ダンガンロンパ キャンパス   作:さわらの西京焼き

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新情報盛りだくさんの回です。






(非)日常編②

 

 

 

 

 

B棟 才能研究棟

 

 

 

D棟を一通り探索したうちと業ちゃんは、B棟の才能研究棟へとやってきた。

目的は勿論、新たに解放された才能教室の探索だ。

「どの才能教室から行きますか?私は凛さんにお任せします」

「ジャック君と万斗君、優月ちゃん、それに独島さんの才能教室はまだ入らない方がいいと思う。本人を差し置いてうちらが先に入るのはちょっとね」

探索の結果は後で本人に聞けばいい。

万斗君と独島さんの2人は教えてくれないかもしれないけど…………。

「だからまず、中澤君の才能教室から行ってみようと思う」

「了解です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フットサル選手』の才能教室

 

 

中澤君の教室に入ると、一面に広がる人工芝のフィールド、そして普通のサッカーゴールより小さめのゴールが視界に入った。

………中澤君はいつもこんな場所でプレーしてたんだ。

「私こっちの更衣室的な場所調べてきますね」

「うん。うちはもう少しここらへん調べてみる」

業ちゃんと別れ、うちは歩き回りながら手がかりがないか探す。

しかし、それらしき物は見つからない。

錦織さんの才能教室もそうだったけど、こういう運動系の才能教室はそもそも何かを隠せるような場所が少ない。

あっという間に調べ尽くしてしまったので、業ちゃんの手伝いに行くことにする。

「業ちゃーん。何か見つかったー?こっちは何も成果なしだよー」

呼びかけながら入ると、業ちゃんがロッカーの前で固まっていた。

ある物を見つめながら。

「ん?どうしたの?」

「…………………凛さん。これを見て下さい」

業ちゃんは真顔で手に持った物を見せてきた。

「ノートじゃん。あ!もしかして何か重大な手がかりがあるとか!!」

「……いえ。期待してる凛さんには申し訳ないんですけど、中は全て白紙です」

持っていたのはごく普通のノートだった。

どんな手がかりが……と思ってワクワクしながら聞いてみたけど、どうやら何も書かれていないみたいだ。

「そっか。それは残念………。でもなんで新品のノートがこんなところに………」

「凛さん」

うちが言葉を続けようとした時だった。

業ちゃんが開いていたノートをパタリと閉じた。

「確かに中身は全て白紙でした。けど、このノートは新品ではないです。表紙を見て下さい」

「ん?表紙がどうしたの……………………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『()()()()()()()()()』」

 

     

 

 

 

 

 

 

「嘘………何これ………?」

「それだけじゃありませんよ。裏を見てください」

業ちゃんはノートを裏側にひっくり返す。

すると右下に『中澤 翼』と書かれていた。

「え………」

驚きのあまり声が出ないうちに対して、業ちゃんは困惑した表情でボソリと呟いた。

「凛さん。私達はとんでもない物を見つけてしまったみたいですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『棋士』の才能教室

 

 

次は香織ちゃんの教室にやってきた。

中は8畳くらいの和室で、中央に大きな将棋盤が二つ置いてある。

この将棋盤を挟んで対局するということだろう。座る位置に座布団もしっかり用意してある。

部屋の端には急須や飲み物を入れる湯呑み、そして本がぎっしり詰まった本棚がある。

「あそこの本棚が怪しいですね。私調べてみます」

「………うん」

本棚は業ちゃんに任せて他の場所を探索する。

「…………」

まずどこから探そうかと辺りを見渡すと、将棋盤に置いてある駒が目に入った。

「香織ちゃんと将棋を指した時のことを思い出すなあ………」

食堂でお互い和やかな雰囲気で将棋を指した記憶。

つい1、2週間前のことなのに、遠い昔のように感じてしまう。

うちは無意識に駒の中から『香車』を取っていた。

「必ず外に出るから………見守っててね」

そう呟いて駒をポッケに入れ、別の場所に移動しようとする。

「………ん?」

その時、ふと視界に入った座布団の下から何かはみ出している事に気がついた。

ゆっくり座布団をめくってみる。

すると一冊のノートが見つかった。

「もしかしてこれも………」

さっきのようなノートではないかと恐る恐る表紙を見てみる。

しかし表紙には絶望などという単語は書かれておらず、代わりに『日記帳』と書かれていた。

「なんだ、ただの日記帳か」

うちは安心して思わず息を吐き出す。

しかし香織ちゃん、日記なんて付けてたんだ。

…………どんな事書いてたんだろう。

人の日記を勝手に見るのは人としてどうかと思うけど、ここに大きな手がかりが隠されてるの可能性を考えると、中身を確認しないというわけにもいかない。

「………香織ちゃんごめん!!」

申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、うちは中身を見る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2×××年 7月24日

 

 

今日は相川と私を含めた数人で次の作戦地域へと偵察に向かった。

事前情報によると目標地域(ターゲット)は非常に閉鎖的な空間であり、外部との交流を拒み続けているという。実際私が入口の門番に声をかけた途端、槍を振り回され追い返されてしまった。

しかし私達のやる事は変わらない。

理想的な世界を創るためなら私はどんなことでもやり遂げてみせる。

今回の作戦も粘り強く交渉すれば必ずあちら側も受け入れてくれるだろう。

………それに私達には相川がいる。

彼女がいればきっとどんな事も成し遂げられるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

日記の一部を読んだうちは驚きのあまり固まってしまった。

「何これ…………!!こんなの知らない、うち知らないよ!?」

まるで覚えのない記述。未来の日付。訳が分からない。

「………落ち着け。冷静になれうち」

一旦深呼吸をする。そしてゆっくり得られた情報を整理する。

書かれた日付は今から2年後になっている。つまりこの日記は未来の話をしている事になる。

その未来というのは、うちらが消された希望ヶ峰学園で過ごした高校生活の記憶を指すのだろう。

この日記が捏造でなければ、うちらの記憶が消されたという話は確定だ。

さらにこの日記の内容から、うちと香織ちゃんはどうやら何か仕事を任されて一緒に行動を共にしていたようだ。

その仕事の内容は詳しく書かれていないから分からない。

「………ひとまずこれはみんなの意見を聞いてみよう」

こういう抽象的な情報こそ客観的な意見が必要だ。

うちはその日記を手に入れ、探索を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど………確かにそれは妙ですね」

香織ちゃんの才能教室を出たうちは、歩きながら業ちゃんに見つけたものを報告した。

「業ちゃんはどう思う?やっぱモノカバの罠とかだったりするのかな?」

「いえ、その可能性は低いと思います。ちょっとノート見せてもらってもいいですか?」

うちがノートを貸すと、業ちゃんは5秒程じーっと見つめてすぐ返した。

「…はい。やはりモノカバが作った偽物というわけではないと思います」

「え?今ので分かったの?」

「筆跡です。この日記は銀山さんの筆跡と酷似しています。銀山さんの筆跡は特徴的だったのですぐ分かりました」

「よく覚えてるねそんなの………。ちなみに誰か別の人が真似た可能性はないの?」

「ほぼゼロといってもいいと思います。人の筆跡を真似する時って、いくら文字の形を模倣しても、自分で気づいていない自身の書き癖が出てしまうんです。日記にはそのような癖が見られなかったので、別人が模倣した物とは考えにくいです」

