ダンガンロンパ キャンパス   作:さわらの西京焼き

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前回と同じでかなりグダりました。読みづらくてすみません。


プロローグ3

1F 食堂

 

 

次にうちらが向かったのは1階にある食堂だった。食堂はさっきの保健室と同じく、規模はうちが想像してたよりも遥かに大きかった。

恐らく500人は余裕で入れるだろう。だが、普段は大賑わいであろうこの場所も、誰もいないとやはり少し不気味に見えてしまう。

造りはいたってシンプルで、1台につき10人は座れるだろう綺麗なテーブルとイスが端から端までずらりと並んでいる。また、1人で食べたいという人の為に、窓際には1人席がちゃんと用意されていた。

壁には食堂の利用方法が書かれた手書きの張り紙が貼ってあるが、恐らく新入生も安心して利用出来るように食堂の人が作ったのだろう。ただ、字が絶妙に汚いのが少し気になるが…

 

「やはり誰もいないか…」

「そうだね。あ、奥に厨房とカウンターがあるみたいだよ」

奥へ進むと厨房と大量のサンプルケースが置いてあるカウンター、そしてレジがあった。

「ここはどうやって利用するんだ…?相川」

そこで銀山さんは不思議そうにサンプルケースを見つめている。

「もしかして…銀山さんってこういう形式の食堂とか使った事ない?」

「じ、実はそうなんだ…中学では忙しくてあまり学校に行けなかったせいか、恥ずかしながら一緒に食事を摂る友達がいなくてな。

こういう学生食堂の類は一度も利用した事はないんだ」

銀山さんは少し恥ずかしそうに顔を赤らめながらそう言った。やばい、可愛い。

「じゃあ今度一緒に食べようよ!!後で教えるから!うちらもう友達でしょ?」

「い、いいのか…?私達、まだ知り合って間もないが…」

「うちは会った瞬間からその人は友達って決めてるんだ!だから銀山さんとももう友達!」

「そうか…感謝する。相川。では今度是非一緒に…」

 

「誰ダ?貴様らハ」

すると、銀山さんが言い終わらないうちに、厨房から1人の男子が出てきた。顔立ちからして外国人のようだ。黒縁の眼鏡を掛けており、服は白衣を着ている。なんか見た目は完全に科学者だけど実際どうなんだろう。というかイケメンすぎでしょ。系統はヨーロッパとかそこら辺だと思うけど、モデルと間違えられてもおかしくないくらいの美貌だ。

 

「私は超高校級の棋士、銀山 香織だ。こっちは超高校級の外国語研究家の相川 凛」

「相川です。よろしくね!」

「……………………………」

うちが挨拶したにも関わらず、男子は何も言わなかった。黙ってこちらを見ている。

「あの…君の名前を教えてもらってもいいかな……」

「………………………………」

彼が何も言わないのでうちも黙らざるを得なかった。なんだか気まずい空気が流れる。

 

「ハァ…これ以上黙っていても時間の無駄カ…」

しばらくすると男子はため息をついて喋り始めた。

「なぜ初めから話さなかった?」

「貴様らが私の敵かどうかを見定めていタ」

「敵?」

「そうダ。だが貴様らからは敵意を感じなイ。特にそっちの貴様は一瞬で敵意が無いのが分かっタ。恐らく私と友達になろうとか呑気な事を考えていたんだろウ」

男子はうちの方を見て言った。

「え?うち?」

「貴様みたいな間抜け面をしたコミュニケーション能力だけ優れてそうで馬鹿そうな奴から感情を読み取るのは容易イ。」

え?また顔に出てたの…?というかシンプルにディスられたのが傷つく。泣きそう。

 

「だが、隣の貴様からははっきりと読み取る事が出来なかっタ。私はこれでも感情を読むことには自信があるんだがナ…」

その男子は銀山さんに疑いの目を向けた。

「私の感情が単に表情に出にくいだけだろう。それより、初対面の相手に随分と失礼な態度じゃないか。そんなに彼女の事が気に入らなかったか?」

「フン、私は間抜け面と馬鹿と非合理的な人間が嫌いでネ…まあ悪気はないから許してくレ」

いや絶対悪気あったでしょ。うちこの人嫌いだ。絶対性格悪いもん。

「そ、それより名前教えてもらってもいい?まだ聞いてないと思うんだけど…」

私は気を取り直して話しかけた。

「ほウ、あんなに言われてもまだ私に話しかけるカ…まあいいだろウ」

 

「私の名前はジャック ドクトリーヌ、医者ダ。貴様らと馴れ合う気は無イ」

 

 

[超高校級の医者] ジャック ドクトリーヌ

 

 

ジャック ドクトリーヌ…確か医師免許を取れる年齢じゃないにも関わらず、裏で数多くの人を救ったっていうニュースを見た事がある。人を救ったとはいえ、無免許で手術してたわけだから問題になってたけど結局どうなったんだろう。

「なるほど…ではジャック、君は私達と協力して行動する気は無いということでいいか?」

「必要最低限のコミュニケーションは取るガ、それ以外で干渉する気は一切無イ。貴様らより前に来た奴らにも同じ事を言っタ」

「なんでそんな事言うの…?みんなで協力した方がいいのに」

「群れるのが嫌いだからダ。後は信用出来なそうな奴が何人かいるからだナ。」

「信用出来なそうな奴…」

そう言ってジャック君は立ち去ろうとする。

「待って!!信用出来なそうな奴って誰?」

「フン、まあ忠告くらいはしてやるカ」

一瞬立ち止まったジャック君はうちらの方を向き、

 

