ダンガンロンパ キャンパス   作:さわらの西京焼き

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また更新が空いてしまいました………。






(非)日常編④

軟禁生活17日目  PM1:00

 

 

 

 

 

「うーん………そう簡単に手がかりは見つからないか」

昼食を食べお腹いっぱいになったうちは、腹ごなしも兼ねてA棟の探索をしている。

けれど成果は相変わらずゼロだ。まあ意地の悪いモノカバがそう簡単に見つかる場所に手がかりを隠さないとは思うけど。

だとしても………流石にこの状況が続くと焦りが出てくる。

さらにモノカバがいつ何を仕掛けてくるか分からない。次誰が人を殺すか分からない。そのような状況がうちの焦りを加速させていた。

「早く何か見つけないと………。ん?あれって………」

そんな独り言をブツブツと呟いていると、ある人物が視界に入った。

「相川殿?そんなところで何をしているのでござる?」

パソコンらしきものを持ち歩いている霞ヶ峰さんだった。

うちの視線に気がついて声をかけてきた。

「霞ヶ峰さん。何か脱出の手がかりがないか探してたんだ」

「相川殿は生真面目でござるなぁ。拙者にはその姿勢、到底真似出来ないでござるよ」

「うちの取り柄はアクティブな事だけだからさ。とにかく行動あるのみ、っていうのがうちのモットーみたいなものなんだ」

「けど、たまには休息も必要でござるよ。働きっぱなしでは心も体も疲弊してしまうでござる」

少し心配そうな表情で霞ヶ峰さんはそう言う。

「確かにそうだけど………、でも一刻も早くこんな所出たいじゃん。休んでなんかいられないよ」

うちは探索作業を再開する。

 

「…………相川殿。もしかして今焦ってるでござるか?」

「………え?」

けれどその手はすぐ止まる。

「図星みたいでござるね。…………よし、では相川殿。今から拙者の研究教室に来るでござる!」

「えぇ!?ちょ、ちょっと霞ヶ峰さん!?」

霞ヶ峰さんはうちの手を掴むと、無理矢理立たせて引っ張っていく。

「うち探索の途中なんだけど!?というか何するつもり!?」

「それは行ってからのお楽しみでござる〜」

結局うちは霞ヶ峰さんに連行される羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

B棟  動画投稿者の研究教室

 

 

「いらっしゃいでござる!拙者のアジトにようこそでござる!」

「うわぁ………」

霞ヶ峰さんに連れられて研究教室に来た。中は想像以上に………汚かった。

床にあらゆる物が散らばっており、足の踏み場はほとんど無い。おかしいな。最初に来た時は今の100倍綺麗だった筈なのに………。

「ちょっと片付けるから待って欲しいでござる」

「う、うん………」

そう言って霞ヶ峰さんは物をどかす。………ちょっと待て。今見てはいけないものが見えたぞ。

「か、霞ヶ峰さん。その……ぶ、ブラが落ちてるよ………」

「あ、本当でござる。昨日脱いだのをそのままにしてたでござる」

「なんでそんな平然としてるの!?」

下着だよ下着!普通恥ずかしがるでしょ!!てゆーかなんだそのブラの大きさは!!うち付けたら絶対ブカブカの奴じゃん!!ここでも胸囲の格差を思い知らさせるのかコラ!

「そもそもここ個室じゃないんだからブラ外す必要ないでしょ!?」

「窮屈だったから外したでござる。拙者、集中する時はパンツしか履かないんでござるよ」

「はい!?」

これが超高校級の生徒………。普段の生活も異質だ。

 

 

 

 

 

「それで………なんで霞ヶ峰さんはうちをここに連れてきたの?」

「ん?」

うちらは今、向かい合うようにして椅子に座っていた。

手元には霞ヶ峰さんが用意してくれた炭酸ジュースが置いてある。

「そうでござった。実は相川殿に是非見て欲しいものがあるのでござる」

そう言って霞ヶ峰さんはカバフォンを見せてくる。

画面を見ると………どうやら動画みたいだ。

「では再生するでござる」

 

 

 

 

 

 

 

『ほら、チャッチャと食べな!!後片付けもあるんだからね!』

「…………え?」

映し出されたのはいつもの見慣れた食堂と、そこで食事を摂っているうちらだった。けど、それは今撮られたものではない。恐らくここに来てすぐ撮られたものだ。

何故そう確信出来たか。それは今聞こえた声の主が………もうこの世にいないからだ。

「錦織さん………」

このコロシアイで一番最初に犠牲になった錦織さんの声だった。いなくなったのはたった数日前なのに既に懐かしく感じる。

 

 

『う〜〜〜ん眠いよー』

『独島ちゃんシャキッとしな!箸が全然進んでないよ!』

目が半分しか開いてない寝ぼけた独島さんの世話をする錦織さん。

『黒瀬君………。この肉、よかったら黒瀬君に、あげるよ………』

『マジか!?サンキュー脚男!!恩にきるぜ!』

肉を物欲しそうに見つめる黒瀬君に自分の肉を分けてあげる飛田君。

『ざわさんの料理今日もサイコーだよ!!ホントに料理うまいんだね!』

『そんな大したものは作ってねーよ。でもまあ、褒められて悪い気はしねぇな』

幸村さんに料理を褒められて照れる中澤君。

『ジャック君。今日こそちゃんと人参食べてもらいますからね。全部食べ終わるまでここから出しませんから。あ、逃げようとしても駄目ですよ。私がしっかりと監視していますから』