「そ、そうなんだ………」

業ちゃんの知識量に驚きつつ、うちはもう一度日記を注視する。

………全然分からん。

そもそも香織ちゃんの字がどんな風だったかもよく思い出せない。

うちらが文字を書いたのは、多分最初にモノカバの講義を受けた時だ。

業ちゃんはその時香織ちゃんの書いた文字を見たのだろう。

その一瞬で筆跡を覚えるなんて…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おふたりさ〜ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?業ちゃん何か言った?」

「私は何も言ってないですよ?凛さんこそ私に何か………」

お互いに自分じゃないと首を振る。

「こっちだよー」

後ろを振り返ると、独島さんがある部屋から首を出して手招きしていた。

そこは『超高校級のサブカルマニア』の才能教室だった。

「何ですかあなた。私達とは関わらないんじゃなかったんですか」

「そう言ったのは千野くんだけだよー。私は別にみんなと話さないとは一言も言ってないもーん」

冷たく言い放つ業ちゃんに対していつものマイペースな口調で返す独島さん。

「それよりもわたしの才能部屋気になるでしょー?おいでよー2人ともー」

「………どういうつもりですか?私達をあなた達のグループに勧誘でもするつもりですか?」

「もー北条さん疑いすぎー。わたしはただわたしの趣味をみんなにもっと知ってもらいたいだけだよー。いわゆる布教活動ってやつだねー」

「………分かった。じゃあお邪魔してもいい?」

「凛さん!?」

「少なくとも独島さんに悪意はないようだし、個人的に人の才能教室にはやっぱり興味があるからさ」

それに、独島さんには色々聞きたい事がある。人の目がない才能教室内でなら何か話してくれるかもしれない。

「ほいほーい。じゃあ相川さん早速中入ってよー。北条さんはどうするー?」

「わ、私は………」

「もし来ないなら北条さんが見てないところで相川さんに手出しちゃおうかなー?わたし両方いけるクチだしー。ぐふふー、楽しみだなー」

分かりやすい棒読みの演技で動揺している業ちゃんを誘い込もうとする独島さん。

あ、これは効くな。

「…………は?私も行くに決まってるじゃないですか。あなたみたいな女が凛さんを誘惑するなんて1万年早いです。もし凛さんに手を出したらぶち殺しますから」

ほらやっぱり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『サブカルマニア』の才能教室

 

 

 

独島さんの才能教室は、一言で言うと『娯楽部屋』だった。

漫画やゲーム、パソコン、コスプレ用の衣装など、いわゆるサブカルチャーと呼ばれるものが全てこの部屋に凝縮されていた。

壁紙はパステルカラーの水玉模様であり、まさしく女の子の部屋、という感じだ。

「どうー?すごいでしょー?」

独島さんは手を広げて嬉しそうに自慢する。

「うん。漫画の数とか凄いね」

「でしょでしょー。ほらここの棚とか見てよー。わたしお気に入りの漫画全部揃ってるんだ〜」

彼女は目をキラキラさせてあっちこっちを指差す。

ものすごくテンション上がってるなあ。

それはそうだよね。だって自分の興味がある物が詰まった部屋が才能教室だもん。

………早くうちも自分の才能教室を見てみたい。

 

 

 

 

 

 

 

「なんかゴチャゴチャして落ち着かないですね、この部屋」

業ちゃんは物が沢山ある部屋が気に入らないのか、不快感を露わにしている。

「えー?北条さん分かってないなー。この自分の好きな物に囲まれて過ごす至福のひと時が最高なんだよー」

「はいはいそうですか。それよりもここの部屋に何か脱出の手がかりはあったんですか?私達を招き入れるような真似したんですからこれくらい答えてくれてもいいですよね?」

独島さんの反論を無視して高圧的にそう尋ねる業ちゃん。

もうちょっと穏便に頼むよ………。

「もー。そんな怒らなくてもちゃんと答えるよー。ここには何もなかったよー。神に誓って言えるー」

「……独島さんってキリスト教?」

「ううんー、ヒンドゥー教だよー」

「嘘つけ!!」

「バレちゃったかー」

牛肉とか豚肉をばくばく食べてたのをうちはしっかりと覚えている。

「まあ神に誓ううんぬんは冗談としてー、脱出に関する手がかりは見つからなかったよー」

独島さんはソファに寝っ転がりながらはそう言った。

「嘘つかないで下さい。そのパソコンとか明らかに怪しいじゃないですか」

「あ、それはうちも気になってた」

部屋の端に設置された真っ黒なパソコン。

見るからに機密情報が入ってそうなビジュアルではある。

「これー?さっきちゃんと調べたよー。けどさー、パスワードかかってて入れなかったんだよねー」

「パスワード?」

そう彼女は説明すると、パソコンに張り付き操作し始めた。

「ほらー、これみてよー」

「えーっと…………」

確かに画面を見ると、『パスコードを入力してください』という文字が表示されていた。

「最初わたしの私物かなーと思って普段使ってるパスワード色々試したんだけどー、どれも違うみたいでさー」

「あなたがパスワードを知っているけど知らないふりをしている可能性もあります」

「それ疑われたらもう無理だよ〜」

「そのヘラヘラした態度ムカつくのでやめてください。………凛さんはどう思いますか?」

「う〜ん…………。独島さんがパスワードを知ってるかどうか証明出来ない以上、彼女を責める事は出来ないよね。でもそのパソコンが怪しいのも事実だし………」

そもそも、こんな明るい派手な部屋に真っ黒なパソコンが置いてあるのが妙に引っかかる。独島さんの私物っぽくはないし、モノカバが設置した物って考える方が自然なんだけど………。

「ひとまず保留にして後でみんなと相談しよう。独島さん。後でまたこのパソコン調べに来るかもしれないけど、それは大丈夫?」

「はいはーい。全然大丈夫だよー。ありがとう相川さんー。危うく北条さんに殺されるところだったー」

「………そんなに殺して欲しいんですか?」

「じょ、冗談だよ〜。はは、ははは」

「尋常じゃないくらい頬が頬が引きつってるよ、独島さん」

ひとまず独島さんの部屋をあとにすることにした。

聞きたい事はまたパソコンを調べに来た時に聞けばいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A棟 1F 食堂

 

 

 

