お久しぶりです。
色々忙しくて中々更新出来ず、気がつけば1年以上経ってしまいました。
一応落ち着いたので、また徐々にではありますが更新を再開しようと思います。
追記
*8/17 大幅な修正と加筆を行いました。
(非)日常編①
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「うぅ…………今日も一段と寒いなあ」
吹き抜ける冷たい北風が頬に当たる。
身体の芯から冷えるような寒さ。
うちはブルブルと震えながら遠くの街を見つめていた。
「助手、こんなところにいたのか」
すると、後ろから手にバインダーを持った明智さんが現れた。
「明智さん?何かあったの?」
「いや。ただの事後報告だ。銀山香織クン率いる1班、錦織清子クン率いる2班、そして中澤翼クン率いる3班全てが作戦を終了した。無事に敵を降伏させ陣地を奪取したそうだ」
「そっか。怪我人はどんな感じ?」
「負傷者は数名いるようだが、いずれも命に別状はない。当然、死者もゼロだ」
「そっか………よかった」
うちは無事に胸を撫で下ろす。
「なら作戦は大成功だね。流石は明智さん」
「当然だ。この世界に誇る探偵であるワタシが立案した作戦だぞ。失敗なぞあり得ない」
自信満々に胸を張る明智さん。
「それに比べてうちは………戦場から離れたこのテントで明智さんの言う通り指示を出すだけの置物。何にもしなさすぎてみんなに申し訳ないよ」
うちは総大将として、この崖上に設置された司令本部から無線でみんなに指示を出すだけ。まず総大将がうちなのも納得出来ないけど、本当に何もしなくていいのかと毎回不安に思ってしまう。
「何を言う」
しかし明智さんは、うちの言葉に対して首を振る。
「『助手が指示を出すこと』が大事なんだ。全員のリーダーであり誰よりも信頼されているキミからの指示や励ましの言葉は、戦場にいる仲間達の士気を高めているんだ。士気は戦の勝敗に大きく関わる。助手もそれは理解しているだろう?」
「それは………そうだけど」
「自信をもて。助手がリーダーだからこそ全員ここまでついてきたんだ。当然、このワタシもな」
そう言って明智さんはうちの肩をポンと叩く。
「………ありがと。よーし!あともう少しだ!頑張ろうね、明智さん!」
「その意気だ。なに、大丈夫さ。ワタシと助手のコンビは無敵だ。負けることなどありやしない」
「うん。うちら最強だもんね!」
そう言ってうちらは目の前に広がる風景を見つめる。
至る所で燃え盛る火。
まだ戦いは続いている。
けど、後少しだ。
後少しで理想へと手が届く。
「うちらは必ず…………この世界を変える」
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5章 砂中の骸に手向けの絶望を
軟禁生活34日目 06:30 相川の個室
「……………また夢か」
目が覚め、むくりと起き上がる。
目の前に広がるいつもの光景を見て、自分が今まで見ていた景色が夢であることを理解する。
一体、これは何の記憶なんだろう。
実際にあったことなのだろうか。
少なくともうちには全く覚えがないけど、うちらは高校入学から記憶を消されているらしいから、自分の記憶は当てにはならない。
けど、学生のうちらが何で外で戦っているのだろう。
誰と戦っているのだろう。
何のために戦っているのだろう。
疑問を上げたらキリがない。
「けど、その疑問を解消する材料もないしなぁ………」
いつかはこの夢の内容の詳細を知ることが出来るのだろうけど、今は考えても仕方がない。
「ひとまず食堂に行こうかな………」
うちは欠伸をしながら支度を始めた。
06:50 A棟 1F 食堂
食堂の前まで来ると、中から話し声が聞こえた。
「誰か来てるのかな……」
どうやらうち以外にも早起きの人がいたようだ。
「あ、おはようございます凛。早いですね」
「あれ?相川サンも来たんスか?今朝は早起きの人が多いッスねえ」
中にいたのは優月ちゃんと柴崎君だった。
「おはよう。2人とも早いね」
「ええ。何だが目が覚めてしまって」
「僕は元々朝食作る予定だったんで。相川サンも目が覚めちゃった感じッスか?」
「うん。まあそんなとこ。というか柴崎君がこんな早起きなんて珍しいね。どういう風の吹き回し?」
「一応、信頼回復のためって感じッスね」
うちの問いかけに対し、柴崎君は眠そうな表情で答える。
「……元々、4回目の裁判が終わった後で僕は、生き残った人達に自分の正体と狙いを明かして合流しようと思ってたんスよ。でも僕って信用されてないじゃないッスか。まあ僕がそう思われるような言動をわざととっていたからなんスけど」
「うん」
「間違いないですね」
うちらは2人揃って頷く。
「仲間だと認めてもらうためには、信頼に値する人物だと分かってもらう必要があるじゃないッスか。だから手始めに全員の朝食を僕が作って誠意を見せようかなと」
なるほど。そういう狙いがあったんだ。
いつも朝弱くて寝坊ギリギリの柴崎君がこんな朝早い時間に来てた理由が分かった。
「………ということなので、ひとまず私は武史の手伝いでもしようかなと。よかったら凛も一緒にどうですか?」
「うん!私にも手伝わせてよ!」
「えー………相川サン大丈夫なんスか………?」
柴崎君が露骨に嫌そうな表情をする。
なんて失礼な奴だ。
「は?なんか物凄く腹立つ表情してるんだけど」
「だって相川サン、料理の腕微妙だったじゃないッスか」
「凛の料理の腕前は、貴方がまだ私達と一緒に食事をしていた時より格段に上達しています。問題ありませんよ」
すると優月ちゃんが私のことを庇ってくれた。
その優しさが嬉しくて、うちは思い切りハグをする。
「優月ちゃん………うぅ………!やっぱ優月ちゃんしかいないよ!大好き!!」
「ちょ………!?り、凛………気持ちは嬉しいのですが………その………恥ずかしいです…………」
「………はあ…………。その暑苦しそうな抱擁を見せられてる僕の気持ちにもなって欲しいッスね」
