ダンガンロンパ キャンパス   作:さわらの西京焼き

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捜査編

 

 

 

「幸村、さん…………?」

「これは………酷いな」

「嘘だ………嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何か夢でも見ているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。これは夢だ。

 

 

 

 

 

 

 

こんな事が現実で起こる筈がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けど、自分でもよく分かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

これは現実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

間違いなく目の前で焦げて頭が潰れている人は……幸村さんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非日常編

 

 

 

 

 

 

 

 

「助手よ………、大丈夫かね?」

「………うん、ごめん。ちょっと気が動転して………」

「無理もない。何せ先程まで目の前にいた友がこのような事になっているのだ。助手の様な一般人には耐えられまい」

うちら明智さんに支えてもらい、ふらつきながらも立ち上がる。

死体発見アナウンスが流れると同時にうちが叫び声をあげ、それを聞いたみんなが集まってきた。

「犠牲者は幸村殿ですか………」

「あららー。次は幸村サンスか。黒幕を裏切ったし、そろそろ危ないとは思ってたんスけどね」

「雪………」

「あああ………なんで爆発がこんなに起きて………それになんで幸村殿がこんな姿に………うっ………と、トイレ………!」

幸村さんの死体を見て悲しみに明け暮れる人や気分を悪くしてしまう人がいる。

彼女の死体は酷く損傷していたからだ。

頭は潰れ、脳味噌らしき物が少し飛び出てしまっている。

全身の皮膚は火傷しており、生前の綺麗な肌は見る影もない。

「それより一つ気になる事がある。………今ここにいない者達は何をしているのかね?大きな爆発に死体発見アナウンス。これらを聞いても現れないのはおかしいだろう」

明智さんの言葉を聞いてうちらは周りを見渡す。来ていないのは………、香織ちゃん、ジャック君、業ちゃん、黒瀬君、それに分倍河原君。放送は聞いてた筈なのにまだ来てないなんて………。何かあったんだろうか。

「確かに………妙ですね」

「寝てるんじゃないのー?わたし見てくるよー」

独島さんがトコトコと走って様子を見に行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、連れてきたよー」

「凛さん!!無事で何よりです!!………ん?」

「おイ、これは一体どういう……………………ア?」

独島さんが連れてきたのはジャック君と業ちゃんだけだった。

ジャック君は険しい表情でうちらに何か伝えたかったようだけど、幸村さんの死体を見た瞬間、信じられないといった表情で

「…………………ユキ?」

ふらふらと幸村さんの元へ駆け寄ると、ゆっくり手を握り

「…………おイ、冗談だろウ。…………またそうやっテ俺をからかっているだけなんだろウ?」

必死の形相で顔を近づけて話しかける。しかし、幸村さんが返事をすることはもう無い。

ジャック君もそれは理解している筈だ。けれど、あまりのショックで現実を受け入られていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………嘘だと言ってくれ………。頼む………俺にとってお前は……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白衣が血塗れになるのも気にせず、幸村さんに抱きつく。そして

 

 

 

 

 

 

 

 

「あアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

空中に向かって吠えた。

彼は………………泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャック君………」

「………見ていられないですね。あまりにも気の毒すぎる」

うちは号泣するジャック君から思わず目を背けてしまった。

近くにいる千野君も同じような反応をしている。

ムードメーカーであった幸村さんの死は、うちらに多大な影響を及ぼしていた。

 

 

 

 

 

 

「カバカバカバーー!!おめでとうカバー!!見事このC棟からの脱出、そして3回目の学級裁判の開催が決定しましたカバー!」

そんな中モノカバがいつもの様に飛び出してきた。

「モノカバ………!!」

「ん?何でみんな喜ばないカバ?幸村サンが死んだおかげでオマエらはこの遊園地から出られるカバよ?1人を踏み台にしてオマエらは新たなステージに行けるカバ。もっと大騒ぎしてもいい…………」

「貴様!!!!!」

するとジャック君が物凄いスピードでモノカバに殴りかかった。

「!!少し落ち着いて下さい、ジャック!」

けど、ジャック君の拳が届く前に優月ちゃんが力で抑え込んだ。

「ッ??離セ!!!これ以上ユキを、ユキを侮辱するなァ!!」

「あららー。ジャッククンも結局、恋で周りが見えなくなる色ボケクソガキ高校生って事カバ?しょうもないカバねー」

「しょうもないのはアンタでしょ?」

うちも今の発言にカチンときて思わず言い返す。

「カバ?」

「うちらを殺し合わせてアンタはうちらの手の届かないところで高みの見物決め込んでる。やってる事完全に小物じゃん。ダサいししょうもない」

「凛さん流石です!!なんと凛々しい発言!!」

「まさか相川サンがそんな事言うとは………。まあなんとでも言えはいいカバ!結局勝つのはオイラカバ!!」

モノカバはうちの発言をまるで相手にせず高笑いしている。

ふざけやがって。絶対に許さないから。

「あの〜、そんな事どうでもいいんで早く例のファイル出してもらえないッスか?僕早く捜査したくてウズウズしてるんスよねー」

柴崎君はモノカバにモノカバファイルを出すように催促する。

「柴崎クンは裁判熱心カバねー。まあ今回は忙しくなりそうだし、ちゃっちゃと済ませるカバ!」

モノカバがそう言うと同時にうちらのカバフォンが一斉にピロンと鳴った。

「はいそれじゃあオイラは学級裁判場でスタンバってるから後はシクヨロカバー!!」

そう言ってモノカバはいつも通りどこかへと消える………と思ったが一度うちらを見渡して、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、言い忘れてたけど…………今回の裁判、かなりハードなスケジュールになると思うから迅速に捜査した方がいいと思うカバ〜!だって………………2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()カバねー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え?」

「じゃ、頑張ってカバ〜!」

モノカバはシャレにならない言葉を残して消えていった。

「………何言ってんだ、アイツ。2人も死んでるわけねーじゃんか」

「そ、そうでござるよ。あんまし心臓に悪いこと言わないで欲しいでござる」

モノカバの意味深なメッセージをみんなは真に受けてないようだった。勿論うちもそうだ。が………。

 

 

 

 

 

 

 

「凛さん。それとおまけの皆さん」

業ちゃんがみんなに向けて呼びかける。

「おまけって………」

「私に着いてきて下さい」

有無を言わさぬ発言。その表情は………険しい。

「どうしたのー?何か大変な事でもあったのー?」

「………………来れば分かります」

独島さんの問いに対する返事も暗い。うちは業ちゃんの表情を見て………、モノカバの言葉が真実なんだと理解した。

うちは顔から血の気が引くのが分かった。

「………行きましょう。どうやら緊急事態のようです」

優月ちゃんはみんなにそう提案する。

「でも、雪さんはどうするんだい?このまま放置するつもり?」

「ジャックさんも既に見ているので、彼にここに残ってもらえばいいでしょう」

「………………」

「まー大方予想はついてるッスけどねー。じゃあ早速案内して下さいよ」

「私に指図するな死ね」

「業ちゃん」

「はい!!案内します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

業ちゃんに連れられてうちらが来た場所はドッキリミラーハウスだった。

「ミラーハウス?」

「中に何かあるって事か?」

「……………」

黒瀬君の問いには答えずに、業ちゃんは黙って扉を見る。

「………!!なんだよ、この匂い……」

「これは………間違いありません。血の匂いです」

扉に近づいた瞬間、強い血の匂いが漂っている事に気がついた。

「業ちゃん、これって……………」

「………私は今朝、偶然会ったジャックさんと扉が開いている事に気がつきました。中に入ると強い血の匂いがするので入って行った結果………見つけてしまったんです」

業ちゃんはそう言いながら扉へと手をかける。

「凛さん、………覚悟して見て下さい」

業ちゃんが先を譲ってくれる。

心臓がバクバクする。呼吸が荒くなる。お腹の中で何かドロドロした負の感情が暴れ回っている。吐きそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

でも、見なくちゃいけない。

現実から目を背けては始まらない。

これから起こる悲劇受け止めなければいけない。

 

 

 

 

 

 

「助手………覚悟はいいかね?」

側にいた明智さんにそう問いかけられる。

「………………うん」

うちらは一斉に中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

ピンポンパンポーン………

 

 

 

 

 

 

「死体が発見されたカバ!一定の捜査時間の後、学級裁判を開くカバ!オマエら、現場のC棟モノカバドッキリミラーハウスに全員集合するカバ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄惨な現場だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壁のあちこちに血が飛び散っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その人物は、入ってすぐの壁にもたれかかっていた。

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()状態で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

「死んじゃ嫌だよ……………香織ちゃん…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『超高校級の棋士』である銀山香織ちゃんは、眠るように死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう………やめて………なんで香織ちゃんが………」

うちはその場に尻餅をつく。

「凛さん!?しっかりしてください!!」

「銀山さんー……、嘘だよねー………?」

「なんでだよ………なんで香織さんまで………ちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「次は銀山サンッスか。そこそこ惜しい人を亡くしたッスね」

「………………」

「香織………、残念です」

香織ちゃんが………、香織ちゃんが死んだ?

