五等分の花嫁 JUVENILE REMIX 作:people-with-名無し
あの後、気まずいまま放課後になってしまった。風太郎に紹介する手筈なのだが、何処となく近寄りがたい。
「別のクラスにも友達がいたのか」
「帰り道なら一人になると思ったんだが……」
中野さんは、蝶を模したリボンを付けた子と、星の髪飾りを付けた子と3人で帰っていた。
(中野は、蝶を模したリボンを付けた女と、ヘッドホンを付けた女と3人で帰っていた)
「おい安藤、さっさと声かけてこいよ」
「あの中に割って入るのはちょっとね」
万が一にも、女の子の前で今朝の事が話題になるのはマズい!
(さては、こいつも中野と喧嘩したのか?)
「わ、私だって昨日、だ、男子生徒とランチしたんですからね!」
向こうで動きがあったようだ。そう、俺たちは今、中野さん達を尾行しているのだ。
「昨日、男子生徒……」
星の子の言葉で、中野さんが俯いた。
(中野の言葉で、ヘッドホン女が俯いた)
「どうしたのよ三玖。昨日は友達ができた、って喜んでたのに」
「その方と、何かあったんですか? 顔が赤いですよ?」
「……な、何でもないよ」
「「何でもあるわよ/あります!」」
今朝の事か。
(何の事だ?)
「えっと、その、あ、アンドーに……ひ、膝枕したの」
ガタン!
(ゴミ箱の陰に隠れていた安藤が転んだ。マズい! 俺まで見つかる前に隠れねえと!)
風太郎は顔出しパネルの影に隠れた。まあ、ここで見つかれば家庭教師どころじゃなくなるから仕方ない。
「なに、君。ストーカー?」
蝶の子に見つかった。
「いや、クラスメイトというか、友達というか」
「この方、何処かで見たような……」
(中野が首を傾げている。安藤と面識があるんじゃなかったのか?)
「ん、ちょっと待って。五月、こいつの顔押さえてて」
「こんな感じですね。二乃、どうですか?」
星の子、五月さんが俺の顔に鞄を押し付けてきた。
「やっぱり! 君、三玖の彼氏でしょ!」
蝶の子、二乃さんのスマホには、その瞬間の画像があった。
「グループラインに上がってきたのよ! この男が三玖の彼氏だって!」
「いや、まだ彼氏じゃないよ」
「ほうほう。まだ、なのね? つまり将来的に」
「それは……その……」
「ふ、不純です! せめてちゃんと告白しなさい!」
それができれば苦労しない。少なくとも、俺がまともになって、気持ちに整理がつくまでは……
「はっ! そういえば、今日は家庭教師の方が来るんでした!」
「このままサボりましょうよ。三玖の事も聞きたいし!」
「初回から休むのは相手に失礼です! 行きますよ!」
ありがとう五月さん。おかげで質問攻めの危機は去った。とはいえ、中野さんに風太郎を紹介するという役目は終わっていない。
「大丈夫か、安藤」
風太郎が声をかけてきた。
「まあ、どうにかね。ところで、中野さん達を追わなくて良いの?」
時間がないらしく、彼女たちは走っている。そして、風太郎の体力では追いつけない。
「そうだ、とりあえず追うぞ! 中野から他の二人を引き剥がしてくれ!」
「無茶言うな! さっきのでカラータイマー点滅してんだよ!」
風太郎を引っ張りながら追いかける。こいつ、中野さんと同じくらい遅い! あんだけバイトしてるのになんで体力ないんだよ!
「マズい! ビルの中に入るぞ!」
「風太郎。悪魔と相乗りする勇気、あるかな?」
「はぁっ!? 悪魔でも何でもいいから、どうにかしてくれ!」
「分かった。顔だけは守れよ!」
それだけ言って、彼のベルトを掴む。そして、中野さん達の近くに立っている木に向かって、風太郎を投げた。
(そういえば、マンホールでフリスビーをした事がある、とか安藤の弟が言っていた。マンホールの蓋は60kg以上あるから、人間一人を投げ飛ばす事もできるのか)
「げふっ!?」
(あいつの指示に従い、顔だけは守ったが、木から落ちた所為で背中が痛い)
「なに、君。ストーカー?」
「げっ……」
(蝶の女に見つかった。あれだけ音を出せば当然か!)
