前回までのあらすじ
・七実さん倒して弟子入り
・精神世界で特訓、なのはがヒロインしてた
・管理局員試験を受けよう←いまここ
★←アキレウス視点の意
「それでは、これより時空管理局武装局員試験、筆記試験を行う!! それでは、始め!!」
試験直前の沈黙が嘘のように、紙をめくる音、鉛筆を走らせる音が響く。
この試験を受けているこのは嬢は、持てる実力(学力)のすべてを使ってマークシートを埋めていく。
管理局というだけあって魔法関係、つまり理数系の知識が多いのだが、見ただけで本質を理解する家庭教師NA☆NA☆MIのおかげで、まだ発見されていないであろう解法や、魔法式の解析公式なども教えられていた。
幸い、マークシート形式なので、それらが世に出ることは無い。
――もう、脳筋とは呼ばせない。
そういわんばかりの高速でこのは嬢は問題を解いていった。
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『明日は実技だが……このは、筆記はどうだった?』
一応デバイス(俺と七実さん)は別室でモニターしてはいたのだが、こういうことを聞くのはお約束だ。
「大丈夫だ。問題ない」
このは嬢、それはフラg……皆まで言うまい。
「結局のところ、実技が良ければ、多少のバカは見逃されるそうね」
実体化し、未成年がミッドで滞在するための保護者代わりとして来ている七実さんが言う。
筆記試験の出来を全く信用されなかったこのは嬢は、うがーっ、と駄々っ子のように七実さんに掴みかかろうとし、かわされて逆に肩に担がれてしまった。
『それにしても、なのはたちと一緒に受けなくて良かったのか? 試験』
「だって先輩面したいじゃないですか」
意外と考えることが小物なこのは嬢に呆れたが、いつものことなのでスルー。
「さぁ、明日も早いですし、宿泊先に戻りましょう。雑草が多いところ(人混み)は苦手です」
『お、おう……』
今のやり取り(雑草発言)に、半ば恐怖を覚えつつ、試験会場を後にした。
―――宿
ビジネスホテル的な簡素な一室、シャワーはついているがトイレは共用、文明の進んだミッドチルダにおいては最下層ともいえる宿泊施設に、このは嬢は泊まっていた。
でも、
『なんでベッドが一つしかないんですかねぇ……』
俺のぼやきに、このは嬢が反応する。
「昔の人は言いました……『男は床で寝ろ』……と、いい言葉です」
男女差別だ!! 謝罪と賠償を要求するぅ!!
「何を考えてるのか知らないけれど、あなたなら、宝石形態でいれば何にも問題ないじゃありませんか。私はこのはを抱き枕にして寝るからベッドは一つでいいのですよ」
七実さんは、このは嬢を五感すべてで覚えるために一緒に寝る。
キマシタワー
というより、母と子、姉と妹のような雰囲気が二人の間には存在する。なんせ年が三倍ほど違うのだ。シカタナイネ
だが、年齢の話をすると、七実さんにフルボッコにされてしまうので割愛。
慣れない試験で疲れたのか、このは嬢はぐっすりと眠ってしまい、七実さんもすやすやと寝息を立て始めた。
『がんばってくれよ。相棒』
そう呟いて、俺はスリープモードに入った。
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翌日・実技試験会場
『なんでしがない一般局員の実技試験の相手役が、新進気鋭の俊英と名高いワイルさんなんですかね~』
「ははは、どうせ入局したら俺の部隊に引っ張るつもりなんだ。一足先に実力を見ておきたいと思うのは当然じゃないか」
俺の愚痴とも取れるツッコミに、ワイルは至極真っ当な理由で即応した。
そして、彼は愛用のデバイスである剣と盾を構える。
「まぁ、こっちも試験官だ。いきなり本気出してボコボコ、ってことはないから安心してくれていいぞ?」
……それにしてはデバイスに込めているであろう魔力が尋常ではない。
そして、信じられない音を聞く。
――ガシュン、ガシュン。
「えっ!? 最初(はな)からカートリッジですかワイルさん!!」
本気ではない、という言葉に文字通り安心したはずだったこのは嬢は驚愕する。
「いや、お前相手に油断すると一撃でもってかれるからさ。いわば保険みたいなやつだよ……さぁ、後がつかえてる。とっとと始めようぜ」
そういって、初手はやる。とばかりに『待ち』の構えを取るワイル。
「……」
『accel add』
このは嬢はにわかに殺気を強め、加速強化で飛び出した。
そのまま一直線に接近、ワイルの構える盾の前で一旦停止して、構えを取る。
ワイルは盾で死角になっているためこのは嬢が何をしているかは分かっていない。
腰を落し、体をちぢこめるように拳に力を溜め、一気に放つ。
「虚刀流、奥義『柳緑花紅(りゅうりょくかこう)』!!」
鎧通し、と呼ばれる。打撃の衝撃を守りの内側にいる人間に直接届かせる技がワイルの盾に炸裂した。
「……ッ!?」
ワイルは盾の手ごたえから衝撃の透過を感じ、後ずさって難を逃れることに成功する。
「ほらな!? 一撃で決めようとしただろ!? 言わんこっちゃない!!」
カートリッジ使っといて良かったぜ。と続けて、このは嬢に遺憾の意を示すワイル。
「今のは遠当てのすごい版か? ここ数ヶ月どんな修行してたんだ……ま、それは後で聞くとして、次はこっちから行かせてもらうぜ」
『Blitz Action』
いわずと知れた移動魔法で瞬間的に距離を詰め、バックラーで隠すようにして引き、力を溜めていた渾身の突きを放つ。
