前回のあらすじ
このは嬢就職する。
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なぜか管理局の民間協力者に
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親睦会(物理)←いまここ
○
――私は、現金収入のために手を抜くわけには行かないのです。
「せやー」
「ぐほぁ!!!」
……なんでしょうかね。鎧袖一触とはこのことか、とでも言っておけばいいのでしょうかね。
どうやら、ノストーンさんの無駄な筋肉は飾りのようです。
「勝負あり。勝者、グラスパート氏!!」
審判をやっていた隊員さん(ウェダーさんというらしい。性別は男)が試合終了を告げ、ワイルさんがニヤニヤしながらこちらにやってきました。
「ほらな、強いだろ?」
そういって周りの隊員たちを見回します。
おそらく「異議のある奴は前に出て戦おうね(はぁと)」的な意味合いのこもった視線に、皆さんは、滅相もない。と青い顔をしてうなずいていました。
「よし、じゃあ今日は解散。明日から対ガジェットの訓練、そして一ヶ月後ぐらいから本格的に稼動し始める。技術部兼後方支援隊と、空戦魔導士隊は、別訓練になるから忘れないように。以上」
ワイルさんの号令で解散したのはいいのですが、隊員たちは皆さんでご飯を食べに行くそうです。
おごってくれる。といわれたので、遠慮なくついてゆくことにいたしました。
その人曰く「儲けさせてもらった」らしいのですが……私なにかしましたかね?
・
「私は、リッカ・クスノキって言うんだ。よろしくね」
曰く、クスノキさんとウェダーさんは『アラガミ』という侵食型ロストロギアに故郷の世界を滅ぼされてしまい、難民としてミッドに来たらしいです。
「……エリック・ウェダー。砲撃魔導士をやってる」
ちなみにクスノキさんは技術部所属だそうです。
「知っているとは思いますが、私はコノハ グラスパートです。メインウェポンは拳です」
それから、さまざまな方々が自己紹介をしてくださったのですが、誰かが私のコップにお酒を入れたらしく、この後の記憶が曖昧で、気がついたら、滞在先のベッドで横になっていました。
アキに昨日のことを聞くと
『ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ』
マナーモードになっていました。何ででしょうね?
七実さんに聞いたところ、私は「気分が悪くなった」と先に帰り、道中、おかしな方々に絡まれたのを鼻歌交じりに撃退して、ワイルさんに携帯(PHS)で事後処理を丸投げし、家に帰った。
ということなので、特に気にしないでおくことにしました。
そんなことはさておき
今日から訓練が始まります。
ただの訓練と侮るなかれ!!
いつもの自主訓練とは違って、お給料が出るのです。
強くなる上に、お金まで出るとは……ワイルさん、恐るべし。
でも、出勤した。という証拠にタイムカードを機械に通さないといけないのですよね。
その機械は本社にあるため、訓練場には少し(というかかなり)遠回りになります。
そのために、少し家を早く出て、空調の効いた本社一階でくつろいでから訓練場に向かおうと思ったのです。
・・
・
♯
WWW社本社ビル最上階、社長室
「よう、元気かい? 『無限の欲望(アンリミテッド・デザイア)』さん」
私は、コイツが嫌いだ。
科学者(サイエンティスト)とは個人的な感情で物事を見てはならないのだが、コイツだけはどうしても許せない。
管理局本局執務官兼、WWW社社長。ワイル・テスタロッサ
私の間接的なパトロンでもあるため、あからさまに嫌うことも出来ないのだが……
「ああ、問題ないよ。レリックも順調に集まってる……でも、そんなことを聞くために呼びつけたわけじゃないだろう?」
ワイル氏は私の言葉に、うむ。とうなずき、本題を切り出した。
「実はな……お前んとこの娘を、預かってるんだ。三番目と四番目、部下が勘違いで伸しちまってな、もちろん管理局には報告していない。勤務時間外の出来事だからな。そこで、相談なんだが……」