「カバカバカバ!!やっと見つけてくれたカバね!まあ2人見つけてたし、オイラが忠告しなくてもすぐ見つかってたと思うけどカバ〜!」

「引き裂くぞカバ野郎とっととファイル出して消えろ。凛さんにこれ以上その醜い姿見せるな」

「北条サン、日に日にヤンデレが進行してきてるカバ……。まあそのつもりカバ!ほれ、送信したカバー」

またカバフォンがピロンと鳴る。

「それじゃあ、頑張ってカバ〜!いつもより捜査時間は長めにとるけど、早くしないと時間なくなっちゃうカバよ〜!」

モノカバはスッと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「香織さん!!どうしてだよ!?どうして!?」

「あ………ああ………こんなの………こんなのありえないでござる………………」

香織ちゃんの死に現場はパニックになる。

けど、うちはむしろ逆だった。

「………助手?」

「凛さん………」

明智さんと業ちゃんの心配そうな声を他所に、ゆっくりと香織ちゃんに近づき手を取る。

「………冷たい」

もう生前の香織ちゃんの温もりは残っていない。

この冷たさが香織ちゃんが死んでいる事を示す何よりの証拠だった。

うちの事を誰よりも気にかけてくれて、みんなのまとめ役として不慣れながらも頑張ってくれて。そんな香織ちゃんをうちは心から尊敬してたし、友達として大好きだった。

「守ってあげられなくて…………ごめんね………」

うちは友達を亡くした悲しみと自分の無力さを嘆き、静かに涙を流した。雫が香織ちゃんの手の甲に落ちる。

「凛さん…………」

「……………必ず仇は取るから。天国で見守ってて」

うちは香織ちゃんの手を優しく握ると、涙を拭いて立ち上がった。

「やろう、捜査」

「助手よ。しかし銀山香織クンは君にとって近しい友だった筈だ。気持ち的には辛いだろう。無理をしろとは言わないぞ」

明智さんはうちの様子を見て気遣ってくれる。でも、そうはいかない。

「違うよ明智さん。友達だったからこそ、うちは無理してでも謎を解き明かしたいんだ。勿論幸村さんもそう。2人の友達の命を奪ったのは誰か、何が起こったのかを全部紐解きたい。死んだ2人の為にも」

そう言うと、明智さんはフッと笑った。

「流石はワタシの助手だ。ワタシに似て探偵根性が染み付いている」

「いや助手じゃないから。それに何探偵根性って」

「………助手がこう言っているのだ、ワタシも全力で取り組む必要があるな」

明智さんは腕を捲りやる気を見せる。うちのツッコミを無視して。

 

 

 

 

 

 

「さっっっすがは凛さん!!頼もしい限りです!!………ほら、他のモブの皆さんも何つっ立ってるんですか。さっさと捜査しますよ」

「凛さん以外の扱いが本当に雑だよ業さん………。よし、ボクだってやってやる!!香織さんと雪さんの無念を晴らす為に!!」

「拙者もでござる!!」

「わたしも〜!」

「………拙僧も、全身全霊をかけて取り組みます」

「あー騒がしいったらありゃしないッスね。まあ、ボクも楽しみが増えたし多少は腰を入れて取り組みますか」

業ちゃんの発言を皮切りに、みんなも決意表明をする。

 

 

 

 

 

 

 

「よし!時間も限られてるみたいだし、早速分担を………」

「ハッハッハッハッ!!!おいおィ、銀山も死んでんのかよォ!面白い事になってきたなァ!!」

うちがそう提案した時だった。

分倍河原君がうちらの前に現れた。

「……何しに来たんですか」

「何って、アナウンスが流れたんだから来るのは当然だろォ?お前らには興味なんてクソほどもねえがァ、もしかしたら絶望的なネタが転がってるかもしれねえと思って様子を見に来たァ。そしたら2人も死んでるじゃねぇかァ。実に絶望的でいいじゃねぇかよォ!!」

「はいはい分かったってそれー。もう聞き飽きたよー」

興奮した様子で話す分倍河原君に噛み付いたのは意外にも独島さんだった。

「わたしたち、分倍河原くんに構ってる余裕ないからー。だからこれから分倍河原くんが何言っても無視するよー。寂しいんだったら壁に向かってでも話してて〜。もしかしたらどこかにゲゲ◯の鬼◯郎のぬりかべみたいに会話してくれる壁がいるかもよ〜。失敗続きの絶望信者さ〜ん」

「………!!てめぇ……!」

分倍河原君の顔が一瞬で怒りによって真っ赤になる。

「はいじゃあーみんなで分担決めよっかー?」

しかし独島さんは、言葉通り分倍河原君を完全に無視している。

「…………クソがっ!!!今度必ず後悔させてやる……」

独島さんの態度にキレた分倍河原君はドアを蹴っ飛ばして出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「独島さんすごいね………。思ってたよりも度胸あるんだ……」

「いやいやー。ああいうタイプはテキトーに流しておけばいいんだよ〜」

一時はどうなるかと思ったけど、独島さんのスキルに救われた。

2メートルを超える分倍河原君に物怖じしないとは、独島さんは相当肝っ玉の座ってる少女みたいだ。

「おい!!テメーらこんな所にいたのか………は?」

すると乱暴に扉が開かれて黒瀬君が入ってきた。

「おい待てよ………。なんで香織まで死んでんだよ………」

「黒瀬君!?」

「今までどこほっつき歩いてたんですか。まさか呑気に寝てたとか言うつもりじゃないですよね」

「違ぇよ!オレは気がついたら地面に寝てたんだ!自分から寝たわけじゃねー!」

「………ん?」

黒瀬君の言い方に少し疑問を覚えた。自分から寝たわけじゃない?

「敦郎の話は後で聞きましょう。それより先に決める事があります」

優月ちゃんが一旦話を止めた。そうだ。まず決める事がある。

「よし、じゃあ分担を決めよう。まず検死なんだけど………、今回は被害者が2人いるから2人必要だよね」

「検死が出来るのはジャック殿でござるが、多分、その、ジャック殿は幸村殿の側から離れられないのではないでござろうか」

「そう、だね………」

ジャック君の受けたショックは計り知れない。

きっと幸村さんの側を片時も離れたくはないだろう。

「じゃあ雪さんの方はクソメガネに任せるとして………」

クソメガネって。

「香織の検死は私がやります」

すると優月ちゃんが手を挙げた。

「優月ちゃん検死出来るの!?」

「多少の心得はあります。ジャック程の腕前ではないですが………最低限の仕事は出来ると思います」

「では、霜花殿に任せてもよろしいですかな?」

「ええ」

検死は優月ちゃんがやってくれる事になった。

「見張りはどうするのー?」

「今回は1人でいいでしょう。私達の人数も前に比べて少ないですし、現場が2つある以上、見張りにそこまで人員を割けないですからね」

確かに、前回までみたいに見張りを2人つけるとしたら、それだけで4人いなくなることになる。

「よし!じゃあ優月の見張りはオレがやるぜ!」

「…………ジャック殿の見張りは拙僧が引き受けましょう。どうやら拙僧は捜査よりこちらの方が向いているようです」

見張りは黒瀬君と千野君に決まった。

「じゃあ、捜査開始って事で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凛さん!」

さてどこから捜査しようかと悩んでいると、業ちゃんが声をかけてきた。

「ん?どうしたの業ちゃん」

「今回も私と一緒に捜査を………」

「助手よ。ワタシと一緒に捜査しないかね?」

が、明智さんがそれを遮るようにうちに声をかけてきた。

………どうしよう、2人に誘われてしまった。

「は?私が先に凛さんを誘ったんですけど。それに天才探偵とかイタい肩書きを名乗るポンコツが凛さんと捜査するなんて500万年早いんでとっとと消えてもらえますか?」

「一緒に捜査する人物を誘うのに早い者勝ちなどというルールはないだろう?それに天才探偵なのは事実だし、ワタシがポンコツに見えるのはキミがワタシの才能を理解できる領域に達していないからではないのかね?自身の不出来を他人の所為にするのは如何なものかとワタシは思うが」

「絞め殺すぞ」

「何事も暴力で解決しようとするのは良くない癖だぞ北条業クン」

あーあ、また始まった。

でもうちは今回、一緒に捜査してくれるならこの人って決めている。

 

 

 

 

 

「ごめん業ちゃん。うち、今回は明智さんと捜査したい」

「………え?」

「今回の事件、うちはなんとしてでも全貌を明らかにしたい。けどその為にはうちみたいな凡人の頭脳だけじゃ到底足りない。だから明智さんの『超高校級の探偵』の力を借りたい」

「で、でもっ!?」

「勿論業ちゃんも凄いよ。頭の回転めっちゃ早いし、絶対うちの100倍は頭いいと思う。でも、今回は事件解決のプロである探偵と捜査してみたい」

「…………」

悲しい表情で見つめられる。うぅ、罪悪感が………。

「ごめん、わがまま言っちゃって」

「………すごく、すごく悲しいですけど………。凛さんに褒められてちょーハッピーなのでプラマイゼロです」

もっと落ち込んじゃうと思ってたけど、業ちゃんはふふっと笑った。

「じゃあこれ終わったら私と一回デートして下さい。そうしたら許してあげます」

業ちゃんは頬を膨らませながら条件を出してきた。そうきたか………。

「で、デート…………。う、うん………分かった、一回で良ければ……」

「やった!!!その言葉、忘れちゃダメですよ!」

「う、うん………」

「なら今回のバディはヘッポコ探偵に譲ってあげます。………おい、凛さんの足引っ張るなよエセ探偵」

「……肝に銘じておこう」

「ふふふふふ………。これ終わったら凛さんとデート♪」

業ちゃんはスキップしながらミラーハウスを出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………尋常ではない程助手に執着しているな」