「暑苦しいとか言うな!冷水頭から掛けるぞ!」
「うわぁ………この人怖い………」
「今のは自業自得だと思いますよ」
「………ねえ、柴崎君」
「はい?」
そんなこんなで柴崎君を中心に朝食作りが始まってしばらくした時。
私は隣で目玉焼きを作ってる柴崎君に声をかけた。
「…………今の状況どう思う?」
「どう思うって……『面倒なことになったな』って感情しかないッスよ。千野サンとモノカバが仲間割れするわ、その千野サンは『本物のコロシアイ』なんて訳分かんない事言い始めるわ………予定が狂いっぱなしッスよ。相川サンも驚きの展開続きで疲れたんじゃないッスか?」
「………まあね」
うちは、千野君がモノカバのことをあそこまで憎んでいるとは思ってもいなかったし、そもそも千野君が『絶望の庭』の幹部であることも全く分からなかった。
まあここ最近は驚きの連続で、少しの事なら驚かなくなった(要するに感覚が麻痺してきた)感じはするけど。
「………でも、突破口がないわけじゃない」
「………え?」
豚汁をかき混ぜていたうちは、思わず手を止める。
「さっきも言った通り、今はモノカバじゃなくて千野サンが支配者ッス。誰だか分からない黒幕より、目の前にいる千野サンが相手の方がまだ勝てる可能性はあるッスよ」
「そ、それはそうだけど………」
「モノカバと千野サンが敵対してる今、付け入る隙は必ずあると思うんスよ」
「でも、千野君は銃を持ってるんだよ?丸腰で立ち向かうのは無理だよ」
「当然、作戦は考えたッス。誰も死なせず、千野サンを出し抜いてコロシアイを終わらせる。それが僕達の最終目標ッス。そうッスよね?」
「………うん。もう犠牲なんて出したくない。誰も死なせたくない」
「アンタならそう言うと思ったッスよ。まあそれも含めて後で話しますよ。それよりも今は朝食をちゃっちゃと作っちゃいましょ」
「………うん」
やっぱ頼もしいな、柴崎君は。
うちは嬉しい気持ちを抑えつつ、朝食の準備を進めた。
「うーっす。悪い、遅くなっちまった」
「お早う、諸君。今日も実にいい朝だな」
しばらくして8時前になると、黒瀬君と明智さんが食堂にやってきた。
寝癖をつけ、申し訳なさそうに謝る黒瀬君と、堂々と椅子に座り優月ちゃんが淹れたコーヒーを優雅に飲む明智さんの対比が少し面白かった。
けど………すこし気になったのは明智さんの態度だ。
いつも通りに振る舞っているけど、纏っている雰囲気がピリついてる気がする。
それに普段浮かべている余裕そうな笑みを今日は浮かべていない。
何かあったのだろうか。
「ん?今日飯作ったのは誰だよ?」
「僕ッスよ。味わって食べて下さいね」
「………テメーかよ」
柴崎君を見て露骨に顔をしかめる黒瀬君。
「なんでテメーが作ってんだ?というか、毒とか入れたりしてねーだろうな?」
「んなわけないじゃないッスか。僕が犯人だってバレバレの状況で毒入れる馬鹿がどこにいるんスか」
「ヘラヘラすんじゃねーよ。その薄っぺらい笑みやめろや」
「まあまあ黒瀬君!うちらも一緒に作ったし、大丈夫だよ!色々思うところはあると思うけど、ひとまずご飯食べてからにしよう!」
「………わーったよ」
「明智さんもそれでいいよね?」
「ワタシは構わないよ。脳を動かすためにも栄養補給は必須だしな」
特に気にしていなさそうな明智さん。
不穏な雰囲気の中、うちらは朝食を食べ始めた。
「ふー、お腹いっぱい」
その後、うちと優月ちゃん以外はあまり話すことなく、朝食は終了した。
柴崎君の料理の出来はというと………普通に美味しかった。
なんというか………食べてて落ち着くというか………素朴で心温まる味だった。
「悔しいけど………うめえな、コレ」なんて黒瀬君が言ってたくらいだ。
柴崎君は何も言ってなかったけど、満更でもない顔をしてたから、心の中では嬉しかったのだろう。
そして後片付けを終わらせ、うちらは改めて食堂のテーブルに集まる。
「よし!じゃあこれからのことについて話そっか。とは言っても、まずは何から話せば…………」
「んなの決まってんだろ。コイツのことだろ」
黒瀬君は柴崎君を指差した。
「ん?僕ッスか?」
「ふざけた態度取ってんじゃねー。今まで散々オレらのこと無能だのクズだの馬鹿にしてきたテメーが何で今更仲間ヅラしてんだって話だろ?」
やっぱり、そこだよね。
「黒瀬敦郎クンに同意する」
明智さんも静かに肯定する。
「ワタシ達を避け単独行動をしていたキミが突如、このタイミングでワタシ達に近づいてた理由が不明瞭だ。何か狙いがあると感繰ってしまうのが普通だろう。………それに気になる点もある。ワタシや黒瀬敦郎クンはこうして疑いの目を向けているのに対し、助手や霜花優月クンは既に柴崎武史クンを受け入れているような態度に見える。………何か知っているのかね?」
明智さんは鋭い目をうちらに向ける。
流石は探偵。お見通しってわけか。
「柴崎君」
「分かってるッスよ。僕の口からちゃんと説明するんで」
そして柴崎君は、自分が未来機関の一員であること、業ちゃんの監視を含めた複数の任務の遂行のために希望ヶ峰学園に入学したこと。そしてこのコロシアイの裏を探るために、あえてうちらから孤立するような行動や言動をとっていたこと。うちと優月ちゃんは3回目の裁判の後でそのことを打ち明けられたから知っていたこと。本心は一刻も早くこのコロシアイを終わらせたいことなどを話した。
「マジ………かよ。じゃあテメーはずっと、オレらから隠れてここから脱出するために色々動いていたってことか!?」
口を開け、驚きを隠せない様子の黒瀬君に柴崎君はそうだと頷く。
「そうッスね」
「じゃ、じゃあオレらのこと無能だとか色々言ってきたのは!?」
「1人で動きやすくするためッスよ。皆さんに嫌われておけば僕のことなんて気にしなくなるじゃないッスか」
「んだよそれ………」
黒瀬君を呆れたような表情を見せる。
うん。その気持ち分かるよ。
うちも最初聞いた時気が抜けちゃったもん。
「でもなんで今更………」
