そのための右手、そのための拳・・・なの
管理外世界―――砂漠
「なるほど、ヴィータがてこずるわけだな・・・少々、厄介な相手だ」
甲殻がところどころ割れ、満身創痍に見えるサンドワームを前にしてつぶやく。
長大な体躯から来る死角からの攻撃
巻き上がった砂塵による煙幕効果
明確な急所が頭部以外皆目見当もつかない
エトセトラエトセトラ
闇の書の守護騎士の将として幾多の異形と戦ってきたシグナムであったが、今回の獲物は戦いにくいことこの上なかった。
一方、このはの場合は、砂中を進むときの独特の音を聞き分け、的確にカウンターを決めるか、先ほどのようにK・B・Sの流れを徹底することで効率のよい狩りをしていた。それに、刃物を使うシグナムと違って、全力全壊で殴っても獲物が絶命する可能性は低いため、手加減不要であるという点も大きい。
閑話休題
アキレウス視点
痛みにもだえるように体をくねらせるサンドワームを見て、一瞬気を抜いてしまったシグナムは、地中からの一撃に気付くことが出来なかった。
「!?」
「シグナムさん!!」
即座に離脱を試みるも、無数に伸びる触手に雁字搦めにされてしまう。
このは嬢がそれに気付き、触手を引きちぎろうとするも、刃物を持たないこのは嬢にとって生物由来のたんぱく質からなる触手は鋼鉄のワイヤーよりも強靭に感じられた。
「ぐあぁっ!!」
『今のこのはのパワーじゃ無理だ。先に本体を叩かないと!!』
「…くっ」
だが、このはの拳が獲物に届くことはなかった。
何故なら
『Thunder Blade』
天より飛来した雷剣がサンドワームの体躯にいくつも突き刺さる。そのうちの一つがシグナムの拘束を解いた。
いつか来るとは思ってたが、まさか今が原作の真っ只中とはな・・・
『上から来るぞ!気をつけろ!!』
「もう来てますよ!!」
ごめん、言ってみたかっただけなんだ。
「ブレイクッ!」
フェイトの掛け声で雷剣が爆ぜ、爆風で巻き上げられた砂塵が一帯を覆う。
砂塵が晴れたときに現れたのは、互いをけん制しあうように向かい合うシグナムとフェイト、無残に切り刻まれたサンドワームのみであった。
「礼は言わんぞ。テスタロッサ」
「お邪魔…でしたか?」
「蒐集対象を潰されてしまった。これでは食肉ぐらいにしかならん」
「…食べるんですか?」
「私は進んで食べようとはせなんだが…物好きな奴がいてな。それに、味も食えんわけではない」
このは嬢のことですね。わかります。
「まぁ…悪い人の邪魔が私の仕事みたいなもんですから」
「そうか…悪人だったな、私は」
カートリッジの装填を終え、臨戦態勢に移行するシグナム
―――今、雌雄を決する戦いが始まる。
『って、何してるんだ?このは』
「サンドワーム剥ぎ取りですが何か」
ぶち壊しである。
サンドワーム剥ぎ取りを終え、きれいになった地上でシグナムとフェイトは改めて向かい合う。
ここでシグナムが今世紀、いやヴォルケンリッターとして生まれて以来最大のうっかりをする。
彼女にとっては他愛ない一言だったのだろう。しかし、フェイトが標的を変えるには十分すぎた。
「手を出すなよ。このは(・・・)」
瞬間空気が凍った。
念話ではなく肉声で放たれたそれはこのは嬢、俺はもちろんフェイトの耳にも届いた。
『ちょ!!シグナムさん!!私が何でこんなけったいな変身魔法使ってると思ってるんですか!!管理局にリアル割れしてるから素顔とか名前とかバレるとまずいって言ったじゃないですか!!』
『そ、そうだったな…すまん』
念話を終えたシグナムに向かってフェイトが提案をする。
「シグナムさん…この勝負の決着はまた今度でいいですか?至急お話しないといけない人がいるので」
そういってこのは嬢を見てにっこりと笑う。
―――ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
目が笑っていない。このは嬢はたちまちマナーモードになった。
その尋常ではない雰囲気にシグナムは言葉を失う。それを黙認と受け取ったフェイトはこのは嬢に向かう。
「お話、聞かせてもらうから」
フェイトの愛杖から、ガシュン、ガシュンという音がした。
―――これなんて無理ゲ?
フェイトはクロノレポートを読んでいて、かつこのはともO☆HA★NA☆SHIしたいと思ってたため、シグナムとの決闘を放り出してドライブイグニッションしました。
次回:霧島「俺の出番マダー」
お楽しみに