フィジカルな魔法少女   作:なむさんばがらす

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まどマギの劇場版を見た。
「スカイクラッドの観測者」って歌を思い出した。

私に動画編集技術があれば、MADにしたかもしれないのに(血涙)

そんなことはさておき、じわです。


酒は飲んでも飲まれるな・・・なの

□(三人称視点)

 

「さぁ、何があったのか話してもらおうか?」

 

最初に、口を開いたのはトーレとクアットロだった。

 

 

数日前、トーレとクアットロは任務でミッドチルダにいた。

任務は完遂、ワイル氏にガジェットを引き渡し、料金を受け取った。

 

その頃には、日もとっぷりと暮れて、繁華街としての側面を見せ始めていた。

 

「げへへ、嬢ちゃん。そんな恥ずかしいカッコで……誘ってんのか?」

 

そんなこんなで、彼女達はチンピラに絡まれていた。

 

スカリエッティからは、なるべく静かに行動しろ。と指示が出ていたため、安易に始末することも出来ず、うんざりしたような表情でその場を切り抜けようとした。

 

そこに、一人のバカが現れる。

 

 

 

「…ひとーつ、ひとのよ、いきちをすすり、

 

……ふたーつ、ふらちなあくぎょーざんまい、

 

……みーっつ、みにくいうきよのおにを、たいじてくれよー。わ・た・し!!」

 

ウィー、ヒック。と、勇ましい口上とはうらはらに、現れた妙齢の女はひどく酔っ払っていた。

 

「何だおm…」

 

「るせぇ!!」

 

何だお前、と言い掛けたチンピラを容赦なく殴り飛ばす女。身体強化でも使っているのか、漫画のようにチンピラが吹っ飛び、壁に蜘蛛の巣状のヒビを入れた。

 

「……おじょうさんがたー、もうしんぱいいりませんよ。ふとどきもにょは、ひっく……この、コノハ・グラスパートがせいばいいたしましたー」

 

トーレとクアットロは事態の急展開についていけてなかった。

 

「は、はぁ……」

 

「むぅ……」

 

二人は曖昧に返事をしつつアイコンタクトで会話する。

 

『この酔っ払いに関わってると長くなりますよトーレ姉さん』

 

『だが殺せば騒ぎは大きくなる……クアットロ、先に行っていろ』

 

だから、適当に気絶させることにした。

見る限り、彼女はかなり酔っていて、目からは虹彩が消えてとろんとしており、ろれつは回らず、半ば前後不覚状態だ。

 

背後から首筋に手刀を一発でも当てれば、簡単に落ちる。

 

「……ライド、インパルス」

 

トーレは最善と思われる行動を取った。

 

 

「わたしのうしろに……たつにゃぁーーーっ!!!」

 

このはと名乗った女は、高速で背後に回りこんだトーレに肘鉄砲を食らわせた。

鳩尾にクリーンヒットし、トーレの肺の中の空気を追い出し、一時的な呼吸困難に陥る。

 

だが、最優の戦闘機人は伊達ではない。

首筋めがけていた手刀の軌道を変え、肩口に思い切り振り下ろした。

 

――ゴキン

 

「いた~っ♪」

 

「それは……こっちの……台詞だ……ごほっごほっ!」

 

アルコールが効いているのか、彼女は明らかに肩が外れていても大して痛みを感じていないようだった。

 

「でも、つかまえましたよ♪」

 

『tentacle bind』

 

「……!?」

 

後退しようとしたトーレに触手状のバインドが絡みついた。

 

「おしおきをしないといけませんねぇ……♪」

 

ニヤァという擬音がふさわしい気持ちの悪い笑みを浮かべて――

 

――ズギュウゥゥゥゥウン!!!!!!