「じゃあみんな揃ったし、報告会しますか」

各地で探索していた全員が食堂に戻ってきたので、その結果を報告することになった。

「まずはどのペアから発表する?」

「ワタシ達のペアは最後でいい」

「なんでだよ?」

「報告すべき事実が沢山ある。先にキミ達の成果を聞いてからの方がいいだろう」

そう言う明智さんの目の前にはファイルが置かれている。

「なるほどな。じゃあオレらから発表するか」

「そうですね。では私達から報告します。…………私達は美術室とその隣にある美術準備室を探索しました」

「ゴチャゴチャしてるしすっげえボロかったぜ」

「広さも他の施設より狭いです。絵を描く趣味がない限り利用する事は少ないでしょう」

確かに美術室には絵を書く事が好きな人以外が訪れる機会はないだろう。

「それデ?何か発見はあったのカ?」

「私達が見つけたのは…………これです」

彼女が取り出したのは、一枚の写真だった。

「これはオレが見つけた写真なんだぜ!!すげーだろ!」

「聞いてないんですけど」

ドヤ顔をする黒瀬君に心底鬱陶しそうにそれを流す業ちゃん。

「これは美術室の机の中にありました。詳細についてですが…………説明するより見てもらった方が早いと思います」

優月ちゃんは置いてある写真をひっくり返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

「………別々のクラスである筈の私達が、()()()()()として集まり撮った集合写真です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その写真の正体は、ここに閉じ込められたメンバーの集合写真だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

中心で写っているのは何故かうちだ。

満面の笑みでピースをしている。

右隣にはドヤ顔でフッと笑う明智さん。

左隣には緊張した表情でカメラにまっすぐ視線を向ける香織ちゃん。

香織ちゃんの隣には柔らかな笑みを浮かべる優月ちゃんがいる。

4人並んでいるのを見る限り、普段から一緒に行動していたのはこのメンツだったんだと推測する事が出来る。

 

 

 

 

 

 

そんなうちらを横から涎を垂らして見ようとしているのは万斗君だ。

そしてそんな万斗君の首の向きを無理やりカメラの正面に戻そうとしている錦織さん。

それを見てオロオロする様子の飛田君。

でも、3人ともなんだか楽しげだ。

 

 

 

 

 

 

 

うちらの一個後ろでは、中心で黒瀬君が右腕をまくり力こぶを作るポーズをしている。

それを真似したのか、右隣で霞ヶ峰さんが、左隣で独島さんが、その隣で幸村さんが同じポーズをしている。幸村さんの隣ではジャック君が少し呆れたような、でも嬉しそうな表情で幸村さんを見ていた。2人は仲良く腕を組んでいる。

 

 

 

 

その横で喜屋武さんと中澤君、千野君が微笑ましいといった表情で見守っていた。

さらにその後ろでは、輪に入ろうとしない柴崎君を分倍河原君が誘っている風に見える。

うちらの個性がよく出た集合写真だ。

半数以上の人がカメラを見ていないので、集合写真というより普段の日常を隠し撮りした写真というべきかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事………!?だってうちらは…………」

「ええ。私達は入学時別々のクラスだった筈です。しかしこの写真では、私達は同じクラスとして集まっています」

「本当じゃねーか。オレらって実はクラス同じだったんじゃねーの?」

「俺達のクラスが別々だった事は、前発見した入学時の名簿で明らかになっている筈だガ」

「明智さんはこの写真見覚えある?」

「…………いや。全く覚えがない」

記憶を消されていない明智さんなら分かるのではないかと聞いてみたが、顎に手を当て考え込む仕草を見せた後首を振った。

「助手以外には前話したと思うが、ワタシの記憶では入学時からA組、B組、C組の3クラスに分けられ、三年間同じクラスで過ごしたのだ。クラス替えなどがあった記憶はない。ましてやこのような写真を撮った記憶も存在しない」

「そうなるとマオンの記憶が間違っているカ、それともこの写真が捏造された物かのどちらかだナ」

「モノカバが仕掛けた罠だろ!アイツがやりそうなことだぜ」

確かに他の証拠も加味して考えると、この写真がモノカバがうちらを惑わすために用意した罠である可能性が高い。けど、だからといって切り捨てるのも早計な気がする。

 

 

 

 

「いや…………待て」

明智さんが写真のある場所を凝視している。

「明智さん何か分かったの?」

「黒瀬敦郎クン。写真の自分の姿に違和感を覚えないかね?」

「オレの姿?別に変わったところなんか………あ!」

「耳元で大きな声を出すナ」

「オレピアス付けてるじゃねーか!?」

確かによく見ると、黒瀬君の右耳にピアスが付いている。

「前にも話したが、ワタシの記憶ではキミがピアスを付けていたのは卒業間近の時だ。少なくとも入学1年目ではない」

「それによく見ると他の人も微妙に容姿が違うね」

霞ヶ峰さんの髪の毛がセミロングじゃなくてロングヘアだし、飛田君は身長がここにいた時より高めに見える。

「つまりこの写真は卒業前、もしくはそれ以降に撮られたものということですか?」

「そうだ。そしてさっきも述べたがクラス替えがあった記憶はない。となると卒業後に撮られた写真である可能性が高い」

「妙な話だナ。クラスも異なり対して仲良くない連中と写真を撮ったということだろウ?」

大して面識のない人もうちらの中にはいた筈。それなのに卒業後集まって仲良く写真を撮るというのはちょっと変だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………皆さん、ちょっといいですか?」

全員が難しい表情をする中、ひときわ厳しい顔を浮かべる優月ちゃんがうちらを見渡す。

「どうしたの?そんな怖い顔して」

「ここでハッキリさせておかなければならない事があります。場合によっては私達の信頼関係に大きく影響する重要なことです」

優月ちゃんは、写真の話になってから()()()()()()()()()彼女に視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は何者ですか?北条業」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

名前を呼ばれた業ちゃんは、優月ちゃんを睨みつけるも口を開く様子はない。

「この写真、ここに閉じ込められた他の生徒は全員写っているにも関わらず、貴方だけ写っていません。それに希望ヶ峰学園入学者名簿にも貴方の名前はありませんでした」

「あー、そういえばそうだな………」

「昨日の麻衣子の言葉も気になります。彼女は貴方が何かを隠しているような事を言っていました。もし貴方が私達の仲間であるなら、隠し事をするべきではないと思いますが?」

優月ちゃんはそう言うと、うちの方をチラッと見た。

彼女が業ちゃんの正体を知りながらこのような小芝居を打った理由。

それは多分、業ちゃんに自分から打ち明けて欲しいと考えたからだろう。

人に指摘されるのと自分から言い出すのでは、その後抱く印象が大きく異なる。

要は嘘はバレる前に自白した方が罪が軽くなるという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………一理あるナ。それに一人だけ才能が分からない、というのもよく考えればおかしな話ダ。貴様は自分の才能を思い出せないと言っていたガ、本当は才能を隠しているだけなのではないカ?」

ジャック君は腕を組み直し無言の業ちゃんに問いかける。

「業ちゃん。うちもあなたの事信じたいよ。さっきも言ったけど、別に怒ってるわけじゃないんだよ。うちはただあなたが心配なの。その隠し事であなたが悩んでいるんじゃないかってさ。もし全員に聞かれるのが嫌だったらうちだけにでも………」

「………分かりました」

うちの言葉を遮り、彼女は口を開いた。

「本当は凛さんと二人きりの時話したかったんですけど、このままだとなんだか色々疑われて面倒な事になりそうだから話しますよ。その女に諭されたのが最高にムカつきますけどね」

