ダンガンロンパ キャンパス   作:さわらの西京焼き

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なんとか年内ギリギリ投稿出来ました………!





(非)日常編③

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、おはよう」

「おっす」

「おはようございます」

「どうもッス」

「お早う、助手」

欠伸を噛み殺しながら食堂に入ると、既にうち以外のみんなは揃っていた。

今日の朝食当番である優月ちゃんの作った食事をみんなで食べる。

そして食事が終わると、各々自分のやりたいことをやるために食堂を出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うちらが新たに団結する意思を固めた日から2日が経過していた。

 

 

 

 

千野李玖からのアナウンスはまだない。

 

 

 

 

 

 

その間、うちらは日中、各々で過ごすことにした。

全員で固まって気を張り詰めていても、いつかは疲れてしまう。

だからいつでも千野李玖からのアナウンスに対応出来るよう準備はしつつ、リラックスして過ごすのがいいのではないか。

そう提案したのは明智さんだ。

確かに、あちらからアクションを起こしてこない限り、こちらが現状することは何もない。

新たな脱出の手がかりを探すといっても、既にあらかた調べ尽くしてしまったし、明智さんが今までの情報を整理してくれている最中のため、うちらは無理に手がかりを探さなくてもいいと、明智さんは加えてそう言った。

それに対して全員が承諾したため、朝、夜は必ず全員で食堂に集合して食事を摂ることだけ約束して、後は自由に過ごすことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今日はどうしようか。

うちは廊下をぶらぶら歩きながら考える。

………そうだ。

他の人に会いに行こうかな。

交流を深めるのも悪くないよね。

「まずはあの人かな」

うちはある人に早速連絡を入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……相川サン、何してるんスか?」

返信がしばらく待っていても来なかったため、うちは連絡を入れた人物がいそうなところを探し回っていると、ちょうど彼の研究教室の前でばったりと出くわした。

手には湯気が上がっているカップを持っている。

「あ、柴崎君!なんで連絡返してくれないの?」

「連絡?………あー、今気づいたッス」

「絶対嘘じゃん…………」

柴崎君の表情から見て分かる。

きっと彼はうちから連絡が来てるのを分かって無視したんだ。

いわゆる『既読無視』ってやつだ。

「僕、今オフモードなんで相川サンと話したくないんスよ。相川サン声デカくてうるさいから」

なんて失礼な奴だ。

カップを持っていなかったら蹴飛ばしてやるのに。

「………決めた。柴崎君、研究教室に入れて。色々お話しよう」

「え?嫌ッスけど」

「早く」

「だから…………」

「は・や・く!うちに散々悪口言って傷つけたの、悪いと思ってるよね?だったらうちの頼み、聞いてくれてもいいでしょ?」

「その話何回持ち出すんスか………。ハァ、分かりましたよ。少しなら付き合ってあげますって。だからその般若みたいた顔で睨むの、やめてくださいよ」

「やった」

だって散々、『無能』とか言ってきたし。

今はあれは演技だったとわかってるはいえ、うちが深く傷ついたのは事実だし。これくらい強引でもいいよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

『超高校級の歴史学者』の研究教室

 

 

 

 

 

「それにしても相川サン、相変わらず警戒心ゼロッスね」

何回目か分からない彼の研究教室への訪問。

うちが自分の部屋のように慣れた手つきで椅子を持ってきて座ると、柴崎君が呆れたようにこちらを見ていた。

「ん?なんで?」

「普通、このコロシアイの環境で進んで2人きりになろうとしないッスよ。もし僕が今殺意を持っていて相川サンを殺そうと思ってたらどうするんスか?」

「それはないよ。だってうち、柴崎君のこと信頼してるもん。そんなことする人じゃないって分かってるから、こうして来てるわけ」

「本当アンタって人は…………」

何故かため息をつく柴崎君。

今までこっちは何回柴崎君に対してため息をつかされたと思ってるんだ。

「………なんか相川サンって、見てて心配になるんスよね。ドジだし、素直だし、お人好しだから、すぐ人に騙されるんじゃないかってずっとハラハラしてたんスよ。まあ実際、相当騙されてたみたいッスけど」

「おい。喧嘩売ってんのか」

「拳を握る速度が早すぎるッスよ。戦闘民族スかアンタは………」

うちが拳を握った瞬間ドン引きする柴崎君。

「……まあでも、相川サンがここまで無事で良かったッスよ。最初に一緒に行動した仲だし、死なれたら目覚めが悪いッスからねえ」

続けて彼の口からそんな言葉が出てくる。

「………心配してくれてたんだね。ありがと」

「これでも一応、未来機関の人間なんで。まあコロシアイ止められてない時点で未来機関名乗る資格なんてないただのゴミクズなんスけど」

「ちょっとコメントしづらいからその自虐やめて」

そんな世間話をしながら、うちは彼とここで初めて出会った時のことを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

うちがここで目覚めた時、最初に出会ったのが柴崎君だった。

そこから彼と一緒に行動し、全員と自己紹介を済ませたんだっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「柴崎君とここで初めて会った時から、もう1ヶ月以上も経ってるんだね」

