長かった4章もこれにて終了です………。
「カバカバカバ〜〜〜〜〜〜!!!なんと見事4連続正解カバ!!《超高級の医者》ジャック・ドクトリーヌクンを殺したのは、見事に踊らされた《超高級の情報屋》万斗 輝晃クン、そして超高校級ではなく予備学科生かつ犯罪者の北条業サンを殺したのは、《超高校級の茶人》千野 李玖クンでしたーーー!!今までの裁判で一番難易度高かった裁判をよく乗り越えたカバー!オイラが直々に褒めてやるカバー」
「うっ…………ちくしょう……………ちくしょう…………!」
地面に崩れ落ち嗚咽を漏らす万斗君。
彼には殺人をする意思はなかった。
ジャック君を殺そうとは思っていなかった。
けど………意思はなくても殺人は殺人だ。
ジャック君という1人の命を奪った時点で………彼は立派な殺人者なのだ。
そしてこの学級裁判では、シロのうちらにとって殺人者であるクロは敵。
生き残る為には………どんな理由であれクロを逃すわけにはいかない。
「………万斗君」
うちは彼に近づき声をかける。
「あなたがジャック君を殺すつもりはなかったことは分かった。けど………どうして拘束なんてしようと思ったの?」
「…………!」
彼の泣き声がピタリと止む。
「千野君に言われたんでしょ?『ジャック君は絶望の庭』だって。それをすぐ信じちゃったって事はさ、ジャック君を全く信用してなかったって事だよね?………そんなにうちらのこと、信用出来なかったかな」
「………凛」
隣にいた優月ちゃんが悲しげにうちの名前を呟く。
「あなたは3回目の裁判の後、急にうちらと距離を置くようになった。もしかしてあなたは…………何かを知ったんじゃないの?」
「…………!?」
体をビクッと震わせる万斗君。
「………やっぱそうなんだね。………教えてくれないかな?あなたは………一体何を知ったの?」
「……………………ほっほっほっ。いやいや、あまりにも惨めで見ていられませんな」
すると千野君が邪悪な笑みを貼り付けながら笑った。
「…………何がおかしいの」
「失礼。相川殿ではなくそこの間抜けの無様な姿に思わず笑いが込み上げてしまいまして」
「………これ以上喋んじゃねーよ。このクソ野郎が」
黒瀬君が拳を握りしめながら千野君をこれでもかと睨みつける。
しかし今までのように怒鳴りながら殴りかかる、といった事はしなかった。
「おやおや。黒瀬殿も随分大人になりましたな。てっきり襲い掛かってくると思いましたが」
「………テメーを殴っても何の解決にもならねーし、何よりテメーは銃を持ってる。今のオレじゃ勝てねーよ」
「ほっほっほ。そのような冷静な判断も出来るとは。アナタの成長速度には驚かされますよ」
関心したように頷くと、彼はうちらの方を見渡し、
「アナタ達はこの事件について疑問に思うことが沢山あるでしょう。ここまで辿り着いたご褒美です。拙僧が出来る限りの質問に答えましょう」
「………うちが話したいのはあなたじゃない。うちは万斗君に話を聞いてるの」
「………彼に話を聞いても無駄ですよ。何故なら………」
「彼に情報を渡し、人間不信状態に陥らせ、この事件を起こすよう仕向けたのは拙僧ですから」
「…………え?」
「正確には、
「………う、うん。そうだよ………わたしたちがやったんだ」
千野君に話を振られた独島さんは声を震わせながらそう答えた。
「一体いつそんなことを………」
「ほっほっほ。それは………」
「3回目の裁判が終わった後ッスか」
優月ちゃんの疑問に対し、代わりに答えたのは柴崎君だ。