 

 

「リク、ユヅキ、カルマ。この3人には気をつけた方がいいだろウ」

 

 

 

 

1F 購買

 

次にうちらは購買に来た。

購買は一言で言うと「陳列が非常に雑なコンビニ」みたいな感じだった。食料品や日用雑貨があるのはコンビニと同じだが、陳列の仕方がかなり雑だ。とりあえずあるものをただ棚に詰め込んだだけみたいな。雰囲気としては激安の殿堂「ドン・◯ホーテ」によく似てるかもしれない。

 

「なんだここは…気分が悪くなるな、ここまで整理されてないと」

「なんかこういうゴチャゴチャした店が苦手なって人結構いるよねー。銀山さんもそういうタイプなんじゃない?」

ちなみにうちはこういう店はかなり好みだ。だってなんだか店入る度に無性にわくわくしちゃうんだもん。

「そうかもしれないな。ん?待て、何か音がする」

そう言われたので耳を澄ますと、何やらガサゴソ物を漁る音がする。それに何かバリボリ食べてる音?もするような…

「誰かいるのか?」

銀山さんとうちがその音がする場所を覗き込むと、

 

 

 

スナック菓子の袋を片っ端から開けてばりぼりハムスターみたいに食べてる女子がいた。

 

「…………………」

「…………………」

 

うちと銀山さんは思わず固まってしまった。

 

「…………………」

 

その女子もうちらを見た瞬間、驚愕の表情のまま固まってしまった。

 

 

と思ったらものすごいスピードで咀嚼し始め、口に含んだお菓子を一瞬で飲み込んでしまった。

そして何事も無かったかのようにこの場を立ち去ろうとする。

 

「いやいやちょっと待って!!」

思わず大きな声で呼び止めてしまった。

「何か?」

「いや何か?、じゃなくてとりあえずこの状況を説明して欲しいんだけど!?あなた何者?何をしてたの?」

「あなた方と話す事は何もありません、さようなら」

「いやさようならじゃない!!うちは聞きたい事が山ほどあるから!!」

「この人はいつもこんなテンションなんですか?」

女子は呆れながら銀山さんにそう尋ねる。

「多分、相川はボケる人を見るとツッコまずにはいられないツッコミ気質なんだろう。許してやってくれ」

いやツッコミ気質じゃないからうち。

断じてそれは違う。

「いや私一切ボケたつもりはないんですが…」

「君の今の行動は十分ボケと捉えられてもしょうがないと思うが…まあいい、別に私達は怪しいものではない。私は銀山 香織。こっちは相川 凛だ」

「よろしくね!」

うちは気を取り直して握手を求めて手を出した。

しかし彼女はうちの手を取ろうとせず、ため息をつくと、

 

「霜花 優月(しもばな ゆづき)。狙撃手です」

 

 

[超高校級の狙撃手] 霜花 優月

 

 

そう名乗った霜花さんは、鋭い目でうちを見た。髪型は黒髪のボブで、顔も可愛らしいのだが、目つきが非常に悪く、そのせいか常に怒っているように見える。さっきジャック君が警戒してるって言ってた内の1人だけど、この目つきが原因かな?

「もう名乗ったし行ってもいいですか?」

霜花さんは一刻も早くここから去りたいようだ。うちらとそんなに話したくないんだろううか。

「待ってくれ。1つ聞きたい。何故そこまで私達を避けようとする?同じ誘拐されたであろう超高校級の生徒なんだし、協力して行動してもいいんじゃないか?」

 

霜花さんはまたため息をつくと、

「私は他人を一切信用していません」

「なに?」

「え?」

「人間とは欲にまみれた酷く醜い生き物です。私は職業柄、人間の裏の顔を見る機会が多くありました。表ではどんなに他人の為だけに身を粉にして働いている性格が完璧な人間でも、裏では自己の利益の為なら他人がどうなろうと構わないと思っている最低なクズ人間だった、というケースはごまんとあります。」

「人間は自分の欲望の為なら一度協力した相手も平気で裏切ります。だったら初めから他人を信用せず、自分1人で解決した方がいい。私はそう思っています」

「そんなの友達になってみないと分かんないじゃん!!一回友達になれば疑いの気持ちなんか無くなるよ!なんでそうやって決めつけちゃうの?」

「それは綺麗事ですよ、相川さん。友達になったからといって必ず裏切らない、いつまでも味方、という保証がどこにあるのですか?いつ裏切られるか、と恐怖に怯えながら過ごす事になりますよ。例えば、隣の銀山さんが私達の敵では無い、絶対に裏切らないと保証出来るのですか?」

「出来るよ!!絶対に銀山さんはそんな事しない。信じてるから!」

「相川…」

「ですから、その証拠はあるのですか?」

「無い…けど絶対にそれは無い!絶対!」

「ハァ…話になりませんね」

そう言って今度こそ立ち去ろうとする。

「私にはこれから関わらないで下さい。ああ、別に私はあなた方と一緒に行動する気は無いですが、敵になるつもりもないのでご安心を。何か情報が手に入ったらその時は渡しますよ」

「霜花さん!!」

うちの呼びかけには答えず、そのまま行ってしまった。

 

