ダンガンロンパ キャンパス   作:さわらの西京焼き

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長かった学級裁判もこれで終了です。







学級裁判(後編)

 

 

 

 

 

コトダマ一覧

 

 

 

 

[モノカバファイル⑥]

被害者は《超高校の???》北条 業。

死体発見場所はB棟才能研究棟2階《超高校級の機械工》の研究教室。

 

 

 

[モノカバファイル⑦]

被害者は???《超高校級の医者》ジャック・ドクトリーヌ。

全身を酷く損傷している為、見た目からは誰か判別することは出来ない。

死体発見場所はD棟中庭の窯。

焼却前、被害者の体には薬物を摂取した形跡があり、全身に蕁麻疹が発生していた。

また、両足は切断されており、両足の太ももには刺し傷が存在した。

 

 

 

 

[お菓子袋の燃えカス]

窯の中に残されていたお菓子袋の燃え残り。

小さな山が出来る程大量に残っていた。

 

 

 

 

[車輪の跡]

窯の近くにあった車輪が通ったような赤色の跡。

 

 

 

 

 

[明智の手帳]

図書館に残されていた明智の手帳。

最後のページにある記述が残されていた。

 

 

 

 

動機発表2日目

 

熱で朦朧としている中、トイレに行こうと個室を出た。

 

すると、廊下をフラフラと彷徨っているジャック・ドクトリーヌ クン相川凛を見つけた。

 

 

彼女はB棟へ向かって向かっていた。

一体、こんな夜更けに何の用があってB棟なぞに行くんだろうか。

実に怪しい。

後をつけてみようと思う。

 

 

 

→明智麻音の証言から、黒塗りの部分には「ジャック・ドクトリーヌ」と記載されていた事が判明。

 

 

 

 

 

[角が血で染まった本]

図書館に落ちていた本。角にだけ血が付着している。

 

 

 

 

[保健所の輸血パック]

保健所に沢山あった輸血パックが一個も無くなっていた。

 

 

 

 

[相川達の行動記録]

 

・相川

1日目………症状は⑤の食欲不振と吐き気。黒瀬、ジャック、霜花と一緒に一日中食堂にいた。何度か食堂を離れる機会はあったが、それも5分程度。

2日目………症状は⑧の手足の麻痺。気がついたら北条にB棟体育館倉庫に監禁されていた。一日中北条と一緒であった。

3日目………症状は①の鼻水とくしゃみ。霜花が助けに来てくれるまで体育館倉庫に監禁状態にあった。

 

 

 

・霜花

1日目………症状は②の倦怠感と寒気。相川、黒瀬 ジャックと一緒に一日中食堂にいた。独島の様子を何度か見に行くために食堂を抜け出す機会はあったが、それも数分程度。

2日目………症状は⑦の殺人衝動。1日目の明智と同じく、誰かと接触しないように自室に閉じこもっていた。

3日目………症状は⑥の幻覚。夜中に目が覚め幻覚症状が現れた。そのまま部屋でじっとしていると突如バングルが外れた為、状況を確認しようと部屋を飛び出し人を探していたところ、監禁された相川を見つけた。

 

 

 

 

・黒瀬

1日目………症状は⑩の無症状。相川、霜花、ジャックの3人と一緒に一日中食堂にいた。

2日目………症状は恐らく⑨の気分の高揚。いつも通り過ごし、外も普通に出歩いていた。

現在いないジャックや万斗とも会ったという。

3日目………症状は⑧の手足の麻痺。夜中に目が覚め動けない状態のまま過ごしているとバングルが外れ、霜花と同じく誰かを探していると北条の死体を見つけた。

 

 

 

・独島

1日目………症状は⑧の手足の麻痺。一日中自室にいた。

2日目………症状は⑤の食欲不振と吐き気。時々外を出歩いていたが、基本的には自室にいた。

3日目………症状は不明(寝ていたため)。相川達に起こされるまでずっと寝ていた。

 

 

 

 

[乾いた血痕]

《機械工の研究教室》内に飛び散った血痕はだいぶ乾いていた。

 

 

 

 

[電動ノコギリ]

《機械工の研究教室》にある電動ノコギリにのみ使用された形跡があった。

 

 

 

 

[落ちていた糸クズ]

入口に落ちていた血に染まった糸クズ。

他にゴミは一切落ちていなかった。

 

 

 

 

[めり込んだ銃弾]

教室の壁に銃弾がめり込んでいた。

 

 

 

 

[霜花の検死結果]

北条の頭部に銃弾が貫通した痕があるため、死因は銃殺の可能性が高いとの事。

死後数時間が経過しており、死亡推定時刻は夜10時〜翌3時頃と予想される。

頭部以外に外傷は全く見られない。

 

 

 

 

 

[薬剤師の研究教室にあった薬]

 

 

・ヒエヒエ薬………熱を下げる効果があるが、副作用として口にした者の判断力を鈍らせる。

・モリモリ薬………食欲不振を改善する効果があるが、副作用として身体中が痒くなり蕁麻疹が出る。

・ビリビリ薬………筋弛緩剤の一種で、口にした者は約2日間痺れて動けなくなる。暴れる患者を抑え込む為に使われるらしい。

・モノカバドキシン………劇薬。一口飲むと全身が痙攣し呼吸困難に陥り死亡する。

 

 

 

 

注意!

 

なお、別々の薬を同時に服用すると副反応で死亡します。

細心の注意を払って使用して下さい。

 

 

 

なお、使用されたのはヒエヒエ薬、モリモリ薬、ビリビリ薬の3つのみで、モノカバドキシンは未開封。

 

 

 

[飛び散った血痕と血が付着した瓶]

《薬剤師の研究教室》に落ちていた。

 

 

 

 

[購買の在庫]

事件前と後でお菓子が大量に持ち出されており、また、台車一台も無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

[相川達の行動履歴2/症状]

 

 

 

 

症状 一覧

 

 

①くしゃみと鼻水が止まらなくなる

②全身に酷い倦怠感、寒気

③酷い頭痛に襲われる

④高熱にうなされる

⑤食欲が失せ、吐き気が止まらなくなる

⑥幻覚が見えるようになり、意識が朦朧とする

⑦殺人衝動が抑えきれなくなり、常に誰かを殺したいと考えるようになる

⑧手足が麻痺し、歩く事が困難になる

⑨気分が高揚し、自分で何でも出来ると思い込むようになる

⑩変化なし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなの症状

 

 

初日

①万斗

②霜花

③北条

④柴崎

⑤相川

⑥千野

⑦明智

⑧独島

⑨ジャック

⑩黒瀬

 

 

 

2日目

①???

②明智

③柴崎

④千野

⑤独島

⑥???

⑦霜花

⑧相川

⑨黒瀬

⑩万斗

 

 

 

 

 

3日目

①相川

②柴崎

③???(北条orジャック)

④独島

⑤明智

⑥霜花

⑦???(北条orジャック)

⑧黒瀬

⑨万斗

⑩千野

 

 

 

(独島は3日目は事件が起きるまで寝ていた為正確には不明だが、本人の『起きた時熱っぽかった』という証言から④の高熱の症状であると判断)

 

 

 

 

 

みんなの行動記録

 

1日目

・相川、霜花、黒瀬、ジャック

→食堂に一日中いた。

・柴崎

→午後、B棟にある『薬剤師の研究教室』へ解熱剤を取りに行き、薬を取ろうとした瞬間誰かに襲われ眠らされる。その後先程までB棟にある空き教室に監禁されていた。

・独島、千野、万斗、明智

→一日中個室にいた。

・北条

→不明。

 

 

 

 

 

