得てして、フラグとは回収されるためにあるものであり。
建てたフラグを折ることは中々に難しいもので、そしてフラグは建てたものに良い効果をもたらすことはあまりない。
話は変わるが、言霊というものがある。
言葉に出したことが、現実に事象として起こってしまうというものだ。
例えば忌み言葉、結婚式の『去る』『切る』『帰る』『離れる』や、受験の『滑る』『落ちる』『躓く』などなど。
つまるところ、悪いこと言や悪いこと起きるで、いいこと言やいいこと起きるで、慢心したら悪いこと起きるでということである。
さてここで問題だ。
この前、俺は一体何を考えていたのか。何に危惧を抱いていたのか。
三行経つまでに答えよ。
正解は幼馴染とご主人を会わせてはいけない、である。
三行経ってない?
言ったろ、フラグとは回収されるためにあるって、何行経つまでに、何秒経つまでにというそのものが出題者が間髪入れずに答えるというフラグなのだ。
下腹部に控えめに刻まれたそれをどうにかこうにか解けないものかと俺は試行錯誤をしていた。
淫紋に見立てたシジルなんかでは決してなく、ご主人様が自作したマジモンの淫紋だそうで、共に湯に浸かることが、正確には共に体を清めることが魔術の第一段階などと思っていなかった俺は、風呂に共に入るのは恥ずかしいけどまあそれくらいで満足してくれるのならとホイホイ付いて行ってバットエンドであった。
ゲームオーバーRTAである。このパターンの走者はほかにいないので実質的に一位だよやったね。というか走者が、ご主人様に愛される人が他にいるとか考えたくもないのだが。
まあ、飼う飼わないはご主人様が決めるところなので文句は言わない、ただ一番ではありたいなぁ。
番犬みたいな立ち位置なら、ご主人様に頼られることもあるだろうか……。
と、そんなことよりだ。
俺は
いやーまずい、割とマズイ。
何が不味いって淫紋を見える人がコレに触れると問答無用で俺が発情するとかいうふざけた暗示をかける魔術だったことがすごーく不味い。
魔術的な視覚を持ってないと知覚不可能だよ、なんてご主人様に言われたからひとまず安心しつつもご主人様の前では少し警戒するようになってしまったという程度だったのに……。
だったのに……だったのに!!
「なんでお前も見えてんの馬鹿野郎!! つーか、付いてくんな、ご主人様からの強制召喚に自ら巻き込まれて何やってんの!?
おい待てご主人様に何渡してるの!? ねぇなんで俺のコレ見えてんのぉぉおおお!?!?」
頭を抱えて眼前でご主人様と向かい合った幼馴染に叫ぶ。
「やけに説明口調じゃん。つか、わたし野郎じゃないとおもう……女郎?」
「野郎でもいいと思うよ、女郎だと遊女と混ざってしまう」
「野郎だと男ってことになっちゃうでしょー?」
何やらうちの幼馴染が来てすぐに爆笑して、会話して盛り上がって、本らしきものを渡されて超上機嫌な我がご主人様が幼馴染の言葉に返した。
……あんなにご主人様を笑わせるなんて羨ましい。
俺の人生最大級の危機である。
ご覧の通り、ご主人様と幼馴染の相性は初対面だというのに最高だ。
性癖が似通っているからか、なぜかは分からないが、兎にも角にも異様である。
予測通りだったというのに酷く恐怖心を抱いている。
なぜ、幼馴染が魔術的な視覚を持ってないと見えない淫紋がバッチリ見えているのかとか、それを見て愉しげに顔を歪ませることしか反応がなかったのかとか、その様子を見ていたご主人様が気分を良くしたのかとかもう何も考えたくない。
尻尾を股を通して抱き枕のようにして床で寝る。
某
今日ほどご主人様の家が土足じゃなくて良かったと思うことはない、今、寝室に行ったら危ないと警報がガンガンと鳴らしているのだ。
さて寝ようとっとと寝よう。
そうすれば幼馴染がご主人様に渡した『わたしの幼馴染の飼い主になる人へ』とかいう字体から微妙に昔に書いたことが伺える著:幼馴染の狂気の産物はなかったことになるし全力で恐怖を抱いている俺の心が休まる。
というかあれ何を想定して書いたものなんだ……??
初登場で狂気を醸すなとメタな神様が幼馴染に呪詛を漏らす夢を見るんだ。
悪夢で悪夢を上書きしてけ!
化け物には化け物をぶつけるんだよォ!!
と、一拍も挟まずにご主人様の太ももの上に頭を載せられていることに気付いた俺は硬直した。
さすが魔神サマである。
何をしたのかとんとわからなかった。
初めて会った日のように耳と頭を撫でてくれる。
お邪魔にならないようにと現在地南極大陸なはずなのに静かにこの家から気配を消していった
ただただ心地良さと幸せという感情が心を支配して離さない。
甘い露のように溶けそうな意識を、しかしずっとこれを味わっていたいという心が引き止める。
耳を触る甘い感覚にだらしない笑みを浮かべそうになる。
そも、心も身体もあの日以来ご主人様の物なのだ。
ご主人様がしたいように俺に触れればいいし、好きに扱ってくれて構わないのだ。
望まれる一人称だって、価値観だって、信念だって変えてみせよう。
命ぜられるなら、躊躇いなくこの身を死へ投げ出せる。
もしご主人様に嫌われて捨てられるようなことがあれば……誰の迷惑にもならない場所で独り果てているだろう。
この気持ちを、ご主人様は正しく理解してくれているかどうかなんて、考えるに値しない。
ご主人様は俺の気持ちなど考えずに物として扱えばいいのだから。
だというのに、ご主人様が欲のままに接したのは初めて会った日だけである。いや、それすら間違いか、だって俺が寝るのを許して貰えたのだから。本当に欲のままに接されていたらあの時既に……。
それどころか、いくらでも機会はあった。だけどそのどれも、誘われても俺が意地を張って拒否しても無理やり襲ってくることはなかった。
想像して顔を赤く染めたのをご主人様に悟られまいと顔を隠そうとすると自然と太ももに顔を埋める体制になってしまい慌てて飛び起きる。
「………………。
へぇ、頭を撫でていただけだったのに、顔をあかーくあかーくしたと思ったら隠して……何を考えていたのか話してくれたらその通りにしてあげるよ」
「は、ははは、話しませんよ!?」
「考えてたことは否定しないんだねぇ」
すこし名残惜しそうな顔を浮かべたご主人様だがすぐにころりと表情を変えてニヨニヨと笑った。
そろりと立ち上がったご主人様がニコニコ笑顔で俺の幼い両手を掴んで寝室に引っ張って……うん?
ちょっと待ってまさかの爆速フラグ回収は想定していなかった。
俺を引っ張りながら振り返ったご主人様がずいっと顔を寄せて俺の唇に唇をあわせてきた。
「…………っ!?」
「ははは、びっくりしたかな?
でもね、私は君が自ら同意するのを待っているんだ、続きはしてあげないよ。
やっぱり、恥ずかしがる顔も可愛いなぁ」
悪戯気に離れたご主人様が、寝室前の廊下で止まって愉悦の表情を浮かべた。
初登場なのに妙に自然に場に入り込むギャグキャラ幼馴染ちゃ……(例に漏れず名前未定)
何より主人公ちゃんのテンションの落差が酷い。撫でられた瞬間の即堕ちに作者本人が困惑していたり。
何より思うのが一話以上のものが書けないなぁと……深夜テンションか、やはり深夜テンションでイチャイチャを書けと言うのか……っ!!