「ご名答。拙僧と独島殿が接触したのは前回の裁判終了後です。そこでそこのゴミに親切に色々教えてあげたのです。例えば………『相川凛はこの事件の黒幕だ』とか」
「なっ!?」
「…………随分と悪質な嘘ですね」
自分の名前が出てくるとは思わず、うちは驚き優月ちゃんは怒りを露わにする。
「『ジャック・ドクトリーヌは絶望の残党の一員として市民を襲い解剖していた』とか………まあ色々吹きこみましたよ」
「………けど、そんな荒唐無稽な嘘を万斗サンがいきなり信じるとは思えないッスけどね。そもそも、疑心暗鬼の状態だった万斗サンがアンタ達を信用して話を聞く筈がないと思うんスけど」
事実とは全く異なる嘘を教えたという千野君に対して柴崎君は疑問だと首を傾げる。
「ほっほっほ。それは拙僧の話術ですよ。拙僧であればどんな嘘でも信じ込ませる事が出来ます」
「…独島サン、今の話は全て本当の事ッスか?」
「……………うん」
俯きながら返事をする独島さん。
恐らく千野君は裁判が終わり傷心の万斗君に声をかけ、丁寧に嘘を信じ込ませていったのだろう。
霞ヶ峰さんの言葉で傷つき誰を信じればいいのか分からなくなっていた万斗君は、その偽の優しさに騙されてしまった。
正直、うちも落ち込んでいた時に優しい言葉をかけられたらその人のことを信じてしまう自信がある。
「千野李玖クン」
すると、厳しい表情で今まで黙っていた明智さんが口を開いた。
「いくつか質問させてもらうぞ。まずひとつめだが…………ジャック・ドクトリーヌクンの両足はどこにあるんだ?」
「え………?でもそれって窯で死体と一緒に焼いたんじゃ………」
「体は黒焦げではあったが、まだ原型は留めていた。しかし両足についてはそれらしき物は窯の中には存在していなかった。だとすれば別の場所にあると考えるのが普通だ」
「ほっほっほ………。明智殿の言う通りですよ」
千野君は正解だと拍手をする。
「彼女の言う通り、ジャック殿の両足はまた別の場所にありますよ。足が残っているとそこから身長が分かってしまう。つまり被害者が誰か予想が出来てしまいますからね。………と言っても、皆さんが一度
「踏んだ?それってどういう………」
「両足は粉々に切断して窯のある中庭にばら撒きましたよ。だから皆さんは自分の足で一度
「うっ!?」
彼の言葉を聞いた瞬間、うちは込み上げてくる吐き気に思わず口を押さえた。
あの場所に…………ジャック君の足があった?
彼の肉片に気づかず、ずっとそれを踏み続けていた?
「………成程な。理解した。では次だ。………何故、ワタシと柴崎武史クンを狙わなかった?何故被害者にあの2人を狙った?」
「拙僧にも考えがあるのですよ。まあ強いて言うなら………不穏分子だったから、ですかな。イカれた思想を持つ北条殿は勿論のこと、ジャック殿も裏で何かコソコソやっていたそうですし」
「ジャック君が………?」
そんな話は初耳だ。
ジャック君は一体、何をしていたのだろうか。
「最後の質問だ。万斗輝晃クンを気絶させた後、ホールまで運んだ理由は何だ?」
「同じ現場に3人も気絶した人間がいたら不自然でしょう。だからそこの愚図だけ別の場所に移動させただけのことですよ。深い意味はありません」
「……………………そうか」
明智さんはそれだけ言うと、
「………モノカバ。裁判を終わらせろ。どうせまたオシオキとやらがあるのだろう?」
「……………………え?」
その発言にうちらは一斉に明智さんを見つめ、蹲った万斗君は顔を上げる。
「カバ?明智サン、今回は随分と積極的カバね?もしかして、明智サンもオシオキの快感に取り憑かれちゃったのカバ?早く見たくてウズウズしてるカバ?
