新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。
最近更新頻度がガタ落ちですが、なんとか完結出来るように頑張りますので、気長にお待ち頂けると嬉しいです。
さて、新年一発目から申し訳ないのですが………また犠牲者が出ます。
「………誰かが死ぬまで出れない?」
モノカバの言葉を聞いたうちは耳を疑った。
「そうカバーーー!オイラオマエらが中々コロシアイをしないからずっと悩んでたカバ。そこで思いついたのが一つのエリアに閉じ込める事カバ!こうすれば嫌でもコロシアイは起きるカバ?」
「貴様………どこまで外道なんだ………!」
香織ちゃんが怒りを露わにする。
「外道?それはオイラにとって褒め言葉カバ〜!ということで、オマエらはこのC棟から一切出れないんでそこんとこヨロシクカバ!」
それだけ言ってモノカバはうちらに背を向ける。
「ちょ、ちょっと待つでござる!?ご飯はどうするのでござるか?」
「それに厠や寝床もここにはありません。拙僧らはどのように生活すればいいのですかな?」
「………あー、そうだそれを忘れてたカバ。うっかりオマエらにホームレスみたいな生活をさせるところだったカバ」
霞ヶ峰さんと千野君の問いかけにモノカバはそう言うと指(?)をパチンと鳴らして……
左の端に大きな建物を出現させた。
「うわっ!?建物が急に出てきた!?」
「わ〜お。イリュージョンだねーこれはー」
「寝る場所がないオマエらにオイラがスペシャルプレゼントカバ!あの建物はカプセルホテルカバ!部屋の入口に誰がどこの場所で寝ればいいのか書いてあるから、それがそのままオマエらの寝る場所になるカバ!あ、男女はちゃんと分かれてるから安心するカバ。左が男子、右が女子カバ。それと入ってすぐのスペースはラウンジになってるカバ!イスとかあるから自由に使っていいカバよ。トイレもそれぞれのラウンジに付いてるカバ」
「か、カプセルホテルだって………?」
「ふむ、普段より劣悪な就寝環境を整える事によりワタシらのストレスを誘発しコロシアイを助長する魂胆か」
「食べ物なら自販機でちゃんと売ってるカバ!!まあ、いつもよりは割高だし、在庫には限りがあるけどカバ」
そうだ。食堂の自販機と違って無限に補充させるとは限らないんだ。
「待てよ!?じゃあオレらは………このままずっと閉じ込められてたらいつか餓死するって事かよ!?」
「まあ、オマエらが日和ってコロシアイをいつまでも起こさなかったらそうなるカバ」
「じょ、冗談じゃないでござる!?」
霞ヶ峰さんは扉に駆け寄り、ドンドンと叩く。
「こんないつ殺されるか分からない空間嫌でござる!!ここから出して欲しいでござる!!」
「出すわけないじゃんカバ。あ、それとこの扉絶対に壊れないから何しても無駄カバよ。ダイナマイト10発でも傷一つ出来ないカバ」
「そ、そんな………」
扉の破壊が不可能という事を知り、さらに絶望の表情を浮かべるうちら。
「あ、ダイナマイトで思い出したカバ。オマエらコロシアイする中で凶器が無いと困るカバ?だからオマエらに『武器庫』を用意したカバ!」
「武器庫……だト?」
モノカバは北を指差しながらニヤニヤと笑っている。
『武器庫』………。随分と物騒な響きの建物だ。
「そうカバ。特に制限とか無いから好きに持ってっちゃっていいカバ!けど武器を故意に破壊するのはダメカバ!」
「はぁ?………あなたバカなんですか?そんな事許したらお互いに殺し合う地獄絵図になると思うんですけど」
業ちゃんの言う通りだ。もしそんな事許容したら一人があらゆる武器を使って全員を殺す、なんて事態も起こりかねない。うちはそんな人格破綻者みたいな行動に出る人はいないと信じているけど、この中にまだ潜伏しているスパイだったらやりかねない。それに追い込まれた人間がどんな行動をするか予測もつかないわけだし。
「ホント変なところで鋭いカバね………。そう言われると思ってある学則を追加するカバ!オマエら学則を見るカバ!」
全員のカバフォンが一斉に鳴った。
うちは指示通りに学則を開いた。
15 コロシアイ大学生活で同一のクロが殺せるのは2人までとします。
「これは………?」
「そのままの意味カバ!一人が殺せるのは二人までって事カバ!何人かも殺されちゃゲームとして成り立たなくなっちゃうカバ!」
新たに追加された学則。それは大量殺人を禁止するルールであった。
「あっそうですか。分かりました。もう消えていいですよ」
「貴様との会話にこれ以上時間を割く必要は無いナ。
「ひ、酷すぎカバ………。塩対応にもほどがあるカバ………。じゃあオマエら、
モノカバはいつも通り近くのゴミ箱に潜り消えようとした。
「ねーモノカバー。わたしたちにここから出るチャンスちょーだいよー」
しかし独島さんがモノカバを呼び止めた。
「………」
「独島さん?」
「だってさー、こんなの理不尽だし強引すぎるよー。それにさー、わたしたちにコロシアイをさせたいのは分かるけどー、一つの場所に閉じ込めて誰かが死ぬまで開かないってなんかありきたりでつまんないよー。これじゃあゲームが白けるんじゃないかなー?」
「灯里、お前何言って………」
「だったら少しくらいわたしたちに希望を与えてそっから絶望させる方が面白い展開になると思うんだけどー?」
独島さんの突然の提案にうちらは困惑してしまった。
どうして急にチャンスが欲しいなんて言い出したんだろう。確かに何かチャンスをくれるならとてもありがたい事は確かなんだけど………。
「………」
モノカバは黙って彼女を見ている。
「ねーどうかな〜?わたしのお願い聞いてくれないかなー?」
「………………分かったカバよ。はいはいチャンスあげればいいんでしょ。全くオイラも甘くなったもんカバー」