「そうッスね。色々ありすぎてあっという間だったッスけど。騒がしかった最初の頃が懐かしいッスよ」

「うん。最初はあんなにいたのに、今はもう7人だもんね………」

食堂で騒ぎながらご飯を食べてた光景はもう二度と見ることが出来ない。

「………ごめん、なんか湿っぽい話になっちゃったね。あ!そうだ!柴崎君に聞きたいことがあったんだ」

「……………耳塞いでいいッスか?」

「なんでよ!?別に悪口とかじゃないって!」

「はいはい冗談ッスよ。で、何スか?」

うちはここで、ずっと気になっていたことを彼に尋ねることにした。

「そういえばさ、柴崎君って何で『超高校級の歴史学者』なの?」

「ん?何スか急に」

「だって、柴崎君から才能の話って聞いたことなかったから。ちょっと気になっちゃって」

「………僕、別に他の人みたいに才能について語れることないッスよ。特に理由もないし歴史に対して情熱があるわけでもないんスよ」

「そうなんだ………」

「最初に自己紹介した時に言ったと思うんスけど、自分が興味ある分野を適当に研究してたら勝手に超高校級認定されただけなんスよ。歴史に興味はあるけど歴史学者として食っていける程の知識はないし、それを自分の職業とするつもりもない。そんな感じッスよ」

「前回聞いた時も思ったけど、うちと柴崎君似てるね。うちも『外国語研究家』なんて呼ばれてるけど、うちも好きな外国語を調べまくってただけだもん。別に情熱とかないし、外国語話せるわけじゃないから仕事としてやっていくのも難しいだろうし」

「あー………相川サンもそうだったッスね。正直鬱陶しくないッスか?大したことしてないのに周りから『超高校級』なんて持て囃されて」

「うーん………確かにそれは思うかも。過剰に持ち上げられるのは勘弁して欲しいかなって」

希望ヶ峰学園に入れたのは光栄だけど、自分が何も成し得ていないからか、他の人を差し置いて自分が入ってよかったのか、なんてネガティブな気持ちが今もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ未来機関の話は?どうして未来機関に入ろうと思ったの?」

ついでに未来機関についての話も聞いてみる。

「それも正直適当ッス。別に正義感が強いわけでもない。世の中を変えたいなんて大それた理由も持っちゃいない。ただ、スカウトを受けた時、自分の力が役に立つなら、って思って入っただけッス。勇気なんて持っちゃいない、腰抜けの僕が何でスカウトされたのか未だに分かんないッスけどね」

「うーん、でも柴崎君、うちは凄く勇気あると思うけどなー」

「え?」

柴崎君は少し驚いたような表情をこちらに向けた。

「だって、今回のコロシアイで誰にも頼らず1人でずっと黒幕を暴こうと頑張ったんでしょ?それも時には命懸けで。それって相当勇気がないと出来ないことだと思うよ。少なくとも、何もしてない人に柴崎君を非難する資格はないとうちは思う」

「………それが成果が伴っていなくても?」

「うん。まあ途中のやり方は正しくなかったかもしれないけどさ」

「……こんな無能人間に情けをかけてれるなんて、相川サンは仏みたいな人ッスねえ」

「茶化さないでよ。うち、本当のこと言ってるだけなんだから」

柴崎君と話すといつもこうだ。

彼は基本的に本音で話そうとしない。

彼の心の底にある本当の気持ち。

それをいつか知ることが出来たらいいんだけど………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………コロシアイ、いつ終わるんだろうね」

その後も2人で他愛のない雑談を続け、沈黙が訪れた時。

うちは思わず小さな声で呟いた。

「どうしたんスか急に?」

「なんかさ、色々ありすぎで疲れちゃって。最近こういう弱音というか愚痴というか……そんなネガティブな言葉が出ちゃうことが多いんだよね」

「ポジティブだけが取り柄の相川サンにしては珍しいッスねえ」

「だけとか言うな」

余計なことを知った柴崎君の肩を軽く殴る。

「まあでも相川サンの心配は杞憂ッスよ。だって………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………コロシアイはもう、終盤に近づいている」

 

 

 

 

 

 

 

「………え?」

「この馬鹿馬鹿しいデスゲームの終わりは近いッス。だから安心して下さい、相川サン」

柴崎君はカップの飲み物を飲み干すと、突如そう言った。

「ちょっと待って。何で柴崎君はそんな………」

「どうしてあたかも分かってるような感じで言うのか、って聞きたいんスか?」

その発言が何やら確信めいたものであったことにうちは疑問を感じ質問しようとする。が、柴崎君にはそれが分かっていたようだ。

「う、うん」

「それは…………………()()()()()()()()()()()ッスよ」

「それって………前見つけたうちらの先輩達のコロシアイのことだよね?」

希望ヶ峰学園78期生、そして77期生の先輩達のコロシアイは、確かに両方とも5()()の裁判を終えた後最終裁判に臨む、という形式だった。

「そうッス。今僕達がやってきた裁判は4()()。セオリー通りならあと1回学級裁判が起きれば、その後は誰かが死ぬ事もなくなる、ってことッスね」

「……じゃあ、まだ誰かが死ぬ可能性があるってこと?」

「………それは何とも言えないッスね。僕達のコロシアイは今までのコロシアイとは状況が決定的に違う。参加者である男がコロシアイを乗っ取るなんて今までになかったパターンッスからねえ」

それもそうだ。

今の状況は、黒幕にとっても予想外の展開の筈だ。

うちらにコロシアイをさせるよりも先に、このコロシアイの主導権を取り戻さないといけないし。

 