「僕にも色々準備があったんスよ。それが整ったのがこのタイミングってだけッス」
「…………なーんか釈然としねーなぁ………」
いまいち納得してない様子の黒瀬君だけど、さっきみたいなあからさまな敵意はもう向けていない。
少しは柴崎君を信用してくれたってことでいいんだろうか。
「信じられんな」
しかし一方で、明智さんの態度は硬いままだった。
「今のキミの証言が本当だという証拠は?キミが黒幕である可能性も十分ある」
「明智さん!でも………」
「助手は黙っていてくれたまえ。今は柴崎武史クンと話をしている」
やはりそうだ。
明智さんの様子がいつもと違う。
ずっと厳しい表情を浮かべているし、態度が何だか刺々しい。
雰囲気がピリピリしているのを感じる。
「麻音、なんでそんなキレてんだ?」
「キレてなどいない。ワタシはただ事実を述べているだけだ」
「ですが、私も今の凛に対する態度も含め、いつもの貴方とは違うように見えました。何かあったのですか?」
うちと同じ疑問を持ったのか、黒瀬君と優月ちゃんも心配そうな顔を見せる。
みんなの視線に気がついた明智さんは、自分の様子が変なことを自覚したのか、こめかみを軽く押さえ、
「………済まない。ワタシとしたことが、少し冷静さを欠いていたようだ。謝罪する」
うちらに対して軽く頭を下げた。
「ま、麻音が謝った………!」
「敦郎、その驚き方は麻音に失礼ですよ。………まあ正直、私も面食らっていますが」
そして明智さんの謝罪に対して驚く2人。
………うちは明智さんが昨日謝罪する姿を見てるから、そこまで驚きはないけど。
「いや、明智サンの疑問は最もッスよ」
すると、今度は柴崎君がその場から立ち上がると、うちら4人に対して深く頭を下げた。
「うおっ!?テメーまで何してんだ!?」
「黒幕達に怪しまれないようにとはいえ、アンタ達には誹謗中傷を繰り返して傷つけたのは紛れもない事実ッス。……本当にすみません」
「柴崎君…………」
丁寧な姿勢で謝罪する柴崎君を見て、うちは驚きを隠せなかった。それはみんなも同じみたいで、目を丸くして彼を見ている。
「特に黒瀬サン、それに相川サン。アンタ達2人には、本音ではないとはいえ、酷い発言を沢山してしまったッス。謝って許されることじゃないッスけど、今の僕にはこれくらいしか出来ないッス」
「お、おい………!なんか調子狂うぜ………。テメーには言いてーことが山ほどあったはずなのに、なんか出てこねーというか………」
「確かに、柴崎君には酷いこと沢山言われたし、何度ぶん殴ってやろうかと思ったよ。それにうちだけじゃなくて、他のみんな、それに喜屋武さんの死体を利用したことも、決して許されることじゃないと思う」
「………仰る通りッス」
「でも………柴崎君もうちらと同じで、本気でこのコロシアイを止めようとしてることが分かったし、その気持ちに嘘偽りはないとうちは思ってる。だからうちは、柴崎君がうちに正体を明かした時、ひとまず信じてみようって思ったんだ。そうだよね?」
「…………ありがとうこざいます。ええ、僕がコロシアイを止めたいという気持ちは本当ッス」
柴崎君はもう一度深く頭を下げた。
「………そうか。助手がそこまで言うなら、ワタシも柴崎武史クンをを信じてみるとしよう。ここでさらにキミを疑うのは、チームワークを乱すことになりかねないからな」
明智さんは、フッと軽く笑い、コーヒーを飲む。
「………オレも言いてーことはあるけど、ひとまずテメーを受け入れる。凛がテメーを信じたからな。けどな、もし次にオレらを裏切ったりしたらボコボコにしてやるから、覚悟しとけ」
黒瀬君は、フンと鼻息を鳴らしながら柴崎君を見る。
「………ええ。肝に銘じておくッス」
「私は前回話した通りです」
優月ちゃんも改めて受け入れる姿勢を見せた。
「………ここまで信じてくれたアンタ達の期待を裏切るわけにはいかないッスね。じゃあ早速、僕が単独行動中に色々仕入れた情報、アンタ達に共有するッスよ」
すると柴崎君は懐から複数の紙を取り出し、机に広げた。
「これは………メモか?」
「随分沢山ありますが…………」
殴り書きされた複数のメモ。…………ん?この字どこかで見たような………。
「このメモってもしかして………万斗君の?」
「お?流石は相川サンッスね。これは万斗サンが生前残してたメモッス。彼には悪いッスけど、昨日万斗サンの部屋を調べてる時に見つけたッス」
確か前、万斗君は普段気がついたらことをメモしてるって言ってた。
「万斗輝晃クンの個室が解放されたのは昨日の裁判後だろう。随分と早く行動したな」
「ま、黒幕側に大事な証拠を隠滅されたらたまったもんじゃないッスからね」
明智さんがうんうんと頷き関心している。
「?こちらのメモは………筆跡が輝晃のものと違いますが」
もう1セットあるメモは、確かに万斗君のものと比べて筆跡がだいぶ違う。
こっちのはだいぶ丁寧に書かれているけど………。
「これはジャックサンの部屋に残されていたメモッス。彼なりに色々調べていたみたいッス」
ジャック君………うちらの知らないところで色々調べてくれてたんだ。
「んで、これを僕なりに解読してまとめたのがこれッス」
ジャックサンのメモ
・傷の治りが異常に早い
・食材の供給先が不明
・モノカバの瞬間移動?
・医療器具に磨耗が見られない
自身でも試したが、どんなに深い傷でも次の日には治っていた
→治癒力の向上?
もしかしたらここは現実ではない?
万斗サンのメモ
僕達の消された記憶の正体
・何故高校の時の記憶を消した
→記憶が戻ると僕達にとって不都合だから→それは一体?
・『任務』とは何か
→誰かと戦っていた→『絶望の残党』?
・『希望ヶ峰学園レポート』とは
→僕達は最初から『絶望の残党』と戦うために希望ヶ峰学園に入った?
「これは…………」
うちらは揃ってメモ帳を覗き込む。
「ふむ。これは非常に興味深い」
明智さんは顎に手を当て、考え込む姿勢を見せる。
うちも書いてあることを順番に目を通す。
…………え?この記述って………!