モノカバはため息を吐くとまた指(?)をパチンと鳴らした。
「モノカバミラーハウスクリアの景品に入口の扉の鍵を追加したカバ。先着1名にこれを獲得する権利が与えられるカバ」
「え!?」
突然のモノカバの提案に全員が驚く。
「ただーし!モノカバミラーハウスに挑戦できるのは1日1回のみ!そして同時に挑戦できるのは三人までカバ!一度失敗したら次の日が来るまでクイズには挑戦出来ないカバ!!」
「何回も挑戦出来ないの!?ケチだなーモノカバ」
「うるさいカバ!!それに問題の難易度は上げさせてもらうカバ!あっさり脱出されちゃつまんないカバ!」
「は!?何だそりゃ!?」
「それにここからが大事カバ!!その鍵を手に入れた人は………
「ま、待って!!じゃあ鍵を使ってここから出られるのは………最大でも三人だけって事?」
「その通りカバ!」
モノカバはうちらに最低な条件を提示してきた。………つまり確実に助かるのは三人だけ。他のみんなは変わらず取り残されここからは出られない。
「じゃあオイラは帰るカバ!全く、学生のワガママを聞く学長も大変カバ」
モノカバはそう悪態をつくと姿を消した。
「独島サン、アンタなんでモノカバにあんな事言ったんスか?」
モノカバが去った後、ずっと黙っていた柴崎君が独島さんに問いかけた。
「あれー?柴崎くんから話しかけてくるなんて珍しいねー?どういう心境の変化ー?」
「アンタ…………このコロシアイが
「え!?」
柴崎君の発言に全員は驚きの表情を浮かべた。
「そこらじゅうにある監視カメラとモノカバのゲームの面白さにこだわるスタンス。そこからアンタはこのデスゲームが中継されてる事に気がついた。違うッスか?」
「独島さん。それって本当なの……?」
彼女はそう問いかけられると、へへへっと笑った。
「バレちゃったか〜。そうそうー、実は柴崎くんの言う通りこのコロシアイが誰かに見られてるって勘づいていたんだよねー」
「何故俺達に隠していタ?」
「隠すつもりはなかったよー。ただ確証が持てなかっただけー。でも今のモノカバの発言ではっきりしたよねー」
「どの発言のこと?」
「『誰もが楽しめるようなコロシアイになるように』って言ってたでしょー?あれって他の人が見てるって事じゃない〜?」
「そうか………。『誰もが』というのは私達ではなく第三者を指している発言だったのか」
大量の監視カメラはうちらを監視するだけじゃなくて………このコロシアイを中継する為だった。
うちらの生活、そして誰がどう死んだか全て不特定多数の人間に見られていたという事だ。
…………あまりにも悪趣味だ。こんなの許されていい筈がない。
「それを分かってたから独島殿はあんな事を言ったんでごさるか?」
「そうそう〜。盛り上がるかどうかについて話を振れば絶対食いついてくるかなーと思ってさー」
「凄ーい!どくちゃん頭いいー!」
「ふふふー。褒めても何も出ないよー。えへへー」
「凄く嬉しそうだね………。でも笑顔の灯里さんもやっぱりイイ!!ボクのアレも凄く喜んでるよ!!」
「ともかく、独島のお陰で一筋の希望が見えたな」
独島さんによって一人が脱出出来るチャンスが与えられた。
コロシアイは避けられないけど、誰か一人は確実に生き残れる。
これが吉と出るか凶と出るかだけど………。
「アンタら呑気ッスね。この展開はむしろコロシアイが加速するんじゃないッスか?独島サンも余計な事したッスね」
口を開いた柴崎君は呆れた表情を浮かべる。
「………」
そう言われた独島さんは気まずそうに顔を伏せる。
「どういう意味?」
「その脱出の鍵を狙ってコロシアイが起きるんじゃないかって事ッスよ。他の参加者を見捨てても脱出したい人、アンタらの中にはいるんじゃないんスか?」
「………」
そう返されたうちは黙り込む。
「まあこんな場所に閉じ込められ続けるのもごめんだし脱出する為の努力はするけど、僕は勝手にやらせてもらうんでよろしくッス」
「柴崎君。その努力って………殺人じゃないよね?」
うちはこの場を去ろうとする柴崎君の背中に声をかける。
「………さあどうッスかね?僕は僕が面白いと思った事はなんでもするんで、もしかしたら誰かを殺すのが面白い展開になるならそうするかもしれないッスよ?」
「………あなたのその言葉が冗談であることを祈るよ」
「ご想像にお任せするッスよ。相川サンこそ、こんなところであっさり死なないで下さいよ。アンタの成長を見るのが僕の何よりの楽しみなんで」
そう言って彼は去っていった。
「アイツ………もう黒幕だろ?」
「モノカバと言ってる事変わらないでござる」
「そうです凛さん。あんなクズに存在価値なんてないです。私に殺害許可を」
「絶対ダメ」
当然、去っていく彼への視線は冷たかった。
でもうちは………なんとなく彼は殺人は犯さないと感じていた。
彼を信じてるわけじゃないし、根拠は何もないけど………なんでだろう。
「分倍河原。君も私達と行動する気は無いんだろう?」
今度は香織ちゃんがうちらに背を向ける分倍河原君に問いかける。
「分かってんなら話しかけるんじゃねェ」
「君が何をしようと私達に口出しする権利はないだろう。ただし、殺人は絶対にさせない。もし企んでいるのなら全力で止めるぞ」
「ハッ。力もねぇ女に何が出来るってんだァ。出来るもんならやってみろォ。だが言っとくぜェ、鍵は絶対手に入らねェ。だから俺様は必ずお前らの誰かを殺す。そして今度こそ
そう言い切りどこかへと去っていった。彼の顔は………狂気に満ちていた。うちは初めて人の顔を見ておぞましいと感じてしまった。
「おイ、あの男をこのまま放置するのカ?確実に俺達の障害になるだろウ」