『このは、突きだ』
「ハァッ!」
「……虚刀流、『菊』」
『sword breaker』
突きの剣筋を腕と背中で挟み込むように捉え、そのまま、てこの原理で折り取った。
魔力で強化された剣だったが、こっちも魔力で強化すれば問題ない。
そもそも、「菊」という技はてこの原理を利用して剣を折る技だ。一の身体強化が十にも二十にもなる。
「おわっ?! 剣折られた! 一体いくつあるんだよ隠し玉!!」
剣を折られたワイルは飛び退りながら悪態をつく。
『……このは嬢の隠し玉は108まであるぞ(大嘘)』
「大嘘ってとこまで口に出しちゃうところがアキクオリティですよねー」
そういってこのは嬢が遠い目をする。
そうやって突っ込んでくれるのはこのは嬢だけだよ。
「あのさぁ……今試験中なんだけど、よそ見しないでくんない?」
『Mode change "Pile and Shield"』
ワイルが漫才を始めた俺たちに痺れを切らして戦闘を再開。
剣は折られたが、柄の部分に残っているデバイス本体は健在のようで、折れた刀身を何事も無かったかのように消し、大きなタワーシールドを形成する。
だが、俺はワイルのもう片方の手に握られた物から目が離せなかった。
『マークⅡ!! オンドゥルウラギッタンデスカ!!!』
『成り行きでな(ドヤァ)』
なんと、俺の作ったヴラドマークⅡではないか。
「いや、本当はもっといいやつ作ろうと思ったんだが、いかんせん時間が無くて、間に合わせで持ってきたのさ」
七キロほどの重量をなんでもないかのように持ち上げてワイルは言う。
これはまずい。
ヒット&アウェイか、捨て身のインファイトを得意とするこのは嬢にとって、パイルバンカーは天敵だ。何せ、当たったたら負け確の威力があるのだから、うかつにインファイトなんか出来ない。
なけなしの射撃も、あのタワーシールドに防がれてしまうだろう。
『このは、どうする?』
俺の懸念に、このは嬢は不適に笑って行動で答えた。
「どうするもこうするも、突っ込むしかないでしょう!!!」
――――超級、覇王!! 電影弾!!!!!!!
あらぶる鷹のポーズ、からの気の代わりに魔力を纏ったこのは嬢がワイルに突進していく。
「おいおい、なんだそのテレフォンパンチは?」
重い武器を二つも持っているとは思えない身の軽さでひらりとかわされる。
「まだまだぁ!!」
このは嬢は電影弾状態のままUターンし、再び突撃し、またあっけなくかわされた。
だが、この突撃は布石だ。
「ばぁくはつ!!」
「……っ!!」
このは嬢はワイルがかわした瞬間に、纏っていた魔力を爆発させた。
盾を油断無く構えていたワイルには傷一つなかったが、爆発の衝撃に耐えるため、一瞬その場に釘付けになる。
『accel jet increase』
そこに、ジェットで飛び上がったこのは嬢が襲い掛かる。
「ダァァーークネス!! フィンガァァーーーー!!!!!」
膨大な魔力を纏った右手がヒットし、ワイルの頭部のバリアと一瞬拮抗したが、すぐに貫通し、ワイルの頭部に砲撃並みの魔力ダメージを与え始める。
「ヒート!! エn……」
――轟音
大量の火薬が爆ぜたような音が鳴り、吹き飛ばされたのは…………このは嬢の方だった。
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□→三人称視点の意
「完全にオーバーキルだろこれ、アキレウス、なんてもんを作ったんだ……」
ヴラドの『シェル(砲弾)カートリッジ』と名付けられた大型カートリッジを手動で排莢し、ワイルは呆れたように言った。
何が起こったのかありていに言ってしまえば、ワイルがダークネスフィンガーに耐えながらヴラドを当てただけである。
ガジェットだろうが、モンスターだろうが結界だろうが、一撃で葬り去る最終兵器(リーサルウェポン)、というコンセプトの下アキレウスが心血(ロマン)を注いで開発したのだ。
その威力は、ただの魔導士にはいささか強すぎたようで、
非殺傷機構がなければ即死だった。
といわざるを得ない結果になった。
「……まだ……終わって……ない……」
演習場の壁にめり込んだこのは嬢が動き出す。
「……私は……就職をして……家計を……支え……る……」
一歩、二歩と歩き出したが、三歩目で力尽き、歩みが止まる。
このはは、このまま倒れるわけでもなく、直立のまま動かなくなった。
「まさか……立ったまま気絶しているのか?!」
ワイルはその執念とも呼べる行動に驚嘆し、模擬戦は終了した。
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★
数日後
「今日は試験結果が郵送されてくる日ですね」
『実技の方は多分問題ないと思うぞ。相手が相手だったし』
管理局の期待の星相手にここまで粘ったのだ。受からないはずがない。
そんなことを話していると、郵便配達の方が郵便受けに何かを投函するのが見えた。
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結果:不合格
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「『ファッ?!』」
俺とこのはは素っ頓狂な声を上げた。
きっと受かっている。と思いながらのこのざま。
上げて落す。さすが管理局、やることがえげつないぜ!!