「相川…気持ちは分かるが世の中にはああいう考えの人間も存在する。全員と分かりあおうなんてとても無理だ。それこそ霜花が言う綺麗事だろう」

「分かってる…けど彼女はなんか放っておけない気がして」

「ほう、それは何故だ?」

銀山さんは興味深そうに聞いてくる。

「霜花さん…とても悲しい目をしてた」

「悲しい目?」

「うん…しかも誰かに助けを求めたいけどそれが出来ない、みたいな。そんな目をしてた。なんかごめん、うまく伝えられないや」

「いや、言いたい事はなんとなく分かる。だが、今は時期が悪い。」

「とりあえず状況が落ち着いてからゆっくり歩み寄って行けばいい。ああいうタイプはグイグイ行くと逆効果だろう」

「そっか…そうだよね!うち、頑張るよ!ありがとう!銀山さん!」

「いや、礼には及ばない。それより、さっさとここを調べて次の場所へ行こう。ここは居心地が悪い」

「うん!!」

そう言って購買調べを再開していると、

 

 

「おや、こちらにも誰かいらっしゃいますね」

「本当だ!よかった…」

 

2人の男女が中に入ってきた。

1人は穏やかな顔をした男子だった。頭は坊主で服は和服を着ている。一見すると住職のように見えるが、着ている服がただの着物では無いので、もしかしたら違う職種なのかもしれない。

もう1人の女子は明るい茶髪を三つ編みでまとめている。特に特徴は無いごく普通の女の子って感じだ。

 

「もしかしてあなた達も超高校級の生徒?」

「そうです。そしたら、拙僧から自己紹介をさせてもらいましょうか」

坊主の男子はゆっくりこちらを向いた。

 

「拙僧は千野 李玖(せんの りく)。茶人を名乗らせてもらっています」

 

 

[超高校級の茶人] 千野 李玖

 

 

茶人…!なるほど、道理で服装を見た事があると思っていた。確か日本史の教科書に載ってた千利休がこんな格好をしてた気がする。

「千野君って茶人なんだね!てっきり最初見た時お寺の住職かなと思っちゃった」

「それは恐らく拙僧が頭を丸めてるせいでしょう。間違えられるのはよくあります」

微笑みながら千野君は言った。

「どうして坊主にしたの?」

「相川殿の言う通り、拙僧は始めは寺の僧を目指しておりました。しかし、拙僧の家は代々、茶をお偉いさんの為に立てる事を生業とする茶人の家系でしてな。そのような事は許されなかったのです」

「そんな…自分の夢を家系のせいで潰されたって事…?」

「そんな夢なんて大層なものではありませんよ。ただ、拙僧は茶を立てるというのが昔は好きでは無かった。だから別の道に逃げたかった。それだけの理由です」

「ただ、僧になる、というのを諦めた訳ではありません。いつか必ずなってみせる。この坊主頭はその意思の表れなのです」

「そうなんだ…でも大丈夫だよ!千野君なら絶対なれるよ!」

「相川殿…ありがとうございます。ここまで言ってもらえたのなら、僧になるしか道はありませんな」

そう言ってまた千野君は微笑んだ。

 

 

「あの〜、お話になってる所悪いんですけど…」

「え?」

うちが振り向くと、もう1人の女子がうちの真後ろに立っていた。

「ぎゃっ!?ご、ごめんなさい!すっかり忘れてた!」

千野君と話している内にすっかり存在を忘れてしまっていた。

「相川…その驚き方は流石に酷いぞ…」

「いいんです…私影が薄いんで…気づかれなくても当然です…ぐずん」

「おい、彼女泣いてしまったぞ」

女子は手で顔を覆って泣いてしまった。銀山さんに責められるような目線を向けられる。

「ほ、本当にごめんなさい!!悪気は無かったの!ただ、話に夢中になって、えっと、その…」

 

 

 

「嘘ですよ」

彼女はそういうと、覆った手を退けて笑った。うわっ!?騙された!!

「すみません、嘘泣きです」

「酷い!!騙された!というか2人も知ってたの⁈」

うちは後ろで笑いを堪えている2人を見た。

「ああ。彼女が嘘泣きなのは1発で分かった。だから、私も乗らせてもらった」

「拙僧も北条殿が相川殿を騙そうとしているのは分かったので、黙って見守らせてもらいました」

銀山さんと千野君は顔を見合わせて笑った。

そんな…見抜けなかったのはうちだけ?

「ふふふ、相川さん、私の期待通りのリアクションでしたね。もしかして超高校級のリアクション芸人、とかですか?」

「いや違うから!!芸人とかじゃないから!」

もしかしてめっちゃイジられてないかうち。

 

「ふふ、ごめんなさい。自己紹介が遅れましたね。私は北条 業 (ほうじょう かるま)です!これからよろしくお願いします!ちなみに自分の才能は分かりません!」

 

 

[超高校級の???] 北条 業

 

 

自分の才能が分からない?もしかして記憶喪失とかかな?でも自分の名前は覚えてるのに才能が分からないってなんか都合が良すぎるような…

「念の為聞くが、嘘ではないのか?」

「もちろん!これはマジです!」

騙されたうちとしてはイマイチ信用出来ないんだけど…

すると、北条さんはうちの疑いの目に気づいたのか、

「相川さん、さっきは騙してすみませんでした。けど、才能に関しては本当に分からないんです。思い出したら必ず教えるって約束します。だから、今は信じてもらえないでしょうか…?」

