまで言う必要ある!?待ってよ凛さん、ボクの事嫌わないでぇぇぇぇ………!!」
生存者
LA001 相川 凛《外国語研究家》
MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》
⁇003 喜屋武 流理恵 《調理部》
SA004 銀山 香織《棋士》
MB005 黒瀬 敦郎《バスケ部》
⁇006 柴崎 武史《歴史学者》
MB007 霜花 優月《狙撃手》
MA008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》
MC009 千野 李玖《茶人》
MC010 独島 灯里《サブカルマニア》
⁇011 飛田 脚男《バイク便ライダー》
⁇012 中澤 翼 《フットサル選手》
⁇013 錦織 清子《テニスプレーヤー》
⁇014 分倍河原 剛 《空手家》
015 北条 業 《???》
MA016 万斗 輝晃 《情報屋》
MB017 幸村 雪 《激運》
MA018 明智 麻音《探偵》
残り14人