「………周知の事実です」

なんか既にもう疲れた。

「だが、助手の先程の言葉、ワタシはとても嬉しかった」

「………え?」

「あれはつまり、ワタシが『超高校級の探偵』である事を信じてくれているという事だろう?ワタシに関する記憶が無いにも関わらず、だ」

「そう、だね。なんとなくだけど、明智さんが自分の才能を偽るような人じゃないって思ったんだよね」

「……ありがとう」

「……………!!」

「……どうした、そんな驚いた表情をして」

「明智さんがお礼を言った………?」

「………助手よ、このような言葉を知っているか?『親しき中にも礼儀あり』」

「すみませんでした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とにかく、今回はよろしくね」

「ああ。現代版ホームズとワトソンのコンビネーションを見せてやろうではないか」

「だからうちワトソンじゃないから………ひとまずモノカバファイルから見ようか」

「あぁ、さっきカバが言っていたものか。どこを開けばあるのかね?」

「えーっと、ここだね」

捜査は初めてである明智さんにファイルの場所を教える。

そして早速モノカバファイルを開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

[モノカバファイル③]

被害者は《超高校の激運》幸村 雪。

死体発見場所はモノカバ観覧車『大車輪』の真下。

死因は頭部内損傷による転落死で、即死だった模様。

死亡推定時刻は午前7時5分頃。

全身に熱傷が見られる。

 

 

 

 

 

[モノカバファイル④]

被害者は《超高校の棋士》銀山 香織。

死体発見場所はモノカバドッキリミラーハウス。

死因は首を切り裂かれた事による失血死。

右腕に軽い切り傷が複数存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、これがモノカバファイルか。なかなか便利な物を寄越してくれるものだな」

「感心してる場合じゃないよ。まずは幸村さんだけど………やたらと正確に書かれてるね」

「それは恐らくワタシと助手、それに万斗輝晃クンの3人で幸村雪クンが死亡する瞬間を見たからだろう」

「そっか……」

前回の喜屋武さん、それに前々回の飛田君の時は必要最低限のことしか書かれていなかった。それは犯人にとって不利な情報を隠す為って言ってたけど、今回の場合はうちらが幸村さんの死を直接見てる訳だし、その必要がないって事か。

「銀山香織クンの方は死亡時刻が書かれていないな」

「本当だ。わざわざ書いてないって事は、重要な手がかりなのかもしれないね」

「ファイルに死亡時刻が明記されていないということは、銀山香織クンの死亡時刻の記載は学級裁判の公平性を欠くことになる。つまりこれの解明がクロの正体を突き止めるヒントになるかもしれないというわけだな」

香織ちゃんは一体いつ殺されたのか。今回もそれの特定が最優先になりそうだ。

 

 

 

「助手よ。確かに死亡時刻も重要かもしれないが、ワタシ的にはこの情報が鍵だとは思うがね」

明智さんは一番下の行を指差した。

「この切り傷の事?」

「これはかなり大きな手がかりだ。単に首を切り裂くだけならば腕に傷などつける必要はないからな」

「なら………そうせざるを得ない理由があったって事?」

「そう捉えていい」

香織ちゃんの右腕の傷………。後で詳しく調べる必要がありそうだ。

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[モノカバファイル③]

被害者は《超高校の激運》幸村 雪。

死体発見場所はモノカバ観覧車『大車輪』の真下。

死因は頭部内損傷による転落死で、即死だった模様。

死亡推定時刻は午前7時5分頃。

全身に熱傷が見られる。

 

 

 

 

 

[モノカバファイル④]

被害者は《超高校の棋士》銀山 香織。

死体発見場所はモノカバドッキリミラーハウス。

死因は首を切り裂かれた事による失血死。

右腕に軽い切り傷が複数存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「優月ちゃん………検死はどう?」

検死をしている優月ちゃんに声をかける。

「そうですね…………もう少しかかりそうです」

「そうか。では助手、先に幸村雪クンの元へと行こう」

「そうだね。優月ちゃん、また後で検死結果聞きに来てもいい?」

「勿論です。すみません、私の手際が悪いばかりに……」

申し訳なさそうに謝る優月ちゃん。

「そんな事ないよ!!優月ちゃんが検死やってくれるだけで本当にありがたいもん!責める気持ちなんて全くないよ!」

うちは全力で手を振って否定する。

「助手の言う通りだ。キミは他の誰もが出来ない検死を不慣れながらも一生懸命やってくれている。むしろ感謝の意を述べたいくらいだ」

明智さんもすかさずフォロー。

「………ありがとうございます、凛。それに麻音。今ので少し力をもらいました。貴方達が戻ってくる頃には必ず終わらせるように頑張ります」

優月ちゃんは薄く笑うと、また検死に集中し始めた。

「お!優月も本気モードか!じゃあオレもマジで見張りしないとな!!」

「敦郎。気持ちはありがたいですが、少し静かにしてもらってもいいですか。集中したいので」

「お、おぅ………」

しゅんと項垂れる黒瀬君。ちょっとかわいい。

「助手、行くぞ」

「う、うん!」

先に行った明智さんを追いかけるようにミラーハウスを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

幸村さんの元へ向かうと、うちの想像していた光景とは違う事になっていた。

「ジャック君…………もう平気、なの………?」

「………………」

さっきまで幸村さんの亡骸に寄り添い大声で泣いていたジャック君は、千野君に見張られながら検死をしている最中だった。

うちは正直、今も検死を出来ない程落ち込んでいるんじゃないかと思ってここに来たんだけど………。

「………………ユキは死んダ。俺がどれだけ泣こうが戻ってくる事は無イ」

ジャック君は検死をしながら答えてくれた。

「アイツを死なせたのは俺の責任ダ。俺が側で守っていればこんな事にはならなかっタ」

「ジャック君のせいなんかじゃ……」

「いヤ、アイツの誘いをしっかり俺が聞いていなかったからダ。俺がアイツの誘いに応じていれバ………」

ジャック君は拳を地面に叩きつけた。

「ふむ、誘い、か………」

「ジャック君……」

「だが、いつまでも悲しんでいる暇は無イ。俺が今やるべき事は自分の知識を活かシ、犯人を探し出してユキの仇を取る事ダ」

そう言ってジャック君は手を止めてうちらの方を向くと、

「今回の事件の犯人を俺は絶対に許すつもりは無イ」

泣き腫らした目でうちらを睨みつけた。その目には………明確な殺意が灯っていた。

「元々俺は命を粗末にするような人間に生きる資格はないと思っていル。だが、今回の犯人に対して俺は特に憎悪を抱いていル。たとえどんな事情があろうとも、どんな志を持っていたとしても地獄の果てまで追いかけて必ず罰を受けてもらウ」

そう言ってジャック君は視線を下に戻す。

「ジャック君………。それは、幸村さんの為?それとも自分の為?」

「………両方ダ」

「………分かった。うちも協力する」

「………何だト?」

うちはしゃがんで思わず顔を上げたジャック君と視線を合わせる。

「…………うちも仲良しだった香織ちゃんを殺された。ジャック君の気持ち、痛いほどよく分かるよ。正直今回の犯人についてはうちも………許せない。香織ちゃんと幸村さんを殺した犯人が別かもしれないけど、協力して犯人を追い詰めよう。それが2人への弔いになると思う」

 

 

 

 

 

 

「………俺を腫れ物扱いするどころか協力を申し出るとハ………。やはり貴様は変わり者ダ」

「えぇ!?」

ジャック君はうちを見てフッと薄い笑みを浮かべた。

うち、ジャック君に変わり者って思われてたの?普通にショックなんですけど………。

「………検死の結果が知りたいのだろウ。大方終わっているから聞きたい事があるなら答えてやル」

「随分あっさり教えてくれるじゃないか。キミは犯人を絶対に許さないと考えているのだろうから、容疑者である他の人間には教えないと思っていた」

「そんな事をしても俺が疑われるだけダ。それに検死結果を言ったところで犯人を追い詰めるのに何の支障も無イ。この程度の情報ならいくらでもくれてやル」

鼻でフンと笑うジャック君。

「ふむ、そうか。……ではお言葉に甘えて教えてもらおう。何か変わった事はないかね?」

明智さんは堂々とそう聞く。

どう考えてもお言葉に甘えてるような態度じゃない。

彼女は心の底から遠慮したことが果たしてあるのだろうか。

 

   

 

 

 

 

 

「まずモノカバファイルに齟齬はなイ。死因は転落死で間違い無いだろウ。死亡時刻も間違いなくさっきダ。次に全身にある熱傷だガ………、これは爆弾による爆発が原因だと推測されル。しかも比較的殺傷力が低い爆弾ダ」

「爆発を起こせる道具なんて園内には爆弾しかないもんね……。けど、何で殺傷力が低い爆弾だって分かるの?」

「爆発に巻き込まれた割には熱傷の程度が軽イ。これが大規模な爆発を起こせる爆弾であったなら全身黒焦げになっていてもおかしくはないからナ」

うちは改めて幸村さんの全身を見る。確かに全身に火傷を負ってたけど、逆に言えばそれだけだ。ドラマで見るような真っ黒焦げになった焼死体のように炭化している場所は一つもない。

つまり犯人はハナから幸村さんを爆弾で殺すつもりは無かった………?

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[ジャックの検死結果]

モノカバファイルの情報に間違いはないとの事。

また、全身の熱傷は爆弾による爆発に巻き込まれた際に負ったものである可能性が高い。

熱傷の程度は軽く、殺傷能力の低い爆弾が使用された模様。

 

 

 

 

 

 

「それと気になる事があル。ユキの後頭部に傷が存在しタ」

「傷?幸村さんが落下してきた時に出来たものって事?」

「助手よ、観覧車の一番上から落下したんだぞ。傷程度で済む筈がないだろう」

「………あ」

明智さんが呆れながらツッコミを入れた。うち、なんというバカな発言を……。

「今のは聞かなかった事にしてやル。次今のような発言をしたら俺は貴様をアルマジロと同程度の知能しかない馬鹿人間だと認定すル」

「それは酷すぎだと思うんだけど!?」

相変わらず毒舌だなジャック君!ちょっと間違えただけじゃん!!