『チッ、うるさい女ダ………』

好き嫌いせずに食べるように注意する喜屋武さんと、顔をしかめて心底嫌そうな表情を見せるジャック君。

まだ何も起きていない………平和で楽しい時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

「霞ヶ峰さん、これって………」

「拙者、実はここでの生活を記録したくてこれでずっと録画してたのでござる」

「そうなんだ………」

カバフォンに録画機能があったなんて知らなかった。

「でもなんで録画なんてしたの?」

「………拙者はここでの生活をどうしても映像として残しておきたかったのでござる」

「え?」

霞ヶ峰さんは真剣な表情で画面を見つめる。

「拙者はここで起きた出来事を決して忘れてはいけないと思うのでござる。だからありのままの生活風景を撮っておきたかったのでござる。それに………拙者はここを脱出したらこの動画を編集して世間に公開するつもりでござる。ここで起きた事を全て伝えて、次に巻き込まれる人が出ないように注意喚起をするつもりでござる。二度とこんな事は起きちゃ駄目でござる」

「霞ヶ峰さん………」

「相川殿にこれを見せたのは、これを見て少し和んで欲しかったのでござる。探索も大事でござるが焦りは禁物でござる。相川殿は焦りのあまり自分を追い込んでしまってるでござる。ほら、これを見るでござるよ。黒瀬殿の間抜けな顔でござる」

「本当だ。………ハハハ!あ、霞ヶ峰さんも同じ顔してるよ!」

「うわっ!?これは見ないで欲しいでござる!?」

 

 

 

 

「ありがとね、霞ヶ峰さん。お陰でちょっと気持ちが楽になったよ」

「それなら良かったでござる。ネガティブな気持ちを吹き飛ばすには笑うのが一番でござる」

霞ヶ峰さんは様々な録画した動画を見せてくれたお陰で、うちは焦りを忘れるくらい大笑いする事が出来た。

「それにしても霞ヶ峰さんは凄いね。やっぱり人を笑わせるのって得意なの?」

「得意も何もそれは拙者の十八番でござる!!拙者一応これでも超人気ユアーチューバーでござるよ!」

そうだった。霞ヶ峰さんはカリスマユアーチューバーだった。

「でもさ、なんで霞ヶ峰さんはユアーチューバーになろうと思ったの?まあ今はネット社会だしなりたいと思っても不思議ではないんだけどさ」

「…………」

「うちの周りにそういう動画投稿者の人がいないから、どういった経緯で志したのかなーなんて事が気になっちゃって………、霞ヶ峰さん?」

「………うっ………」

「霞ヶ峰さん!?大丈夫!?」

うちがそんな質問をすると、霞ヶ峰さんは口を押さえながら蹲ってしまった。うちは慌てて彼女の背中をさする。

「す、すまんでござる………。拙者、昔を思い出すと気分が悪くなってしまうのでござる」

話を振られるだけで気分が悪くなるなんて………きっと相当なトラウマがあるに違いない。とても無神経な質問をしてしまったとうちは後悔する。

「そうだったんだ………、ごめんね、昔の話なんか聞いちゃって」

「相川殿が謝る事ではないでござる。昔話は誰にもしたことがないでござるから知らなくてもしょうがないでござるよ。それに………」

霞ヶ峰さんは一度深く息を吸い込むと、

「相川殿にはわざわざここに来てもらった借りがあるでござるからね。お返しと言ってはなんでござるが、拙者の過去について話すでござる」

「無理しなくてもいいんだよ!?だって気分が悪くなっちゃうくらいの事があったんでしょ!?」

慌てて止めようとするが、霞ヶ峰さんはゆっくり首を振る。

「……もう過去から逃げるのは止めるでござる。ずっと過去の記憶は封印してきたでござるが、信頼できる相川殿になら話してもいいと思ったのでござる」

「そっか………。じゃあ、話聞いてもいい?霞ヶ峰さんの過去に何があったのか。どうして動画投稿を始めようと思ったのか」

「勿論でござる。少し長くなるでござるが、そこは我慢して欲しいでござる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拙者は昔から、親に虐待を受けていたでこざる。殴る蹴るは当たり前で、食事もロクに与えられず、風呂も満足に入らせてもらえなかったでござる。なんでそこまで虐待されたのかは拙者もよく分からないでござるが、恐らく単に拙者が気に入らなかったのでござろう。とにかく拙者は虐待によって死ぬ一歩手前まで追い込まれていたでござる。

 けど、ある時親が強盗に殺されたでござる。拙者は押し入れで寝ていたから犯人には偶然気付かれなくて助かったでござる。起きた時の衝撃は忘れないでござるよ。……さっきまで拙者を地べたに這いつくばられせていた大人が、今度は拙者と同じように地べたで息絶えている。その時拙者は恐怖よりも先に喜びがやってきたでござる。あぁ、やっとコイツらから解放される。もうコイツらの顔を見なくて済むっていう感情でござる。よく考えたら異常でござるが。

 その後、拙者は孤児を預かる施設に引き取られて、数年後に小学校に入学したでござる。けど、虐待のせいで心が完全に壊れた拙者は、学校に馴染めずコミュニケーションも全く取れなかったでござる。そうしたら今度は………同級生からいじめに遭ったでござる。具体的には無視されたり、靴を隠されたりするような低レベルないじめでござった。虐待に比べたら軽いものではござったが、それでも精神的にかなり追い詰められたのは間違いないでござる。