 

 

 

 

 

 

「まあここまで来たら、後は好き放題やってる千野李玖と陰でコソコソやってる陰気な黒幕を仕留めて終わりッス。相川サン、後少しの辛抱ッスよ」

「そうだね。………待って、その『仕留める』って物理的に、ってことじゃないよね………?」

「さあ、それはどうッスかねえ?もしかしたら物理的にかもしれないッスよ?それにもしかしたら流れ弾で相川サンも仕留めることになっちゃうかもしれないッスねえ」

「そしたらその前にうちがアンタを仕留めてやる」

「痛っ!?ちょっとした冗談じゃないッスか!?それで脛蹴るなんて……」

「柴崎君の冗談はタチが悪い」

そんなこんなで彼とくだらない話で盛り上がった。

柴崎君とまた少し仲良くなれた………のかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柴崎君と別れてしばらく時間が経った時。

暇になったうちは次の人に会おうと思い、とある場所に向かっていた。

「明智さんの行動って読めないけど………多分あそこにいるんじゃないかな」

次の人、それは明智さんだ。

彼女は読書好きであることはうちも知っている。

ということは………まず思いつく場所はあそこだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

D棟 図書館

 

 

 

 

「やあ助手。キミがこの場所に来るのは珍しいな」

本がたくさんある場所。

それはD棟図書館しかない。

そして案の定彼女は、椅子でコーヒーを飲みながら読書をしていた。

「やっぱりここにいた。というか明智さん、よく事件が起きた場所で読書なんか出来るね………」

「ん?別にここで殺人が起きたわけではないだろう?何も気にすることはあるまい」

「いやいや、でも明智さんが殴られて気絶してたのここでしょ?しかも殴られる前明智さんが座ってた場所、今明智さんがいるところだよ?」

「……………そういえばそうだったな」

完全に忘れてたんだ。

普段の推理とか物凄く鋭いのに、意外なところで抜けてるんだよなあ、明智さんって。

「まあ気にすることはない。死にはしなかったんだ。生きているだけて儲け物だろう」

「本当に眩しいくらいポジティブだなあ。羨ましいよ」

「この中で一番前向きなキミに言われてもな」

「いや、うちそんなポジティブじゃないよ?」

「………フッ、流石は我が助手。謙虚であることは美徳になり得ることを知ったか。いい傾向だ」

なんの傾向だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?助手は何をしにここに来たのかね?キミは進んで読書をするような人間には見えないし、少なくともワタシの知る限り、高校時代のキミは本を読むのを嫌っていたが」

「そうなの!?」

うちってそんな読書苦手だったんだ………。

「………じゃなくて!今日は明智さんと色々お話したいなと思って来たんだ」

「………ほう?」

明智さんは読んでいた本を閉じてこちらを見る。

「いつ千野李玖が言う『本物のコロシアイ』が始まるか分からないからさ」

「ふむ、ではキミは残りの時間を『友との交流』に充てるつもり、ということか。実にキミらしい。ワタシなら、1枚でも多く書類をめくりこのコロシアイの謎を解くために奮闘し、そして千野李玖を止めるための作戦を頭の中で繰り返しシュミレートし、1%でも成功率を上げるために努力するがね」

「うっ………」

心にグサリと刺さる。

実はそれは一回実行しようとした。

けど、頭の悪いうちは、結局いい作戦も思いつかなかったし、書類をいくらめくっても新たな手がかりが見つからないしで、やる気を削がれてしまったため断念してしまったのだ。

そして今は、『もうジタバタしてもしょうがない。後は気合いで頑張る』という気持ちになってしまっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふふふ」

すると明智さんは、珍しく可愛らしい声で笑った。

「冗談だよ。そんな落ち込んだ顔をするな。別にそれが悪いことだと思ってないし、キミを責めるつもりもない。寧ろ十分すぎる仕事をしているじゃないか。前にも言っただろう?適材適所だと。作戦の詰めはワタシや柴崎武史クンに任せておけば問題ない。その代わり、キミにはその持ち前のコミュニケーション能力で引き続きワタシ達を繋ぎ止めて欲しい。団結が崩れないようにな」

どうやらうちをからかいたかっただけみたいだ。

「………なんか明智さんがうちを評価してくれるのが違和感しかないんだけど」

「寧ろ何故評価されないと思った?今までの裁判で結果を出しているキミは最も賞賛されるべき人間だと思うがね?」

「でも…………あー、だめだめ。ネガティブなことは言わないって決めたから」

灯里ちゃんと話した時、うちは前を向くって決めたんだし。

後悔とか自分を否定することはもうしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて明智さん。明智さんの話、色々聞かせてよ」

「………ふむ。いいだろう。丁度休憩の読書も飽きてきたころだしな」

彼女はコーヒーを啜ると、ふうと一息つく。

「実はワタシの話は一通り、高校時代にキミにしているのだが、今はキミの記憶がない以上、また一から話すことになる。それでもいいかね?」

「もちろん。寧ろうちが覚えてなくてごめんって感じ」

「キミが謝る必要はない。………ではそうだな。『超高校級の探偵』にまつわる話をしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワタシが探偵を志した理由。それは『自分の知的好奇心』を満たすため。そして『謎を解いた後の快感を得る』ためだ」

