五等分の花嫁 JUVENILE REMIX   作:people-with-名無し

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五等分の花嫁 JUVENILE REMIX その3

 中野さんが着席すると同時に、クラスメイトが群がってきた。

「趣味は?」

「ライン交換しよ!」

「バスケに興味ない?」

「付き合ってください!」

「安藤とはどういう関係なの!?」

「クレジットカードの暗証番号は?」

「黒薔薇の子、誰でもいいから紹介してくれ!」

聖徳太子でもないと聞き取れない質問攻めに陥った中野さんは

「助けて」

俺を盾にした。何というか、その、柔らかい物が二つ程当たっているのだが。

「安藤、ちょっと中野さん借りるわよ」

「どうぞ?」

俺のじゃないし。大西さんに引き渡せば、他のクラスメイトは大人しくなるだろう。それに、メールもきたし。

「お手柔らかにね」

釘を刺してから屋上に向かう。友人の少ない男から呼び出されたのだ。

 

 上杉風太郎とは、高校に入って以来の付き合いだ。お互い貧乏学生という事もあって意気投合したが、クラスが同じだったりバイト先が重なったり弟妹がいたりしなければ、あの偏屈な男と友好的な関係を築くのは不可能だろう。ギャルゲーだったら、大半のプレイヤーが攻略を諦めるレベルの難易度に違いない。

「お待たせ」

「遅いぞ。自習だったんだからすぐに来いよ」

コイツのクラスの担任は英語教師だったな。なら、俺が自習なのも分かるか。もしかすると、こっちの事情も省みずに連絡したのかと思った。

「お前にそんなデリカシーがあったのか。それで、要件は?」

すぐに屋上に来てくれ、と書いてあったが何があったのだろうか。風太郎の顔色が悪い事から、碌な事ではないのだろう。

「ああ……その、なんだ、家庭教師をする事になった」

「そうなんだ。高校受験?」

この高校を志望しているなら、現役生徒の中で最も頭の良い彼を招くのは良い判断だ。但し、その性格が偏屈でなければ、という条件は付くが。

「それがな、高校生なんだ。しかも、転校生だ」

「中野さん?」

「知ってるのか!?」

「まあね」

そうなると、成績不振で転校してきたのだろう。だから、同級生に勉強のサポートをしてもらおうと考えたのかもしれない。それに、中野さんは社交的な性格ではなさそうだし、確実に味方となる人物を用意しておこう、という思惑もありえる。あるいは、信頼できる人物を男除けに使う腹積もりか。名案ではあるんだよな、アドレス帳に父親と妹しか入っていないこの男でなければ。というか、バイト先との連絡はどうしているんだ? ラインも使えないしホームページも見れないのでは、働く上でも不便だろうに。

「おーい、安藤?」

また考察魔になっていたようだ。

「ああ、じゃあ中野さんとの仲を取り持てばいいの?」

「頼む」

「分かった。じゃあ、放課後にメールするよ」

とりあえず、紹介だけはしてみよう。少なくとも、二人きりで会うよりは良い結果になる筈だ。というか、風太郎が女子と二人きりになったら、まず喧嘩になるだろうし。

 

 教室に戻ると、島の飛び蹴りが飛んできた。

「この裏切り者ぉっ!」

「いきなりなんだよ」

扉を閉めて防ぐ。再び開けて、足を抱えて蹲る彼をまたいで席に戻る。

「大丈夫、まだ足は残ってる!」

「安心しろ、致命傷だ!」

男子が島を焚きつけている。いや、からかっているだけか。あれで立ち上がる奴なんて

「なんでお前ばっかりモテるんだよ!」

いた。

「何の話だ」

とはいえ、ただの回し蹴りなら受け止められる。足首を掴んで問いかけてみたが……

「報われない人選手権を出禁になった話だよ」

「安藤さんに春が来た、という話ですよ」

慎一とアンダーソンが妙な事を口走るだけだった。とりあえず、暴れる島を取り押さえてくれ。

「ほら三玖、行ってきなさい!」

大西さんが中野さんの背中を叩く。

「……うん。ねえ、アンドー」

「ん、何?」

「なんで、助けてくれたの?」

真面目な雰囲気を察したのか、島の動きが止まる。足首から手を離し、真面目に考える。直接的な理由は、チンピラに絡まれていたからだ。じゃあ、駆けつけた理由は? 声が聞こえたからだが、それは駆けつける事を決めた理由にはならない。そもそも、見て見ぬふりをする選択だってできたのに、なんで戦ったのだろう。仲裁に入っても無駄だったからだ。とはいえ、そんな連中を相手に戦うリスクを取ったのは何故だ? 危険なのに、周りには見て見ぬふりをした群衆が大勢いたのに、俺がその中に入らなかった理由は……

「死んでるように生きたくない、からかな」

ジャック・クリスピンの曲の一節が答えだろう。

「死んでるように、生きたくない。そっか、そうなんだ」

何かに納得したように、中野さんは何度も頷いた。

「そうだ、中野さん。家庭教師の先生が君に会いたいって言ってたんだけど、放課後に呼んでも良い?」

何かを誤魔化すように、俺は話題を振る。

「……今日はダメ。えっと、手続きとか、あるから」

「じゃあ、明日の放課後なら大丈夫?」

「うん。また明日」

その言葉に喜んだのは気のせいだ。だって、俺には、誰かを好きになる資格なんてないのだから。

二乃が上杉風太郎に薬を持った時、安藤は止めますか?

  • 風太郎への教訓として「止めない」
  • 風太郎の友達として「止める」
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