マザーズ・フロントライン   作:ペニーボイス

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アンケの結果、とりあえずダーリャママにしました。
皆さんありがとうございました。


3話 衝突

 

 

 

 暗い部屋には裸電球が一つ灯っているだけで、その他に光源は何もありはしなかった。

 部屋の中心で自らの身を焦がしながらも周囲を照らし続ける裸電球の献身にも関わらず、室内はお世辞にも明るいとは言えない。

 部屋に充満している副流煙、灰色のコンクリート剥き出しの壁、そして汚れに塗れたテーブルと4つの椅子。

 そして…恐らくロシア人が歌っていると思わしき、低音の響くラップが安っぽいスピーカーから流れていた。

 シンプルな部屋の中は、たったそれだけの要因だけでこの部屋の空気をも、どんよりとした闇の中に捕らえていたのである。

 

 

 裸電球の真下にはテーブルがあった。

 テーブルの上には、飲みかけのウォッカや吸いかけのタバコ、汚れた灰皿、使い込まれたトランプ、しわくちゃのルーブル紙幣が置かれていた。

 4つの席は既に人形達で埋まっている。

 人形達は、今はそう言った品々には目もくれずに、4人の中の1人に目を向けていた。

 その1人は、右手に7連発の回転式拳銃を持ち、自らのこめかみに銃口を押し当てている。

 

 

「て、帝政時代の老兵の幸運…思い知るが良い!」

 

「どうでもいいわ、そんなこと。」

 

「同志。やるかやらないか、よ?」

 

「怖くなんかないですよ〜」

 

「み、皆、冷たいのぉ…では、わしも腹を括るとするかの…クゥッ!」

 

 ガチンッ!!

 

「ふぅ〜↑危なかったのぉ〜。さて、次は誰じゃ?」

 

「チィッ!クソ婆がムダに生き残りやがって!…ソイツを寄越せ、同志。次は私の番よ。」

 

 

 

 

 

「ねえ、ダーリャママ?」

 

「………」

 

「言ったよね、『第1小隊はファシストより断然明るくて健康的でマトモなメンツが揃ってるから安心して』って。」

 

「………」

 

「ねえ、聞いてる?おーい?もしもーし?ダーリャママぁー?」

 

「………」

 

 

 ダーリャママ(DP28)は片眉をひそめたまま微動だにしなかったが、やがて唐突に両手をパンパンと2度叩く。

 まるで、ボリショイ劇場のコーチがレッスンを打ち切らんとしているように見えなくもない。

 ダーリャママが何故そんな事をしたのかというと、恐らくなにかの合図だったのだろう。

 手が2度叩かられた瞬間、今まで不健全なロシアンルーレットに興じていた4人の人形達は、我に帰ったように立ち上がった。

 そしてそのまま目にも止まらぬ速さで動き出す。

 まず、中央のテーブルが片付けられ、裸電球に可愛らしいカバーが取り付けられ、ゆるふわっとした壁紙が貼られ、女の子らしい化粧台や冷蔵庫その他家具がどこからともなく運び込まれた。

 そしてその作業がひと段落すると、今度は4人揃って…花束やピロシキやアコーディオンを手にして…私の前に整列する。

 

 

 

「おお!おぬしが新しく着任した指揮官かの?わしはM1895じゃ!こんな年寄りでよければよろしく頼むぞ!」

 

「同志、ハラショー!私はモシンナガン!楽しくやっていこう!』

 

「お会いできて光栄です、同志。私はPPS43。軽いのが取り柄であります。」

 

「はじめまして指揮官。私はPPsh41、全然重くないですよ?」

 

 

 

 なにこのすっげえ取り繕った感。

 

 もうね、アレだよね。

 これこそ旧東側当局がやってそうな急場しのぎの取り繕いだよね。

 ブリッジ・オブ・●パイに出てくる、KGB大佐の偽家族並みのやらせ感だよ。

 みんな揃って素敵な笑顔してるけど、あまりに引きつりすぎててジョー●ーか何かに見えてくる。

 

 

「………ごめんなさいね、坊や。小隊長である私の方からよく言い聞かせておくわ。」

 

「…うん、いや、良いんだけどね。息抜きって大切だと思うから…でも、頼むからロシアンルーレットだけはやめてくれ。出撃してないのに毎日損耗報告をあげられても困る。」

 

「………チィ」

 

「PPS?坊やに歯向かうならシベリアに送るわよ?」

 

「ヒッ!ど、どうかそれだけはご勘弁を、同志!」

 

 