「ふむ、となると後頭部の傷は幸村雪クンが落下する前に出来たものであるが……、この場合は二つのケースが考えられるな」

「2つ?」

「そうだ。一つは何らか理由で幸村雪クンが気絶し、倒れこんだ時に後頭部をぶつけて出来た場合。もう一つは後方から幸村雪クンが誰かに何らかの凶器で殴られて出来た場合だ」

「なるほど………。ジャック君、今回のケースがどちらかって検死で分かるかな?」

「………正直、どちらかだと特定するのは難しイ。もし凶器が見つかれば傷口からすぐ特定出来るのだガ………」

「ふむ、そうか。助手よ、これはますますあそこへ行かなくてはならなくなったな」

「そうだね。次行く場所が決まったよ」

さっきの爆弾といい凶器といい………ある場所はあそこしかない。

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[後頭部に出来た傷]

幸村の後頭部に傷が出来ていた。何が原因で出来たのかは不明。

 

 

 

 

 

 

「もう一つ気になる事があル」

ジャック君は幸村さんの手首を指差した。

「ふむ………何か痕が残っているな」

「あア。手首に何か強く擦ったような痕があル。少量ながら出血もあったようダ」

確かに幸村さんの手首にはなにかの痕が残されていた。今でも残ってるって事は、結構な力が手首にかかってたって事だよね。

「ふむ………そういう事か」

すると明智さんは納得したのか何回か頷きながら満足そうな笑みを浮かべた。

「何か分かったのカ」

「ああ。この痕の原因が判明した」

「え!!何か分かったの?」

「それは学級裁判までのお楽しみだ」

「えぇ!教えてくれてもいいのに………」

「たまには自分で考えることも必要だとは思わないかね?助手の脳のトレーニングに付き合うのも師匠であるワタシの役目だからな」

「こんな時に脳のトレーニングって……」

「こんな時、だからこそだ」

何が分かったのか聞こうとしたけど、結局話をはぐらかされてしまった。

う〜ん……なんかモヤモヤするなあ………。

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[手首の痕]

幸村の手首に何か擦れたような痕が残っていた。少量だが出血している。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャッククン。すまないが幸村雪クンの身体を調べてもいいかね?」

「………そう言われると思って調べておいタ」

明智さんは次に幸村さんの身体を調べようとしていた。けれどジャック君がそれを見越して調べておいてくれたみたいだ。やっぱり……………幸村さんの身体を誰かに調べられるのは嫌なのかな。

「ふむ、そうか。それで何か重要な手がかりは見つかったかね?」

「…………ユキの携帯ダ。幸いな事にまだ動ク」

ジャック君は白衣から一台のカバフォンを取り出した。

「幸村雪クンが身につけていたという事は、爆発の衝撃をモロに受けた筈だが………。それでも普通に動くこの携帯は一体どんな素材を使って出来ているのか、詳しく知りたいものだね」

「モノカバ曰く、活火山の中に入れてもへっちゃらだってさ」

「……くだらない戯言だな」

明智さん、微塵も信じてないな。

「ユキの携帯を探ってみたガ、どうやらアイツは今朝呼び出されていたらしイ」

「え!?」

「これを見ロ」

ジャック君は画面を見せてきた。

 

 

 

 

 

突然ごめん。

直接幸村さんとスパイの件について話したい事があるんだけど、

明日の朝6時に観覧車前に来てくれないかな?

幸村さんだったら来てくれるって信じてずっと待ってるから。

あと、この事は誰にも話さないでね。

よろしく。

 

独島灯里

 

 

 

 

 

 

 

 

「これって………!?」

「独島灯里クンからのメッセージだな」

幸村さんのカバフォンには1つの送られてきたメッセージが残されていた。その送り主は………独島さんだ。

「独島さんが幸村さんを呼び出した張本人って事?」

「順当に考えればそうなるな」

「だガ、その女が本当にメッセージを送っているかどうかは分からなイ」

ジャック君はこのメッセージを疑っているみたいだ。

「どういうこと?」

「前々回の事件を思い出セ。クロだったツバサはマイコに濡れ衣を着せる為に何をしタ?」

うちは最初の事件を思い出す。確か中澤君は裁判の終盤、霞ヶ峰さんが犯人だってしきりに主張していた。それは送り主が霞ヶ峰さんになってた手紙が飛田君の部屋から見つかったからで、それは実は中澤君が書いたものだった事が後で分かったんだっけ。

「………そうだ!あの時は送り主が霞ヶ峰さんになってたから、霞ヶ峰さんに疑いが集まったんだよね?」

「そうダ。だから今回も同じ手法でアカリに疑いを集める目的があるのかもしれなイ」

「安易に独島さんが犯人だって決めつけちゃいけない、って事?」

「あア。だがどちらにしろ話は聞く必要があるがナ」

「キミ達、一体何の話をしているのかね?ワタシも混ぜてくれ、疎外感が半端ないんだ」

幸村さんのカバフォンから見つかったメッセージ。それが本物なのか、それとも犯人が偽造したものなのか………。後で独島さんに話を聞かなくちゃ。

あと明智さんごめん。そんな寂しそうな目で見ないで。後で教えてあげるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[幸村に宛てられたメッセージ]

幸村のカバフォンに1通のメッセージが残されていた。

 

 

 

 

突然ごめん。

直接幸村さんとスパイの件について話したい事があるんだけど、

明日の朝6時に観覧車前に来てくれないかな?

幸村さんだったら来てくれるって信じてずっと待ってるから。

あと、この事は誰にも話さないでね。

よろしく。

 

独島 灯里

 

 

 

 

 

 

「そうだ。ジャック君、それに千野君。2人の朝のアリバイを教えて欲しいんだけど」

うちはジャック君と見張りをしている千野君にアリバイを聞くことにした。幸村さんの死亡時刻は午前7時5分頃。その付近のみんなのアリバイを聞けば、もしかしたら犯人を絞り込めるかもしれない。

「拙僧は5時頃に起床して温泉に行っておりました。あまり寝付けなかったのと精神統一をしたかった為です」

「5時!?」

相変わらず千野君の早起きには驚かされる。

「温泉で誰かと遭遇しなかったかね?」

「流石にまだ早朝ですから誰にも会いませんでした。あ、でも帰りに幸村殿とすれ違いましたな」

「えっ!?」

幸村さんと会ったって、凄く重要な目撃証言じゃ………。

「いつ頃かね?」

「確か………5時50分頃だと記憶しております。カプセルホテルから出てきた幸村殿とばったり会いましてな。軽く挨拶をしてすれ違いました」

「幸村さんが呼び出された時間の10分前だよ!」

「千野李玖クンの証言が真実であるとするならば、少なくとも幸村雪クンはこの時間までは無事だった、という事か」

幸村さん殺害の準備が進められたのは5時50分以降。大分絞られてきた。

 

 

 

「その時の様子はどうだった?何か変じゃなかった?」

「………少し元気が無い様子でした。寝起きだからだと思いその時は深く考えずにいたのですが、まさかその後幸村殿が殺されてしまうとは………。拙僧が止めていればこんな事にはならなかったのかもしれません」

「そんな!千野君のせいじゃないよ!」

「助手の言う通りだ、自分を責めるべきではない」

「…お気遣いありがとうございます。幸村殿を死へと追いやった者の手がかり、必ずや見つけてみせます」

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[千野の証言]

5時50分頃、カプセルホテルから出てきた幸村とすれ違ったとの事。

いつもより元気がなかったように見えたらしい。

 

 

 

 

 

 

「今朝、俺はユキの事が気になって6時40分頃ホテルを出タ。その後ミラーハウス付近でカルマと出会イ、そこでミラーハウスの扉が開いてる事に気がついタ。そして中に入り………カオリの死体を見つけタ。以上ダ」

ジャック君は検死の手を止めないままうちらに説明してくれた。

「ジャック・ドクトリーヌクン。キミに一つ聞きたいのだが、キミは幸村雪クンが今朝呼び出しを受けた事を知っていたのかね?」

「………詳しい事は知らなかっタ。だが、昨日ユキにこう言われたんダ。『明日の朝、ちょっとウチに付き合ってくれない?』とナ。けど俺が何の用事だと尋ねる前に『ううん、何でもない。やっぱジャックきゅんに迷惑はかけられないよ』と言って話を打ち切ってしまっタ。恐らくその用事がこの呼び出しだったのだろウ」

「そっか………。だからさっき『アイツの誘いをしっかり俺が聞いていなかったから』って言ったんだね」

「…………」

さっきの言葉の意味がようやく分かった。ジャック君は昨日の時点で幸村さんが今朝何か用事があるのを察してたんだ。そして早起きして園内のどこかにいる幸村さんを探していた。その結果見つけたのは幸村さんじゃなくて香織ちゃんだった。

「俺から話せるの情報はそれくらいダ」

「分かった。ごめんね、話すの辛いと思うのに」

「………フン」

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[ジャックの証言]

6時40分頃から園内で幸村を捜索中に北条と遭遇。そこでミラーハウスの扉が開いている事に気がつき、2人で中に入ると銀山の死体を発見したらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観覧車前

 

 

 

「随分と派手に壊れたものだな」

「うん。1番上のゴンドラだけ見事に壊れちゃってるね」

ゴンドラは爆発の衝撃で地面に落ちてしまっていた。

「コラー!!!オマエら危ないから近づいちゃダメカバーー!!」

すると工事用の黄色いヘルメットを被ったモノカバがピーッと笛を鳴らす。

「ワタシ達はここを調べたいんだ。学級裁判で必要な事だからな」

「それでもダメカバ!今この観覧車は崩れる危険があるカバ!もし巻き込まれたらどうするカバ!!オイラはオマエらの安全を第一に考えてるんカバ!