2日目

・相川、北条

→何らかの方法で北条が個室にいた相川を拉致。その後午後11頃までB棟体育倉庫で一緒だった。北条は11時頃どこかへと向かって行った。

・明智

→午前は個室、午後から夜中までD棟図書館にいた。図書館に行く途中、B棟でジャックを目撃。

・千野

→夕方頃までは個室にいた。午後9時頃から12時頃までは万斗と一緒にいた。

・万斗

→午前はD棟の図書館にいた。午後は9時頃から12時頃までは千野と一緒にいた。

・黒瀬

→午前はB棟にてランニング等の運動をしていた。午後以降は個室にいたが、時々外を出歩いていた。

・霜花、独島

→一日中個室にいた。

・ジャック

→不明。しかし午後、廊下を彷徨っているところを黒瀬や明智に目撃されている。

 

 

 

 

3日目

・相川

→2日目に引き続き、体育倉庫で監禁されていたところ霜花によって救出。その後2人で行動し、『超高校級の機械工の教室』前で黒瀬を、中で北条を発見。

・霜花

→朝6時半頃起床した際、手錠が外れている事に気がつき外を探索したところ、体育倉庫にて相川を発見。その後一緒に行動し、『超高校級の機械工の教室』前で黒瀬を、中で北条を発見。

・黒瀬

→朝6時起床した際、手錠が外れている事に気がつき外を探索。B棟にて北条の死体を発見した。

・明智

→昨日に引き続き図書館にいたところ、何者かに背後から頭部を殴られ気絶。

・千野

→午前0時過ぎ、万斗と別れた後、図書館にて意識を失った明智を発見。その後同じように背後から頭部を殴られ気絶。

・万斗

→午前0時過ぎ、千野と別れた後、図書館にて意識を失った明智、千野を発見。その後同じように背後から頭部を殴られ気絶。(D棟ホールにて発見)

・独島

→相川達に起こされるまでずっと個室で寝ていた。

・北条、ジャック

→不明。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学級裁判 後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千野 李玖「全く、これでは『絶望の庭』への示しがつかないではありませんか」

千野君が自らの過ちを認め、頭の包帯を外し、懐から拳銃を取り出した時。

彼が発した衝撃の一言により裁判場は一瞬で沈黙に包まれた。

相川 凛「…………今、なんて言ったの?」

千野 李玖「おやおや、相川殿は頭だけでなく耳まで悪いようだ。アナタ如きの人間が拙僧に2度も同じことを言わせるつもりですかな?」

口角を上げ侮蔑するような目で千野君はうちを見る。

霜花 優月「私の聞き間違いでなければ、彼は『絶望の庭』と言いました。つまり貴方は………」

千野 李玖「ええ、ええ。アナタ達の想像している通りですよ。拙僧には『絶望の庭』所属の人間です。アナタ達からすると『スパイ』ということになりますね」

彼は不敵に笑うと、一歩下がり恭しく礼をした。」

千野 李玖「改めまして下等生物の皆さん。『絶望の庭』幹部の千野です。どうぞお見知り置きを。ほっほっほっ………」

その浮かべた笑みが、彼の邪悪さを体現していた。

そして分倍河原君とはまた違う、得体の知れない悪意が彼を渦巻いている気がした。

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「………ボクを」

千野 李玖「ん?どうしたのですかな万斗殿?」

万斗 輝晃「ボクを騙したのか!!!!!!!」

千野君の話が終わった瞬間、自分の席に拳を思いっきり叩きつけ万斗君は激怒した。

万斗 輝晃「ボクを利用したんだろ!!『絶望の庭』の手がかりが見つかったとか、『万斗殿だけが頼りなのです』とか言ったくせに、本当はお前が殺人犯だったんじゃないか!!!この裏切り者!!!」

千野 李玖「……………………ほっほっほっ。アナタが()鹿()で本当に助かりましたよ」

千野君はまた邪悪な笑みを浮かべる。

千野 李玖「この計画にはどうしても共犯者が必要でしたからね。相川殿、柴崎殿、明智殿の3人は頭の回転が早く拙僧の真意に気づく可能性があるから除外。霜花殿も鋭い勘を持ち勘づかれる危険があったので除外。黒瀬殿は逆に馬鹿すぎて計画の遂行に支障が出る為除外。独島殿はスパイとして他にすべきことがあったので共犯作業は難しかった。なので残ったアナタに共犯者になってもらうことにしたんですよ」

千野 李玖「()()()()鹿()()()()()()()()()()()()、おまけに()()()()状態だったアナタは駒として非常に扱いやすかったです。感謝してますよ、万斗殿?」

万斗 輝晃「………お前えええええええええ!!!!!!!」

激高した万斗君が千野君は駆け寄り拳を振るおうとする。が………。

万斗 輝晃「ぐあっ!?」

モノカバ「こらこら!今は裁判中カバよ?暴力行為は禁止カバ!」

モノカバの合図で謎のアームが万斗君を捕らえた。

前回の裁判でジャック君を拘束したのと同じようなものだ。

万斗 輝晃「く、くそっ!?離せ!!アイツをぶっ殺してやる!!!」

黒瀬 敦郎「落ち着けって輝晃!オレもクソムカつくてけどよ!今暴れてもしょうがねーだろ!」

霜花 優月「そうです輝晃。貴方の気持ちもよく分かります。ですが今は堪えて下さい」

万斗 輝晃「………くそっ!!!」

 

 

 

 

 

そんな万斗君を黒瀬君と優月ちゃんが止めてる時、うちは別の人物を見ていた。

千野君と同じスパイ仲間である筈の独島さんだ。

彼女の様子は…………明らかにおかしかった。

相川 凛「…………独島さん?」

独島 灯里「………ど、どうして………?どうしてなの…………?」

彼女の顔は真っ青で、今も小刻みに震えている。

そして怯えた表情で千野君を見ている。

どう考えても仲間に対して向ける表情じゃない。

千野 李玖「ほっほっほっ。独島殿の様子が気になっているようですね?」

うちの心情に気がついたのか、千野君がうちを見る。

千野 李玖「本来、拙僧らの計画では拙僧の正体を明かす予定ではなかったんですよ。だからイレギュラーな事態が発生して彼女も戸惑っているのでしょう」

相川 凛「戸惑っている………?」

戸惑い。

そう言われるとそうなのかも知れない。

しかし、本当にそれだけなのだろうか。

戸惑いにしては、リアクションがちょっと違う気がするんだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モノカバ「万斗クンのせいでちょっと脱線しちゃったけど、裁判を再開するカバよ!じゃあボクはもう喋んないから、オマエらで好き勝手喋っちゃっていいカバ!」

拘束された万斗君が冷静になった為、一時中断した学級裁判が再開された。

万斗 輝晃「話すことなんてないだろ!」

拘束を解かれた万斗君は顔を真っ赤にさせ千野君を指差す。

万斗 輝晃「全部アイツのせいだ!今すぐ投票してアイツを裁くんだよ!!」

黒瀬 敦郎「そ、そうだよな!だってさっき李玖の野郎、業を殺したって認めたもんな!」

柴崎 武史「馬鹿なこと言ってんじゃないッスよ」

投票しようとする2人に対し柴崎君がそれを止める。

柴崎 武史「北条サンを殺したのが千野サンってことは分かったッスけど、ジャックサンの事件についてはまだ何も解決してないんスよ?それなのに投票なんて自殺行為にも程があるッス」

万斗 輝晃「そんなのヤブ医者もアイツが殺したに決まってるよ!!アイツが…!」

柴崎 武史「じゃあ万が一犯人が別だった場合アンタは責任取れるんスか?」

万斗 輝晃「それがあり得ないんだよ!!前回の麻衣子さんだって2人も殺したじゃないか!!なら今回も…………」

 

 

 

 

 

 

 

明智 麻音「少し黙りたまえ」

すると突然、背筋がゾッとするほど冷たい声が聞こえた。

その声の主である明智さんを見ると、鋭い目つきでうちらを見渡していた。

明智さん…………………もしかして怒ってる?