「ひとまず彼らのことは後回しでいいのではないかね?今最も重要なのは食料と武器庫とやらについてだろう?」
「明智の言う通りだ」
ジャック君の疑問に明智さんが答え、香織ちゃんがそれに同意する。
「最優先すべきなのは食料の確保だ。数に限りがある以上、全員で均等に分配しなければ行き渡らないだろう。それに各自のモノマネーについても考えなければいけない。武器庫については殺人の火種になる危険な場所だ。だから私は………見張りを立てる事を提案する」
「見張り………?」
「勝手に武器庫に立ち入れないように見張りを二人置いておく。そうすれば武器を持ち出し殺人に及ぶ者の発生を防げるだろう」
「それって誰かが固定でやるのー?」
「いや、半日ごとにローテーションで交代していくのがいいだろう。誰かに任せっぱなしだと申し訳ないからな」
香織ちゃんの提案に全員が納得したように頷いた。
これなら少なくとも武器庫の武器を使った殺人は未然に防ぐ事が出来る。
「ふむ、銀山香織クンの意見に反対の者はいないようだな。ではまずはどう動く?」
「園内にある食料の状況の確認をする組と武器庫の様子を見に行く組に分けよう。そして後に合流、対策を練る」
「了解でござる」
そして適当にうちらを二つの組に分け、それぞれ確認へと向かった。
食料確認班
(銀山、明智、ジャック、幸村、千野、霞ヶ峰)
銀山 香織side
「園内にある自販機は………これで全てか」
「5箇所あるけど、どれも売ってるのお菓子ばっかりだね。…しかも高すぎでしょ」
「拙者はお菓子があるだけでもありがたいでござる」
「見てるだけで胸焼けがしてくるナ」
園内にある唯一食料が確保できる場所である自販機を回り終えた私達は深くため息をついた。
あるのは菓子のみ、しかも値段はべらぼうに高かった。
例えばこのスナック菓子、6個程しか入っていない小さな袋にも関わらず1000円もする。私は普段このような菓子は嗜まないが、それでもこの値段が法外だというのは分かる。
「しかし、この菓子の代金は誰が払うのですかな?全て買い占めるとなるとかなりの金額になると思いますが」
「それは戻ってから相談すればいいんじゃないでござるか?」
「……それには反対だな。今ここで誰かが全て買っておいた方がいいと私は思うがね」
霞ヶ峰の意見に反対したのは明智だ。………彼女は考えなしに発言する人物ではない。何かそう結論づける理由があるのだろう。
「………理由を聞かせてくれ」
「分倍河原剛クンと柴崎武史クンの存在だ。あの二人は私達と敵対する人物だ。だから私達よりも先に食料を全て買い占めてしまう可能性がある。そうしたら私達は手の打ちようがないだろう」
「奪っちゃえばいいんじゃない?一応数だとこっちが圧倒的に有利なんだし」
「柴崎武史クンなら数人で押さえ込めば問題ないだろうが………分倍河原剛クンは無理だろう。恐らく力技は通用しない。全員殺されるのではないかね」
「こ、怖いよまおぴょん……」
「そうでござった………。あの化け物じみた強さは誰にも止められないでござる……」
「それに強奪はトラブルを生み、殺人に繋がる恐れもある。あまりおすすめはしないな」
「そうだね………ごめん、なんか物騒な事言っちゃった」
明智の発言は的を得ていた。あの二人は何を企んでいるか予想がつかない。食料を買い占め私達を苦しめる事もやりかねない。……なら今私達も先に買っておいた方がいいかもしれないな。
「………君達はどう思う?」
「一理あるナ。食料の買い占めなどあのクズ共がいかにもやりそうな事ダ。先手を打つべきだろウ」
「拙僧も明智殿の意見に賛成ですな」
「ウチもそれがいいと思うー!」
「拙者も異論なしでござる!」
「…ワタシの意見は採用か。ふむ、当然だな」
「でも誰が買うの?全部買うってなると結構な金額になると思うけど…?」
「ひとまずここの自販機のものは私が全て買おう。モノマネーには余裕がある」
私は手を挙げて自分が買う意思を伝える。言い出したのは私だからな。私が払う義務を負うのは当然だ。
「かおりんいいの…?」
「問題ない。君達は他の場所の食料を買う際に出してくれればいい」
「済まなイ、礼を言ウ。一つ貸しが出来タ」
「えええ!?ジャック殿がお礼を言ったでござる!?」
「本当だ!!ジャックきゅんが素直だー!?」
「………貴様ラ………」
「ジャック殿も随分丸くなりましたな。平和なのは何よりです」
「ほう、そこまで変化したのか。彼の前の様子をぜひ知りたいものだな」
私達はひとまず自販機二つ分の菓子を購入した。
武器庫確認班
(相川、北条、霜花、万斗、独島、黒瀬)
相川 凛side
「………これが武器庫」
「随分と派手な装飾ですね」
うちらは武器庫の前にやってきた。武器庫の外装は西洋にある幽霊屋敷みたいな感じで、正面入り口の上には巨大な剣と盾の装飾が飾られていた。
「でもなんかちょっとワクワクしねーか?」
「何言ってるか全然分かんないのであなただけ回れ右して帰って下さい」
「対応雑すぎるだろ!?なあ輝晃?男のテメーだったらこのワクワク感分かるだろ?」
「1ミリも理解できねーよ。ボクはお前みたいな下品な男とは違って上品なジェントルマンなんだ。てゆーかイケメンの癖にボクに話しかけるなゴミが」
「………。な、なあ灯里?テメーはオレの気持ち理解出来るだろ?」
「………え?、う、うん。そうだねー」
「………?」
「扉を開けますよ」
みんなが喋ってる間に霜花さんが扉を開ける。
中に入ると、その名の通りありとあらゆる武器が揃えられていた。
「これは………壮絶な光景だね。凛さんは生で銃は見たことあったかい?」
「ううん。本物の銃なんて初めて見たよ」
銃はうちの知ってる限りだと、ピストルとマシンガンと………これはアサルトライフルって言うのかな?