「コロシアイはさせてる癖に」

「おいおいモノカバ。ワタシ達はこれから命を懸けた裁判に挑むのだ。キミのせいで観覧車に関する証拠を手に入れる事が出来ず、その結果クロが勝利したらどう責任を取ってくれるのかね?」

「うぐぐ…、それは……」

「これはあまりにも不公平だ。ゲームとして非常に欠陥のあるものだと言わざるを得ない。そんなゲームを開催したゲームマスターの器が知れるな」

明智さんが弾丸の如く言葉を発してモノカバを追い詰めていく。良かった、口の回る明智さんがいて。うちはこんな芸当は到底出来ない。

「わ、分かったカバ!!!オイラがオマエらが気になる事調べてやるカバ!だからそのダンガンロンパはやめてカバ!!」

「ダンガンロンパ ………?」

「物分かりの良いゲームマスターで助かった。……知りたい事は3つだ。ここの観覧車は一周するのに何分かかるのか、観覧車の真下にある爆発物の破片がどんな物か、そしてこの落ちたゴンドラに爆弾は何個付けられていたか、だ」

「え?」

うちは何で明智さんがそんな事を聞くのか分からなかった。

でも彼女がわざわざ聞くという事は事件の解決に必要な情報だという事だろう。

 

 

 

 

「あ、なんだ思ってたより簡単な事だったカバ。まずひとつめについてカバ。観覧車は一周するのに16分かかるカバ」

「16分………。結構長いね」

観覧車の平均的な一周するのにかかる時間は分からないけど、16分っていうのはうち的には長く感じる気がする。

「ふたつめは………、ちょっと待つカバ。今取ってくるカバ」

モノカバは一瞬で姿を消すと、すぐ同じ場所から現れた。……瞬間移動でもしてんのか。

「ほら、破片なら沢山落ちてたカバ」

「ふむ………これが破片か」

モノカバが拾ってきた破片は、光沢のある黄色の金属片だった。

「これは………どの爆弾だろう」

「ワタシも正直爆弾の種類はうろ覚えだ。後で確認するとしよう」

観覧車下に落ちてた金属片。これもしっかり覚えとこう。

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[観覧車の周回時間]

観覧車が一周するのに16分かかるらしい。

 

 

 

 

[爆弾の金属片]

爆発した爆弾の破片と思われる物。色は黄色で観覧車の真下に落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと、後はゴンドラについてカバ?それなら写真を撮ってくるから勝手に見るカバ」

モノカバはまた一瞬で消えると、すぐ戻ってきた。そして写真をうちらのカバフォンに送る。

「ふむ、ご苦労」

そう言って明智さんは早速写真を見る。うちもそれに続く。

「………ん?」

爆破されたゴンドラはよく見ると奇妙であった。

手前側のドア(うちらが乗り込む側)はほぼ無傷であったのに対し、奥側のドアは、ほぼ全ての面が吹っ飛んで大きな穴が空いていた。

「ゴンドラの真ん中に爆弾があったらこんな壊れ方しないよね……?」

「その通りだ助手」

「え?」

うちが独り言をブツブツ言っていると、それを聞いていた明智さんに同意された。あ、なんかちょっと恥ずかしい。

「この壊れ方は間違いなく奥側のドアに付けられたと考えていい」

「やっぱそうだよね。でもなんで片方だけに付けたんだろう」

「それはこれからの裁判で明らかにしていくべきだろう。……中々大きな収穫だったな」

爆弾をわざわざ片方にだけ仕掛けた理由………。明智さんは何か分かったみたいだけどうちはさっぱりだ。でも、重要な手がかりっぽいからちゃんと覚えておこう。

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[爆発で破損したゴンドラ]

手前側は無傷なのに対して奥側は大きく破損して大きな穴が空いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「明智さん、次どこ行く?」

「色々と気になる場所はあるが………まずは爆弾の出どころから調べるとしよう」

「じゃあ………武器庫、だね?」

うちらは次は武器庫へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武器庫

 

 

「あ、凛さんに麻音さん」

武器庫に入ると万斗君がいた。

「万斗君、何か手がかりはあった?」

「手がかりというか………、おかしな事があるんだ」

訳が分からないといった表情でそう話す万斗君。

「おかしな事?」

「ひとまずこれを見てよ」

うちらは万斗君が持っている紙に注目した。それは………武器庫の備品リストだった。

「これは備品リストなんだけど、ここに書いてある在庫数と今ある武器の数が明らかに一致しないんだ」

「誰かが武器を持ってったって事でしょ?なら足りてなくてもおかしくないんじゃない?」

「違うんだ。おかしいのはそこじゃない。足りてない物をボクなりに調べてみたんだけど………、ほぼ全ての物が持ち出されている」

「え?」

「ふむ、実に興味深い。万斗輝晃クン、それを見せてくれないかね?」

「うん」

万斗君は明智さんに備品リストを渡した。

 

 

 

 

 

拳銃        3(5)

アサルトライフル  3(4)

マシンガン     3(3)

 

日本刀       2(3)

果物ナイフ     4(5)

剣         0(5)

 

手榴弾       4(5)

時限爆弾      1(1)

C4爆弾       1(3)

 

スタンガン     1(3)

 

メリケンサック   2(2)

木製バット     1(2)

金属バット     2(2)

トンカチ      2(2)

 

手錠        1(2)

ボイスレコーダー  1(2)

 

 

 

・()の中が元々あった数、左が今ある数

 

 

 

 

 

 

「嘘でしょ……」

リストを見たうちは思わず口を押さえてしまった。

確かにほぼ全ての物が持ち出されている。

「これは奇妙だ。今回の犯行に明らかに関係なさそうな物まで持ち出されているな」

「そうなんだよ!!」

爆弾やナイフが持ち出されたのはまだ分かる。けどバットやスタンガン、それに剣まで持ち出されてるのは意味が分からない。

「問題はこれ程の武器を一体いつ持ち出したか、という事だな」

「そうだね………」

誰もが自由に持ち出せる武器庫。そんな状態は危険だと判断してうちらは2人ずつ見張りを置く事にした。だから武器を持ち出すにはその2人の監視をかいくぐらないといけない。でもそんな事は無理だ。入り口も一つしかないし、秘密の抜け道とかも存在しない。

「昨日の見張りと今日の見張りはそれぞれ誰だったのかね?」

「昨日は確か………麻衣子さんと優月さん。今日は香織さんとクソバスケ部野郎だった筈だよ」

今日の見張り担当は黒瀬君か。後で話を聞いといた方がいいかもしれない。

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[持ち出された大量の武器]

武器庫から大量の武器が持ち出されていた。

武器庫には見張りがいる為、掻い潜り持ち出す事は不可能。

 

 

 

 

[武器庫の見張り]

昨日の見張りは霞ヶ峰と霜花。今日の見張りは黒瀬と銀山だった。

引き継ぎは日付が変わった午前0時に行われる。

 

 

 

 

 

 

「あ、明智さん。さっきの金属片ってこの爆弾じゃない?」

「ん?どうした助手」

うちは、棚にあった爆弾を指差す。3つの爆弾の中で黄色をしたものは…………C4爆弾だけだった。

「ふむ、確かにこのC4爆弾で確定だな」

 

 

 

 

コトダマ更新!

 

 

 

[爆弾の金属片]

爆発した爆弾の破片と思われる物。色は黄色で観覧車の真下に落ちていた。

→使用されたのはC4爆弾で、落ちていたのはその破片であった。

 

 

 

 

 

 

「助手よ、次の場所に行くぞ」

明智さんは納得したような表情を見せるとスタスタと出口に向かう。

「ええ!?もういいの?ここ結構重要な場所だと思うんだけど」

「ここで得られる情報は何もない。むしろ次の場所の方がよっぽど重要だ」

そう言ってすたこらさっさと出て行ってしまった。

「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

「はは…助手はなかなか大変だね」

「いや助手じゃないから。また後でね、万斗君」

「お互い頑張ろう!んーーーチュッ!!!」

「うぇぇ………」

万斗君の投げキッスを見てしまったうちは、げんなりしながら明智さんを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モノカバドッキリミラーハウス

 

 

 

明智さんを追って来た先はミラーハウスだった。

「……次は香織ちゃんのとこだね」

「そうだ。調べたい事が山ほどある」

そう言って明智さんは躊躇いもなく中へと進み、うちもそれに続く。

「お!ちょうど良いところに来たな!!今検死終わったとこだってよ!」

うちらが辿り着くと、黒瀬君がこっちへ来いと手招きした。

優月ちゃんは息をふうと吐いた。

「凛。それに麻音。お待たせしてすみません。やっとひと段落つきました」

「ありがとう!」

「助かった。では早速聞かせてもらおう」

「……まず、モノカバファイルの記述通り、香織の死因は首を掻き切られた事による出血多量が原因です。そして首の傷を調べてみたのですが、妙な点が二つありました」

「二つ?」

「ええ。まず首の傷は1つではなかったという事です。比較的深い傷が複数存在します」

「犯人は銀山香織クンを複数回切り裂いたという事か」

「恐らくそう考えていいでしょう」

犯人は香織ちゃんに恨みでもあったのだろうか。

だとしたら許せない。数日間共に過ごして来た仲間をこんな風に殺めるなんて、正気の人間がやる事じゃない。

「そしてもう一つの点なんですが…………傷の付き方が汚いです」

「汚い?傷口が汚れてるって事?」

うちは優月ちゃんの表現の仕方にピンと来なかった。

「いや、霜花優月クンの言いたいことはそうではないだろう」

「んんん???」

駄目だ。全然分からん。

「すみません、少しややこしい言い方をしてしまいました。………詳しく説明します」

すると優月ちゃんは香織ちゃんの首にある傷を指差す。

「首元の傷に注目してもらうと分かると思うんですが、傷の切れ方が雑なんです。例えばナイフのような鋭利な刃物で人間の皮膚を切るとスパッと綺麗に切れるんですが、この切り傷はそれとは真逆で切れ方がとても汚いんです」

「つまりは、銀山香織クンに付けられた傷は刃物によるものではないと?」

「ええ。首を切り裂き失血死させる程のものならかなり鋭利な物でないといけないのですが、少なくとも刃物で付けられた傷ではないです。私の過去に経験した例だと………、割れた皿の破片で切り裂かれた死体の傷を見たことがありますが、今回の傷はそれと酷似しています」

「ふむ、成る程………。ちなみに腕に付けられた傷も同じような状態かね」

「全く同じ傷です。なので犯人が使用した凶器は一つでしょう」

つまり犯人はナイフみたいな武器庫にある凶器を避けて、身近にある尖った何かで香織ちゃんを攻撃したんだ。

でも…………そんな物園内のどこにあるんだろう?