「なんか色々書いてあんな………つまり何が言いてーんだ?」
「アンタならそう言うと思ってましたよ。………ん?相川サン?」
「嘘…………じゃあやっぱり………!」
背中に冷や汗をかくのを感じる。
あの時から疑問に思っていた。
「どうやら相川サンも察したみたいッスね。じゃあこのメモから分かることをまとめるッスよ」
「結論その1。今僕達がいるこの空間は現実じゃない。そして結論2。僕達は高校在学中から絶望の残党相手に戦っていた可能性が極めて高いということ」
「………………………………は?」
柴崎君の口から出た結論。
それに対して最初に声を出したのは黒瀬君だった。
「いや、ここが現実じゃないって意味分かんねーよ。だってオレらは実際、こうして生きてんだろ?」
「
「ぜ、全然分かんねー………」
「………ふむ。キミがここは現実ではないと考える理由。それはこの記述だな?」
明智さんが指差した場所。それは前半の記述だった。
「傷の治癒の速度。そして現実ではあり得ない瞬間移動。どれもこの場所が現実ではないと判断するには十分な根拠だ」
「そうッス。相川サン。あんたもこの記述、心当たりがあるんじゃないッスか?」
「凛?そうなのですか?」
「………うん」
そう。
それはうちが傷を負ったあの時。
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3章 (非)日常編②
「……あっ!?うちの傷はどうなって………」
気を失う直前に受けた傷を思い出し、着ている患者服をめくって自分の脇腹を見る。
それを見てうちは絶句した。
「嘘でしょ………綺麗に治ってる」
腹部は傷一つない元通りの状態に治っていた。
記憶によれば剣は完全にうちの腹部を貫通してた筈だ。それなのにこんな何もなかったかのような状態になるなんて……。
それとも傷が綺麗に治るくらいうちが気を失ってたって事?いやいやだとしてもここまで傷が塞がるのは常識的に考えておかしい。
いったい誰がどんな方法でうちを治してくれたんだろう………。
「おや、お目覚めカバ?」
そんな事を考えていると白衣を着たモノカバが現れた。
コイツどんなコスプレでもするな。
前は消防士のコスプレもしてたし、いったいどれほどのコスプレ装備が存在するんだろう。
「うちの怪我治してくれたのって、もしかしてモノカバ?」
「その通りカバ!!オイラの最先端モノカバ式治療で相川サンの傷をちゃちゃっと治したカバ!!」
「………ちょっと待って。今裁判が起きてから何日後?」
「おかしな事聞くカバね。裁判があったのは昨日カバ。今日はその翌日カバよ」
………what???
「いやいやいやいやいや!?うちの傷を一晩で治したって事!?そんなバカな事ある訳ないじゃん!?!?」
「なーにをバカな事を言ってるカバ。今の医療技術を侮っちゃいけないカバ。今は人に空いた穴を塞ぐくらい、30分で出来ちゃうカバ。上半身と下半身を切断された人間でさえ1時間も有ればくっつけられるカバ」
「そんな訳あるか!!!!!それに最後のは明らかにおかしいだろ!!絶対死んでるからその人!」
「お、ツッコミのキレもいつも通りカバね。これならもう安心カバ!」
「だからうちの話を聞いて………」
「細かい事はいいカバ。はい、この話はおしまいカバ。それよりも聞きたい事があるんじゃないカバ?例えば………ここはどこ、とか」
「それは………そうだけど………」
話をはぐらかされてしまった。けどこの場所がどこなのか、そしてみんなは今どうなっているのかについては気になるのは正直なところ。
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「うちが優月ちゃんのオシオキを庇って槍で刺された時あったじゃん。あの時、うちはかなりの傷を負ったはずなのに、翌日には傷一つない状態で治ってた。こんなの現実じゃあり得ないよ」
「!?」
優月ちゃんはハッと驚きの表情を見せる。
「いくら現代の医療技術が発達しているとはいえ、跡形もなく治す、というのは聞いたことがないな」
「ええ。相川サンが槍で貫かれるのは全員が見た筈。それなのに次の日には元気に歩けるくらいまで完璧に回復した。これは本人の治癒能力だけじゃ説明がつかないことッス」
「それに、道具が壊れたりしない、食料が無限にある、なんてのも現実じゃないと判断する根拠になり得ると思うんス」
やっぱり。ここは現実じゃないんだ。
このだだっ広い大学も、もしかしたら現実には存在しないのかもしれない。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
すると黒瀬君が突如立ち上がった。その顔は期待に満ちている。
「理屈がよくわかんねーけど、つまりここは現実じゃねーってことだろ!なら、今まで死んだ奴らは現実じゃ生きてるってことだろ!」
「あ!」
そうだ。そうじゃないか。
ここはあくまでも仮想世界。
現実で死んだんじゃない。
なら………
「そうだよ!じゃあみんな生きてるってことだよね!」
錦織さん、飛田君、中澤君、喜屋武さん、幸村さん、香織ちゃん、分倍河原君、霞ヶ峰さん、業ちゃん、ジャック君、万斗君。
死んだ皆が、現実では生きてる!
「なんだ!そうならそうと早く言ってくれれば良かったのによ!なら凛!」
「うん!本当によかった!!よかったよ!」
香織ちゃんにまた会える。
みんなに………また会える。
「相川サン、黒瀬サン。残念スすけど、そんな都合のいいことはないんスよ」
しかし、うちら以外の3人は残念そうに首を振る。
「な、なんでだよ?」
「希望ヶ峰学園77期生が巻き込まれたコロシアイを知っているかね。あの事件は今回のコロシアイと状況が酷似している。『新世界プログラム』という電脳システムを乗っ取られたことにより発生したコロシアイであり、計10名が死亡した。当然電脳内での死は現実の世界に影響しないと考えられていたが………」
「実は電脳内での死と現実での死はリンクしていて、死亡した77期生の先輩方は、今でも現実では目が覚めていないそうです」
「そ、そんな…………じゃあみんなは…………」
「現実で生き返る可能性はゼロではないが、あまり期待しない方がいいだろうな。過剰に期待すればするほど、後で辛くなるだけだ」
「…………くそ、なんでだよ!」
「………そっか」
世の中、そううまくいかないってことか。
ちょっと期待しちゃったから、余計に辛いな………。
