治ったので初投稿です。
今回は感染症についてとかぐもこ成分を増し増しにしてみました。
~永琳視点~
帰ってきたてゐを叱ってから数日後、永遠亭は異常な忙しさに襲われていた。
「先生! 急患です!」
「……そこの寝台にのせておいてちょうだい」
今、永遠亭の寝台には妹紅と人里の教師を勤めている
「うどんげ、教師と妹紅を呼んできなさい」
「は、はい!」
弟子に二人を呼ぶように頼んでから、子供達の様子を見る症状は見ると、全員が下痢や嘔吐をしており、中には発熱を起こしている者も数人いた。便の様子が水様便*1なことから、これが続くなら極度の脱水症状が起こることが予想される。そこから推察するにこの病気はたぶん……。
「師匠! お呼びしましたっ」
「なぁ! 子供達は大丈夫何だよな! 頼むからそうだと言ってくれっ!!」
やってきた妹紅は子供達をじっと見て黙っていたが、教師の方は額に汗をかいて私につかみかかりそうな勢いで聞いてくる。
「聞きたい事があるのよ」
「き、ききたいこと?」
彼女が焦っているのを無視してさっさと聞きたいことを聞く。
「あの子達、最近何か変な物を食べてないかしら」
「変な物……」
そう聞くと彼女がうなり考え出す。私はその間に感染したであろうウイルスに対する死滅剤を調合していた。
「……あっ! 思い出したぞ。外から珍しく海産物が流れてきたみたいでな。その子達の親がそれらを買っていたのを見たぞ」
ああ、これではっきりした。私は調合し終えた薬を飲ませながら話す。
「うどんげ、点滴の用意を。それと教師、原因は分かったわ」
「はい、師匠」
全員に薬を飲ませ、椅子に座る。弟子が点滴の用意を済ませている間に、教師に空いた椅子に座るように促す。
彼女はあたふたとしながらも座って、私の言葉を待つ。
「彼らの病はコレラよ」
「コレ、ラ?」
「ええ、コレラウイルスというウイルスに感染した動植物を食べると感染するわ」
「……コレラだか何だかはどうでもいいっ! 子供達は治るんだよなっ!!」
「もう治療済みよ」
「そうか……。それなら良かった……」
「点滴と経口補水液を摂取しながら放置でも2週間すれば体外に出るけど、今回は私の能力で造ったコレラに対する死滅剤を調合して投与したわ」
「そ、そうか……」
上白沢はどんな治療を施したのか理解出来ていないようだが、まあいい。医師として説明を終えた私は話を変える。
「一応、この子達は一日様子を見てから帰すわ。脱水症状がひどくて逆戻りされても困るし。明日の昼過ぎ辺りに迎えにきてちょうだい」
「了解した」
治ると分かって安心したのか、狼狽した様子も消え、きりっとした顔で話を聞いている。
「それと、この菌の潜伏期間*2は数日あるから、あとから症状が出た人が出たら連れてきなさい」
「了解した、先生。治療してくれてありがとう」
彼女はそう言って立ち上がる。
「もう行くのかしら」
上白沢は苦い顔をしながら、渋るように答える。
「確かに子供は心配ではある。だが、私は人里を守る為にあまり離れられない立場なんだ」
「そう……。うどんげ、お見送りを」
「分かりましたー、上白沢さん、こちらです」
そうして部屋を出ていった彼女達から、意識をずっと黙りな妹紅に向ける。
「貴女はどうするの。今日は泊まってくの?」
「……ん、ああ。そうだな。今日は輝夜と話していこうかな」
「なら、私は残りの子供へ点滴を打つのと経口補水液の準備をするから、貴女はうどんげと一緒に夕食の用意をお願いしてもいいかしら」
「ああ、それくらいならお安いご用さ」
妹紅はうどんげを手伝いに行くために厨房へと向かった。
私は部屋に備え付けている煮沸済みの水が入った
「本当ならこういうのは弟子にやらせるのでしょうけど、うどんげは夕食の準備で忙しいし仕方ないわね」
私は椅子から立ち上がって子供達用にそれぞれの簡易的な屑籠の準備を始めるのだった。
~輝夜視点~
二人で並んで月を見る。ぼーっとしている妹紅をよそに、私はお茶を啜る。竹林の間を通って流れてくる風が心地よく、このまま寝てしまいそうになる。
湯呑みを隣に置いて妹紅の顔を見ると、いまだにぼーっとしていた。愛していると言った相手と一緒にいてその態度は流石に如何なものかと思う。私は妹紅が組んでいた膝の上の手を退けて、無理矢理その膝に頭をのせた。
「か、輝夜……」
「なによ、妹紅」
「いきなりこういうのは心臓に悪いから、せめて一言言ってくれ」
「五月蝿い。貴女がそう言う態度なのが悪いのよ」
そう言うと妹紅は顔をしかめて、うなり始めた。
彼女のその態度に呆れてため息をはき、私は彼女の頬に手を添える。
「まったく……。何かあるなら言いなさいよ。その為に、ここに来たんでしょ?」
「……輝夜にはかなわないなぁ」
彼女は何かを言おうとして言葉を一旦飲み込んで、整理してから少しずつ口を開いた。
「何も感じなかったんだ」
「……というと?」
「子供達が苦しんでいても何とも思わなくなったんだ」