俺がこんなことを考えている間に、このは嬢は詳しく読み進めていたようで、読み終わると同時に、その書面を破り捨てた。
『ど、どうしたんだこのは。そんなに取り乱して』
いつもクールなあなたはどこへ行ったの?
「実績が足りない、らしいです」
このは嬢は書面に書いてあったことをかいつまんで話してくれた。
曰く、本来管理局員の下限年齢での採用は稀で、管理局がつばを付けておきたい人材、管理局の監視下に置かなければ何が起こるかわからない。といった特別な場合を除いてありえず、あなた(このは嬢)はそれに当てはまりませんでした。
と、こんな感じだ。
書面の最後に「あと十年ほど修行して、管理局にとって魅力的な人材になって出直してきてください。だめもとで受験されるのはこちらも迷惑です」的なことを書かれたのが、このは嬢の逆鱗に触れたようだ。
…………これは後にわかることなのだが、『管理局がつばをつけておきたい人材』というモノの選考基準は、魔力量ありきで、上層部の独断と偏見で選ばれており、基本、名だたる方々(提督とか)の推薦状がなければ相手にされないようだった。
これを知ったこのは嬢が、上層部に殴りこみをかけようとしたのは、言うまでもない。
閑話休題
「こうなったら、ミッドの戦闘系の大会を荒らしまわって、賞金稼ぎしてやる。そうすれば、管理局も私のことを認めてくれるはず!!」
しばらく憤慨していたこのは嬢だったが、ふと立ち上がってこんなことを言い始めた。
確かに、DSAAとかの大会はミッドに数多くありそうだ。そして、そこでの高成績が、そのまま管理局入社への道しるべとなる可能性もある。
俺とこのは嬢、七実さんは、この春休みをミッドで過ごすことを決めた。
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結果:はじめて出た大会で反則負け&出禁を喰らった。
――ピピーッ!!
「『ふぁっ!?』」
どうやら、気力とクラッシュエミュレートシステムの相性が悪かったらしく、相手にケガを負わせてしまったらしい。
相手選手の選手生命が断たれる。といったことはなかったのは不幸中の幸いで、慰謝料など請求されたらそれこそ身売りぐらいしか選択肢がなかった。
後に「唯一反則負けを喰らった選手」ということで尾ひれが付いて伝説と化すのだが、それは今は語られるべきではない。
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失意の元、滞在先に戻ると、ワイルがいた。
「よぉ、試験は残念だったな。俺はてっきり合格したもんだと思っていたんだが……」
そんなのんきなことを抜かしおる彼奴に、今回の事の顛末を話した。
すると、彼奴はひとしきり大笑いした後、こんなことを言い出した。
「そんなに就職したいなら、俺の会社に来るか?」
縁故採用である。
「やはり、持つべきものは友ですよね……地獄に仏とはこのことです」
「じゃあ、この書類に署名よろしく」
『なんか、やたら用意が良くないか……?』
その後ロクに契約書も読まずにサインしてしまったこのは嬢に一抹の不安を覚えつつ、その日はお開きとなった。
久しぶりの投稿、書き方が変わってるかも……
次回:「あぁん!? 騙される方が悪いんだよ!!」
お楽しみに
・おまけ
アキレウス『あれ、このは嬢は武器もつと弱体化するのにパイルバンカーは問題なく使えてるのは何でなの?』
七実「当てたら勝ち確の武器に適正も何もないでしょう」
アキレウス『(´・ω・`)』