その隣の棚も調べてみる。
「キャッ!?」
「凛さん!?大丈夫ですか!?」
何か鋭い物に触ってしまった。うちは慌てて手を引っ込める。幸いにもどこも怪我はしていない。
「びっくりした………。ナイフか」
その正体はナイフだった。危ない危ない。あやうく手が血まみれになるところだった。
「ごめん、ナイフの刃の部分触っちゃっただけみたい」
「よ、良かったです……。今ので私の寿命20年は縮みましたよ…」
「今のでそんなに!?」
うちがびっくりすればするほど業ちゃんの寿命は縮まるみたいだ。彼女の為にももっと慎重に行動しよう………。
「おいおい!?これって日本刀じゃねーか!」
「………それに剣もあります。これはモノカバが使用したものと同じものですね」
「凛さんこっち来ちゃダメです!大量の爆弾があります!」
「うわースタンガンとか手錠まであるよー。何でもありだねー」
みんなの言う通り、様々なジャンルの武器が取り揃えていた。
これは………あまりにも危険すぎる。これがもし自由に使えたらどうなってしまうのだろう。
「ねぇみんな!これを見てよ!」
すると万斗君が壁に貼ってある謎の紙を見つけた。
「これは………この武器庫の備品リストですね」
「ふーん。こんなものまで用意してるんですか。ゴミ埃の癖にこういう所は几帳面でムカつきますね」
それは武器庫に何がいくつあるかまとめられた表だった。
拳銃 5
アサルトライフル 4
マシンガン 3
日本刀 3
果物ナイフ 5
剣 5
手榴弾 5
時限爆弾 1
C4爆弾 3
スタンガン 3
メリケンサック 2
木製バット 2
金属バット 2
トンカチ 2
手錠 2
ボイスレコーダー 2
「マジかよ………。オレらの為にこんだけ用意したってのかよ?」
紙を見たうちらは絶句した。
うちらにコロシアイをさせる為にわざわざ揃えたこの武器。
普通の高校生には扱いきれないこれ程の武器を黒幕はどのようにして用意したのだろうか。
「優月ちゃんはこの武器全部扱えるの?」
「………ええ」
興味本位で聞いたうちに対して優月ちゃんは難しい顔で頷く。
「どの武器をどれくらい使えるか正直に吐け。返答次第では拘束してどこかに閉じ込める」
「業ちゃん物騒な事言わないで」
「はい!!」
「………銃と爆発物、ナイフと剣、それにスタンガンは習ったので扱えます。バットと日本刀は触った事はないですが、多分使えると思います」
「す、凄すぎるよ……」
「『超高校級の軍人』の間違いなんじゃねーか?」
「その私だからこそ言えます。………これらの武器を準備した人物は間違いなく軍事関係者です」
ハッキリとそう言い切る優月ちゃん。
「バットやトンカチ、それにスタンガンを用意するのは一般人でもまあ可能でしょう。……一応銃も手に入れられない事もないです。…………ですがこのC4爆弾は用意するのは絶対に不可能です」
「このC4がどうしたのー?」
「これは日本軍が極秘で所持しているC4爆弾です。製造方法は軍の上層部の数少ない人物しか知りません。さらに爆弾は厳重に保管されているので作り出すのも盗み出すのも不可能なんです」
「それがここにあるって事は………作り方を知ってる軍の関係者が関係してるって事かい?」
「そうです。まだ断定は出来ませんが………」
「それかその事実を知っているお前の仕業の可能性もあるよな犯罪者」
「業ちゃんいい加減にして。………とりあえずこの備品リスト写真に撮っておこう」
うちはカバフォンを使って写真を撮った。
「みんな。ひとまず一回戻ろう。香織ちゃん達に報告しないと」
「はいっ!凛さんの言う通りに!」
「そうだね」
「ええ。一刻も早く情報共有しましょう」
他のみんなは続々と武器庫を出て行く。
「ねー相川さんー」
「ん?」
うちも出ようとすると、独島さんに袖をちょんと掴まれた。
「独島さん?」
「わたしー、柴崎くんに言われたとおり余計な事しちゃったのかなー…」
柴崎君の言葉で柄にもなく落ち込んでいるようだ。どおりでさっき口数が少なかったわけだ。
「そ、そんな事ないよ!独島さんのおかげで誰かが助かる可能性が出てきたんだし」
「でも一つの鍵を取り合ってコロシアイとか起きたらどうしようー?わたしのせい、だよねー………」
「そんな落ち込むなんて独島さんらしくないよ!!きっと鍵の取り合いになんかならないし、それを未然に防ぐのがうちがうちらが今やるべき事なんじゃない?」
「……………」
「ほら、元気出して!独島さんが落ち込んでる姿なんてうち見たくないよ!」
うちはそう言いながら思わず彼女の頭を撫でてしまった。
「あっ……ごめん、つい……」
慌てて手を離す。怒らせちゃったかな………。
「………えへへー」
あれ?怒ってないな。てゆうか、むしろ喜んでる………?