 中学校に入ってもそれは変わらず、拙者は数日で不登校になって家に引きこもったでござる。この時拙者は叔父に引き取られていたから拙者に与えられた自室から出なくなったのでござる。

 そんな引きこもってネットに夢中になってた拙者を救ってくれたのは…………とあるユアーチューバーでござった。

 その人は決して再生数も高くなくて、人気者と呼ばれるには程遠い中堅レベルのユアーチューバーでござったが………、その動画に拙者は心惹かれたのでござる。

 動画の内容は、自作の様々なヒーローのコスチュームに変装して幼稚園にドッキリで突入、幼児の反応をみるというありきたりなものでござる。けど、普段笑わなそうな子供までも笑わせるその技量や笑っている子供達の楽しそうな笑顔を見て………、拙者もこんな子供達を笑顔にさせるヒーローになりたいって思ったんでござる。

 それで思いついたのが、拙者もユアーチューバーとして見ている子供達全員に笑顔を届けられるような何かをするということでござった。特に拙者のような境遇の子供に希望を届けたいと思っていたのでござる。だから拙者は動画投稿の仕組み、パソコンの操作、現在の子供のトレンド等、動画投稿者になる為に必要な知識は全て勉強して詰め込んだでござる。

 そして初めて投稿した動画がバズりまくった結果、拙者は超人気ユアーチューバーになったでござる。おかげさまで子供達だけじゃなくて若者からも支持される人気者になったでござる。自分にも自信が持てて性格も明るくなったし、コミュ力も動画投稿のおかげでだいぶ向上したでござる。

これからも拙者は、子供達に笑顔を届けるスーパーヒーローを目指すでござる」

 

 

 

 

 

 

「というのが、拙者の過去話でござる………どうしたのでござるか相川殿?そんなに口を開けて」

「いや、霞ヶ峰さんの過去が思ったより壮絶すぎて………」

普通の生活を送って文句を言ってきた自分が恥ずかしくなる。うち、とても恵まれた環境で育ってたんだ。

「………拙者の過去はゴミでござる。今も話をしたおかげで正直吐きそうなくらい気分が悪いでござる。でも………今こうして友達と笑い合う事が出来てるし、何不自由なく生きているでござる。だから拙者の人生……まだまだ捨てたもんじゃないなって思えるのでござる」

「一応今監禁されてるけどね………」

「そ、そうでござった。でもいつか必ずここから無事脱出してみせるでござるよ。外には拙者の帰りを待つファンが沢山いるでござる!」

そう元気に言う霞ヶ峰さん。彼女は過去の出来事に負けず、若者達を笑顔にする事を使命として活動する努力家であった。

 

 

 

「凄いね…………。ちなみにさ、動画の撮影から編集まで全部自分でやってるの?」

「全部一人でござるね。一応拙者、機械系にはそこそこ詳しいでござるから、そこまで苦労はしてないでござるよ」

「機械に詳しいのは羨ましいなぁ………。プログラミングとかも出来たりするの?」

「専門家には及ばないでござるが、素人よりは余裕で出来るでござる。拙者特にコンピュータには滅法強いでござるから」

「マジで凄い………」

さっきから凄いしか言ってないうち。語彙力の欠如。

「霞ヶ峰さんって相当ハイスペック女子だったんだ……」

「そ、そんな事ないでござるよ!?」

慌てて手を振り否定する霞ヶ峰さん。えっ可愛い。その仕草可愛すぎで死にそう。

て言うか、「ござる」っていう語尾と普段の様子から忘れがちだけど、霞ヶ峰さんの顔ってうちらの中で一番可愛いんだよね。胸も大きいし、まさに女子の理想なんだよな………。

「その『ござる』っていうのはキャラ付けなの?」

「そうでござる。最初は動画を撮る時だけ言っていたのでござるが、次第に普段の生活でも使うようになってしまったでこざる」

キャラ付けかぁ。ござる無しの霞ヶ峰さんの喋りも正直聞いてみたいけど。

「なるほど………。あ、そういえばこのパソコン凄く気になってたんだけどなんで2つもあるの。ほら、こっちのパソコンは前使ってなかっ………」

「触っちゃ駄目でござる!!!!」

うちが少し気になって右側のパソコンに触ろうとすると、霞ヶ峰さんに手を掴まれた。

「え?」

「こっちは絶対触っちゃ駄目でござる。これは………その………編集をミスった失敗作が残ってるのでござる」

「そ、そうなんだ」

「そう、そうなのでござる!だから、絶対に見ちゃ駄目でござる」

非常に慌てた様子で早口にそうまくし立てる。

まさかそんなものが入っていたとは………。全然予測出来なかった。

「ご、ごめんね。そうとは知らずに触ろうとしちゃった」

「いや、分かってくれたのならいいのでごさる」

 

 