北条さんはさっきとは一転、真剣な表情でうちを見た。

いつもならすぐ信じるって頷くけれど、今はジャック君の北条さんを警戒した方がいいという話と、霜花さんの人は必ず裏切る、安易に人を信用したら酷い目にあうという話が引っかかっていた。

 

 

 

本当にいいのだろうか。簡単に人を信用して。確かにうちは今まで疑う、という事をほとんどしたことがない。いや、ずっと避けてきた。人を疑う、という行動は人を傷つけるのをうちは知っている。うちは今までたくさん人を傷つけてきた。だから疑う事はやめて、ひたすら信じる事にした。信じれば他人を不快にする事は無くなる。みんな笑顔のままでいられる。それでいいじゃないか。そう思っていた。

 

 

 

 

けど、それはただ見たくない真実から目を背けてるだけだ。逃げてるだけだ。

 

 

 

 

そんな事はうちも分かってる。それでも、うちは疑う事によって知りたくもない真実を見つけて、それで他人を傷つけ、険悪になるより、目を背けてでも笑顔になれる方を選びたい。たとえ綺麗事だって知っていても、偽善者と言われても、うちはどうしても疑う方は選べない。

 

 

だからうちは

 

 

「うん!とりあえず信じるよ!北条さんの事!」

 

また、逃げる事を選択した。

 

 

「ありがとうございます!!ぜひ握手して下さい!!友情の証です!」

「いいよ!って北条さん!?握手が激しすぎるから!腕がもげる!!」

 

 

 

 

その2人の一連の会話を他の2人は黙って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人は穏やかで、そして優しく見守るような目で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう1人は、疑惑、そしてまるで敵視するかのような目で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柴崎side

 

1F 101教室前

 

僕と万斗さんは1階にある大教室前に来ていた。担当決めの際には言わなかったが、正直言ってここを調べたくはなかった。理由は単純に面倒そうだったからだ。大教室と言っている以上、さっきの会議室なんかより広いのは明らかであり、しかも大教室は3つもある。自分の担当場所が終わり次第、他の場所の手伝いに行く、という事も一応さっき決めたが、僕ら以外の場所の調査がすぐ終わるとは限らないので、結局はある程度は自分達で調べなくてはならない。

自分が極度の面倒臭がり屋というのがバレるとまた面倒な事になるので、相川さんと会った時から真面目な人風に振る舞ってきたが、そろそろ限界だ。あー面倒臭い。早く家に帰ってベットでゴロゴロしながら漫画読みたい。

 

「ねえ柴崎君。中が何やら騒がしいんだけど…」

「本当っすね。面倒な事にならなければいいんすけど」

ハァ…ただでさえこのエロの権化みたいな奴のお守りで大変なので、さらに面倒な事巻き込まれるのは勘弁して欲しい。

「いや、これは声の数、大きさからして女の子が2人いるね。ウヒョ、今度はどんな可愛い子に出会えるんだろう…ウヒョヒョ」

僕は黙って拘束してる手に力を込めた。というか何で分かるんだよ。

「いや、冗談だって!まだ未遂だから!痛い痛い!」

ハァ…もう疲れた。

 

 

 

中に入ると、

 

 

 

「よっしゃ!!じゃあ他の奴ら全員集めて後でバスケしようぜ!」

「いいねあっくん!そしたらその後はみんなでパーティやろう!!」

「それはナイスアイディアでござるね!!拙者ワクワクしてきたでござる!!」

 

 

うるさそうな3人がぎゃあぎゃあ言って盛り上がっていた。

 

 

「あ!?また新しい人が来たぜ!」

「本当だ!おーい!こっちおいでよー!」

 

気づかれてしまった。本当はそっとUターンして別の教室に行きたかったんだが…まあどちらにしろ…

「ウヒョ、お、女の子が2人……はい!今行きますから!ほら、柴崎君も早く!」

ハァ、しょうがないか…

僕は移動が面倒なので、万斗さんの拘束を解いて、大教室の中央へ降りていく。大教室の造りはまさにテレビで見た事がある大学の教室そのものだった。イメージとしてはコンサートホールに近い感じか。正面に大きな黒板があり、向かい側に席が扇状に並んでいる。

さっきの3人組は教授が立つ、黒板の前にいた。

 

「おっす!もしかしてお前らも超高校級としてスカウトされたのか?」

「……そうっすけど、あんた達状況分かってます?」

僕は若干棘のある言い方で尋ねた。

「えーっと、状況?」

「そうっす。恐らくあんた達も校舎に入ろうとして気を失ってどこかで倒れてたんすよね。」

「そうだな」

「えーっと…それってかなりヤバい状況だって事は理解してますよね?」

 

すると、3人は一瞬ポカンとしたのち、

「はっはっは!!なんだそんなことかよ!大丈夫だってそんなに心配しなくても!」

「そうそう!確かにみんな同時に倒れてたのは変だけど、今無事に生きてるし、問題ないない!」

「お2人の言う通り心配ないでござる!きっとドッキリの類か何かでござろう!」

あぁ…そういうタイプかこの人達。自分達が誘拐されたとは微塵も思っていないんだろう。1から説明するの面倒臭い。

「あの…流石にこの状況は心配しようよ…」

あの万斗さんでさえドン引きしてるって異常事態な気がする。

「なんだ、お前も心配してるのか?大丈夫だって!それとも何かお前ら知ってるのか?」

「さっき調べたっすからね。それよりあんた達は他の場所には行ったんすか?」

「いや、俺らはここでずっとダベってただけだ!」

何でちょっとドヤ顔なんだよ。

「まあいいじゃねーかちょっとくらい。というかまだお前らの名前聞いてないぞ!教えてくれよ!」

「お前に教える名前はねえよ。耳塞いでろ。2人の可愛い女の子にはもちろん教えるよ〜☆」

「何で⁈俺の扱い酷くね⁈」

万斗さん、さっきの中澤さんに対してもそうだったけど、イケメンにだけ態度冷たすぎだろ。

「まあまあそう言わずに。名前がお互い分からないと不便っすから」

「チッ」

こうして、まず先に僕達が自己紹介をした。

 