 

 

 

 

「ワタシは比較的裕福な家の生まれでね。両親に愛され、欲しいものは何でも与えられ、何不自由なく育てられた。だか、それと同時に両親は異常なまでに()()()だった。何をするにも両親と一緒でないといけない。どこかに1人で外出するなど絶対に許されず、怪我をする可能性のある事はさせてもらえなかった。ワタシは言われた通り過ごしてきたが、ある日を境にこう思うようになった。『ワタシにこの生活は窮屈すぎる』と」

 

 

 

 

「ワタシは幼少期から非常に好奇心旺盛な子どもだった。それ故に外の世界へ出ることが出来ず、冒険も出来ない生活に徐々にストレスがたまっていった。貧乏な家庭から見ると贅沢な悩みだと怒られてしまいそうだがね」

 

 

 

 

 

「そんな時だった。両親が死んだ。ワタシが小学生の時だ。家に侵入してきた強盗に殺されたのだ。当然ワタシは悲しんだ。が、それと同時に解放されたような気分になった。これからは自分の好きにしていいんだ。自分の知りたいこと、やりたいことを何でもしていいんだとな」

 

 

 

 

「身寄りのないワタシはしばらくして叔父夫婦に引き取られた。叔父夫婦はワタシに好きなことをさせてくれた。ワタシはそれに感謝しつつ、日々自分の知的好奇心を満たすため、様々なことを見て、聞いて、体験した。その時ぐらいからだな。ワタシが『探偵』という職業に興味を持つようになったのは」

 

 

 

 

「常に新しい事件という謎が依頼として入ってくる。そうすれば自分のまだ知らないことに出会えるかもしれない。そんなワタシの知的好奇心を満たすのにぴったりの職業、それが『探偵』だとワタシは思った。だからこうして探偵となり、日々謎を追い求めている」

 

 

 

 

「そして探偵を初めて気がついたこと。それは『謎を解く』ことがワタシにとって非常に快感だということだ。疑問が全て解決され、組み上げたパズルが完成する瞬間。あの快感を一度味わって以来、ワタシは病みつきになってしまった。ああ、謎を解くということはこんなにも気持ちがいいものなのか、とな」

 

 

 

 

 

 

「不謹慎な話かもしれないが、ワタシが一番心踊るのは『殺人事件』だ。何故なら、大抵の場合殺人事件では犯人、被害者が謎を残すからだ。それはいわば警察や探偵といった、謎を解決する側の人間への挑戦状だとワタシは考えている」

 

 

 

 

 

「その謎を解くことによって、ワタシはまた快感を得られる。そして、ワタシは新たに知らないことを知ることが出来るかもしれない。そんなワクワクが止まらないのだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上が、ワタシが『探偵』を志した理由。そして今も『探偵』を続けている理由だ」

話終わると明智さんは、喉を潤すためかコーヒーを一杯口に運んだ。

「どうだね?ワタシの話を聞いて」

「う、うん………なんというかその………明智さんらしいね」

「………キミは本当に顔に出やすいな」

明智さんはうちの顔を見て少し呆れたように笑う。

「キミは今こう思ったのだろう?『あなたが探偵という職業を目指した理由は分かった。けど、うちはあなたには共感出来ない』とな」

「………明智さんってもしかしてエスパー?」

「そんなわけがあるか。あんな非科学的なものをキミは信じているのか?」

明智さん、そういう超能力は否定派なんだ。

「助手は単純だからな。思考回路も実にわかりやすい。………ただ、勘違いさせないように言っておくと」

彼女はピンと人差し指を立てた。

「ワタシは別に殺人事件が起こって欲しいとか、人が死んで欲しいなんて思ったことは一度もない。そして当然、死んだ人間を侮辱することや尊厳を破壊するなんてことは決してしない。それだけは理解して欲しい」

「………うん。分かってる。うちは明智さんが、誰かが殺された時に喜んだりする人間じゃないってことはよく知ってるから」

幸村さん達が死んだ時、そして業ちゃん達が死んだ時。

明智さんは少なくとも、被害者が死んだことを喜ぶような真似はしなかった。

まあ、裁判中にテンションが上がってたのは、ちょっと不謹慎じゃないって思ったりもしたけど。

 

 

 

 

 

 

「………そうか。流石はワタシの助手だ」

「あ、そうだ。その『助手』って呼び方だけど………」

「もしかして、高校時代の時の話を聞きたいのかね?」

明智さんがうちの疑問に被せるように聞いてくる。うちが慌てて「うん」と頷く。

「うちさ、記憶が抜けてるから詳しく聞きたいんだよね。明智さんとの出会いとか、『助手』って呼ぶようになった経緯とかさ」

「………話してもいいが…………」

明智さんは顎に手を当て悩む仕草を見せる。

「それは、記憶が戻った後のお楽しみ、ということにしておくのがいいのではないかね?話すとだいぶ長くなるし、その方が助手にとっても、ワタシにとってもいいと思うがな」

「う〜ん、なんか焦らさせれてる気分。そんなにうちら長く一緒に過ごしたの?」

「ああ。何せ助手とワタシはほぼ毎日一緒にいたからな。『運命共同体』と言っても過言ではない。まあ、こんな事を言ったら北条業クンには嫉妬されてしまうがね」

「嫉妬どころで済めばいいけど………」

業ちゃん、明智さんに対しても殺意マシマシだったからなあ。

暴れ回ってもおかしくない。

 