「そうですか。分かってくれたなら何よりです」

「チッ…………。いいですか、一度しか言わないからよく聞いて下さい。私は…………()()()()()()()()()()()()()()()本科生じゃありません」

業ちゃんの言葉にうちと優月ちゃん以外のみんなは一瞬黙った。

「予備学科………?じゃ、じゃあ業の才能は?」

「そんなものありませんよ。だって私ただの一般人ですもん。最初聞いた時びっくりしましたよ。私だけ予備学科生で、他の人は全員本科の才能持ち。だから隠したんですよ。予備学科生が紛れてるとなると、疑われるのは間違いなく私ですからね」

「…………筋は通っているナ」

「ふむ。キミは初めから自分が超高校級の生徒ではないと把握していたという訳か。なら記憶の方はどうなのかね?ワタシと同じように予備学科のキミだけ記憶を消されていない、という線も考えられると思うが」

「もしそうであればとっくに凛さんに伝えてますよ。私は予備学科出身である事以外、皆さんと全く同じなんです。はい、説明は以上です。もういいですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

「…………本当にそれだけですか?」

「…………は?」

嫌々説明をし終えた業ちゃんに対して、優月ちゃんはさらに追求する。

「他に隠している事はないのか、と聞いているんですが」

「………しつこいですね。私の隠していた事はこれだけです。次喋ったらお前の鼻削ぎ落とすぞ」

「…………」

違う。業ちゃんは嘘をついている。まだ肝心な事を話していない。

自分が()()()だという事実を。

「業がこう言ってるんだからいいんじゃねーの?ひとまず話してくれたってだけでも十分だろ」

「霜花優月クン。これ以上の詮索は尋問行為になる。ワタシ達は共に脱出を試みる仲間なのだろう?なら仲間同士でそういった行為は控えるべきだとワタシは思うがね」

それを知らない黒瀬君と明智さんは業ちゃんを庇う姿勢を見せる。

「………その通りです。分かったかこのクソ女」

「…………そうですか。ならいいです。すみません、話の腰を折ってしまって」

優月ちゃんは諦めたようにため息をついた。

そしてうちの方をチラリと見た。

多分、『私には手には負えません。後は凛に任せます』とでも言いたそうな表情だ。

了解、という風に軽く頷いておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ次はうちらが報告するね」

代表してうちが探索の成果を報告する。

「お、おい………!これってどういう事だよ!?」

中澤君のノートを見た黒瀬君は信じられないといった様子でバンと立ち上がる。

「翼が………翼が『絶望の残党』って事かよ!?そんな筈ねえよ!!だってアイツは………!」

「黒瀬敦郎クン、少し落ち着きたまえ」

そんな黒瀬君に明智さんは座るように促す。

「キミの仲間を信じたい気持ちは理解出来るが、すぐ興奮するのは悪い癖だぞ」

「………悪ぃ」

その一言で冷静になったのか、ばつが悪そうに彼は大人しく座った。

「けど普通に考えて、中澤さんが『絶望の残党』なのは明らかですよね?」

業ちゃんがノートを指差しながらそう言う。

「じゃなきゃこんなノート見つからないでしょう」

「………あの男と同じ『絶望の庭』所属のスパイ、ということカ?」

「そう考えるのが自然です」

あの男、というのはもちろん分倍河原君の事だ。

「では、翼が脚男を殺したのも、そして自身がオシオキされたのも『絶望の庭』の黒幕による『シナリオ』という事ですか?」

「そうなるナ。だガ、死ぬ直前のツバサからはとてもシナリオ通りに進んだ事による余裕は見られなかっタ。むしろ死にたくないという常人の反応だっタ」

「ならそれも演技だったんじゃないですか?」

中澤君の正体について色々な考察がされる。

本当に彼も分倍河原君と同じように絶望の残党なのだろうか?

「だが、仮に彼が『絶望の庭』所属のスパイであるとするなら、スパイの半分は判明した事になる」

「そうですね。スパイは4人いると雪は言っていましたから」

既に判明しているのは分倍河原君のみで、後の3人は分からない状態だった。

もし中澤君がそうであるのなら、残りのスパイはあと2人。

 

 

 

 

 

「香織ちゃんの日記についてはみんなどう思う?」

「どう思うも何モ、俺達の記憶が消されたのは確実だとしか言えないだろウ。まあこの日記が捏造でなければの話だがナ」

「ですがこの日記、香織が書いた本物の文章な気がします。うまくは言えませんが、やや堅苦しいところとか、凛を信頼しているところが香織っぽいです」

「筆跡を見ましたが間違いないです。これは銀山さんが書いたものです」

「ふむ。筆跡で判断出来るのか。本当に多芸だなキミは。予備学科出身なのが不思議なくらいだ」

「あなたに褒められると虫唾が走るのでやめてもらっていいですか」

「いや褒めてるんだから素直に礼言えよ……」

みんなもうちと同意見だった。

うちらはやはり3年間の記憶を消されている。

そして今は18歳。

当たり前だけど、うちは自分が18歳だとは全く思えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて。次は私達の番だな」

最後は明智さん、ジャック君グループだ。

「おい麻音、頼むから短く話せよ」

「何を言っているんだ黒瀬敦郎クン。ワタシの話はいつでも簡潔明瞭。あまりのワタシの素晴らしい話術に周りの人間は絶賛。そんな『世界一話術に長けた探偵』とまで呼ばれたワタシが誰もが聞いて飽きてしまうような長い話をするわけが………」

「それだよそれ!!全然分かってねーよコイツ!」

「この人本当にアホですね」

「……ジャック。報告をお願いしてもいいですか?」

「……こうなるとは思っていタ」

深くため息をついてジャック君が目の前のファイルを広げる。

「ま、待て。報告ならワタシが………」と言いかける明智さんを「うっさいです」と業ちゃんが一喝して黙らせてしまった。

明智さんは「………そうか」と呟いてガクンと首を下げてしまった。

…………そんなに自分で報告したかったんだ。

ちょっとかわいそうに思えてきてしまった。

 

 

 

 

「これを見ロ」

ジャック君が手に持つファイルの表紙には『希望ヶ峰高校・大学関連資料㊙︎』と書いてあった。

「………あからさまに怪しいファイルですね」

「大学?希望ヶ峰学園が経営する大学って事?」

「そんなのあったか?」

「次のページからの記述を見れば分かル」

そう言って彼は早速ページをめくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・(新)希望ヶ峰学園 

 

 旧希望ヶ峰学園で発生したコロシアイ学園生活の終結後、未来機関によって再建された新しい学園を指す。

 絶望の残党の脅威が去ったと判断した未来機関は、新たな時代の光となる希望に満ち溢れた生徒を育成する為、旧希望ヶ峰学園を取り壊し新しい希望ヶ峰学園を設立したのである。