「なるほど!武史に輝晃か!覚えたぜ!よろしくな!」

「よろしくっす」

「チッ、名前で呼ぶんじゃねぇカス」

「いや口悪いっすね」

言われたイケメン男子は聞こえてなかったのか、無視して自己紹介を始めた。

 

「俺は黒瀬 敦郎(くろせ あつろう)!超高校級のバスケ部だ!後で一緒にバスケやろうぜ!」

 

 

[超高校級のバスケ部] 黒瀬 敦郎

 

 

黒瀬敦郎…弱小だった地元のチームを全国レベルまで引っ張り上げた凄腕のプレイヤーだったか。相手のディフェンスをものともせず、豪快にダンクを決めるそのプレーにアメリアのプロチームも注目している、みたいな特集記事をどっかで見た気がする。

「というか、まずどうやったらそんなに大きくなれるんすか?」

別に自分の身長を気にした事はないが、興味本位で聞いてみた。

「あ?そりゃあメシだろ!飯食って、後は寝て、なんか適当に過ごしてたら大きくなるって!」

なんだその適当なアドバイスは。

「ヘッ、そんなんで大きくなれるんだったらボクも今頃180cm 越えのイケメンボーイになってるはずだ」

万斗さんがバカにした様に言った。いや、別に身長が高くなったからってイケメンになれる訳ではないんだが。

「なんだ!輝晃は身長気にしてんのか?大丈夫だって!小さくても出来ることはあるって!バスケでも小さくても仕事はあるんだからよ」

「コイツ…マジで殴りてえ…」

万斗さんが今にもブチギレそうな表情で黒瀬さんを見てる。確かに、今の発言は嫌味を言っているようにも聞こえなくはない。ただ、黒瀬さんは恐らくそんな気は1ミリもないっぽいが。

「あっくん、今のはダメだよ!てるるんにとっては嫌味にしか聞こえないもん!ちゃんと謝って!」

あ、僕の思ってる事と同じように思ってた人いた。

「そ、そうなのか⁈ごめん!輝晃!悪気は全くなかったんだ!」

「絶対許さん。土下座してボクの靴を舐めろ」

「まあまあ、あっくんも本気じゃないみたいだし、許してあげてよ〜」

「許します!!」

いやチョロいな。

 

「それじゃあ次はウチの番!超高校級の劇運、幸村 雪(ゆきむら ゆき)って言うんだ!よろしく!」

 

 

[超高校級の激運] 幸村 雪

 

 

激運…?確か毎年1人一般生徒の中から抽選で選ばれるのは「幸運」の才能だったはず。けど、「激運」…?幸運の上位互換って事か?

「雪さん…ステキな名前だね!ところでそんな名前も容姿も美しい雪さんに聞きたいんだけど、激運ってどんな才能なの?」

雪村さんに満面の笑みで接する万斗さん。その笑顔を黒瀬さんとかに向ける事は一生ないんだろう…

「ありがとう!なんだか照れちゃうな…激運って簡単に言うと、めっちゃ運がいい!ってことかな!」

「それは分かるっす」

「うん…それは分かるよ…文字で」

「あ、そっか!!でもこういう説明しか出来ないんだよね〜!ウチもよくこの体質分かってないからさ」

 

なるほど、自分でも完全に把握しきれてないって事か。だから希望ヶ峰学園にスカウトされたのか。希望ヶ峰学園は生徒の才能を伸ばすと同時に才能を研究する場所でもある。激運なんて才能は希望ヶ峰学園にとってうってつけの研究材料だったのだろう。

「なるほど、幸村殿はとてつもなく運がいい、というか事でござるな!では今度拙者の運の良さを実証する動画に是非出て欲しいでござる!」

「いいね!かすみーの動画出たらウチも一躍有名人だね!」

幸村さんはもう1人の女子となにやら盛り上がっている。というか動画って何だ?何か動画を出してるって事か?