 

 

 

 

 

「さて、ワタシの話は一旦終わりだが…………そうだ。助手、キミもこの際、活字に触れて本嫌いを直すというのはどうだね?」

「遠慮しておきます」

うちはすぐ立ち上がり帰ろうとする。が、それよりも早く手を掴まれてしまった。

「世界で一番可愛くて頭のいい探偵の助手であるキミが、本を読むのが嫌いなのは致命的だ。ここで克服しておくべきだな」

「ち、違うよ!?別に嫌いじゃないけど………なんか国語が苦手なの!だから本読むのが好きじゃないの!」

「では外国語の本は平気なのか?」

「そりゃそうだよ!いくらでも読めるし!」

一応うち、『外国語研究家』ですし。

「なら、簡単な日本語のミステリーから始めるか。………これならどうだ?ミステリーの金字塔だぞ」

明智さんは本棚へ行き、ある本を取ってきた。タイトルは『そして誰もいなくなった』。

「これ………有名な本なの?」

「『そして誰もいなくなった』を知らないのか………?ああ、そうだ。こんな問答を高校時代にもやった気がする。キミはそれでも『探偵』の助手か?」

「だからうち、別に好き好んで明智さんの助手になったわけじゃ………」

「………これは一から教育のし直しだな」

「あ、明智さん………?目が怖いよ………?」

「今日は寝る暇などないと思いたまえ。ワタシのミステリー講義、そして文章理解の講義を同時に受けるのだからな」

結局うちは、明智さんが満足するまでひたすらミステリーの話を聞かされ、本を何冊も読まされたのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

 

 

 

 

うちは今日、あることを実行しようとしていた。

それは普通に考えたらあり得ないことで、今の状況でそんなことをするなんて頭でもおかしくなったのか、って言われてもしょうがないと思う。

けど、もうここしかタイミングはない。

これを逃すと、うちは一生後悔すると思う。

だから………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………それだけ、ですか?」

「うん………」

「助手に最初呼び出された時、何か深刻な事態が起きたのかと心配になったが…………まさかそれが()()()()()()()()()()ことだったとは。流石のワタシでも予想できなかったな」

「なんか心配させちゃったみたいでごめんね………」

うちは早速、優月ちゃんと明智さんをうちの個室に呼び出し、今回実行したいこと、つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを説明した。

特に優月ちゃんなんか、うちの話し出す前の真剣な表情を見て凄く心配してくれてたみたいだけど、話を聞いた後は安堵したのか、今は気が抜けてる状態だ。どうやら2人に余計な心配をかけてしまったみたいだ。

「しかし、()()()()となると、独島灯里クンは………」

「勿論呼ぶよ。寧ろ彼女ともっと仲良くなるために今回の企画を立てたんだから」

「凛、貴方が灯里と距離を縮めたいと考える理由は分かります。ですが灯里は現状、敵であるという設定です。無闇に接触すれば千野李玖に勘付かれる可能性があります」

「うん。それは分かってる。だからお風呂にしたんだ。理由は………」

「『監視カメラがない』からか」

「うん。灯里ちゃんにはC棟にある温泉施設に来てもらう。1人で来るのは別に不自然ではないでしょ?それで温泉内では監視カメラのないところでゆっくり話す。どう?これならバレないでしょ?」

「ですが…………」

「霜花優月クン。ここは助手の案に乗ってやろうではないか。なに、心配するな。独島灯里クンの計画の邪魔になるようなことにはならない」

「麻音がそう言うなら………」

明智さんは素直に、優月ちゃんは少し不安そうに了承してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(独島灯里side)

 

 

 

 

 

「ふぅ〜〜〜〜!やっぱりお風呂は気持ちいいねえ〜〜〜〜!」

「ええ。やはり温かいお湯に浸かると心も体もリラックス出来ますね」

「モノカバの用意した施設を褒めるのは癪だが、この温泉施設は実にいい。やはり個室のシャワーだけでは疲れは取れないからな」

「…………………」

 

 

 

 

何故、こうなった。

 

 

 

 

どうしてぼくは、この3人と一緒に温泉に浸かっている?

この3人とは、水面下で協力関係を結んだとはいえ、表面上はまだ敵同士。

このコロシアイを起こした絶望の残党の集団である『絶望の庭』の幹部と、コロシアイに巻き込まれた被害者。

普通なら一緒に温泉に入るなんてあり得ない筈なのに。

なのにぼくは、「前回話した計画について話がある」なんて相川さんの話を信じてここに来て、急に温泉に入ってお喋りしようなんて言われて、戸惑ってる中無理やり服脱がされて………。

 

 

 

 

 

 

 

「……………………あのさ」

ぼくは暫く黙って少し離れた所でお湯に浸かっていたけど、我慢の限界がきて相川さんに尋ねた。

「ん?どうしたの灯里ちゃん?」

許可してないにも関わらず灯里ちゃん、なんて馴れ馴れしい呼び方をまだされてることはこの際置いておくとして。

「どうしたの、じゃないでしょ。なんでぼくを騙したんだよ」

「騙してなんかないよ。灯里ちゃんと話したかったのは事実だし」

「それって違う事でしょ?…………はぁ、意味分かんないよ。だってぼく、一応表面上では相川さん達の敵ってことになってるって前説明したよね?それなのに温泉に一緒に入ろうとなんて………どうかしてるって」

