フィジカルな魔法少女   作:なむさんばがらす

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補足:このは嬢は、ちゃんと学校に行っています(重要)

では、じわを~


空中戦(物理)・・・なの

ワイル隊は、近隣の世界にガジェット出没との報を受け、その世界へ転移後、目的地にトレーラーで向かっていた。

 

「諸君、これからこの隊の初陣だが、臆することはない。訓練どおりに行けば、結果が付いてくる」

 

――お前達は、管理局の勝手な都合で辛酸を嘗めさせられてきた魔導士だ。

 

――その魔導士の技量や、蓄積された経験を、『魔力量』なんていうくだらない色眼鏡で見て見ぬ振りをされ、高魔力保持者どもの踏み台にされてきた。

 

――今、そいつらを見返すときが来た。

 

――圧倒的なまでの戦果と、ガジェットのスクラップを見せ付け、お前たちを見下している連中に思い知らせてやろう。

 

 

ワイルの演説めいた語りに、隊員たちは徐々に引き込まれ、それぞれが抱える不安や死の恐怖が和らいでゆき、戦意がわきあがってくるのを感じた。

いつの間にか目的の地点に到着し、トレーラーの後部が開き始め、鬱蒼としたジャングルが覗く。

 

「諸君、状況を開始しよう。散k……」

 

『大変です!!』

 

トレーラーの後部が開き終わるか否か、と言うときに、トレーラーに備え付けられていた無線機ががなりたてた。

 

「どうした。警備隊!?」

 

『既存のタイプに加え、見たことのないタイプの敵機がいます。敵ガジェットは……』

 

……飛行型ですッ!!!!!!

 

 

先に交戦していた警備隊からの報告で、纏りかけていたワイル隊に動揺が走った。

飛行型の訓練などしていないからだ。

 

だが、訓練どおりに行かないのが実戦である。

 

「……このは、行けるか?」

 

そして、それらに臨機応変に対応するのが――

 

 

「もちのろんですよ」『Stand by ready setup』

 

――エースの仕事である。

 

 

このはは、敵飛行型のいる空域を捉えて言った。

 

「ですが、私が自力であの高度まで行くのは魔力量的にめんどくさい(ロスが多い)ので、パイルバンカーでぶっ飛ばしてもらっていいですか?」

 

「おいおい、本音と建前が逆だぞ。まぁ、出来ないことはないが、トーマス?」

 

『Mode change "Pile and Shield" ver compression』

 

ワイルは、デバイスをパイルバンカーに変え、本来出現するはずの大盾を変化させ杭の先端に取り付けて簡易の足場とした。

 

『マークⅡじゃないのな。いつ完成したんだ?』

 

「昨日だ。シェルカートリッジの運用に耐える構造を作るのには骨が折れたがな……さ、行くぞ。うまく合わせろ」

 

射角は斜め45度、射線上にガジェット飛行型の大群を据えるように、ワイルは杭打ち機を振りかぶり、それに呼応してこのはもモーションを始める。

 

「――超級」

 

荒ぶる鷹のポーズのように両腕を高く掲げ、その矮躯に秘める超常の力を集結させる。

 

「――覇王」

 

そのままワイルの腰のあたりの高さまで跳躍し、それと同時にワイルが構えた、足場付きパイルバンカーに飛び乗る。

 

『Penetrating Stake』

 

「――電、影、だぁぁぁーーーーーん!!!!!!!!」

 

ボッという、シェルカートリッジの炸裂音と共に、一個の光弾となって飛び出した。

 

気力を纏い自身を一つの気力弾として、無数のガジェットがひしめく空域の突撃したこのは。

飛行型ガジェットも、このはを察知し回避行動を取ったが、さながら砲弾のような速度であったため、回避しきれずに半数以上が撃墜された。

 

「ばぁくはつ!!」

 

また運よく回避できたガジェットも、このはの生み出した衝撃波と乱気流に飲まれ体勢を崩し、即座に反撃に移ることはできない。

 

『accel jet increase』

 

このはの周囲にいたガジェットを吹き飛ばしたために、AMFにぽっかりと穴が開き魔法の行使が可能になる。

 

