五等分の花嫁 JUVENILE REMIX 作:people-with-名無し
1. 日本の地名。
2. 日本の企業名。
3. 日本人の姓の一つ。
4. 「伊坂幸太郎」先生の小説「魔王」の主人公。転じて、「大須賀めぐみ」先生の漫画「魔王 JUVENILE REMIX」の主人公。
5. この二次小説の主人公である語り手。
変な夢を見た。よく見る夢の一つは、就職した俺が政治家と対決しようとしていた夢。もう一つは、高校生、つまり今の俺が殺し屋に襲われたり自警団のリーダーと対決したりする夢。今回は、それらをツギハギにした夢だった。
「いくら夢だからって、混ぜる事ないよな」
欠伸の代わりに文句を言いつつ、布団から這い出る。豆苗が伸びてるから、それと豆腐で味噌汁を作って、玉子焼きでも作ろうか……おっと、ハムの消費期限が近いからハムエッグにしよう。冷蔵庫の中身を確かめながら、朝食のメニューを組み立てる。
「それにしても、なんで保存食なのに賞味期限じゃないんだろう?」
賞味期限と消費期限の違いは、味の保証と健康の保証である。ハムは保存食だから、前者を切り捨ててでも長期保存を可能にしている筈なんだけど、いくら値引きされたのを買ってきたにしても期間が短い気がする。それとも、昔のハムとは全く異なる、味を追求した物なのだろうか。現代の消費社会において、保存が利く事のメリットは小さくなっているという事なのだろうか。
「おっと、考え過ぎたな」
潤也にも「兄貴は考え過ぎなんだよ」とよく言われる。彼が新聞配達のバイトから帰ってくる前に、料理を終わらせないと。あ、ついでに梅干しも出そうか、いや、授業中に早弁するだろうから、お握りにして持たせよう。海苔と米はあるし、後は具だな。鮭でもあれば良かったんだけど、ないから醤油と鰹節で「おかか」っぽいのにしよう。それだけ渡して、昼は買うように言えば良いか。
「ただいまー!」
「お帰り、潤也」
考えながら作業しているうちに、朝食の用意は終わっていた。手を洗ってくる間に、お握りを作ってしまおう。
そのお握りは、遅刻寸前だった島に食べられた。まあ、朝食をとる時間もなかったみたいだから、仕方がない。
「昼ご飯どうする? 学食行くなら席取るよ」
慎一が鞄から弁当箱を取り出しながら問いかける。学食か……体育で汗をかいた後だから冷たい麺が食べたいな。
「笊蕎麦の大盛りって、今週もやってましたっけ?」
アンダーソン、日本に帰化したアメリカ人の息子が首を傾げる。彼も同じ気分のようだ。
「今度の金曜までだったぜ。そうだ、朝飯の礼に天麩羅1つ奢ってやるよ」
島が俺に言う。その義理堅さを女子にも向ければ、少しはモテるんじゃないか?
「別にいい。その代わり、俺の分も注文しといて」
列に並ぶのは億劫だし、彼に押し付けてしまおう。
「なんか用事ですか?」
「ジャージの膝が破れたから、職員室で当て布貰ってくる」
「じゃあ僕のもお願い。お母さんが貰ってこいって」
「ああ」
慎一のジャージは……そんな大きな穴は開いてなかったし、1枚で十分だろう。色を見る為に、ジャージの入った袋を持って教室から出た。
昔の歌を口ずさみながら廊下を歩く。そういえば、このパンクを知ったのは担任のお蔭だったな。数学教師なのに体育を担当してそうな彼が、両親の馴れ初めの話をした時に出てきたんだった。そもそも、なんで馴れ初めの話になったのかといえば、国語の授業の後に黒板を消し忘れて、古い小説の文章が書きっ放しになっていたからだったな。
「 」
口を閉じる。この曲、何故か途中で途切れるんだよな。無音なのは意図的な物だってレコードには書いてあるらしいが、本当なのか? 徐々にフェードアウトしてから無音になり、自然にフェードインしているって事は、その間も演奏している筈なんだけどな。間奏のギターのカッティングも上手だし、聞かせないのは勿体ないと思うんだ。
「助けて」
渡り廊下の方から声が聞こえた。無音の場所じゃなかったら、周囲の喧騒で消えていただろう声だ。でも、近くの人は気が付くだろうし、俺が行く必要はないよな……
「……ああもう!」
関わる必要はない、余計な事に首を突っ込むな、職員室はそっちじゃない、兄貴は考え過ぎなんだよ。止めようとする文句が幾つも頭に浮かぶけど、俺はいつの間にか走っていた。
「渋滞なんて滅びちまえ!」
動こうとしない群衆をかき分けながら、渡り廊下へと向かった。
渡り廊下の真ん中で、見慣れない制服の少女が絡まれていた。相手は3人で、制服を着崩している。どう見ても友好的な雰囲気じゃないし、一人は有名な不良だ。でも、3人までなら、どうにかできる。
{右側に気をつけろ!}
ボスに叫ばせる。俺が持つ超能力、腹話術だ。大股で30歩くらいの距離にいる相手に、俺が思った事を言わせる、ちっぽけな力だ。
「それで十分!」
ジャージの入った袋を、取り巻きの一人に投げる。同時に、もう一人の取り巻きに飛び蹴りを食らわせる。突然叫んだボスを見ていた連中は、俺の不意打ちで態勢を崩す。
「逃げるぞ!」
(主観的には)取り巻きが突然倒れた事に動揺するボスの股間に膝蹴りを叩きこむ。それから、右手で袋を、左手で少女の手を掴んで走り出した。
「待てやゴラァ!」
ボスの怒号に弾かれて、取り巻き達が追いかけてきた。その所為で群衆が道を開けてくれたけど、この子の服装じゃ人込みに紛れるのは無理か。
「はぁ……なんで……助けて……くれたの?」
彼女は早くも息を切らしていた。このままだと、職員室に着く前に追いつかれる、どうすれば良い?