「勘違いするな。ワタシはただ…………この不愉快な裁判を早く終わりにするべきだと思っただけだ」
「明智さん!!何でそんな事言うの!!そんな……………」
そんなのって………あまりにも冷たすぎるじゃないか。
千野君に嵌められた万斗君の気持ちを考えてよ。
そう言おうとした。
「助手」
しかし明智さんはそれすらも許さない。
「助手もこの男がどれだけ狂った人間なのかは理解しただろう。であれば、これ以上この男の話を聞く必要はない。それに………万斗輝晃クンの気持ちを考えてあげたまえ。…………殺すつもりのなかった仲間を殺して、それを暴かれ、馬鹿にされ…………。彼の精神はボロボロだ。この裁判が続く限り彼はその状態が続くのだぞ。まさに生き地獄だ」
「だから万斗サンのためにも…………早くこの苦しみから解放させてあげるべきだと?」
柴崎君の質問に明智さんは頷いた。
「だとしても………!そんな言い方ってあんまりだよ!まるでとっとと万斗君をオシオキしてくれって言ってるようなものじゃん!!!仲間、だったのに………!」
「ワタシは仲間である彼を思いやってるからこそさっきのような発言をしたんだ。長引かせるくらいなら早く逝かせてやろう、とな」
明智さんはあくまでも冷静にそう発言する。
「そう………だけど…………!それでも、ずっと一緒に過ごしてきた仲間が今から死ぬんだよ!!それなのになんでそんな…………冷酷すぎるよ…………」
「…………!」
うちの言葉に明智さんは目を見開いた。
そしてうちからサッと目を逸らした。
「カバカバカバ!いいカバ!実にいいカバ!このギスギスした雰囲気、オイラ大好物カバ!………さて、明智サンもオシオキを所望みたいだし、とっとと始めちゃいますカバ!」
「い、嫌だ!!」
万斗君は立ち上がり大声で叫んだ。
「ボクはまだ死にたくない!!ボクは殺すつもりなんてなかったんだ!!」
「カバカバカバ!!オマエは本当に徹底してるカバね。でも結果としてオマエはその手でジャッククンを殺したのカバ!ならその罰を負う必要があるカバ!幼稚園児でも分かることカバ!」
「ボクは死にたくない!!!」
万斗君は発狂して裁判場の壁を叩く。
「誰か助けて!!!謝るから!!」
「では今回も、《超高校級の情報屋》万斗 輝晃クンのためにスペシャルなオシオキを用意したカバ!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
「では、張り切っていきましょうカバ!オシオキターイム!!!」
「…………死にたく、ないよ……………………」
GAME OVER
マントくんがクロに決まりました。オシオキを開始します。
《超高校級の情報屋》万斗 輝晃 処刑執行
「〜あなたの望む情報、必ず届けます〜」
なんでも情報屋 万斗輝晃事務所
首輪を付けられ、引っ張られてきたボクが辿り着いたのは、小さな一つの部屋だった。
PCが置かれた机と椅子が一つ置いてあるだけの非常に殺風景な部屋だ。
そして部屋の入口には病院にある受付のようなスペースがある。
椅子に座らされたボク。
すると突如、机に大量の書類が降ってきた。
それと同時にPCに大量のデータが送信された。
さらに入口には大量のモノカバ。
…………なるほど、ボクにこの情報量を捌いて客が発している情報を渡せって事か。
…………やってやるよ。このくらい、ボクなら朝飯前だ。
ボクは涙を拭き、書類へと向き合い始めた。
書類とデータから必要となる情報だけを抜き出す。
それをまとめ客へと渡す。
その作業を猛スピードでやっていく。
脳の使いすぎで鼻血が出てきた。
それでもボクは作業に没頭する。
ただひたすら、その作業を繰り返す。
しかし、どんなに処理が早くても1人では限界がある。