 

トーレの唇を奪った。

 

 

ついでとばかりに鼻もつままれる。

一時的な呼吸困難であったところにこの仕打ち、トーレは息ができない。

戦闘機人は、常人よりもはるかに酸欠への耐性があったが、それがトーレをさらに苦しめた。

 

三分後、謎の怪力とバインドに締め付けられろくな抵抗も出来ずに、哀れな三女(トーレ)ようやく意識を失った。

 

「……っていうか。たすけてあげたのになーんでこっちにおそいかかってくるんれすかねぇ……あらてのごーとーかなんかですかねぇ?」

 

彼女は外れていた方の肩をぐるぐると回し、外れたときと同じような気味の悪い音を立てて元に戻した。

 

そして、気絶したトーレを抱えて、逃げたもう一人(クアットロ)を探し始めた。

 

 

「ふへへへ、どこえいこうというのかね? ふろいらいん」

 

クアットロは戦慄した。

現在、自らのIS(インヒューレントスキル)『シルバーカーテン』を全力使用中である。

 

なのに、自分の居場所がばれているようなのだ。

機械すら騙す幻覚がクアットロを隠しているはずなのに、確実にこちらに近づいてきている。

幸い、彼女は酔っているため、クアットロが追いつかれることはなかった。

 

クアットロは息を潜め、逃げ込んだ自然公園の森の中に隠れた。

 

「もっと、ひとごみににげればよかったのに」

 

……一歩

 

「わたしには、あなたがみえています♪」

 

……二歩

 

「でも、わたしの『め』にはみえてはいません♪ 一体全体どういうカラクリでしょう?」

 

……三歩

 

「はいじかんぎれ~ざんねんでした♪」

 

クアットロの意識は、ここで途切れる。

 

 

「よし、おしおきたいむのじかんですね」

 

『タイムの時間って何ですかねぇ……』

 

若干引き気味で酔っ払いの相手をするアキレウス。既にワイルに連絡済であり、酔っ払いこのはがこれ以上騒ぎを起こさないように祈るばかりであった。

 

「……さっきは、二人ともキッス……つまりAでだまらせましたから、こんどは、BかCでなかせてみましょうか?」

 

『…………うん。少し頭冷やそ? そっちに水道あったからさぁ、このままじゃR18になっちゃう』

 

とんでもないことをいい始めたこのはを必死で止めるアキレウス。触手形態になり、このはを実力行使で止めようと立ちはだかり、強引に蛇口のあるほうへ無理矢理誘導し始めた。

 

「………ぅるさい。去ね」

 

何かの切れる音がした。

それが、このはの堪忍袋の緒が切れた音なのか、アキレウスの四肢がばらばらにされた音なのか、窺い知ることは出来なかった。

 

「いちいちいちいちうるさいんですよ。いえではおこごとばっかりだし、しょくしゅのときはきもちわるいうごきかたするし、つまんねーつっこみばっかたれながすしよぉ!!」

 

四肢を切り落とされて無様に這い蹲るだけのアキレウスにそういい捨てた後、ぺっ、と唾を吐きかけた。

 

『オデノココロトカラダハボドボドダァ!!』

 

たまらずアキレウスは体中から身の毛もよだつ色合いの血液と思しき液体と、捨て台詞を垂れ流しながら気絶した。

 

 

 

散々当り散らしたこのはだったが、今度は打って変わってしゅんとしてしまった。地面にへたり込み、地面に『の』の字を書き始める。

 

「……わたしだって、がんばってるんです。

 ……かあさんたちがいなくなってからずっと、ずっと、ずーーっとがんばってきたんです。

 いっつもいのちがけで、いっつもぶっつけほんばんで、いっつも……」

 

――努力は報われなくて。

 

「ひっく、ぐすっ……かあさん……あいたいよぅ……」

 

そういってわんわん泣きだしてしまった。

小さいうちから大人達の汚い社会で生きてきた彼女の心は、いつしか凝り固まり、人前では弱音を吐くどころか、泣く事さえ出来なくさせていた。

 

その悪癖故に、ここには「よくがんばったね」と彼女を慰めてくれる人間も、「甘ったれるな」と叱咤激励してくれる人間も、いなかった。

 

今の彼女は、悲しいほど、一人であった。

 

 

数分後到着したワイルは、泣きはらした顔のまま眠るこのはと、その周りの死屍累々の惨状を見て、後始末の面倒さに涙したというが、今語るべきではない。

 

 

「で、君たち二人は捕まっておめおめと生きて帰って来たってわけだ」

 

「「面目次第もございません」」

 

スカリエッティは、素直に謝罪をするトーレとクアットロを笑って許し、次の任務を言い渡した。

 

「次は、君の話を聞かせてもらおうか。ドゥーエ?」




私たちはいつから、人前で泣けなくなってしまったのでしょうかね?


次回「ワイル脅威のメカニズム」

お楽しみに
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