「取引かい? 私は一体なにを用意すれば、トーレとクアットロを返してもらえるのかな?」
一体何を要求されるのだろうか、アルハザードの知識か、はたまたロストロギア強奪任務か、と考えながら私はうんざりしてため息をついた。
「……話が早くて助かる。要求は二つ。この会社に潜んでいる二番目の撤退、もう一つは、ガジェット襲撃事件を数件でっち上げて欲しい」
二番目とは、ドゥーエという二番目の戦闘機人だ。
この企業の動向を探るために、会社員にまぎれて潜伏させている。
「……二番目? 何のことかな」
とぼけた私に対し。ワイル氏ははぁ、とため息をついた。
「やっぱ鎌かけて見てもダメかー。最近、俺の秘密の研究所が管理局に摘発されたり、技術を他の企業にパクられたりして、まさかとは思ってたんだがなぁ……」
鋭い。管理局上層部の要請で、そんなこともしたような気がする。
……だが、お前は研究などしていなかったではないか。
そこにあったのは、既に完成された『技術』ばかり、盗むほうとしては好都合なのだろうが、私から言わせれば、それはものすごく『異常』だ。
彼には、『技術』に至るまでの『研究』が圧倒的に欠落している。
それが、研究者として許せなかった。
「……いないものは引き上げようがないな。一つ目の件は取り下げよう。だが――」
――こちらでそうと思しき人物を捕まえても、そちらは一切干渉しない。ということでよろしいな?
彼は、業務用の笑顔をかぶったまま、びっくりするほどの冷たい声で言い放った。
「よろしくない。ドゥーエは私の娘だよ? この企業の変態研究者どもに好き勝手させるはずないじゃないか」
「ふむ。そうか……じゃ、貸し一つだ」
……背中に嫌な汗をかく。
何のことかわからないが、僕はこれで失礼するよ。
と、内心の動揺を悟られないうちに今すぐこの場から立ち去ろうと席を立つ。
「おお、長々と悪かったな。そうだ、お前に身分証を渡しておこうと思って用意したんだ……もちろん偽造だが」
ワイル氏は、イチ、あれを。と秘書を呼びつけ、その秘書から身分証のようなカードと、ビンの底のようなメガネを受け取ってこちらに手渡してくる。
「身分証と偽名の名刺束はいい。だがこのレトロなデザインのメガネは何だね?」
「いや、お前指名手配犯だろ。素顔でミッド出入りすんなよ」
「……」
「……(ドヤァ)」
べ、別に忘れていたわけではないっ!!
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○
・
訓練が始まって数日が経ち、隊員たちも徐々にガジェットとの訓練に慣れてきました。
その訓練の内容は、その辺の石ころを魔力でぶっ飛ばして当てる魔法(すたーだすとしゅーたー、と言うらしい)をひたすら練習させ、習得したところで、『対ガジェット用金属礫(きんぞくれき)』とかいう質量兵器すれすれの物体(まんま弾丸)をぶっ飛ば(ライフリングも再現)してガジェット(ワイルさんがどっかから持って来た本物)に当てる。という単純なものでした。
まぁ、私は別メニューなのですが……
・
くつろぐのに最適な温度に調整された室内で、初任給の使い道(取らぬ狸の皮算用)を考え、ニヤニヤしながら休憩用のイスに座っていると、声をかけられました。
「隣、失礼するよ」
声をかけたのは、ビン底メガネをかけた長髪の男の方でした。
ほかに席は十分空いていたのに、なぜか私の隣をご所望のようです。
「どうぞ。社員の方ですか?」
「いや、この社長の個人的な取引相手、って所かな。君は?」
そういいながら、私の隣に座った長髪の男の方が名刺をくださいました。
―――――
有限会社コドーグ・ラボラトリ
代表取締役
ジェイルスカ・リグラシノ・アリエッティ
―――――
「これは誠に失礼いたしました。私、しがない一社員兼管理局の民間協力者をやっております。コノハ・グラスパートと申します。なにぶん、社会人になって日が浅いため、名刺を持ち合わせていない非礼をお許しください」
――平身低頭覇!!!