その上、処理を終えても依頼が次々と舞い込んでくるため、机にある書類はどんどん積み重なり、データの容量も一杯になっていく。
そして待たされている客も段々苛々し始める。
「………ボクは負けない。ボクは…………」
書類の山はとんでもない高さまで積み上がっていた。
けどボクは諦めない。
この仕事に誇りを持っているから。
一度受けた仕事を途中で投げ出す事なんて出来ないから。
けど、ボクの仕事を待ってくれる人はいなかった。
激怒したモノカバ達が受付を乗り越えて事務所に乗り込んできた。
あっという間にボクを囲むと、暴力を振るい始めてきた。
亀のように体を丸め、暴力から身を守る。
このくらいなら全然耐えられる。
この程度の痛み、死んでしまったみんなに比べれば………どうてことはない。
けれど、脅威はそれだけではなかった。
モノカバ達が暴れたせいで、書類の山がぐらついている。
そしてすぐに…………ボクの元へ倒れてきた。
書類の山に埋もれるボク。
息が…………苦しい。
必死にもがくが、あまりの量で抜け出す事が出来ない。
さらに事務所自体も揺れ始め、ガタガタと不穏な音を鳴らし始める。
そして…………建物は崩壊した。
薄れゆく意識の中、ボクは口を開いた。
情報屋が情報に踊らされるなんて…………
なんて皮肉なんだろう。
みんな、ごめんなさい
「カバカバカバ!!!!エクストリームカバ!!オシオキの快感が体に染み渡るぅ〜〜〜!!!!」
「ほっほっほっ。虫ケラが潰されるのを見るのはいいですな。爽快感がありますよ」
「クソッ…………!輝晃の馬鹿野郎………!!こんな死に方あんまりだろ………!!」
「……相変わらず悪趣味だな」
「見てて胸糞悪いッス」
万斗君の処刑が終わった。
彼は最後まで情報屋だった。
最後の1秒まで情報を捌き続きた。
でも、その彼はもう………情報を捌くことも、得ることもない。
最低最悪の結末だ。
うちらは騙された彼を………救うことが出来なかった。
「ほっほっほっ。では裁判はもう終わりですかな?モノカバさん」
「そうカバ!ほら、とっとと裁判場から出て行くカバ!あ、千野クンと独島サンは残るカバ!次の指示があるカバ」
もはや仲間であることを隠そうともしないモノカバに対し、独島さんは震えながら「………分かった」と小声で呟いた。
「そうですか。………ではその前に一つ、拙僧から言いたいことがあるのですが」
「ん?何カバ?」
千野君はそう言ってモノカバに近寄る。
パン
乾いた銃声が聞こえた。
「全員動くな」
全員の動きがピタリと止まる。
「………アンタ、何のつもりッスか?」
柴崎君が最大限警戒した様子で口を開く。
「口を閉じろ。ここから先は私が命令するまで何もするな。抵抗したら容赦なくその額に穴空けるぞ」
「…………」
まるで別人のような口調と態度。
彼のその態度が本気だと感じ取ったのか、柴崎君は無言で両手を上げ無抵抗の意志を示した。
「他の下民共もだ。とっとと両手を上げろ。こんなところで死にたくないだろ?」
「………凛。言う通りにしましょう。彼の殺意は………本気です」
「………うん」
うちを始め全員は目配せをすると、両手を上げた。
「よし。私がいいと言うまで動くなよ。…………さて、後は…………」
「………………………オマエ、どういうつもりカバ?」
その人物、千野君は手に持つ銃をモノカバに向けてニヤリと笑った。
「どうって、見たら分かるだろ?てめえを撃とうとしてるんだよ」
「………オイラに逆らうとどうなるか、オマエならよく分かってる筈カバよね?」
口調が変わり、より荒々しくなった千野君にモノカバは寧ろ余裕の態度で接する。
…………どうして?2人は同じ『絶望の庭』の仲間じゃないの?
仲間であるモノカバにどうして千野君が銃を向けてるの?