 ちなみに設立したのは未来機関であるが、実際に経営を行なっているのは未来機関ではなく、各地から集められた元超高校級の生徒である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………と、表向きはそうなっているが、実際は全人類再絶望化計画の為に未来機関内に潜り込ませた我々の仲間が工作した結果再建された学校である。

 新たに入ってきた新入生を絶望化させ、兵力として運用する為の養成機関に過ぎないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

【クラス分けの基準】

 

希望ヶ峰学園第88期生51名は、基準に従いA組、B組、C組の3組に分けられる。

A組………入学者の中でも特に全人類再絶望化計画遂行時戦力になると予想される者

B組………運動系の才能、又は運動系に近い才能を持つ者

C組………文化系の才能、又は文化系に近い才能を持つ者

 

 

 

A組の基準に疑問を抱く教師が複数いたようだが、それについては既に対処済みである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

希望ヶ峰学園第88期生 入学者一覧

 

 

 

 

A組

相川 凛【外国語研究家】

明智 麻音【探偵】

天草 京介【神父】

綾辻 澪【軍医】

霞ヶ峰 麻衣子【動画投稿者】

喜界島 造 【機械工】

銀山 香織【棋士】

車丘 平五郎【運び屋】

ケヴィン マイケル【ハッカー】

ジャック ドクトリーヌ【医者】

司 拓郎【秀才】

灰掛 威和男【鍵師】

原 薬子【薬剤師】

益谷 保人【投資家】

万斗 輝晃【情報屋】

湯川 キリコ【物理学者】

宵崎 ひまり【完全記憶能力】

 

 

17名

 

 

 

 

 

B組

蒼葉 和【達人】

飛鳥 圭【スリ】

風神 雷哉【喧嘩屋】

黒瀬 敦郎【バスケ部】

無悪 烈火【不運】

霜花 優月【狙撃手】

不知火 椿【くノ一】

武井 王【十種競技王】

百々海 真凛【水泳選手】

飛田 脚男【バイク便ライダー】

中澤 翼【フットサル選手】

錦織 清子【テニスプレーヤー】

ハルク ゴンザレス【ボディビルダー】

分倍河原 剛【空手家】

本川 佑也【サッカー選手】

結城 晴翔【バトミントン部】

幸村 雪【激運】

 

 

17名

 

 

 

 

C組

円城寺 霊夜【オカルト研究家】

北桜 千尋【ピアニスト】

北桜 八尋【作曲家】

喜屋武 流理恵【調理部】

近藤 笑美【芸人】

佐々木 莉央奈【かるたクイーン】

柴崎 武史【歴史学者】

写実 真平【カメラマン】

鈴原 歌音【合唱部】

千野 李玖【茶人】

立華 流流花【スタイリスト】

手ノ森 弘美子【漫画家】

問井 新斗【自宅警備員】

独島 灯里【サブカルマニア】

桃林 林檎【グルメリポーター】

薬師院 月乃【女将】

夢寺 蓮【マジシャン】

 

 

17名

 

 

 

計51名

 

 

 

 

 

 

・希望ヶ峰大学

 高校で自分の才能を磨き上げ、そして更なる才能の研鑽を望む生徒の為に設立された国内最高峰の大学。より専門的な技術、知識を身につけながら自分のやりたい事に打ち込める学術機関であり、世界に羽ばたく人材の育成を大きな目的としている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、こちらも表向きの話であり、実際はより質の高い絶望化した生徒を作り出し、全人類再絶望化計画を速やかに遂行する為の施設である。

近年では教育の高度化が進み、絶望の残党と化した希望ヶ峰学園77期生の更生に使用された『新世界プログラム』の技術を応用した、絶望化をより効率的に進められる設備も用意されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

希望ヶ峰大学 入学者データ

 

 

※取扱注意

 

 

 

 

グループ①

 

 

 

LA001

氏名 相川 凛

性別 女

才能『超高校級の外国語研究家』

 

 

【特徴】

才能は平凡だが、その類稀なコミュニケーション能力は全人類再絶望化計画の遂行において大きく役立つと予想される。

本人の絶望化も順調である。

 

【備考】

頭脳に少し不安な点あり。その為彼女のブレーンとなる存在を複数補佐に付ける事を推奨する。

 

 

 

 

 

 

 

MA002

氏名 霞ヶ峰 麻衣子

性別 女

才能 『超高校級の動画投稿者』

 

 

【特徴】

能力値は全般的に平均以下だが、動画投稿者としての多くの人間を惹きつけるカリスマ性、そして精密機械等への造詣が深い事は評価点である。

また、絶望化の進行が最も早く、味方集団を扇動する役割を持てるのも評価出来る。

 

【備考】

運動能力が著しく低く、素のコミュニケーション能力も低い為後方支援部隊に配置する事を推奨。

 

 

 

 

 

 

MC003

氏名 喜屋武 流理恵

性別 女

才能 『超高校級の調理部』

 

 

【特徴】

心優しく穏やかな性格であり他者から非常に信頼されている生徒。

しかしその優しさが絶望化を邪魔しており、また争い事を嫌う故に期待値は低い。

 

【備考】

食事への拘りが強く、食を冒涜する行為、言動は彼女の暴走に繋がる為留意すべし。

 

 

 

 

 

 

 

SA004

氏名 銀山 香織

性別 女

才能 『超高校級の棋士』

 

 

【特徴】

将棋で培った大人顔負けの判断力と冷静さを併せ持ち、性格も理性的で周りからの信頼も厚い。それ故司令部等で欠かせない存在となる事が予想される。

 

 

【備考】

下品な話題や猥談は彼女にとってNGであり、それを聞くとパニックに陥ってしまう可能性がある為、現地でそのような会話は避けること。

 

 

 

 

 

 

 

MB005

氏名 黒瀬 敦郎

性別 男

才能 『超高校級のバスケ部』

 

 

【特徴】

身体能力がずば抜けて高く、力関係で戦力になる事が大いに期待される。

また、猪突猛進な性格ゆえ絶望化の経過もすこぶる順調である。

しかし頭の回転が非常に鈍く、作戦行動に支障をきたす可能性がある事には留意するべきだろう。

 

 

【備考】

前述の通り性格は直情型であるため、彼の手綱を握る人物を側に置く事を強く推奨する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

MC006

氏名 柴崎 武史

性別 男

才能 『超高校級の歴史学者』

 

 

【特徴】

特に特徴のない一般的な生徒という印象が見受けられた。

才能も実用性が低い上に本人の向上心も低い。

 

 

【備考】

陰で怪しい行動をしているという報告が複数上がっている。

未来機関が送り込んだ密偵の可能性もあるため、最警戒人物として引き続き監視を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

MB007

氏名 霜花 優月

性別 女

才能 『超高校級の狙撃手』

 

 

【特徴】

非常に優れた狙撃能力と大抵のことでは動じない冷静さを備える生徒。

親しい者以外とのコミュニケーションには問題が残るが、最前線でも十分活躍出来るポテンシャルを持っていると言える。

 

 

【備考】

相川凛との接触後、絶望化の進行が顕著になっている。良い傾向と言えるので、引き続き彼女らに交流を促していく。

 