「うち、今度霞ヶ峰さんの動画全部見るね!霞ヶ峰さんがどんな動画出してるのかすごく気になっちゃった」

うちは少し気まずくなった空気を変えようとそう言った。

「ほ、本当でござるか!?いやぁ、これできっと相川殿も拙者のファンになるでござるよ。あ、見たら是非チャンネル登録と高評価、お願いするでござるよ!」

「うん!!」

「それとそれと、前の約束、忘れてないでござるよね?拙者のチャンネルにゲストとして登場してもらう話」

「あぁ………うん、一応覚えてるけど………」

「相川殿には拙者と体を張った10本勝負をしてもらうでござる!!超絶しんどいから覚悟して欲しいでござる!」

「えええ!?何それ、すっごく嫌な予感がする!やっぱ断ってもいい!?」

「もう遅いでござるよ!!拙者の人気急上昇の糧となるでござる!」

「嫌だよぉぉぉぉ!!!!」

慌てて部屋から飛び出すうちと追いかけてくる霞ヶ峰さん。

また少し………彼女と仲良くなれた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM2:00 C棟 遊園地

 

 

 

「相変わらず賑やかだなぁ……」

あの後散々霞ヶ峰さんに追いかけ回されたうちは、なんとか振り切ってこの遊園地にやってきた。診療所にはしばらくいたけど、よく考えたらちゃんと遊園地内を探索したことは無かったので足を運んでみたのだ。

しかしこのモノカバの装飾はどうにかならないのだろうか。せっかく楽しい遊園地なのにコイツの顔がチラつくからどうもテンションが上がらない。

「あれ?りんりんだー!おーい!!」

どこから探索しようか考えていると、入り口からうちを呼ぶ声が聞こえた。振り返ると幸村さんが歩いてきていた。

「幸村さん。もしかして幸村さんも探索しに来たの?」

「うーん…………まあ、そんな感じかな?りんりんも?」

「うん。まだちゃんと見て回った事無かったから」

少し歯切れの悪い返事が返ってきた気がするけど……気のせいかな。

「そうだ。せっかく会ったんだし一緒に探索しない?一人だと寂しいからさ」

「全然オッケー!!てゆーかうちもそれ言おうと思ってたんだ!!」

試しに探索に誘ってみると、幸村さんは喜んで了承してくれた。

そんな訳で二人で探索へと出発した。

 

 

 

 

 

 

 

探索が一息ついたところで、うちらは園内にあるベンチで休憩していた。

「幸村さんはもうアトラクションには乗ったの?」

「うん!午前中どくちゃんとあっくんと三人で遊びまくったよ!」

「へぇー楽しそう!」

三人が遊園地で大はしゃぎする姿が容易に想像出来る。

「まあ楽しかったんだけど………実は衝撃の事実が判明したんだよね……」

「え?」

「実はうち………絶叫系苦手みたいなんだよ………」

「そうなの!?意外……」

幸村さん、絶叫系大好きそうな性格してるのに。

「昔は平気だったのにさっき乗ったらめちゃくちゃ怖くって。まあどくちゃん達にバレたくないから二人の前では楽しかったアピールしてたんだけどさ。だからこれ知ってるのりんりんだけだよ。絶対に他の人に言わないでね」

「勿論だよ。そんな秘密言いふらす程うち性格悪くないもん」

「だよね。流石はりんりん!やっさし〜!」

幸村さんは嬉しそうに笑う。喜屋武さんの事件が起きて黒幕側を裏切って以来、彼女は生来の明るさを完全に取り戻した。

ジャック君ともいい感じみたいだし、彼女が幸せそうで何よりだ。

「……そうだりんりん。秘密ついでに言いたい事があるんだ」

「ん?」

幸村さんは笑みを消し、真剣な表情でうちの目を見ながら言った。

「実はさ、ウチがここに来たのは本当は探索が目的じゃないんだ」

「ど、どういう事?じゃあ幸村さんは何でここに来たの?」

うちは突然の幸村さんの発言に戸惑う。

 

 

 

 

 

 

「ウチ……その………今度さ、ジャックきゅんに…………告白しようと思うんだ………」

恥ずかしそうに顔を赤らめながら幸村さんが言った事は…………こ、告白する!?

「えええええ!?」

「しーーーっ!!声デカすぎるよりんりん!誰かに聞かれたらどうすんの!」

思わず驚きで大声を出してしまったうちの口を慌てて塞ぐ幸村さん。周りを見渡すが、幸いにも近くに人の気配はない。

「ご、ごめん。びっくりしちゃって。でもだったら何で遊園地に……?あ、もしかしてここで告白するつもりなの?」

「そう。あの観覧車の頂上で言うつもり」

幸村さんが指差したのは、遊園地の北に位置する観覧車だ。

中央にモノカバの顔が描かれた、ある意味不気味な観覧車だ。

規模はとても大きく、少なくともうちは生まれてあんなに大きな観覧車に乗った事は無い。

「ジャックきゅんを遊園地に遊びに誘って、最終的に観覧車に乗るつもり。だからウチは、本番に向けて軽く下見に来てたんだ」

「なるほど………そりゃあ『告白する為の下見』とは人前では言えないよね」

まあ幸村さんとジャック君が相思相愛なのはほとんどの人が気がついてるし、バレても問題なさそうではあるけど。

「幸村さんなら絶対大丈夫だよ!!」

うちは幸村さんにそう呼びかける。彼女の告白に向けて努力する姿を見たら、何故か無性に応援したくなったのだ。

「りんりん……」

「うちに出来ることなら何でも言って!全力で手伝うからさ!」

そう言って幸村さんの手を握る。

「………ありがと。やっぱりんりんは優しいね。ウチが裏切り者だって知っても変わらず接してくれるし」

急に手を握ったうちの手を優しく握り返してくれた。

「じゃあさ、うちと一緒に観覧車乗ってくれない?どんな感じなのか確かめておきたいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳でうちらは観覧車前まで来た。