「知ってるよ。てめえに恨みを抱いて反逆の狼煙を上げた奴らなんか死ぬほど見てきた。けど結果は必ず失敗し…………死んだ方がマシだと思えるくらいの拷問を受ける。そして廃人となり………最終的には虫ケラのような扱いを受け死ぬ。そうだろ?」
「………それを分かってるのに銃を向けるなんて…………なんて愚かな奴カバ」
「俺はな…………………… ずっとてめえを殺す機会を窺ってたんだよ。俺はてめえが大嫌いだった。…………この俺に対する偉そうな態度!!見下してるような目つき!!全てが気持ち悪かった!!俺を見下していい奴なんかこの世にいねえんだよ!!!!!」
声を荒げ銃を構え直す千野君。
「…………カバカバカバ!!オイラはオマエがオイラの事嫌ってるのはずっと前から知ってたカバよ!!けどあえて泳がせてたカバ!オマエがどうやってオイラを殺しに来るか興味があったからカバ!けどそれがこんな幼稚な方法なんて…………オイラがっかりカバ。人のこと下民とか見下しといて自分が一番下民なんじゃないかカバ?」
「黙れ!!!!!…………てめえのその減らず口、今すぐ開けないようにしてやるよ」
そして彼は照準をモノワニに合わせる。
「千野李玖クン」
すると明智さんが厳しい表情で千野君に対して、
「キミも知っているだろう?モノカバに手を出したら学則違反になるぞ。分倍河原剛クンの時の事をもう忘れたのか?」
「明智さん!喋っちゃダメだよ!」
話しかけた明智さんを慌てて止める。
「…………ハハハハハ!!」
しかし千野君は怒るどころか、寧ろ笑い出した。
「………それは脅しか?…………いいだろう。私がモノカバに手を出したらどうなるか実験台になってやろう」
そして……………………
一切の躊躇なく、その引き金に指をかけ、銃弾を撃ち放った。
そしてその銃弾は…………………モノカバの眉間を正確に撃ち抜いた。
「え………!?」
うちらは喋るなと言われている事も忘れ驚きの声を口に出す。
黒い銃弾に貫かれたモノカバはショートすると、ピクリとも動かなくなった。
「ほ、本当に撃ちやがった………」
「………それも正確に眉間を撃ち抜くなんて…………」
「カバカバカバ!!オマエ、やっちゃったカバね!!!」
するとすぐに別のモノカバが姿を現した。
「モノカバへの暴力行為は学則違反!たとえオマエが『絶望の庭』の構成員だとしても容赦はしないカバ!」
「そうかよ。ならとっとと処刑すればいいだろ?それに俺はもうてめえの仲間じゃねえ。他の奴らと同じように扱ってくれて構わないんだぜ?」
余裕の態度を見せる千野君。
………どうしてあんなに余裕なの?
錦織さんや分倍河原君の時みたいに、今から大量の剣で串刺しにされるのに。
………もしかして彼も、分倍河原君が言ってたみたいに破滅願望があるの?
彼が殺されることも『シナリオ』とやらの一部?
………もう訳が分からない。
「カバカバカバ!!オマエのその態度がオシオキによって絶望に変わるのが楽しみカバ!!」
「学則違反者発生!学則違反者発生!!出てこい、モノカバの剣!!」
モノカバの合図と共に、サイレンが鳴り響く。
「全員離れろ!!」
柴崎君の声でうちらは一斉に千野君から離れる。
そして照準が千野君に向けられる…………。
「……………………」
しかし、一向に剣が発射される様子はない。
「………何でしょうか」
「何か機材のトラブルとか…………」
そんな中モノカバをチラッと見ると、
「………オマエ、一体何をしたカバ!?」
「ククク…………アッハッハッハッハ!!!!!」
焦るモノカバと大笑いする千野君。
「…………てめえのその面が見たかったんだよ!!!その無様な間抜け面をな!」
「この裁判が始まる前、俺はこのコロシアイのネットワークに侵入し、学則違反処罰システムをオフにしておいた。つまり、これからはいくら学則に違反してもあの剣は飛んでこないってわけだ」
「………何だと?」
隣にいた明智さんが珍しく驚愕した表情を見せている。
「てゆうか、そんな事出来んのかよ………」
「彼がモノカバの仲間であると分かった今なら、そのような荒技が出来てもおかしくはないとは思えますが………」
じゃあ千野君は、初めからこの展開を予想して動いてたって事?
これまでの出来事は全て彼の予想通りなの?