「……………」
もう一度撫でてみる。
「えへへー」
やっぱり喜んでるわ、うん。超ニヤニヤしてる。
「あの、独島さん」
「……ん?あーごめんごめんー」
声をかけると彼女はハッとした表情になりうちの顔を見る。
「誰かに撫でられるのなんて久しぶりだからさー、嬉しくてつい顔がニヤケて思考停止しちゃったよー」
「そ、そうなんだ………」
どうやら彼女は撫でられて喜ぶタイプだったみたいだ。
「相川さん励ましてくれてありがとねー。おかげで元気出たよー」
「………それは良かった。また一緒に頑張ろうね」
「まあ実は言うと別に落ち込んではないんだけどねー。別の考え事してただけだったから〜」
「えええ!?」
「でも……相川さんが百合属性を持ち合わせてるのは改めて理解できたよー。こんな優しくされたら女の子イチコロだもんねー。北条さんが狙うのもよく分かるよー」
「ちょっと待て。思考がおかしなところに行ってる」
「わたしも参戦しようかなー。ぶっちゃけ百合もイケる口だし〜」
「今サラッととんでもない事実が判明したんだけど!?」
「とにかくー……もしこのC棟から出れたら………結婚しよう」
「それ死亡フラグだから!?」
すっかり調子を取り戻した独島さんにツッコミを入れながらみんなの後を追いかけた。
「ひとまず各自の報告は終わったが………これからどうするかね?」
それぞれ報告を終えたうちらの中では重い空気が漂っていた。特に食料の分配は大きな問題だ。節約しなければすぐ無くなってしまう。
「まずは食料だな」
香織ちゃんは購入した大量のお菓子を指差す。
「ひとまず二つの自販機から買い占めた。スナック菓子の袋は10。一口サイズのチョコが15。分配は………ひとまず一人分だが、スナック菓子は1つを半分に分けたもの。チョコレートは半かけらだな」
「えぇ!?これだけでござるか!?」
「これじゃあ全然お腹いっぱいにならないね………」
「ちなみに他の自販機のは買い占めなかったの?」
「他の自販機は既に買い占められていタ。ここにいないどちらかの仕業だろウ」
「じゃ、じゃあこの食料が全部って事……?」
「後はそこにある水で凌ぐしかないですね」
ラウンジにあるウォーターサーバーを見る。
食料が無くなったら水のみで生活しなければいけなくなる。
それまでに何とかして脱出の手がかりを探さなければいけない。
「次は武器庫の見張りについてだ。基本的にはペアを組み半日交代で回していく。ペアの組み合わせだが………できれば男女で組んで欲しい」
「何でですか?私凛さん以外と組みたくないんですけど」
「女子だけでは危険だ。仮に男子の誰かが無理矢理武器庫に入ろうとした時、女子だけだと止められないだろう?」
「業ちゃん。香織ちゃんの言う通りだよ。みんなの安全の為にも分かって欲しい」
「………凛さんが言うなら我慢します」
「だが今は女子の方が多い。だからどうしても女子だけのペアも出来てしまうだろう。そこはどうしようもないから許してくれ」
「あ」
「え」
そして話し合いの結果、ペアはこんな感じになった。
・相川/北条
・霞ヶ峰/霜花
・銀山/黒瀬
・独島/万斗
・幸村/ジャック
・千野/明智
ローテーションの順番は上から下へとなった。
「やりました!!また凛さんと一緒ですね!!」
「ウン………ソダネ」
やっぱこうなるか。でも業ちゃんは戦闘力も申し分ないし女子同士で組むペアとしては最適なんだよねぇ………。
「黒瀬か。よろしく頼む」
「ああ!!任せろ!!」
「ジャックきゅんまた一緒だね!」
「あア」
「あ、灯里さん!!!!!ボク達また一緒だね!!!これってもう実質セッ◯スって言ってもいいんじゃないかな!!」
「すみませーん。ペアチェンジでお願いしまーす」
「ふむ、ペアは千野李玖クンか。ワタシはひ弱だからキミの戦闘力には期待しているよ」
「………拙僧も運動はそこまで得意ではないのですが………」
「ひとまずこれで決定だ。何か疑問点があったら何でも言ってくれ」
香織ちゃんのおかげで武器庫の見張りはスムーズに決まった。
「次はミラーハウスの攻略についてだが……君達はどうしたい?」
ミラーハウスの議題に移ると、全員は一斉に口を閉じた。
遊園地から出られる鍵をゲット出来るのは先着1名のみ。しかも鍵を使って出られるのはその人が指定した二人を含む三人だけ。
「いやいや!?どうって行くに決まってんだろ!!鍵取れたら三人出れるんだぜ!」
最初に声をあげたのは黒瀬君だった。
「でも………その三人以外は出れないのでござるよね。だったらその三人はどうやって決めるでござるか?」
恐る恐る手を挙げて霞ヶ峰さんは発言する。
「それは………」
「まさかあっくん…………自分だけ先に外出ようとしたわけじゃないよね?」
それに反応したのが幸村さんだ。疑うような目で黒瀬君を見る。
「な………ち、違ぇって!!オレはただ……」
「てめぇこのクソバスケ部!!ボク達を出し抜こうと思ってたのかよ!」
「黒瀬殿………あなたは拙僧らを裏切るつもりか………」
「黒瀬くんひどーい。わたしたちを見捨てるんだー」
「だから違ぇって!!」
「みんな落ち着いて!!」
一度始まった喧騒は止まらない。
「そうですね。もしかしたらこの中に黒瀬さんみたいに考えている人がいるかもしれないですね」
「業ちゃん!!」
「凛さん。他人が何を考えているか完全に理解するのは不可能なんです。そして人間の欲は………時に人格すら変えてしまいます。普段優しい人間が欲に駆られて他人を蹴落とすクズになる、なんてよくある話でしょう?」
そう言い切る彼女の目は…………一切の光を宿していない冷酷な目であった。
「おい業!!だからオレはそんな事考えてねーつってんだろ!」
「はいはい口だけだったら何とでも言えますよ。てゆうかギャーギャ煩いんですよ。やましい事がなければそんなに取り乱さなくてもいいんじゃないですか?」
「し、しかもこの中にはす、スパイが三人紛れているのでござるよね?だったらその三人は拙者らを見捨てるのなんて容易いのでござらんか?………幸村殿?」
「かすみー………ウチを疑ってるの!?」
「幸村殿は元裏切り者でござるから、もしかしたら拙者らをまた裏切るなんて事も……」
「貴様………!!既に解決した事を蒸し返すとハ………貴様がスパイじゃないのカ!!」
「ひえっ!?」