『charging form get set』

 

推進器を吹かし、AMFに引っかかる前に推進器を切り、慣性による飛行に切り替えて未だ体制の崩れている飛行型ガジェットに肉薄した。

 

「どりゃあ!!」

 

『Piercing Stake』

 

瞬時にヴラドを呼び出し、飛行型ガジェットに杭を打ち込む。

二本のパイルバンカーを食らった敵機は、まるで何かの巨大生物に噛み殺されたような大穴を明けて爆散した。

杭を打った反動で飛び上がったこのはは、また別のガジェットに接近した。

今度は杭を叩き込み、爆発する前に他の敵機に向けて思い切り投げつけて誘爆させた。

作用反作用の法則で、投げた方向とは反対方向に進む。

だが、初手で敵陣のど真ん中に飛び込んだ彼女にとって、もはや方向は関係なかった。

 

――接近して、杭で壊す。

 

――弾(カートリッジ)がなくなれば、素手で壊す。

 

ただそれだけの行為を延々と繰り返す彼女の姿は、味方に安心と恐怖を、ディスプレイ越しに見ていた狂科学者に愉悦と探究心を掻き立てさせた。

 

ワイルは制空権が確保された頃を見計らって、本隊の進撃を開始。

新戦術はガジェットに対し絶大な威力を見せ、上層部を唸らせるほどの戦果を挙げたのだった。

 

 

 

稼動を始めたワイル隊は、無事に初出動(ファーストアラート)を成功させ、破竹の勢いで実績を積み重ねていった。

 

……その裏には、ワイルさんの汚くも涙ぐましい努力があったのだが、それはあまり重要ではない。

 

彼の隊は、二年ほどで管理局の低魔力魔導士の対ガジェット基本戦術のようなものを確立し、管理局内で徐々に評価を上げていた。

 

 

そんなある日のこと。

ワイル隊の隊長室には、急な呼び出しに何か怒られるのではないか、とびくびくしているこのはと、どこかの巨大組織のボスのようにあごの前で指を組んで机に前傾姿勢で座るワイルがいた。

 

 

「このは、ちょっとゼスト隊に捜査協力員として半年ほど出向してくれないか?」

 

「……突然どうしたんですか? 私は低魔力ゆえに局員試験を落とされた人間ですよ。それにゼスト隊といえば管理局でもかなり凄腕ぞろいのところじゃないですか」

 

「それがな……」

 

ワイルさん曰く、ゼスト隊はある研究所を摘発した際、被験体と見られる赤ん坊を保護、隊員の一人(既婚者)が経過観察も兼ねて育てていたのだが、忙しさで参ってしまい、今まで溜まりに溜まっていた有給をフル活用して半年ほどのロングバケーションを作ってしまったとのことでした。

 

「そのクイントさん一人で、うちの隊員三人分の魔力量だそうだ」

 

『そんなんチートやチーターやん……』

 

管理局のM(魔法)S(淑女)は化け物ですか。

 

「で、俺はというと、同じく休暇中の夫の方の代わりをしなくちゃならん。だから、このはは隊の中から適当に一人二人見繕って連れて行ってくれ」

 

『ん? じゃあその間独立機動混成部隊はどうすんだ?』

 

アキが久しぶりにまともなことを言いました。

確かに、隊長と副隊長が出向となれば、隊の運営は滞ってしまいます。

……ちなみに独立なんちゃらというのは、ワイル隊の正式名称のことですよ。

 

「希望者だけ元の隊に一時的に戻して、拒否った奴は自主訓練休暇(無給)にするつもりだ。その間のガジェット退治は……そんなもん知るか! って他の隊に丸投げする」

 

『方々から恨みを買いそうだな……』

 

「無茶な命令書を渡してくる地上部隊上層部が悪い。それに、そもそもの話、本局所属の俺が最初に無理矢理人員集めをしたり、局員試験の合格者の所属に口出したりした時点で周りの好感度は最悪だから気にする必要はない」

 

「そんなもんですかねぇ」

 

「そんなもんだ。あんまり細かいこと気にしてると身長伸びないぞ?」

 

……失敬な!! 確かに同年代の中ではちびですが……まだ成長期ですよ!!