取引先のお偉いさんだったらしいです。まず、今までの非礼を詫びねばなりません。
「かしこまらないで欲しい。代表取締役といっても、家族経営の小規模な企業だから」
……それより、少し話をしないかい? 僕は君に少々興味があってね。
「その程度でしたら、いくらでも」
「では、そうさせてもらおうかな……ガジェットをベアハッグで締め潰したというのは本当?」
ベアハッグとは、俗に「鯖折り」と呼ばれる。相手の胴体部分を締め付ける締め技だ。
「良くご存知ですね。ガジェットⅠ型は縦長なので潰しやすいんですよ。盾代わりにもなりますし……」
「そのときに魔力は使った?」
「そんなわけないじゃないですか。AMFが出てるんですよ? 私は生まれつき少し力持ちなので、やってみたら出来ただけです。普段は、殴り壊します」
本当は気力を使ったのですが、アキの助言でこのようにごまかすことになっていました。
「……そうか、実に興味深いな」
そのとき、私には、彼のビン底メガネの奥の瞳がらんらんと輝いているように見えました。
♯←スカリエッティ視点の意
盗み見たワイル隊(仮)の訓練映像のなかで、一際異彩を放つ少女がいた。
人一倍良く動き、人一倍多くのガジェットを屠っていた。
AMFなどどこ吹く風で動き回る彼女が、どういう存在なのかを見極めようと思った。
――なんだこの少女は
生身で金属製ガジェットを潰した?
冗談じゃない。Ⅰ型の装甲は細長く見えるが、きちんと円形に湾曲していて、軽くとも衝撃に強く出来ている。
訓練に使っているガジェットは、私からワイル氏に秘密裏に流している本物だ。
『少し』力が強い程度の小娘に、魔力もなしに壊されるはずがないのだ。
――先ほどまで、普通に話せていたこの少女が、何か得体の知れない未知の生物に見えてしまう。
得体が知れない(・・・・・・・・)?
未知(・・)?
――ハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!
寸でのところで笑いをこらえた私を褒めてやりたいぐらいだ。
私は、科学者(サイエンティスト)だ。しかも狂(マッド)がつくほどの。
科学者とは、未知(・・)なるもの、得体の知れない(・・・・・・・・)ものを研究、解明することに至上の喜びを見出す人種だ。
「さっき渡した名刺を貸してもらっていいかい?」
「いいですけど?」
いぶかしげな表情のまま名刺を出す彼女。
私はそれに自分の連絡先を書き、手渡す。
「ワイル氏に愛想が尽きたら、ウチに来るといい。待っているよ」
私は、君を研究してみたくなったみたいだ。
○
……これが、俗に言う『へっどはんてぃんぐ』ですか、まだ初任給すらもらっていないのにどういうことでしょう?
『それだけ、このはの活躍を見てくれる人がいる。っていうことだよ……多分』
久しぶりにいいことを言うアキでしたが、そろそろ集合時間なので、かかずらっているわけにはいきません。
早いとこ訓練場に行かねば!!
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□
スカリエッティは、自らのアジト、というにはいささか機能的過ぎる本拠に帰還した。
本拠の入り口には、簀巻きにされた人影が三つ転がっていた。
トーレと、クアットロと、ドゥーエ(・・・・)だった。
スカリエッティは、ワイルの言っていた貸しとはドゥーエ返還のことだったのか。と驚き、三人の縄を解きながら、自分が試されていたことに歯噛みする。
――あの時ドゥーエのことを見捨てたら、本当にWWWの変態どものおもちゃにされていたかもしれなかった。
「……んぅ……博士?」
「私は一体……?」
「……次は、殺す」
三人とも意識を取り戻したようだ。
「さぁ、何があったのか聞かせてもらおうじゃないか?」
狂科学者(スカリエッティ)は、喜悦に満ちた笑みをうかべた。
水面下では、WWWと管理局上層部の熾烈な戦いがありそう。
スカリエッティは二重スパイ的なポジ。
最近、ヴィヴィッド読んでて思ったこと
作者:「あれ、ジークちゃんと、このは嬢の戦闘スタイルカブってね?」
じわ:「……おや、誰か来たようだ」
では、じわまでゆっくりとお待ちください。