「みんな!!駄目だよ喧嘩しちゃ!!話し合わないと!!」
うちは懸命に呼びかけるが、言い争いが止まる気配はない。
「助手よ。こうなったらキミが呼びかけても無理だ」
明智さんはうちの肩に手を置き首を振る。
「で、でもこのままじゃ………」
「放っておくのが一番だろう」
「あ、明智さん………?」
彼女は腕を組み呆れた表情を見せる。
「今言い争っている者達は閉じ込められた事によりずっと精神的ストレスを抱えてきたんだろう。なら好きに言わせてストレスを発散させた方がいい。心の中に溜め込む方が後に殺人の原因になるとは思わないかね?」
「それじゃあみんながより疑心暗鬼になっちゃうよ」
「この状況でお互いが全面的に信頼するのは不可能だ。助手もそれはよく分かっているだろう」
…………明智さんの言うことは一理ある。でも………このままじゃみんながバラバラになってしまう。
「凛。私も麻音の意見に賛成です」
「優月ちゃん………」
近くにいた優月ちゃんもそう言った。
「それに今は下手に彼ら、彼女らを刺激しない方がいいです。次に凛に矛先が向かってもおかしくはありませんから。あなたが責められるのは………私も心苦しいです」
「………」
うちは出しかけた言葉をグッと飲み込む。
優月ちゃんがここまで心配してくれているのにそれを無下にするわけにはいかない。
でも………。
「静まれ!!!!!!!」
バンと机を大きく叩く音とよく通る大きな声が響き渡った。
その主は………香織ちゃんだった。
「私達で争ってどうする。私達の敵はモノカバの一味だぞ。これでは奴らの思う壺だ」
「でもさ……だったらどうするの?」
「ならミラーハウスへの立ち入りを禁止する」
「え?」
そう言って香織ちゃんは周りを見渡す。
「鍵がトラブルの元になるのならそれに触れなければいい。………これから一切、あのミラーハウスに入るのを禁ずる。それでも入った者は……『絶望の庭』所属のスパイと判断する」
「そ、そんな……。じゃあ拙者らは一生出られないでござるよ!!」
「それはこれから探すしかないだろう。私はこうしてお互いにずっと疑うよりはこの方がいいと思う」
香織ちゃんの言葉に全員が黙り込む。
「だが………本当に脱出の手がかりが見つからず、私達も限界を迎えた場合は、私に止める権利はない。ひとまず今は近づかないのが賢明だ」
「ふむ。では鍵を手に入れるのは最終手段という事だな」
明智さんはうんうんと頷く。
「諸君。この話は終わりだ。今日は私と銀山香織クンが見張りをする。明日からそれぞれのペアでローテーションで行ってくれたまえ。諸君らは探索へ行くといい。何もせずに餓死するのは嫌だろう?」
「………」
明智さんの一声で動き出すみんな。
けどその表情は………重く険しいものであった。
軟禁生活19日目 AM0:00
「ねぇ業ちゃん」
「はい凛さん!!」
「業ちゃんはミラーハウスにある鍵についてどう思う?あのまま放置で大丈夫なのかな?」
「う〜ん、そうですねぇ………」
うちらは今、武器庫の前で見張りをしている最中だ。ちょうど午前12時から始まった見張りは、午後12時まで続く。とはいってもずっと立ちっぱなしだと疲れちゃうって事で、ラウンジのイスを持ってきて扉の前でずっと座ってるだけだからそこまで苦じゃない。
「今はこれでいいと思いますよ。だって他に手の打ちようがないじゃないですか」
「そうだけど………」
「凛さんは私達で争うのは見たくないでしょう?ならこれがベストの選択です。これなら鍵の奪い合いは発生せず仲良く過ごす事が出来ますよ。それにミラーハウスの入り口は封鎖したらしいじゃないですか。万が一約束を破った人が出ても入れないなら安心です」
「………うん、そうだね」
ここまで厳重にしておけば鍵を取ろうなんて考える人はいないだろう。
後はスパイがどう動くだけど………。
「スパイに関しても今回は大丈夫でしょう。もし仮に夜中に扉が壊されてミラーハウスのクイズに挑戦した人がいたら、次の日全員に携帯を通させればいいんです」
どうやらクイズに挑戦するには、入り口からしばらく進んだところにある液晶に自身のカバフォンをかざす必要があるらしい。これで誰がいつクイズに挑戦したのか把握してるとの事。
「その日既にクイズに挑戦している人は2回目は挑戦出来ません。恐らく液晶に携帯をかざすとエラーが出るでしょう」
「扉を壊した犯人はクイズに挑戦してる筈だからその人だけエラーが出るって事だよね」
「それで犯人を特定して縛り上げるなり尋問するなりすればいい話です。だからスパイにとって今動くのはリスキーでしかないと思います」
言われてみればそうかもしれない。こんなすぐ誰がやったかバレる状況で動くのは得策じゃないと考える筈だ。
「でも………私は空腹の限界に近づいたら必ずミラーハウスに行きます」
「………え?」
業ちゃんの言葉に思わず大きな声が出てしまった。
「元々私は凛さん以外の命は二の次だと思っているので本当なら今すぐにでも鍵を取って凛さんとここを脱出したいんですよ。でもそれだと凛さんを悲しませることになってしまうのでやりませんけど。でも限界が来た時は別です。凛さんの命を救う事を最優先で動きます。私と凛さん、それに凛さんが助けたい人の三人で脱出するつもりです」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!じゃあ他の人は……」
「見捨てることになりますね」
そう言い切る彼女には微塵の躊躇も感じなかった。本当に………他の人の命はどうでもいいと思っているみたいだ。
でも………その発言をうちは咎める事は出来なかった。命には優先順位がある。うちは自分より他の人の命が大事とはとても言い切れない。誰だって大事なのは自分だ。彼女の場合自分と相川凛の命が一番であり、それを優先すると言っているだけ。おかしな事は何も言っていない。
うちはこれから………どうすればいいんだろう。
軟禁生活25日目
遊園地に閉じ込められてから1週間が経った。
ここから全員が出る為の手がかりは相変わらず見つからない。
そして空腹感だ。毎日少しずつお菓子を食べているとはいえ、毎日これだけの量だけだと流石に空腹が襲ってくる。水でなんとか誤魔化してるけど、もうそれも通用しなくなってきている。