明智 麻音「全員一度口を閉じろ。興奮しすぎだ。頭を冷やせ」

千野 李玖「ほっほっほっ。その命令、拙僧が聞く必要があるのですかな?」

明智 麻音「口を閉じろ、と言った筈だが?こんな簡単な内容も理解出来ないのかね?」

千野 李玖「……………随分とお怒りの様子ですね。では拙僧も大人しく黙ってるとしますかな」

千野君はまた不気味な笑みを浮かべると口を閉じた。

そして裁判場は沈黙に包まれる。

明智さんのあんなに怒ってる姿、初めて見た。

当然、うちも今は怒りのゲージが最高点に達しそうなくらいには怒っている。

でも、分倍河原君の時とは違う。

怒りを静かに秘めている状態、という言い方でいいのだろうか。

なんか、怒りの中に冷静さが残っているって感じだ。

 

 

 

 

 

 

明智 麻音「………全員落ち着いたかね?」

しばらく沈黙の時間が続いた後、明智さんが口を開く。

柴崎 武史「落ち着いたも何も、僕は最初から冷静にだったッスけど」

明智 麻音「キミはそうだろうな。だがさっきは千野李玖クンのカミングアウトで心の中では皆多少は動揺した筈だ。それに怒りも湧いてきただろう。ワタシも実際そうだった。それに加えてだいぶ話し合いがヒートアップしていたようだったからな。ここで一度気持ちのリセットを、ということで議論を止めたんだ。キミにとっては無駄な時間だったようだがな」

柴崎 武史「まあいいんじゃないッスか。これでまた建設的に話が出来るし」

深く息を吐き自分に言い聞かせるようにそう話した明智さん。

やっぱり明智さん、相当頭にきてたんだ。

明智 麻音「では議論を再開しようか。まず投票に移行するかどうかについてだが、当然それはノーだ。理由はさっき柴崎武史クンが言った通り、北条業クンとジャック・ドクトリーヌクンを殺害した犯人が別であれば、それを特定しなくてはいけなくなるからだ。万斗輝晃クン、前回の裁判の事をもう忘れたのかね?」

万斗 輝晃「忘れたって………何をだよ?」

明智 麻音「………助手。キミなら覚えているだろう?クロが複数いた場合の話だ」

相川 凛「うん。覚えてるよ。確か…………」

 

 

 

 

 

 

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3章 学級裁判 前半

 

 

 

 

 

明智 麻音「少し待ちたまえ。まず確認しなくてはならない事があるだろう」

明智さんがみんなの会話に待ったをかける。

ちなみに明智さんは、優月ちゃんとジャック君の間にある今まで空席だった場所にいる。

明智 麻音「聞いた話によると、この裁判は被害者を殺した犯人を当てられないと無実の人間は全員死ぬのだろう。ならもし今回の事件、三人を殺した犯人が別々だった場合、三人全員当てられないとシロのワタシ達は死ぬと解釈していいのかね?」

モノカバ「お答えしましょうカバ!」

明智さんの質問に答えたのはモノカバだ。

モノカバ「学則には既に追加したけど、同時に殺人が発生した場合、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()カバ!だから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()カバ!まあでも投票自体は全員分してもらうんだけどカバ」

霜花 優月「では後に殺された二人の投票結果を間違えたとしても残ったシロは処刑されないという事ですか?」

モノカバ「そうカバ!!あくまでシロの生死がかかってるのは最初に殺したクロの投票のみって事カバ!」

………これは正直うちらにとっては朗報だ。間違えて全員死亡という最悪のケースになる確率を大きく下げられる。

 

 

 

 

 

 

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相川 凛「こんな感じの会話だったよね」

明智 麻音「その通りだ。今回の場合、仮に犯人が別々だとしよう。その時、北条業クンが殺されたのが先でジャック・ドクトリーヌクンが殺されたのが後であれば、投票するのは千野李玖クンでいいだろう。しかしその順序が逆であれば、ワタシ達が千野李玖クンに投票すればそれは間違いという事になる。分かったかね万斗輝晃クン?議論もせずに投票に移行するのがいかに危険なことなのか」

万斗 輝晃「…………………分かったよ」

明智さんの説明に万斗君は渋々頷いた。

霜花 優月「あの、まず質問なんですが………李玖、貴方は本当に業を殺した犯人なんですか?」

千野 李玖「ええそうですとも。拙僧があのイカレ女を殺害した犯人ですよ」

柴崎 武史「じゃあアンタがやった事、今ここで洗いざらい吐くッス。分倍河原サンの時みたいに矛盾が出てくる可能性があるッスからね」

千野 李玖「あの図体だけ大きいゴミと一緒にされるのは心底不愉快ですが………いいでしょう、愚者でも分かるよう、1から丁寧に説明してあげますよ」

呆れたようにため息をつくと、千野君は自分の罪を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

千野 李玖「拙僧はまず、2日目の午前に前回のC棟遊園地の武器庫から掠め取った拳銃を手にB棟の『機械工の研究教室』へと向かいました。そこで相川殿の推理通り、人が入ると自動で弾が発射される罠を仕掛けておいたのです。丁寧に証拠隠滅をしたつもりでしたが、まさか糸屑一つで特定されるとは思いませんでしたよ。褒めて差し上げます」

 

 

千野 李玖「次に拙僧は2日目の午後9時から万斗殿と合流しました。目的は察しの通りアリバイ作りの為です。その後11時頃に北条殿をチャットで研究教室に呼び出しました。そしてそのまま彼女は自動拳銃により死亡。12時頃には万斗殿と別れ研究教室に向かいました」

 

 

 

千野 李玖「北条殿の死亡を確認した拙僧は、D棟図書館に向かい、彼女が一瞬外に出た隙を付き図書館へと侵入。戻ってきた明智殿の背後から本で殴りつけました。その後拙僧は包帯を頭に巻き、事前に用意しておいた血液パックをばら撒いてから気絶したフリをする。万斗殿を図書館へ呼び出し、彼が驚き油断している中背後から彼の後頭部を殴りました」

 

 

 

千野 李玖「後は簡単です。万斗殿をホールへと移し、B棟へと戻って北条殿の首を切り落としました。そして首をホルマリンに浸ければ完成です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千野 李玖「どうです?拙僧のやった事は全て話しましたよ。これで満足ですかな?」

黒瀬 敦郎「この野郎………!」

自慢げに話す千野君に対して怒り震える黒瀬君。

相川 凛「明智さん。今のを聞いてどう思った?」

明智 麻音「………今のところ矛盾点はない。が、それが逆に不気味だというのが正直な感想だ」

ふむ、と彼女は顎に手を当て考える。

柴崎 武史「まーそれならそれでとりあえずいいじゃないッスか。それよりジャックサンの事件について議論するのが優先ッスよ。だいぶ時間食ってるしモもたもたしてられないッスよ」

千野 李玖「その通りですな。拙僧も命が惜しいですし、ジャック殿の事件について議論していきましょう。拙僧も積極的に意見を出せるように頑張ります」

万斗 輝晃「お前………!ボクを騙して業さんを殺した癖にいけしゃあしゃあと………!」

モノカバ「そうカバ!というかオマエらどんだけ時間かけてるカバ!時間は無限じゃないカバよ!」

黒瀬 敦郎「うるせーぞコラ!テメーは口閉じてろ!」

霜花 優月「そうですよ。そもそもこんな裁判をやる羽目になってるのも、元はと言えば貴方のせいでしょう。黙って見ていて下さい」

モノカバ「ま、また邪険に扱われたカバ………。しょぼーん」

うるさい外野を即黙らせる2人。頼もしい。

相川 凛「はは…………。じゃあまずモノカバファイルから見ていこうか」

次はジャック君の事件について議論する。

この事件も千野君が関係しているのか………それとも違うのか。

集中しないと。

まだ裁判は終わっていないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

議論開始!