「独島灯里クン、諦めたまえ。助手はこうなったら梃子でも動かない。助手が満足するまでお喋りしてあげたまえ。それにキミも知ってる通り、ここには監視カメラがない。助手なりに一応配慮はしたというわけだ。だから思う存分交流を深められるぞ」

「灯里。凛はどうやら貴方ともっと仲を深めたいみたいです。不満に思う気持ちは分かりますが、どうか付き合ってあげて下さい。それに、貴方と仲良くしたい気持ちは私達も一緒です」

「………」

どうやら、霜花さんも明智さんも相川さんに賛成みたい。

………何それ。

本当に意味分かんない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだよ!うちはただ灯里ちゃんともっと仲良くなりたいだけなの!」

「はぁ…………?」

ぼくはその尋常じゃない熱意にドン引きしつつ、立ち上がって後ずさりをしながら逃げようとする。

けど、相川さんはそれを見逃さなかった。ぼくはすぐ手を掴まれる。

「駄目だよ。ここまで来たんだから。逃がさないよ」

「………嘘でしょ」

「灯里。諦めましょう」

「霜花優月クンに同意だ。助手の頑固さは世界一だからな。大人しく諦めたまえ」

「そこまで言う!?」

「そこまで言うだろう」

「…………………分かったよ。ぼくの負けだ」

ぼくはもう逃げるのを諦め、ため息をつきながら湯船に浸かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………それにしてもなんかここに来るの久しぶりだね」

改めてぼく達4人はならんで湯船に浸かっていると、相川さんはぽつりとそう呟いた。

「………そう、ですね。あの時がもう懐かしく感じます」

「女子全員でここに来た時か。実に騒がしい女子会だったな」

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくは、あの時の光景を思い出す。

あの頃は今と違い随分と賑やかだった。

自分より胸の大きい霞ヶ峰さんに嫉妬して追いかけ回していた幸村さん。

顔を赤くしながら必死にそんな幸村さんから逃げていた霞ヶ峰さん。

相川さんに必死に自分をアピールしていた北条さん。

今の4人に加えて3人いた。

けど………その3人は死んでしまった。

しかも全員、ぼくら『絶望の庭』の手によって命を落とした。

ぼくの…………ぼく達のせいでみんな死んだんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「………それに衝撃的なだったのがジャック君達が覗きをしてたことだよね。万斗君とか黒瀬君はともかく、ジャック君が覗きなんてやるイメージなかったもん」

「結局、あれは何だったんでしょうか。あつろう達は『男のマロン』なる物のせいだとしきりに主張していましたが………」

「あまり深く突っ込んでやるな。ワタシ達は現在思春期真っ只中の高校生なのだぞ。同級生の女子を性的対象として見てしまうのも無理はない。それにこのような閉鎖空間でずっと我慢するのも厳しかろう。彼らはずっと探していたのだよ」

「探す?何をですか?」

「それは勿論………」

「ダメダメ!それ以上生々しい話はしないで!!」

「ん?ワタシは何も言っていないぞ?助手は一体何をそんな焦っているのかね?」

「いや………そ、それは…………」

「どうした?ワタシは助手が一体何を想像したのか気になるんだが?是非教えてもらいたいものだな」

「明智さん分かっててわざと言ってるでしょ!!からかわないで!!!」

「???」

そんな過去を思い出しているぼくを他所に、3人はくだらない話で盛り上がっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

………どうして?

どうしてぼくを非難しないの?

どうして3人が死んだ悲しい過去をそんな明るく話すことができるの?

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………灯里ちゃん?」

「………………………………ん?」

「どうしたの?うちらの話、そんなにつまらなかった?」

「いや、別にそういうわけじゃないよ。ただ思い出してただけ」

そんなことは言えず、ぼくは適当に誤魔化す。

「………ねえ、灯里ちゃん」

「なに」

「灯里ちゃんはさ、千野李玖を殺したらどうするつもりなの?」

相川さんは突如そんなことを聞いてきた。

「前にも言ったでしょ。ぼくの生きる目的は『あのクソ野郎を出来るだけ無惨に殺すこと』って。ぼくにはそれしか残されてない。逆にそれが達成出来ればこんな世の中に用はない。だからぼくは死ぬつもりだよ」

前みたいに本音を求められてるだろうと思い、ハッキリとそう言った。

嘘はついていない。ぼくに生きる理由はもうないから、この世にいる意味はない。

それにぼくには『絶望の庭』としてみんなを巻き込んだ責任がある。だからぼくが死ねばみんな少しはスッキリするだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっか………。やっぱそうなんだね」

相川さんはそれを聞くと、こちらに向き直った。

「正直に言うね。うちがこんなにしつこく灯里ちゃんに声をかける理由。それはあなたが死ぬのを止めるためだよ」

「……………………は?」

ぼくはその意味がよく分からず、一瞬思考が止まる。

「うちはどんな人であろうとも、目の前で自ら死のうとする人は絶対に止める」

「………どうしてそこまで」

前にも救う、なんてことを言われた。

どうして、ぼくみたいなクズにそんな言葉をかけてくれるんだろう。

「…どうして、かあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当の友達になりたい、からじゃだめかな?」