身軽になった体で風太郎を追いかけつつ、彼らの会話に聞き耳を立てる。
「お前……」
おお、風太郎が中野さんに声をかけた。なんだろう、クララが立ったような感動を感じる。
「五月には言ってない」
警戒心を剥き出しにしている。チンピラに絡まれていた時は無関心だった辺り、五月さんの事がとても大切なのだろう。それにしても、まさか五月さんとも喧嘩したのか? 風太郎ならありえる、というか彼と喧嘩にならない人の方が少ないだろう。
「五月は帰ったわよ。用があるならアタシらが聞くけど」
二乃さんが看板に足を乗せて風太郎を牽制する。どうでもいいが、あの体勢だと横からスカートの中身が見えるのでは?
「お前たちじゃ話にならない。どいてくれ」
あの勉強バカ! 五月さんと喧嘩したから謝りたい、と素直に言えば終わりだろ! ああもう、30歩圏内に入ったら腹話術をかけてしまおうか!?
「しつこい。君モテないっしょ。早く帰れよ」
フルボッコだドン、なんて幻聴が聞こえる程の罵倒である。だが、上杉風太郎は動じない。
「帰るも何も、ここ僕の家ですけど?」
コミュニケーション能力が低い分、会話によるダメージも少ないのだ。というか、しれっと嘘を吐いたな。
「え!? マジ? ごめん……」
二乃さん、なんで騙されてるの?
「全く、失礼な人たちだ」
初対面の女子に嘘を吐く奴よりは失礼じゃないと思う。
「焼肉定食焼肉抜き……お金ないの?」
中野さんが首を傾げる。そういえば、中野さんは今日も食堂に行ってたのか。
「あ! やっぱアンタここの住人じゃないでしょ! 警備員さーん!」
ヤバい! 今の風太郎は不法侵入だから、警備員が来たら捕まる! というか、今追いかけている二乃さんに捕まる! 足が遅いにも限度があるだろ!
{五月!}
とりあえず、二乃さんに腹話術をかけて時間を稼ぐ。同時に、五月さんを呼んで彼女をこちらに注目させる。
「アンドー?」
「ごめん中野さん! また後で!」
そういえば、家庭教師との面通しをさせていなかった。というか風太郎、生徒に挨拶くらいしろよ!
中野さんと二乃さんを追い抜いてマンションの中に入ると、エレベーターのドアが閉まる所だった。
「開けて!」
咄嗟に腹話術をかけるが、ドアの隙間から見えた人影では条件を満たせなかったようだ。そして「開く」を押すも間に合わなかったのか、無常にも扉が閉まる。
「「走るぞ!」」
二人で同時に叫び、階段を駆け上がる。
「やっぱこうなるか!」
風太郎の手を取り、無理やり進む。風太郎は明日、相当な筋肉痛で苦しむだろう。だが、背に腹は代えられない。
「何階だ!?」
「30、一番上だ!」
「流石に、俺も、キツイか!」
30階まで、人間を引っ張りながら、エレベーターと同じくらいの速度で進むのか! でも、間に合わなかったら、家に入ったら、間違いなく居留守を使われるだろう。
「なら、進むしか、ないじゃないか!」
とはいえ、風太郎の足はそろそろ限界だ。
「ちょっと無茶するぞ!」
手すりから身を乗り出し、彼を上に放り投げる。
「手すりを掴め!」
「無茶言うな!」
そう言いながらも、無事に二つ上の階に届いたようだ。これで大幅な時短になったし、後は走れば間に合うだろう。
「一応、仲裁に行くか」
足に鞭打って走り出す。きっと、明日は筋肉痛だ。
30階の表示を確認し、エレベーターホールへ飛び出す。
「風太郎! 中野さん達に謝れたか!?」
彼の前には、五月さんが座り込んでいる。またデリカシーのない事を言って泣かせたのか?
「は……? なんでここにこいつらがいるんだ?」
動揺する風太郎の視線の先には、中野さん達がいた。
「なんでって……住んでるからに決まってるじゃないですか」
五月さんが立ち上がり、呆れたように言う。待て、確か中野……三玖さんは四葉という妹がいるといっていた。一緒に帰っていたのは二乃と五月で、ここにいる少女は全員が赤毛に青い目だ。つまり、五人姉妹なのだろう。いや、身長が同じだから……
「五つ子の姉妹です」
という事になるよな。そうなると、風太郎が謝りたい中野さんは、三玖さんではなく五月さんだったのか。
1話あたりの分割数、腹話術で用いる括弧などはかなり試験的な物です。
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二乃が上杉風太郎に薬を持った時、安藤は止めますか?
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風太郎への教訓として「止めない」
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風太郎の友達として「止める」