「そ、そんな事ある筈ないカバ!オイラの、私の作ったシステムは完璧だ、か…………ら……………………」
するとまた一つ、信じられない出来事が目の前で起こった。
喋っていたモノカバがさっきと同じように動かなくなったのだ。
千野君がまた銃を撃ったわけではない。
ならどうして………。
「今、モノカバを操っている自動システムを停止させた」
うちの心の中にある疑問を見抜いたのか、静かな口調に戻った千野君がうちの方を向いて答えた。
「つまり今は、この私が支配者というわけだ」
そして彼はうちらに銃を向け直す。
「私に逆らえばすぐ殺す。それを肝に銘じておけ」
「て、テメーは一体何がしたいんだよ………」
黒瀬君が額に汗を浮かべながらそう尋ねる。
千野君はそれに対して不気味な笑みを浮かべると…………。
「そうだな、一言で言うならば……………『本物のコロシアイ』だ」
「本物の…………コロシアイ?」
「そうだ。今までのぬるいコロシアイなどではない。一歩間違えれば即死亡。自分以外の人間は全て敵。そのようなサバイバルだ」
「ど、どういうこと!?」
独島さんが千野君へ詰め寄る。
「そんなのは計画に無かった!わたしそんな話全く知らされてなかった!」
「知らせるわけがないだろう。お前は口が軽いし下手をすればモノカバに話が漏れる可能性があったからな」
千野君はそう言うと独島さんを無理やり引き寄せ隣に並ばせた。
「ひっ………!?」
「安心しろ。私の命令に従えばお前だけは助けてやる。仮にも同じ組織で過ごした仲間だからな」
下卑た笑みを浮かべる千野君。
肩を抱かれたままの独島さんの顔は真っ青になり、ガタガタと震えている。
「私と独島は運営側。お前達は参加者側だ。ルール等は後日通達する。ああ、それと学則は全て撤廃する。学級裁判なんていう茶番もなしだ。好きに過ごしてくれていいぞ」
「ま、待って!!そんな話、納得出来ない!仲間同士で殺し合いなんて………」
「納得出来ないじゃない。納得しろ。お前ら下民に意見を言う権利はない。もう一度言うぞ。逆らえば殺す。私に意見したら殺す。以上だ」
「くっ………!」
うちは拳を握りしめて強く歯を食いしばる。
どうして…………。
モノカバがいなくなったと思えば、次は本物のコロシアイなんて………!
「今日からしばらくは自由行動だ。各々好きに過ごすがいい。………この裁判場は閉鎖する。さっさと帰れ」
「………早く出るッスよ。こんな場所、1秒たりともいたくないでしょ」
柴崎君の発言にみんなが頷く。
うちも千野君を睨むと、そのままエレベーターに乗った。
そして千野君と独島さんを残すと扉は閉まり、上へと動き始めた。
「………これからどうしますか?」
エレベーターから降りると、優月ちゃんがそう切り出した。
「今は李玖が全部支配してんだろ?ならオレらなんも出来ねーよな」
「大人しく従った方がいいッスね。下手に刺激して僕ら全員蜂の巣、なんて結末は避けたいッスから」
「でも、このままじゃ………!」
「分かってるッスよ、相川サン」
柴崎君はうちの肩に手を置くと、
「それも含めて明日の朝、全員で話し合うッスよ。あの男の支配からどのようにして逃れるか」
「それはいいけどよ…………今までオレらの事嫌ってたテメーがそれ言うのか?なんか胡散くせーな」
「それも含めて全部話すッスよ。だから明日の朝8時、食堂に集合ってことで」
「………しゃーねーな」
「私は異存ないです」
「うん。みんなで話し合おう」
今までのコロシアイもふざけてたけど、これから起きようとしてる事はそれ以上だ。
絶対に…………そんなこと許しちゃいけない。
「…………てか明智サン、今の話聞いてたッスか?」
すると柴崎君は、今まで一言も発していない明智さんにそう聞いた。
「……………………」
「あ、ダメだ。全く聞いてないッスね」
「明智さん!聞こえてる?」
「…………ん?ああ、悪い。考え事をしていた」
「どうしたんだよさっきから」
「………いや、モノカバのシステムを停止したと言っていたが、一体どのようにしてシステムに侵入したのかと考えていたんだ」