 

 

 

 

 

 

「…………!」

困ったように笑う彼女に、ぼくは言葉を失う。

「だってさ、せっかく世界中に何億も人がいる中で知り合うことが出来たんだよ?ならこの出会いを大切にして、友達になって、楽しく笑い合いたいって思うのって、そんなに変かな?」

何を言ってるんだろう。

「別に灯里ちゃんにだけ言ってるんじゃないよ。優月ちゃんだって、明智さんだって。それにいなくなったみんなとも、うちは極力仲良く、楽しく過ごしたいと思ってた。だからこんな状況でも団結しようと頑張ったんだよ。まあ失敗しちゃったけど」

………お人好しすぎる。

「たとえ今までの灯里ちゃんが演技してた偽物の灯里ちゃんだったとしても、うちはすっごく楽しかったし、友達だと思ってたんだ。友達が死にたい、なんて言ってたら普通止めるでしょ?一緒に笑いたいって思うでしょ?」

………余計なお世話すぎる。

「だからさ、現実に戻ったら、罪を償って、またやり直そう。うちが、あなたに生きててもいいって思わせられるよに頑張るし、協力するから」

………善人すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………ずっと苦しかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

気づけばぼくは、そう呟いていた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ぽつぽつと言葉をその口から溢す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………村のみんなを殺された復讐のためにずっとあのクソ野郎の凌辱から耐えて」

 

 

 

 

 

 

 

「殺したくてたまらないのをずっと耐えて」

 

 

 

 

 

 

 

「耐えて耐えて耐え続けて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分の復讐のため、って身勝手な理由で『絶望の残党』として人を傷つけて」

 

 

 

 

 

 

 

「関係ない人が傷ついていくのを見るのが堪らなく苦しくて」

 

 

 

 

 

 

 

 

「味方なんていなかった。友達なんていなかった」

 

 

 

 

 

 

 

「こんな事絶対間違ってるって、ずっと思ってた。何度辞めようとしたか分からない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けど、村のみんなにあの日、必ずあいつを殺すと誓った」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな他者を犠牲にしてまで自分の願望を叶えようとする浅ましくて汚れた人間を……………まだ友達だと思ってくれるの……………………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………当然でしょ?」

相川さんは優しくぼくの手を握った。

「うちはあなたが根っからの悪人じゃないことを知ってるから、こうして言ってるんだよ。だからうちからのお願い。自ら死ぬなんて言わないで。あなたの命には価値があるんだよ。死んで欲しくないと思ってる人がいるんだよ」

「…………うぅ…………」

こんなに人の言葉が響いたのはいつ以来だろうか。

そんな事を思いながら、ぼくは下を向き涙を流し続けた。

その間、相川さんは黙ってずっとぼくの手を握ってくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(霜花優月side)

 

 

 

 

 

 

灯里が涙を流し、凛が慰めているのを邪魔しないように、私と麻音は気を遣い離れた場所に移動しました。

あの様子だと、凛の言葉は灯里に届いたでしょう。

………凛。貴方は本当に凄い。

私と灯里、2人もの死にたがっていた人間を改心させてしまうなんて。

「………全く、助手の才能にはいつも驚かされるな」

どうやら隣の麻音も同じことを思っていたらしく、そう口にしました。

「ええ。彼女の言葉は不思議と人を救う力があるのかもしれません。

「ああ、そうか。キミも説得されたうちの1人か。ならその証言は説得力があるな。なら助手はこれから『超高校級のカウンセラー』と名乗った方がいいかもしれんな」

「ふふ、そうですね」

きっと凛なら、カウンセラーとしてもうまくやれるでしょう。

本人は謙遜してやりたがらないでしょうけど。

 

 

 

 

 

 

「しかし麻音。正直言って意外でした」

「ん?何がかね?」

せっかく2人になったので、私は麻音に聞きたかったことを尋ねます。

「貴方が凛の誘いに乗ったことです。貴方は最近、単独行動が多かったですし、意図的に私達を避けてるように見えましたので」

「ふむ………別に避けてるわけではなかったのだが」

麻音は顎に手を当てる仕草を見せます。

「どうしても調べたいことがあってな。それをずっと探っていた。そのためには単独で動いた方が効率が良かったというまでだ。コソコソ動いているつもりはなかったのだが、そう見えてしまったのなら、誤解させてしまい悪かった、という謝罪をした方がいいな」

「いえ、別に責めてるわけではないのですが、凛が貴方のことを心配していましたので」

「そうか。なら助手にも後で謝罪をしておかなければな」

麻音はフッと笑うと天井を見つめました。

 

 

 

 

 

 

 

「それで?気になることというのは何ですか?」

「なに、千野李玖が黒幕からコロシアイ全ての権限を奪い取った、という事実に納得がいかなくてな。どのようにしてそのような大胆なことを成し遂げたのか、色々調べていたのだよ」

「して、その成果は?」

「結局不明だ。普通、モノカバの操作権限といい、学則違反の際に発生する処刑のシステムといい、そう簡単に破られるセキュリティではない。しかしあの男は処刑を簡単に止め、モノカバの操作権限をあっという間に掌握した。何か裏があると考えるのが普通ではないかね?」

「確かにそれはそうですが………」

「ワタシは一度気になったことはとことん調べ尽くすタイプなんだ。探偵の性、というやつだな」

「そうです、か」

確かに麻音の言う通り、李玖が黒幕にも勝る力を手に入れた過程は気になります。

長年黒幕の側に幹部として仕えるふりをして、ずっと下剋上を企ててきた男ですから、きっと今回のコロシアイの乗っ取りも長期にわたり計画してきたのでしょう。

ですがその方法というのは………うーん、皆目検討もつきませんね。

「ワタシは引き続きカラクリを探ってみるつもりだ。なに、安心したまえ。成果があれば必ず報告する。隠し事はなしだ。何せワタシ達は仲間だからな」

「…………そうですか。ならいいのですが」

麻音は口角を上げ笑うと、立ち上がりジャグジーに向かいます。

 

 

 

 

.