「………ごめん。分かった。けど結局、うちらは黒幕を倒さないとこの世界から出られないってことでしょ?」
「そうッス。とはいっても、その方法は未だによく分かってないッスけど……」
「過去のコロシアイの記録から何か手がかりを掴めないでしょうか。もしかしたらヒントが隠されているかもしれません」
「そうッスね………。あ、じゃあ相川サン達には改めて
「あの場所?」
「C棟遊園地の地下の部屋は覚えてるッスか?」
「地下?んなのあったか?」
心当たりがない黒瀬君は首を傾げる。
「確か………万斗君が探索してたとこだよね?なんか部屋が4つくらいあったって言ってたような………」
「そうッス。けど万斗サンが探索した時は部屋は1つしか空いてなかったんスよ」
「今はそうではない、ということですか?」
「3回目の裁判の後に新たに1つ部屋が開いたんスよ。そこには過去のコロシアイの記録が残されてたッス。もしかしたらそこにコロシアイを終わらせる手がかりがあるかもしれないッス。僕も一応目は通したんスけど、見落としもあるかもしれないんで、改めて相川サン達で見てきて欲しいッス」
「ふむ、それがいいだろうな。ワタシ達はこのコロシアイを終わらせるために、過去のコロシアイにも目を向ける必要がある。この後早速行こう。善は急げだ」
明智さんの提案に、全員が頷いた。
「ひとまず、僕達に出来るのはそれくらいッスね。まだまだ僕が立てた仮説ならいくらでも話せるんスけど、それよりまず、千野サンが始める『本物のコロシアイ』に備えないといけないッスね」
「しかし、その『本物のコロシアイ』とやらの内容が分からなければ対策のしようがないのでは?」
「………まあ、それもそうッスね………」
頭を押さえため息つく柴崎君。
「一応聞くけど、千野君との和睦の可能性は………」
「あり得ないな。ワタシ達の尊厳を弄び、命を虫ケラのように踏み潰して初めて彼の目的は達成される。そんな奴が和睦だなんていう平和的解決を望む筈がない。可能性はゼロだ。キミも彼の本性を目にしたから分かるだろう?あれは理屈が通じない頭のネジがぶっ飛んだ人間だ」
「………確かにそうだね」
悔しいけど明智さんの言う通りだ。
うちは普段から誰も傷つかない平和的解決を望んでるけど、今回はどう考えても無理だ。
「なんか麻音、やけに詳しいな。テメー李玖のこと昔から知ってんのか?」
「まさか。高校の記憶が残ってるとはいえ、彼があのような下衆な人間であることは全く知らなかった。それに今の意見は、ワタシの身内に似たような人間がいたから、それを元に話した想像だ」
明智さんは嫌悪感を顔に滲ませながら話した。
C棟 遊園地 地下室
柴崎君を除くうちら4人はあの後すぐ、柴崎君の言っていた遊園地の地下室に向かうことにした。
柴崎君の言う通りの手順で仕掛けを解除すると、地下室への道が現れた。
階段を降りると、確かに左右それぞれの壁に2つのドアがある。
「入って左側の手前にあるドアって言ってたよね?」
「ええ。早速入ってみましょう」
うちらはドアを開ける。
中には椅子が2つと机が1つという、柴崎君の研究教室に似たもの寂しい光景が広がっていた。机には左側に引き出しが1つ。右側に3つ。
「この机の中にあるのかよ?」
「恐らくそうかと。………私が開けます。凛、麻音。少し下がっていてください。武史が妙なイタズラを仕掛けている可能性もありますから」
「優月ちゃん、それは流石に警戒しすぎじゃない………?」
「おい、オレには言わねーのかよ!」
「貴方は自分でどうにか出来るでしょう」
「冷てーな!?」
至って真剣な表情で言う優月ちゃんに苦笑しつつ、うちは言う通り少し下がる。
優月ちゃんは慎重に机の引き出しを開ける。が、特に何も仕掛けられていることはなく、中には透明なファイルに入った資料があった。
「武史が言っていたのはこれでしょう。2部資料がありますね」
「ふむ。では1つ目から目を通すとしようか」
「ええ」
うちは椅子に座り資料を広げ、3人はそれを覗き込むような形で目を通し始めた。
○希望ヶ峰学園78期生によるコロシアイ
希望ヶ峰学園78期生が、シェルター化された希望ヶ峰学園にて「コロシアイ学園生活」を強要され殺し合った事件。
黒幕である江ノ島盾子は、「人類史上最大最悪の絶望的事件」により荒廃した世界で自分達の身を守るため自ら希望ヶ峰学園に籠城した生徒達の記憶を消し、互いに殺し合うよう仕向けた。
結果、【超高校級の幸運】苗木誠を初めとする6名のみが生き残り、その他の生徒は全員死亡した。
また、黒幕である江ノ島盾子、そして共犯者であり江ノ島の実姉である戦刃むくろも苗木達生存者に敗北し死亡した(戦刃むくろは妹の江ノ島盾子に殺害されたとのことだが、詳細は不明)。
生存者(6名)
・苗木 誠 【超高校級の希望】【超高校級の幸運】
・霧切 響子 【超高校級の探偵】
・十神 白夜 【超高校級の御曹司】
・朝日奈 葵 【超高校級のスイマー】
・腐川 冬子 【超高校級の文学少女】
・葉隠 康比呂【超高校級の占い師】
死亡者(10名)
・舞園 さやか 【超高校級のアイドル】
→[死因]桑田怜恩に包丁で刺されたことによる失血死
・戦刃 むくろ 【超高校級の軍人】
→[死因]全身を槍で刺されたことによる出血性ショック死
・桑田 怜恩 【超高校級の野球選手】
→[死因]処刑による粉砕骨折
・不二咲 千尋 【超高校級のプログラマー】
→[死因]大和田紋土にダンベルで殴打されたことによる脳挫傷
・大和田 紋土 【超高校級の暴走族】
→[死因]処刑による全身損壊
・石丸 清多夏 【超高校級の風紀委員】
→[死因]山田一二三によりハンマーで殴打されたことによる脳挫傷
・山田 一二三 【超高校級の同人作家】
→[死因]安広多恵子によりハンマーで殴打されたことによる脳挫傷
・安広 多恵子 【超高校級のギャンブラー】
→[死因]処刑による轢死
・大神 さくら 【超高校級の格闘家】
→[死因]毒物の摂取
・江ノ島 盾子 【超高校級の絶望】
→[死因]不明(多数の傷があり、どれが致命傷になったのか特定するのが困難な為)。
なお、生存者の6名は、のちに『未来機関』へ所属となる。
「この事件はうちも知ってるよ。歴史の教科書にも載ってたよね」
「私は学校には殆ど行っていなかったのであまり記憶にありませんが、この話は軍の先輩によく聞かされたのでよく覚えています。しかし………改めて見るとあまりにも悲惨な事件ですね………」
