五等分の花嫁 JUVENILE REMIX   作:people-with-名無し

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恋バナ その3(完)

 図書館では、風太郎と四葉さんが勉強していた。

「そっちも大変だったんだな」

俺が彼の隣に腰掛けて説明した後の第一声がこれだった。この男が友人を労わったのも驚きだが……

「て事は、四葉さんも?」

話の内容の方が驚きだ。

「ああ、バスケ部に勧誘されてな」

「断ったの? 四葉さんが?」

「……まあ、そうなるよな」

彼も驚いていたようだ。四葉さんは既に様々な部活で助っ人をしており、他にもあちこちで人助けをしているらしい。そんな善意と利他主義で構成されているような彼女が自分の勉強を優先するというのは、少し意外だな。

「いいなぁ……私も告白されたい」

「面倒なだけ」

「えぇ~、好きな相手からだったら嬉しいでしょ? そりゃ、今回は一花の代わりだったから興味ない人だったけど」

「四葉、好きな人いるの?」

「え、あ、そ、そうだ! 上杉さんとか!」

「……like? それともlove?」

姉妹は恋バナしていた。勉強しろよ。

「いや、三玖が英語をやるようになったのは進歩だ。それに、四葉の勉強時間も増えたからな。コイツらが成長して教師になる日は、意外と近いかもしれねえぞ」

「そういえば、授業態度も前より真面目になってたな」

なら、少しだけ甘やかしても良いだろう。というか、休憩という名目で恋バナを終わらせて、その後に勉強を再開させる方が効率が良いだろう。

「そんなわけで、ちょっと取材に協力してくれない?」

 

 質問シートを風太郎に渡し、彼には四葉さんのインタビューを行ってもらう。

「さて、それじゃ三玖さん、よろしくお願いします」

「よろしく」

無表情な少女に、最初の質問を投げる。

「まずは、好きな動物はなんですか?」

「ハリネズミ」

「ありがとう。次は」

「待って」

インタビューが止められる。

「私ばっかり答えるのは平等じゃない。アンドーも教えて」

まあ、言って減る物でもないか。

「クワガタ、ドラゴン、龍、鮫、ヘラクレスオオカブト、牛、カブト虫、犬猿雉、蝙蝠」

「……どれが本当なの?」

「じゃあ、クワガタで」

好きなのは4号であって、現実の昆虫はそれなりだが、まあ嫌いではないし良いだろう。

「さて、次は……好きな食べ物か」

カンペを見て問いかけると、嬉しい答えが返ってきた。

「抹茶。この前の抹茶塩は家にも置く事にした」

「それは良かった。で、三玖さんからの質問は?」

「好きな食べ物は何?」

「まあ、そうなるよな……正直な話、誰かの手料理なら何でも好きだよ」

そう答えると、三玖さんは露骨に不満そうな表情をした。膨らんで頬から溜息と文句を吐き出してくる。

「さっきから、誤魔化そうとしてない?」

「どうにも欲が薄くてね。好きな物を答えるのは苦手なんだ」

「そう……次は?」

「よく見るテレビは何?」

「ドキュメンタリー」

「オフレコだけど、歴史系? 何とかの合戦を再現、みたいな」

「うん」

言い当てると上機嫌に戻ってくれた。

「じゃ、次は」

「待って」

誤魔化せなかった。

「強いて言うならクイズ番組かな。潤也、弟がよく見てるんだ」

どちらかというと、あいつはクイズに答える俺や詩織ちゃんを見ているような気がするが。

「仮面ライダーじゃないの?」

「週に一度しか見てないよ?」

しかも30分だけだ。クイズ番組の頻度、長さには及ばない。

「さて、次だ。嫌いな食べ物は?」

「チョコレート……昔、鼻血出しちゃって」

「じゃあ、ソースとかでかかってる分には平気?」

「うん、大量じゃなければ」

小さい頃のトラウマは残り続けるからな、特に流血沙汰なら尚更だろう。

「俺は……饅頭と熱いお茶が嫌いかな」

「それ、怖い物」

饅頭怖い、要するに落語だ。

「強いていうなら、イナゴの佃煮が苦手かな。というか、特撮好きとしては認めたくないんだけど、バッタが苦手なんだ」

別に田園地帯が実家という訳でもないのだが、何故か苦手なのだ……モチーフにしたヒーローや怪人は平気だが。

「それで、三玖さんは苦手な物とかある?」

「勉強と運動。あと……料理」

「克服する努力はできそうな物ばっかりだね。羨ましいよ」

「バッタと触れ合える場所とかないの?」

「誰得だよ。さて、趣味を教えてください、だってさ」

クラスメイトから集めた質問を投げかける。こっちは俺が答える必要のない物が多く、楽ができそうだ。

「ゲーム。あと…………戦国武将」

「言って良いの?」

「……うん」

「そっか。ライン交換しよ、って大西さんから来てるよ」

「明日、ワカバに会ったら交換する」

「バスケに興味ない?」

「ない。アンドーは?」

「放課後は忙しいんだ。バイトとか買い物とか」

「そうなの?」

「まあ、そういう事になってる。で、島から、付き合ってください! だってさ」

「……告白の段取りは友達<ヒト>任せ。そんな男に、誰が惚れる?」

「だよな。で、次は……」

面倒なのが来た。

「安藤とはどういう関係なの!? っていう質問だけど、友達で良いよね?」

「うん」

あっさり終わった。嬉しいような、悲しいような、複雑だ。

「じゃ、次。クレジットカードの暗証番号は?」

「1549」

「キリスト教か。嘘だよね」

「うん。アンドーは?」

「453145。それか10」

「それか、って何? 両方とも嘘でしょ」

「まあね。で、最後。また島からで、黒薔薇の子、誰でもいいから紹介してくれ!」

「……告白したのに?」

「告白したのに。しかも、断られる前に書いたんだよな」

振られる前提だったのだろうか?


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