「確かに………それはそうですね」
「それは僕らが今考えても結論は出ないッスよ。それよりも明智サン、明日の朝8時食堂集合ッス。忘れないで下さいよ」
「了解した。なあに、安心したまえ。『世界一時間を守る探偵』とまで言われたこのワタシが遅刻する筈が………」
「はい、解散」
「無視かね!?」
ワハハと笑うみんな。
「ねえ明智さん…………」
「………ん?どうした助手」
「その………さっきはごめん」
その場が解散になり、皆それぞれ自分の個室に戻り始めた時。
今ここしかないと思い、うちは明智さんに声をかける。
「うち、明智さんの事冷酷なんて言っちゃった。明智さんは万斗君のちゃんと事考えて言ってたのに、どうしても感情が抑えきれなくなって………」
「いや、それについてはいい。寧ろ謝るのはワタシの方だろう」
「え?」
明智さんは真面目な表情でこちらを見た。
「彼の事を思ってとはいえ、あまりにも配慮に欠けた発言だった。もう少し良い言い方が間違いなくあった筈だ。あれは助手が誤解しても仕方がない。今回はキミが正しい」
「でも………」
「キミはそうやってこれからも自分の意見を積極的にワタシにぶつけてきてくれ。ワタシは論理的な人間だからな。どうしで感情を度外視してコミュニケーションを取ってしまうのだ。だから相手への配慮が非常に下手だ。助手のような感情に敏感な人間の意見はワタシにとっては非常に助かるのだよ」
「………そっか。分かった。じゃあ遠慮なく言うね」
「………流石はワタシの助手だ」
うちと明智さんは笑い合う。
3人の犠牲者を出した4回目の裁判。
これ以上は…………絶対にコロシアイなんか起こさせない。
千野君の言いなりになんて………なるもんか。
PM ??:??
「……………………」
「…………そこにいるんスよね?」
「アンタの言った通り来てやったッスよ。僕になんの用スか?」
「………………………………」
「…………急に何を言い出すかと思ったら、随分とふざけた事を………………」
「まあ、アンタのその思いが本物であれば、僕もそれに乗らせてもらうッスけど」
「………そうスか。まあこのクソッタレなコロシアイを終わらせたい気持ちは僕も同じッス。てゆうか、未来機関の構成員の癖に全然コロシアイ止められてない時点で説得力皆無なんスけどね」
「…………分かったッスよ。アンタのその計画、僕も一枚噛ませてもらいますよ」
「さっさと始めましょ」
「このコロシアイを終わらせる」
chapter4 憎悪の澱みに沈む END
生存者
LA001 相川 凛《外国語研究家》
MB005 黒瀬 敦郎《バスケ部》
MC006 柴崎 武史《歴史学者》
MB007 霜花 優月《狙撃手》
MC009 千野 李玖《茶人》
MC010 独島 灯里《サブカルマニア》
MA018 明智 麻音《探偵》
残り7人
死亡者
MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》
→オシオキにより焼死
MC003 喜屋武 流理恵《調理部》
→ガスによる一酸化炭素中毒で自殺
SA004 銀山 香織《棋士》
→分倍河原 剛により首を掻き切られ死亡
MA008 ジャック・ドクトリーヌ 《医者》
→万斗 輝晃により毒薬を飲まされ死亡
MB011 飛田 脚男《バイク便ライダー》
→中澤 翼により溺殺
SB012 中澤 翼 《フットサル選手》
→オシオキにより四肢と首を飛ばされ死亡
LB013 錦織 清子《テニスプレーヤー》
→学則違反により全身を剣で刺され死亡
MB014 分倍河原 剛 《空手家》
→霞ヶ峰 麻衣子により学則違反となり、全身を剣で刺され死亡
015 北条 業《希望ヶ峰学園予備学科生/放火魔》
→千野 李玖が仕掛けた自動拳銃装置により頭を撃ち抜かれて死亡
MA016 万斗 輝晃《情報屋》
→オシオキにより圧死
MB017 幸村 雪 《激運》
→霞ヶ峰 麻衣子により転落させられ死亡