 

 

明智 麻音「では、モノカバファイル⑦を見ていくぞ。被害者は《超高校級の医者》ジャック・ドクトリーヌクン」

霜花 優月「死体発見場所はD棟中庭にある窯の中です。誰か分からない程焼け焦げた状態でしたが、武史の生存が確認された事から、被害者はジャックだと判明しました」

黒瀬 敦郎「死亡推定時刻とかは書いてねーな………」

千野 李玖「ほっほっほっ。他に有益な情報といえば、[両足が切断されていた]、[薬物を摂取した形跡がある]、[蕁麻疹が発生していた]といったところでしょうか」

万斗 輝晃「だ、だからどうしたんだよ!さっき聞いたけど、窯は死体を発見した時も煙を上げてたんだろ?なら[殺されて燃やされたのは最近]で間違いないんだ!なら業さんが殺されたより後になるんだよ!」

柴崎 武史「つまり、先に殺されたのは北条サンで投票すべきは彼女を殺した千野サンだと?」

万斗 輝晃「そうだ!そうに決まってる!」

 

 

 

 

 

[殺されて燃やされたのは最近]←[お菓子袋の燃えカス]

 

 

 

 

 

それは違うっ!

 

 

 

 

 

相川 凛「ジャック君がいつ殺されたかは分からないけど、彼の死体が燃やされたのは最近ではないと思う」

万斗 輝晃「何でだよ!だって凛さん達が駆けつけた時まだ煙が上がってたんでしょ?なら燃やされたのはその1時間前くらいなんじゃ………」

相川 凛「窯の中を見て見たんだけど、中にお菓子の燃えカスみたいなものが大量に残ってたんだ」

明智 麻音「………燃えカス?」

黒瀬 敦郎「あ、オレ一部持ってきたぜ」

怪訝そうな顔をする明智さんに対して、黒瀬君はポケットから黒焦げになった燃えカスを取り出してみんなに見せた。

柴崎 武史「お菓子の袋………と言われたら確かにそう見えるッスね」

相川 凛「うち、優月ちゃん、黒瀬君、独島さんの4人で見てるから間違いないよ。そうだよね、みんな?」

黒瀬君と優月ちゃんが頷く。

 

 

 

 

 

 

独島 灯里「……………………」

しかし、彼女は違った。

相川 凛「独島さん?」

霜花 優月「灯里、さっきからずっとこの調子ですね。呼びかけにも応答しませんし………」

虚ろな目で空を見つめている独島さん。

千野君が『絶望の庭』構成員であると自白した時からだ。

千野 李玖「…………………」

そんな彼女の様子を見ていた千野君は、深くため息をつくと………

パン!!

独島 灯里「………!?」

千野 李玖「………いい加減目を覚まして下さい、独島殿」

大きく手を叩く。その音で独島さんは怯えた目を向ける。

独島 灯里「え…………ご、ごめんなさい………」

千野 李玖「謝罪は不要です。それより相川殿がアナタに質問してますよ?答えてあけだらどうですか?」

独島 灯里「………え?ご、ごめん相川さん。ぼーっとしてて………」

千野君に言われてようやく目を合わせてくれたが、その目から怯えの感情は消えていなかった。

相川 凛「本当に大丈夫?」

独島 灯里「う、うん。全然平気だよ。それよりお菓子の燃えカスの話だっけ?わたしもばっちり見たよ!相川さん達と一緒に見たもん!」

無理やり笑顔を作り笑う独島さん。

黒瀬 敦郎「灯里………テメー本当に大丈夫か?」

独島 灯里「もー黒瀬くんまで心配性なんだからっ☆平気だよ☆」

 

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「それで?その燃えカスが何なんだよ?」

万斗君が苛立ちを見せながら尋ねた。

相川 凛「う、うん。うちはさ、このお菓子の燃えカスが『殺人が起きて燃やされた時間を誤認させるため』なんじゃないかって思ってるんだ」

黒瀬 敦郎「燃やされた時間の誤認?」

相川 凛「うん。その前に確認なんだけど、人間の死体が完全に燃えて骨になるまでどのくらい時間がかかるか分かる人いる?」

霜花 優月「………大体、40分から1時間くらいと聞いたことがあります」

うちの問いかけに優月ちゃんが答えてくれた。

霜花 優月「しかし、それはあくまでちゃんとした火葬場で火葬する時の話です。その時の温度や人間の体質によって違いは出てくるかと」

明智 麻音「補足になるが、一般的な火葬する際の火の温度は800度から1200度くらいと言われている。低すぎると骨になるまで時間がかかるし、高すぎると骨の形が崩れかねない。だから適正な温度が決められているのだ」

そうなんだ。それは知らなかった。

相川 凛「ありがとう。ジャック君の死体は誰だか分からないくらい燃えてたけど、骨にまではなってなかった。ということは窯に入れられてからそこまで時間は経ってない事になる」

万斗 輝晃「だからボクはさっきからそう言ってるんだよ!」

 

 

 

 

相川 凛「じゃああのお菓子のゴミは何なのか?それを捜査の時からずっと考えてたんだ」

万斗 輝晃「燃やす時の燃料にしただけでしょ」

相川 凛「人を燃やす時に燃料なんていらないでしょ?人に火をつけれたらすぐ燃えると思うんだ」

柴崎 武史「まあそうッスね。火葬みたいに骨まで綺麗に燃やすなら燃料とかいるッスけど、ただ人の肌を燃やすとかなら人に火をつければいい話ッスね」

相川 凛「うちの推理なんだけど…………まず夜か夜中にジャック君に火をつけて燃やす。その後犯人は一度彼の焼死体を取り出して、うちらが見つける前に大量のお菓子の袋を燃やす。こうすればジャック君が今まさに燃やされたって勘違いさせることが出来ると思うんだ」

明智 麻音「…………ふむ。確かにそう考えることも出来るが…………」

明智さんは腕を組む。

明智 麻音「万斗輝晃クンの言ってた通り死体を燃やす為の燃料にした可能性も十分考えられるだろう。それに一度死体を取り出したと言っていたが、キミ達が焼死体を発見した時、それは窯に入ったのだろう?なら犯人はまた現場へ行き焼死体を窯に入れ直したという事かね?」

相川 凛「うん。そうなるんだけど…………」

明智 麻音「助手よ、キミの推理は確かに面白い。だが………確証がない」

相川 凛「う〜ん………。やっぱり無理があったかなあ………」

お菓子のゴミの謎を解けるいい推理だと思ったんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柴崎 武史「なら、別の観点から攻めてみるッスか?」

すると柴崎君がそう提案した。

柴崎 武史「そのお菓子の謎が解けないなら、違う点を議論してみるッスよ。じゃあ………………ジャックサンの死因について議論してみるのはどうッスか?」

独島 灯里「死因?」

柴崎 武史「そうッス。別に他に話す事ないならいいんじゃないッスか?」

明智 麻音「死因か………。焼死体の特定の際少し話したが、もう一度整理してみるのもいいかもしれないな」

相川 凛「そうだね。今まで分かったことまとめてみようか」

さっきまでしてた議論が遠い昔のように思えるくらい長く、内容の濃い裁判だ。

情報の整理をすれば何か分かるかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霜花 優月「先程の焼死体の正体についての議論の際には、研究教室にある3種類の薬に焦点が当てられましたね」

相川凛「『ヒエヒエ薬』と『モリモリ薬』、それに『ビリビリ薬』の3つだね。3つとも開封済だったから誰かが使ったのは間違いない状況だったよ」

黒瀬 敦郎「んで、武史は『ビリビリ薬』を飲まされて動けなかったんだよな?」

独島 灯里「だから残りの2つを混ぜたやつをジャックくんは飲まされたって話だったねー」

千野 李玖「それにモノカバファイルにも『薬物を摂取した形跡あり』『全身に蕁麻疹が発生している』と記載があります。これは『モリモリ薬』の副作用と一致している。つまりジャック殿は毒殺であると判断したというわけですな」

柴崎 武史「今の話を聞く限り、ジャックサンの死因は毒殺で間違いなさそうッスね」

明智 麻音「…………ふむ、分かっていることはこれくらいか」

ひとまず情報の共有、整理は出来た。

後はここからどう議論していくかになるけど………。

 