 

 

 

 

 

 

MA008

氏名 ジャック ドクトリーヌ

性別 男

才能 『超高校級の医者』

 

 

【特徴】

大人の医者顔負けの医療技術を持つ生徒。協調性の低さが気になるが、それ以外の能力はどれも高水準でまとまっており優秀な人材である。

全人類再絶望化計画の要となるのは間違いないだろう。

 

 

【備考】

以前に比べて改善されてはいるが、その高圧的な性格故他者との口論によるトラブルを起こしている。絶望化への影響がないとは言い切れない為、見かけたら仲裁に入ること。

 

 

 

 

 

 

 

 

MC009

氏名 千野 李玖

性別 男

才能 『超高校級の茶人』

 

 

【特徴】

喜屋武流理恵と同じく、穏やかで争い事を好まない静かなタイプの生徒。

才能は実用性が低く、前線での活躍は見込まれない。

 

 

【備考】

模範的な生徒であり、特に問題点は見られない。

 

 

 

 

 

MC010

氏名 独島 灯里

性別 女

才能 『超高校級のサブカルマニア』

 

 

【特徴】

成績不振、寝坊、講義中の居眠りなど問題点が非常に多い生徒である。

教授陣も手を焼いており、大学に入ってもこのまま素行不良が続けばじきに停学処分が下されるだろう。

いずれにせよ実用的な才能や能力を持ち合わせていないことは確かである。

 

 

【備考】

行動が予測不可能な為、希望ヶ峰学園絶望化計画の邪魔をされないよう細心の注意を払うべし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

MB011

氏名 飛田 脚男

性別 男

才能 『超高校級のバイク便ライダー』

 

 

【特徴】

内向的な生徒で他者との交流を極力避けている印象が見受けられる。

ただ、周りの生徒に振り回されている彼の姿を見ると、人と話すのが嫌いという訳ではなさそうである。

才能の影響か走力が非常に優れており、多くの活躍の場が見込まれるであろう。

 

 

【備考】  

よりスムーズに絶望化を進行させるため、よりいっそう他者と交流させることを推奨する。

 

 

 

 

 

 

SB012

氏名 中澤 翼

性別 男

才能 『超高校級のフットサル選手』

 

 

【特徴】

同年代の生徒と比べて非常に大人びている生徒。客観的に物事を捉えられる為、貴重な調整役となる事が予想される。

しかしリーダーとして大勢を引っ張っていくタイプではないので、今のようにサブリーダーとして陰で支える役割を与えるべきだろう。

 

 

【備考】

感情の起伏が少ない事から、他の被験者と比べて絶望化の進行に遅れが生じている。故に何らかの対策を講じる事を推奨する。

 

 

 

 

 

 

LB013

氏名 錦織 清子

性別 女

才能 『超高校級のテニスプレーヤー』

 

 

【特徴】

明るく朗らかな性格でかつ面倒見のいい、姉のようなポジションの生徒である。

学業、運動共にそつなくこなし、コミュニケーション能力も高く、クラスを引っ張っていくリーダーシップも備えている。

模範的な生徒と言っても過言ではないだろう。

 

 

 

 

【備考】

特に問題点等は見られない。

 

 

 

 

 

 

MB014

氏名 分倍河原 剛

性別 男

才能 『超高校級の空手家』

 

 

【特徴】

学年で一番大きな体格の持ち主であり、よく他生徒から力仕事を頼まれている場面を見かけた。

寡黙であるが気は優しく、教師からも一定の信頼を置かれている。

絶望化の経過は遅めではあるが、十分追いつく事は可能である。

 

 

【備考】

異性との会話を苦手としている為、作戦行動の際には人員構成に注意を払うべし。

 

 

 

 

 

015

氏名 北条 業

性別 女

才能 なし

 

 

【特徴】

希望ヶ峰学園予備学科に所属していた生徒。()()()からの進言により、予備学科出身でありながら特例でこの希望ヶ峰大学に入学を許可された。

(基本的に予備学科出身の生徒が希望ヶ峰学園への入学を許可される事は無い)

旧姓は『不破 業』という名前であり、その正体は数多くの人間や建物を燃やし続けた史上最悪の放火魔である。入学直前に苗字を変え、正体を隠して学園に入学したとされるが、その詳細は不明である。その残虐性は予備学科に入学しても変わらず、本校舎のとある生徒に嫌がらせをしていた予備学科生3人が無惨に殺害された事件も全て彼女の犯行によるものだとされている。

 

 

【備考】

上記にある通り、ある人物Aに異常な程の執着を見せている。

北条業の行動原理は全てAにあると言ってもいいだろう。

 

 

  

 

 

MA016

氏名 万斗 輝晃

性別 男

才能 『超高校級の情報屋』

 

 

【特徴】

勉学、運動共平均程度の成績であり、かつ小柄な普通の少年である。

しかし情報収集能力が非常に高く、全人類再絶望化計画の達成には欠かせない存在と言えるだろう。

 

 

【備考】

猥談を異常な程好む生徒であり、その性欲から暴走する可能性も低くはない。

前述の銀山香織等の一部女子生徒へは、彼と接触を控えるよう注意喚起するべきであろう。

 

 

 

 

 

 

 

MB017

氏名 幸村 雪

性別 女

才能 『超高校級の激運』

 

 

【特徴】

見た目は普通の少女だが、所持する才能は『自身が願えば全ての望みが叶う』という規格外のものである。

彼女はこの才能を忌み嫌っているが、この才能を全人類再絶望化計画の遂行の為利用しない手はないだろう。

 

 

【備考】

明るく誰に対しても友好的に接するポジティブな生徒であるが、過去の事故の影響か、実は精神面は非常に脆い。カウンセラー等による献身的なサポートが必要である。

 

 

 

 

 

 

 

 

MA018

氏名 明智 麻音

性別 女

才能 『超高校級の探偵』

 

 

【特徴】

非常に頭の切れる少女であり、クラス内では勉学等で頼りにされていた印象である。銀山香織と共に全人類再絶望化計画の遂行の際は頭脳面で大きく貢献してくれることであろう。

 

【備考】

自由奔放な性格であり、フラフラと出歩き行方不明になることが多々あった。

大学でも常に彼女の行動に気を配る必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ちょっと待って。情報量が多すぎる」

うちは一度ファイルから目を離すと、ため息をつきながら目を閉じる。

あまりにも知らなかった事が多すぎて、これ以上見たら頭がパンクしそうだ。

「みんなも情報を詰め込みすぎちゃうと疲れると思うから、ちょっとくらい休憩しても………」

他の人にも提案しようとしたその時だった。

「助手。こっちへ来い」

「えっ!?ちょっ、明智さん!?」

うちは突如手を明智さんに引っ張られた。

そして自然と明智さんの隣へと来る。

「キミは少し下がっていたまえ」

「ど、どういう事?」

「少々荒事になる」

明智さんはそれだけ言うと、()()()()にいつも持ち歩いているパイプを向けた。

「北条業クン。キミはさっきこう言ったな。『自分の秘密は予備学科出身である事だけだ。他に隠している事は何もない』と。なら、これはこれについてはどう説明するのかね?」