 

と、怒ってやろうと思いましたが、私は大人なのでぐっとこらえることにしました。

 

用件は終わったので失礼します。といって退室しようとすると、ワイルさんがもののついでとばかりに言いました。

 

「身長で思い出したんだが、修行は順調か? なんでも、新しい魔法を開発してるとかなんとか」

 

さすがはワイルさん、耳が早いですね。

 

「八割がた完成していますが、残りの二割の調整が難航していますね」

 

失敗すると最悪の場合体中から血が噴出すので、うかつに試すことも出来ないのです。

ワイルさんにそういうと、彼は青ざめたような顔をしました。

 

「それは物騒な……どんな魔法なんだ?」

 

ぶっちゃけると、師匠の『明鏡止水(ハイパーモード)』とかいうパワーアップ状態を1グレード下げて『怒髪衝天(スーパーモード)』という感じで気力と魔力を総動員して再現、さらにもう一人の師匠の強化形態も取り入れた魔法もあわせて製作中です。(七実さんが言うには、『がるばーにでんりゅうをもちいたせいたいさいぼうかっせいじゅつしき』なんだとか。難しいことはわかりません!!)

 

「つまり、バフ系でいいのか?」

 

「そんな感じです。完成したら披露しますから楽しみにしていてくださいね」

 

「ああ、待ってる」

 

そして私は、今度こそ隊長室を去り、出向の道連れを探しに隊舎の中をうろつき始めました。

 

「ふっふっふ」

 

……もうメンバーは決まっているのですよ。

 

 

まっすぐ職員食堂に向かったこのはの目の前には、何故呼び出されたのかわからずきょとんとしている女性と、その理由に心当たりがあるらしく渋面を作っている男性がいた。

 

「嫌だ」

 

「そんなぁ!? まだ何も言っていないじゃありませんかエリックさん!!」

 

「??? 話が見えないんだけど?」

 

女性、リッカが疑問を口にする。彼女だけが事態を理解していない。

 

「要するに、貧乏くじだ」

 

「なんて人聞きの悪い!! ただ、休みの間も一緒に仕事しましょう。っていうだけじゃないですか」

 

エリックがぶっちゃけ、図星なだけに若干声が震えてごまかすこのは。どちらが正しいかは明らかだった。

その後、リッカはこのはに詳しく説明を受け、ゼスト隊への出向の話を聞いた。

 

「私は構わないけど……エリックは?」

 

「この機会を利用して、有給を申請中だ」

 

自主訓練休暇と有給休暇、これらを合わせることで絶対的な休暇を得ることが出来る。

有給休暇のみだと、管理局員は有事の際には休暇返上で出動しなければならず、旅行などの行き先も、比較的ミッドに近い位置に限定されてしまい、一方自主訓練休暇のみでは、『訓練』と称して出動命令義務の及ばない遠方の世界に行くことができるが、あくまで訓練であるので、厳しい報告義務が課せられる。

 

何故休暇にこだわるのかこのはが尋ねると、エリックは家族のためだと言う。

 

現在、彼の家族は妹のエリナ一人であり、まだ甘えたい盛りなのだが、甘える両親も居ず、かといって親代わりのエリックは仕事でなかなか構ってやれない。

そこで、渡りに船、とばかりに今回休暇をとることにしたのだった。

 

「ずびっ……妹の……ためなら……仕方ないですね」

 

「えっ。今ので泣くのこのはちゃん?」

 

このはも女手一つで弟の面倒を見ているため、最近その弟を構ってあげていないことを思い出し、目頭が熱くなった。

 

そして、彼女はエリックを連れて行くことを諦め、二人でゼスト隊に向かうこととなった。

 

「でもさ、なんで私たちに声かけたの?」

 

「なんだかんだでフルネームを覚えられたのがあなた方だけだったんです」

 

…………前途多難だな。

とリッカは思った。




悲しいほど原作メンバーが登場しない……じわこそは!!

次回:ゼスト隊、壊滅

では、じわまでゆっくりとお待ちください。
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