……ああ、そういうこと。
「それくらい普通でしょう」
「普通、ふつうかぁ……」
何か言いたげな煮え切らない態度の妹紅に少し苛ついてきたので、両手で彼女の頬っぺたをつまんで引っ張った。思いの外柔らかくよく延びて面白い。
「何するんだよっ」
「貴女は優しすぎる」
さっきから思っていた言葉をそのまま伝えると、妹紅は疑問に思ったのか眉をひそめる。
「別に優しくなんて……」
「赤の他人を想う事ができる時点で優しすぎるわ。その考え方は永遠を過ごす者ではなく刹那を生きる者の発想よ」
彼女は苦虫を噛み潰したかのような顔で唸る。そんな子供が駄々をこねるような態度に呆れながらも話を続ける。
「まあ、そんなところも貴女の魅力なのかもしれないわね」
「……え?」
「他人を想い、慈しみ、敬う。永遠を生きる者からしたら下らない事でも大事にできる。心が擦りきれてないという良い証拠ね」
永遠を生きる者に死が存在しないかと聞かれるが、別に死が無いわけではないのだ。肉体の細胞分裂は止まらないが、精神的には死ぬ。
そうならない為にも人は何かしらの願いを探すのだ。それが例え、愛であれ、憎悪であれ、盲信であれ、暇だからではない。
だからこそ、心配にもなる。妹紅がこんなことで精神を削られるのは本意ではない。故に、そうだ。演じるとしよう。
妹紅には少し、愛に溺れてもらうとしよう。
私は妹紅の顔を近づけさせてから、自身の顔を近づけ唇を重ねた。いきなりのことで驚いた顔を見せる妹紅。
「……ぷはぁ」
唇を離すと彼女の口から吐息が漏れる。そして、一瞬の後に頬を紅潮させて戸惑った様子を見せる。
「い、いきなり何をす…っ!?」
そんな妹紅の唇を私の口でふさいで舌も入れる。はしたないと思われようと関係ない。今、やることこそが重要なんだ。彼女から来たとは言え、私の依存相手になり得る存在を手放すわけにはいかない。
永琳では駄目だから。彼女が求めているのは従者としての立ち位置と親のような視点。それでは駄目なんだ。永く生きて対等に分かち合える存在こそ、未来の私が死なない為にも必要なんだ。
だから妹紅。私を恨んでくれても良い。愛してくれてもいい。ただ、対等に分かち合ってほしいだけなんだ。一人で過ごすにはこの世界は広すぎるから、どうかお願い
長く接吻をして蕩けてきた妹紅から唇を離した。彼女の口からは先程よりも、艶かしい吐息が漏れてくる。
「ハァ、ハァ……」
私は興奮しているかのような顔を造り、彼女を押し倒した。
「ねぇ、妹紅」
「な、何だよ。輝夜……」
「月明かり照らす夜。見るものは誰もいないわ」
「……それで?」
「私から言わせる気なの?」
そう言うと今度は彼女が私を下に押し倒す。その表情は先程悩んでいたことを微塵も思わせない興奮ぶりだった。計画成功と思うと同時に少し罪悪感もわく。
私は彼女をまだ愛してはいない。自分の、いや、自分達の未来で互いに依存出来るように誘導した。これが必要な事だと分かっていても彼女の意思を問うていない以上、私の勝手でしかない。
その事に罪悪感を覚えながらも、彼女に部屋の布団へと連れられて行く。
互いに布団に入っていざ、事に及ぼうとしたときに何かに気付いた様子で動きを止める妹紅。そのまましばらく停止するものだから次第に空気が気まずくなる。痺れを切らした私から話しかけることにした。
「何故、続けないの?」
そう聞くと少しの躊躇の後に答えた。
「だって輝夜が望んでいないように見えるから」
「……え?」
そんなバカな。表情は造ったし、雰囲気も造ったのに私が望んでいないように見えるだって?
「どうして分かったの」
「んー……。何となく、かな」
諦めて聞いた問いに帰ってきた答えを聞いて愕然とする。家族でもないのに、何となくで分かるわけないだろう。
「永琳でも騙せるのに見破られたのは初めてよ。流石ね」
「そ、そうかなぁ……」
誉められて、素直に照れる彼女。彼女は私の側ではなく本質を見てくれたのね。多分、彼女自身も根本的な所で理解しているのかもしれない。私が、他人からの愛を
だから、依存という形にしか落とし込めない事に、直前で気付いたのかもしれない。
なるほど……。上っ面の顔だけで求婚してきた男達と違って内面をちゃんと見てくれる、初めての人、か……。信じてみてもいいのかもね。
私は初めて心の底から望んで妹紅に接吻をした。妹紅は驚きながらも受け入れてくれる。その口づけは先程と違って舌を入れずに軽くするものだったが、私にとっては何よりも意味のある口づけだ。
「妹紅」
「……なに、輝夜」
「少しだけ貴女の事が好きになったわ」
「……というと?」
「私の内面を見てくれた初めての相手を信じたくなった。でも、これ以上になりたいならもう少し時間が欲しい」
「……分かったよ。輝夜が相手なら永遠に待てるさ」
「ありがとう、妹紅」
私は彼女と恋人繋ぎをする。妹紅はそれに応じてくれて、一緒に横になった。そうして、私達はお互いの温もりを感じながら夢を見るのであった。