すると気力の方も段々と失っていく。もうコロシアイが起きるまでここから出られないのではないか。どうせ探索しても何も出てきやしない。誰も信用出来ない。そんな負の感情が溢れ出てくる。
みんなも恐らく同じだろう。実際みんなはどんどんやつれていき、お互い会っても口を開かず、顔からは生気が失われてしまっている。
食料ももう尽きる。するといよいよ水のみで生活しなければならなくなる。
うちらは………確実に死へと追い込まれてる。
一方分倍河原君と柴崎君はまだまだ余裕がありそうだった。
恐らく残りの食料を買い占めたのは二人のうちのどちらかだろう。
それを一人で消費しているのだから余力があって当然だ。
園内でやつれたうちを見て柴崎君は関心を示さず、分倍河原君は嘲笑った。
そんな彼らに、うちは反応する気力もなかった。
PM12:00
「ねー霞ヶ峰さーん。寝る時のうるさいいびき、どうにかならないー?」
「………しょうがないでござろう………。拙者もわざとやってるわけではないでござる………」
「……麻衣子、私からもお願いします。あのいびきは流石に睡眠に影響が出ます」
うちと業ちゃんが武器庫の見張りをしていると、霞ヶ峰さんと優月ちゃん、それに独島さんがやってきた。
見張りの交代の時間だから次の担当である霞ヶ峰さんと優月ちゃんが来るのは分かるけど………どうして独島さんもいるんだろう。
「独島さん………?見張りの担当じゃないのにどうして………」
「ちょっとねー、みんなに愚痴りに来たのー」
「……愚痴………?」
「相川さんも聞いたでしょー?霞ヶ峰さんのいびきー」
「………あれね」
うちらが泊まっているカプセルホテルには当然防音効果はないので、他の人の寝息とかいびきが丸聞こえになってしまう。だから霞ヶ峰さんのうるさいいびきがうちらにまで聞こえて睡眠を阻害しているのだ。
「凛さんの睡眠を妨害するなんて万死に値しますね………。あなただけ今日から外で寝てください………」
「そ、そんな殺生な………」
「口にテープでも貼れば問題ないのでは?」
「死んじゃうでござるよ………」
みんな元気が無いのか、会話にも力が入らない。
ふにゃふにゃした声で会話するのがやっとだ。
「優月ちゃんは………まだまだ余裕そうだね……」
「こういう非日常にはある程度慣れています。が、流石に厳しくなってきましたね」
「うちももう限界ー……」
「凛さんは平気ですか………」
「かなりキツい………。業ちゃんも……?」
「凛さんと同じ空間で寝られるならへっちゃら………と言いたいところですが、流石にしんどいです」
みんな………もう限界だ。このままだと全員餓死してしまう。
PM8:00
うちは空腹に耐えながら園内をウロウロしていた。
何か………何かここを出る手がかりを探さないと………。
そう考えながら歩いていると、
「ん?相川サンじゃないッスか?こんな所で会うなんて奇遇ッスね」
「………柴崎君………」
後ろから柴崎君に声をかけられた。
「おやおや、相当弱ってるッスねー。で、全員が脱出出来る手がかりは見つかったッスか?」
「………」
「ま、見つからないでしょーね。モノカバがそんな物用意するはず無いッスよ。流石に考えが楽天的すぎッス」
「…………」
ムカつく。ムカつくけど…………否定出来ない。そして否定する気力もない。
「ありゃりゃ。普段の相川サンだったら速攻噛み付いてくるのに………。こりゃ相当ッスね」
「………」
その言い方はやめろ、ってツッコミを入れようとした時だった。
あれ?足に力が入らない………。視界がぐるんと回る。空がひっくり返って………。
「おっと。大丈夫ッスか?」
気がついたら柴崎君に抱えられていた。うち、足元がふらついて倒れたんだ。
「どう………して………?」
「そりゃあ
柴崎君はそう言うと懐からスナック菓子とチョコレートを出した。
「………え?」
なんでうちにくれるのか分からず呆然としていると、
「ったく、世話がかかる人ッスね。ほら、口開けて」
「………え?」
「口開けろつってんだよ。僕の時間を無駄にする気ッスか?」
多少強めの口調でそう言われてうちは大人しく口を開ける。
「はい。まずはチョコをどうぞ。糖分は入れておいた方がいいッス」
うちの口にチョコが放り投げられた。………口の中に甘い味が広がる。
「………美味しい」
「でしょうね。アンタ、どうせ毎日一欠片ぐらいしか食べてないんでしょう。そりゃあこの大きさのチョコも美味しく感じるッスよ」
その通りだ。なんの変哲もないチョコなのに感動するほど美味しい。これほどチョコを美味しく感じたのはいつ以来だろうか。
「じゃあ次はこれを………」
「………大丈夫。自分で食べれるから」
うちは起き上がってスナック菓子を受け取る。
「………ありがとう」
「礼は言わなくていいッスよ。僕がアンタを助けたのは気まぐれッスから」
柴崎君はスッと立ち上がる。
「……ねぇ、なんでうちを助けたの?それにあなたの目的は何?いい加減隠さないで教えてよ」
うちは柴崎君にそう呼びかける。まあ聞いても無駄だろうと諦めながら聞いたが………彼の反応はいつもと違った。
「………そろそろ頃合いッスかね。ある程度敵と味方は判別は出来たし………」
「………え?」
「ひとまず、次の学級裁判が終わったら教えるッスよ。僕の知っている事を全て」
「ど、どういう事!?学級裁判が起きるってなんで分かるの!?」
「期待してる相川サンには悪いッスけど、コロシアイは
「だからそれを何故知ってるの?」
「何も知らないッスよ。別に僕が殺人を犯そうと考えてるわけじゃないし、殺人の現場を見たわけでもない。………強いて言うならただの勘ッスかね?」
「そんな………」
「じゃあ僕は帰るッス」
柴崎君は最後にうちの顔を見ると、
「相川サン、お互い生き残ったらまた会いましょう。アンタにとって、ここが正念場ッスよ」
意味深な言葉を残して去っていった。
「………柴崎君」
いつものうちらを見下すような態度はどこへやら、普通の男の子の態度で察してきた彼に驚きを隠せなかった。
まるで………本性を現す前の彼と話しているようだった。
柴崎君は一体何者なのだろうか。
軟禁生活26日目
「うるさい………」
相変わらずうるさい霞ヶ峰さんのいびきに起こされたうちは、カプセルホテルからやっとの思いで這い出る。
「おや、助手か。おはよう。キミも霞ヶ峰麻衣子クンのいびきで起きたのかね?