「これ………普通に乗っていい感じ?」

「だね」

相変わらず案内一つない閑散とした乗り場に不安を覚えたが、早速乗り場に近づいたゴンドラの扉を開けて中に入る。

「中は普通の観覧車と同じみたいだね」

「ウチ、てっきりモノカバが罠とか仕掛けてるんじゃないかってちょっと心配だったよ」

そのまま観覧車はゆっくりと上に向けて回っていく。

「ねえ、幸村さん」

「なーに?」

このまま黙って乗っているのもなんか変だし、ある質問を投げかけてみることにした。

「幸村さんの超高校級の才能についてなんだけど」

「ウチの才能?」

「『激運』って一体どんな才能なのかって前から凄く興味があったんだ。だから………幸村さんが嫌でなければ、その……教えてほしいなって」

「………フフッ」

「え?」

うちが恐る恐る才能について聞くと、幸村さんは何故かクスッと笑った。

「幸村さん………?」

「いやーゴメンゴメン。りんりんの聞く時の顔があまりにも面白くてさー」

「ええっ!?」

そんな愉快な顔してたかな……?

「だってウチら2人で観覧車乗る程の仲だよ?だからりんりんもそんなウチに遠慮しないでいいんだって」

「え、でも………才能についてあんまり良く思ってない人もいるかもしれないからさ……」

「それでもウチとしてはバンバン聞いてくれた方がいいよ!遠慮されてるとなんかこっちも居心地悪いし」

「そ、そうなんだ………」

あんまグイグイ人の事情に突っ込むのは控えようと思ったけど………、幸村さんはそういうのは気にしないタイプだったみたいだ。本当に色んな人がいるなぁ。

「で、ウチの才能について聞きたいんでしょ?全然話してもいいんだけど、そんな面白くないと思うよ」

「それでもウチは気になる!」

「そうなの?じゃあ時間もあるし、サッと話しちゃうねー」

観覧車のゆっくりな動きに合わせて、彼女もゆっくり話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウチの激運はね………、簡単に言うと『願えば何でも叶う。ただしその分周りに不幸が降りかかる』っていうものなんだ。例えば、『テストでいい点が取りたい』って願うとウチは鉛筆転がすだけで100点取れちゃうけど、クラスの誰かが逆に調子悪くして0点取っちゃうとかね。あと大規模なものだと、家族で乗ったバスがバスジャックされた時、『ウチの家族だけでも助かりたい』って願ったら、ウチらだけ助かって、犯人含む他の乗客は事故で全員死ぬ、みたいな事もあったなあ。

 周りはウチの才能を羨ましがったけど、ウチはこの才能はあんまり好きじゃない。だってウチだけが幸せになって周りのみんなはどんどん不幸になっていくんだよ。だったらウチはこんな才能いらない。みんな仲良く幸せになれればウチはそれでいいんだ。

 しかも厄介な事に、誰に不幸が降りかかるかウチにも全く分かんないんだ。だからもし『このコロシアイに参加している生徒全員が無事にここを脱出出来たらいいな』なんて願ったら、もしかしたらウチらの家族や友達に不幸が降りかかるかもしれない。だから迂闊に『出たい』なんて願えないんだよ。ウチはみんなと一緒に出たいけど、出たいと願う事は出来ない。だから結構不便なんだよねーこの才能」

 

 

 

 

 

 

「ウチの才能についての話はおしまい。りんりんはどう思った?ウチの才能」

話終わった幸村さんは軽く笑ってみせた。

「幸村さんの才能がまさかそんなカラクリだったとは………」

「びっくりした?だよねー。ウチの才能の詳細聞いた時みんな同じ反応するもん」

幸村さんの才能はてっきり「めちゃくちゃ運がいい」ぐらいだと思っていた。けど実際は、何でも願えば叶う代わりに周りが不幸になるという超次元的な才能であった。そんなの驚かない筈がない。

「ウチさ、りんりんみたいに専門的な分野で活躍出来る才能が欲しかったよ」

すると幸村さんは少し寂しそうな口調でそう言った。

「幸村さん……」

「あーあ。ウチも他のみんなみたいな才能欲しかったなー」

幸村さんは足を伸ばしながら天井を見る。

彼女は手に余る自分の才能についてあまり良く思ってないみたいだ。

「………でもさ、逆に言えば幸村さんは今から何にでもなれるって事じゃない?」

うちは思ったことを素直に口に出す。

「……え?」

「うちらみたいなある分野に特化にした人達ってその分野に進むしか選択肢がない場合が多いんだよ。でも幸村さんは才能とかに縛られてるわけじゃないから何にでもなれる可能性を秘めてるって事じゃない?」

「なるほど………。そういう風に考えたことは無かったなあ……」

「それにさ、幸村さんの才能だっていざと言う時に絶対役立つと思うよ!だからその才能は『奥の手』として取っておく、みたいなポジティブシンキングでいくべきだとうちは思う!」