彼女はさっきのファイルに書かれている情報の事を言っているのだろう。

業ちゃんの旧姓は『不破』で、世間を騒がせた放火魔である。

柴崎君とうちと優月ちゃんしか知らなかった事実。

「…………」

その業ちゃんは真顔で黙っている。

「もし貴様が本当にあの放火魔であるならバ………、俺は貴様を許さなイ」

「ジャック君!?駄目だよそんな物出したら!!」

ジャック君は懐からメスを取り出してそれを突きつける。

「流石にオレでもうさんくせーのは分かるぜ。業、テメーなんで嘘ついたんだよ?」

「………やはり貴方は危険な存在のようですね」

黒瀬君、優月ちゃんも立ち上がり警戒態勢を取る。

「待ってよみんな!?」

「助手よ。この事実だけは見過ごすわけにはいかないのだ。これは今後ワタシ達が共に行動する上で………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の甲高い笑い声が食堂に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「業、ちゃん………?」

「本っっっっっ当に鬱陶しい連中ですねえええええ!!!!私と凛さんの仲を邪魔ばっかりして…………どれだけ私を苛立たせれば気が済むんですかああああああああ!!!!!!」

椅子を蹴り倒し狂ったようにそう叫ぶ業ちゃん。

「それがキミの本性かね?…………醜いな」

「そうです、そうですよおおおお!!!私は世間を騒がせた放火魔、北条業ですううううううううう!!!!!」

「業ちゃん………!!」

うちはその場にへたり込んでしまった。

「凛さん。そこで待ってて下さいね。邪魔者はこの業が全て排除します」

業ちゃんはうちに向けてニッコリ笑うと、周りのみんなに鋭い視線を向けた。

「それでええええ?私をこれからどうするつもりですかあああ?もしかして集団リンチして殺しちゃいますううう?」

「そんな物騒な事はしない。だが一時的に拘束させてもらう。さっき霜花優月クンに仲間同士といった言葉をかけたワタシが言うのもおかしな話ではあるがな」

「………あなたに出来るんですかあああ?この中で一番非力なあなたにいいい?」

「ワタシ一人では無理だろう。だが今の状況を見たまえ。体格に優れた黒瀬敦郎クンにに武術に秀でた霜花優月クン、そして男であるジャック・ドクトリーヌクンもいる。人数の差では圧倒的に有利だ」

「…………………」

「大人しく投降してくれたまえ、北条業クン。キミに危害は加えるつもりはない。ワタシ達はそのような事をしたくないし、何よりも助手を悲しませる事になってしまうからな。だが、今のキミを野放しにするのは危険すぎる。自分の正体について嘘を吐いていた点も含めて聞きたいことがたくさんある。だがら素直に………」

 

 

 

 

 

 

 

「4人ならば私を抑えられるとでも?それはとんだ大きな間違いですよおおおおおおお!!!!!」

明智さんが言い終わる前に業ちゃんは彼女に向かって突進していた。

「下がってろ麻音!!!」

黒瀬君が明智さんの前に立つ。

「テメーいい加減にしろよ!!!!」

「ゴミ虫が何か言いましたかあああああ???」

黒瀬君が業ちゃんを押さえつけようとする。

普通なら力勝負では黒瀬君の方が強いのは明らかだ。

彼自身も自分そう思っていただろう。けど………

「痛ってぇ!?」

「敦郎!?」

黒瀬君の腕や腹に切り傷が付いていた。

業ちゃんが手に持っていたのは………果物ナイフだった。

「テメー………!そのナイフどこで………」

「遊園地の武器庫から盗んだんですよおおお!!こんな事もあろうかと盗んでおいて正解でしたねえええ!!」

果物ナイフを見た瞬間、うちは武器庫のリストを思い出した。

前回の事件で持ち出された物以外に、所在が不明な武器がいくつかあった。そのうちの一つに確か果物ナイフが入っていたはず。

見張りの目を掻い潜り盗んだとしか考えられない。

「業ちゃんやめて!!!お願いだから!!」

「あはっ♪凛さんが私を応援してくれます………!!私頑張ります!!すぐ終わらせますから!」

うちの必死の呼びかけも全く聞いていない

止めないと。でも、足が動かない。

彼女の狂気に満ちた顔を見てから足がすくんで動けないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ以上好き勝手にはさせません………!」

今度は椅子の影から優月ちゃんが飛び出し、業ちゃんにむけて突進した。

そして手にあるナイフを奪おうとする。

しかし業ちゃんはそれを避けると優月ちゃんの首元に向けてナイフを振り下ろした。

「ッ………!」

しかし優月ちゃんはそれを間一髪で躱すと、後ろに下がり距離をとった。

「本気で私達を殺す気みたいですね………。貴方正気ですか?ここで殺人を犯したら何が始まるか忘れたわけではないでしょう」

「黙れこのクソ女があああああ!!私はお前を殺したくて殺したくてしょうがないんだよ霜花優月いいいいい!!!!!!!私の凛さんを傷物にした犯罪者が凛さんと馴れ馴れしくしてんじゃねえよおおおおお!!!!!」

「………まるで悪魔ですね」

「ユヅキ、手を貸すゾ」

「ありがとうございます。では私が注意を引くので、ジャックは後ろから彼女を抑えて下さい。あと、決して無理はしないようにお願いします」

「分かっタ」

「オレもまだ全然やれる!」

「敦郎は凛と麻音を守って下さい。いざという時守れるのは貴方しかいません」

「分かったぜ!」

うちにも聞こえる小声でそう言うと、優月ちゃんは正面に立ち、

「凛は私の大事な友達です。貴方みたいな人間の皮を被った悪魔には相応しくありません」

「お前………今何て言いましたか?」

「貴方には相応しくない、と言ったんです」

「霜花優月いいいいいい!!!!!!!!

業ちゃんは見た事ないような形相でナイフを持ちながら走り出した。

「大人しくしロ!!!!」

「なっ!?」

しかし回り込んでいたジャック君が業ちゃんを羽交い締めにした。

「離せええええええ!!!!!」

「コイツ………なんて力ダ………!」

「駄目です!握る力が強すぎてナイフを奪えません!!」

しかし予想外だったのは、男のジャック君さえも上回る力を持っていた事であった。

「オレも手伝う!!」

まずいと感じたのか黒瀬君が業ちゃんの方へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「どいつもコイツも邪魔なんだよおおおおお!!!」

しかし、時すでに遅し。

業ちゃんは無理矢理拘束を振り解くと、後ろを振り向きジャック君を切りつけた。

「ウッ………!」

「ジャック!!?………ぐぅっ!?」

そして優月ちゃんの腹に蹴りを入れると、そのまま覆い被さった。

「ぐっ………!離して下さい………!」

「………やっとあなたを殺せる時が来ましたね。ふふ、この瞬間をどれほど待ち侘びた事か」

ケタケタと笑いながら馬乗りになり優月ちゃんが動かないように固定する。

「お前はまず串刺しにしてから全身バラバラにして燃やしてやる。そしてその火でキャンプファイヤーをするんだよ。凛さんと楽しく踊りながらなあああああ!!!」

そのままナイフを振りかぶり優月ちゃんの首めがけて刺そうとする。

止めないと。

お願い…………。自分の足動いて………!!