「あれっ?たけくん、もしかしてその顔、かすみーの動画知らないの?」

「知らないっすね。てか、たけくんって…」

「ん?武史君だからたけくん。ウチ初めて会った人にはあだ名つけるんだ。後はてるるん、かすみー、あっくん」

たけくんって…そんな風に呼ばれたのは初めてだ。大体、苗字で呼ばれるのが多かった気がする。まあ呼ばれ方なんてどうでもいいけど。

「柴崎君知らないのかい⁉︎麻衣子さんは超有名実況者だよ!」

「おや、万斗殿は拙者の動画のリスナーでござったか」

「もちろん!毎回欠かさず見てるよ!まさかこんなとこで会えるなんて…今なら死んでも良い!」

大げさな。というか、そんなに有名なのか。

「じゃあ拙者のことを知らない柴崎殿のために改めて自己紹介をするでござる!」

「申し訳ないっすね」

 

 

「お初にお目にかかるでござる!拙者は超有名なyour tuber、霞ヶ峰 麻衣子(かすみがみね まいこ)でござる!!」

 

 

[超高校級の動画投稿者] 霞ヶ峰 麻衣子

 

 

あーなるほど、「your tuber」か。確か動画投稿サイト「your tube」で動画を投稿して生計を立てている人を指すんだったか。聞いた事はあったがまさか実際に会うことになるとは。

「気になった事があるんで、質問してもいいっすか?」

「もちろん!どんと来いでござる!」

「ぶっちゃけ、your tuberってどれくらい稼げるんすか?」

 

一瞬、場がシーンとなった。

「ちょっとたけくん!?そういうのはあんまり聞いちゃいけないんだよ!ぷらいばしーってやつだよ!」

「そうだぜ武史!でりかしーが無いって怒られるぞ」

特にうるさい2人が騒ぐ。あんたらにだけは言われたくないんだが。まぁ確かに年収について聞くのはちょっと踏み込み過ぎたか。そう思って謝ろうとしたが…

「う〜ん、大体平均して1千万くらいでござるね」

 

いや言うのか。

「ええーーー!!!言うのかよ!てかめっちゃ稼いでるな!?」

「え?かすみーそれ言っちゃっていいの⁈というか高っ!大金持ちじゃん!!」

同じような反応をする2人。万斗さんは絶句して声も出ない状態だ。

「ここだけの秘密でござるよ!絶対バラしちゃダメでござる!バレたら事務所に怒られちゃうでござるから」

「じゃあ初めから言わなきゃ良かったじゃないっすか」

「正直に言うと、ちょっと自慢したかったでござる!」

何故かドヤ顔で言う霞ヶ峰さん。ただのバカだ。

「大丈夫だ!俺は口が堅いからな!」

「ウチも口めっちゃ堅いって地元で有名だったから大丈夫!」

この2人は絶対バラすな。1ミリも信用出来ない。

「僕も絶対バラさないよ!!愛しき麻衣子ちゃんの頼みとあれば!!」

この人は絶対バラさないな。死んでも約束守りそう。

「後は、柴崎殿だけでござるが…どうでござろうか…」

懇願するような目で霞ヶ峰さんは僕を見る。

僕の答えは最初から決まっている。

 

 

「何言ってんすか。バラすに決まってるじゃないっすか」

 

 

 

 

「「「「え????」」」」

 

 

 

「まずSNSでこの情報を流して、ついでに素顔や性格、私生活等の情報をガセネタも交えながら流すっす。そして、ネット上での反応を見るんすよ。面白そうじゃないっすか?」

 

 

全員が僕をありえない、という目で見ている。その後、霞ヶ峰さんが涙目になって僕にしがみついた。

 

「だ、ダメでござる柴崎殿!頼むからそれだけは勘弁して欲しいでござる!!」

「えーどうするっすかね。もう知っちゃった訳だし。そのお願いを聞くには、何か対価を支払ってもらわないと無理っすねー」

「た、対価…?わ、分かったでござる!何でもするでござる!」

「え?今何でもするって言ったっすね?じゃあ…」

 

「柴崎君、度が過ぎるよ!君はボクの愛しの麻衣子ちゃんに脅迫してるという事実を改めて噛み締めた方がいい!」

「そうだよ!かすみー今にも泣きそうだよ!!」

「武史!!お前それは男らしくないぞ!!ちゃんと言わないって約束しろ!!」

3方向から批判が飛んでくる。じゃあこっちも味方を作るか。

「万斗さん、いいんすか、こんな滅多にないチャンスを逃して」

「ち、チャンスって何だよ…」

「この情報をダシにして霞ヶ峰さんのさらなる情報を引き出せるかもしれないんすよ。万斗さんは情報屋なんだから有名人の情報の貴重さは十分知ってるっすよね?」

「ヒッ!?」

「そ、それはそうだけど…」

「それに、僕と同じ立場になれば、こうして霞ヶ峰さんに抱きついてもらえるんすよ。断る理由なんかないと思うんすけどねぇ…?」

「柴崎君、僕も手伝うよ」

「てるるん⁈」

「輝晃!?お前も裏切るのか⁈」

「うるせえ!!バスケ部!!いいか、男にはやらなくちゃいけない時があるんだ!さぁ麻衣子さん、僕に情報をバラされたくなかったら僕に抱きつくんだ!」

僕が言うのもなんだが、この人もかなりのクズだな。まあ、情報屋が情報で脅してもなんら不思議ではないけど。

「後生の頼みでござる!万斗殿!」

霞ヶ峰さんは今度は万斗さんに抱きついた。

「ウヒョヒョ!!!!!!最高だ!!今僕は人生の絶頂期にいる!!」

万斗さんは悪魔みたいな顔をして叫んだ。このままだとまた万斗君が暴走するし、そろそろ茶番はやめるか。

 

 

 

「すいません、嘘っす」

 

 

 

 

「「「「え????」」」」

 

 

 

「すいません、全部嘘っす。霞ヶ峰さんのリアクションが面白くて、つい嘘ついちゃいました」

 

 

また場がシーンなった。そして…

 

 

 

 