「………うん。教科書には結果しか載ってなかったから、過程を具体的に見るといかに残酷なことなのかが分かるよね」
「それに加え、今のワタシ達の環境より随分と閉鎖的だったと聞く。生徒達は精神的にも相当苦しい状態であっただろうな」
「今のオレらよりかよ。それより…………さっさと次のやつ見ようぜ」
「そうだね。じゃあ次のファイル見るよ」
◯希望ヶ峰学園77期生によるコロシアイ
江ノ島盾子により絶望に染まってしまった希望ヶ峰学園77期生を元に戻すべく、『未来機関』所属となった苗木誠達は『希望更生プログラム』を使用する計画を立てたが、ウイルスの混入により『希望更生プログラム』が乗っ取られてしまい、その結果電脳内でコロシアイが行われた事件。
江ノ島盾子は前回の事件で死亡したのだが、その後もプログラムとして存在しており、のちに別の肉体を借りて現実世界へと戻る予定であった。
電脳内では前回のコロシアイと同じように次々と生徒が殺し殺され、最終的に生き残ったのは5名のみであった。
途中、苗木誠や霧切響子、十神白夜の介入もありプログラムの江ノ島盾子をプログラムごと消し去るため『強制シャットダウン』のボタンを押すか否かの選択を生存者5名は迫られる。最終的には【超高校級の希望】として覚醒した日向 創の活躍もあり全員が『強制シャットダウン』を選択、江ノ島盾子はプログラムごと消滅し、日向達5名は無事現実世界へと帰還した。
生存者(5名)
・日向 創(カムクライズル)【超高校級の希望】
・終里 赤音 【超高校級の体操部】
・九頭龍 冬彦 【超高校級の極道】
・左右田 和一 【超高校級のメカニック】
・ソニア・ネヴァーマインド 【超高校級の王女】
死亡者(10名)
・氏名不詳 【超高校級の詐欺師】
→[死因]花村輝々により鉄串で刺されたことによる失血死
・花村 輝々 【超高校級の料理人】
→[死因]処刑による全身火傷
・小泉 真昼 【超高校級の写真家】
→[死因]辺古山ペコにより頭部をバットで殴打されたことによる脳挫傷
・辺古山 ペコ 【超高校級の剣道家】
→[死因]処刑による出血性ショック死
・澪田 唯吹 【超高校級の軽音楽部】
→[死因]罪木蜜柑により首を絞められたことによる窒息死
・西園寺 日寄子 【超高校級の日本舞踏家】
→[死因]罪木蜜柑により頸動脈を切られたことによる出血性ショック死
・罪木 蜜柑 【超高校級の保険委員】
→[死因]処刑による薬物中毒死
・弍大 猫丸 【超高校級のマネージャー】
→[死因]田中眼蛇夢により転落させられたことによる全身損壊
・田中 眼蛇夢 【超高校級の飼育委員】
→[死因]処刑による全身損傷
・狛枝 凪斗 【超高校級の幸運】
→[死因]毒物の摂取
*なお、狛枝凪斗を殺害したのは『更生補助プログラム』である七海千秋であり、七海千秋もまた、処刑により消失している(狛枝凪斗が自身を殺すよう誘導したとの証言もあるが、詳細は不明)。
※ちなみに、プログラム内で死亡した生徒は全て現実世界では『脳死』という形で死亡判定がされている。
「………酷い」
資料を読み終わったうちは、深くため息をついた。
歴史の教科書に書いてあったことは、当たり前だけどほんの一部でしかなかったのだ。
苗木誠達が経験した二度のコロシアイ。
何故こんなことにうちら希望ヶ峰学園の生徒達が巻き込まれなければいけないのだろうか。
「………これがさっき武史達が言ってたことかよ。全員脳死って……」
「肉体は死亡していないが、脳が死亡している状態だな。世界の殆どで脳死というのは人間としての死を意味する」
「………そうだよね。肉体は綺麗だけど、目が覚める可能性はほぼない」
うちはファイルを元あった場所に戻す。
「過去のコロシアイについては分かった。が、ワタシ達のコロシアイについての手がかりは特に見当たらないな」
「そうだね。えーっと………じゃあ右側の引き出しかな………」
「凛、私が開けますよ」
「ありがと。でも大丈夫だよ。…………あ、これだ」
右側の引き出しを漁ると、一番下の段に同じようなファイルに入った資料を見つけた。
「武史の言っていたのはこれでしょうか」
「だと思うよ。じゃあ、早速読むね」
うちらはさっきと同じように資料に目を通し始めた。
◯月×日
………もう駄目だ。
私にはもう耐えられない。
いくら絶望のためとはいえ、ここまでしなくてはならないのか。
私は目が覚めた。
このままでは間違いなく世界は滅びる。
私はこの組織を抜ける。
だが、私の思惑などとうに見抜かれているだろう。
いずれ私は消される。
だからせめて、今回の計画をこのノートに書き記しておこうと思う。
これを見つけた人にお願いしたい。
どうか、この負の連鎖を止めてほしい。
絶望をどうか、この世から消してくれ。
○全人類再絶望化計画
『絶望の残党』のリーダーであり、江ノ島盾子の後継者とされている明智 麻音(黒く塗りつぶされていて読めない)様自ら立てた、再び人類を絶望に堕とす計画だ。だが、当然学園を直接絶望に堕とすのは骨が折れる。だから
88期生が入学した数ヶ月後、
その後
現在進行中ではあるが、今までの過程、そして結果について以下に記す。
第1回 コロシアイ学園生活
この1回目のコロシアイは、あの江ノ島盾子様が死ぬきっかけになった『希望ヶ峰学園でのコロシアイ学園生活』を模倣して行われた。当時の希望ヶ峰学園を完全に再現し、あの閉鎖的空間の中で元88期生を対象にコロシアイをさせたんだ。
何故大学生の元88期生を高校の舞台で殺し合わせたのか。
それについては俺もよく知らない。
そして、このコロシアイは
が……………あのコロシアイは一言でいうと、この世のものとは思えないものだった。
要するに、喜界島(読めない)様はやりすぎたんだ。
元のコロシアイが生温く見えるくらい惨いコロシアイだった。
外で観察している俺達でさえ吐き気を催す程だ。
過酷で人の心を弄ぶような動機を出し、派手に殺し合わせた。
結論から言うと…………このコロシアイの生存者は1人だけだ。
他の生徒は全員死亡した。
そう、全滅だ。
そして勝ち残ったのは………例の多重人格(読めない)実験の生き残りだ。
このコロシアイが始まる数年前までとある施設で行われていた、孤児を対象に行われた非人道的実験。あれの生き残りが今回のコロシアイでも生き残ったんだ。
この結果について