「やめろ馬鹿野郎!!!!」

「もうやめて!!!!」

そこに黒瀬君がタックルをかまして業ちゃんを突き飛ばす。

そしてうちが業ちゃんにしがみつく。

「り、凛さん!?」

「もうやめてよ!!!!元の業ちゃんに戻ってよ!!!」

涙を流しながらそう訴える。

非力なうちに出来ることは必死に言葉で呼びかける事だけだ。

「……………………」

業ちゃんはしばらく動かずに黙っていた。が…………。

 

 

 

 

 

 

 

「もう、凛さんったらしょうがないですね♪」

 

 

 

 

 

 

そう言うとあっさりナイフをしまった。

「…え?」

「他ならぬ凛さんの頼みであればしょうがないですね。今は殺すのだけは無しにしてあげます」

「で、でも………。さっきはうち以外の全員殺すって………。うちの言う事も全然聞いてくれなかったし………」

「ん?何の事ですか?今日、私が凛さんにやめてと頼まれたのは今のが初めてですよ?」

「…………」

その回答にうちは本能的に恐怖を感じた。

………聞いていない、ではなく覚えていない? 

「貴様………。こんな事をしてただで済むと思うのカ?」

「知りませんよそんなの」

業ちゃんはそう吐き捨てるとゆっくり立ち上がった。

「やはり私には凛さんしかいません。あなた達と関わるのはもうこれっきりにします」

「待ちたまえ北条業クン。ワタシ達は何一つ納得していないぞ!」

「敵に待てと言われて待つ馬鹿がどこにいるんですか?言っておきますけど、あなた達はいずれ私が必ず殺します。そして私は凛さんと二人きりの空間を満喫するんです」

「待って………!待ってよ業ちゃん!!」

「凛さん。後で私の部屋に来てください。凛さんが来るまで私…………ずっと待ってますから♪」

そう言い残すと彼女は食堂を出て行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「業ちゃん…………」

「済まない、助手」

うちが呆然としていると、明智さんがうちに謝ってきた。

「まさか彼女がここまで暴走するとは思ってもいなかった。よく考えれば『放火魔』と呼ばれるくらいだから人格が破綻している事は明らかだ。それを少し甘く見ていたようだ。拘束して話を聞く、というやり方は悪手だったのかもしれない」

「ううん。明智さんは間違ってないよ。あんな記述見たら業ちゃんを警戒するのは当然のことだし」

放火魔、というワードを見たら誰もが警戒して動きを封じたいと考えるだろう。

それに嘘をついていたというのも事実だ。

どうして嘘をついたのか疑問に思いそれを聞き出そうとするのは当たり前の話だと思う。

「3人とも大丈夫?ごめんねうち何も出来なくて………」

「貴様が謝る必要は無イ。俺達が勝手にやった事ダ」

「そうだぜ凛!!」

「むしろ謝るのはこちらの方です。業を複数人で追い詰めるようなやり方をして、その結果状況を悪化させてしまいました。もう少し考えて行動すべきだったと反省しています」

3人とも、軽い切り傷はあるけど大きな怪我はしてないみたいだ。

うちはほっと胸を撫で下ろした。

 

 

 

 

 

 

「しかしアイツが放火魔だったとはなー」

「才能が分からないと聞いた時から怪しいと思っていたガ、まさか犯罪者だったとはナ」

「これからどうしますか?正直、彼女はもう私達の手には負えないと思いますが」

「北条業クンはワタシ達を本気で殺そうとしている。ならワタシ達から接近するのはリスクが高いと言わざるを得ないな」

「けど、凛の言うことだけは聞くんだろ?」

「うん。業ちゃん、うちの事だけは信じてくれてるみたいだし」

「だとしても凛だけに業を任せるわけにはいきません。何か対策を考えないと………」

なんて事を相談していると、突然食堂の扉が開いた。

「うわー。随分と派手に暴れたもんだねー」

「業さん………。なんだよ、本性を隠してる人ばっかりじゃないか………」

「おやおや皆さん。また仲間割れですかな?」

入ってきたのは独島さん、万斗君、千野君の3人だった。

「………何の用ですか?」

「いやいや、一階を探索していたところ食堂で騒ぐ声が聞こえまして。何だろうと気になって来てみたら北条殿が大暴れしてるじゃないですか。だから拙僧らは入口付近でその様子を見ていただけですよ」

千野君は馬鹿にするかのように話す。

「傍観していたという訳か。趣味がいいとは言えないな」

「仲間でもないあなた達を助ける理由もありませんので」

「李玖………テメー本当にどうしちまったんだよ?」

「どうしたもこうしたもありませんよ、黒瀬殿。私は相川殿の洗脳から解放されただけです」

「洗脳って………!」

「まーまー両者とも落ち着いてってー。別にわたしたち喧嘩しに来たわけじゃないでしょー?」

殺伐とした雰囲気になる中で、独島さんがのんびりと仲裁に入る。

「何ですかな独島殿?邪魔立ては不要です」

あからさまに不機嫌な顔をする千野君。

「そう怒らないでー。あ、そーだー。みんなにちょっと伝えたいことがあったんだー。聞いてくれるー?」

「なんだよ。今それどころじゃ………」

「『絶望の庭』に関すること、って言ったら聞いてくれるー?」

「………………!!」

私達の命を脅かす存在の名が彼女の口から出た瞬間、ほぼ全員が言葉を噤んだ。

「独島殿?何を言うつもりですか………?」

唯一口を閉じなかった千野君が不可解だという風に尋ねるが、独島さんはまぁまぁと手で待てとジェスチャーした。

「みんな黙ってくれるなんて優しいねー。じゃあ重大発表しまーす。実はーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独島さんは一歩前に出ると、ゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしが『絶望の庭』所属のスパイで〜す☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生存者

 

 

LA001 相川 凛《外国語研究家》

MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》

MC003 喜屋武 流理恵 《調理部》

SA004 銀山 香織《棋士》

MB005 黒瀬 敦郎《バスケ部》

MC006 柴崎 武史《歴史学者》

MB007 霜花 優月《狙撃手》

MA008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》

MC009 千野 李玖《茶人》

MC010 独島 灯里《サブカルマニア》

MB011 飛田 脚男《バイク便ライダー》

SB012 中澤 翼 《フットサル選手》

LB013 錦織 清子《テニスプレーヤー》

MB014 分倍河原 剛 《空手家》

015 北条 業 《希望ヶ峰学園予備学科生/放火魔》

MA016 万斗 輝晃 《情報屋》

MB017 幸村 雪 《激運》

MA018 明智 麻音《探偵》

 

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