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

すると万斗君が納得いかないのか、大きめの声で議論を止めた。

柴崎 武史「………またアンタッスか。今度は何が不満なんスか?」

万斗 輝晃「う、うるさい!死因が毒殺って決めつけてるけど、本当は違うかもしれないじゃないか!」

明智 麻音「………そう考えた理由は何かね?」

万斗 輝晃「アイツは両足を切られてたんでしょ!?なら生きてる間に切断されて失血死した可能性だってあるじゃないか!」

黒瀬 敦郎「いやでもよ、モノカバファイルにも薬物を接種したった書いてあるじゃねーか」

万斗 輝晃「『2種類』とは書いてないだろ!ならヤブ医者の野郎は『1種類』しか薬を飲んでない可能性だってある筈だよ!もしそうなら『毒殺』とは言えないじゃないか!」

明智 麻音「………ふむ、つまりキミが言いたいのは、『彼はモリモリ薬1種類しか飲んでいない。であれば副作用で死ぬ事もないし、蕁麻疹が出てたことも説明がつく』ということでいいのかね?」

万斗 輝晃「そ、そうだよ!それに、もしかしたら足を切断されて出血多量で死んだ後に犯人が薬を飲ませたのかもしれない!死因の偽造のために!」

万斗君の言ってる事は………確かに一理ある。

毒殺された、というのはあくまでモノカバファイルの情報からうちらが推測した結果だ。

実際に『2種類の薬を飲み、副作用で死亡した』とは書かれていない。

犯人が別の方法で殺した後、薬を飲ませて本当の死因を隠そうとしたという線も考えられる。

あれ?でも人が死んだ後に薬飲ませたら蕁麻疹って出るのかな?

 

 

 

 

 

 

 

独島 灯里「ねーねー、わたしちょっと気になってることあるんだけどー聞いてもいいかなっ☆」

すると議論に置いてかれてる様子の独島さんが手を挙げた。

元の独島さんに戻って…………はない。

明らかに無理に明るく振る舞っている。

柴崎 武史「却下ッス。どうせくだらない質問でしょうし」

独島 灯里「えー?柴崎君のいけず☆」

相川 凛「まあまあ。………それで独島さん?気になることって?」

独島 灯里「ジャックくんの足が切断されてたって話なんだけどー。それってどうやって切断したのかなって思ってさ☆」

黒瀬 敦郎「はぁ!?テメーオレらと一緒に捜査したじゃねーか!この馬鹿野郎!」

独島 灯里「わたし、銃弾のことで頭一杯だったからさっ☆」

柴崎 武史「………案の定ッスね。相川サン、説明はアンタに任せるッス」

柴崎君から盛大なため息が聞こえる。

だからといってうちに丸投げするのはどうかと思う。

後で文句言ってやろう。

えっと、確かあれでやったんだよね…………。

 

 

 

 

 

 

コトダマ提示

 

 

 

[電動ノコギリ]

《機械工の研究教室》にある電動ノコギリにのみ使用された形跡があった。

 

 

[乾いた血痕]

《機械工の研究教室》内に飛び散った血痕はだいぶ乾いていた。

 

 

 

 

これだよ!

 

 

 

 

相川 凛「えっと、《機械工の研究教室》には沢山の機械があったと思うんだけど、電動ノコギリにだけ使った跡があったんだよ。多分それで足を切断したんだと思う………」

自分で言っておいて気分が悪くなる。

人の身体を切断なんて………正気の沙汰じゃない。

うちは千野君を睨む。

千野 李玖「ほっほっほっ。そう睨まないでください。拙僧も好きで北条殿の首を切断したわけじゃないのですよ」

霜花 優月「すぐバレるような嘘をつかないで下さい。殺害後にわざわざ教室に戻り切断する理由がありません。貴方は私達を驚かせる為にあのような事をしたのでしょう?」

千野 李玖「これはこれは。流石にバレてしまいますか。下等生物にしてはよく見ていると褒めておきましょう」

霜花 優月「…………」

明智 麻音「霜花優月クン。それに助手。堪えるんだ」

危ない。明智さんと言葉がなけれはまた怒りで周りが見えなくなってしまうところだった。

この男の言葉を真に受けるな。

相川 凛「………ちなみに《機械工の研究教室内》に飛び散っていた血痕なんだけど、だいぶ乾いてたよ。だから少なくとも足を切断されてから3時間以上は経ってると思う」

霜花 優月「となると、ジャックが殺された時間は昨日から深夜にかけて、という推理は間違っていないですね」

冷静になったうちらはそう意見を述べる。

 

 

 

 

 

 

黒瀬 敦郎「………ん?けどよ、その足を切断したジャックをD棟の窯まで運んで燃やしたんだよな?それってどうやって持ち運んだんだ?」

独島 灯里「えーっ?黒瀬くん、そんなことも分かんないんだ☆」

黒瀬君がふと呟いたその疑問に対して、今度は独島さんがお返しとばかりに煽る。

黒瀬 敦郎「うっせー!テメーもどうせ分かんねーだろうが!」

独島 灯里「残念でしたっ☆わたしは分かってるよっ☆ねー相川さん?」

独島さんがうちに話を振る。

いや、まあ分かるんだけど、それくらい自分で答えればいいのに………。

えっと、ジャック君をD棟まで運んだ方法か………。

 

 

 

 

 

コトダマ提示

 

 

 

[車輪の跡]

窯の近くにあった車輪が通ったような赤色の跡。

 

 

 

[購買の在庫]

事件前と後でお菓子が大量に持ち出されており、また、台車一台も無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

これだよ!

 

 

 

 

 

 

相川 凛「A棟の購買から持ってきた台車だよ。犯人はこれを使ってジャック君を運んだんだ。窯の近くに血で濡れた赤色の車輪跡があったから間違いないよ」

独島 灯里「そうだよ〜。このわたしと相川さんが確認したから間違いないよ☆」

柴崎 武史「犯人は初めからジャックサンを殺して窯で死体を焼く計画を立ててたって事ッスね」

霜花 優月「………ずっと疑問に思っていたのですが、犯人はどのようジャックを捕まえたのでしょうか?」

優月ちゃんが困った顔で考え込む。

霜花 優月「いえ、薬を飲ませたにしろ、足を切断したにしろジャックを捕まえる必要があると思います。それをどうやったのかなと疑問に思いまして……」

確かにそれはそうだ。

歩いてる(彷徨っている)人間の足をいきなり切断出来る訳がない。

同じく薬を無理矢理飲ませる、というのは余程の体格差がない限り難しい。

黒瀬 敦郎「そんなの、力ずくで抑え込んだんじゃねーの?」

霜花 優月「もしそうなら、犯人は限られてると思うんです。ジャックは比較的身長の高い男子です。私のような戦闘経験のある人間ならまだしも、女子である凛や麻音、それに灯里がジャックを力ずくで押さえられるとは到底思えません」

黒瀬 敦郎「…………あ」

優月ちゃんの指摘に黒瀬君はハッと気がつく。

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「犯人はソイツだよ!!」

万斗君が千野君を指差す。

万斗 輝晃「ソイツがヤブ医者を背後から襲ったんだ!」

柴崎 武史「いや、怪しいのは分かるんスけど、根拠もなしにそう叫ばれても困るんスよ。ていうかアンタ少し黙っててもらえます?」

万斗 輝晃「ソイツは昨日の6時半くらいにヤブ医者の太ももにナイフを刺して歩けなくして、すぐ近くの空き教室に運んだんだ!全部全部ソイツの仕業なんだ!」

独島 灯里「やばいよ〜。万斗くんが頭おかしくなっちゃってるよ☆」

黒瀬 敦郎「おいおい、これじゃ議論になんねーぞ?」

自分の言いたいことを大声で叫び続ける万斗君。

相川 凛「万斗君。あなたの主張は分かったから落ち着いて。これじゃ議論にならないよ」

万斗 輝晃「………凛さんはボクの事信じてくれるのかい?」

縋るような目でこちらを見る万斗君。

相川 凛「………うちは、あなたの優しい一面を知ってる。だから信じたいって思ってるよ」

万斗 輝晃「………ありがとう!ボクの味方はやっぱり凛さんしかいないよ!」

涙目でそう言われる。

彼が怪しいという気持ちはある。

けど………彼が意図的に人を殺したかと言われると、何か引っかかるのだ。

ビビりな彼が………殺人なんてリスクのある行動をするのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明智 麻音「…………待て」