当然だろう。だってあの実験は、絶望側の戦力となるソルジャーを作るためのものなんだからな。
ちなみに、生き残った1人は第3回目のコロシアイにまた参加させるらしい。
1回目生き残った奴が他のコロシアイではどう動くのか、データを取るらしい。
とても人間の考えることとは思えない。
生存者(1名)
【超高校級の忍者】不知火 椿(読めない)
死亡者(17名)
・なお、最後に一斉に死亡した4名に関しては、処刑中にバグにより強制終了したため、現在も生死は不明である。
※ここから先は紙が破り取られているため、何が書いてあるのか分からない
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第2回 コロシアイ大学生活
2回目のコロシアイについては、
何故前回と舞台が違うのか。その理由は知らない。あの方曰く「コロシアイのマンネリ化を防ぐため」とか言ってたらしいが、それが本当なのか俺達下っ端研究員には知るよしもない。
このコロシアイの特徴を伝えておく。それはこのコロシアイにだけ
きっと実験対象者の中に相当思い入れのある奴がいるのだろう。
だからこのコロシアイは、
まだ始まって間もないため、これからどうなるかは不明だ。
しかし、あの方がわざわざ出てくるということは、まず失敗はないだろう。
だって、
実験対象者
LA001 相川 凛《元超高校級の外国語研究家》
MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《元超高校級の動画投稿者》
MC003 喜屋武 流理恵 《元超高校級の調理部》
SA004 銀山 香織《元超高校級の棋士》
MB005 黒瀬 敦郎《元超高校級のバスケ部》
MC006 柴崎 武史《元超高校級の歴史学者》
MB007 霜花 優月《元超高校級の狙撃手》
MA008 ジャック ドクトリーヌ 《元超高校級の医者》
MC009 千野 李玖《元超高校級の茶人》
MC010 独島 灯里《元超高校級のサブカルマニア》
MB011 飛田 脚男《元超高校級のバイク便ライダー》
SB012 中澤 翼 《元超高校級のフットサル選手》
LB013 錦織 清子《元超高校級のテニスプレーヤー》
MB014 分倍河原 剛 《元超高校級の空手家》
015 北条 業
MA016 万斗 輝晃 《元超高校級の情報屋》
MB017 幸村 雪 《元超高校級の激運》
※氏名前の番号については、希望ヶ峰学園時代のものをそのまま使用している。
※15番の北条業についてだが、これはあの方からの提案により特例で希望ヶ峰学園時代に予備学科から転入させた生徒であるため、才能は所有していない一般人である。
第3回 コロシアイ旅行
3回目のコロシアイの舞台は旅館だ。前回と同じように新たな観点からコロシアイをさせデータを取るつもりなんだろう。
このコロシアイについてはまだ調整中の段階故データ不足だ。おまけに俺達はコロシアイを誰が指揮するのかすら知らない。
恐らく2回目のコロシアイが中盤くらいまで進み次第始まるとは思うのだが、確証は出来ない。
だが、1つだけ分かっていることがある。
実験対象者の中に多重人格(読めない)実験の生き残りが全員いることだ。
あの過酷な実験を生き残った3人の人格がコロシアイにどう作用してくるのか。
今回のコロシアイの目的はそこだろう。
実験対象者
※ここから先は破り取られており、何が書いてあるか分からない
「…………嘘、でしょ?」
資料を読み終えたうちは思わず手に持つそれを落としそうになる。
「………は?オレら88期の他の奴もコロシアイをさせられてるってことか………?
「それに、1回目のコロシアイは既に終了し、生存者は1名のみ、とあるな」
「そんなことって………!」
うちらと一緒に入学した仲間。
その人達が同じようにコロシアイに巻き込まれて、そして死んだ。
そんなこと、すぐ受け入れろという方が難しい話だ。
それに………。
「ま、待ってよ………。じゃあうちらが入学する時からもう未来機関は…………」
「………絶望の残党に目をつけられていたようですね………」
優月ちゃんは信じられないといった風に言葉をこぼす。
「て、てことは、じゃあ味方だと思ってた未来機関は実は絶望の残党の味方で………ええと………」
「少し落ち着きたまえ、黒瀬敦郎クン。助手よ、あのレポートをもう一回見せてくれ」
「レポートって………あれ?」
うちはおろおろしながらカバフォンを操作してレポートの内容を表示する。
・(新)希望ヶ峰学園
旧希望ヶ峰学園で発生したコロシアイ学園生活の終結後、未来機関によって再建された新しい学園を指す。
絶望の残党の脅威が去ったと判断した未来機関は、新たな時代の光となる希望に満ち溢れた生徒を育成する為、旧希望ヶ峰学園を取り壊し新しい希望ヶ峰学園を設立したのである。
ちなみに設立したのは未来機関であるが、実際に経営を行なっているのは未来機関ではなく、各地から集められた元超高校級の生徒である。
…………と、表向きはそうなっているが、実際は全人類再絶望化計画の為に未来機関内に潜り込ませた我々の仲間が工作した結果再建された学校である。
新たに入ってきた新入生を絶望化させ、兵力として運用する為の養成機関に過ぎないのである。
・希望ヶ峰大学
高校で自分の才能を磨き上げ、そして更なる才能の研鑽を望む生徒の為に設立された国内最高峰の大学。より専門的な技術、知識を身につけながら自分のやりたい事に打ち込める学術機関であり、世界に羽ばたく人材の育成を大きな目的としている。
だが、こちらも表向きの話であり、実際はより質の高い絶望化した生徒を作り出し、全人類再絶望化計画を速やかに遂行する為の施設である。
近年では教育の高度化が進み、絶望の残党と化した希望ヶ峰学園77期生の更生に使用された『新世界プログラム』の技術を応用した、絶望化をより効率的に進められる設備も用意されている。
「………新しい希望ヶ峰学園は………
「…………間接的にそうなるだろうな」
うちの発言に対して明智さんは頷く。
「絶望の残党によってコントロールされた『未来機関』が新しい希望ヶ峰学園を建てた、ということになるからな」
「じゃ、じゃあ武史のヤローも『絶望の残党』ってことかよ!?あいつつ、また嘘ついてるんじゃねーだろーな!?」
さっきまでうちらの頼もしい味方として今回の作戦を提案してくれた柴崎君は、やはりうちらの敵だった?