「ひ、ひどいでござる!!!!柴崎殿、貴殿は一体拙者に何の恨みがあってこんな嘘ついたんでござるか!!」

霞ヶ峰さんは泣きながら僕をポカポカ殴り始めた。

「だから別に恨んでる訳ではないっすよ。ただ反応が面白かったんで嘘ついただけっすよ。すみません」

そう言って僕は持っていたハンカチを出して霞ヶ峰さんに渡した。

「もうこんな事は勘弁して欲しいでござる…」

そう言って霞ヶ峰さんはハンカチで涙と大量の鼻水を拭く。鼻水どんだけ出てんだよ。

「分かったっすよ。ところで…」

顔を拭いて綺麗になった霞ヶ峰さんを見て僕は、

「霞ヶ峰さんってめちゃくちゃ美人っすよね」

「え」

霞ヶ峰さんの顔が一瞬で真っ赤になった。

 

「えっ!?たけくん…もしかしてこのタイミングで言うって事は…キャーーー!!!」

「おいおいマジか…男じゃねーか武史!!見直したぜ!」

「え…柴崎君何言ってるの?麻衣子さんは僕の嫁だよ…えまって麻衣子さん…」

 

 

盛大に勘違いしている3人は放っておく。

「せ、せせせせせ拙者が美人…」

「そうっすよ。歴代で最高レベルの美女っす」

「そ、そんな事は………」

「自分に自信を持ってもいいんすよ。僕も実際最初見た時からすごく可愛いな、こんなに可愛い人は今まで見たことないって思ってたんすよ」

「ひょえ!?」

霞ヶ峰さんの顔から蒸気みたいに煙が噴き出してる(ようなイメージが想像出来る)。そろそろオーバーヒートしそうだ。

 

 

 

「すいません、嘘っす」

「え?」

「また嘘っすね。反応が面白かったので、つい」

「……………………」

「あの…霞ヶ峰さん?」

 

 

 

 

 

「キーーーーーーーー!!どこまで拙者をからかえば気がすむのでござるか!!もう絶対許さないでござる!!!!10発殴らせろでござる!!」

霞ヶ峰さんがついにキレた。少しやりすぎたか。

「やばいっすね。万斗さん、行きましょう」

「自業自得だね。君はちゃんと反省して後で謝った方がいいよ」

「いや万斗さんだって途中一緒に乗っかってたじゃないっすか。同罪っすよ」

「ぼ、僕は違うよ!僕は日頃からあんな感じだし」

「なおさらダメじゃないっすか」

打ち首でござる、という怒号を聞きながら、僕らは教室を後にした。

「たけくん、いい人なのか悪い人なのかウチ、分かんなくなっちゃった」

幸村は不思議そうに首をかしげた。

「確かにな…まぁ悪い奴じゃないと俺は思うぜ」

キレてる霞ヶ峰を抑えながら黒瀬は言った。

「それよりあいつ、さっきから表情が全く動いてなかったぞ。怖すぎだろ…」

 

 

 

 

 

1F トレーニングルーム前

 

僕らはなるべく遠くに行こうと、同じ階にあるトレーニングルームにやってきた。

「そういえば万斗さんに聞きたい事があったんすけど」

「ん?なにが聞きたいんだい?ボクは情報屋だから大体の情報は網羅してるつもりだけど…

あ、料金は後払いで払ってもらうからね。まあ柴崎君は同じ超高校のよしみで少し安くしてあげるよ」

「ああ、それはどうもっす。でも僕が聞きたいのは万斗さん自身の事っす」

「ボクの事?」

「そうっす。万斗さんって何で黒瀬さんと中澤さんには厳しく当たるのに、僕には普通に接してくれるんすか」

僕は理由は分かってたけど、敢えて聞いてみた。

「あーそんな事か。それは愚問だよ柴崎君」

万斗さんはつまらなそうに答えると、

 

 

 

「ボクはイケメンが大嫌いなんだ」

 

 

やっぱり。

「え?」

「だって、顔がいいという事実にあぐらをかき努力をせず、一緒にいる女子に劣等感を抱かせ、ちやほやされて甘やかされた、自分を影響力のある唯一無二の存在だと思い込んでいる産業廃棄物だよ!嫌いにならない訳がないじゃないか!」

興奮して声が大きくなる万斗さん。随分とひどい言い草だな。

「いや、イケメン全員がそんなナルシストみたいな考え方だとは限らないと思うんすけど…」

「え?知らないのかい柴崎君?イケメン=ナルシストって既に科学的に証明されているんだよ」

聞いたことないぞそんな事実。

「そんな女性をたぶらかすクズがボクの近くに2人も…ああああ!!思い出しただけでじんましんが出できた!」

全身を掻き毟る万斗君。

「じゃあ僕に普通に接するのは…」

「柴崎君はイケメンじゃないからに決まってるじゃないか」

なるほど。薄々気づいてたけどやっぱそういうことか。

「あ、別に柴崎君がブサイクって言ってるわけじゃないから!普通の顔だから安心して!」

いや別にそこは気にしてないんだが。他人の評価なんて心底どうでもいいし。

「まあこれからアンチイケメンの同志として頑張ろうじゃないか!」

僕と肩を組みながら笑う万斗君。別にアンチではないし同志になった覚えもない。というか肩を組むな。暑苦しい。

 

 