ここからさらに議論が白熱しそう、と考えた時だった。

明智さんが()()()()の方を向く。

明智 麻音「………今、キミはこう言ったな?『昨日の6時半くらいに太ももにナイフを刺してすぐ近くの空き教室に運んだ』と。…………何故、そんな事を知っているんだ?」

万斗 輝晃「……………………え?」

その人物、万斗君はピタリと動きを止めた。

明智 麻音「確かにモノカバファイルには『太ももに刺し傷がある』とは書いてある。しかし、今までの議論で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんて話は一切出てきてないんだ。それを何故キミが知っている?」

万斗 輝晃「そ、それはボクの予想で………」

明智 麻音「しかもキミは『すぐ近くの』とまで言い切った。随分と具体的な予想だが…………………もしかしてキミは、千野李玖クンがジャック・ドクトリーヌクンを襲った時一緒にいたんじゃないか?そしてそれを知ってたんじゃないか?」

万斗 輝晃「ひっ!?そ、それは…………」

明智さんの容赦ない追求に万斗君は怯む。

相川 凛「………明智さん?」

明智 麻音「………助手よ、ワタシ達は犯人を暴くため随分と遠回りして議論していたみたいだ。今まで死因やら死亡推定時刻やら色々考えてきたが…………シンプルに考えてみてくれたまえ。犯人はジャック・ドクトリーヌクンの両足を機械工の研究教室にある電気ノコギリで切断したのだろう?そして北条業クンの首も同じ場所で、しかも同じ方法で切断されている。普通ならこの2つの作業、()()()()()()()()()()()()()()と疑問に思わないかね?」

相川 凛「!!」

明智さんの言葉を聞いた瞬間、うちの頭の中に雷のような衝撃が走った。

そうじゃないか。どうしてそれを考えなかったのだろう。

人体の一部を切断するという共通点。

別々の人物が切断したと考えるより、同じ人物が切断したと考える方が自然だ。

となると…………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪しい人物を指定しろ!

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛

 

飛田 脚男

 

霞ヶ峰 麻衣子

 

喜屋武 流理恵

 

分倍河原 剛

 

北条 業

 

柴崎 武史

 

錦織 清子

 

千野 李玖

 

霜花 優月

 

明智 麻音

 

ジャック ドクトリーヌ

 

独島 灯里

 

黒瀬 敦郎

 

中澤 翼

 

幸村 雪

 

万斗 輝晃

 

銀山 香織

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「…………千野君」

千野 李玖「おや?拙僧が怪しいのですかな?」

とぼけた表情を見せる千野君。

相川 凛「あなたはさっき、業ちゃんの首を自分で切断したって言ってた。なら、ジャック君を襲って、足を切断したのもあなたなんじゃないの?」

千野 李玖「…………」

相川 凛「あなたはB棟を彷徨っていたジャック君を襲って、足を切断するために近くの空き教室に運んだ。その時ジャック君を運ぶのは1人だと難しい。だから万斗君と協力して運んだんじゃないの?そうであればさっきの万斗君の証言の説明も付く。そして彼を殺害して窯へ運んだ」

千野 李玖「………………………………」

相川 凛「正直、千野君とはまた別の人が同じように体の一部を切断したなんて考えたくない。………だから聞かせて。あなたは2日目の午後6時以降、何をしてたの?」

千野 李玖「…………………………………………」

相川 凛「………千野君。ジャック君を殺したのはあなたで、万斗君を騙して協力させたんでしょ?」

千野 李玖「…………………………………………………………」

うちの話を黙って聞いてた千野君は……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千野 李玖「…………どうやらここまでのようですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諦めたように深くため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千野 李玖「そうですよ。拙僧がジャック殿を襲い、そして足を切断したのですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「!?」

認めた。

ジャック君を襲って足を切断したのを………認めた。

黒瀬 敦郎「………テメー。やっぱりジャックの事件も………」

千野 李玖「全く、まさかそこまで喋ってしまうとは。組んだ馬鹿がここまで無能だとは思いませんでしたよ。まあウジ虫の皆さんがここまで辿り着けたのです。ご褒美として全ての事実を話しましょう。と言っても、アナタ達の推理通りですが…………。拙僧は2日目の午後6時30半頃、B棟の廊下を彷徨うジャック殿を襲撃し、ナイフで太ももを刺し行動不能にしました。そして彼を近くの空き教室に連れて行きました。その後、夜中の1時過ぎに既に死亡した彼の足を電気ノコギリで切断し、彼を台車でD棟へ運びます。そして窯の中に入れ火をつけ、約1時間程放置します。その後彼を一度取り出し火を消してまた窯に入れます。そしてアナタ達が慌しく動き出した朝の時間を見計らって、大量の火をつけたお菓子を窯に入れます。こうしてジャック殿がつい1時間前に燃やされ始めたと錯覚してしまう、というお遊びのようなトリックが完成するのです」

万斗 輝晃「このクソ野郎…………!!!」

万斗君は血管がはち切れそうなくらいの怒りを浮かべ千野君に怒鳴る。

万斗 輝晃「またボクを騙したんだな!!ヤブ医者の野郎が『絶望の庭』だろうとか言って!だから拘束する必要があるからってボクに睡眠薬を渡してヤブ医者に飲ませるよう言ったんだな!!」

千野 李玖「ほっほっほっ。まさかあんな嘘に騙させるとは。本当に愚かな人だ」

万斗 輝晃「笑うな!!黙れ!!!」

 

 

 

 

 

 

霜花 優月「では、全ての貴方の仕業だという事ですか………?」

千野 李玖「ええ、ええ」

柴崎 武史「僕を襲って気絶させたのも、ジャックサンを窯に入れて焼いたのも全てアンタがやったと?」

千野 李玖「ええ。全て拙僧がやったことです」

満面の笑みを浮かべながら千野君は自白した。

つまり、今回の事件の犯人は自分だと言っているようなものだ。

なのに、何故彼はこんなにも余裕なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………今回の事件の犯人?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「待って千野君。あなたの話には一つ抜けてる部分がある」

千野 李玖「…………」

黒瀬 敦郎「抜けてる部分って何だよ………?」

相川 凛「ジャック君をナイフで襲ってから、死んだ彼の足を切断するまでの間が抜けてるんだよ。つまり、()()()()()()()()()()()について千野君は一切、話をしていないんだ」

明智 麻音「…………そうか、やはりそういう事なのか………」

明智さんはうちの言葉で既に察したのか、帽子を深く被り下を向いた。

独島 灯里「ど、どういうこと………?犯人は千野くんでいいんだよね………?」

相川 凛「………万斗君。あなたはさっき、『また騙したのか』って言ったよね?千野君に何をさせられたか、もう一回教えてもらってもいいかな?」

万斗 輝晃「そ、それは……………………!!」

柴崎 武史「アンタは騙された被害者なんだから別に千野サン庇う理由ないでしょ。どーしてそこまでビクビクしてるんスかね?」

万斗 輝晃「ボクは………ボクは犯人じゃない……………………」

霜花 優月「いや、貴方が犯人ではないでしょう。貴方が騙されて何をしたのかについて聞いているんですが」

万斗 輝晃「ボクは……………………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「またボクを騙したんだな!!ヤブ医者の野郎が『絶望の庭』だろうとか言って!だから拘束する必要があるからってボクに()()()()()()()()()()()()()()()()()()言ったんだな!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「……………………睡眠薬を飲ませたのはあなた、なんだよね?」

万斗 輝晃 「…………………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………なんという事だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………こんな、こんな結末になるなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪しい人物を指定しろ!