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[霜花の検死結果]

モノカバファイルの情報に間違いはなし。

首元の傷は複数存在する為、犯人は銀山の首を数回にわたって切り裂いたと思われる。

また、傷の付き方が汚いことから、凶器はナイフのような武器庫にある鋭利な刃物ではないと推測される。

 

 

 

 

 

 

 

「ところで助手よ、銀山香織クンの右腕にのみ切り傷があるのは何故だと思う?助手の意見を聞いてみたい」

明智さんが突然うちに問いかけてきた。

「う〜ん………。襲いかかって来た犯人の攻撃を庇うためじゃない?ほら、こうやってやるじゃん普通」

うちは右腕を顔の前に持ってきて庇う動作をした。

「成る程……、霜花優月クン、キミはどう考える?」

「私も凛と同意見です。人間は自分の利き手を上に持ってくる性質があります。香織の利き手は確か右でしたから、右腕を上げて咄嗟に庇おうとしたのでしょう」

「そうか。キミ達と同じ意見でワタシも安心した」

「やっぱり明智さんもそう思う?」

「ああ………」

明智さんはそう返事をするけど、どうもしっくり来ないといった表情だ。

「どうしたの?何か引っかかる事でもあるの?」

「……いや、何でもない。それよりこの左腕の痣についてだが………妙だとは思わないかね?」

明智さんは今度は左腕にある痣について話し始めた。

よく見ると痣が出来ている。

「妙………?」

「先程の霜花優月クンの話によって、銀山香織クンに使われた凶器は鋭利な物1種類のみと判明した。であればどのようにしてこの痣は作られたのか、という事だ」

「………あ」

確かによく考えてみれば変だ。

鋭利な物では痣は出来ない。となると他の凶器を使った事になるけど………。

「でもさ、武器庫から持ち出された凶器で痣なんか作れそうな物って木製バットくらいしか思いつかないよ」

「木製バットを持っているのなら初めからそれで殴り殺せば良い話ではないですか?」

「そうだよね。じゃあなんで痣なんか………」

もしかして事件とは関係ないのかな?例えば前の日に怪我した時の痣がまだ残っているとか。

「………」

明智さんは目を閉じて考え込んでいる。

「………そうか」

すると明智さんは閉じていた目を見開いた。

「何か分かったの?」

「………確証はないがな。詳しい事は裁判で話す」

明智さんは何が分かったんだろう。

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[左腕の痣]

銀山の左腕にある謎の痣。何故できたのかは不明。

 

 

 

 

 

「それよりもさ、なんで香織ちゃんは一人でミラーハウスになんか入ったんだろう」

「ふむ、常識的に考えればそうだな。あれ程ミラーハウスには入るなとワタシ達に言っておきながら入るとは………。だが常識的に考えてミラーハウスに行く理由は一つしかない」

「…………クイズをクリアして鍵を手に入れる為、だよね」

「ああ。そうとしか考えられまい」

つまり香織ちゃんは鍵を手に入れてここから出ようとしていた………?

「そ、そんな訳ない!!香織ちゃんが約束を破って、しかもうちらを裏切ってここから出ようとするなんて……」

「助手。それは早とちりだ」

「え?」

「ワタシは『鍵を手に入れる為』とは考えているが『それを使ってここから出る為』とはとは思っていない」

「彼女はいずれ約束を破る者が現れるかもしれないのを危惧して、先に自分で手に入れて保管しておくつもりだった………?」

優月ちゃんがハッと閃いたように言う。

「そう。銀山香織クンの性格からしてその方がしっくりくるだろう?」

香織ちゃんは抜け駆けする人を防ぐ為に、自分で鍵を守ろうとしたってことか。でも………どうしてみんなに相談しなかったんだろう。それに何であのタイミングでミラーハウスに?

「だが、銀山香織クンが私欲で鍵を手に入れようとした可能性も否定できまい。こればかりは本人が死んでいる以上、確かめようもないだろうしな」

「死の直前に彼女を目撃、もしくは話を聞いている人がいればいいのですが」

香織ちゃんがミラーハウスに行った理由………。何か知ってる人がいればいいんだけど。

 

 

 

 

 

 

「さて、黒瀬敦郎クン」

「ん?どうしたんだよ麻音」

明智さんは次に見張りをしていた黒瀬君に声をかけた。

「キミには聞きたい事が山程ある」

「おお!!何でも聞いてくれ!」

黒瀬君は何故か自信満々の態度。

「まずキミがさっき言っていた『気がついたら倒れてた』という発言について詳しく教えてくれ。キミに何が起こったというのかね?」

「そ、そうなんだよ!!オレさ、今日の夜12時から武器庫の見張り担当だったんだけどよ、香織がいつまでも来ないから一人で見張りしてたんだ」

「そこで銀山香織クンを呼びに行こうとは思わなかったのかね?」

「オレが離れたら武器庫が無人になっちゃうだろ?」

「いや、そこは誰かにちょっと見張りを頼んで自分で探しに行くとか、逆に誰かに香織ちゃんを探すのを頼んで自分は見張りを続けるとか……」

「……………」

黒瀬君は唖然とした顔をする。………そこまで思い当たらなかったか。

「キミは少し考えるトレーニングをした方がいい。だから脳筋だと揶揄されるんだ」

「う、うるせー!!」

彼は珍しく恥ずかしそうに顔を赤くする。

「まあまあ、それについては大丈夫だから。それで黒瀬君、その後はどうしたの?」

「………あ、ああ。それでオレは一人寂しく見張りをしてたんだけど………その後の記憶がねえんだ」

「え?」

「気がついたら地面に寝てて朝になってた。それで慌てて誰か探そうと思ったら………雪が死んでるのを見つけて………」

そこまで言うと彼は俯いてしまった。

「ただの寝落ちではないのかね?」

「………分からねぇ」

「どのくらいの時間まで起きてたか分かる?」

「………分からねぇ」

「………ふむ、これは困ったな」

「すまねぇ!!!でもオレは嘘は言ってねえんだよ!信じてくれ!!」

黒瀬君はバッと頭を下げる。

「………嘘を言っているようには見えないよ」

「それはワタシも同意だ。だが黒瀬敦郎クン。正直言うと………現状最も犯人に近いのはキミだ」

「!?な、何でだよ!」

「一人だけの時間が長く、かつ気がついたら寝ていてそれを覚えていない………。都合のいい言い訳と思われても仕方がない」

「な………!」

何も言い返せず驚愕の表情で固まってしまっている黒瀬君。

「だがワタシはキミを100%犯人だと言い切るつもりもない。キミと過ごした時間はそこまで長くないが………キミが人殺しをするとは到底思えないからな」

「ま、麻音………!」

明智さんのフォローに彼涙ぐんで感動している。

うちも黒瀬君が誰かを殺すとは思えない。けど、彼の行動が怪しいのは事実なんだよな………。

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[黒瀬の証言]

今日の担当は黒瀬と銀山だったが、集合時間に銀山は来なかったそうだ。そして夜中一人で武器庫の見張りをしていたらいつの間にか意識がなくなり、気がついたら朝になっていた。直前の記憶は無いとの事。

 

 

 

 

 

 

 

 

「助手」

「何?明智さん」

「この跡は何だと予想する?」

「これは………」

明智さんが指差したのは血の跡だった。それは奥の通路へと続いている。

「血の跡ってことは………香織ちゃんが引きずられた?」

「半分正解だ。引きずられたかどうかはまだ分からない。が、銀山香織クンは傷を負った後、この血の跡をつけながらこちらまで移動した、もしくはさせられたと断定できる」

負傷させた後に移動している………?何か移動する理由があったのだろうか。

「ちょっと辿ってみようよ」

「ああ」

明智さんと血の跡を辿ってみる。

すると跡は………クイズの1問目を解答する場所まで続いていた。

「ふむ、銀山香織クンはクイズに解答している最中に襲われたと考えるのが妥当か」

「………うん」

香織ちゃん………。あなたは一体、何を考えてミラーハウスに行ったの?