「考えろ」
まず、目立つのは制服だ。あと、髪の毛も目立つだろう。染めている連中も、金髪や茶髪、偶に脱色している程度で、赤毛は珍しい。
「考えろ」
首にかけているヘッドホンも特徴的だが、それはリュックにしまえば隠せる。やはり、服と髪が目印になるだろう。
「考えろ」
それらを隠すには、一瞬だけでも姿をくらます必要がある。腹話術を使えば一人の動きは止まるが、もう一人が追ってくる。
「考えろ」
それに、腹話術は相手を見ないと使えない。つまり、一人の動きを止めている間、後ろ歩きを強いられる事になる。後ろ?
「考えろ」
後ろを確認するなら、鏡を使えばいい。でも、少女は化粧をしていないから、鏡も持ち歩いていないだろう。他に、後ろを目視できる物はあるか?
「考えろ」
腹話術は、映像越しでは発動しない。だから、スマホのカメラで後ろを見ても意味はない。
「マクガイバー」
だが、電源の入っていないスマホは、それその物が鏡になる!
「スマホ出して!」
「え、あ、うん!」
少女が鞄からスマホを取り出す。画面がこちらを向いた瞬間、追いかけてきた取り巻きの一人を確認する。
{これで!}
そして、叫ばせた。腹話術にかかった相手は、その瞬間だけ意識を失って動きが止まるから、走っている最中なら盛大に転ぶ。
「おい、大じょ」
「決まりだ!」
もう一人が相方を見た瞬間に、俺を振り返って袋を投げた。それは後頭部に直撃し、彼を転ばせる。紐を掴んで袋を引き戻し、近くの教室の扉を蹴破って入る。
「兄貴!?」
「お兄さん、って彼女いたの!?」
潤也と、その彼女の詩織ちゃんが目を丸くした。いや、驚いている場所は違うけど。とはいえ、この二人の教室なのは助かった。
「これ羽織って! 潤也、髪染め寄越せ! 詩織ちゃん、メイク道具貸して!」
「んなモン持ってきてねーよ!」
「蜜代っち、持ってない?」
仕方ない、ジャージの上着だけ羽織ってもらおう。
「顔隠すなら、三角巾で良くない? ほら、調理実習の」
後輩の一人が呟いた。
「潤也?」
エプロンも三角巾も洗った覚えがないぞ?
「お母さんが潤也くんの分も持たせてくれましたよー」
持つべきは家族ぐるみの付き合いをしている彼女だな。ジャージに三角巾というのは不自然な姿だが、変人としか認識されないだろう。そして、この学校には変人が多い。
「詩織ちゃん、三角巾借りてくよ」
「どうぞー」
「いや、俺のなんだけど」
「借りただけだろ。あ、ドア直しといて」
「扱いが雑! ってか直るのかコレ?」
「引き戸だから、レールから外れただけじゃないの?」
後輩たちが集まっていない、無事な方の扉を開く。
「とりあえず、職員室に」
案内しようとしたら、誰かのお腹が鳴った。奇妙な恰好をした少女が顔を赤らめる。
「その前に食堂かな。案内するよ」
そういえば、俺の分の蕎麦は残っているだろうか。勝手に食べてそうなんだよな。手を引きながら、余計な出費に頭を痛める。風太郎が頼んでる「焼肉定食焼肉抜き」でも食べるか、腹の足しにだけはなるから。
原作キャラ、1名(名前は登場していない)
名前が出たキャラ、1名。
これを「五等分の花嫁」の二次創作と言い張る勇気!
二乃が上杉風太郎に薬を持った時、安藤は止めますか?
-
風太郎への教訓として「止めない」
-
風太郎の友達として「止める」