けど、その問いに対して小さく首を振ったのは優月ちゃんだ。
「恐らく、それは違うと思います。私はずっと武史の事を観察していたのですが、嘘をついているように見えませんでした。それに、私の予想ですが、武史が未来機関に誘われた時、既に未来機関が絶望の残党に侵食され始めていたことを彼は知らなかったのかもしれません。未来機関側が意図的にその事実を隠していたと考える方がしっくりきます」
「そっか………それならいいんだけど」
柴崎君に自分達の正体を知らせず彼を引き入れて、そして彼を使って希望ヶ峰学園の内情を把握しようとしていたのだろうか。
「しかし、今までの記述を真実だと仮定するなら、色々とおかしなことがある。例えば、『ワタシ達を兵力として運用』と書いてあるが、そのワタシ達同士でコロシアイをさせるのは矛盾している。何故なら、人が減る分、当然兵力も減るからだ」
「それは私も思いました。一体何故そんな事を………」
「これを見るとうちら88期生は3回に分けてコロシアイをさせられて、1回目なんて1人しか残ってないんだよ。まるで意味が分からないよ。……………ん?ちょっと待って?」
「凛?」
うちは、前の探索の時ジャック君達が見つけてくれた資料を懐から取り出す。
希望ヶ峰学園第88期生 入学者一覧
A組
相川 凛【外国語研究家】
明智 麻音【探偵】
天草 京介【神父】
綾辻 澪【軍医】
霞ヶ峰 麻衣子【動画投稿者】
喜界島 造 【機械工】
銀山 香織【棋士】
車丘 平五郎【運び屋】
ケヴィン マイケル【ハッカー】
ジャック ドクトリーヌ【医者】
司 拓郎【秀才】
灰掛 威和男【鍵師】
原 薬子【薬剤師】
益谷 保人【投資家】
万斗 輝晃【情報屋】
湯川 キリコ【物理学者】
宵崎 ひまり【完全記憶能力】
17名
B組
蒼葉 和【達人】
飛鳥 圭【スリ】
風神 雷哉【喧嘩屋】
黒瀬 敦郎【バスケ部】
無悪 烈火【不運】
霜花 優月【狙撃手】
不知火 椿【くノ一】
武井 王【十種競技王】
百々海 真凛【水泳選手】
飛田 脚男【バイク便ライダー】
中澤 翼【フットサル選手】
錦織 清子【テニスプレーヤー】
ハルク ゴンザレス【ボディビルダー】
分倍河原 剛【空手家】
本川 佑也【サッカー選手】
結城 晴翔【バトミントン部】
幸村 雪【激運】
17名
C組
円城寺 霊夜【オカルト研究家】
北桜 千尋【ピアニスト】
北桜 八尋【作曲家】
喜屋武 流理恵【調理部】
近藤 笑美【芸人】
佐々木 莉央奈【かるたクイーン】
柴崎 武史【歴史学者】
写実 真平【カメラマン】
鈴原 歌音【合唱部】
千野 李玖【茶人】
立華 流流花【スタイリスト】
手ノ森 弘美子【漫画家】
問井 新斗【自宅警備員】
独島 灯里【サブカルマニア】
桃林 林檎【グルメリポーター】
薬師院 月乃【女将】
夢寺 蓮【マジシャン】
17名
「………やっぱりそうだ。優月ちゃん。業ちゃんが殺された場所って『超高校級の機械工の研究教室』で合ってるよね?」
「え、ええ。そうですが………」
「柴崎君が前回襲われたのは『超高校級の薬剤師の研究教室』だよね?」
「ええ。間違いないです。それが…………あ!?」
優月ちゃんも気がついたようだ。
どうしてあの時気が付かなかったんだろう。
才能を見ればすぐ分かった筈なのに。
「才能研究棟2階にある研究教室…………。あれは
うちらには全く関係のない研究教室。
それは過去のコロシアイに巻き込まれた人達が持っていた才能に関係している。
そう仮定すれば、初めから『機械工の研究教室』が血塗れだったのも納得がいく。
あの場所で実際に…………コロシアイが起きたのだ。
「ふむ。そうなると、黒幕は2回目となる今回のコロシアイの現場に、1回目のコロシアイの参加者と関係のある才能の研究教室を作ったというわけか。だとしたら、その意図が分からないな」
「そうだね。考えられる可能性は…………モノカバがうちらを動揺させるために『1回目のコロシアイの現場を再現した』とかじゃないかな?」
「………モノカバの考えそうなことだぜ」
実際に1回目のコロシアイが行われたのは別の場所で間違いない。
だからあの研究教室と1回目のコロシアイは直接は関係ない筈だ。
しかし………モノカバは恐らく1回目に凄惨なコロシアイがあったことをうちらに認識させるために、当時の殺人現場をあの研究教室に『再現』したのだ。
「2階には他にも複数の研究教室かありましたよね?」
「うん。確か………」
業ちゃんが前教えてくれたのは………確か全部で12個の研究教室があるということだった。
合唱部、漫画家、運び屋、不運、ハッカー、スタイリスト、死神、投資家、鍵師、芸人。そして機械工と薬剤師。
「少なくとも、今言った才能の人達は1回目のコロシアイに巻き込まれたってことだね」
「12人ですか………私達と比べて随分と少ないですね」
「しかし、それはあくまでも『少なくとも12人』だ。これ以上の人数が参加してた可能性も十分考えられる。いや、その可能性が極めて高い」
「そうだね。資料から参加人数も読み取れないことだし、これ以上深く考えないようにしよう」
しかし、気になることは他にもある。
例えば、『死神』という才能の研究教室があると言う話だが、うちら88期生の中にそんな才能を持つ人間は存在しない。
であれば、一体誰のことを指しているのだろうか。
「ひとまず、あの研究教室の謎が解けただけでもよしとしましょう」
「ああ。だが、今回のコロシアイを止めるにあたって必要な情報は得られなかったな。そもそも、77期生のコロシアイは、外部からの介入の結果止めることが出来た事例だ。今回も同じように外部からの介入が来るとは限らない。あまり参考にはならないだろう」
「なら、どうにかして外部と連絡はとれないでしょうか?」
「それは何とも言えないが………現状では難しいだろうな。何故なら、今千野李玖クンがモノカバからコロシアイに関する全ての機能を奪取している状態だからだ」
「そっか。じゃあその線は一旦期待しない方がいっか………」
となると、自分達でどうにかしてコロシアイを止める方法を探さなくてはいけない。
「とにかく、一度食堂に戻るべきだろう。柴崎武史クンに聞きたいことがまだ沢山あるしな」
「あ、じゃあ先に行ってて。うち、行きたいところがあって」
「1人で大丈夫ですか?必要なら私も同行しますが」
心配そうに聞いてくる優月ちゃんの申し出をやんわりと断りつつ、うちはみんなとは別方向へと向かう。
昨日の裁判の後からずっと考えていた。
B棟 才能研究棟 1F
「………ごめんください」
うちらは目的地に到着すると、目の前にあるドアを軽くノックする。
「どうぞー」
すると中から返事が返ってきた。
今の緊迫した状況とはかけ離れた、呑気な声だ。
うちは素直にドアを開ける。
「…………お、やっと来たんだー」
「待ちくたびれたよ、ヒーロー☆」
『絶望の庭』幹部、独島灯里さんはこちらを見てにこやかに笑っていた。
生存者
LA001 相川 凛《外国語研究家》
MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》
MC003 喜屋武 流理恵 《調理部》
SA004 銀山 香織《棋士》
MB005 黒瀬 敦郎《バスケ部》
MC006 柴崎 武史《歴史学者》
MB007 霜花 優月《狙撃手》
MA008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》
MC009 千野 李玖《茶人》
MC010 独島 灯里《サブカルマニア》
MB011 飛田 脚男《バイク便ライダー》
SB012 中澤 翼 《フットサル選手》
LB013 錦織 清子《テニスプレーヤー》
MB014 分倍河原 剛 《空手家》
015 北条 業 《希望ヶ峰学園予備学科生/放火魔》
MA016 万斗 輝晃 《情報屋》
MB017 幸村 雪 《激運》
MA018 明智 麻音《探偵》
残り7人
次回の更新も出来るだけ間が空かないように頑張ります…………