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛

 

飛田 脚男

 

霞ヶ峰 麻衣子

 

喜屋武 流理恵

 

分倍河原 剛

 

北条 業

 

柴崎 武史

 

錦織 清子

 

千野 李玖

 

霜花 優月

 

明智 麻音

 

ジャック ドクトリーヌ

 

独島 灯里

 

黒瀬 敦郎

 

中澤 翼

 

幸村 雪

 

万斗 輝晃

 

銀山 香織

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「犯人は……………………あなただよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「万斗君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「……………………」

相川 凛「あなたがジャック君に飲ませた薬は………睡眠薬じゃない。『ヒエヒエ薬』と『モリモリ薬』を混ぜた、飲んだら即死する劇薬だったんだよ。それをただの睡眠薬と思い込んだあなたは劇薬だと知らずジャック君に飲ませた」

相川 凛「薬を用意したのも千野君、足を切断したのも千野君、そして死体を窯に入れて焼いたのも千野君。けど………………その劇薬を飲ませのは万斗君だよね。ジャック君の直接の死因は劇薬の副反応による毒殺。つまり今回の事件のクロは、毒で死ぬ原因となった劇薬を飲ませたあなたになるの」

万斗 輝晃「………………」

彼はガタガタと震え出す。

顔は真っ青を通り越して白くなっている。

相川 凛「本当はあなたも…………分かってたんでしょ?」

万斗 輝晃「…………………違う」

相川 凛「だからあんなに千野君に投票しようとした」

万斗 輝晃「……………違う!」

相川 凛「…………自分はクロではないと認めたくなかったから。自分に投票されれば自分は死ぬ。その事実を受け入れられなかったから」

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「違う!!!」

首を振り必死に否定する万斗君。

万斗 輝晃「ボクに殺意は無かった!ボクはただ拘束するだけのつもりだったんだ!!だからボクは犯人じゃない!!!」

相川 凛「万斗君…………」

万斗 輝晃「あの医者を殺す計画を立てたのも、ボクを嵌めたのも全部アイツじゃないか!!それなのに何でボクが犯人になるんだよ!?」

千野 李玖「ほっほっほ。アナタは本当に救いようがない馬鹿ですねえ」

すると千野君が高笑いをしながら万斗君を指差す。

千野 李玖「いいですかな?アナタの意志など関係ないのですよ。殺意を持っていようがそうでなかろうが、アナタが飲んだら死ぬ薬をジャック殿に飲ませたのは間違いないんですよ。それが紛れもない事実なんです。つまり今回の事件のクロはアナタなんです。まあ騙されたアナタが全て悪いという事ですね。分かりましたかな?愚図の万斗殿?」

黒瀬 敦郎「テメーそれ以上喋んじゃねー!!!」

怒りの雄叫びを上げる黒瀬君。

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「そ、そうだ!さっきコイツは昨日の午後6時半頃ヤブ医者の奴を襲ったって言ったけど、あれは嘘なんだ!本当は今日の深夜、つまり3日目の夜中1時に襲って薬を飲ませたんだ!だから業さんより後にヤブ医者は死んだんだよ!つまり最初に死んだのは業さんだから投票すべきはあのクソ野郎なんだ!つまりオシオキされるのはアイツで…………」

千野君に真実を告げられてもなお、万斗君は諦めずに自分が投票対象でないことを主張する。

相川 凛「万斗君…………」

万斗 輝晃「そ、そうだ!だからボクは死なない!死ぬのはアイツじゃないか!それはそうだよ!だってボクは殺そうと思って殺したわけじゃないんだから!」

千野 李玖「全く、本当に愚かで哀れな人ですねえ」

しかしその希望の芽を摘み取るように千野君は追い討ちをかける。

千野 李玖「拙僧はジャック殿を殺した犯人ではない以上、拙僧が犯行時刻を偽る理由が何一つないのですよ。拙僧が嘘をついて投票を間違えれば拙僧も含め全員が死んでしまうのですから」

万斗 輝晃「黙れ!お前も分倍河原みたいにオシオキで死にたいとかそう思ってるかもしれないだろ!イカレた『絶望の残党』とかいう組織の一員だし、同じような事考えててもおかしくないだろ!!」

独島 灯里「!?」

その言葉にビクッと独島さんの肩が震える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明智 麻音「………万斗輝晃クン。残念ながら助手や千野李玖クンの言う通りだ。もしキミが犯人であるならば、千野李玖クンが嘘をつく理由がない。それにさっきキミ自身が証言したではないか。『夕方6時半頃千野李玖クンがジャック・ドクトリーヌクンを襲い、その後彼に騙される形でジャック・ドクトリーヌクンに薬を飲ませた』と。つまりキミが北条業クンが死亡する前に毒を飲ませたのは揺るぎのない事実なのだよ。よって殺害の順番はジャック・ドクトリーヌクンが先で北条業クンが後。…ワタシ達全員も千野李玖クンに一杯食わされたようで非常に癪だが………もうどうすることもできない」

明智さんが諭すようにそう話す。

万斗 輝晃「そんなっ…………!?誰か、誰かっ!!ボクを助けてくれよ!!」

万斗君の必死の叫び。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柴崎 武史「………………無理ッス。すんません、万斗サン」

柴崎君は悔しそうに唇を噛む。口端から血が垂れた。

黒瀬 敦郎「ちくしょう………ここでも何も出来ねーのかよオレは……!」

拳をドンと叩きつけ悔しさを露わにする黒瀬君。

霜花 優月「…………………」

悲しげな顔で下を向き小刻みに体を震わせる優月ちゃん。

独島 灯里「…………ごめんなさい…………ごめんなさい…………」

虚ろな目で謝罪を繰り返す独島さん。

万斗 輝晃「な、なんで…………!どうしてだよ!?」

千野 李玖「ほっほっほっ。皆さんも理解しているんですよ。アナタにはもう死しか道がない事をね。少なくともアナタみたいな愚図より物分かりはいいようです」

万斗 輝晃「黙れっっっ!!!」

千野君に怒鳴ると万斗君はうちの方を向いた。

万斗 輝晃「凛さん!!ボクを助けて!!!」

相川 凛「………え?」

万斗 輝晃「今まで何度もボク達を窮地から救ってくれたじゃないか!!なら今回も………ボクを助けてよ!」

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で彼はうちに懇願する。

万斗 輝晃「本当に殺意なんて無かったんだ!全部アイツが悪いんだ!!それなのにボクが犯人なんておかしいって思うでしょ?」

柴崎 武史「相川サン」

うちが彼の態度にどうすればいいかと焦っていると、柴崎君が声をかけてきた。

柴崎 武史「………最後まで任せっきりで申し訳ないッスけど、万斗サンを納得させて下さい」

相川 凛「………無茶言うね、あなたはいつも」

柴崎 武史「アンタを指名みたいッスからね」

困ったように笑う柴崎君。

もう………これ以上彼を苦しめるわけにはいかない。

こんな最悪な裁判…………もう終わらせないと駄目だ。

彼のためにも………そしてうちらのためにも!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理論武装 開始!

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「ボクは犯人じゃない!!!」

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「確かにボクはヤブ医者の奴に薬を飲ませたけど………」

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「決して殺すつもりなんてなかったんだ!ただ拘束して『絶望の庭』と関係があるのか問いただすつもりだったんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「それに用意したのはあのクソ野郎だ!ボクじゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「そ、そうだ!第一、死因は毒じゃないのかもしれない!」

 

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「ボクの飲ませた薬が[特に効果がなかった]かもしれないじゃないか!だって死因はハッキリとは分かんないんだし!」

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「そうだ!ボクはやっぱり無実なんだ!犯人は千野だよ!ボクじゃない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

[特に効果がなかった]←[モノカバファイル②]

 

 

 

 

 

 

 

これで終わりだよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相川 凛「………もう、やめてよ」

万斗 輝晃「……………………え?」

相川 凛「………ジャック君の事件を話し合う時、最初にモノカバファイル確認したの、もう忘れちゃったの?」

万斗 輝晃「………な、何の話だよ?そんな話、一度もしなかったじゃないか?」

明智 麻音「記憶障害まで起こしてるのか。ではワタシがもう一度読み上げようか。『焼却前、被害者の体には薬物を摂取した形跡があり、全身に蕁麻疹が発生していた。』この文章からジャック・ドクトリーヌクンが生前薬物を摂取したことは間違いないのだよ。これとキミの証言こそがキミをクロと判断する唯一にして最大の理由だ」

万斗 輝晃「そ、そんな………………!ぼ、ボクは…………!」

その場で頭を抱えうずくまる万斗君。

霜花 優月「………凛。その、彼はもう…………」

相川 凛「うん。…………最後にこの事件を振り返って終わりにするよ」

もう…………終わらせないと。

こんな虚しい裁判…………終わらせないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クライマックス推理 開始!