「なんだ、騒がしいな」

すると、トレーニングルームから汗を流した大きな男が出てきた。

「うおっ」

「ぎゃあああ!!!!!!!!!!」

びっくりした。急に現れたから思わず声が出てしまった。万斗さんに至っては、驚きすぎて道路に落ちてるセミみたいにひっくり返ってしまっている。驚きすぎだろ。

「む、すまん。驚かせてしまったな」

「いや、大丈夫っす。こっちもだいぶ失礼な態度をとっちゃいましたね。すみませんっす」

「問題ない。こういう反応をされるのは慣れている。それよりそっちの奴は大丈夫か?腰を抜かしているようだが」

「あー大丈夫っすよ。ちょっとビビっただけなんで」

「ちょっとどころじゃないよ!」

僕の後ろで震えながら万斗さんは大男を睨みつけている。

「随分と警戒されてしまっているな…ではまず自己紹介からした方が良さそうだ」

 

「俺は分倍河原剛 (ぶばいがわら ごう)。空手家をやっている」

 

 

[超高校級の空手家] 分倍河原 剛

 

 

分倍河原…?どこかで聞いたような気がするが…

「ぶ、分倍河原だって!?あの『怪物』の⁈」

「万斗さん、知ってんすか?」

「もちろん知ってるよ!!分倍河原 剛。圧倒的な力で相手を蹴散らすその姿から、空手界で『怪物』と呼ばれ、恐れられている高校生さ。僕も入学前に一通り同級生になる人達をチェックしてたけど、コイツを一番警戒してたんだ!やい、怪物!!僕達をどうする気だ!」

「………まず、その『怪物』という呼び方、辞めてもらってもいいか?その呼び名はあまり好きじゃないんだ」

「はい!すみません!!」

いや日和るの早っ。

「あと、俺は空手をやっているからといって、別に戦う事が別に好きなわけじゃない。むしろ争いごとは嫌いなんだ」

「なるほど、じゃあなんであんたは空手なんかやってるんすか?何か理由があるんすよね?」

「ああ。俺が空手をやっている理由は、力のない人を守れる力を身につける為だ」

「力のない人?」

「具体的には、子供や老人、あとじ、女性…とかだ。俺はそういった人達の助けになりたいから己を鍛え始めた」

「じゃあ将来は人を助ける仕事に就きたい、とか思ってんすか?」

「まだ決めかねているが…一応警察官を志望している」

警察官か…一瞬分倍河原さんが警察官の格好で犯罪者を取り押さえるイメージが浮かんだが、見事に合っている。検挙率とか一気に上がりそうだな。

 

「なんだ…そう言う事だったんだね」

すると、ずっと黙っていた万斗さんは分倍河原さんの前に行き、

 

「ごめん!!君の事をよく知らないのに怪物呼ばわりして!」頭を深く下げた。

「おい…そこまで頭を下げなくても大丈夫だぞ。こういうのはしょっちゅうあるからな」

分倍河原さんは驚きすぎながら頭を上げさせようとする。

「いや、僕は噂に踊らされてさっきの様な事を言ってしまったんだ。情報屋として失格だよ。これくらいさせてくれ」

へぇ…万斗さんの意外な一面を見た。自分が間違えていたと分かったらすぐに認め、謝罪する。やっぱり情報屋としての信念か何かがあるんだろうな。

 

「それより、お前達の名前を聞きたいんだが」

「ああ、僕は柴崎 武史。歴史学者っす」

「僕は万斗 輝晃。情報屋を名乗らせてもらっているよ」

「そうか…柴崎に万斗か。2人は既に他の場所は調べたのか?」

「何箇所かは調べたんすけど、依然詳しい手がかりは見つかってないっすね」

「なるほどな…俺はこの場所で目覚めたんだが、調べたところ、普通のジムとほぼ同じ設備だったぞ」

確かに空いてるドアから中をチラッと見ると、ルームランナー、エアロバイク、ベンチプレスなど、素人の僕でも知っているトレーニングマシーンがあるのが見えた。

「もしかして君が汗をかいているのって…」

「ああ、せっかくあるんだし少し使わせてもらった」

分倍河原さんはタオルで汗を拭きながら言った。この状況で筋トレしてたのか。神経が図太すぎる。

 

「キーンコーンカーンコーン」

 

 

何だ?チャイムか?誰かがどっかで鳴らしてるって事か。すると、突然、

 

 

 

「あーマイクテストマイクテストーーーー

カバカバカバ!!オマエら聞こえてるカバ!今すぐ1階の103教室に集合するカバ!!来ない奴にはオシオキカバーーーー」

 

 

ブチっと音声が切れた。

「い、今のは…」

「どうやら、行くしかないようだな」

「そうっすね。面倒っすけど行きましょう。犯人の面を拝めるチャンスっすから」

そう言って僕達は歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に絶望へのカウントダウンが始まっている事も知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生存者

 

1 相川 凛《外国語研究家》

2 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》

3 喜屋武 流理恵 《調理部》

4 銀山 香織《棋士》

5 黒瀬 敦郎《バスケ部》

6 柴崎 武史《歴史学者》

7 霜花 優月《狙撃手》

8 ジャック ドクトリーヌ 《医者》

9 千野 李玖《茶人》

10 独島 灯里《サブカルマニア》

11 飛田 脚男《バイク便ライダー》

12 中澤 翼 《フットサル選手》

13 錦織 清子《テニスプレーヤー》

14 分倍河原 剛 《空手家》

15 北条 業 《???》

16 万斗 輝晃 《情報屋》

17 幸村 雪 《激運》

 

 

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