「………そっか………、そうだね!!そうだよ!!」

幸村さんは立ち上がるとうちの肩を掴んで揺すった。

「ちょ…!?」

「ウチって無限の可能性を持ってる女だったんだよ!!だったらやる事はただ一つ!才能なんかに頼らず自分のポテンシャルだけでみんなと一緒に脱出する!もしもの時は奥の手として『激運』を使う!」

「わ、分かったから落ち着いて!揺らすと生きた心地がしないよ!?」

うちらの乗ったゴンドラはぐらぐらと揺れている。あり得ないけどもし衝撃でゴンドラが外れたら、みたいな事を考えてしまう。

「おっとっと。つい興奮しちゃった」

幸村さんは手を離す。

「でもありがとう、りんりん。お陰で自分の才能も捨てたもんじゃないってことがよく分かったよ」

そして心底嬉しそうな表情でうちに礼を言った。

ここに来て以来、うちらに見せた中で一番の笑顔だった。

 

 

 

「………あ!?もうすぐ頂上だよ!」

幸村さんに言われて外を見る。話し込んでいるうちにいつの間にか頂上まで上ってきていたようだ。

「凄い………!遊園地全体を見渡せるよ!」

「本当だね」

頂上は思ってたよりも高さがあった。もし下に人がいても表情などは全く見えないだろう。

「ウチ、決めた。この観覧車の頂上で告白する」

すると幸村さんは外の景色を見つめながらそう宣言した。

「ここでちゃんと気持ちを伝えて、悔いを残さないようにする。ここじゃ何が起こるか………分からないもんね」

彼女の表情は………まるで自分にこれから何か起こると予言しているように見えた。

「大丈夫だよ。絶対何も起こさせない。みんなで無事に脱出しよう」

「………うん。じゃありんりんの力、これからも頼りにしてるよ」

彼女の事を、また深く知ることが出来た一時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM20:00 A棟 売店

 

 

食堂でみんなと一緒に夜ご飯を食べた後、うちは日常品を買いに売店に寄っていた。

「う〜ん。あ、『いちごミルク味 歌舞伎揚げ』だって。これ絶対美味しいやつだ」

独り言を言いながらお菓子コーナーを物色。なんかうち、最近独り言言う癖ついちゃったみたい。前はそんなことなかったんだけどなぁ………。

「よし。今日はこれくらいでいっか…………あ」

「……………。チッ、よりによって一番顔見たくねぇ奴に会うとはなァ」

買い物終えてモノマネーを払おうとすると、入ってきた分倍河原君と鉢合わせた。

彼の姿を見るのは前回の裁判以来だ。

「分倍河原君………。今までどこにいたの?全然姿を見かけなかったけど」

「俺様に気安く話しかけるんじゃねェ。俺様の計画をぶち壊した奴がよくも俺様に声をかけようなんて思ったなァ。お前のそういう所が特に気に入らねェ」

「………」

分倍河原君はそう言うと、店の奥に入っていった。

彼は前回の裁判で企みを暴かれ、黒幕からも見捨てられた。つまり彼が黒幕に従う理由など今はない筈だ。しかしうちらと関わろうとしない様子を見ると、やはりうちらの方に寝返るつもりはないようだ。

でも、かといって放置するわけにもいかない。

「ねぇ、分倍河原君。あなたはこれからどうするの?」

「………あァ?」

声をかけると、分倍河原君は振り返りうちを思い切り睨みつけてきた。

「だって、あなたは黒幕からも見限られたんでしょ?だったらあなたが黒幕なんかに従う道理はない筈だよ。見捨てた黒幕に逆襲したいと思わないの?もしそう思うんなら、心を入れ替えたうちらと………」

「………次口を開いてみろォ。首の骨折って殺すからなァ」

「うっ!?」

次の瞬間、うちは分倍河原君に首を絞められていた。体が持ち上げられ、どんどん苦しくなっていく。

「俺様が一回見捨てられたくらいで()()()に逆襲するゥ?ふざけた事抜かしてんじゃねぇぞォ!俺様がどれだけ()()()を慕っていると思ってるんだァ!!それにこうなったのはお前のせいだろうがァ!!」

「う………や、やめて………」

辛うじて声を出すが、彼には届かない。

「お前が大人しく引っ込んでればこんな事にはならなかったァ!!クソがッ!!お前のせいで全部台無しだァ!!何でこんなにも絶望の為に尽くしてる俺様が失敗して、何もかも忘れて希望に満ち溢れたクソみたいな日常を送っている奴が()()()()()()()()()()()()()んだァ!!」

「…………!?」

「………チッ、喋りすぎたァ」

うちが驚きの表情をすると、分倍河原君もハッとした表情をしてうちを解放した。

「ゲホッゲホッ!!」

「寛大な俺様に感謝しろよォ。次舐めた口きいたらぶち殺してやるから覚悟しておけェ」

乱暴に降ろされ咳き込んだうちにそう吐き捨て、分倍河原君は去っていった。

「………死ぬかと思った」

やはり『超高校級の空手家』の力は伊達じゃない。片手で軽々うちを持ち上げるなんて。分倍河原君の言葉はハッタリじゃない。素手で人を殺せる力を確かに持っている。

分倍河原君を説得するのは、やはり無理なんだろうか。

彼はあの方と呼ばれる黒幕に相当心酔している。黒幕を止めれば彼も自ずと考えを改めてくれるのだろうか。

「それにしても………目をかけられてるってどう言う事だろう?」

うちはつまり、黒幕にロックオンされてる………?