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[血の跡]

ミラーハウスに残されていた。跡は銀山がいた場所からクイズ一問目を解答する場所まで続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん………?」

「明智さん?何か見つけたの?」

「これを見たまえ。銀山香織クンが最後に残してくれたダイイングメッセージだ」

「え………!?」

明智さんが香織ちゃんの体をゆっくりどかす。

すると彼女の陰に隠れていたメッセージが現れた。

 

 

 

 

9四香L

 

 

 

「………何だろうこれ」

英数字と漢数字と漢字と英語が合わさって………。

「これは………恐らく棋譜の読み方だな」

「棋譜って………ああ!!」

思い出した。昔おじいちゃんがよく読んでた雑誌に書いてあったやつだ。

確か将棋の駒の動きを表すんだったよね。でも………。

「明智さん。読み方分かる?」

「全く分からん」

あ。ヤバい。

「こういうゲームには触れた事が一切ない」

「うちは一応将棋はやった事あるけど………棋譜については知らないかな」

こんな事になるんだったらおじいちゃんから読み方教わっておけば良かった。

「けど、将棋にアルファベットなんてあったっけ。ほら、この最後のL」

「確かにこれは奇妙だが………理解出来ないワタシ達で話し合っても時間の無駄だ。後で全員に聞けばいいだろう。もしかしたら将棋に明るい者が他にもいるかもしれない」

香織ちゃんが残してくれたメッセージ。……一体最後に何を伝えたかったんだろう。

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[ダイイングメッセージ]

銀山の近くに残されていたメッセージ。「9四香L」と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

ミラーハウスの捜査を終えて外に出ると、誰かが言い争っている声が聞こえた。

「何だろう。何かあったのかな」

「ふむ」

声を辿ってみると、独島さんと霞ヶ峰さんがメリーゴーランド前にいた。どうやら話し声の正体は彼女達のようだ。

「ほんとにー?わたしたちに嫌がらせするためにわざとやってたんじゃないのー?」

「ひ、ひどいでござるよ!?拙者も無意識だったんでござる!!」

あれ?もしかして揉めてる?

「どうしたの二人とも?」

「あ、相川殿!?助けて欲しいでござる〜!」

霞ヶ峰さんはうちの姿を見るなりしがみついてきた。

「ちょっ!?一体何があったの!?」

「独島殿が拙者のいびきに文句を言ってくるのでござる!」

「いびき………ああ、あれね………」

「霞ヶ峰麻衣子クン、諦めたまえ。キミの負けだ」

「まだ何も言ってないでござるよ!?」

うん、あのいびきは擁護しようがない。

「相川さんも知ってるでしょー?あのちょーうるさかったいびきー。わたしそのせいで昨日も全然寝られなかったんだよねー。あまりにもうるさかったからさー、わたしたちに嫌がらせする為にわざと大きないびきを響かせてたんじゃないかーって問い詰めてたのー」

むすっと軽く頬を膨らませ怒りを見せる独島さん。

「そ、そんな事して拙者になんの得があるのでござるか!?」

「それは勿論、霞ヶ峰さんが分倍河原くんと同じ『絶望の庭』所属のスパイだからじゃないのー?」

「な…!独島殿は拙者をスパイだと疑っているのでござるか!!心外でござるよ!!」

「その可能性もあるんじゃないかってことー」

 

 

 

 

「ちょっと二人とも落ち着いて!!」

このままだと永遠に終わりそうにないので、間に入って止める。

「えーっと、とりあえず独島さんが起きた時も霞ヶ峰さんのいびきが聞こえたんだよね。それって何時くらいだったか覚えてる?」

「えーっとねー、わたしが起きたのはー6時40分くらいだったかなー。霞ヶ峰さんに文句言おうとして自分のベットから出たら同じくベットから出てきた霜花さんと鉢合わせしてー、それから二人で霞ヶ峰さんを起こそうとしたけど全然起きなくてー、そしたらおっきな爆発が聴こえて慌てて出てきたって感じかなー」

「ん?」

うちは今の話に違和感を覚えた。

「爆発って2回聞こえたでしょ?一回目の爆発で外には出なかったの?」

「んー?1回目の爆発ってなにー?」

独島さんは首をかしげた。

「え?だって爆発は2回………?」

「わたしが聞こえた爆発音は一回だけだよー」

どういう事だろうか。2回目よりも小規模だったとはいえ、爆発音はそこそこ大きかった。距離的にもカプセルホテルに爆発が聞こえない筈がない。

「霞ヶ峰さんは?」

「拙者は独島殿の言う通りずっと寝てたでござるから何とも言えないでござる………。あ、でも拙者も大きな爆発音を1回だけ聞いたでござる。その1回で拙者目が覚めたでござるよ」

「明智さん、これって………」

「ふむ、これは全員に話を聞く必要がありそうだな」

1回目の爆発音は聞いてる人と聞いてない人がいるみたいだけど……その相違点は何なんだろう。

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[独島の証言]

霞ヶ峰のいびきで6時40分頃起床。同じく起きてきた霜花と霞ヶ峰に文句を言おうと起こしている最中、大きな爆発音を聞いたという。

 

 

 

 

 

[1回目の爆発音]

一回目の爆発音を聞いた人と聞いてない人が存在する。

相川と明智は聞いているのに対し、独島と霞ヶ峰は聞いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助手よ、今から別行動だ」

「え?急にどうしたの?」

明智さんは急に別行動をすると言い出した。

「調べたい事が出来た。キミは別のところを捜索したまえ」

「う、うん。分かったよ」

「健闘を祈る」

そう言ってスタスタと歩いていった。

「どうしたんだろう……」

「あ!!凛さん!!」

すると後ろから業ちゃんがダッシュでやってきた。

「業ちゃんお疲れ。何か見つかった?」

「ええ。色々見つけて考えている事はあるんですけど………って!それよりなんで凛さん一人なんですか!あのエセ探偵は凛さん置いてどこ行ったんですか!」

「あ、明智さんは調べたい事があるって言ってどこか行っちゃったよ」

「はあああああ?あのチビ、凛さんと組みたいとか言ってくせに凛さんを置き去りにするなんて…………。殺す殺す殺す殺す………」

「ちょっと業ちゃん!?何馬鹿な事言ってるの!ストップストップ!!」

慌てて歩き出した彼女を羽交い締めにする。ち、力が強いって………!

「あ、ご、ごめんなさい。凛さんの前で私、なんて恥ずかしい……」

「い、いいって………。それより、業ちゃん何か今回の事件について考えついた事があるの?」

「そうですね………考えというか、どうして今回は二人も犠牲者が出たのかなと」

「………え?」

業ちゃんは顎に手を当てて考える。

 

 

 

 

 

「前回までは犠牲者は一人でした。しかし今回は何故かほぼ同じタイミングで二人も殺されています。いくら私達が限界を迎えていたからといって偶然同時期に殺人が発生、なんてことが起こり得るのでしょうか?」

「だって………それは本当にたまたま同じタイミングで別々の犯人が殺人を決意したっていう事しか考えられないんじゃないの?」

「偶然、ですか………。私は偶然ではなく故意だと考えています。つまりある二人が手を組み、協力して別々の人物を殺害したいうパターンです」

「そんな!?それじゃあ殺した二人は両方卒業出来るって事?」

「そんな訳ないカバ〜〜〜〜〜!!」

「キャッ!?」

するとうちらを話を聞いていたであろうモノカバがうちの足元から飛び出してきた。

「このクソ綿が………また凛さんの足元から………」

「はいはいごめんごめんカバ。それよりさっきの話についてだけど、もし同時期に殺人が起きた場合、卒業出来るのは()()()()()()()()()()()カバ」

「じゃ、じゃあもし、香織ちゃんが幸村さんより先に殺されてたら、香織ちゃんを殺した犯人しか卒業できないの?」

「その通りカバ〜!幸村サンを殺した犯人はそのまま大学生活を送ってもらうカバー!要するに殺し損ってことカバー」

「そういう大切なことは先に言わないと駄目なんじゃないですか?私達の事舐めてるんですか引き裂きますよ」

「そ、そこまで言わなくても………」

責められて落ち込むモノカバ。

じゃあ、香織ちゃんか幸村さん、どっちかの死は完全に無駄だってこと?そんなの………そんなのあんまりだ。なんで理由もないのに死ななきゃいけないの?

 

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[同時殺人が起きた場合のルール]

同時に殺人が起きた場合、卒業出来るのは先に殺人を犯した者のみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあオイラは帰るカバー。捜査時間はそろそろ終了だから時間に気をつけるカバ〜」

そう言ってモノカバは消えていった。

「あ、そうだ」

「どうしたんですか?」

「業ちゃんさっき『別々の犯人が協力してそれぞれ二人を殺した』って言ってたけど、一人で二人殺したってケースもあるよね?それについてはどう思う?」

「凛さんが私に意見を求めて………!か、感激です!!喜んで答えます!!」

「そんなに感動する………?」

「えーっと、ゴホン。私の考えだとその可能性は薄いと思います」

「それは何で?」

「あまりにもリスクが高すぎるからです。銀山さんの死亡時刻はまだ特定されていませんが、恐らく昨日の夜〜今日の深夜だと思います。だとすると今朝殺された幸村さんの死亡時刻とはそこそこ離れています。もし二人を殺したのが同一犯であるならば、この夜から朝にかけての時間帯犯人は遊園地内を動き回って殺人の準備や殺人の実行、そして後片付けや証拠隠滅をしなくてはいけません。こんな狭い遊園地内で長時間動き回ったら誰かに見つかる可能性が限りなく高いです」

「そっか………。でもだからこそ誰かに見つからないように犯人は夜中とか早朝の時間にしたんじゃない?みんな寝てるしさ」

「トイレに行く、眠れなくて散歩をする、その他何かを企んで夜中に行動する………。夜中や早朝に人が動くケースはいくらでもあります。実際私も霞ヶ峰さんのいびきというイレギュラーで普段だったら寝ている朝の4時に目覚めましたから。加えて柴崎武史や分倍河原剛のような行動が読めない奴も存在します。だから犯人は極力園内を動き回りたくなかった筈です」