 

 

 

 

 

 

 

act.1

 

今回の事件は、『絶望の庭』所属の千野クンとクロの2人で行われた。

けど実際は犯行の計画、道具の準備、そして死体の処理まで全て彼が行い、クロは彼に騙された形で犯行に協力していたんだ。

事件の発端、それはうちらが毎日何かしらの病気に侵されるという動機だった。

症状によっては動けなくなったり、精神がおかしくなったり………。

そんな状況を利用した、千野の立てた殺人計画が水面下で実行されたんだ。

まず千野君が考えた計画が『被害者が不明』という状況を作り出すことだった。

そのために彼はまず、柴崎君を利用することにしたんだ。

彼が高熱の症状を治すため《薬剤師の研究教室》に薬を取りに来たところを、背後から薬の入った瓶で殴りつけたんだ。そして気絶した彼に2日間痺れて動けなくなる『ビリビリ薬』を飲ませ監禁した。

こうして柴崎君は行方不明になり、後の焼死体が誰か分からない、という状況が作られたんだ。

 

 

 

 

 

act.2

 

次に千野君はジャック君の殺害を実行することにした。

後に使用する大量のお菓子の袋や台車を購買から持ち出した後、2日目の午後6時半過ぎ、幻覚の症状の影響か廊下で彷徨っていたジャック君に襲い掛かり、太ももにナイフで傷をつけ行動不能にしたんだ。

その後千野君はクロに協力させてて彼を空き教室に運んだ。

そしてクロを言葉巧みに騙して睡眠薬と偽った毒薬を渡し、それをジャック君に飲ませるよう命じたんだ。

実はこの劇薬、さっきの《薬剤師の研究教室》にあった『ヒエヒエ薬』と『モリモリ薬』を混ぜたもので、この2つを同時に飲むと副反応で即死してしまうものだったんだよ。

けどクロはそうとは知らずジャック君にそれを飲ませてしまった。

殺意は無かったにしろ、クロはジャック君を殺害してしまったんだ。

 

 

 

act.3

 

その後千野君とクロはしばらく一緒にいたんだけど、その間にはもう一つの殺人計画が実行されていた。それは業ちゃんの殺人だよ。

千野君はどのタイミングで仕掛けたのかよく分からないけど、《機械工の研究教室》に入ってきたら勝手に銃が発射される自動拳銃装置を仕掛けた。その後うちと体育倉庫に一緒にいた業ちゃんを挑発じみたチャットで呼び出した。それが2日目の午後11時頃だよ。

業ちゃんは罠が仕掛けていることに気づかず、中に入ってしまったんだ。

そして自動拳銃装置によって銃弾が発射、業ちゃんはこめかみを撃ち抜かれて殺されてしまった。

この自動拳銃装置の最大の利点はどこにいようとも誰かを殺すことが出来ること。

その時千野君はクロと一緒にいたから、アリバイがあるから自分は犯人ではない、という証言を後にするためにもこの装置は必要だったんだね。

 

 

 

 

act.4

 

千野君の計画はまだ終わっていなかった。

次に行ったのは自分が被害者であるという状況を作り出す事だった。

まず彼はクロと別れた後、図書館にいた明智さんを襲うことにした。

A棟の保健所にあった輸血パックを準備した後、明智さんが図書館を離れた隙に忍び込んで、戻ってきた明智さんの後頭部を本で殴って気絶させたんだ。

そして図書館の床に輸血パックを全てぶちまけてから、自分もその床に転がって気絶したフリをしたんだ。

それから何分かした後、クロも図書館に現れた。

きっとクロは、図書館で倒れている血塗れの明智さんと千野君を見て慌てふためいたと思う。

そこで千野君は完全に油断したクロを同じように殴り気絶させたんだ。

こうして千野君は、自分も被害者であるという状況をクロに見せる事で犯人候補から外れるようにしたんだ。

 

 

 

 

act.5

 

無事2人を気絶させた千野君は、理由はよく分からないけど万斗君をD棟ホールまで運んだ。

そして次に彼がやったのはB棟に戻りジャック君の足と業ちゃんの頭部の切断をすることだったんだ。

《機械工の研究教室》にある電動ノコギリを使って彼は作業を終えると、業ちゃんの頭部をホルマリン漬けにしたのち、ジャック君の体を購買から持ってきた台車でD棟中庭まで運んだ。

そして窯にジャック君の体を入れると、火をつけて燃やしたんだ。

ここまでする理由は、彼は後に行方不明だけど生きている柴崎君と実際に死んだジャック君、どちらが焼死体の正体か分からない状況を作り出すためだったんだよ。

 

 

 

 

 

act.6

 

そしてジャック君の死体をある程度まで燃やした後、一度窯から取り出す。

その後はうちらが窯に集まる時間を予測してまたジャック君を窯に入れ、大量のお菓子と共に火をつけて燃やしたんだ。

こうしてうちらが発見した時、この焼死体ははつい最近殺されて燃やされたと錯覚してしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだよく分からないことだらけだし、正直納得いかない部分もたくさんある。

それでも…………………犯人はあなたしかいないんだよ…………!

 

 

 

 

 

 

《超高校級の情報屋》万斗 輝晃君!!

 

 

 

 

 

 

 

 

モノカバ「結論が出たカバ?じゃあ、本日2回目の投票をお手元にあるパネルでするカバー!それじゃあ、一人目の被害者、ジャック・ドクトリーヌクンを殺したクロに投票するカバー!当然、間違えたらシロの奴らは全員死亡だから気をつけるカバ!」

うちは震える手で万斗君の顔写真をタッチした。

 

 

 

モノカバ「じゃあ次は二人目の被害者、北条業サンを殺したクロに投票カバ!これについては間違えても死なないから気楽に押すカバー!」

迷わず千野君の顔写真をタッチする。

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

モノカバ「全員投票が終わったカバね!では、投票の結果、クロになるのは一体誰なのか?そして正解なのか不正解なのか?ドッキドキのルーレットターイム!!!!」

すると、うちらのドット絵が書かれた巨大なルーレットが出現し、回転し始めた。そして万斗君の所で止まると、「guilty!!」の文字と共に大量のコインが出てきた。

 

 

 

 

 

さらにもう一度ルーレットが回転し始める。

今度は千野君の所で止まり、またもや「guilty!!」の文字と共に大量のコインが吐き出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万斗 輝晃「どうして……………………どうしてだよぉ……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場に蹲り泣く万斗君。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼を始め千野君以外の全員が翻弄され続けた裁判は…………終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生存者

 

 

LA001 相川 凛《外国語研究家》

MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》

MC003 喜屋武 流理恵 《調理部》

SA004 銀山 香織《棋士》

MB005 黒瀬 敦郎《バスケ部》

MC006 柴崎 武史《歴史学者》

MB007 霜花 優月《狙撃手》

MA008 ジャック ドクトリーヌ《医者》

MC009 千野 李玖《茶人》

MC010 独島 灯里《サブカルマニア》

MB011 飛田 脚男《バイク便ライダー》

SB012 中澤 翼 《フットサル選手》

LB013 錦織 清子《テニスプレーヤー》

MB014 分倍河原 剛 《空手家》

015 北条 業 《希望ヶ峰学園予備学科生/放火魔》

MA016 万斗 輝晃 《情報屋》

MB017 幸村 雪 《激運》

MA018 明智 麻音《探偵》

 

残り8人

 

 

 

 

 

 

 


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