もしそうであるならば、モノカバにはより警戒する必要がある。

そろそろ動機を持ってきてもおかしくないし。

「………まだまだ気は抜けないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軟禁生活18日 AM2:00

 

 

 

「………トイレ行きたくなっちゃった」

夜中に目覚めたらうちは、トイレに向かう為個室を出て廊下を歩いていた。

寝る前に水を飲みすぎたのかもしれない。

「ふあーぁ。早く済ませてまた寝よう」

うちは寝惚け眼で女子トイレのドアを開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲホッ!!ゲホッゲホッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え?」

中に入った瞬間、誰かが嗚咽している声が聞こえた。

「誰!?大丈夫!?」

慌ててその誰かに駆け寄る。

「………!!」

「か、香織ちゃん……!!」

その人物の正体は香織ちゃんだった。

「あ、相川か………。済まない、見苦しいところ見せてしまったな」

「そんなのどうでもいいよ!!それよりどうしたの!?具合でも悪いの!?」

「………実はさっき食べた菓子を喉に詰まらせてしまってな。それでトイレに駆け込んだだけだ」

「そう、なの………?」

「ああ。だから君が心配する事は何一つないんだ。気を遣わせてしまって済まない」

香織ちゃんはスッと立ち上がると、何事もなかったかのように出口へと向かう。

「ま、待ってよ!!」

うちはなんだが様子がおかしい香織ちゃんの腕を慌てて掴んで止める。

「相川……?どうしたんだ一体」

「だっておかしい………え?」

振り向いて困った表情を見せる香織ちゃん。その右目の横に………痣があった。

「香織ちゃん、その顔にある痣なに?」

「ッ!?ああ、これはだな……さっき部屋で転んで派手に顔をぶつけてしまったんだ。我ながら情けない」

「香織ちゃん………」

苦笑いする香織ちゃん。その表情は…………明らかに無理をしてるように見えた。

「待って!」

「もうこの話はいいだろう?それよりも相川。もし君が良ければ……少し散歩しないか?」

話を強引に打ち切った彼女はさっきの表情のままそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………空が綺麗だな。まあこの空も本物かどうか定かではないが」

「………うん」

「………少し冷えるが大丈夫か?相川が寒いのならすぐ別の場所へ移動するが」

「………ううん、大丈夫」

「………そうか。なら良かった」

うちらは今、B棟の校庭を歩いていた。

ここは唯一昼夜の概念がある場所だから、夜中の今はちゃんと空も真っ暗で気温も昼に比べるとグンと下がる。

「どうしてうちと散歩したいなんて言ったの?」

うちは横を歩く香織ちゃんに問いかける。

「………君と久しぶり二人で話したいと思ってな」

「でも、普段もうちと香織ちゃん一緒に話してるじゃん。ご飯食べる時とか」

「それは私達だけでなく周りにも人がいるだろう」

「そうだけど………」

「相川。数日前に君が私に友達だと言ってくれた時を覚えてるか?」

香織ちゃんは空を見上げながら突然寂しそうに言った。

「え?もちろん覚えてるけど……」

「前にも言ったが、ここに来るまで私には友達という存在が一人もいなかった。だから相川は私にとって初めての友なんだ。しかし、私がやっと相川という友を一人作る間に、君はどんどん周りの人間と仲良くなって行く。………沢山の友に囲まれている君を見て、君という存在がどんどん遠いところへ行ってしまうように感じる」

「そんな事………!!」

「まあ聞いてくれ。………私は正直、君に多くの友が出来た事により、逆に私と疎遠になってしまう事が心配でたまらないんだ。『あ、香織ちゃんよりこの人といる方が楽しい』という風に君が私の元を離れるのがな」

「香織ちゃん………!」

「だから私は改めて君に聞きたかったんだ。『君は今も、私の事を友と思ってくれているのだろうか』と」

「…………」

「常日頃から一緒にいたいとまでは言わない。ただ、私は相川凛という人間と肩を並べて歩きたい。いつまでも君と笑い合う関係でいたい。端的に言えば………『君とずっと友達でいたい』という事だ」

「…………」

「ど、どうだろうか?私は正直、君にふさわしい友ではないと考え………」

 

 

 

 

 

 

「バカッ!!!」

「むぎゅ!?」

うちは香織ちゃんが言い終わる前に彼女の両頬を強く押し付けた。

「そんなのいつまでも友達に決まってんじゃん!!うちは一度友達になった人は一生友達なの!!」

「む……しょうなのか……。しかし、私は相川に見合う友に……」

「あのね香織ちゃん。ふさわしいとか見合うとかそんなのどうでもいいの。一緒にいて楽しければその人は友達。友達になるのに資格なんて要らない。条件なんて無い。深く考える必要なんてないんだよ」

「………」

「だから自分はふさわしくないなんて言わないで。自分を卑下しないで。うちにとって香織ちゃんは………一生大事な大事な友達だから」

「………そうか」

彼女は納得したような表情で一歩下がる。

そして凛とした目つきでうちを見ると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は…………()()()()()()()()()友達でいてくれるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その表情は何かに怯えているような、何かを恐れているような、そんな表情だった。