ラウンジに行くと明智さんが座っていた。
彼女も顔色が悪くいつもの覇気がない。いつ倒れてもおかしくないだろう。
「おはよう明智さん………。そう、もううるさくて……」
「彼女には悩まされるな………。ところで助手、少し散歩に行かないかね?」
「え?」
「じっと座っているより何かしていた方が空腹も紛れるだろう?散歩ならそこまでエネルギーも使わないだろうしな」
確かに何もしないのが一番空腹感を感じる。だったら何かしねいた方がマシかもしれない。
「いいよ。うちも一緒に付き合うよ」
「助手ならそう言うと思ったぞ。では行こう」
うちは明智さんと一緒に外に出た。
北の方へ歩いていると、明智さんが突然話しかけてきた。
「ところで助手。キミはこのまま餓死するか、全員との約束を破って鍵を取りに行くかだったらどちらを選ぶ?」
「………それは」
「ワタシはどちらの意見も尊重する。仲間を思いやる気持ちが強いキミは最後まで仲間と一緒に仲良しでいたいという考えに至るのも分かるし、その仲間全員で共倒れするくらいなら本当に大事な人をここから連れ出したいと言う気持ちになるのも理解できる。どちらの選択肢も間違いではない」
「うちは…………」
友達をとるか………自分をとるか。幾度も悩んできたその答えに、うちは昨日答えを見つけた。
「それは…………」
うちが答えようとした時だった。
「ドーン!!」
小規模だけど………でも大きめな爆発音が聞こえた。
「キャッ!?」
思わずしゃがみこんでしまった。
「今の爆発は………北の方からだな」
「行ってみよう!!」
うちらはフラつくのを無視して走った。
「あ!凛さん!それに麻音さん!!」
「万斗君!?」
爆発が起きたであろう場所に向かうと、万斗君がいた。ちょうど観覧車の前だ。
「一体何があったのかね?」
「ボクも分からないんだ!温泉の帰り道に爆発が聞こえて駆けつけたけど何も無くて……」
確かに周りを見渡すと、火薬の匂いはするけど何かが壊れたり燃えてる形跡はない。
「どういう事………?」
「何か機械の故障って事かい?それにしては音が大きいような……」
そう言って周りを見渡してる時だった。
「バーーーーーン!!!!!!」
とてつもなく大きな音が上空から鳴り響いた。
観覧車のゴンドラが………爆発したのだ。
「二人とも下がりたまえ!!」
明智さんの大声でうちと万斗君は反射的に後ろに下がる。
明智さんも同じく後ろへと下がった。
すると、うちらがさっきまでいた場所に何かの破片やらゴンドラの欠片やらが落ちてきた。
「どういう事………?」
「か、観覧車が爆発した………」
突然の事態にうちらは呆然とその場に立ち尽くす。
すると………。
ドサッ
何か大きな物体が落ちてきた。
ピンポンパンポーン………
「死体が発見されたカバ!一定の捜査時間の後、学級裁判を開くカバ!オマエら、現場のC棟観覧車前に全員集合するカバ!」
破片にしてはやたら大きい。
その物体が…………うちらと同じくらいの大きさなのは一瞬で理解できた。
だって…………それは火傷した人間だから。
顔をこちらに向けているその人間の頭は潰れ………脳味噌が溢れて出てきてしまっていた。
その頭の潰れた人物が、「超高校級の激運」幸村雪である事は誰がどう見ても明らかだった。
生存者
LA001 相川 凛《外国語研究家》
MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》
⁇003 喜屋武 流理恵 《調理部》
SA004 銀山 香織《棋士》
MB005 黒瀬 敦郎《バスケ部》
⁇006 柴崎 武史《歴史学者》
MB007 霜花 優月《狙撃手》
MA008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》
MC009 千野 李玖《茶人》
MC010 独島 灯里《サブカルマニア》
⁇011 飛田 脚男《バイク便ライダー》
⁇012 中澤 翼 《フットサル選手》
⁇013 錦織 清子《テニスプレーヤー》
⁇014 分倍河原 剛 《空手家》
015 北条 業 《???》
MA016 万斗 輝晃 《情報屋》
MB017 幸村 雪 《激運》
MA018 明智 麻音《探偵》
残り13人