「なるほど」

「それに一人で二人も殺すとなると、その分証拠も残り、裁判で勝つのが難しくなります。普通に外に出たいのであれば一人殺せば十分ですからね」

業ちゃんの考察はとても納得がいくものだった。確かにこの比較的狭い遊園地を動き回るのはリスキーだし何より目立つ。

「じゃあ業ちゃんは誰が…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポンパンポーン………

 

 

 

 

 

「オマエラら、ドキドキワクワクの学級裁判、ついに始まるカバー!さぁ、1階の101教室に集合するカバー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、耳障りなモノカバのアナウンスが園内に鳴り響いた。

「もう終わりですか」

「早いね」

捜査時間の終了。そしてうちらは学級裁判へと挑むことになる。

「あ、業ちゃん先行ってて。ちょっとトイレ行ってくるから」

「え!!凛さんのトイレ………じゃあ私も………」

「絶対やめて。お願い。うち他にトイレ入ってる人がいると落ち着かないの」

「むーーー。しょうがないですねー」

うちはさっさと業ちゃんを追い返しトイレへと向かう。

そして済ませてA棟に向かう途中、柴崎君と遭遇した。

 

 

 

 

 

 

「柴崎君………」

「お、相川サン。何か手がかりは見つかったッスか?」

相変わらず人が死んだとは思えないテンションで話しかけてくる。

「あなたは……変わらないんだね」

「ん?僕がッスか?変わるも何も前と同じ状況じゃないッスか。誰かが起こした殺人事件を僕らで解決する。生きるか死ぬかをかけた学級裁判。こんなのワクワクしない方がおかしいッスよ」

「………もういい」

これ以上会話をしても無駄だと踵を返す。

「おっと。気分を悪くさせちゃったッスか。ならお詫びも込めてアンタに手がかりを一つあげるッス」

「手がかり?」

そううちが聞くと同時にカバフォンが振動した。………柴崎君から一枚の写真が送られてきていた。

「………!?これって………!」

写真に映っていたのは………茂みに隠された剣と木製バット、アサルトライフルに日本刀だった。

「全部武器庫にあった………」

「これで隠したつもりなんスかね。全く、今回の犯人は相当なお間抜けさんッスよ。あ、ちなみに木製バットには血痕が付着してたッスよ」

「血痕?」

「確かに伝えたッスからね。この情報を生かすも殺すもアンタ次第ッスよ」

「え?ま、待ってよ柴崎君!?」

「無能がどこまで足掻けるか………楽しみにしてるッスよ」

そう言い残し柴崎君は去ってしまった。

相変わらず何を考えているのか全然分からない。

でも彼の態度………いつも何か違うような気がする。

昨日言われた事も含めて彼に聞きたい事は山程ある。

だからこの裁判、必ず生き残らなければいけない。

「………行くか」

うちは急いで裁判場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[茂みに隠された凶器]

本来武器庫にある筈のアサルトライフル、日本刀、木製バットが一つ、そして剣は全てが園内の茂みに隠されていた。

木製バットには血痕が付着している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A棟 101教室

 

 

うちが裁判場に着くと、既に殆どの人が集まっていた。

「遅いぞ助手。名探偵の助手ともあろう者が遅刻とは情けない」

入り口付近にいた明智さんに叱られる。

「申し訳ない。あとうち助手じゃないから」

「何凛さん責めてるんですか。凛さんは準備を整えるためにわざわざトイレに行って………」

「業ちゃん!?それ大声でいうことじゃないから!!」

慌てて業ちゃんの口を塞ぐ。

「トイレに行っていたのか。それは済まなかった。やはり女子にも様々な事情があるからな。助手の体調に気づくことが出来ないとは……探偵失格だな」

「なんか物凄く勘違いしてるんだけど!?」

うちらの騒ぎに対して………反応する人は誰もいない。

一部の人を除いて表情は険しく、むしろうちらの反応の方がよっぽど異常だ。

別にうちは二人の死を軽く見ているからこんなテンションでいられるわけじゃない。

彼女達の死を絶対に暴くという強い吹っ切れた気持ちを持っているからだ。どんなに悲しくても………気持ちで負けちゃいけない。戦う前から弱気じゃダメだから。そうじゃないと香織ちゃん達に顔向け出来ないもん。

うちは気を取り直してエレベーターへの道が開くのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!!いつまで待たせんだよ!」

うちが来てから20分が経過した。なのに………エレベーターへの道が中々開かない。それどころかモノカバが現れる気配すらない。

「なんで始まらないのー?」

「もしかして学級裁判があることを忘れてるのではござらんか?」

「もしそうであれば拙僧らにとっては嬉しい限りですがな」

みんながおかしいと騒ぎ始める。

前までならここに集合してからすぐ始まった筈なのに………。

 

 

 

 

「オマエら何してるカバ!!」

するとモノカバが怒りながら現れた。

「何してるはこっちのセリフだバカ!早くオレら連れてけよ!」

「バカはオマエらカバ!学級裁判は()()()()()()!全員揃わないと始まらないカバ!ったく、なんで気がつかないカバ!」

「全員って………?」

うちらは周囲をキョロキョロと見渡す。

うち、霞ヶ峰さん、黒瀬君、柴崎君、優月ちゃん、ジャック君、千野君、独島さん、業ちゃん、万斗君、明智さん………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ………分倍河原君は?」

うちはまだ来ていない彼の名前を口にする。

「あ、そういえばまだ来てないでござるね」

「一番体が大きいのに気がつかなかったよ」

「あのクソヤロー………ついには裁判もバックレるつもりかよ!!」

「でもでもー、たとえスパイでも学級裁判は出ないとダメなんじゃないー?」

「独島サンの言う通りカバ!!たとえ使えないスパイでもなんでも学級裁判には強制参加カバ!出ないとオシオキカバ!」

「……だそうです」

「じゃあどっかで殺されちゃってんじゃないッスか?」

すると柴崎君がまた不謹慎な事な発言をする。

「柴崎殿、それはあまりにも不謹慎ですぞ」

「そうだよー。ダメだよーそういう事言っちゃー」

「えー、僕は可能性を指摘しただけなんスけど。アンタらに非難される筋合いは無いっスね」

柴崎君が呆れたように笑う。

そんな事がある筈がない。3人目の犠牲者が出るなんて………。

………………え?

 

 

 

 

 

 

 

「いや、柴崎君の考えは当たってるかもしれない」

「はぁ!?凛まで急に何言い出すんだよ!」

黒瀬君がそんな事ありえないだろうとうちに詰め寄る。

「じゃあ聞くけど………、誰かさ………捜査始まってから分倍河原君を見た人いる?」

「え………」

「確かに………見てないですね」

「拙者もでござる」

「ボクも見てないよ」

誰も見たという人は名乗りでない。

「助手の嫌な予感は当たってるのかもしれないな」

全員を見渡しながらそう呟く明智さん。

「誰も見かけていない上に集合時刻を20分過ぎても現れない。これは最悪のケースを想定するべきではないかね?」

明智さんの言葉に全員の表情が一変する。

「馬鹿ナ………3人も殺されたというのカ?」

「こんな事ってアリなの!?」

「ひとまず全員で探しましょう。ここにいても埒が明きません」

優月ちゃんの声かけで一斉に分倍河原君を捜索することになった。

 

 

 

 

 

 

うちが園内を探していると、反対側から優月ちゃんがやってくるのが見えた。

「優月ちゃん!!」

「凛、そっちにはいましたか?」

「いなかった。優月ちゃんも?」

「ええ。一体どこにいるんでしょうか……?」

「あれ?相川サンと霜花さんじゃないッスか。ちょうど良かったッス」

すると今度は柴崎君が現れた。

「今柴崎君の嫌味を聞いてる暇はないの。絡んでくるなら後に…」

「分倍河原サン、見つけたッスよ」

「え?」

柴崎君はいつものおちゃらけた表情を完全に消している。

その表情が、柴崎君の言っている言葉が嘘でないという何よりの証拠だった。

「………どこ!?」

「こっちッス」

うちと優月ちゃんは走り出した柴崎君の後を走って追う。

着いたのは温泉だった。

「温泉………」

「ほら、さっさと行くッスよ」

そう言って柴崎君が進んだのは男湯の中だった。

捜査時間だったから女子でも男湯には入れる。

うちらは躊躇いもなく男湯に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーンポーンパーン………

 

 

 

 

「死体が発見されたカバ!!一定の捜査時間の後、学級裁判を開くカバ!オマエら、C棟の温泉施設に全員集合するカバ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだ、これは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脱衣所の中央に何かが倒れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りは夥しい血で溢れており、血の海とはまさにこのような状況を指すのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

その何かには大量の剣が刺さっていた。

この剣………錦織さんを殺めた剣と同じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして。

どうしてこんな事になるの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次々と命が消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか………」

「いやー……流石に僕もこれにはびっくりッスねー」

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《超高校級の空手家》、分倍河原剛は虚ろな目をこちらに向けたまま死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生存者

 

 

LA001 相川 凛《外国語研究家》

MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》

⁇003 喜屋武 流理恵 《調理部》

SA004 銀山 香織《棋士》

MB005 黒瀬 敦郎《バスケ部》

⁇006 柴崎 武史《歴史学者》

MB007 霜花 優月《狙撃手》

MA008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》

MC009 千野 李玖《茶人》

MC010 独島 灯里《サブカルマニア》

⁇011 飛田 脚男《バイク便ライダー》

⁇012 中澤 翼 《フットサル選手》

⁇013 錦織 清子《テニスプレーヤー》

⁇014 分倍河原 剛 《空手家》

015 北条 業 《???》

MA016 万斗 輝晃 《情報屋》

MB017 幸村 雪 《激運》

MA018 明智 麻音《探偵》

 

残り11人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という事で今回の犠牲者は………三人です。



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