「当たり前だよ。だから心配しないで。うちは香織ちゃんの前からいなくなったりしないから」

うちは香織ちゃんの頭を撫でる。

「………ありがとう。話して良かった。私はまだ君の友でいられた。これだけで十分過ぎる程だ」

香織ちゃんはうちに優しく微笑んだ。

「ねぇ香織ちゃん。………やっぱり何か隠してない?」

うちは改めて香織ちゃんに問いかける。

「それは……………」

香織ちゃんの顔が途端に迷いを見せた表情になった。

「今は話せないんだね。………分かった。無理には聞かないよ」

「相川………?」

「でも、辛い時とか一人で抱えきれなくなったらいつでも相談してね。うちがドーンと受け止めてあげるから!」

「…………済まない。感謝する」

「いいっていいって。ほら、じゃあ散歩の続きしよう!」

「あ、あ、あああ相川!?あ、腕を組むのはは、その………」

「あ、香織ちゃん照れてる!!かっわいい〜!」

「や、やめてくれ………。は、恥ずかしくて顔から火が出そうだ……」

香織ちゃん何を隠しているかは結局聞けなかったが、うちらの絆はより一層深まった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AM8:15 A棟 食堂

 

 

 

 

 

「えー校内放送、校内放送カバ。オマエら、至急C棟遊園地入口に集合するカバ!来なきゃオシオキしちゃうカバよ〜〜〜!」

 

 

 

 

 

 

うちらがいつものように食堂で朝食を食べていると、モノカバからのアナウンスが聞こえた。

「うぅ………また呼び出しでござる。今度は何でござるか……」

「タイミング的に動機だろう。皆、警戒して行くぞ」

 

 

 

 

そして食堂にいたメンバーで遊園地へ向かうと、既に柴崎君と分倍河原君が待機していた。

「剛………!!どの面下げてここに来やがったんだ………」

「何だァ、ここに来て騙され続けてる間抜けの黒瀬じゃねぇかァ。俺様だって参加者なんだからここに来るのは当然だろォ?」

「テメー………!!」

「黒瀬、気持ちは分かるが落ち着け。今ここで彼を殴った所で事態は何も解決しない」

「クッ……分かった……」

黒瀬君は香織ちゃんの問いかけに頷くと深く深呼吸してとどまった。

最近、黒瀬君の精神面での成長がめざましい。前のようにすぐ殴りかかるといった事は無くなってきている。このコロシアイという過酷な環境が彼の成長を促したのだろうか。

「さて、今回はどんな動機が出てくるか………。前回のような白けた動機じゃなきゃいいんスけど」

柴崎君は相変わらずだこの調子だ。彼の言う事にいちいち反応してもきりがないから、ここは聞いていないフリをする。

「おっまたせカバー!!オマエら、コロシアイ大学生活エンジョイしてるカバー!!」

しばらくすると、サングラスをかけたモノカバがポップコーンとコーラを手に持ちながら現れた。

「何がエンジョイだよこのバカ!!早くここから出してよ!」

「オイラバカじゃなくてカバだよ〜?ポンコツ裏切り者の幸村さんはそんな事も分からないカバー?」

「ムキーーー!!両方じゃん!!」

「ユキ、このカバを相手にするナ。コミュニケーションをとるだけで時間の無駄ダ」

「それで?今回私達を集めた理由は何ですか?」

モノカバに煽られて地団駄を踏む幸村さんを宥めるジャック君を他所に、優月ちゃんが冷静に尋ねる。

「よくぞ聞いてくれましたカバ!!今回もーーーーーー動機を配ろうと思いますカバー!」

「それで?その内容は何かさっさと言ってくださいよこのゴミ埃が」

「口悪いカバ………。ゴホン、ではその内容についてだけどカバ………」

 

 

 

 

 

 

 

「もう()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

「………………え?」

モノカバの発言にうちらは言葉を忘れて固まる。

既に始まってるって………?

「………ッ!?」

「柴崎君!?」

すると隣にいた柴崎君が突然入口に向かって走り始めた。そしてドアノブをガチャガチャと動かす。

「…………なるほど、今回はそういう事ッスか」

「ど、どういうことなの?」

「はて、拙僧にはさっぱり分かりませんな」

「えーー?つまりどういう事だってばよー?」

「ここに集合だと言われた時、なんとなくそんな予感はしてたんスけどねー」

柴崎君の言うことを確かめる為、うちらも入口へと向かう。

柴崎君は黙って扉の前から退いた。

確かめてみろ、ということだろうか。

代表してうちがドアノブを動かす。

「…………開かない」

「………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう!!今回の動機は『コロシアイが起きるまでここから出られない』カバーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たな絶望がうちらに牙を剥く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生存者

 

 

LA001 相川 凛《外国語研究家》

MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》

⁇003 喜屋武 流理恵 《調理部》

SA004 銀山 香織《棋士》

MB005 黒瀬 敦郎《バスケ部》

⁇006 柴崎 武史《歴史学者》

MB007 霜花 優月《狙撃手》

MA008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》

MC009 千野 李玖《茶人》

MC010 独島 灯里《サブカルマニア》

⁇011 飛田 脚男《バイク便ライダー》

⁇012 中澤 翼 《フットサル選手》

⁇013 錦織 清子《テニスプレーヤー》

⁇014 分倍河原 剛 《空手家》

015 北条 業 《???》

MA016 万斗 輝晃 《情報屋》

MB017 幸村 雪 《激運》

MA018 明智 麻音《探偵》

 

残り14人

 

 

 

 

 




あと1話(非)日常編が続きます。
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