 ダーリャママの眼光の鋭さと言ったら、まるでバ●ライカ。

 それもそのハズ。

 この小隊も私の指揮下に入る部隊の内の一つであり、その名も第1小隊『ホテル・モスコー』(小隊長はDP28)。

 だから、私が入室直後にロアナプラな目をした戦術人形がロシアンルーレットしてても別に驚く必要はない。

 要は、ダーリャママの保証を鵜呑みにした私が悪いのだ。

 

 

「…えっとね、まずはよろしくお願いします。あなた達とも面談をね、したいと思いますのでね、時期を示されるまでは待機しててください、はい。」

 

「「「「はい、同志!」」」」

 

「くれぐれもロシアンルーレットだけはしないように。」

 

「………チィ」

 

「PPS?」

 

「ヒィッ」

 

 

 私は手元の資料を見る。

 ダーリャママ、M1895、モシンナガン、PPSとPPsh41。

 この第1小隊も、第2小隊と同じく多くの指揮官の元をたらい回しにされている。

 正直、私でもたらい回しにしたい。

 だってさ、ロシアンルーレットしてんだよ?

 完璧にヤクザじゃん。

 完璧にロシアンマフィアじゃん。

 何なの?

 本当に何なの、グリフィン&クルーガーの人形部門は。

 最早ネオナチの巣窟と化してる小隊抱えてみたりとかさ。

 こんな昼間っからウォッカ飲んでロシアンルーレットしてる小隊抱えてみたりとかさ。

 てか何故こうなる?

 ん?

 何でこうなる?

 何がどうまかり間違ったらこうなるんだヨォ。

 第一、何の経験もない私めのような人間に、こんな問題のカタマリみたいな連中…コロンコロンッ…コロンコロン?

 

 

 どこからともなく何か円形のモノが2つ部屋に転がってきた。

 可愛らしいカバーの付いた裸電球に照らされたそれは、何であるか容易に判別することができる。

 それはドイツ製のM24手榴弾で、誰が使っているかは簡単に想像することができた。

 あいつら…。

 

 

「坊や!伏せて!」

 

 

 手榴弾が炸裂する前に、ダーリャママが私を豊満な谷間に挟みながら押し倒し、他のメンツも引き倒した化粧台の裏に飛び込んだ。

 そして、ドイツ製手榴弾が炸裂する。

 直後、私はダーリャママの芳しい香りもといフェロモンを押しつけられながらも、聞き覚えのある声をハッキリと聞いていた。

 

 

「大打撃ィ!!大打撃ィ!!大打撃ィ!!」

 

「見れば分かるわ、MP40。さあ、戦争を始めましょう!一心不乱の大戦争を!!」

 

「ふぉいあー!!」

 

 

 布を引き裂くような音、つまりMG42の強烈な発射音が聞こえ、ダーリャママは私を冷蔵庫の影まで移動させてくれる。

 ダーリャママあったけえ。

 もう、こうなったら、これ以上何も考えたくない。

 

 

「坊や、ママの身体にしっかりと隠れているのよ?…ホテル・モスコー!反撃せよ!ファシスト共におもい知らせなさい!」

 

「MPごときがカチコミしようっての!?」

 

「全然怖くないですよぉ〜」

 

 

 PPS43とPPsh41が反撃の一番手だった。

 猛烈な勢いで7.62mmトカレフ弾が飛び出ていき、MP40とPPKを牽制する。

 ダーリャママもDP機関銃を展開して、私を深々と谷間に挟んだまま伏射し始めた。

 揺れる、揺れる、おっきい、柔らかい、あったかい、極楽。

 

 Kar98kはどうやらシュタールヘルムを使ったデコイでモシンナガンの位置を割り出すというスターリン●ラード(2003年)みたいな事してるし、モシンナガンもモシンナガンで頻繁に位置を変えるというスターリン●ラード(2003年)してやがる。

 STG44はどうにか側面に回り込もうとしたがM1895から牽制され、PPS43とPPsh41とMP40とPPKはお互いそれぞれ手榴弾を投げたり投げ返したりしていた。

 

 

 気づけば、第2小隊『アイアンライヒ・シュレッダー』と第1小隊『ホテル・モスコー』の内紛の真っ只中に私はいた。

 拳銃から機関銃に至るまでのあらゆる火器が奏でる銃声の騒音の中、私はダーリャママがDP機関銃を発射するたびに揺れる双丘の豊満さを感じながら、不謹慎ながらある結論に達していた。

 

 まだ車列の中で側頭部打ち抜かれてたほうが幸せかもしれない、と。

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