 

 

「(…………やはり間違いないですね)」

1人になった私は目を閉じて先程の麻音との会話を振り返ります。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「普通、モノカバの操作権限といい、学則違反の際に発生する処刑のシステムといい、そう簡単に破られるセキュリティ()()()()

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

何故、麻音は黒幕側ではないにも関わらず、『()()()()』などと確信めいた発言をすることが出来たのか。

………恐らく、彼女は確実に何かを知っている。

だが、それを私達に意図的に隠している。

それがただ彼女が面白がって私達に言わないのか、あるいは…………。

彼女の狙いは何だ?

何を企んでいる?

「(これが凛達のための企みであるなら良いのですが………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(相川凛side)

 

 

 

泣いている灯里ちゃんを慰めていると、明智さんがこちらにやってきた。

「助手よ。キミは相当な人たらしのようだな。まさか独島灯里クンとまでここまで親密になるとは」

「ひ、人たらしって………」

まさかそんなことを言われるとは思わなかった。自分が人たらしなんて自覚、全くないんだけどなあ。

「まあ、仲がいいに越したことはないが。…………それはそうと、少し独島灯里クンを借りてもいいかね?」

「え?」

「…………」

「なに、ワタシも彼女と交流を深めたいと思っていてね。あまり1対1で話したことがなかったから、ぜひこの機会にと思ったまでだ」

「で、でも…………」

今、灯里ちゃんは心身共に疲れている。だからもう少し時間を置いてからなら方がいいのではないか。

そううちが提案しようとした時だった。

「…………いいよ」

灯里ちゃんは目を擦り涙を拭くと、明智さんを見て立ち上がった。

「灯里ちゃん!?少し落ち着いてからの方が……」

「……平気。相川さんのおかげで少しスッキリした。もう大丈夫」

うちを見て彼女は微笑を浮かべる。

「済まないな。こんな時だからこそ、交流を深めたいと思ったんだ。場所は…………あそこのサウナの中でどうだ。なに、手短に済ませるつもりだから暑さは問題ない」

「分かった」

そう言って2人はサウナへと向かっていった。

どんな内容を話すのか個人的に気になったが、流石に盗み聞きをするのは人としてどうかなと思ったのでやめておく。

うちは優月ちゃんと一緒に2人が戻るまで雑談をしながら待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、2人は明智さんが言ったようにすぐ戻ってきた。けど、どんな話をしてたのかは教えてくれなかった。

「内緒話を聞くのは野暮ではないかね」なんて言われてはぐらかされてしまったけど、確かに2人の仲にずけずけと入りこむのは確かによくないので、それ以上は聞かなかった。

「じゃあ、ぼく先に出るから。これ以上一緒にいたらアイツに勘付かれるし」

灯里ちゃんは一足先に温泉施設を出て行こうとする。

「灯里ちゃん!また会えるよね……?」

うちはその背中姿がなんだか寂しくて、思わずそう声をかけていた。

「………うん。また会えるよ。じゃあね、相川さん」

灯里ちゃんはうちの声かけに対して微笑むと、そのまま出ていってしまった。

「大丈夫ですよ、凛」

うちが不安そうにそれを見送っていると、優月ちゃんが優しく肩を叩く。

「少なくとも私には、灯里は凛と話して少し楽になったように見えました。灯里はきっと、いい方向に答えを出す気がします」

「そうだよね。ありがとう、優月ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、さらに数日が経過した日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お早う、下等生物の諸君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始めようか……………………『最後のコロシアイ』を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千野李玖からの悪魔のようなアナウンスが大学中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生存者

 

 

LA001 相川 凛《外国語研究家》

MA002 霞ヶ峰 麻衣子 《動画投稿者》

MC003 喜屋武 流理恵 《調理部》

SA004 銀山 香織《棋士》

MB005 黒瀬 敦郎《バスケ部》

MC006 柴崎 武史《歴史学者》

MB007 霜花 優月《狙撃手》

MA008 ジャック ドクトリーヌ 《医者》

MC009 千野 李玖《茶人》

MC010 独島 灯里《サブカルマニア》

MB011 飛田 脚男《バイク便ライダー》

SB012 中澤 翼 《フットサル選手》

LB013 錦織 清子《テニスプレーヤー》

MB014 分倍河原 剛 《空手家》

015 北条 業 《希望ヶ峰学園予備学科生/放火魔》

MA016 万斗 輝晃 《情報屋》

MB017 幸村 雪 《激運》

MA018 明智 麻音《探偵》

 

 

 

 

 

 

 

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